2)新技術・新産業の創出
高速分子進化による高機能バイオ分子の創出により創薬等の新たな医療シーズ及び環境浄化シーズの創出等の研究・開発のために必要とする技術を示すと以下のとおりである。
・高速分子進化のための基盤技術の開発
・相同組換えによる高速ゲノム進化法の開発
・高速分子進化の福祉応用:生理的病理的に重要な蛋白質の解析と創出
・高速分子進化の福祉応用:環境浄化能等のある微生物・植物の分子育種
これらを実現するため、4つの研究グループからなる研究体制で、グループ間の連携を取りながら事業を推進していく。
4つの研究グループの研究開発テーマ及び概要は以下のとおりである。
高速分子進化のための基盤技術の開発
生体高分子1分子を対象として高速進化を行う進化分子工学は、進化リアクタープロセスの設計原理と運転原理を解明し応用するものであり、次のような要素技術を有機的に結合することによって実現する。
○増幅技術(本事業では既存技術を用いる)
○高スループット機能評価技術
○分子多様性作出技術
○遺伝子型表現型対応付け技術
○配列空間適応歩行技術
○進化リアクター実装化技術
これらにはそれぞれ、ある程度の進歩を遂げた既存技術があり、新規核酸・新規タンパク質の創出に大きな成果を挙げている。本テーマでは、まずこれらの既存技術を整備し、付加価値の高いターゲット分子の機能改変と創出を行う。同時に、創出効率と汎用性を上げるために、それぞれ要素技術を改良する。
相同組換えによる高速ゲノム進化法の開発
有性生殖は遺伝情報を混合する過程であり進化の重要な機構であることがわかっている。その原理を人工的に拡大して、ゲノムを高速に混ぜ合わせて進化させる方法を開発する。これを免疫抗体の創出を例として実現し、診断薬、治療薬、バイオセンサー、産業用触媒の創出への応用を目指す。
-1高速分子進化の福祉応用:生理的病理的に重要な蛋白質の解析と創出
高速分子進化技術を用いて、がん・神経・アレルギー疾患などの難病の診断薬、治療薬のシードの開発をめざす。また、上記の難病に関係するタンパク質を網羅的に解析し、キーとなる分子を同定する。これら同定されたものをターゲットとする機能分子を次のフェーズで進化的に創出する。
-2高速分子進化の福祉応用:環境浄化能等のある微生物・植物の分子育種
環境耐性微生物の特異的性質にゲノムシャフリング等の高速分子進化的手法を取り入れることにより、有害化学物質の無毒化・浄化の働きがある、より高機能、高選択性、高効率的な微生物の分子育種を行う。また、浄化槽や生ゴミ処理槽における微生物生態を解明し、微生物群集を群集シャフリングなどにより高速に進化させる。また、病虫害耐性を持ったイネの分子マーカーを用いた高速育種を行う。同時に、これらの高速進化過程をゲノムレベルでモニターするための簡易ゲノム解析装置を開発する。
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