分子性材料の新潮流・展開

エグゼクティブサマリー

本報告書は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が令和7年8月23日に開催した俯瞰ワークショップ「分子性材料の新潮流・展開」に関するものである。

CRDSでは、国内外の科学技術動向を俯瞰的に調査し、国として重点的に推進すべき研究領域や課題を抽出し、その推進方策を含めた戦略提言へとつなげる活動を行っている。本ワークショップは、CRDSが重要と考える「分子性材料」について、戦略提言検討の前段階として、現状や将来の可能性、またそれに向けた課題の把握および具体化を目的として開催した。 

有機分子やポリマーなど分子を構成成分とし、力学的強度、電子・イオン的機能、物質の輸送・移動、生物機能の補助などキーとなる機能を担う「分子性材料」は、さまざまな応用分野において重要な役割を果たしている。また、金属-有機構造体(MOF/PCP)や共有結合性有機構造体(COF)、有機無機ハイブリッド、超分子ポリマーなど新たな分子性材料も生まれてきている。 

分子性材料の研究開発には、分子を設計・合成する技術、および分子集合体・構造体を制御する技術などが重要な役目を果たしており、これらについてはこれまでも不断の研究が進められてきている。さらに、近年はカーボンニュートラルや循環型社会などに関する意識が高まってきており、高機能の実現だけでなく、省資源・省エネルギーな物質生産とともに、リサイクル性を充分考慮した材料設計など新たな視点が求められてきている。 

分子性材料については、CRDSで公表している研究開発の俯瞰報告書 ナノテクノロジー・材料分野(俯瞰報告書)においては、従来、主として応用分野ごとに状況把握をしていたが、2025年12月公開予定の俯瞰報告書2026年版では、「分子性材料」(主として機能発現)、「分子制御技術」(主として、設計・合成、構造制御)、それぞれについての国際的潮流や科学技術的課題を俯瞰的に把握している。

本ワークショップでは、まず、「分子性材料」について、有機合成・触媒、超分子ポリマー、超セラミック、分子性ナノ空間材料、ソフトマテリアル(ゲル)、高分子材料(力学特性)について6名の有識者から、研究開発の現状、将来の可能性、それに向けての課題について話題提供をいただいた。

総合討論については、分子性材料の将来の方向性や課題を具体的に把握し共有することを目指して、2名のコメンテーターを含む招聘者全員からの事前アンケートに基づき、以下の視点で総合討論を行った。

  • 「機能発現に関する研究」「合成に関する研究」「構造制御に関する研究」の連携
  • フロンティアへの挑戦による新たな価値の創出
  • 必要となるインフラストラクチャー、共通基盤技術、支援施策など

本ワークショップにより、分子性材料の今後の発展に向けた具体的な戦略提言検討の参考となる情報が得られたものと考える。また、本報告書を通じて、 分子性材料について、さらに多くの関係者が関心を持ち、当該分野の研究開発が一段と活発化する契機となることを期待する。

※本報告書の参考文献としてインターネット上の情報が掲載されている場合、当該情報はURLに併記された日付または本報告書の発行年月の1ヶ月前に入手しているものです。