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地域結集型共同研究事業

平成15年度事業開始地域中間評価報告書

平成18年3月
独立行政法人科学技術振興機構 地域振興事業評価委員会


4. 地域別評価
4−3 和歌山県
◆(参考1)事業の目標・概要

 和歌山県は、温暖な気候と恵まれた自然環境をもつ紀伊半島に位置し、ウメ、カキ、ミカン等の果樹をはじめ、タイ、海藻等の水産物、熊野牛等多岐にわたる全国有数の農業資源(アグリリソース)を有しており、これらを基盤とした第一次産業の全産業に対する割合が全国に比して高い状況にある。 また、県立試験研究機関や近畿大学生物理工学部・先端技術総合研究所、和歌山大学システム工学部などでは、これら農業資源に関わる先端的な研究成果や系統的な遺伝資源を蓄積している。
 本事業は、これら豊富な農業資源を対象としたバイオテクノロジーの研究開発に産学官が結集し、遺伝子発現情報解析・分子間相互作用解析・プロテオーム解析等と情報工学技術が融合した生命情報学を「農業資源生命情報学(アグリバイオインフォマティクス)」と位置づけ、その基盤技術の開発を行い、さらに最新の利活用技術を応用することで、「アグリバイオインフォマティクスを高度活用する技術開発」を確立することを目標とするものである。

1)地域COEの構築
 和歌山県では、和歌山バイオ戦略の一環として本事業を実施し、アグリバイオ分野に卓越した科学技術資源を結集して重点的に研究開発を推進するため、地域COEとしての研究開発拠点「和歌山バイオ研究センター(仮称)」を構築する。「和歌山バイオ研究センター(仮称)」は、ほ場、閉鎖系施設、畜舎、水面などフィールドを有する県立試験研究機関、大学などのネットワークの核となって、遺伝子、タンパク質レベルの高次研究開発機能を整備するとともに、微生物資源の開発や微生物の工業的利用技術、環境問題対応技術、機能性食品開発技術、バイオリアクター関連技術など、幅広いライフサイエンス分野を視野に入れ研究開発を推進していく。
 また、それと連携して、産学官ネットワークやスキルバンクの整備等により技術移転システムを構築し推進していく。これにより、和歌山県の地域産業の活性化を目指した農業資源基盤型の新しい産業基盤の形成を図る。

2)新技術・新産業の創出
 本事業ではテーマ1「有用アグリリソースのタンパク質発現解析と制御技術の開発」とテーマ2「有用アグリリソースの高効率生産・利用技術の開発」の2つのテーマを設けている。
 テーマ1では、モデル植物(イネ)と和歌山県基幹農業資源(ウメ、カキ、マダイ、海藻、アコヤガイ、ウシ)の遺伝子・タンパク質情報を解析・利用する定性育種基盤技術の開発のため、根幹となる有用アグリリソースの形質を発現レベルで確実かつ総合的に情報化することに取り組む。
 テーマ2では、有用形質を有する農業資源の高効率生産技術、有用形質操作応用技術の開発のため、種々の要因について遺伝子発現レベルで科学的に解明することにより、新技術の確立を目指す。
 テーマ1とテーマ2は常に相互に連携しながら同時並行的に研究が行われ、技術開発を推進する体制としている。

テーマ1: 有用アグリリソースのタンパク質発現解析と制御技術の開発
1−1 ゲノム情報を利用した遺伝子発現情報解析技術の開発
 全ゲノム解析が終了したアグリリソースのモデル植物として、イネを対象に特定有用形質を支配する遺伝子の機能解析技術を確立する。
1−2 プロテオーム情報を利用したアグリリソースの網羅的キャラクタライズ化技術の開発
 経済性農業資源(ウメ、カキ、マダイ、海藻、アコヤガイ、ウシ)の生物情報を網羅的解析技術により集積し、優良形質を有するアグリリソースの特定改良・選抜手法を確立する。
1−3 網羅的データベース構築のための基盤技術開発
 アグリリソースを対象とした解析により得られた生命情報の分散管理技術を開発する。上記2テーマの遺伝子・タンパク質発現解析から得られた膨大な生物情報をもとに発現タンパク質と表現形質との相関を明確化させる探索システムを開発する。

テーマ2 有用アグリリソースの高効率生産・利用技術の開発
微粒子利用技術の限界を決めることにもなる外場における位置制御技術を確立し、より高精度な材料パターン形成を可能にしようとするものである。また、新材料の生成や微粒子の輸送を、手探りによる開発から脱皮させるために、現象の解析と理論的設計を可能にするシミュレーション技術の開発にも注力している。
2−1 多機能性果樹台木の大量増殖技術の開発
 環境ストレス耐性や樹勢制御の機能を持つウメ、カキの台木を開発する。
2−2 組織培養技術を利用した環境耐性海藻の開発
 磯焼け海域耐性のある大型コンブ目植物の品種改良種を組織培養、フリー配偶体培養技術等により作出し、海域への展開方法を確立する。
2−3 良質真珠の効率的生産技術の開発
 アコヤガイの配偶子管理技術、遺伝子導入技術を確立し、優良アコヤガイの効率的種苗生産技術を構築する。
2−4 遺伝子操作ウシの効率的作製技術開発
 ウシ体細胞や幹細胞における遺伝子操作技術を確立するとともに、遺伝子操作細胞を効率よく個体に発生させる技術を確立する。
2−5 有用アグリリソース/アパタイト複合材料を利用した機能素材応用技術の開発
 アパタイトの優れた生体親和性と動物・植物由来の各種生体関連分子の吸着・保持機能を用い、高機能なインプラント、再生医療用細胞・組織培養足場を開発する。

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