国際科学技術コンテスト

科学オリンピックだより 2022 Vol.22

科学好きの原点は子ども時代の体験
科学を通じて得た力がその後の人生を豊かに

4人が共通して感じているのは、科学は日常生活で身近にあふれているけれども、あくまでそれは生活のごく一部であり、大人が気軽に科学を楽しむ「文化」までは成熟していないこと。しかし一方で、彼らの科学好きの原点は子どもの頃に出合った図鑑や伝記で読んだ科学者などにあり、その意味で、現代の子どもたちを取り巻く科学教材は昔より数的にも質的にもはるかに充実していることを挙げ、状況変化への明るい兆しに期待を寄せました。

「国際科学オリンピック出場は、大学進学後の学びや自分が研究者として生きていく上での道標になりました」と齊藤さん。オリンピックを通じて出会った同年代の仲間や教員との関係が自分の研究者としての幅を広げてくれたと実感していて、それを後輩や学生の指導でも心がけていると言います。さらに桝さんが、科学を通じて得られるものの一つとして「ロジカルシンキング(論理的思考力)」を挙げると、「どの教科の科学オリンピックでも、国内大会の出題は科学的知識だけでなく論理的に文脈を読み取ることが求められていたように思います。今も私は本を読む際など常に論理的に考えることを意識しています」と林さん。末松さんも「『論理』という道具を持つことによって世界の見方が変わると考えています。世界にあるいろいろなものをつなぐのが論理で、論理によって混沌とした世界を切り取れることは非常に大きな魅力」と述べました。3人の熱い思いを聞いた桝さんは、豊かな人生を送る上で科学を学ぶことの意義を実感できる社会づくりのためにも、「子どもたちのロールモデルとして、ぜひ充実した人生を歩んでいってほしい。皆さんに続く人が増えていくことで、きっと科学も『文化』として根付いていくでしょう」と激励し、座談会を締めくくりました。

出席者の皆さま、ありがとうございました!

出席者:(所属、肩書き等は2022年8月18日当時)

    桝 太一さん(同志社大学ハリス理化学研究所専任研究所員・助教)
    齊藤 颯さん(京都大学大学院 理学研究科化学専攻 有機化学研究室 助教、2010年国際化学オリンピック金メダリスト、2011年国際化学オリンピック銀メダリスト)
    林璃菜子さん(京都大学医学部医学科2年、2020年国際化学オリンピック銀メダリスト)
    末松万宙さん(東京大学教養学部理科二類2年、2019年国際化学オリンピック金メダリスト、2020年国際生物学オリンピック金メダリスト)

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