2026年3月
CRDS-FY2025-RR-08
カーボンニュートラルに向けたエネルギートランジションにおけるリスク制御科学技術の方向性 〜我が国のエネルギー安全保障の振り返りも踏まえて〜
エグゼクティブサマリー
- 調査目的:カーボンニュートラル(CN)に向けたエネルギートランジションにおいて、我が国におけるこれまでのエネルギー安全保障政策も参考にしながら、リスクや課題を明らかにし、それら対策における科学技術としての方向性を考察する。
- 調査方法:約50年前の石油危機時以降のエネルギー安全保障関連の施策、特に技術面からは太陽電池、LNG利用について、現状の状況も踏まえて比較分析し、技術開発等における課題や今後に向けて教訓となる事柄をまとめる。また世界および我が国におけるCNに向けた対応状況やリスクや課題の捉え方を調査する。それらより我が国における今後の対応の方向性をまとめた。
- なおCNに向けての課題は以下の3つに分けて整理した。
①移行期における化石資源の供給リスク(化石資源への投資削減によるもの)
②クリーンエネルギーに関する新たな需給リスク
③エネルギー構造変革における転換速度やその見通しの不確実性による課題
主な結論は以下の通り
- 過去のCNに向けたクリーンエネルギー技術の事業化・事業化拡大では以下の視点が重要となる。
- 国内需要の創出や投資の予見性を高めるなどの施策
- サプライチェーン全体の構築とその自律性
- クリーンエネルギー技術の需要拡大策のみならず、産業力強化の観点からの生産側への支援策
- 技術・人材流出への配慮
- 最新技術が将来的に汎用化・限界に達した時に備えて、次なる技術シーズも考えておくこと
- クリーンエネルギーシステムは現時点ではコスト面で不利な状況にあり、その高いコストを補うための経済的インセンティブの仕組みが必要となる。
- 我が国は、化石資源はもちろん、クリーンエネルギー、その技術に必要な鉱物資源においても海外への依存度が高い。またそれらのサプライチェーンは特定国依存あるいはマーケットが小さいなど、供給安定性、価格変動においてこれまで以上に高いリスクがある。
- サプライチェーン構築については自国努力のみで解決できないため、今後計画通りに進まないことも想定される。これらに鑑み、クリーンエネルギーについては2050年CN未達をも考慮したシナリオ(シナリオプランニングなどの手法も活用)も想定した準備が必要と考える。また研究開発テーマについてもこれまで取組の少ない分野も含めてリスクを最小限に制御できる科学技術が何かを思考する必要性がある。
- 上記を考慮し、リスク制御のための具体的な科学技術の事例を以下に示す。これらについてはその重要性や研究開発の実現性への精査を進め、優先度も考えながら対応していく必要があると考える。
- エネルギーミックスの多様性に資するエネルギー技術
- 省資源・省エネ技術の更なる強化
- 鉱物等の資源代替技術、資源循環、精錬時の随伴元素利用
- 従来化石エネルギーシステムと親和性が高く需給バランス可能なクリーンエネルギー技術(共有化できる技術)
- 温暖化対策としての適応策
- 温暖化対策としての緩和策として、温室効果ガス(GHG)削減以外の検討
- 2050年以降も想定した長期的な技術開発
- なお、上記テーマのうち、資源循環は今後サーキュラーエコノミー(循環経済)への移行にとって重要な課題とされる。特に資源の乏しい我が国にとって、資源循環はサプライチェーン構築の一部を担う重要な要素となりうる。このため今後資源循環に関する科学技術の役割や具体的な研究開発についての深堀検討が必要。
※本報告書の参考文献としてインターネット上の情報が掲載されている場合、当該情報はURLに併記された日付または本報告書の発行年月の1ヶ月前に入手しているものです。