2026年1月
CRDS-FY2025-WR-07
研究の創造性と協働を促進する先端研究基盤
エグゼクティブサマリー
本報告書は、2025年10月29日に開催した科学技術未来戦略ワークショップ「研究の創造性と協働を促進する先端研究基盤」の内容をまとめたものである。第7期科学技術・イノベーション基本計画を前に、わが国の科学技術・イノベーションエコシステムを持続的に機能させるためには、産学官連携に加え、大学・国研等アカデミアの研究基盤の強化が不可欠である。本ワークショップでは、研究の創造性と協働を促進する先端研究基盤の在り方を、産学連携による先端機器開発・整備、共用拠点などの「場」の形成、研究基盤の構想から更新までを見据えた長期的マネジメント、人材育成や制度改革、AI for Science時代に対応するデータ基盤整備など、多角的観点から議論した。これらを踏まえ、①研究基盤の変化・進化を前提として設計すること、②研究基盤を支える「場」に求められる機能、の二つを中心に議論し、以下のような多様な知見と今後の方向性への示唆を得た。
- 研究基盤を「進化する構造」としてデザインする必要性
- 世界の研究進展からの設備更新の遅れや、技術人材等の不足、分散的な設備管理などに起因する構造的課題を踏まえ、研究基盤を固定的・画一的なものではなく、将来へ向けた変化・進化を取り込むものとしてデザインし、刷新することが不可欠である。
- “AI for Science” や研究の自動化・自律化など、科学の在り方そのものに関わる変革が起きつつある中、主要国では研究基盤の迅速な整備・更新が行われている。世界的な研究環境の変化を前にして、日本の研究基盤改革のスピード不足を克服する長期(10〜20年)的な計画・戦略の構築と実行が必要である。
- 「場」としての研究基盤に求められる機能の高度化
- 先端機器開発と共用基盤とを連動させ、産学の連携による新たな用途開発や、新技術を研究現場への実装につなげる実機・実技術の試作(β機開発等)を促す仕組みと体制が求められる。
- 全国レベルのデータ基盤を構築し、研究データの創出とその利活用に関する基本的な枠組みとネットワーク・管理体制を整備することが不可欠である。特定の分野で先行する諸制度・プログラムの経験や機能を活かすことが重要となる。
- 産学連携を軸とした持続的な研究基盤のエコシステム構築
- 研究力強化に欠かせない新領域開拓に挑戦する研究者や、新たな研究ニーズが集まる共用基盤の構築を起点とした、新技術の用途開発と、技術を実装・具現化することによる市場展開を組み合わせた、新たな価値の循環が必要である。研究力強化に必要な新たなツール群を生み・試す場としての共用と、それをいち早く形にして先端研究に活用するとともに、その技術を企業が世界展開していくことによる正の循環が作用するエコシステム構築が課題である。
- 技術人材・研究支援人材の高度化とキャリア設計
- 技術継承や新技術、AI for Science時代の研究環境に対応していくためには、技術人材や研究支援人材の量的不足に対する制度的脆弱性が制約となっている。キャリアパス形成・育成プログラムを担う、産学が連携する持続的な組織と仕組みの整備が不可欠である。
- 若手研究者や研究室立ち上げ時の迅速化と共用基盤の価値
- 共用基盤を良好な状態にし続けることで、研究室単位で個別に高額の設備を導入せずとも、研究を迅速に開始できる。特に研究者の異動の際や若手研究者の研究の立ち上がりを加速できるものとし、国際水準の研究環境を備えることが重要である。
※本報告書の参考文献としてインターネット上の情報が掲載されている場合、当該情報はURLに併記された日付または本報告書の発行年月の1ヶ月前に入手しているものです。