研究開発成果
※研究者の所属・肩書および参画企業等記載は課題採択または記事掲載時のものであり、現在とは異なる場合があります。
ものづくり
要素技術構築
グラフェン光源チップによる赤外分析の新技術
キーワード :  グラフェン、赤外分析、赤外光源、近接場、高空間分解能
研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) 産学共同(育成型)
研究開発課題名 ナノカーボン光源を搭載した万能型分析チップ開発(開発期間:令和2年12月~令和5年3月)
研究者 牧 英之(慶應義塾大学)

新たな赤外分析技術として、超微小なグラフェン光源チップを利用した新しい原理の赤外分析により、理論的な回折限界を超える高い空間分解能を有する赤外分析システムの開発に成功した。グラフェン光源チップは、小型・高速・安価なチップ上の全く新しい赤外光源として、2018年のNatureComm.誌に掲載されるなど、本研究グループが独自に開発を続けている新しい赤外光源であるが、本研究では、この光源に対して測定サンプルを近接させることにより、微小なグラフェン光源チップからの赤外光を利用した新しい赤外分析システムを実現した。
これにより、従来のFT-IRの空間分解能をはるかに超える高空間分解能(1μm)の赤外イメージングを実証して、理論的な限界である回折限界を超える空間分解能が実現するとともに、物質の化学構造の空間分布を示す化学イメージング観測にも成功した。

成果説明画像

期待されるインパクト(効果、意義、市場規模、売り上げ予測)

本技術は、高空間分解能分析技術であるSNOMとは異なり、高価で大型な波長可変レーザーなどの外部光源やプローブを一切用いることなく、光源自体に生じる近接場を直接用いることで高空間分解能を実現しており、新しい原理に基づいた赤外分析技術となる。そのため、医療・バイオ・創薬・新物質開発・環境分析などの様々な分野において、全く新しい赤外分析技術を創出することが可能となる。

開発者の声

今回開発したグラフェンによる赤外分析技術は、グラフェンデバイスという新素材を用いたデバイスの世界初の実用化技術になると考えている。これにより、従来赤外分析が適用できなかった新たな分野において、赤外分析技術が広く展開できるようになり、私たちの生活にも貢献できる新技術になると期待している。
この成果は、慶應義塾大学、JST、KISTECからプレスリリースとして発表されています。
●グラフェン光源チップによる赤外分析の新技術を開発-理論限界も超える性能を安価・小型で実現、新たなバイオ・医療・新物質開発へ-[2022年4月]
この成果は、以下のメディアにて紹介されました。
●日刊工業新聞:2023年12月15日「慶大、グラフェンで赤外分光 空間分解能10倍向上」
※記事の全文は日刊工業新聞の購読会員のみ閲覧可能です。
この成果は以下を受賞しています。
●第53回応用物理学会講演奨励賞
●FNTG学会 大澤賞(第19回にて受賞)


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