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地域結集型共同研究事業

平成15年度事業終了地域事後評価報告書



平成16年3月
独立行政法人科学技術振興機構 地域振興事業評価委員会

4. 地域別評価
4−1 北海道
◆(参考1)事業の目標・概要
 北海道には、北海道大学などの教育研究機関を中心に機能性を持つ糖関連物質のバイオ技術などの研究成果が集積されており、加えて、食の生体調節におよぼすメカニズムの解明に取り組んでいる。また、生体調節機能の解明に不可欠な病態モデル動物を用いた評価系をはじめ、天然有機化合物の微量分析技術に関する研究実績などがあり、知的ストックが豊富である。また、北海道は、農林水産資源に恵まれており、これらを原料とする食品産業の実績があるが、今後は高付加価値化による生産性の向上や食品の安全性が求められており、食品産業においては健康や信頼性に視点をおいた「ものづくり」が必要になってきている。
 以上のような事柄を背景として、本事業の重点研究領域である「食」と「健康」の二つの領域の密接な関連性を科学的に解明するアッセイ基盤技術の確立と北方系生物資源を活用したプライマリ−ケア食品等の創生を事業の目的としている。
  研究テーマの概要は以下のとおりである。

1. プロビオティック・プレビオティック食素材の開発・評価
 乳酸菌による胆汁酸の蓄積と排出メカニズムを利用し、プロビオティック機能を有する腸内細菌とこれを特異的に成長させるオリゴ糖の複合素材開発を行う。

2. ミネラル吸収機構とミネラル吸収促進食素材の開発
 Caの吸収促進へのオリゴ糖の関与について、他のミネラルを含めた吸収機構の解明進め、ミネラル吸収促進食素材開発を行う。

3. 食品タンパク質の受容機構と高機能タンパク質の開発
 消化管におけるタンパク質受容体の存在について、消化管ホルモン分泌制御に特異作用を示す高機能タンパク質を開発する。

4. 循環器系疾患等に対する道産食素材の評価と開発
 道産のハーブ類、海藻などの水産物の消化酵素阻害剤抗酸化成分の機能性について、培養細胞系および動物実験によって評価し、血管系疾患の予防効果および免疫性を高める機能性食品の開発を行う。

 フェーズIにおいては、可能性探求を含め比較的多数の研究テーマを設定したが、中間評価において、サイエンス指向型から産業化指向型への変更が必要であるとの指摘された。フェーズIIでは、研究の進展が著しく企業への技術移転の可能性が大きい課題に重点化し、中課題数を12課題から5課題に整理統合した。最終的には下記のような課題の研究開発を実施し、フェーズIIにおける目標を概ね達成した。
 フェーズIIまでの主な成果と今後の展開については、以下のとおりである。

1. プロビオティック・プレビオティック食素材の開発・評価
 腸内細菌であるビフィズス菌が胆汁酸を取り込むことを発見した。さらに、この菌のエネルギ−源となる最適なオリゴ糖は、(株)日本甜菜製糖が生産しているラフィノ−スであることも見い出した。このシンバイオティック食素材の機能性は、血中コレステロ−ルの低減および二次胆汁酸の生成抑制(大腸ガン予防)であることが実験室レベルおよび小動物実験で確認された。今後の展開は関心のある企業との共同研究を通じてヒト介入試験を行い、最終的に特定保健用食品としての販売を目指す予定である。

2. ミネラル吸収機構とミネラル吸収促進食素材の開発
 (株)日本甜菜製糖で開発した新規のフラクトオリゴ糖(DFAIII、IV)は、他のフラクトオリゴ糖に比較してミネラル吸収を促進する効果の高いとの知見を得た。このうちDFAIIIは、根菜類に属するチコリに含まれる多糖類イヌリンを原料としている。チコリは北海道農業で重要寒冷地作物の甜菜と全く同様の栽培により生産できることが立証されている。DFAIIIの実験室レベルおよび小動物実験系で研究を行った結果、小腸から大腸に至る消化管全域でカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラルの吸収率を高めることが判明するとともに、カルシウムの場合は、骨の密度や強度を増進することについても判明した。この件に関しては共同研究企業である(株)ファンケルでヒト介入試験を行い、1年にわたる長期投与を実施すると共に摂食による腸内細菌叢の変化のモニタリングから有害な細菌の増殖が全くなことを確かめたので、食品としての安全性に問題はないことが判明した。今後の展開は特定保健用食品の取得に向けて資料を準備中である。

3. 食品タンパク質の受容機構と高機能タンパク質の開発
 主な成果:大豆タンパク質が酵素分解を受けて消化管で吸収される時、ある種のペプチドが消化管上皮粘膜上に存在する受容体によって特異的に認識され、食欲抑制効果のある消化管ホルモンの分泌を活性化することを見い出した。さらに、このペプチドのアミノ酸配列を解析したところアミノ酸の一つであるアルギニンが関与していることも判明した。今後の展開は国の事業である「大学等ベンチャ−創出支援事業」に研究を移行し、企業との共同研究を通じて技術移転を目指すことにしている。

4. 循環器系疾患等に対する道産食素材の評価と開発
 (1)タマネギに含まれる硫黄化合物には血小板凝集を阻害する機能および学習記憶障害を抑制する機能のあることが、実験室レベルおよび動物実験系で確認された。今後の展開はベンチャ−企業に技術移転され、加工方法の開発を行って商品化を展開中である。

 (2)北海道で量産可能なハ−ブの機能性探索の結果、オレガノ、ヒソップに抗酸化機能のある新規の物質を確認し、動物実験などにより、オレガノには脂質改善効果および消臭効果が、ヒソップには血糖値上昇抑制効果のあることが判明した。今後の展開は地域産業への技術移転を地域研究開発促進拠点支援事業(RSP事業)と連携して推進している。

 (3)リラクゼ−ション効果を示すと言われるカモミ−ルについて、有効成分の探索を脳のα波、抹消皮膚温度、心拍数など新たな評価系で解析した。今後の展開はカモミ−ル抽出エキスは地域企業に技術移転され、ゼリ−などの食素材として商品化を展開中である。

 (4)水産物としては廃棄物になっている養殖コンブの仮根に注目して機能性成分の探索を行った結果、カリなどのミネラルが豊富であるほか、植物ステロ−ルおよび多糖類の一種であるフコイダンが通常のコンブより多く含まれていることが判明した。今後の展開は、抗動脈硬化、抗腫瘍効果が認められており、共同研究を行ってきた企業において商品化を進めている

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This page updated on April 14, 2004

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