平成18年3月 独立行政法人科学技術振興機構 地域振興事業評価委員会 |
4. | 地域別評価 |
4−2 兵庫県
◆(参考1)事業の目標・概要
高性能で高機能なナノ粒子コンポジット材料を「工業材料」として、安定的かつ収率良く創製するためには、従来の分析評価装置のみでは困難であったナノサイズの粒子の分散、構造解析、表面、界面の状態分析を高精度かつその場(in-situ)観察することが求められるので、ナノメートルサイズでの材料の長周期構造や、密度分布、集合状態、空洞分布等を高精度で評価し、加熱・振動・応力印加等といった外部揺乱条件下でin-situ観察ができる、SPring-8の高輝度放射光が持つ特長を活かした高精度材料分析評価技術を確立し、産業界に提供する。
1)地域COEの構築
SPring-8が有する世界最高性能の放射光高精度評価技術と、地域の産業が有する高性能ナノ粒子コンポジットの材料技術を直結し、兵庫県西部の播磨科学公園都市に国際的なナノ材料の研究開発基盤としての地域COEの構築を目指すとともに、この地域COEの活動を通じて、県下に国際競争力を有するナノ材料産業の振興・集積を図る。 そのため、新兵庫県ビームライン(BL08B2)を整備し、本事業で整備する小角散乱装置に加えて、地域で整備する新規設計になるX線吸収端微細構造解析装置(XAFS)、粉末X線回折装置、高角度分解反射率、微小角入射X線回折機能を具備した多軸回折計装置、イメージング装置等を開発し、既存の兵庫県ビームライン(BL24XU)も含めて放射光利用のための各種高性能装置の整備を図る。 また、事業終了時までに、研究開発機能、産業化支援機能、研究企画機能、研究者養成機能を備えた「ナノテクノロジーセンター(仮称)」の構築を図る。そこでは、高輝度放射光による評価装置のほか、SPM、FE−SEM等の「材料を多角的に観る」様々な手法を一元的に集積し、広く産業界に提供することを目指し、世界的に見てもあまり例がないユニークなセンターとする。 地域としては今後、地域COE構築の取り組みを加速させ、事業終了時までに「ナノテクノロジーセンター(仮称)」構想を実現すべく、前倒しで検討を開始しており、県でもすでに18年度中の施設建設を目指して具体的な取り組みを開始している。
2)新技術・新産業の創出
高輝度放射光の分析・評価技術と材料設計/技術開発を一体化し,開発ターンの劇的な短縮と高歩留まり,省資源型製造技術を実現することにより,国際競争力のある画期的な産業技術を創出し,もって兵庫県の新たな基幹産業としてのナノ粒子コンポジット産業を育成する 本事業により直接創出が期待される新技術の例は以下の通り。 ○ ナノ計測/材料設計/材料開発一体型の革新的開発プロセス ○ ナノ粒子コンポジット材料の分散状態の精密解析技術 ○ ナノ分子膜の分子配列及び膜厚・密度解析技術 ○ 多孔質系材料の構造解析技術 ○ 環境対応型高性能タイヤの製造 ○ 金属系ナノ粒子の工業生産規模にスケールアップ可能な技術 ○ 金属系ナノ粒子の製造・販売−導電材料用途 テ−マ1 ナノ粒子コンポジットの開発
高輝度放射光による小角散乱装置、広角散乱装置、粉末X線回折装置、光電子分光装置などを使用する精密構造解析評価技術を活用して、ナノ粒子の分散、凝集構造、マトリックスとの相互作用、ナノ粒子の界面反応、ナノ粒子界面修飾、ナノ構造、ナノ粒子合成といった要素技術を解明して、高性能・高機能材料を開発する。 1−1 ナノ粒子の分散
次世代・環境対応型高性能タイヤの開発、電気特性を有するナノ粒子コンポジット開発、位相差フィルムの高分子高次構造解析など、有機・無機マトリックスへの有機・無機ナノ粒子あるいは有機材料(ナノドメインなど)等のナノ粒子分散プロセス技術の確立を図る。 1−2 ナノ粒子の界面制御技術の開発
テラビット級ハードディスク対応新潤滑剤の開発、生活環境と地球環境対応高機能内装材の開発、フレキシブル回路基板の開発、表面制御されたナノ粒子を用いた透明コンポジット材料の開発など、ナノ粒子、ナノ分子の表面・界面および構造とナノ粒子の析出を制御することによって、マトリックスとの吸着反応など化学反応性を向上させる界面制御技術の確立を図る。 1−3 ナノ粒子の製造技術の開発
生分解性接着剤軟質タイプの開発、電気配線形成用金属ナノ粒子の量産、超高品質配線用高純度導体の開発など、無機、ナノ金属粒子の形成・構造、有機ナノドメイン、結晶構造の形成・構造を解明し、制御されたナノ粒子あるいはナノ構造を持つ材料の製造技術の確立を図る。 テ−マ2 高輝度放射光によるナノ計測・評価技術の開発
高輝度放射光による小角散乱装置、広角散乱装置、粉末X線回折装置、X線光電子分光装置、X線吸収微細構造解析装置、および汎用の分析評価装置(走査型プローブ顕微鏡、高分解能走査電子顕微鏡、X線回折装置、小角散乱装置など)を使用して、長周期構造、短周期構造、化学結合状態および表面状態などの精密構造解析評価技術を開発する。 2−1 高輝度放射光によるナノ計測・評価技術の開発
ナノ粒子コンポジット材料、ナノ粒子材料の研究開発に必要な分散、凝集構造、界面反応、粒子界面修飾、ナノ構造、ナノ粒子生成などの要素技術の解析、ナノオーダーの膜厚測定などを精密構造解析評価するための、高輝度放射光による評価技術の開発を行う。 2−2 ナノ粒子コンポジットの界面化学状態および物理状態の開発
汎用の分析評価装置(走査型プローブ顕微鏡、高分解能走査電子顕微鏡、実験室系の小角散乱装置、広角散乱装置、粉末X線回折装置など)を用いて、界面化学状態および物理状態評価技術の開発を行う。 2−3 高輝度放射光によるナノ計測・評価装置の開発
ナノ粒子コンポジット材料、ナノ粒子材料の研究開発に必要な分散、凝集構造、界面反応、粒子界面修飾、ナノ構造、ナノ粒子生成などの要素技術、ナノオーダーの膜厚測定などの精密構造解析評価を重点的に進めるためにSpring-8に新しくビームラインを開設し、高小角分解・小角散乱装置、光電子分光装置の開発を行うとともに、地域として設置する粉末X線回折装置、XAFS装置、多軸回折計においてナノ材料の評価が実施できるようにする。 |
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