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地域研究開発促進拠点支援(RSP)事業
(研究成果育成型)


平成13年度開始地域中間評価報告書

平成16年1月
科学技術振興機構地域振興事業評価委員会

4. 地域ごとの事業展開概要と評価
(1) 群馬県
連携拠点機関 財団法人 群馬県産業支援機構
科学技術コーディネータ 閑 春夫(代表)、磯部 稔、大山 健一、小和田 雅明
事業実施期間 平成13年度~
1)事業の進捗状況及び今後の見通し
 県の充実した支援体制のもとに、事業としては着実に進んでいる。領域分科会でのシーズ・ニーズのマッチング活動と、経済産業省の地域ベンチャー支援センター組織の活用に特色が見られ、RSPネットワーク構築型事業で形成したネットワークが、産学官連携の新しい形を産み出しつつある。今後は、群馬大学との連携をなお一層進めると共に、地域ベンチャー支援センター、地域共同研究センター等他機関のコーディネータとの連携をはかりつつ、より能動的な活動によってシーズ・ニーズを掘り起し、事業がさらに活発化することを期待する。
2)事業の成果及び今後の見通し
 RSPネットワーク構築型事業でのシーズ・ニーズ蓄積と地場の有利さを生かした綿密なニーズ・シーズ調査を基に、企業の潜在的ニーズの解決に向けた育成試験が29件行われたことは評価できる。また、コーディネータ育成の重視は、今後の活動を保証するものとして評価できる。今後は、さらに事業化に向けて、実施された育成試験のフォローアップが求められる。
3)研究成果の実用化・企業化の状況及び今後の見通し
 実用化10件、商品化4件、特許出願11件、ニーズ・シーズのマッチング23件の成果を挙げていることは評価できる。課題を中心に産学官の連携を企画し、マッチングを行っていることや、大企業も参加させていることも評価でき、今後の発展が期待される。今後は、事業化を目指す際のビジネス面のスキルの不足を補う体制を地域に構築することを期待する。
4)諸事業への橋渡し実績及び今後の見通し
 文部科学省関係事業3件、経済産業省関係事業6件、県単独の商品化・事業化可能性調査事業、産学官共同研究トライ補助、提案型実用化研究補助へ4件の橋渡しが行われており、概ね順調である。県も開発から事業化及び市場展開までを一貫して支援する支援基盤整備を実施する等、資金面以上の努力をしていることも評価できる。今後は他機関のコーディネータとの役割分担を明確にしつつ、より大規模な事業への展開を期待する。
5)総合評価
 技術面で県内中小企業に精通している産業技術センターの職員を、将来のコーディネータとして育成していく方針は評価でき、地域で活動する42名の他機関のコーディネータは一つの人材バンクという機能を持つと期待される。このような取り組みから、本事業終了後も県単独でコーディネート活動が継続されることが期待できる。全体的に安定感があり、着実な取組をしているので、今後は、地域の特徴を活かした地域の柱となる産業育成に図る活動を行っていくことを期待する。

(2) 三重県
連携拠点機関 財団法人 三重県産業支援センター
科学技術コーディネータ 野田 宏行(代表)、中野 昭彦、勝永 智也、阿部 量一
事業実施期間 平成13年度~
1)事業の進捗状況及び今後の見通し
 代表科学技術コーディネータの強力なリーダーシップの下、専門部会、課題協議会の設置等工夫を重ねて産学官連携、シーズ・ニーズの掘起しに取り組む姿勢は評価できる。しかし、実用化・商品化といった成果が十分とは言えないので、大学等にいる産学連携コーディネータとの連携を強化するなど実績がでるように運用を改善することが必要である。また、今後の方針には地域の特性が活かされておらず、全体の基本構想、政策が見えないので、地域特性を活かしたより明確な方針と県・大学・企業からの協力体制の確立が必要である。
2)事業の成果及び今後の見通し
 シーズ調査333件、ニーズ調査142件は妥当である。今後はニーズ調査を研究開発型企業に限定せず、地域産業界全般を対象にした能動的なコーディネート活動を行うことで課題を発掘することが必要である。また、産業化への道筋を明確にして、実現可能性の高い課題の見極めを行い育成試験を実施することが必要である。
3)研究成果の実用化・企業化の状況及び今後の見通し
 実用化・商品化各1件は具体的成果としては乏しい。今後は育成試験の長期的なフォローアップに十分配慮し、実用化・商品化及び特許出願といった具体的な成果の創出に向けた方策が必要である。
4)諸事業への橋渡し実績及び今後の見通し
 産学連携事業への展開を意識して、県単独事業2件、国の事業19件の採択実績をあげたことは評価できる。今後は、諸事業への橋渡し後の具体的な成果がでるよう、橋渡しした事業のフォローアップ体制を強化し、県内産業の活性化につなげていくことを期待する。
5)総合評価
 複数の協議会、専門部会など会合活動を活発に行い、シーズ・ニーズの蓄積、他事業への橋渡しにおいて実績をあげた点は評価できる。しかし、育成試験の成果が十分に出ていないので、コーディネータが事業化へのシナリオを描き、橋渡し後のフォローアップを含めて、事業化に向けた取り組みをより強化する必要がある。今後は地域の特性を活かす基本構想を明確にし、地域の柱となる産業の育成に向けた取り組みを期待する。

(3) 高知県
連携拠点機関 財団法人 高知県産業振興センター
科学技術コーディネータ 笹部 馨(代表)、都築 俊夫、久武 陸夫、石塚 悟史
事業実施期間 平成13年度~
1)事業の進捗状況及び今後の見通し
 連携拠点機関にRSP事業のコーディネータのみならず県独自の各種コーディネータも集中させ、特に高知工科大、高知大に焦点をあてて緊密な連携体制を築き、シーズ把握をベースとした活動が着実に進んでいると評価できる。各課題の実用化に向けた問題点が正確に把握されており、今後の一段の成果が見込める。実用化、他事業への橋渡しにおいても成果が出ているが、シーズ主導で展開したものであり、より成果をあげるべく今後はシーズとニーズのマッチング活動に期待したい。
2)事業の成果及び今後の見通し
 シーズ・ニーズの蓄積196件、育成試験34課題、特許の出願12件等は、県の産業及び科学技術ポテンシャルからすると十分な結果を出している。今後は、これまでのシーズ主導のアプローチからも相応の実績は期待できるが、ニーズ側からの掘り起こしや研究会の活用等によりさらに成果があがる事を期待したい。
3)研究成果の実用化・企業化の状況及び今後の見通し
 実用化・商品化に至った件数はまだ多数とは言えないものの、全育成試験テーマの実用化を目指すなど、事業化を意識した取り組み姿勢は評価できる。さらに積極的に地域の天然資源を活用した研究開発でも成果をあげ,またベンチャー企業等も4件創業しており,産業振興に期待が持てる。実用化、企業化について軌道にのせ、採算がとれるところまで進める事を期待したい。
4)諸事業への橋渡し実績及び今後の見通し
 育成試験を終了したものはすべて事業化に向けて橋渡しする方針を掲げ、県単独事業でも積極的に支援し、多数の他事業への橋渡し実績が出ている点は評価できる。今後は橋渡し後のフォローアップに留意しつつ、高知県産業の基盤技術形成を期待する。
5)総合評価
 地域の必ずしも高くないポテンシャルの中で地場産業を強く意識し、地元2大学の地域共同研究センター等の連携拠点に科学技術コーディネーターを駐在させ、中核機関の他のコーデネート活動と連携するなど地域に密着した活動により、多数の成果を上げている。今後、科学技術コーディネータの育成も兼ねて、工業技術センターとの連携強化などのネットワークの広がり、地域の特色を活かした基盤産業となるような有望分野育成など、戦略的なコーディネート活動を期待する。

(4) 熊本県
連携拠点機関 財団法人 くまもとテクノ産業財団
科学技術コーディネータ 草野 民三(代表)、坂井 高正、坂田 敦子、山口 淑久
事業実施期間 平成13年~
1)事業の進捗状況及び今後の見通し
 ネットワーク構築型からの継続的な取り組みの中で、県の積極的な支援体制を背景に、他事業への展開、企業化等の実績をあげており高く評価できる。企業出身のコーディネータや、連携拠点機関が持つ独自の各種コーディネート機能を活用して、バランスの良く幅の広い事業が進展していることも評価できる。今後も他の産学連携事業との連携活動に期待できるが、育成試験課題がシーズ中心で進められた点や熊本県独自の産業創生の視点に欠ける点については、改善する必要がある。
2)事業の成果及び今後の見通し
 シーズ・ニーズの調査件数は、それぞれ218件、100件と、多いとは言えないが、それらを整理して62件のマッチングを行い、30件の育成試験を実施した点は高く評価できる。また33件の特許出願件数も評価できる。財団がもつ機能であるTLOとの連携、企業との共同研究や他事業への展開も多く、着実に成果を出している。今後は育成試験の規模の画一化を避け、メリハリのある育成試験を実施するよう留意することを望む。
3)研究成果の実用化・企業化の状況及び今後の見通し
 育成試験が大学等のシーズからスタートしている事もあり、実用化・商品化の実績は少ないが、ベンチャー企業の設立も見られ、地域の研究ポテンシャルを実用化に結びつける点で成功している。また、TLOとの連携により多くの特許出願がある事は評価できる。今後は企業のニーズ面からのアプローチにも期待する。
4)諸事業への橋渡し実績及び今後の見通し
 県の単独事業を含めた他事業への橋渡しの実績が26件あり、積極的な取り組みは高く評価できる。今後についても県の前向きな支援体制を背景に、さらなる発展が見込まれる。ただし、橋渡し後の成果のフォローアップを含め、一貫した成果展開の流れをサポートする事が必要である。
5)総合評価
 地域の産業力を背景として、経験豊富な4名のコーディネータによって事業が進められ、意欲的に企業化に向けた活動がなされていることは評価できる。また、RSP事業とTLOをうまく連携させている点も評価できる。今後は、地域産業の活性化に向けて、「農と工」、「医と工」等の分野間での取り組みにより、熊本の独自色が出される事を期待する。

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