近年の情報通信技術・コンピュータ技術の飛躍的な発展は、産業・経済・行政・国民生活などあらゆる分野で大きな変革をもたらし、多様な情報を活用した新しい社会構造を形成しつつある一方で、21世紀の高齢社会においては、高度に情報化された機器あるいは社会システムの恩恵を、すべての人々が等しく享受し、快適な生活を保障されることが重要な課題となっている。
このため岐阜県の地域結集型共同研究事業では、画像処理技術を基礎としてコンピュータを中心とする機械装置にセンシング機能と判断・認識機能を付与して人間及びその周辺環境を理解させる技術「実環境情報処理技術」の研究開発を行い、地域に根ざした新産業の創出と行政における普及、さらには地域COEの構築を目指してきた。
研究テーマの概要は以下のとおりである。
1.頭部領域検出技術の研究
顔の向きに安定な顔検出や個人識別技術、顔画像からの性別・年代の推定技術、及び顔部品を用いた視線検出技術の研究を行う。
・顔画像から個人を識別する技術
・性別、年代を推定する技術
・人の注視方向の検出技術
2.手部領域検出技術の研究
複数背景からの手顔の分離抽出技術や個人に依存しない指シンボルの認識技術、あるいは指差し動作認識の研究を行う。
・高精度な手位置の検出技術
・複数の指シンボルの形状認識
3.画像計測及びモデル生成の研究
全方向ステレオカメラシステムの研究及び距離画像取得手法の確立、また、都市モデルやCADモデルの生成手法の研究を行う。
・全方向ステレオシステム(SOS)の開発および応用技術
・形状モデル生成技術
平成13年度に実施された平成11年度開始地域中間評価では「おおむね順調に進捗している」との評価とともに、「フェーズIIに向けた事業計画の見直し」を求められた。この評価を受けて平成14年度には、「具体的な事業目標の設定」、「目標達成に向けた事業の再編成」、「応用研究開発の活性化」により、テーマの再編を行った。
従来の研究テーマ「頭部領域検出技術の研究」と「手部領域検出技術の研究」を統合して画像から人を認識する技術と位置付け「人間センシング」と改めるとともに、「画像計測及びモデル生成の研究」における形状モデル生成を見直し、この事業で開発したSOSを中心とした研究に絞り「環境センシング」と改めた。また、この2つのテーマを融合した新たな応用研究開発を目指す「人間と環境インタラクション」として研究を進めた。
フェーズII以降の研究テーマと主たる研究成果例は、以下のとおりである。
1.人間センシング
肌色検出を用いて手顔を検出・分離するとともに、顔特徴点・顔部品・「しわ」等の抽出をして顔情報モデル化し、これを用いた個人識別・年齢性別推定・視線方向推定等の研究を行う。
【研究成果例】
・顔画像検索機能付き次世代画像ファイリングソフト及び動画像からの人物/シーン検索機能の試作
・顔画像データベースの構築
・二方向顔画像認識システムを用いた個人識別システムの開発研究
・ICカードと本人の個人的特徴(顔)を組み合わせたネットワークシステムの構築
・広告提示型自動マーケティング情報システムの構築
・手サインによるAV機器の制御を可能とするデモシステムの構築
2.環境センシング
マルチカメラシステムの濃淡画像及び距離画像から物体及び人物を抽出して環境変化の認識を行う。また、幾何学的特徴に基づき、抽出物体の認識と環境マップの生成を行う。
【研究成果例】
・SOSの製作開発、商品化、小型化
・SOSによる取得データのマルチユーザへの配信システムの構築
・新しい背景差分法PRFを用いた全方向サーベイランスシステムの構築
3.人間と環境のインタラクション
マルチカメラを用いて人物と環境を検出する研究を行う。また、人物の行動を認識することにより、その人が意図する対象物を理解し、人物と環境とのインタラクションをアシストするための研究を行う。
【研究成果例】
・自由動作シナリオによるデータベースの構築・複数人物追跡手法、顔検出手法、顔部品検出手法、性別・年代推定手法の精度向上
・高齢者・障害者等の介護支援を目的としたジェスチャによる複数家電制御システムの試作
|