平成18年3月 独立行政法人科学技術振興機構 地域振興事業評価委員会 |
4. | 地域別評価 |
4−4 宮崎県
◆(参考1)事業の目標・概要
宮崎県は、宮崎大学を中心に、生理活性物質等の生命科学分野において高いポテンシャルを有しており、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス)やHCV(C型肝炎ウイルス)に関するコホート研究の蓄積など、国際的にも評価されている。また、農業を基幹産業とし食品製造業も盛んで、バイオテクノロジー分野での産学官連携に多くの実績を有している。
1)地域COEの構築
本事業が目指す地域COEの構築は、「食の機能性」を積極的に活用したがん予防基盤技術の開発を中心に据えた「医学」と「農学」の強力な連携による、ポストゲノム時代の生命工学技術を基盤としたバイオ・メディカル分野の国際的拠点の形成である。 宮崎県工業技術センター・食品開発センターの食品バイオ研究室を研究の核とし、宮崎県総合農業試験場、宮崎大学フロンティア科学実験総合センターとの有機的なネットワークを構築し、事業終了後には、研究成果を基盤として、優秀な研究者と研究機関が結集した当該分野の強固な科学技術基盤を形成する。 また、研究成果を産業界へ技術移転することにより、製薬企業や食品製造業等の集積を図り、バイオ・メディカル産業クラスターを形成していく。
2)新技術・新産業の創出
本事業の大きな特徴は、ATLや肝細胞がんの疾患進展には「食」の影響が大きいと考え、その機能性を積極的に活用したがん予防技術への取り組みを中心に据えて進めるところにある。 すなわち、ウイルス発がん機序の解明と予防・診断・治療法の開発を進めるとともに、食品機能性評価システム、栽培・育種・加工技術の開発を行い、また、これら医・農の両分野にまたがるウイルス発がんを予防する高機能性食品の探索等を行うこととしている。 これらを実現するための研究テーマは2つのサブテーマ、5つの小テーマから構成されている。テーマ及び概要は以下のとおりである。 テーマ1: ウイルス発がんの機序解明と予防・治療法の創出
発症機構の解明されていないATLおよび肝細胞がんの疾病進展因子を解明し、その予防・治療法の確立を目指す。 1−1 ウイルス肝炎からの肝発がん機構・進展因子の解明とその予防・治療法の開発
蛋白質や遺伝子の網羅的解析により、肝炎進展因子や発がん関連因子を明らかにするとともに、肝炎の進展や肝発がんを抑制する生理活性物質の作用機序の解明、ドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発を行うことにより、新規の肝がん予防・治療法を開発する。 1−2 ATL発症機構の解明と発症前診断及び予防・治療法の開発
コホート研究を活用してウイルスキャリアがATL発症に至る因子を解明するとともに、総合的なゲノム解析等によって発症機構を解明する。これにより、ATL発症危険因子群の診断法、発症因子を標的とした治療法を開発し、ATLの新しい予防・診断・治療法を創出する。 1−3 ウイルス発がん予防のための高機能性食品の探索及び有用性の解明
高機能性食品の探索として、肝がんやATLの予防に有効であると考えられる生理活性機能についてのin vivo試験、ラットによる安全性試験、モデル動物を用いた有効性の確認試験、有効成分の同定および作用機序の解明を行うことにより、ウイルス発がん予防のための高機能性食品を見いだす。 テーマ2 食の機能性活用のための基盤技術の開発
農作物が有する機能性、特にウイルス発がんの予防に貢献する種々の効果について、総合的に評価することが可能な新規システムを構築する。また、機能性の発現を実現する栽培・育種技術の確立、加工技術の開発とともに、これらの技術に基づいたウイルス発がんの予防に効果のある高機能性食品を開発する。 2−1 がん予防を目指した食品機能性評価法の開発
食品がヒト細胞の蛋白質や遺伝子に与える影響を解析することで、食品が有するウイルス発がん抑制に関わる様々な機能性を評価できるシステムを開発する。 2−2 高機能性発現のための育種・栽培技術・加工技術の開発
食品の機能性の向上を目標とした農作物の育種を行うと同時に、光や温度などの栽培環境の制御を考慮した栽培の技術開発を行う。また、食品加工工程における機能性の変化を段階的に把握し、新規高機能性食品の開発を目指す。 |
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