国際科学技術コンテスト

科学オリンピックだより 2009 vol.2 雄の“美しさ”は雌しだい!?

目指せ!科学のアスリート 国際科学オリンピックシンポジウム

国際科学オリンピックシンポジウム

日本で開催される2009年国際生物学オリンピックと2010年国際化学オリンピックを国民的な運動として支え盛り上げていけるよう、第3回目のシンポジウムが日本科学未来館で開催されました。当日はたくさんの生徒や保護者が集まり、「才能を育てる」をテーマとした講演に熱心に聞き入る様子が見られました。未来のオリンピック候補生がまた新たに誕生したようです。

「持って生まれたサイエンスの才能の喚起」

日本科学オリンピック推進委員会会長

ノーベル物理学賞受賞者 江崎玲於奈氏

人生とは、自分が主役を演ずるドラマ

 みなさんの将来を決める究極の問いかけとして、次の2つのフレーズを覚えておいてほしいと思います。「わが人生、何をなすべきか-What should I do with my life?」「自分は何を得意とし、どんな才能を持って生まれたか-What am I best at?」。これらの答えを得ることに教育を受ける目的があると私は考えます。人間はひとりひとりが固有の遺伝子を持つ、いわばカスタム・メード。それぞれに持って生まれた才能があり、それを見つけて育てることが教育の本質となります。さらに、民主主義の原則に従い、自分の将来は自分で決めるという姿勢を身につけることが大切です。自分の特性を最大限に活かす人生の“シナリオ”を、自らの手で創るのです。人生とは所詮、自分が主役を演ずるドラマなのです。

東京大空襲の翌朝も行われた東大の授業

 私自身、学生時代は日中戦争と太平洋戦争を経験し、死と破壊が身近な追い詰められた環境の中で何に優先順位をおいて生きるかを必死に問い詰めました。先に述べた2つの問いかけを無意識のうちに自分の中で繰り返していたのです。偽りの情報がまん延していた当時、私は客観的で普遍的な知識を渇望していました。私にとって科学は「おもしろい」といった類のものではなく、「真実を伝える本物の知識」として強く惹かれたのです。1945年3月10日の未明には東京大空襲を経験し、幸い命に別状はありませんでしたが下宿から焼きだされ、東京下町は一晩で壊滅。死者10万人、罹災者100万人という未曾有の被害を受けました。しかしその日の朝8時、学ぶことに最大の価値を置く東京帝国大学の25番教室では、いつもと少しも変わらずに講義が行われたのです。私は必死になってノートを取り、物理学の世界に没頭しました。そして、東京帝国大学アカデミズムの存在を実感するとともに、サイエンスの心を身につけることができたのです。

個人の創造力が国を繁栄させる力になる

 科学オリンピックに主に参加するのは、心身ともに最も著しい成長期を迎える年代の中学生や高校生です。彼らは自我に目覚め、人生のシナリオを書く衝動に駆られることでしょう。この重要な時期に才能を見出し育み、さらにそれを最大限に発揮できるシナリオを書く創造力を身につけていくのです。そうやって日本人が自分の才能を最大限に活かせるようになれば、日本の繁栄にもつながることと期待しています。

「才能をどう伸ばすか」

日本科学オリンピック推進委員会メンバー

日本学術会議会長 金沢一郎氏

「才能をどう伸ばすか」金澤 一郎

年齢別に段階的に学ぶ

 才能を伸ばすためのポイントをいくつかお話ししたいと思います。まず、こどもが小学校を卒業するまでに学ぶべきものを見てみると、3歳まではこどもの要求を周囲の人間が認め、反応することによって得られる安心感と信頼感、6歳までは欲求を抑制することと最低限の作法を身につけること、そして12歳までは社会に適応する力(公共性)と社会に貢献する力(社会力)を身につけることがあげられます。そして、憲法にも保障されているように、教育とは誰もが等しく受ける権利を持つものであり、能力を発見されたり発揮したりするチャンスも平等にあるべきものです。

「出る杭」をどう見つけ、育てるか

 親や教師は、こどもが「無視」や「差別」をされたと受け取るような言動をしないように気をつけなければなりません。無視は大きな苦痛であり、大切な教育行為である叱ることも、その内容がこどもにとって納得できるものでなければ差別を受けたと捉えられかねないのです。ほめる場合も同じで、他のこどもが納得しなければ「えこひいき」と受け取られかねません。いま注目したいキーワードは、「出る杭」。いい意味で、頭角を現した才能をいかに見つけ、育てるか。科学オリンピックもその一環となりますので、是非多くの方に参加していただきたいと思います。

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国立研究開発法人 科学技術振興機構 
理数学習推進部 才能育成グループ
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