研究開発成果
※研究者の所属・肩書および参画企業等記載は課題採択または記事掲載時のものであり、現在とは異なる場合があります。
アグリ・バイオ
要素技術構築
チアゾリン類恐怖臭を活用した革新的な有害野生動物忌避剤の発展
キーワード :  忌避剤、先天的恐怖情動、恐怖臭、有害野生動物、げっ歯類、嗅覚刺激、匂い分子、高活性、難馴化性
研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)  シーズ顕在化タイプ
研究開発課題名 チアゾリン類恐怖臭を活用した革新的な有害動物忌避剤の発展(開発期間:平成26年2月〜平成27年1月)
プロジェクトリーダー所属機関 脳科学香料株式会社 研究者 小早川 高(大阪バイオサイエンス研究所)(現 関西医科大学)

有史以来、げっ歯類の人類の生活環境への侵入は連綿と続いておりその被害は甚大である。例えば、農作物への被害は穀物に対するものだけで世界の生産量の20%、金額では年間13兆円以上と発表されている。げっ歯類の被害は都市部においても顕著であり、飲食店や食料品販売店への侵入や食品の汚染、伝染病の媒介、さらには、電線や通信線を噛むことで停電や火災をも発生させてしまう。このような背景で私たちは、嗅覚刺激に対する先天的恐怖情動の誘発原理を初めて解明し、この原理を応用し極めて強力な先天的恐怖情動を誘発する恐怖臭を世界に先駆けて開発した。痛みに慣れるのが困難であるのと同じ原理で、げっ歯類は恐怖臭に慣れることができない。恐怖臭を活用した忌避剤は、げっ歯類に対して強力な忌避活性を持つことや、ケーブル齧りをほぼ完全に抑制できることが判明した。

成果説明画像

期待されるインパクト(効果、意義、市場規模、売り上げ予測)

げっ歯類による人間社会への被害は多岐にわたる。しかし、有効な忌避剤製品は未確立である。恐怖臭は、忌避効果を与える生物学的な原理が神経回路や細胞レベルで解明された初めての忌避剤として開発された。この点が、経験的に開発された従来の忌避剤とは異なる利点であり、作用原理に基づいて高活性、長期間持続性、安全性に優れた活性成分を探索することができる。現在の世界でのげっ歯類による被害は少なくとも数十兆円に上り、これを半減させればその経済効果は甚大である。また、発展途上国ではげっ歯類の食物への被害が甚大であり、これを防ぐことは人道支援の観点からも重要である。

開発者の声

恐怖臭は、強力で慣れない活性を持つ極めて有効な忌避活性成分であることが実証された。一方で、恐怖臭は新開発された技術であり、今後の改良や発展の余地が大きいという側面も持つ。げっ歯類の被害は様々な場面で発生し、それぞれの場面で必要となる忌避効果レベルや持続時間は異なる。
恐怖臭を活用した製品の市販化を進めると同時に、さらなる改良を加え、げっ歯類による人類への脅威を防ぐ大きな技術製品として発展させたい。


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