研究開発成果
※研究者の所属・肩書および参画企業等記載は課題採択または記事掲載時のものであり、現在とは異なる場合があります。
ものづくり
プロトタイプ
蹴り出しを支援できる炭素繊維強化プラスチックを内装した短下肢装具の開発
キーワード :  短下肢装具、蹴り出し、柔らかい炭素繊維強化プラスチック、親和性、復元性
研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) シーズ育成タイプ
研究開発課題名 蹴り出し推進型短下肢装具の開発 ~歩行特性を再現する加工技術の確立~(開発期間:平成30年10月~令和3年3月)
プロジェクトリーダー所属機関 川村義肢株式会社 研究者 米津 亮(東京家政大学)

本研究は、柔軟で復元性と親和性を兼ね備えた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の成形技術の確立から、歩きやすい短下肢装具の開発を目的とする。
我々は、装具の部品耐久月数(9か月)を想定し、140万回の曲げ疲労試験を実施しても破損しないCFRPの加工に成功した。加工したCFRPは、3点曲げ戻り試験において、140万回の試験後も試験前と同等の復元性を示した。さらに、ひずみ緩和試験では、従来の装具素材と比較しても曲げに対する反発がほとんど観察されなかった(図1)。つまり、我々が加工したCFRPは、柔らかくヒトの動きに追従する特性を有する。このような素材を、短下肢装具(写真1)(特願2022-136308)に内装し、歩行時につま先部分の動きを再現できるようにした。開発した短下肢装具に対する実証実験では、脳血管疾患を有する患者の下肢筋の筋活動が増幅し、力強い蹴り出しが可能になることを確認した。

成果説明画像

期待されるインパクト(効果、意義、市場規模、売り上げ予測)

国内の脳血管疾患125万人の患者に対して「歩く」を保障することは、早期退院を促し、医療費削減を実現する。
このことは、障がい当事者の活動や社会参加を促進させる大きな原動力となり、人生の質(QOL)を向上させる。ひいては、働き盛り世代の介護離職者の減少が見込まれる。つまり、誰もが共に暮らせる豊かな社会の実現に寄与する。

開発者の声

今回、我々が成形したCFRPは、柔らかくヒトの動きに追従する優れた特性を有する。このようなCFRPを内装した短下肢装具の開発を通して、障がい当事者が発揮できなかった潜在的能力を引き出し、歩行を改善できることを確認した。今後は、本装具の適応症例の拡大を目的とした臨床研究を継続し、多くの障がい当事者に「上手に歩ける」喜びを届けられるよう事業化を進める。


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