研究開発成果
※研究者の所属・肩書および参画企業等記載は課題採択または記事掲載時のものであり、現在とは異なる場合があります。
機能材料
製品化/起業
皮膚細菌叢を制御する脂質の開発とそれを配合した化粧品への応用
キーワード :  皮膚細菌叢、スキンフローラ、善玉菌、悪玉菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、パルミトレイン酸
研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) 探索タイプ
研究開発課題名 皮膚常在菌制御によるアトピー性皮膚炎増悪化予防に役立つ新規な脂肪酸素材の開発(平成24年11月~平成25年10月)
製品化企業名 株式会社桃谷順天館 研究者 永尾 寿浩(大阪産業技術研究所)

ヒトの皮膚に存在する微生物(皮膚細菌叢、スキンフローラ)は、健康に寄与する微生物(善玉菌)と、疾病に関与する微生物(悪玉菌)に分類される。従って、全ての微生物を抑制するのではなく、悪玉菌だけを選択的に抑制する方が良い。
皮脂中のサピエン酸(SA)は、悪玉菌・黄色ブドウ球菌を抑制し、善玉菌・表皮ブドウ球菌を抑制しない作用を持つ。一方、アトピー性皮膚炎や肌荒れ時にはSAが減少し、黄色ブドウ球菌が増加する。しかし、SAは天然油脂中に存在せず入手困難である。そこで、多数の脂質の抗菌活性を調べたところ、天然油脂中のパルミトレイン酸(POA)がSAの代替物となり、皮膚細菌叢の制御に優れていることを見出した。
本技術シーズを応用し、POAを含有する化粧品原料の開発を桃谷順天館と共同で行ったところ、新規素材(フローラコントローラFC161)を配合した化粧品が製品化された(販売会社:明色化粧品)。

成果説明画像

期待されるインパクト(効果、意義、市場規模、売り上げ予測)

現代人は綺麗好きで、微生物を全て除去し、体を徹底的に洗うことが良いとされている。しかし、それは肌荒れやアトピー性皮膚炎の原因の一つと考えられる。本技術シーズは、元来から皮膚に備わっている機能を模倣することで皮膚細菌叢を制御し、健康を維持するという新しいコンセプトであり、さらに新商品開発が期待できる。

開発者の声

当初、技術シーズの利用企業の探索に非常に苦労した。しかし、腸内細菌への関心が深まることが契機となり、皮膚細菌叢の重要性が認知され、本技術シーズの利用企業が見つかった。
今回の製品化は、研究目的達成の第一歩である。最近、皮膚細菌叢と、肌の健康・疾病との相互作用に関する研究が欧米を中心として急速に進展し、SAやPOAの有用性が示唆されている。今後、肌荒れやアトピー性皮膚炎の改善に向けた応用研究に発展させたい。


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