研究開発成果
※研究者の所属・肩書および参画企業等記載は課題採択または記事掲載時のものであり、現在とは異なる場合があります。
ものづくり
要素技術構築
低変態温度溶接材料を用いた大幅な疲労寿命向上を目指す補修溶接法
キーワード :  角回し溶接継手、疲労き裂、補修溶接、低変態温度溶接材料、伸長ビード溶接法
研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) 産学共同(本格型)
研究開発課題名 実船適用に向けた低変態温度溶接材料による伸長ビード疲労亀裂補修溶接技術の研究開発(開発期間:令和2年12月~令和4年3月)
プロジェクトリーダー所属機関 株式会社三和ドック 研究者 麻 寧緒(大阪大学)

一般に溶接部で発生する疲労亀裂の主因の一つは引張残留応力であるが、大阪大学で開発された低変態温度溶接材料を用いた伸長ビード溶接法では、変態膨張を利用して溶接ビード全面に圧縮残留応力を生成させることができる。
本研究ではこの溶接法を船舶修繕工事で活用するために、現場施工上の制約を念頭にいかなる部位の角回し溶接継手にも適用できるように、全溶接姿勢に対する最適な施工ガイドラインを確立した。加えて数値解析による性能の裏付けや、板厚が異なる場合の影響評価も行った。
実施した多数の疲労試験結果より、下向・立向・横向の各溶接姿勢では目標とした船舶の耐用年数25年の再補修フリーを実現し得る「従来より4倍以上の疲労寿命延伸」を達成した。また上向姿勢においても今後の改善により十分な寿命延伸が見込まれる。

成果説明画像

期待されるインパクト(効果、意義、市場規模、売り上げ予測)

従来、短い修繕期間では疲労亀裂発生部の効果的な再発防止策を見出すことが困難であったが、低変態温度溶接材料による伸長ビード補修溶接法を適用すれば、局所的な溶接補修を行うだけで確実に疲労寿命を延伸できることが確認できた。また本溶接法は既存構造物のみならず、新規溶接構造物の疲労寿命向上にも貢献できるものと期待している。

開発者の声

確立した全姿勢における施工ガイドラインは、実際の修繕現場で働く溶接士の意見や感覚も反映して作成されたものであり、疲労寿命延伸の性能が担保できる真に実行可能な手法であると自負している。まずは適用可能と判断される部位から実船への試適用の準備を進めたい。


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