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地域結集型共同研究事業

平成15年度事業開始地域中間評価報告書

平成18年3月
独立行政法人科学技術振興機構 地域振興事業評価委員会


4. 地域別評価
4−1 京都府
◆(参考1)事業の目標・概要

 京都府では、平成13年に新京都府総合計画を策定し、府南部地域を中心にIT関連の成長産業が集積・発展する新しい産業拠点「京都ITバザール」の形成を新技術・新産業創出の中核的施策に据えている。京都府地域結集型共同研究事業は、このITバザール構想に基づき、IT関連機器の小型化・高性能化の進展に大きなブレークスルーを与える可能性を有する微粒子技術をコア技術に、微粒子研究開発基盤を統合的に構築し、環境融和型IT関連製造技術・計測技術の拠点化を図ることを目指している。

1)地域COEの構築
 本事業のひとつの目標は、微粒子技術に関する地域COEを京都府南部地域に築き上げることである。そして、本事業のフェーズU終了後は、それを母体として「微粒子応用技術研究開発センター(仮称)」を創設し、微粒子研究およびそれらの研究成果の事業化を主導する機関として機能させることである。

2)新技術・新産業の創出
 本事業の最大の目標は、いうまでもなく新技術・新産業の創出である。そのため、「高機能微粒子材料生成過程の研究開発」、「微粒子材料分散輸送制御技術の研究開発」、「微粒子計測・観測技術の研究開発」の3テーマについての研究を実施している。

テ−マ1 高機能微粒子材料生成過程の研究開発
微粒子そのものの生成にとどまらず、微粒子の形態制御、被覆や焼結など、微粒子によって生成される材料の形成プロセスについての研究を行い、電子部品や回路要素の電気特性・機械特性等の改善、小型化軽量化および量産・低コスト化に寄与する技術等の確立を目指している。
1−1 高機能性微粒子粉体の液相中での調製
 新しい機能を発現させるための微粒子材料を調製するため、これまでの粉砕・混合プロセスと違った液相を利用した粉末材料の調製方法を研究開発する。
1−2 液相利用による微粒子生成過程の基礎研究
 微粒子の粒子径とその分布、粒子形状、結晶構造ならびにその表面特性の精緻な制御の可能性が高い液相粒子生成過程での粒子生成機構に関する基礎的研究を展開し、高機能性材料の創製に必要な微粒子生成技術を確立する。

テ−マ2 微粒子材料分散輸送制御技術の研究開発
微粒子利用技術の限界を決めることにもなる外場における位置制御技術を確立し、より高精度な材料パターン形成を可能にしようとするものである。また、新材料の生成や微粒子の輸送を、手探りによる開発から脱皮させるために、現象の解析と理論的設計を可能にするシミュレーション技術の開発にも注力している。
2−1 微粒子集積化技術の基盤研究
 微粒子の配列を適切に操作し、目的の構造を実現するためには粒子を如何に集積・分散させるかの技術と、その技術を実現するための基礎理論が不可欠であるので、粒子がサブミクロンサイズ、ナノサイズとなるような場合を含めて、この基盤部分の研究を行う。
2−2 粉体シミュレーションによる超精細電子写真技術の開発
 2−1の基礎研究のみでは実際の微粒子材料設計とその輸送予測を行うことは困難であるので、計算機による数値計算を行うことにより、計算機上で微粒子の輸送を予測するための研究開発を行うことが、微粒子技術を実用化する上で不可欠である。そこで効率よいシミュレーション技法とそれを開発するに必要な計算モデルを構築する必要がある。
2−3 微粒子材料パターニング・構造化層形成技術の確立
 簡単な場合についての輸送特性が予測できても、実際に微粒子構造体を作成し、全体としての機能を具現化するには実際のパターニングを安価、効率的に行い、構造体を作成する技術を具体化することが重要である。本研究をシミュレーション予測と比較検討しながら進めていくことが、ヘテロ微粒子系の構造化層形成の実現による新しい材料創生に不可欠である。

テ−マ3 微粒子計測・観測技術の研究開発
微粒子生成過程、輸送過程で制御技術等を確立するために、微粒子の持つ物性を正確に把握することが必要不可欠であることから、微粒子の帯電に関する計測技術とX線を主体とした微粒子状態のその場観測技術の確立を目指している。
3−1 微粒子のその場観測技術の研究開発
 微粒子の分散や凝縮などの状態を正確に把握するには、微粒子のサイズの問題からX線領域の光子の利用が不可欠であり、X線を利用した微粒子の輸送状態、分布状態がリアルタイムに観測できれば大幅な研究開発の進展が期待される。新しい微粒子材料形成や輸送の技術革新を起こすために、実現すべき研究開発領域である。
3−2 微粒子の精密状態分析
 微粒子のサイズが小さくなると量子効果により電子状態が変化したり、吸着物の影響が大きくなったりして新しい特性を示す可能性が高く、そのための測定技術が必要となる。高分解能の蛍光X線分析は微粒子の形成過程における状態変化、輸送過程における状態変化を明らかにできる手段であり、微粒子の高度利用に対して不可欠な開発項目である。
3−3 SERSとAFMを利用した微粒子表面状態計測技術の研究開発
 研究領域1、あるいは2の微粒子工学での気体や液体環境の利用は、微粒子表面状態を表面増強ラマン散乱(Surface Enhanced Raman Scattering : SERS)によって計測できると言う可能性を与え、利用価値の高い粉体合成時、輸送時の観測法となる。また、他の計測分野への利用価値もきわめて高い技術であるため、本計測手法の研究開発を行う。

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