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地域研究開発促進拠点支援(RSP)事業
(研究成果育成型)

平成17年度終了地域事後評価報告書

平成18年6月
科学技術振興機構 地域振興事業評価委員会

4.地域ごとの評価

 

(1) 群馬県

連携拠点機関 財団法人群馬県産業支援機構
科学技術コーディネータ 閑 春夫(代表)、磯部 稔、大山 健一、小和田 雅明
事業実施期間 平成13年度~平成17年度
1 大学等との連携状況
 産学官の信頼関係を確立する努力により企業ニーズを抽出し、日本原子力研究開発機構高崎研究所や中小企業を巻き込む多くの産学官連携活動を立ち上げ、製品化に至る実績をあげたことや、今回のRSP事業において大学間のネットワークが形成され、金融や経営支援も県単位でネットワークに組み込んだことは評価出来る。コーディネータが、企業との連携を引き続き強化して、特徴ある大学の研究者と直接コンタクト出来るパイプをより一層充実させることが望まれる。
2 事業の成果及び波及効果
 本事業で行った育成試験の結果、平成17年度からの地域結集型研究開発プログラムへ発展し、新たな産学官連携プロジェクトが開始されたことは大きな波及効果として認められる。また、「領域別分科会」を組織して多くの地元企業を参加させ、ニーズとシーズのマッチング活動を積極的に進めることにより、医療バイオ領域や情報通信領域のクラスター形成に見られるような計画的な研究成果の育成が見られ、実用化や人材交流などにも実績をあげている。今後も優れた論文、学会発表から商品化につながるような研究成果が得られる取組みの継続を期待したい。
3 研究成果の実用化・企業化の状況及び諸事業等への橋渡し実績
 61件の育成試験に対して、実用化34件、商品化9件、起業化2件の成果はコーディネータの積極的な活動の結果である。リニアモデルに基づく「ものづくり立県ぐんま」の施策を補完するため、コーディネータによるきめ細かなフィードバックの努力が行われ、地元中堅企業と協力した実用化の実績も少なくない。一方で、諸事業への橋渡し件数が25件と十分ではなく、成果の広がりという点では不安が残る。今後は実用化、企業化の出口戦略や、商品化の規模を明確にした取組を進め、県単独事業設立等による県の支援も含めて、他事業への橋渡しをなお盛んにすることが求められる。また、領域分科会間の交流がますます盛んに行われることと、80件の特許出願のフォローアップにも期待したい。
4 今後の見通し
 財団法人群馬県産業支援機構が拠点機関となり、コーディネータ協議会を組織化し、県単独予算でコーディネータを確保して県内の産学官連携を進める等、コーディネータを重視する姿勢は評価できるが、新たなシーズの育成を継続し、諸事業への橋渡しをさらに増やす等、広範な発展につなげるために県が今まで以上に尽力していくことが求められる。また、企業ニーズの把握や、大学等の研究者との太くて多様なパイプ作り等の活動を強力に推進するため、新たなコーディネータの確保・育成も必要である。
5 総合評価
 情報通信、新素材、医療・バイオ、環境・生活文化、新製造技術の5つの領域分科会を組織して、特徴あるコーディネート活動を進めたことにより、産学連携活動が活発に行われ、実用化、商品化の成果を生んだと言える。しかし、コーディネータと企業や大学との信頼関係を一層強化するための新たなコーディネータの確保・育成や、コーディネート活動を発展させる受け皿体制の構築に向け、今後県として具体的な戦略の推進が求められる。

(2)三重県

連携拠点機関 財団法人三重県産業支援センター
科学技術コーディネータ 野田 宏行(代表)、中野 昭彦、
勝永 智也(平成15年9月~平成16年3月)、阿部 量一(平成15年4月~平成18年3月)
事業実施期間 平成13年度~平成17年度
1 大学等との連携状況
 組織間連携、具体的活動計画などに配慮しつつ事業を推進し、三重大学を中心とした大学との連携、専門部会や課題協議会などを通じた中小企業との連携及び異分野間連携へと実を結んだことは評価できる。今後は産業直結型の成果を目指すだけではなく、応用研究の中から基礎研究のシーズを発掘する等、コーディネート活動の幅を広げることにより、新たな連携関係を構築する試みも今後取り入れて行くことが望ましい。
2 事業の成果及び波及効果
 育成試験課題50件には、三重県の特徴を生かした食品及び工学系の研究などに重点化がなされる等、地域技術の活性化が考慮されており、本事業の活動が今後の県単独事業において参考となる一つのモデルを提供できたという点で評価できる。また、特許出願62件(うち国際特許出願4件)は育成試験件数よりも多く評価できるが、企業ニーズ調査は必ずしも多くないので、今後は企業ニーズの把握強化に期待したい。
3 研究成果の実用化・企業化の状況及び諸事業等への橋渡し実績
 研究成果の実用化件数が29件、商品化件数が15件と多くの実績をあげ、中でも「血液流動性測定装置」や「生活習慣病の予防に効果のある「黒ニンニク」」など販売実績の高い商品が生まれていることは評価できる。諸事業等への橋渡し件数も64件であり、積極的なコーディネート活動が行われていると言える。ただし、個々の研究成果に関してはやや規模が小さく、小粒といった感があるので、橋渡しを受けた次の事業で応用範囲を広げ、大規模な実用化展開を目指していくことを期待する。
4 今後の見通し
 科学技術支援施策として「地域産学官研究交流事業」を三重県科学技術振興センターで実施する一方で、産業技術支援施策として「競争的研究プロジェクト戦略推進事業」や「地域中小企業産学官連携促進研究開発事業」を三重県産業支援センターで展開し、本事業を2つの県独自のセクターで継続していこうとする体制作りは期待がもてる。今後、個々の成果をつなげる大局的な構想の下に将来の展開像を打ち出すとともに、それを実現するために不可欠なコーディネータの育成にも引き続き取り組んで行くことが望まれる。
5 総合評価
 代表科学技術コーディネータの努力により期待以上の成果を得ている。一つのフィロソフィーをもって、大学人の意識改革を促し、産学官共同を徹底させた功績も大きい。中間評価における「地域の特性が活かされておらず、全体の基本構想・政策が見えない」、「商品化といった具体的成果は十分と言えない」という指摘事項を真摯に受け止め、それを克服すべく十分な取り組みが行われたと言える。今後も引き続きコーディネータの育成に力を入れ、積極的な活動を展開していくことを期待する。

(3)高知県

連携拠点機関 財団法人高知県産業振興センター
科学技術コーディネータ 笹部 馨(代表)、都築 俊夫、久武 陸夫、
石塚 悟史(平成13年7月~平成16年3月)、入野 和朗(平成17年4月~平成17年9月)
事業実施期間 平成13年度~平成17年度
1 大学等との連携状況
 コーディネート活動の対象となる大学や研究機関は多くはないが、その分高知大学と高知工科大学を中心に密度の濃い連携体制を構築した点は高く評価でき、大学側の十分な協力と信頼関係は今後の財産となることが期待される。シーズ発掘とマッチングの努力が顕著であり、大学等の情報を効率的に実用化に結びつけている点は、連携の成果と考えられる。また、連携拠点機関以外の多くのコーディネータとの連携も積極的に行われている。
2 事業の成果及び波及効果
 シーズ発掘1,600件は十分な成果である。県内の産学連携の活発化、研究者ネットワーク及び新技術データベースの構築、研究者に対する権利化意識の醸成、若手コーディネータの育成などメリハリの利いた価値ある成果と効果が得られており、高い評価に値する。特に、若手コーディネータの育成は特徴的である。
 「育成試験成果集」の刊行など成果の積極的PR姿勢にも見るべきものがあるが、コーディネート活動の波及効果をより広範囲に広げるためにも、今後は、更なる企業ニーズの探索と地域企業の育成に向けた取り組みに期待したい。
3 研究成果の実用化・企業化の状況及び諸事業等への橋渡し実績
 水産庁事業やJST事業などに発展した成果や、売上がまだ少ないものの起業化にたどり着いた成功例があるなど、興味ある実績が出ており、妥当な成果であると認められる。起業したプロジェクトには、本格的な企業化にはなお長期間を要するものもあるので、今後も継続した支援に期待する。
 成果集の刊行や、情報をホームページに掲載することは有意義かつ効果的であり、今後はさらにコーディネータが技術内容をブレークダウンし、受け手である企業にとって分かりやすい情報提供を行っていくことも重要である。
4 今後の見通し
 本事業推進の経過と結果に勢いが見られ、事業修了に合わせて新設された高知COE推進本部によるコーディネート活動は、JSTサテライト高知の開館ともあいまって、事業継続に向けた魅力的な姿として見ることができ、県の積極的な姿勢も感じられる。今後に向けては、育成された若手コーディネータのミッションの明確化や県内企業による事業化などが課題であり、本事業の継続を引き続き県の重要施策として位置づけていくことが必要である。
5 総合評価
 大学等の研究機関や企業が少ないといった必ずしもポテンシャルが高いとは言えない土地柄にあって、代表科学技術コーディネータのリーダーシップの下、高知大学、高知工科大学との密度の濃い連携により数多くのシーズを掘り起こしてきた。研究成果の活用に向けた育成試験の実施に当たっては、ニーズオリエンテッドの考え方に基づいて的確な課題抽出を行った結果、実用化の実績も認められるなど、高知県でRSP事業を実施した価値は高かったと言える。今後は、県のバックアップによる高知COE推進本部を中心とした取り組みとJSTサテライト高知との連携により、継続して事業が推進されることを期待したい。

(4)熊本県

連携拠点機関 くまもとテクノ産業財団
科学技術コーディネータ 草野 民三(代表)、坂井 高正、坂田 敦子、山口 淑久(平成17年3月まで)
事業実施期間 平成13年度~平成17年度
1 大学等との連携状況
 熊本大学、崇城大学、熊本県立大学等の多数の大学と連携を試みることからスタートし、その結果として熊本大との連携が十分で深いものとなったことはコーディネータの努力の成果と言える。しかし、熊本大以外の大学との連携活動は、もう一つ成果につながっていないため、今後は原因を検証した上での改善が必要である。
 熊本TLOと連携してコーディネート活動を行ったことは大きな特徴であり、大学側に産学連携の意義を知らしめたことは重要な成果と言える。
2 事業の成果及び波及効果
 一つの技術課題を数年かけて育てていくというユニークな方針のもと、多くのシーズを他事業への橋渡し段階あるいは共同研究企業の探索段階というレベルまで引き上げたことは評価できる。今後は、それらのシーズを最終的な出口である商品化に結びつけるための努力が必要であり、そのためには県が中心となり、県単独の地域施策等への展開により、企業を巻き込んでいくことを期待する。
3 研究成果の実用化・企業化の状況及び諸事業等への橋渡し実績
 コーディネータの地道な活動の様子が窺え、他事業へ積極的に応募した結果としての橋渡し件数37件は、事業終了時点の実績としては妥当であり、57件の特許出願も十分な数字である。しかしながら、実用化・商品化・起業化の数14件は十分とは言えず、また、成果としては小粒である。今後は商品化の見通しが明るいものに的を絞って研究開発を進めるなど、重点化が必要である。また、特許の活用方針の構築にも期待する。
4 今後の見通し
 「コーディネート活動促進事業」等の県単独のプログラムを、「バイオフォレスト構想」、「セミコンダクタ・フォレスト構想」及び「ものづくりフォレスト構想」の3つのフォレスト構想の中で展開していく方向は妥当であり、県の意気込みが感じられる。今後は育成したシーズを出口に繋げるための具体的な施策を打ち出すことが求められる。また、次世代のコーディネータの育成にも期待したい。
5 総合評価
 TLOとの連携など個性的な様々な試みを行いつつ事業を推進し,シーズ育成の成果も着実に上がり、また、大学等の研究者の意識改革やTLOの活性化にも結びついたと言える。今後は、県単独の事業等によりコーディネート活動を継続していき、これまでに育成したシーズや特許の有効活用と、さらなるシーズ発掘、ニーズ発掘を期待する。また、成果を上手にアピールしていく努力も必要である。

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This page updated on Jun. 28, 2006
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