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地域結集型共同研究事業

平成16年度事業開始地域中間評価報告書

平成19年2月
独立行政法人科学技術振興機構 産学連携事業本部 地域事業推進部


4. 地域別評価
4−2 京都市
◆(参考1)事業の目標・概要

 京都市が進める京都市スーパーテクノシティ構想・京都バイオシティ構想により、京都大学を中心とする医学、工学の主要な研究者と京都を代表する企業が結集し、産学公連携、医工連携によるナノメディシン基盤技術開発及びその実用化を進め、この分野での世界を代表する拠点の形成を図る。
 このうち事業期間においては、ユビキタス医療時代における医療検査(スクリーニング)のための医療用検査システムデバイスの開発と、ナノ粒子を用いたイメージングによる病態と部位同定を行う精密診断及び病態細胞レベルでのターゲティング治療技術の開発を『医学と工学の融合』により一体的に進め、検査・診断・治療システムへの応用を目指す。

1)地域COEの構築
 ナノメディシンの一大研究開発拠点としての地域COEを構築し、新たな産業の創成と研究機関や関連企業の集積を目指すため、フェーズVでは、京都市が中心となりコア研究室を核とした研究体制をさらに発展させるための「高次生体機能医工連携センター(仮称)」を整備する。この施設を核に、医工分野の最先端技術が融合した新領域・未踏分野を開拓し、その蓄積や研究成果を活用することにより、高度先進医療を推進するための新技術・新産業の拠点となる地域COEを構築する。また、本事業を一つの柱に、京都市と京都大学医学研究科・工学研究科並びに市内主要企業が進めている「京都市医工連携検プロジェクト討委員会」において、さらなる協議を重ねる中で、新たな医工連携プロジェクトを立ち上げ、我が国、さらには世界を代表する医工連携の研究開発拠点としての地域COEの構築を目指す。


2)新技術・新産業の創出

テーマT: ナノデバイスによる医療用検査システムデバイスの開発

   研究テーマTからは、大学の研究成果と企業の技術開発力を融合することにより、微量の血液を分析するポイントオブケア検査技術と、その基盤となるBio-MEM(医療用電子制御技術)用基盤材料の創成技術が生まれる。この他、本事業における研究成果を基に創出が期待できる個別の新技術は、以下の通りである。

1)送流デバイスのシステム化・小型化技術

2)多項目同時計測センサ開発・小型化技術

3)高速ミリ波通信システム技術

4)生体適合材料

   これら研究成果はフィジオーム・プロテオーム研究用チップへの応用も期待され、成果の一部は既に細胞の研究用チップとして利用を開始している。また、2)の技術はセンサの部分を適切な抗体に変更することで、環境物質やアレルゲン等の生活環境のモニタリングに適用できる他、動物・植物のモニタリングや食物管理にも容易に応用可能となる。さらに、ナノデバイスによる医療用検査システムデバイスの開発技術は、本研究に参加している企業の電子部品・デバイス製造技術や計測・分析技術等を医療用に応用、展開していこうとするものである。

   これにより、京都において新たな医療用部品・デバイス産業が生まれるだけでなく、応用面でもさまざまな電子部品・デバイス、計測・分析機器の開発につながるなど、京都経済の活性化に大きく貢献することになる。また、上記新技術から、以下の新産業の創出が期待される。

1)住環境や生活環境における環境物質やアレルゲンのモニタリングを容易に実現するため、生活環境調査や改善用の機器や設備の開発および材料開発を行う、個人や生活地域に関連するサービス企業・産業等。

2)本研究が創出する技術・商品は、家畜やペット等の健康管理を簡便かつ高速に行うことが可能であるばかりでなく、内蔵する高速無線通信システムを介して、インプラントすることで動物の健康状態を常時モニタリングすることが可能となる。現在、家畜について、安全で付加価値の高い商品へのシフトが生産者、消費者双方に必要とされているなど、動物の健康を安価に、高頻度に管理するためのシステムへのニーズは決して低くない。よって、これらをサービスとして提供する産業およびサービスを提供するための装置開発産業等。


テーマU: ナノテク材料による医療用イメージングとターゲティング技術の開発

   研究テーマUでは、以下のような基盤的材料・技術の開発を行う予定である。

1)金属ナノ粒子を基盤材料とした刺激応答性MRI用造影剤の開発

2)ナノ粒子の簡便な修飾法や修飾量子ドット、修飾オリゴペプチドの簡便な合成法

3)新規PTD-ODDペプチドや新規PTDペプチド

4)新規DDS、高効率な細胞内へのデリバリ分子システムの構築技術

5)低酸素領域の選択的イメージング技術

6)標的細胞特異性を有するイメージングおよびDDSへの応用


   その研究成果として、以下のような診断・治療に結びつく新規ナノ複合材料を構築する技術、新規材料を応用する技術の開発が期待される。

1)生体、細胞における温度、pH、低酸素状態等の刺激変化に対する応答機能を持った新規イメージング材料

2)腫瘍特異性を持った新規プローブおよびイメージング材料

3)培養細胞・実験動物レベルで利用できる低酸素特異的イメージング・ターゲティング材料

4)培養細胞・実験動物レベルで利用できる標的細胞特異的DDS機能を有したナノキャリア

5)食料用家畜に発生する脳内細胞異常蛋白蓄積に伴う疾患(例、BSE)の早期発見のためのイメージング技術開発


   上記新技術から、以下の新産業の創出が期待され、京都の化学工業をはじめとする産業の振興につながるだけでなく、将来的には医療用計測・分析機器の開発にも広がり、京都経済の活性化に大きく貢献することになる。

1)機能性材料を提供する工業材料産業

2)ナノ複合材料を用いた基礎研究材料産業

3)診断薬・治療薬・DDS試薬を提供する創薬産業

4)食用家畜脳細胞異常蛋白蓄積検査用試薬提供産業および検査システム提供産業



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This page updated on March 7, 2007
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