研究開発成果
※研究者の所属・肩書および参画企業等記載は課題採択または記事掲載時のものであり、現在とは異なる場合があります。
機能材料
要素技術構築
大地震後の建造物の機能維持に向けた鉄系超弾性合金単結晶化への挑戦
キーワード :  鉄系超弾性合金、単結晶、サイクル熱処理、耐震シミュレーション、載荷実験、巨大地震、災害レジリエンス
研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) シーズ育成タイプFS
研究開発課題名 大地震後の建造物の機能維持に向けた鉄系超弾性合金単結晶大型部材の開発(開発期間:令和元年10月~令和2年9月)
プロジェクトリーダー所属機関 株式会社 古河テクノマテリアル 研究者 大森 俊洋(東北大学)

大地震において建造物の被害を防ぐには、従来の耐震補強に加えて地震後の残留変形を抑制することが最重要課題となる。この課題を解決するために、汎用性と性能の両面で鉄系超弾性合金が挙げられ、単結晶化することで優れた特性を発現することが出来る。本研究では、鉄系超弾性合金実用化を目的とし、東北大学では単結晶化の基盤技術となる組織制御を駆使した、サイクル熱処理方法を見出し、効果的に長さ100mmの単結晶化に成功した。古河テクノマテリアルでは3材質の鋳造から加工、サイクル熱処理までの実験を通して材質毎の特徴を把握し、直径10mm、長さ170mmの巨大結晶試料作製まで到達している。さらに、実用化を視野に入れ建築(名古屋大学)と土木(宇都宮大学)は、超弾性合金使用建造物の耐震シミュレーションと橋脚部材での載荷実験で、既存の技術よりも耐震性に優れていることを示唆する結果を得た。

成果説明画像

期待されるインパクト(効果、意義、市場規模、売り上げ予測)

兵庫県南部地震以降、巨大地震時でも建造物の崩壊を免れるようになったが、残留変形が生じた場合作り直さねばならず、経済的に大きな損失を及す。また、近い将来の発生が危惧されている南海トラフ地震の被害想定は、中央防災会議によると数兆~数十兆円の規模と予想され、世界各地でも巨大地震が起こっている。超弾性合金を建造物の一部に利用することで、残留変形を抑制する効果が期待できる。建造物の耐震化は全世界的な課題であり、本研究開発は、新しい耐震化技術を開発する意義がある。

開発者の声

大学の基礎研究から生まれたシーズを、材料研究者、応用面での建築と土木の研究者、開発から実用化までの実績の有る企業技術者が大きな連携を組むことで、材料性能に合った用途の開発、用途開発のために必要な材用性能について適宜議論し、より高いレベルへの材料開発と用途開発を目指して進むことが出来た。この流れを継続的に実行することで、大きなイノベーションに繋がるものと考えており、その結果として、災害レジリエンス向上、安全・安心社会の実現に寄与したい。


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