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地域結集型共同研究事業

平成14年度事業開始地域中間評価報告書



平成17年3月
独立行政法人科学技術振興機構 地域振興事業評価委員会


4. 地域別評価
4−1 埼玉県
◆(参考1)事業の目標・概要
 埼玉県では、平成10年2月に策定した「埼玉県科学技術基本計画」および平成14年度にスタートした「彩の国5か年計画21」において、産学官の連携や実用的な新技術の開発などを通じて、地域産業の活性化を図ることとしている。
 こうした中で、今後成長が見込まれる産業分野としてバイオ分野に目が向けられ、中でも、高速分子進化技術が、県の新産業の創出に貢献し大きなポテンシャルを持つ技術として注目された。埼玉大学には、世界的に見ても進化分子工学のパイオニアとしての実績がある。また、埼玉県には同大学のほかにも、組換えの分子生物学で世界をリードする理化学研究所や、最先端バイオ技術を研究開発する東洋大学、がん医療の専門機関である県立がんセンター、バイオ関連機器の企業などがある。これらの大学、研究機関、企業が連携して、本事業は、高機能の分子を目の前で進化させて創り出すという新しいバイオテクノロジーを推進し、医療分野と環境分野への応用を目指す。

1)地域COEの構築
 本事業の目的である地域COEの形成については、フェーズI ・IIにおいて、新産業拠点・SKIPシティに立地する埼玉県産業技術総合センター内にコア研究室を設置し、共同研究機関として参加している埼玉大学などの大学や理化学研究所などの研究機関とのネットワークを形成・強化し、地域産業の参画を図りながらネットワーク型地域COEの構築を進める。本事業終了後のフェーズIIIにおいて、この成果をさらに継続発展させ、研究と事業化を推進するための中核機関(「埼玉バイオ推進中核機関」)の体制づくりを進めることとしている。埼玉バイオ推進中核機関のコア研究室については、県の行政計画のなかに盛り込むプロジェクト計画の検討の中で、現在の研究室の存続、移転、又は新たな研究室の設置について検討し、その実現までの間は現コア研究室を存続させる。さらに、大学や研究機関の研究室のうち、フェーズIIIにおいて研究推進のコアとなる研究室の確保に向けた調整を進め、埼玉バイオ推進中核機関のコア研究室とともにネットワーク型地域COEの研究推進母体の形成を図ることとする。

2)新技術・新産業の創出
 高速分子進化による高機能バイオ分子の創出により創薬等の新たな医療シーズ及び環境浄化シーズの創出等の研究・開発のために必要とする技術を示すと以下のとおりである。
・高速分子進化のための基盤技術の開発
・相同組換えによる高速ゲノム進化法の開発
・高速分子進化の福祉応用:生理的病理的に重要な蛋白質の解析と創出
・高速分子進化の福祉応用:環境浄化能等のある微生物・植物の分子育種
 これらを実現するため、4つの研究グループからなる研究体制で、グループ間の連携を取りながら事業を推進していく。
 4つの研究グループの研究開発テーマ及び概要は以下のとおりである。

1 高速分子進化のための基盤技術の開発
 生体高分子1分子を対象として高速進化を行う進化分子工学は、進化リアクタープロセスの設計原理と運転原理を解明し応用するものであり、次のような要素技術を有機的に結合することによって実現する。
○増幅技術(本事業では既存技術を用いる)
○高スループット機能評価技術
○分子多様性作出技術
○遺伝子型表現型対応付け技術
○配列空間適応歩行技術
○進化リアクター実装化技術
 これらにはそれぞれ、ある程度の進歩を遂げた既存技術があり、新規核酸・新規タンパク質の創出に大きな成果を挙げている。本テーマでは、まずこれらの既存技術を整備し、付加価値の高いターゲット分子の機能改変と創出を行う。同時に、創出効率と汎用性を上げるために、それぞれ要素技術を改良する。

2 相同組換えによる高速ゲノム進化法の開発
 有性生殖は遺伝情報を混合する過程であり進化の重要な機構であることがわかっている。その原理を人工的に拡大して、ゲノムを高速に混ぜ合わせて進化させる方法を開発する。これを免疫抗体の創出を例として実現し、診断薬、治療薬、バイオセンサー、産業用触媒の創出への応用を目指す。

3 -1高速分子進化の福祉応用:生理的病理的に重要な蛋白質の解析と創出
 高速分子進化技術を用いて、がん・神経・アレルギー疾患などの難病の診断薬、治療薬のシードの開発をめざす。また、上記の難病に関係するタンパク質を網羅的に解析し、キーとなる分子を同定する。これら同定されたものをターゲットとする機能分子を次のフェーズで進化的に創出する。

3 -2高速分子進化の福祉応用:環境浄化能等のある微生物・植物の分子育種
 環境耐性微生物の特異的性質にゲノムシャフリング等の高速分子進化的手法を取り入れることにより、有害化学物質の無毒化・浄化の働きがある、より高機能、高選択性、高効率的な微生物の分子育種を行う。また、浄化槽や生ゴミ処理槽における微生物生態を解明し、微生物群集を群集シャフリングなどにより高速に進化させる。また、病虫害耐性を持ったイネの分子マーカーを用いた高速育種を行う。同時に、これらの高速進化過程をゲノムレベルでモニターするための簡易ゲノム解析装置を開発する。

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