研究開発成果
※研究者の所属・肩書および参画企業等記載は課題採択または記事掲載時のものであり、現在とは異なる場合があります。
ものづくり
プロトタイプ
耐摩耗性と耐食性を両立した炭化物強化マルテンサイト鋼の開発
キーワード :  炭化物、マルテンサイト鋼、耐摩耗性、耐食性、射出成形、PPS樹脂、デアロイング、マイクロ腐食セル
研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)  シーズ育成タイプ
研究開発課題名 GF-PPS樹脂成形部品に適合した高耐食・耐摩耗新合金開発(開発期間:平成28年10月~平成31年3月)
プロジェクトリーダー所属機関 株式会社エイワ 研究者 千葉 晶彦(東北大学)

工具鋼に代表される炭化物強化マルテンサイト鋼は高硬度で耐摩耗性に優れるが、炭化物形成に起因した耐食性の低下が課題であった。本研究開発では、Cuの微量添加により炭化物強化マルテンサイト鋼の耐食性が著しく向上することを見出し、耐摩耗性と耐食性の両立に成功した。
また、腐食反応の進行とともに合金元素の選択的溶出(デアロイング)により材料表面にCuが濃化し、炭化物とマルテンサイト相の電位差を駆動力とした腐食反応(マイクロ腐食セルの形成)が抑制されることを明らかにした。さらに、実機試作した開発鋼を厳しい腐食摩耗環境であるガラス繊維強化PPS樹脂(スーパーエンプラ )の射出成形装置部材に応用し、既存材の2倍以上の耐久性を示すことを実証した。

成果説明画像

期待されるインパクト(効果、意義、市場規模、売り上げ予測)

開発鋼の適用により射出成形装置部材の耐久性向上が図られ、需要が急拡大しているスーパーエンプラ製品の低コスト化や生産性向上が可能である。その他にも腐食摩耗が課題となる化学、エネルギー、半導体等の様々な分野への広範な応用が期待できる。

開発者の声

本研究開発では、炭化物強化マルテンサイト鋼の課題であった耐食性をCuの微量添加により解決するとともに、耐食性劣化の原因となるマイクロ腐食セル形成を回避する世界初となる現象を見出すことができた。硫酸水溶液だけでなく、種々の腐食環境下で使用可能な新規な鉄系材料の開発に成功し、当初目標を大きく超える成果が得られた。溶製法により低コストで製造可能であり、現在取り組んでいる射出成形装置部材をはじめ、様々な産業分野において実用化を成功させたい。
この成果は、東北大学からプレスリリースとして発表されています。
●耐摩耗性と耐食性を両立した鉄鋼材料を開発 ―需要が拡大するスーパーエンプラの射出成形をはじめ、幅広い応用が期待―(東北大学)[2019年8月]
この成果は、以下のメディアにて紹介されました。
●日本経済新聞 2019年9月8日「東北大、鉄鋼材料の耐久性2倍に銅を添加、腐食抑える」
●EurekAlert! 2019年11月12日 「Researchers strengthen weakest link in manufacturing strong materials」
他、鉄鋼新聞(2019/8/29)、Phys.org、SciTech Daily、Asia Research News 等。


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