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アダルト型オリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法

徳元 康人(埼玉医科大学)
他

発明のポイント

  • 低酸素刺激培養により、【増殖型】オリゴデンドロサイト前駆細胞から【アダルト型】への誘導分化に成功
  •  ⇒ 移植治療に十分な量のアダルト型オリゴデンドロサイト前駆細胞を調製することが可能

発明の概要

 オリゴデンドロサイト(以下OL)は、中枢神経系内のグリア細胞の一つであり、主にミエリン鞘(髄鞘)形成を担っているが、最終分化した細胞であるためin vitroでは短時間で死滅し、かつ、物理的に脆弱であるため移植による疾患の治療には利用できない。OLの前駆細胞(以下OPC)には増殖型とアダルト型があるが、幼若個体に多量に存在する増殖型OPCは短期間で全てOLに最終分化する。一方、アダルト型OPCは休眠状態で成体の中枢神経組織に一生を通じて温存されており、かつ、移植治療に十分な強度を有している。しかしながら、採取可能なアダルト型OPCは成体には極微量しか存在せず、その誘導分化の作用機序も不明であったことから、充分量のアダルト型OPCを調製することは非常に困難であった。

 本発明者らは、低酸素環境下で、甲状腺ホルモン受容体又はレチノイン酸受容体のリガンドで刺激することにより、増殖型OPCからアダルト型OPCへの誘導分化に成功した。本技術により、移植治療に十分な量のアダルト型OPCを調製することが可能となった。

 アダルト型OPC移植部位定着後に分化刺激を与えてOLに分化させることで、髄鞘形成不全や脱髄による中枢神経系疾患の治療への応用が期待できる。

増殖型OPCの分化には甲状腺ホルモン(TH)が必要

<培養に使用した増殖型OPC>

P7のラットの視神経から精製、純度99.9%以上

TH添加・低酸素条件培養で増殖型OPCはOLではなくアダルト型OPCに分化

20% O2
1.5% O2

培養終了後、細胞を固定、マウス抗GC(ガラクトセレブトシド)抗体及びマウスA2B5抗体で一次免疫染色、標識抗マウスIgG抗体抗マウスIgM抗体で二次染色、さらにDAPI染色。A2B5抗体はOPC特異抗体、GCはオリゴデンドロサイトマーカー。

註:レチノイン酸でもTHと同様の結果が得られた

低酸素刺激培養で得られたアダルト型OPCは再増殖能を保持

1.5%条件で培養したアダルト型OPCを回収し、各培地で7日間培養

P
PDGF含有培地(TH非含有)
P+I
PDGF・TH含有培地
P+I+N
PDGF・NRG1・IBMX含有培地(TH非含有)
PDGF
Platelet-Derived Growth Factor
NRG1
neuregulin1
IBMX
isobuthylmethylxanthine

低酸素刺激培養で得られたアダルト型OPCは多分化能を保持

MBP陽性
CNPase陽性
低酸素刺激培養で得られたアダルト型OPCをPDGF不含TH含有培地で培養後、固定、染色
GFAP陽性
FBS含有培地で培養後、固定、染色

CNPase(2’,3’-サイクリックヌクレオチドフォスフォジエステラーゼ)及びMBP(ミエリン塩基性タンパク質)は、オリゴデンドロサイトのマーカー、GFAP(グリア細胞線維性酸性タンパク質)は、アストロサイトのマーカー。

【体内でのアダルト型OPCの生成メカニズム(げっ歯類)】

A schematic diagram of perinatal to adult transition of OPCs. In developing rat optic nerves, thyroid hormone inhibits the proliferation of perinatal OPCs. In normoxia, cells differentiate into oligodendrocytes. On the other hand, in a hypoxic niche, quiescent OPCs sustain their potential capacities of proliferation and differentiation as adult somatic stem cells (Adult OPCs). Hypoxia-inducible factors-mediated Runx1 expression and resultant p15/INK4b induction contributes to development of adult OPCs.

想定される用途

  • ◎ 中枢神経系疾患の移植治療
  • ◎ 薬剤評価のためのテスター
  • ◎ ニューロチップのパーツ

ライセンス可能な特許

発明の名称:アダルト型オリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法
国際公開番号:WO2015/111602
登録番号:特許第6615616号(586KB)

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