1*事業進捗状況及び今後の見通し
循環型環境都市形成の基盤となる幅広い基盤技術を対象とした極めて野心的な研究事業として取組まれている。
共同研究体制は、地域の大学、企業、行政さらにはNGOも加わり、それぞれの役割を最大限生かすシステムになるよう工夫されている。ワーキング・グループ間の連携を高める研究リーダー会議や研究統括を支える特別会議、さらには全員合宿討議も行い、問題意識と目標の共有化を図っている。
共同研究に直接参加している企業は少ないが、NGO、環境パートナーシップCLUBの304社が地域物質・エネルギーフロー解析のためのデータを提供するとか、研究成果普及のための研究会に多くの中小企業が関心を持って参加する等、地場産業との連携がある。
都市部における循環型社会の構築の可能性を、技術的側面と地理的側面を総合してシステム・デザインを目指すという方向性は十分に評価出来る。要素技術の開発を目的にする第1〜4WGの成果を、都市部の循環システムの構築という全体の目的に結びつける今後の努力に期待したい。
|
2*研究開発進捗状況及び今後の見通し
(総論)
研究者と研究者の興味と好奇心がぶつかり合って、予想を越えたブレークスルーを生むために、広範囲な基礎的検討はここまでとし、今後は的を絞った研究に限る。そのために、これまでの検討の筋を生かし、第5、6WGにおいては、愛知万博における「循環型環境都市モデル」を構想する中で、上流側の物流、都市廃棄物、事業廃棄物を含む全体の物質循環システムの現実的な構想を計画するのがよい。研究領域のスクラップ・アンド・ビルトも出来る。
第6WGが、個々の研究者の枠組みを越えた、高い視点からの環境観を得るためには、第5WGのシミュレーション評価が、技術に偏ることなく、技術を社会に導入した時のコストパーフォーマンスを含め、社会的、経済的意味をハッキリさせることは必要である。第5WGは、第6WGと第1〜4WGとのインターフェースの役割を果すことが大いに期待される。
研究の的を絞り、研究者と研究者の興味と好奇心のぶつかり合いを促す為には、3ヶ所に分散したコア研究室は1ヶ所にまとめ、30代、40代の一線の研究者が新たに参加することが必要である。
|
(サブテーマごとの留意事項)
愛知万博を出口とした場合を、以下で考える。
サブテーマ名 |
留 意 事 項 |
(1) ガス化WG |
・10年以上先の、燃料電池の存在が前提になっている。現にプラスチック廃棄物の2段階ガス化など商業プラントの完成している現状ではあまり意味を持たず、終結してよい。60〜80℃の排熱利用の研究は残しても良い。
・万博では、含塩素プラスチックは全く導入しない、利用するならPETに限る、あるいはプラスチックは消耗品として利用しない等の検討が必要。 |
(2) 廃水WG |
・廃水の高度処理、循環再利用技術は、生ゴミ回収手段としてディスポーザー利用システムを完成させるのに利用されることが必要。
・工業用水のボイラー用純水化への利用は、本事業のテーマではない。 |
(3) 安定化WG |
・無機廃棄物の水熱合成再資源化は、路盤材への応用より、INAXの技術で構造を再設計して、万博用の便器を試作するような実用化を目指す必要がある。そして、万博期間中、実際に使って見せる。
・一般的な有害物質の溶出基準など、評価手法の検討は本事業の範囲外である。
・PVCを燃焼させた時の塩素成分の固定等は、学会発表には無くても、大手企業では既に把握されているで、地域で社内データを出してもらえばよい。 |
(4) 里山WG |
・里山ダイナミックス観測システムの基本的な整備が着々と進んでいる。具体的なフィールドにおける詳細で豊富なデータの蓄積が期待される。
・単なる森の研究に陥らないように、文脈作りに気をつけて、都市と里山の共生、共存の意味付けを体系的に行うことが必要。
・里山の管理手法に至るまでのプロセスを明確にする必要がある。 |
(5) シミュレーションWG |
・再資源化技術検索システムはリサイクリングのクリアリング・ハウスとして既に活用され、実績を上げている。
・結集型共同研究事業の全体的連携の中心としての役割を担う意識が必要。
・万博に絞って、モデル循環都市としての循環像の全体設計を定量的に行う時に、中心になる必要がある。 |
(6) 第6WG |
・万博のゴミは処理するという考え方ではなく、徹底的な削減という発想で構想することが重要で、その中でいくつかの研究テーマは削除できる。
・ゴミゼロの発想が可能な専門家の参加も必要となろう。 |
|
3*成果移転に向けた活動状況と今後の見通し
Phase IIにおける、今後の課題と考えられる。研究会を通じて、研究成果を、地元中小企業が利用できる取組みは期待出来る。
新技術エージェントの活動手法、状況は満足できるが、なにぶん2名では、人手不足を否めない。RSP事業の科学技術コーディネータや、公設試験研究機関の職員を巻き込んだ支援体制も必要であろう。
第5WGのシミュレーション評価は、技術の社会的、経済的意味を説明するので、環境技術のビジネスで、マーケティングに使える手法の開発につながる。
|
4*都道府県等の支援状況及び今後の見通し
県、企業とも大学と一体となって極めて積極的である。コア研究室の整備、科学技術交流財団に地域結集推進部を新設し、事務局スタッフ3名を増員している。
都市、里山と広範囲にいろいろと実績をあげている。愛知県科学技術推進大綱、名古屋市の「名古屋新世紀計画2010」いずれにも、環境分野が位置づけられており、県、市いずれも本事業を高く評価し、成果を期待している。
今までは地味な影響と思えるが、企業の環境調和型への転換や環境産業の創造、県、市の施策、2005年の国際博覧会など波及効果は大きい。
|
5*その他
2005年の愛知万博で本事業の成果を公開することが必要である。 |