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地域研究開発促進拠点支援(RSP)事業
(研究成果育成型)


平成16年度終了地域事後評価報告書

平成17年10月
科学技術振興機構 地域振興事業評価委員会

4. 地域ごとの評価
(1) 岩手県
連携拠点機関 財団法人いわて産業振興センター
科学技術コーディネータ 丹野 和夫(代表)、大島 修三、阿部 四朗、猪狩 征也
事業実施期間 平成12年度~平成16年度
1 大学等との連携状況
 科学技術コーディネータが大学のみならず、多くの研究機関の研究者と直接面談する手法により、県外を含む多くの研究機関から詳細で精度の高いシーズを収集したことは十分評価できる。また、コーディネート機能強化のため、コーディネータ1名を首都圏に配置し、活動したことの意義も大きく、今後の広域連携への取り組みにも期待したい。
2 事業の成果及び波及効果
 育成試験65件、特許出願76件、諸事業への橋渡し46件などの活動実績は評価でき、収集した企業ニーズは必ずしも多くはないが、具体的ニーズのある課題を設定し、質の高い育成試験を行ったことにより、優れた成果が得られており、その波及効果は極めて高い。今後も、新産業への展開に繋がる活動に期待する。
3 研究成果の実用化・企業化の状況及び諸事業等への橋渡し実績
 実用化6件、商品化11件、起業化7件など実績が豊富である。商品化例の中には健康食品や産業廃棄物の有効利用など、社会的ニーズの高いものがあり、数・内容共に十分な実績と評価できる。また、諸事業への橋渡し実績46件は特に顕著であるといえる。今後のさらなる事業展開により、実用化が促進されることを期待する。
4 今後の見通し
 次世代コーディネータの育成など、県としてのコーディネート機能の拡充に努めており、RSP事業終了後も研究開発コーディネート機能を継続していくための県単独事業の「産学官連携機能強化促進事業」を平成17年度に創設するなど、県の取組も積極的である。今後、(財)いわて産業振興センターを中心に大学やJSTサテライト岩手との連携が維持・強化され、成果の全国展開も含めた一層の実用化・企業化が実現することを期待する。
5 総合評価
 具体的ニーズのある課題の設定など、明確な理念・方針に基づいた活動が展開され、多数の成果を上げており、コーディネータの役割、必要性を明確に示した成功例と言える。また、コーディネータの育成や県単独事業の創設など、県としての取り組みも高く評価でき、今後のさらなる発展に期待する。

(2) 山形県
連携拠点機関 財団法人山形県産業技術振興機構
科学技術コーディネータ 石山 浩章(代表)、磯部 豊、浦山 隆、佐藤 秀夫
事業実施期間 平成12年度~平成16年度
1 大学等との連携状況
 山形大学大学院ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー内に連携拠点機関の分室を設けるなど、山形大学との連携については努力と一定の成果が認められる。しかし、山形大学以外との連携では大きな成果は出ておらず、今後は、他の大学や高専との連携を強化し、シーズ発掘についての戦術を再検討することが必要である。
2 事業の成果及び波及効果
 シーズ・ニーズ調査の実績は1,400件を超えており、コーディネータの努力は評価できる。また、育成試験成果発表会の回数及び参加者が年ごとに増えていることから、コーディネート活動の定着が認められる。しかしながら、シーズからニーズへの結びつきが少ないことから、企業ニーズの調査の内容が十分でなかった可能性があるので、今後は中小企業を中心として、内容を重視した戦略的アプローチが求められる。
3 研究成果の実用化・企業化の状況及び諸事業等への橋渡し実績
 商品化8件、実用化8件、起業化2件の成果の件数のみならず、販売まで発展していることは、コーディネータの実績として評価できる。ただし、諸事業への橋渡しは低調であるので、今後は成果を次の事業につなげて育成していくことも必要であると思われる。
4 今後の見通し
 (財)山形県産業技術振興機構内に県独自予算で確保される産学官連携コーディネータが主導して外部資金獲得の促進を図るなど、産学官連携の機能強化の姿勢は評価できる。しかしながら、将来の戦略については今後の検討課題ということであり、RSP事業の成果を中小企業育成と産業振興にどうつなげていくかが不明確である。コーディネータが2名減の2名体制となることを考慮すると、今後、重点領域の整理が必要である。
5 総合評価
 中間評価以後、医療・福祉分野へのアプローチが拡大し、多様な実用的成果も挙がっており、コーディネート活動の実績として評価できる。しかしながら、農の分野の発展があまり見られず地域の特質を生かしきれていないなど、ネットワーク構築型のRSP事業から提唱している「テクノマリッジ」(分野、業の枠を超えた融合)のコンセプトが十分に反映された成果には至っていない。今後、地域の特色を生かしつつ、蓄積されたノウハウとネットワークをどう生かしていくかが課題であり、県のサポートも期待したい。

(3) 神奈川県
連携拠点機関 財団法人神奈川高度技術支援財団
科学技術コーディネータ 廣田 穣(代表)、前田 敏弘、宮川 政義、陳 善忠
事業実施期間 平成12年度~平成16年度
1 大学等との連携状況
 豊富な大学群を持つ強みを生かし、県内の多くの大学からシーズを収集するなど、コーディネート活動を展開したことは評価できる。特に、TLOを持たない大学に対する特許出願支援等の知的財産に関連する支援活動は、連携強化につながるものと期待できる。今後は、ポテンシャルが高い地域特性を充分に活用して、連携が継続することを期待する。
2 事業の成果及び波及効果
 大学等の研究ポテンシャルの高い地域特性を活かして、産業界が必要とする実用化レベルを考慮した試験研究を実施したことは評価できる。また、コーディネート機能をTLO機能等の整備により強化したことも評価できる。今後、波及効果を大きくしていくためには、大学の事業化意識の底上げ並びに企業との連携の強化も期待する。
3 研究成果の実用化・企業化の状況及び諸事業等への橋渡し実績
 実用化4件、商品化8件、起業化7件の実績をあげているものの、地域のポテンシャルを考慮すると、より大きな成果が期待される。今後、更に実績を向上させるためには、諸事業への橋渡しに向けた継続的なコーディネート活動、幅広いニ-ズの取り込み、市場の大きさを考慮してそれに見合う規模の企業への技術移転が必要である。
4 今後の見通し
 本事業を引き継ぐような研究支援事業および知的財産活用促進コーディネート事業を新設しており、今後の展開に期待できる。産業振興政策を担ってきた(財)神奈川高度技術支援財団と科学技術振興政策を担ってきた(財)神奈川科学技術アカデミー(KAST)が統合されて新生KASTとなることで、種々の事業を総合的に行える体制が構築されて、本事業の理念が引き継がれコーディネート機能が維持・発展されることに期待する。
5 総合評価
 本事業を引き継ぐような体制が構築され、また、コーディネート活動に対しての工夫や提言を行うなど、本事業への真摯な取り組みが感じられる。しかしながら、ポテンシャルが高い地域特性を十分に活用しているとは言い難いため、今後は、地域の特徴を踏まえた戦略を策定してコーディネート機能を整備していく必要がある。

(4) 静岡県
連携拠点機関 財団法人しずおか産業創造機構
科学技術コーディネータ 吉田 勝治(代表)、大隅 安次、八十 昌夫、横井 勝之
事業実施期間 平成12年度~平成16年度
1 大学等との連携状況
 大学へ個別訪問してシーズ発掘に努力した点は評価でき、大学における知的財産に対する意識を高め、産学連携の土壌を形成することに寄与できたといえる。今後は大学側の関わりをさらに盛んにするために、静岡大学のイノベーション共同研究センターと連携する等、一層の活動が求められる。
2 事業の成果及び波及効果
 育成試験の課題選定を公募制にしたことは、公平さはあるものの、目利きとしてのコーディネータの能動性に欠けるところがある。また、企業ニーズを把握しているという民間企業出身者のコーディネータの特徴を活かした成果というものが明確には現れていない。今後は、(財)浜松テクノポリス推進機構等の従来からある産学連携のインフラを活用し、企業ニーズの把握を強化して事業化への見通しを明確にしていくことが必要である。
3 研究成果の実用化・企業化の状況及び諸事業等への橋渡し実績
 61件の育成試験に対して、実用化2件、商品化3件、起業化1件の成果は十分な数とは言えず、内容も小粒で市場性が今一つである。今後は、企業ニーズを把握した上で、地域のポテンシャルを活用するようなコーディネート活動と、県のコーディネート活動への支援を期待する。
4 今後の見通し
 (財)しずおか産業創造機構が拠点機関となり、コーディネータ協議会を組織化し、県単独予算でコーディネータを確保し、県内の産学公連携を進める等、コーディネータを今後も重視する姿勢は評価できる。今後は、コーディネータの一層の主体的な活動と、開発された成果の活用に対する県としての方針の明確化が求められる。
5 総合評価
 静岡県という産学のポテンシャルの高い地域の割には成果は十分とは言えない。今後は県東部、中部、西部の3地域における高い産学のポテンシャルを一層活用する取り組みが求められる。また、若いコーディネータを登用するなど、目利きとして事業化を仕掛けていくコーディネータの積極的な活動に期待する。

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This page updated on October 14, 2005

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