評価一覧評価説明報告書 > 地域ごとの事業展開および評価

地域研究開発促進拠点支援(RSP)事業
(ネットワーク構築型)


平成12年度終了地域事後評価報告書

平成14年2月
科学技術振興事業団地域振興事業評価委員会

4. 地域ごとの事業展開および評価
(1) 群馬県
拠点機関 群馬県工業試験場
科学技術コーディネータ 青木 三策
事業実施期間 平成9~12年度
1*研究交流ネットワークの形成状況
 ネットワークは比較的形成されている。県の努力は評価される。多数の会社への訪問、大学におけるシーズの発掘の両面で、ネットワークを構築する努力がなされている。ネットワークの基本部分は形成されているようだが、十分とは言えず、今後も引き続いて取り組む必要がある。
 ネットワーク形成において、科学技術コーディネータの活動に積極性が見られず、通り一遍のことをこなしただけとも言える。群馬県工業試験場の外に展開する研究人材のネットワークがよく見えない。
 金融機関およびベンチャーキャピタルの参加が弱い。
2*大学等のシーズの発掘・評価体制および地域ニーズの調査・収集体制
 調査はかなりなされている。
 元々、製造業の基盤が強い地域であり、もう少し多方面の技術シーズを期待したい。
 コーディネータが地場企業に強くない点に弱点がある。地元中小企業のニーズが必ずしも充分に捕捉されているとは云えない。また研究シーズの不足も目立つ。機械・金属、電機以外の分野、例えば食品・バイオ分野などにもまだシーズはある筈で、目配りが少々足りないのではないかと思われる。
 大学等の情報が十分とは言えない。ニーズをいかに大学にフィードバックするかはRSP事業のキーポイントで、“群馬方式”が特別なものとは言えない。
 大学のネットワーク作りの進展状況と、今後の具体的なイメージが不明確である。
県の研究機関は、組織化されているが、大学については若干弱く、十分とは言えない。
3*事業の支援体制
 県主導で、支援体制が取られているが、更に支援は必要である。コーディネータ個人の人脈に頼りすぎている。資金的援助についてあまり具体策が見られない。
 平成15年発足の産業技術センターでは新たな試みがなされるのか曖昧で、遅いとも言える。製造業の集積が多いだけに、県のリーダーシップが問われている。独自の仕組みを開発すべきとも言える。
 今後に取組む、重点5分野の中で、具体的展開が不明確な分野が多い。特に情報・通信分野における計画の具体性に欠ける。
 大学との連携はもっと密にすべきであろう。TLO設立に向けた取組みは、やや遅れていると言える。
4*波及効果
 地域の持つ多様な産業基盤、科学技術基盤を考えると、現在までの成果はやや分野的偏りがあるように思われ、インパクトと範囲の両面でやや物足りないが、今後は、取り組み分野を広げかつ広域視野ということでそこに期待したい。今からの課題選定は適切で、効果が期待できる。東洋大学の生物系には期待するところが大きい。
 マイクロ成形加工、モレキュラーマーカーなどの産業化は容易ではないが、取組む価値は認められる。
 具体的な姿は見えにくい。さらに群馬県の特徴がほしい。そこに活気を求めたい。首都圏に近接しており、地域の特色を出しにくいかもしれないが、地域としての特徴をどのように発揮できるかが課題となる。
 シーズとなる技術には重要かつ期待されるものがあるのに、未だシーズの数が少ないという印象を受ける。
5*総合評価
 これまでにない新しい研究交流ネットワークの開発を試みて欲しかった。工業試験場で扱う技術分野以外の研究シーズ、企業ニーズへの展開が見えない。
 課題選定に、総花的印象が否めず、地域の特色が見えない。地域の特性の把握に、明確さを欠くとも言える。
 コーディネートには、地域産業の特色に根ざした、独創性を生み出すための目配りをお願いしたい。
 農業分野に工学的手法の導入を図る取組みは、今後に期待したい。
(2) 三重県
拠点機関 財団法人三重県産業支援センター
科学技術コーディネータ 野田 宏行
事業実施期間 平成9~12年度
1*研究交流ネットワークの形成状況
 5つの研究企画プロジェクトと、みえ新産業創造・交流会の10専門部会を合わせた、計15の研究会を設置したり、大学等研究者と企業技術者に出会いの場を提供するため「産学官連携シーズ技術交流会」を定期的に開催するなど、系統的なネットワークの基盤づくりが行われた。また、6つあった公設試を1本化したことにより、振興センター、支援センターそして三重大学等と、研究交流ネットワークが効率的に形成されている。さらに、約2,400社の企業ニーズを発掘するなどの精力的な企業訪問等を通して、広範なネットワークが形成されつつある。
2*大学等のシーズの発掘・評価体制および地域ニーズの調査・収集体制
 シーズ発掘、ニーズ調査共に数量的な面では充分な情報収集が行われてきた。シーズとニーズのマッチングについてのこれまでの努力は評価できるが、収集量が多すぎて少々雑にも見受けられるため、今後は効果的なマッチングが課題と思われる。また、三重大学のみならず、産業界からの技術シーズ発掘にも、もっと注力してよいと思われる。平成12年度より、県民ニーズや地域課題の情報収集・把握を行うとともに、科学技術に関する施策提言を得るための組織として「みえサイエンスアカデミー」が設置されているが、今後この活用が鍵となるように思われる。
3*事業の支援体制
 県の公設試である科技振興センターから技術系職員をサブコーディネータとして5名出向させるなど、支援体制がよく整備されていて評価できる。三重県産業支援センターはベンチャー関連担当も充実しており、強力な支援体制となっている。
4*波及効果
 ユーザーニーズを取り入れる努力は評価できる。名古屋圏のマーケットにも近接しており、相応の波及効果が期待される。
5*総合評価
 いろいろと取り組んでいるが、それだけに、シーズ、ニーズの特徴・問題点や、何をやりたいのかといったことがはっきりしない様にも見受けられるため、これから焦点を絞っていく必要があるように思われる。三重県地域研究開発促進拠点支援事業(ネットワーク構築型)の成果は、その多くの部分において野田コーディネータの力量に依存しており、今後、ノウハウやヒューマンネットワークの継承が課題と思われる。
 みえサイエンス・アカデミーで行っている、インターネットで一般市民から科学技術政策等に対する意見を集めるなどの、産学官に加えて「民」を活用する手法はおもしろい。産学官民連携活性化システムの開発に取り込もうとしていることがうかがえる。
 全体として良く整備されたネットワーク体制・支援体制を作っている。これを基に、さらに発展することを期待する。産業の育成・活性化が今後の課題と思われる。
(3) 長崎県
拠点機関 財団法人長崎県産業振興財団
科学技術コーディネータ 平山 和次
事業実施期間 平成9~12年度
1*研究交流ネットワークの形成状況
 RSP事業では、「地域集積技術の高度に関する研究会」など県内の共同研究の主軸となる6研究会により、研究者と企業による人的ネットワークの形成に努めた。
 また、長崎県独自で推進している長崎県技術開発研究委託事業などの共同研究の助成や、(財)長崎県産業振興財団における開発から事業家までの一貫した支援政策などを通じて、共同研究を実践する場による人的ネットワークをより強固なものとしている。
 さらに、平成12年5月には、長崎大学地域共同研究センター内と(財)長崎県産業振興財団に産学官連携支援室を開設すると共に、コーディネータを配置することで、産学官の連携強化に寄与している。
2*大学等のシーズの発掘・評価体制および地域ニーズの調査・収集体制
 長崎県の重点技術として、(1) 新素材・新エネルギー分野、(2) 海洋・環境分野、バイオテクノロジー分野、(4) 医療・福祉分野、(5) IT(情報技術)分野 の各領域を設定し、産として三菱重工など、学として長崎大学など、官として工業技術センターなどの各シーズ源に対して科学技術コーディネータを中心として産学連携支援室のコーディネータ(4人)を含めたチームの活用により各領域を補完しつつ、ポテンシャルや研究内容の調査を行うと共に、研究シーズの事業化・実用化を検討する体制をとっている。
3*事業の支援体制
 長崎県科学技術振興ビジョンや長崎県長期総合計画などの科学技術振興に対する基本的な取組に沿って、長崎県科学技術振興会議による戦略的な方策の討議や、県内の公設試の科学技術関連や(財)長崎県産業振興財団については商工労働部に一括担当させることで、産学官連携の総合的な対応を可能としている。
 また、コーディネート機能を重要視しており、関連各部署の人員強化や研究成果展開施策や共同研究事業の拡充を実施している。
4*波及効果
 本事業の推進により、人的ネットワークがようやく構築された段階にあり、実質的成果を求める段階にシフトするべく各種の取組を開始しているところである。また、県の産業振興施策を動員するなどの支援により、今後大学等の研究成果を県内の産業界に機会がこれまで以上に増加し、企業技術化、産業技術化につなげることが期待される。
5*総合評価
 従来の重厚長大産業に大きく依存してきたため、地域経済が低迷しており、産業の活性化が求められていることから、県としても従来体制からの脱却と、長崎県に特徴的で独自の産業分野への研究開発を大きく推進していると同時に、その取組に関する支援にも力を注いでいる。本事業の成果である、構築されつつある人的ネットワークと、発掘された研究シーズの活用が期待されるが、県内に有力な企業が少ないのが課題である。
(4) 熊本県
拠点機関 (財)熊本テクノポリス財団
(H13.4より (財)くまもとテクノ産業財団)
科学技術コーディネータ 草野 民三
事業実施期間 平成9~12年度
1*研究交流ネットワークの形成状況
 従来からの研究会活動の実績を基礎として、比較的若いコーディネーターの精力的な取り組みと組織的支援体制により、よく配慮された重層的なネットワークが形成されつつある。
 具体的な研究活動を基礎においている点、異分野の融合を重視している点なども評価できる。
2*大学等のシーズの発掘・評価体制および地域ニーズの調査・収集体制
 地域の豊富なシーズが発掘されつつあり、環境・バイオ等地域の独自性も発揮されているが、著名な研究者を育てるばかりでなく、深耕を心がけて進めることが大事である。また、シーズを探し出すだけでなく、シーズ側にインセンティブやフィードバックを与えてさらに活性化させる仕組みも開発してほしい。
 また、収集したシーズはデータベースに収録されているというが、それを多方面の人が自由にアクセスして、異業種で技術が利用されるような活用が生まれれば素晴らしい。
3*事業の支援体制
 科学技術コーディネータの人選のバランスもよく考えられており、県として研究会活動を育ててきた実績や、電応研に代表される組織的支援体制の充実を考え合わせると、今後の展開が期待される。
 一方、コーディネート活動は本質的に個人的ネットワークに依存する面があることから、組織としてこの資産を継承する仕組みは重要である。
4*波及効果
 いずれも大きな波及効果の見込まれる5分野を重要領域に設定してあるが、ある程度軽重をつけて進めることも必要である。これからの科学技術の方向と地域の特性を考えると、バイオ・メディカル方面での期待が大きい。
 半導体分野においては、地域結集型共同研究事業との区別と積極的利用を考え、全九州半導体技術フォーラム等との相乗作用が生まれるように進められたい。
5*総合評価
 豊富なシーズからベンチャー創成へという一定の流れの形成が、ある程度見込める段階にあると判断できる。
 これまでの実績と今後の計画を見ると、財団のコーディネート能力・育成能力として、最終的には県独自で事業支援体制を運営するべきレベルに達すると思われる。県としての支援をさらに強化していってほしい。
(5) 石川県
拠点機関 財団法人石川県産業創出支援機構
科学技術コーディネータ 石田 輝男
事業実施期間 平成9~12年度
1*研究会の開催(実績と今後の予定)
 概ね月1回の研究会が開催されている。 テーマの分野や講師に偏りがあるようにも見受けられるが、活発に活動していることがうかがえる。一方、新技術創出研究会と北陸共同研究交流会の二本立てで毎年2回ずつ計8回行われているが、これは単にRSP事業のPRに終わっており研究シーズのPRとは言えないものの、地域における協力体制の強化など所期の成果を上げている。
 県内企業に対して、県外まで手を広げて大学の先生方と出会わせるやり方が面白い。相互理解を主眼に置いたきめの細かい研究会を数多く開催し、コミュニケーションづくりに十分寄与している。こういったコーディネートのノウハウを後にどう残すかが課題となるであろう。セミナーを開催することによる社内コーディネータの育成や、研究交流を深めようとする雰囲気の醸成についての努力と成果は大きい。
2*要素技術の調査(実績と今後の予定)
 県内の大学や企業に対するアンケート調査や面接調査により一応の把握はなされている。2年間で発送したアンケートが2,000件以上ということで良く努力しているが、アンケートの回収率が低いのは考えるべきであろう。郵送調査だけでは不十分で、さらなる工夫が必要である。また、企業や研究者のホームページを充実するよう依頼することも重要と思われる。
 事業開始当初、調査方法に手間取ったとのことだが、それを教訓に後年度は効率よく調査を進めることができている。しかし、同じ様なテーマや研究者が目立ち、県独自の要素技術の発掘がほとんど見あたらないため、調査においては更にコーディネータの指導性が要求されよう。ネットワーク及びデータベースの構築は成果があったと言えるが、これまで情報発信はもっぱらFAXで行っていたとのことであり、今後は電子メール等による研究交流ネットワークのIT化も課題となろう。
3*可能性試験(実績と今後の予定)
 金沢大、北陸先端大、金沢工大等のシーズについて約40件の可能性試験が実施されたものの、県独自のものや県として重点課題となるような試験があまり目立たないように見受けられる。将来県として何を伸ばすべきかを更に考える必要があると思われる。「プラズマ利用技術の開発」等は、産業への貢献までにはまだ道筋のみえぬ面もあるが、基礎研究としては意義が大きく、また県の企業が試験を実施した点は評価できる。
 大型プロジェクトへの発展、製品化・商品化まで展開しているものが見られる点は評価できる。今後のフォローアップが期待される。
4*説明会の開催(実績と今後の予定)
 毎年度1回ずつ新技術フォーラムが開催されているが、参加者がやや少ない印象があり、インターネットの活用等、引き続き同フォーラムの宣伝活動が必要と思われる。一方、新技術フォーラム以外に産学官交流ゼミナールや可能性試験結果普及講座といった催しを頻繁に行っているが、これらの催しがどのような成果を上げているかよく分からない。企業あっせんのための技術加工については、産業側から見てシーズの掘り起こしまで至っているかが課題と思われる。
5*総合評価
 企業に移行された技術が数例出ており、充分な成果と考えられる。地元の大学と企業の連携促進に効果があったということであろう。また、県の支援体制も整ってきた。ただ、産学官の情報ネットワークが未だにファクシミリ通信網のみで構築されていることは疑問であり、今後の活用のためにはディジタルネットワーク化が不可欠であろう。
 これまでの活動実績については、新技術コーディネータの人選が良かったものと思われるが、コーディネータの個人的資質に強く依存するのがコーディネート活動の本質であるとすれば、今後このような人材をどう確保し、育成していくかが課題と思われる。コーディネータは、今後も県の科学技術の高揚を図る担い手であろう。
 今後は、今年度に科学技術振興事業団が開設する「研究成果活用プラザ」での展開に期待したい。

目次に戻る


This page updated on April 30, 2002

Copyright©2002 Japan Science and Technology Corporation.

www-pr@jst.go.jp