- 材料・デバイス
材料研究開発における自動自律化の現在と将来
エグゼクティブサマリー
本報告書は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が令和7年4月2日に開催した俯瞰ワークショップ「材料研究開発における自動自律化の現在と将来」に関するものである。
CRDSは、国内外の科学技術動向を俯瞰的に調査し、わが国が重点的に推進すべき研究領域や課題を抽出し、その推進方策を含めた戦略提言につなげる活動を行っている。本ワークショップは、CRDSが重要であると考える材料研究開発における自動自律化について、戦略提言の前段階として、その現状や将来の可能性、またそれに向けた課題の把握および具体化を目的として開催した。
材料研究開発の自動自律化は、わが国が強みを持つ材料分野における研究開発力の維持、さらなる優位性の獲得、研究開発者数の減少に対処するためにも非常に重要な課題である。人間の能力だけでは困難な材料やプロセスの広大な探索空間を効率的に探索することを可能にし、新規材料発見や材料特性向上の可能性を大幅に高めることが期待される。本ワークショップでは、海外の状況も踏まえ、話題提供や総合討論を通じて、わが国の強みを活かした国際的な競争力を維持・強化するための方向性について議論した。
CRDSは、材料研究開発の自動自律化の要素として、実際にハイスループットで探索しデータを創り出す「自動実験」や「高速で高精度なシミュレーション」、実験・計算・論文・特許などの総合的なデータベースから探索範囲や探索条件などの研究開発計画を導き出す「マテリアルズ・インフォマティクス」および「プロセス・インフォマティクス」、それらを相互に接続して自律的に機能させる「統合ソフトウェア」があると考えている。本ワークショップでは、これらのバランスを考慮し、第1部において統合ソフトウェア、および自動実験と統合ソフトウェアを組み合わせた自動自律実験について5名の方に話題を提供いただいた。第2部ではインフォマティクスとシミュレーション、第3部では大規模言語モデル(LLM)とAI・ロボットをテーマに設定し、それぞれ2名の方に話題を提供いただいた。
総合討論の前半では、国家プロジェクトや国立研究開発法人、企業での取り組み、産官学連携などについての話題提供を含め、6名のコメンテーターに広い視点から発表していただいた。総合討論の後半では、招聘者(話題提供者、コメンテーター)への事前アンケートの回答結果を共有した後、材料研究開発における自動自律化の将来の方向性を議論した。5年後には、データベース、シミュレーション、自動実験のすべての要素が統合され、探索範囲や条件などの計画立案を含めた自動自律化が可能になり、それを活用した材料研究開発が普及しているなど、力強い将来の姿が描かれた。
本ワークショップにより、今後の材料研究開発における自動自律化の発展に向けた具体的な戦略提言へと進めることが可能となったものと考える。また、本報告書を通じて、さらに多くの関係者が関心を持ち、自動自律材料研究開発に取り組む契機となることを期待する。
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