評価結果
 
評価結果

事後評価 : 【FS】探索タイプ 平成27年1月公開 − ナノ・材料 評価結果一覧

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課題名称 研究責任者 コーディネーター 研究開発の概要 事後評価所見
原子レベルでの酸素還元活性制御カーボンの創製 北海道大学
村越敬
北海道大学
須佐太樹
担持材料となるグラフィティックカーボン材料の電気化学合成に成功し、目標達成のための基礎技術となる知見が得られた。不活性雰囲気下で、脱水したイオン液体中で四塩化炭素を電気化学還元することで、ナノグラフェンが高い再現性で合成可能であること、また、析出時間を長くすることで、より大きな構造をもつグラフェンが得られることを明らかにした。今後は、得られた試料の電気化学的な窒素ドーピングおよびそのドーピング構造の評価、酸素還元活性評価に向けた研究を行う。
当初目標とした成果は十分に得られていない。得られたグラフィティックカーボン材料の窒素ドーピング能の制御、ならびに電気化学的な酸素還元触媒活性向上に向けたさらなる検討が必要である。今後は、新規の非白金系燃料電池用触媒の創製に向け、マイルストーンを設け計画的に研究が推進されることが望まれる。
機能性コーティング膜におけるレーザーとサーモグラフィーの組み合わせによる非破壊検査技術の開発 北海道工業大学
見山克己
機能性コーティング膜と基材の界面に発生する欠陥について、直径100μm以下の微小欠陥の検出、および深さ方向の位置情報を得ることを目的に、サーモグラフィーを用いた熱過渡応答測定を適用する可能性について検討した。軟鋼板の基材に径の異なる数種類の有底孔を形成し、加工面に無電解ニッケルめっきを施して人工欠陥試料とした。熱解析シミュレーション結果を基に、加熱後の冷却過程における温度変化をサーモグラフィーにより計測したところ、健全部と欠陥部位で明らかな冷却挙動の差異が見られた。これは直径50μmの欠陥においても差異が認められ、微小欠陥検出に対して有効な手段であることが確認できた。また、深さ方向位置が異なる人工欠陥に対してファイバーレーザ照射により加熱した際の温度変化を計測したところ、欠陥の深さ方向位置によってピーク温度が異なり、深さ方向位置情報を取得できる可能性が見出された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ファイバーレーザーとサーモグラフィーの組み合わせにより機能性コーティング膜における微小欠陥を非破壊で検出する技術開発に取り組み、欠陥サイズと深さ方向位置情報を取得できる可能性を見出していることは評価できる。一方、当該手法により、欠陥サイズと深さ方向での検出限界を明確にするにはいたっていないので、さらなる技術的検討やデータの積み上げなどが望まれる。レーザーやフラッシュランプ照射による材料の温度上昇、照射停止後の材料の温度降下は、対象材料の光吸収係数、比熱、熱伝導度等の物性パラメータに強く依存することを考慮する必要があると思われる。今後は、実用的観点から、サーモグラフィーを用いた表面温度分布計測という簡便な手法で高感度欠陥検出を行うとする発想は優れているので、当該技術による非破壊検査の優位性を明確にして、産学連携につなげられる成果をだすことが望まれる。
生体適合性を有する再利用可能なバクテリアセルロースゲル材料の創製と力学強度および触感の評価 小樽商科大学
沼田ゆかり
苫小牧工業高等専門学校
土田義之
本研究開発はバクテリアセルロースゲルの表面改質を目標として実施された。ポリエチレングリコールジアクリレートの重合体をゲルに導入することで、引張に対する力学強度と繰り返し触った際の触感変化を改善することに成功した。本研究開発で得られたゲルは繰り返し接触した後も再利用可能であることが示された。これまで、バクテリアセルロースゲルは接触時の荷重によって水が染み出てくることから、材料として利用範囲が制限されていたが、本研究開発によってハイドロゲル材料として利用範囲が広がる可能性が高まった。今後の展開として、引張試験、触感試験、硬度試験以外の物性評価も行い、技術移転や用途開発に向けたデータの積み重ねを行う。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、生分解性と生体適合性を持つバクテリアセルロースゲルの物性を改良し、目標の力学特性と触感変化を得たことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、物性とゲル構造の相関などの基礎的知見を得ると共に表面改質剤や開始剤も検討するなどでの実用化が望まれる。今後は、開発するゲルの具体的な用途の絞り込みも検討されることが期待される。
シクロデキストリン重合化による新規高性能分離・吸着剤の開発 苫小牧工業高等専門学校
甲野裕之
苫小牧工業高等専門学校
土田義之
シクロデキストリンを重合化して得られる新規シクロデキストリンポリマーの低コスト化について検討した結果、架橋剤の減量によりコストダウンと単位質量あたりの分子認識力の向上の両立が図れることが明らかになった。さらに多糖類との複合化により、シクロデキストリンポリマーに粘弾性を付与することが可能となり、ゲスト分子認識能を有する水和ゲルが得られることが実証された。ゲル化に伴う体積膨張により、シクロデキストリンへのゲスト分子接触が容易となり、その結果、短時間で効率よくゲスト分子を捕捉できる利点が認められた。よってこれらシクロデキストリン含有マテリアルは分離・吸着材料として実用化できることが実証された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、シクロデキストリンポリマーの合成に有効な架橋剤を見出すと共に水溶性多糖類と複合化したゲルを作成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、ゲスト分子の吸着選択性などを既存品と比較検討するなどでの実用化が望まれる。今後は、連携企業と実用化に向けた具体的な技術目標値を設定して研究開発を取進めることが期待される。
高耐熱性・高機能ダイヤモンドライクカーボンの薄膜作製技術 弘前大学
中澤日出樹
弘前大学
工藤重光
本研究では、プラズマ化学気相成長(CVD)法によりSiおよびN共添加DLC(Si-N-DLC)膜を作製し、機械的・摩擦摩耗特性を評価した。同法を用いてSi-N-DLC膜を作製し、作製条件と機械的・摩擦摩耗特性との関連性を明らかにし、Si-N-DLC膜の耐熱性を向上させるための指針を得た。今後、化学結合状態を変化させるために、作製条件や原料ガスの検討を行い、Si-N-DLCの耐熱性を評価する。種々の原料を組み合わせて各供給量を制御することで、Si-N-DLCの組成領域内で網羅的に組成を変化させ、摩擦摩耗特性および耐熱性を更に向上させるための作製条件を探索する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもDLC薄膜の耐熱性について一定の向上が見られたことは評価できる。一方、今回は基礎研究的成果であり、実用化を目指す上では、産業応用分野を絞った上での実用化を見据えた実験条件の設定や特性評価の積み上げが必要と思われる。今後は、本研究の優位性を明確にし、技術移転を視野にいれた目標を明確にして研究を進めることが望まれる。
アモルファスブルー相を用いた新規液晶表示素子の開発 弘前大学
吉澤篤
弘前大学
上平好弘
アモルファスブルー相(BPIII)における実用的な温度幅の達成、駆動電圧の低下および電圧−透過率曲線においてヒステリシスを生じない材料を開発することを目標とした。BPIIIの温度幅拡大を目的として高分子安定化の条件検討を行い、BPIIIの温度範囲が0℃〜55℃、電圧−透過率曲線におけるヒステリシスがなく、25℃における応答時間が電界印加時1.3μs、電界除去時2.8μsの材料を開発した。BPIIIが実用的なディスプレイ用表示媒体になることを示せた。現時点では実用的な温度幅と低駆動電圧の両立は達成できなかった。今後は駆動電圧の低下に注力する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に高分子安定化技術によりアモルファスブルー相の温度範囲を、低温域まで広げることに成功した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、駆動電圧の低下が低温域において実現できなかった点の検討と改善が望まれる。今後は、Feナノ粒子添加による電界応答プロセスの機構が解明されることを期待する。
表面実装用高輝度・高出力LED反射材に向けた高耐久性ナノ複層型Sn/Ag3Sn多層めっきの開発 岩手大学
呉松竹
岩手大学
小川薫
表面実装LEDデバイスへの実用に向けて、精密なめっき法によりSn、AgとAg3Sn層の膜厚が様々にデザインされたSn/Ag3Sn系複層型めっきを創製した。現行のLED用のAgとAuめっきを比較して紫外―可視光領域における光反射特性を評価し、Sn/Ag3Snめっきは他のめっきより高い鏡面反射率を示すことが認められた。また、JIS標準に基づいて耐硫化性試験および紫外線照射下の環境劣化加速試験を行い、優れた耐久性を有することが確認された。LEDパッケージの作製における実装プロセス耐熱性なども確認した。さらに、各種特性評価前後のめっき膜の化学組成および結晶構造を調べ、そのメカニズムを解明した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、LED反射材として新規なSn/Ag3Sn材にて正反射率、全反射率、熱履歴後反射率、硫化試験後反射率、耐候性試験後反射率などの各特性項目にて当初設定目標を達成し現行のAg めっき材より優れた材料を開発したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許を出願するとともに産学連携により実用に向けた利点や課題を明確にし、新規のLED 反射材としての実用化が望まれる。今後の研究の進展による実用化が期待される。
原子磁力計によるリチウムイオン電池検査用金属探知機の開発 岩手大学
大坊真洋
金属微粒子の混入によるリチウムイオン電池の異常発熱や信頼性低下の問題を解決するために、超高感度の磁気センサーである光ポンピング原子磁力計による金属探知機の実現可能性を調査した。実際の製品を視野に入れ、主要機能部を試作して各種検出方法を試みた。また、検出信号に悪影響を及ぼさないセンサーの加熱方法および駆動回路も開発した。微粒子の定量的評価には至っていないが、鉄粉による信号が検出され、従来のコイル型やMI型センサー型に比較して感度が高く、次世代型の金属探知機として可能であることが確認できた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、原子磁力計による微小金属粒子を検出するシステムを作り、有用性が示された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、本課題の特徴である高い感度が、実際の使用環境では十分には実証されていないので、再検討が望まれる。今後は、電池の部材関連の企業からの要求性能も取り入れ、基礎研究的なものから、実用化装置に近いものまでを多岐にわたっている技術開発されることが期待される。
広帯域電波吸収性能を有する磁性化ウッドプラスチック内装材の開発 岩手大学
三浦健司
本課題では混練型磁性WPCを内装材一体型電波吸収体に展開すべく、実用面と生産面から2点の検討を行った。内部形状の工夫による広帯域化検討では、無線LANの2周波数帯のみの吸収を実現させることに注力し、中空構造四層型吸収体の設計に着手した。その結果として、吸収特性が異なるコンパウンドを適切に選択し多層配置する手法により、2.45、5.2GHz両方の整合周波数を有する構造を提案した。さらに提案構造でFDTD法による電磁界シミュレーションを実施し、中空構造リム部での電磁波の擾乱が小さいことを確認した。磁性粉微細化については、数μmから約200μmの粒径で検討したところ、表面硬さや曲げ強度、誘電率、透磁率に関しては大きな特性変化は認められなかったが、熱流動性を確保するためには粒子径100μm程度以下であることが良好であることを明らかにした。今後の展開として、提案構造での試作と電波暗室での実証実験が必要となる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、無線LAN用の2つの周波数帯(2.45、5.2GHz)に対応した電波を吸収することを概ねシミュレーションによって検証している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、電波吸収特性の実測と、磁性粉の流動性の改善により、生産性がどの程度改善されるかの評価が望まれる。今後は、実用化に向けた研究と、競合する他の吸収体との性能比較について、定量的なデータを検討することが期待される。
次世代周波数資源の活用に向けた光ファイバー一体型高効率THz光機能素子の開発 東北大学
鎌田圭
独立行政法人科学技術振興機構
藤田慶一郎
μ-PD法を用いたファイバー単結晶作製技術を応用し、融液成長法によるBNA単結晶ファイバー作製の検討を行った。始めに、材料と坩堝材の濡れ性とBNAとの反応性の観点から検討し、ファイバー状への制御がもっとも容易な坩堝材および形状を設計した。その結果、成長速度0.1mm/minにて、[010]面を選択制御した約0.8mm径のファイバー状結晶の作製に成功した。得られた結晶についてX線ロッキングカーブを測定し、[010]面において20arcsec以下の結晶性を確認した。さらに、KTP結晶を用いた二波長光パラメトリック発振器(OPO)からの800-1000 nmの近赤外励起光を用いたTHz波発生システムを用いて、当該BNAファイバー単結晶からのTHz波の発生を確認した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、BNA単結晶ファイバーを作製し二波長光パラメトリック発振器でTHz波を発生させたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、ファイバー構造の特性は生かした形での実用化が望まれる。今後は、単結晶をファイバー構造にすることのメリットを再考し、結晶の成長技術の観点だけでなくTHz用デバイスの開発として取進めることが期待される。
低コストPET用アレイカメラを実現する高エネルギー分解能を有するパイロシリケート型ピクセルシンチレータの開発 東北大学
庄子育宏
PETやSPECT等の医療カメラへの応用をめざし高エネルギー分解能を有するパイロシリケート型ピクセルシンチレータの開発を行った。その結果、目標を超える20o長さ3o角で、かつ表面(側面4面)の研磨加工のいらない結晶を育成することに成功した。さらにエネルギー分解能(662 keV、 FWHM値)、発光量はそれぞれ5.6±0.1%および40,000±2,000光子/MeVと目標値を超える材料の探索に成功した。減衰定数も60ナノ秒以下で、今後の医療等への応用が十分に期待できる結果となった。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、マイクロ引き下げ法により、(Gd, La)SiO2結晶を作製し、サイズ、発光量、エネルギー分解能、減衰時間の数値目標を達成し、一部目標値を上回る成果が得られていることは、評価される。一方、技術移転の観点からは、研究成果に基づく新規特許出願を早急におこない、他材料に対する競争力を確保できる開発目標を明確にして、実用化することが望まれる。今後は、既に企業との共同開発を実施し、医療用PETカメラ分野にターゲットも絞られているので、早期の技術移転が期待される。
エンジン吸排気バルブシートへの適用可能な高機能銅合金部材の開発 東北大学
千星聡
一般自動車の低燃費化・低公害化を実現するためには、エンジンの主要要素部位である吸排気バルブシート材が耐熱性、高靱性、高熱伝導性、耐摩耗性に優れることが要件となる。本研究では、吸排気バルブシート材の基板材料としてCu-Cr系合金を採用することを提案した。本合金は耐熱性、靱性、熱伝導性の要求を高いレベルで満足した。特に、熱伝導性の点に置いては従来材(鉄系焼結合金)を凌駕する。更に、本合金の耐摩耗性の問題を解決するために、複合電析法により合金表面に銅/セラミックス硬質粒子複合層を被覆した。これにより、要求特性を全てクリアする高機能の銅合金複合材料が実現する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に目標とした、機械的性質・耐熱性・熱伝導性・耐摩耗性を達成した点は評価できる。また、耐摩耗性向上に銅/セラミック複合被覆を用いた点も評価できる。一方、技術移転の観点からは、銅/セラミック複合被覆の組織制御、信頼性向上と更なる高性能化を課題としてあげており、さらなる性能向上による実用化が望まれる。今後は、従来品よりも優れた吸排気バルブシート材が実現される可能性は高く、その結果として一般自動車の低燃費化・低公害化に一役を担う技術として期待できるので、既に協力関係にある企業との連携により、実機エンジン部品での試験を経て、実用化されることが期待される。
放射線検出器用高感度ZnO紫外線センサーの研究 岩手大学
長田洋
岩手大学
大島修三
耐放射線能力が高いシンチレータを用いた放射線検出器を構築するための、高感度ZnO光導電型紫外線センサーを開発した。窒素をドーピングした高品質ZnO単結晶を用いて、電流感度、光電流/暗電流比、紫外線/可視光光電流比に関する目標をクリアできた。このセンサーは紫外線発光シンチレータと組み合わせることによりX線の検出に有効である。このシステムは構造が極めて簡単で、ZnOの耐放射線能力が高いことから、耐放射線性に優れた検出器ができると考えられる。今後、紫外線センサーの特性改善を図る一方、耐放射線能力の高いシンチレータとの組み合わせによる放射線検出器の実現に取り組んでいく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に光電流感度、対暗電流比、紫外線/可視光比の3性能について目標を達成し、シンチレーション式放射線検出器のプロトタイプを製作し基本性能を確認している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、雰囲気ガスの影響と連続照射による経時変化は、センサーとしての安定性を損なう重要な問題であり解決が望まれる。今後は、特徴である「放射線耐性が高いこと」について実際に確認されることが期待される。
酸化物ナノ結晶の低温生成法とその高品質半導体への応用 仙台高等専門学校
羽賀浩一
独立行政法人科学技術振興機構
山口一良
合成ゴムの添加剤である安価なアセチルアセトン亜鉛の有機金属錯体を原料とし、低温の真空環境で昇華・再結晶化することにより、半導体製造に適した純度を有するファイバー状アセチルアセトン有機錯体が得られ、この有機錯体を120℃以下の高温水蒸気中で熱水分解することにより、ナノ結晶酸化亜鉛を再現性良く作製することが出来た。このナノ結晶をエタノールとアセトンの混合溶液に導入し、さらにナノ結晶同士を接合する目的でアセチルアセトン溶液を添加した塗布用の懸濁液を作製し、この懸濁液をスピンコート法および滴下法に適用してナノ結晶酸化亜鉛の塗布膜の形成に成功した。
塗布膜の組成、構造、外観等の物性的な確認が得られたが、発光特性や電気特性の評価には至らなかった。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ナノ結晶の酸化亜鉛の塗布膜を120℃以下で形成したことについては評価できる。一方、作成した塗布膜の半導体に要求される機能評価(電気特性、発光特性など)に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、機能評価の結果に基づき本技術の有効性を明確にすると共に企業との議論を通して次に向けた技術課題を整理されることが望まれる。
回転円すいを用いた極細な抗菌性メルトブロー不織布の製布技術開発 秋田大学
足立高弘
秋田大学
伊藤慎一
抗菌性の不織布を製布するには、抗菌剤粒子を溶融ポリマー中に分散させて紡糸ノズルからから吐出し、ジェット流で吹き飛ばすことで急速に細化させ補集ネットに堆積し熱圧着してウェブとする方法が一般的である。本申請では、ノズルやジェットを用いることなく、回転円すいの揚水効果を用いたシンプルなミストと循環渦の発生機構を応用した新しい不織布の製布方法開発が目的である。繊維の材料となるポリマー(PVA水溶液にホウ砂を混ぜたもの)を作動媒体として、循環渦により抗菌粒子が十分に撹拌され偏在がないことと、回転円すいの揚水効果による線条流の発生を確認した。しかし、繊維材料となる線条流の周囲への放出は確認できず、今後はより繊維径の小さい線条流の放出を促進させる工夫として円すい表面に溝加工などを施すことが考えられる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、循環渦により抗菌粒子が十分に撹拌され偏在がないことと、回転円すいの揚水効果による線条流の発生を確認したことは評価できる。一方、繊維材料となる線条流の周囲への放出は確認できていないため、研究期間内で未実行の回転している円板の先端から細い繊維が伸びる現象の解明、およびその現象とポリマー溶液の粘度等との相関関係を明らかにすることなど積み残された課題を明らかにし、成果につながる技術的検討やデータの積み上げが必要と思われる。今後は、回転円錐・円板とエレクトロスピニングの組合せは良いアイデアであり、技術移転につながる成果をだすことが望まれる。
常磁性探針を用いた磁気記録ヘッドの高周波磁場検査システムの開発 秋田大学
木下幸則
秋田大学
伊藤慎一
本研究開発では、汎用的な微小磁区観察ツールである磁気力顕微鏡を用いてG(ギガ)Hz帯の高周波磁場を高分解能で計測できる手法を開発した。高周波磁場を低い周波数で変調し、探針振動に低い周波数の周波数変調を発生させる事で高周波磁場のダウンコンバート(周波数変換)検出を可能にした。本手法では、これまで困難であった高周波磁場の強度と極性の同時検出が可能であり、急速に微細化が進むハードディスクドライブ用の磁気記録ヘッドの記録磁界検査等へ応用が期待できる。今後、磁性探針材料の高性能化により、空間分解能と磁界感度を向上させ、医療用の磁性ナノ粒子等の微弱な磁場を発生する先進高周波磁気材料の評価手法に発展させる事が期待できる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、原子間力顕微鏡(AFM)の保有技術を駆使して、高周波磁場のダウンコンバート検出法の立ち上げに取組み、2GHz以下の低周波領域で、磁気力の画像を得ている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、高磁化率常磁性探針の開発が、空間分解能計測には重要である。他研究機関(企業)等との連携も考慮に入れて確立することが望まれる。今後は、微細化が進むハードディスクドライブ用の磁気記録ヘッドの検査等への実用化を早めるためにも、関連計測企業と連携をして、システム化を進めることが期待される。
透明・高アッベ数・高屈折性を満たすハードコート材料に向けた熱可塑性有機−イオウ−無機ハイブリッドポリマーの開発 山形大学
落合文吾
透明・高アッベ数・高屈折性を満たすハードコート材料に向け、直鎖型の有機−イオウー亜鉛ハイブリッドポリマーを合成した。モデル反応の検討を経て、適切な有機モノマー、二硫化炭素、亜鉛塩の重縮合を塩基存在下で行うことにより、高収率で目的のポリマーを得ることができた。得られたポリマーは無色で高融点(>280℃)の結晶性ポリマーである。また、耐溶剤性に優れており、ジメチルスルホキシドなどの非常に高極性の溶媒にのみ可溶であった。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、得られた有機-S-Znのハイブリッドポリマーは高結晶性であったためにフィルムにはできなかったが、光学材料として独自性と発展性があることが高く評価できる。一方、技術移転の観点からは、共重合や別金属も検討しフィルム化への課題を早期に解決することでの実用化が期待される。今後は、新たな分子設計の指針作りの観点からの検討やハロゲンフリーの難燃性ポリマー材料への展開も期待される。
高性能有機薄膜太陽電池用新規非対称スクアリリウム誘導体の開発 山形大学
笹部久宏
独立行政法人科学技術振興機構
磯江準一
本研究では高性能有機薄膜太陽電池用新規非対称スクアリリウム誘導体の開発を目的としている。量産性に優れる脱水縮合反応を利用して、高収率と高純度を両立する合成法を確立、新規材料群を用いて、エネルギー変換効率6%以上を目指して研究を行った。化学構造の異なる6種類のスクアリリウム誘導体の合成と特性評価を行った。その結果、得られた材料はいずれも希薄溶液中で650 nm付近、固体薄膜では760 nm以上に吸収を持つことが分った。有機薄膜太陽電池を作成したところ、6.3%のエネルギー変換効率を達成した。また、実用化の重要な技術となるハロゲン溶媒フリーの太陽電池実現への可能性を示した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、上下非対称型のスクアリリウム化合物を作成し非ハロゲン溶媒での塗布を可能としたことについては評価できる。一方、特には高照度での変換効率など、材料の光吸収特性の評価と改善に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、本材料の分光感度スペクトルを示すことなどで、太陽光での変換効率の改善に向けた研究開発の方向やその可能性を検討されることが望まれる。
環境調和型プロセスを可能にする有機半導体材料の開発 山形大学
儘田正史
本課題では、可溶性有機半導体を用いたプリンテッドエレクトロニクスの実用化に向けて、低環境負荷なアルコール系溶媒に可溶な有機半導体を目指し、新規の有機半導体材料の探索を行った。その結果、アルコール系溶媒に対して、一般的な製膜法での薄膜形成が可能な溶解性を有する有機半導体を開発した。また、有機半導体として必要な条件である1) 平面π共役構造、2) 強い分子間相互作用を有し高結晶性をもたらす、3) 適切なHOMO-LUMOエネルギーレベルを与える、といった条件を満たし、かつアルコール系溶媒への溶解性を高める基本骨格を見定めた。今後は、有機半導体の性能向上のために更なる分子構造の最適化および誘導体合成が必要であり、網羅的な材料合成を進める。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、新たなテトラセン誘導体を合成しそれらの熱アルコールに可溶な有機半導体としての適用可能性を示したことについては評価できる。一方、水への溶解性の向上を目指した水溶性置換基を有する有機半導体の合成に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、小さな電荷移動度が有機半導体の化学構造に基づくものか薄膜作成法に基づくものなのかを明らかにすることも望まれる。
塗布型微細電極を有する有機トランジスタの開発 山形大学
水上誠
本研究はi線照射により親液性が変化する材料をゲート絶縁膜に用い、その上にインクジェット印刷により形成した塗布型電極を有する有機トランジスタを開発することを目的とした。その結果、Agナノインクを塗布することで幅17ミクロン、スペース8ミクロンのAg電極を実現した。本手法でソース・ドレイン電極を形成した有機トランジスタは移動度0.64cm2/Vsと高い性能を示した。本成果はインクジェット印刷による微細配線の新たな手法と有機トランジスタへの適用可能性を実証し、プリンテッドエレクトロニクスにおけるキーテクノロジーとして期待される。今後は産学官の連携を強化し研究を加速していく予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、微細配線の形成に苦労したが、有機トランジスタを試作して特性を測定したことは評価できる。一方、目標のLine/Spaceが達成できず、材料開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、材料開発については材料メーカとの連携が必要なので、早急な対応が望まれる。
タンパク質修飾用新規ポリエチレングリコールの用途開発を目的とした高機能化 筑波大学
池田豊
筑波大学
山本信行
我々はこれまでにタンパク質の酵素活性及び分子構造が従来法と比較して格段に保持されている新しいポリエチレングリコール(PEG)修飾法を開発してきた。本研究では、この新しいタンパク質修飾法をバイオセンサー等様々な分野に展開すべく、開発したPEGの更なる高機能化を試みた。本研究期間に新たに2種類のPEG誘導体を開発した。いずれも新規化合物であるため、特許出願を行う予定である。また、製造方法に関しても従来はエチレンオキシドの重合反応を行う必要があったため、重合技術を有さない企業における製造が困難であったが、市販のPEGから合成する方法を開発したため、市販化への可能性が高まった。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、従来のエチレンオキサイドを原料とする手法でなく、市販のPEGから合成できる幅広く利用可能なPEG誘導体を開発したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、新たに開発したPEG誘導体で修飾したタンパク質の活性や高次構造のデータを取得するなどでの積極的な実用化が望まれる。今後は、PEG誘導体の診断薬等での実ニーズの調査と国際特許の出願も検討されることが期待される。
高強度小型テラヘルツ波発振器の開発 筑波大学
柏木隆成
筑波大学
畠山靖彦
銅酸化物高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+δ(Bi2212)単結晶は、原子レベルのジョセフソン接合を内包する物質であり、これをメサ構造に加工することでテラヘルツ波帯の発振器が製作できる。従来構造を改良した発振器での実験から、特定の共鳴モードのみを励振するように結晶内部の動作接合数を調整する機構が高出力化に重要であることが分かった。またこの改良型発振器から、我々がこれまで得ていた最高出力に匹敵する数十μW程度の発振出力が得られ、高出力化に向けた新たな開発指針が得られた。更に発振器の応用利用として、2つのテラヘルツイメージング装置の開発にも成功した。今後は更なる高強度化やイメージング時間の短縮等を進め本発振器の実用化を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、新たなメサ構造により発振出力の向上が図られ、実用化のためのマイルストーンとして設定した出力が得られたことは評価できる。一方、メカニズムに不明な点があり、この状態では産業に応用するのが難しいように思われる。応用研究とともに基礎的な研究を進めることが必要と思われる。今後は、メカニズムの解明と共に、ばらつきに関する新たな課題の解決を進めることが望まれる。
金属/導電性ポリマー分散溶液を用いた高速な垂直ビアフィリング 独立行政法人物質・材料研究機構
川喜多仁
独立行政法人物質・材料研究機構
中野義知
IT機器の高性能化と省電力化を両立させるためには、半導体回路を積層し、回路間が最短距離となるように垂直に電気配線することが有効であるとされている。そのための技術課題は、半導体基板に設けた垂直な孔(ビア)の中に導電材料を埋め込む(フィリング)プロセスである。現状の銅のめっきといったフィリングプロセスでは長時間を要することが問題となっている。本研究開発の目標は、シリコンウェハー表面から設けた縦穴の中に金属/導電性ポリマー複合材料を10分以内でフィリングすることであり、その分散溶液を塗布または浸漬により注入する方法を用いることで、当初の目標を達成し、現状よりも10倍以上高速な垂直ビアフィリングの可能性を見出した。今後は民間企業と連携すること等により、デバイス化に向けた段階へ検討を進める。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、三次元半導体を従来より極めて短い時間で作製が可能となった点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、実用化する上で重要な、電気伝導特性等の評価と、特許出願が望まれる。今後は、優れた技術であるが、他材料に対する優位性の検証と、共同研究を早急に進めることが期待される。
高演色LED照明用窒化物系赤色蛍光体の低コスト合成法の開発 独立行政法人物質・材料研究機構
末廣隆之
独立行政法人物質・材料研究機構
中野義知
省エネルギー社会を実現するLED照明の完全普及に向けて、演色性の向上とコストダウンが現在の重要課題であり、高性能な波長変換蛍光体の低コスト量産プロセスの開発が急務である。
本研究は独自開発によるガス還元窒化法(GRN)を駆使することにより、安価な酸化物原料からの窒化物系赤色蛍光体CaAlSiN3 (CASN):Eu2+の直接合成プロセスを開発することを目標とした。GRNによる全酸化物系原料からのCASN前駆体微粒子の合成条件、およびEuイオンの新規付活プロセスを確立することにより、相純度96-99%以上、平均粒径3-4ミクロン、外部量子効率72%に達するCASN:Eu2+蛍光体を得ることに成功した。
本研究成果は高演色LED照明の本格普及による省エネルギー社会の早期実現を加速する技術となることが期待できる。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、高演色白色LEDの赤色発光成分として不可欠な窒化物系赤色蛍光体を高価なアルカリ土類窒化物、希土類窒化物等を原料とせず、ガス還元窒化法により安価な酸化物系原料から窒化物系赤色蛍光体の直接合成法を開発したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、企業との共同研究体制も構築されており窒化物系赤色蛍光体などの経済性の高い合成法としての実用化が望まれる。今後は、本研究成果の特許出願及びプロセスの低温化や歩留まりなど企業と連携し実用化に向け更なる研究が進展することが期待される。
反応拡散現象による金属表面の耐食・耐摩耗性向上技術の開発 群馬大学
小山真司
群馬大学
小暮広行
近年、自動車をはじめとする輸送機器に使用される機構部品は、エネルギー効率向上と環境負荷低減の観点から、軽薄短小化が進み、要求される表面特性は増加傾向にある。従来、表面特性の向上には、焼入れ、蒸着および溶射などが用いられてきたが、要求される特性に応える技術は未だ確立されていないのが現状である。本申請研究では、鉄鋼材料表面の高機能化を目的として、機械・化学的特性を満足する表面改質処理方法を検討した。その結果、ほう化処理と窒化処理によるハイブリッド処理を施すことで、高い耐摩耗性と耐薬品性のみならず、塩水を含む環境にも耐えうる表面層の創出に成功した。今後は、特許出願を含め技術移転を進めていく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、溶融塩浴組成最適化、処理条件の最適化を行い、実用化試験の結果、良好な耐食性、耐摩耗性が得られたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、実用化、ならびに技術移転を進めるためには企業との連携が不可欠であるので、研究成果を展開中である、輸送機器メーカー、金型メーカー等との連携による実用化が望まれる。今後は、鉄鋼材料のほう化に続き窒化を施すことで、他の競合技術に比べ簡便かつ安価に機械的特性に優れた表面構造を形成できる点は、優れた技術であるので、企業との共同研究を通じて、社会還元されることが期待される。
銀ナノワイヤーをキーマテリアルとする透明導電膜の開発 埼玉大学
白井肇
埼玉大学
大久保俊彦
ITOに替る透明電極材料としてグラフェン、カーボンナノチューブ、銀ナノ粒子・ナノワイヤーが注目されている。本研究は、その中で銀ナノワイヤー(AgNW)に着目し、化学合成を通じてワイヤー径・長さ・密度制御を検討し、結晶Si/酸化グラフェン、結晶Si/導電性高分子PEDOT:PSS接合太陽電池上にメッシュ状に配置することで、高透過率且つ低抵抗な透明電極材料としてのポテンシャルを検討した。合成した銀ナノワイヤーメッシュは550nmにおいて糖化率87%を実現した。PEDOT:PSS上に剥離・転写した結果直列抵抗の減少、曲線因子の向上に寄与し、変換効率は10.32%から10.62%まで向上した。以上の結果は、直列抵抗の低減、並列抵抗成分の増大によることがわかった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ITOに替る透明電極材料への応用を想定した研究であり、特に、当初の目標が達成された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、現状の性能は必ずしも十分ではなく、材料とともに、性能面での改良が必要と考える。今後は、膜質の改善のために、成膜の条件の最適化を根気よく行うことが必要と思われる。
放射線を目視で検出するためのカラーフォーマーゲルの開発 埼玉大学
太刀川達也
埼玉大学
笠谷昌史
新しい臭素置換オルガノゲル化剤3種を合成することができた。それらの各有機溶媒に対するオルガノゲル化能を調査した結果、ヘキサン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(DMF)などの種々の有機溶媒をゲル化することが確認できた。その新しいオルガノゲル化剤を用いて酢酸エチルを溶媒とし、2種類のフェノキサジン系カラーフォーマーを分散させたカラーフォーマーゲル線量計を創製し、そのγ線に対する発色能や経時安定性を評価した。その結果、10 Gyの放射線量を明瞭に目視で確認することができ、数Gyの放射線量を目視で確認できることが示唆された。また、作成されたカラーフォーマーゲル線量計は、-6 ℃の冷凍庫で安定に保存できることがわかった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、臭素置換オルガノゲル化剤を用いてカラーフォーマーゲル線量計を製作してアミノ酸部位により発光感度が異なることを示したことについては評価できる。一方、測定感度や測定試薬の保存安定性の向上に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、放射能汚染の可視化(目視確認)技術として確立すべくハロゲン種や増感剤も再検討されることが望まれる。
インフルエンザウイルス結合性糖鎖の合成と精製を簡略化する高結晶性シリル基の開発 埼玉大学
幡野健
埼玉大学
岩佐徳昭
嵩高いシリル基を糖水酸基の保護基として用いることで、オリゴ糖合成に欠かせない糖受容体を簡便に合成することができた。具体的に、インフルエンザ結合性糖鎖の合成に必要なラクトース受容体を市販のラクトースから一段階のシリル化反応だけで創製できた。さらに、このラクトース受容体とシアル酸供与体とのグリコシル化反応では、単離収率21%ではあるが非常に少反応数で目的のインフルエンザ結合性糖鎖を合成できた。シリル基による糖鎖誘導体の結晶性向上について、8種のケイ素置換基を調査した結果、p-アニシル置換のシリル基を用いた場合に結晶性が良くなることが分かってきた。さらに類似置換基の創製と結晶性の調査を継続していく。 当初目標とした成果が得られていない。中でも、収率と選択率を上げるための、シアリルラクトースの合成条件に係る技術的検討や評価が必要である。今後は、シリル基のデザインも柔軟に検討されることが望まれる。
新規"結晶性"フッ素樹脂/クレイナノコンポジットによる高耐熱型フレキシブル透明フィルムの開発と、そのガスバリア材への展開 埼玉大学
藤森厚裕
全フッ素化結晶性樹脂であるPFA、並びに部分フッ素化結晶性樹脂であるETFEを用い、耐熱性ナノ複合化フィルムの形成に成功した。上記の樹脂は、それぞれ有機溶媒に不溶・難溶の性質をもつ。加えて融点は260~280°Cに至るため、ナノフィラー表面処理物との複合材料化は、溶融混練、かつ熱分解温度が300°C近い有機化ナノ粒子との組み合わせに限られる。今回、長鎖四級ホスホニウムカチオンで、高効率に表面修飾(特開2011-063475)を施した有機化モンモリロナイトを開発し、耐熱温度320°Cを達成した。得られた耐熱性有機化フィラーをPFA、ETFEと溶融混練を施し、初めての高融点フッ素樹脂ナノ複合化フィルムを創成し、電線材料候補物として関連企業に技術移転を行った。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、新たに作成した有機変性クレイを用いて、ETPE複合系で耐熱とガスバリヤー、透明性能を得たことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、PFA複合系で更に耐熱性を向上させるなどでの実用化が望まれる。今後は、企業との連携を密にすることで低コストでの所要性能の実現を目指すされることが期待される。
紫外域縦電場分光スペクトルの発生装置 埼玉医科大学
若山俊隆
埼玉医科大学
菅原哲雄
250nm〜410nmの紫外領域でアクロマティックな縦電場発生装置を開発するため、合成石英ガラスを用いて軸対称波長板を設計し、開発評価までを行った。上述した波長領域でベクトルビームを生成する軸対称波長板の複屈折位相差が目標値の±10°以内に入る角度をシミュレーションから導出した。そして、信越石英(株)と夏目光学(株)に協力を受けながらこの角度を基に実際に素子の形状を設計、研磨加工に関する議論を進めて、特殊光学素子を開発した。開発された素子は接触式三次元測定装置とダブルパス干渉計から評価を行った。さらにイメージング・ポラリメータからベクトルビームの生成を確認した。縦電場スペクトルの発生までを目指したが、時間的・予算的な問題から確認までには至らなかった、今後、この部分を実験的に証明していく予定である。(達成度は80%) 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、軸対称波長板の設計が進められ、特殊光学素子を開発したことと、ベクトルビームの生成に成功したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、縦電場分光スペクトルの発生を証明し、特定の応用を定め、それにおいて優位性を検証することにより実用化に進むことが望まれる。今後は、多くの分野、対象に応用展開の可能性がある基本技術であるが、逆に可能性が広いため実際の企業化アイテムが未だ特定されていないので、製品化分野を特定した企業連携により、社会還元につながることが期待される。
安全な溶媒を用いた褥瘡(床ずれ)治療用 高機能ゼラチンナノファイバー基材の開発 独立行政法人理化学研究所
青木弘良
独立行政法人理化学研究所
井門孝治
高齢化社会を踏まえ、褥瘡(床ずれ)の治癒促進は、患者の生活品質向上、痴呆の予防、および家族や医療従事者の負担軽減のため、重要である。これまで開発したゼラチンナノファイバーは、体内繊維構造に近い数百nm の繊維径と、高い親和性、温和な溶媒による高い安全性、および溶媒条件による繊維径制御による高機能化が可能である。そこで新規の褥瘡治療用創傷被覆材として、積層化高機能ゼラチンナノファイバーを開発した。これは、細菌感染防御用二次元メッシュ層、細胞増殖用三次元培養層、および新規に開発した簡便なナノファイバー配向化技術による、細胞誘導用配向化層から構成され、今後の褥瘡治療への応用が期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、シートの配向性や立体構造の制御に係る基本技術を確立したことについては評価できる。一方、ゼラチンナノファイバーの機能的特性や配向性の効果の説明、動物を用いたシートの創傷治癒の評価などの技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、他材料との比較、臨床現場の意見や法対応、コストについても検討されることが望まれる。
微細ダイヤモンド工具再生のためのマイクロドロップ・リコンディショニング法の開発 独立行政法人理化学研究所
片平和俊
独立行政法人理化学研究所
井門孝治
多結晶ダイヤモンド工具を用い、セラミックスや超硬合金といった硬脆材料に対して高品位微細形状加工を実施する際、工具の表面に強固に付着するチップが大きな問題であった。本研究では、専用エッチング液を工具先端にピンポイントで強制供給する小型リコンディショニングシステムを開発することで付着物を化学的に瞬時に除去し、工具を再生利用できる手法を開発した。開発した装置は手のひらサイズでコンパクトなため、工具の極近傍で自由に取り回しすることができ、工具の切れ味をモニタリングしつつ最適なタイミングで、迅速にリコンディショニングすることが可能となった。今後は、本手法と導入した専用CAMシステムを活用し、三次元複雑微細流路形状の高効率加工を実行していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標である工具と被加工物の間で生じるメカノケミカル反応やチップの生成・付着メカニズムの解明およびリコンディショニングについて、装置を製作して実際に付着物が除去できることの確認を実施し、いずれも達成していると評価できる。また、本技術について1件の特許出願が行われていている。一方、技術移転の観点からは、課題として挙げている三次元複雑形状の加工を目指して、専用のCAD/CAMソフトウエアによりカッターパスを最適化することに加えて、SiC以外のセラミックスや超硬合金などへの適用研究を実施し、実用化に進むことが望まれる。今後は、硬脆材料の微細加工は加工技術における重要分野の一つであり、極めて少量のリコンディショニング溶液により効率的に工具先端の付着物を除去できる本技術は環境負荷も小さく、大きい社会還元が期待されるので、今後は、すでにアプローチのある工具メーカなどとの連携により、社会還元につなげることが期待される。
金箔を代替する金色様光沢膜を形成する可溶性有機物質の開発 千葉大学
星野勝義
千葉大学
石井輝昭
本研究開発の目標は、(1)塗膜とした場合に金色調光沢を発現する世界初の金属を含有しない有機物質を開発し、その構造を規定すること、および(2)その有機物質を用いた塗料を作製し、塗布プロセスを確立すること、の2点である。課題(2)の検討は完成度を高めるために今後もさらに継続する必要があるが、研究期間内に2つの目標をほぼ達成でき、技術移転を目指した産学共同等の研究開発ステップにつなげられる予定である。その達成の様子は、業界新聞3紙、業界雑誌及び一般PC雑誌に掲載されることとなった。今後は、産学共同による材料の製品化を進めるとともに、研究の学術的肝である金属調光沢発現機構を検討する予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、金色調の光沢のある膜を形成させるプロセスを略確立し、化学構造や特性を解析したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、金箔膜との光学的電気的性質の比較検討や量産に向けた課題を明確化するなどでの実用化が望まれる。今後は、金色調の光沢の発現機構や金色光沢塗膜のドーピング率と安定性との関係も解析することが期待される。
透明酸化物プラズモニックナノマテリアルによる選択的な近赤外光遮断技術の開発 東京大学
松井裕章
東京大学
長谷川克也
本研究は、酸化物半導体工学とナノ光工学の異分野融合を基盤とした新しい熱線遮断防止膜を開発した。In2O3:Sn(ITO)ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴は電子密度に強く依存し、1021 cm-3の高い電子密度を有するITOナノ粒子は強いプラズモン共鳴を近赤外域において示す。ITOナノ粒子を3次元的に積層制御した粒子膜は、50-60%程度の高い選択的反射特性を示した。この反射特性は、ナノ粒子間の局所制限空間で生じる強い電場増強(近接場効果)が関与し、それは3次元電磁界計算(3D-FDTD)によって明らかにされた。現在のITOナノ粒子膜の光反射性能は、波長2μmを中心とした近赤外域で観測される。故に、今後の実用化を見据えた展開として、波長1.2mmを中心とした選択的な熱遮断技術の構築を実施する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、出発原料錯体の脂肪酸鎖長によりナノ構造サイズを制御する新規な有機分解合成により高い電子密度を有するITOナノ粒子反射膜を作製し、約60%の反射率を示す赤外遮断膜を実現したことは評価できる。一方、反射特性の更なる向上及び競合技術との優位性の明確化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、本研究が進展しスマートウインドウ用近赤外光遮断膜として実用化されることが望まれる。
環境負荷の小さい非鉛圧電小型アクチュエータに関する研究 東京大学
森田剛
環境にやさしい非鉛圧電材料の圧電定数はPZTと比較して圧電性能が不十分であるため、R-SIDMという共振現象を導入した独自の駆動方法による小型非鉛圧電アクチュエータを提案した。ニオブ酸カリウム系の積層圧電素子を重ね合わせて3.0×3.0×9.6 立方mmとし、金属部分を合わせて全長18.1 mmの小型振動子を設計、試作した。駆動原理の確認を行うとともに、最大発生力16 mNと速度3.7 mm/sを得た。本研究により、伝達マトリックス法と有限要素法を用いた振動設計方法を確立し、等価回路モデルによる駆動モデルの構築を行うことができた。今後は、摩擦部材の最適化や更なる小型化をしていく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、発生力と最大速度は目標値に達していないが、等価回路モデルによる駆動モデルの構築に成功しており、R-SIMDの駆動を理解するために有効であることを確認していることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、一定の成果は出ているが、目標としているPZTの性能には開きがあるので、本駆動法に適した物性値を持つ材料の開発を目指すなど、材料開発へのフィードバックも視野にいれたさらなる研究開発が望まれる。今後は、応用展開された場合のインパクトは、圧電素子の非鉛化という点で一定程度はあるものと思われ、さらなる研究の発展が期待される。
基板表面改質による液滴の自己輸送・自己アライメント技術の開発 東京工業大学
戸倉和
東京工業大学
尾上二郎
レーザによる局所表面改質を利用した基板表面での液滴の制御技術の開発を目標とし開発を行った。表面改質の基礎的な検討とし、二種類の波長のレーザを利用し、ガラス基板およびシリコン基板表面の濡れ性の局所改質を確認した。また、短波長レーザを利用することで100ミクロン以下の線幅での改質を実現し、純水の自己輸送・アライメントへと適用した。本技術は、市販のレーザマーカを利用しており、医療、半導体分野等への広い応用先を有し、導入コストの面からも汎用性の高い技術であり、本課題においては基礎検討を終えた段階である。今後、企業等との共同研究を視野に、具体的な応用先に向けた純水以外の制御対象での検討および自己輸送・アライメントの実現へと展開する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、100μm以下の微細加工については、短波長であるArイオンレーザを使用することにより目標を達成しているこは評価できる。一方、目標とした純粋以外の液体の自己輸送、自己アライメントの実現など未実施項目があり、さらなる技術的検討とデータの積み上げが必要と思われる。今後は、未実施の項目を実施するとともに、産業界側からの要求に応じて研究開発計画を立案し、研究を発展させることが望まれる。
非コヒーレント光型非線形吸収材料を用いた偽造防止媒体の開発 東京工業大学
平田修造
東京工業大学
林ゆう子
有機物の長寿命三重項励起子の蓄積を利用して、0.03 mW/cm2以下で70%以上、10 mW/cm2以上では反射率が15%以下に減少する反射媒体の構築を目指した。芳香族の環状共役構造を拡張することで、三重項励起子の寿命が1秒から10秒以上に増加し、従来の1/5の10-1 mW/cm2以下の低パワーでの非線形吸収機能を得ることに成功した。高光強度域では三重項三重項消滅が生じ、大きな非線形吸収機能を得ることができないという課題が明確になった。このため、媒体の反射率は光強度の増加とともに70%から減少はするが、10 mW/cm2の光強度域では46%に留まり、開発当初のものと同等の性能にとどまった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、論理的なアプローチを積み重ね、非線形吸収機能の閾値が低い化合物を合成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、三重項三重項消滅と云う新たな厳しい課題を克服することでの実用化が望まれる。今後は、基盤的な研究予算にシフトしてでも研究を継続させ、将来のセキュリティー技術として展開されることが期待される。
ミセル構造を模倣した蛍光性ナノカプセルの開発 東京工業大学
吉沢道人
本研究開発では、「高い発光効率」と「多彩な発光色」を持つ蛍光性ナノカプセルの作製を達成した。その開発戦略として、既に我々が合成に成功したアントラセン環を含む湾曲型の両親媒性分子を利用した。これらは水中で定量的に約2nm サイズのカプセル状集合体を形成すると共に、そのナノカプセルは色素分子を内包する。本研究では、湾曲型両親媒性分子のアントラセン環部位への官能基導入および種々の芳香環を有する両親媒性分子によるナノカプセルの作製とその発光効率の向上に成功した。また、ナノカプセルへの様々な蛍光性色素分子の内包による発光色の制御を達成した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、蛍光色の異なる蛍光性ナノカプセルを作成するなど基盤的研究での課題を解決したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、想定しているミセル分野を中心に具体的な応用展開を踏まえた追加検討による実用化が望まれる。今後は、産業界やユーザーとの連携により蛍光性ナノカプセルが有用性を明確に提示されることが期待される。
金属ナノドットアレイを利用したプラズモニックセンサーの効率的製造法の開発 東京工業大学
吉野雅彦
東京工業大学
尾上二郎
本研究は、感染症などの迅速診断に有効な金属ナノドットアレイを効率よく低コストで作製することを目標としている。そこで超微細格子溝を加工した石英基板を利用し、金属薄膜のコーティングと焼鈍法による自己組織化により金属ナノドットアレイを生成し、さらにそれをプラスチック板に転写するプロセスを提案した。この実現のため超精密切削加工による石英基板への微細格子溝加工法およびナノドットアレイのプラスチック基板への転写法、さらにプラズモニックセンサーとしての性能向上法について検討した。今後、石英基板の具体的な加工ノウハウを蓄積することにより大面積ナノドットアレイの効率的な製造が可能になると考えられ、プラズモニックセンサーの実用化が期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ナノドットアレイの転写技術、ナノドットアレイの形態の最適化については、一定の成果が得られたことは評価できる。一方、大面積石英ガラス基板の実現には、工具摩耗の低減および被削材のセッティング法の検討など、さらなる改善が必要と思われる。今後は、本研究の目指すナノドットアレイを利用したプラズモニックセンサーは、適当なリガンドを用いることで生体試料内の種々のタンパク質やウイルス等の一括検出が可能となるもので、社会還元が期待できる技術であり、今後の発展が望まれる。
チョウザメ(浮袋)からのアイシングラス試作評価 東京芸術大学
関出
東京芸術大学
相澤尚登
古来、天然素材である膠が接着剤として、その安定性や可逆性が評価され、使用されてきた。主に牛皮膠や兎膠などの動物性膠であるが、チョウザメなどの鰾膠も使用され、粘性や浸透性などそれぞれ異なる性質から、経験値で使い分けられてきた。乾燥した塗膜の柔軟性からも、総合的に高い評価を受けるのがアイシングラスであり、粘度・ゼリー強度・油脂分、無機成分などの物性の分析結果を基に、製法・改質調整を研究目標とした。ロシア産品の輸入が困難となった昨今、(株)フジキン筑波研究工場が国内で先発養殖するチョウザメの浮袋を原料として試作し、その分析、及び日本画用画材で試用した結果、今後の産学連携、共同研究による国産アイシングラスの実用化や普及が見込め、社会に有用な製法情報と恒常的な供給への可能性は高いと判断する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、文化財の保存修復や絵画制作のための接着材を国内養殖チョウザメの浮袋中のアイシングラスから効率的に作る技術は評価できる。一方、技術移転の観点からは、作製した膠と従来品との特性を比較評価して優位性などを定量化するなどでの実用化が望まれる。今後は、非常にニッチな分野ではあるが、材料の総合的性能・特性評価のために高分子や接着などの研究者と連携されることが期待される。
イオン液体を利用した新しい有機発光デバイスの開発 早稲田大学
坂上知
本研究では、発光性ポリマーとイオン液体の混合膜を発光層とする有機発光デバイス Light-emitting electrochemical cell (LEC) の開発を行った。特に、HOMO-LUMOギャップが広く、電子注入が難しいために高効率化が難しい青色発光デバイスを開発し、それをベースとすることで白色発光する LEC の構築を目指した。ポリフルオレン系ポリマーに対して効率よく Pドープ、Nドープが可能なイオン液体を開発することで、発光強度は 10 V で 19,000 cd/m2程度の高輝度発光 LEC を実現した。発光効率は2.8 cd/A と同じ発光性ポリマー材料を利用した有機 EL の一般的な値(0.1-1cd/A)よりも高い値を得た。本デバイスは、高性能をシンプルな単層構造で実現しており、低コストで高性能の有機発光デバイスとして期待ができる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標値には至らなかったが、新たな発光デバイスの可能性が示された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、この分野は多くの企業が開発をしているので、実用化に向けてコストを考慮することも重要である。今後は、次のステップに進むための技術課題が、多く示されているので、整理をして実用化に進めることを期待する。
ワンプッシュ微細リンクル加工技術を基盤としたパッチフィルム型超高感度ケミカルセンサーの開発 東京理科大学
遠藤洋史
東京理科大学
金山薫
本研究では、ゴム表面に金属蒸着などの表面改質を行い、座屈現象を利用して微細凹凸構造(リンクル)を作製し、高感度な自立性を有する表面増強ラマン散乱(SERS)センサーナノ薄膜を開発することを目的とした。オリジナルの多点立体伸長法により、リンクル膜の量産化に成功するとともに、非常に安定な自立ナノ薄膜として剥離できることを実証した。また、コロイド粒子配列を鋳型とした金属ナノカップアレイや選択的構造変換可能なプロセスを確立し、自発液滴輸送能を有する新規ケミカルセンシングデバイスの開発に成功した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、金属薄膜の微細構造を制御する手法としてリンクル加工技術の有用性と発展性を示したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、物性の評価手法も検討し、本技術の微量センシングデバイスとしての実用化が望まれる。今後は、金属薄膜の化学的な表面修飾手法などとの組み合わせによりケミカルセンシングデバイスへの応用を拡大されることが期待される。
シリコーン樹脂の三次元曲面加工によるプロジェクタ用マイクロレンズアレイ応用 芝浦工業大学
西川宏之
芝浦工業大学
鴻丸幾久夫
申請者は、独自の陽子線描画技術により、シリコーン樹脂の三次元曲面加工により、本技術を映像機器の要である、高輝度な液晶プロジェクタ用のマイクロレンズ作製に適用し、低コスト化を図ることを目的として研究開発を行った。シリコーン樹脂に対する陽子線描画技術との特異な相互作用に立脚した反応のメカニズムを明らかにし、グレースケールによる制御性を利用してμmサイズのマイクロレンズアレイの試作を行った。その結果、目標としたレベルの加工が原理的に可能であることを検証することができた。以上により、家電映像技術や小型携帯端末などの情報機器によってもたらされる生活の豊かさを持続的に提供し続けることが可能となると考える。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、シリコーン樹脂に対する陽子線描画技術との特異な相互作用に立脚した反応のメカニズムを明らかにし、グレースケールによる制御性を利用してμmサイズのマイクロレンズアレイの試作を行い、目標としたレベルの加工が原理的に可能であることを検証したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、今後の課題として、シリコーン樹脂製の加工物からNi電鋳金型を起こして、インプリントプロセスを用いた転写プロセスの可能性が得られていることを発展させ、型加工をベースとする、大面積、製造プロセスに取り組むことをあげており、それらの実現による実用化が望まれる。今後は、量子ビーム加工の製造技術としての特徴を活かした幅広い産業分野での応用に発展することが期待される。
Geの低温結晶化技術の確立によるプラスチックフィルム上での高性能TFTの実現 芝浦工業大学
弓野健太郎
芝浦工業大学
山本翔平
Geの結晶薄膜を効率よく作製する手法の開発を行った。Geの結晶化を促すと考えられているAuとGeを加熱基板上(〜240℃)に同時に堆積したところ、成膜後のアニールなしで約95%のGeの結晶化に成功した。成膜温度は従来のMIC法によるものと同程度であるが、Ge薄膜(60nm)を作製するための所要時間は約3分であり、従来の手法(〜数十時間)に比べて大幅なプロセス時間の低減に成功した。また、成膜後のAuは膜表面に偏析しており、これを取り除くことができれば、TFTだけでなく、プラスチック基板上でのタンデム型太陽電池用のテンプレート、Ge量子ドットによるディスプレイ用蛍光素子を実現できると期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にAuとGeを同時にスパッタするという新規な方法で、ゲルマニウムの結晶化効率の向上が実現された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、応用展開に向けた具体的な計画の検討が望まれる。今後は、具体的な技術課題が明らかになってきているので、それらを解決し実用化につなげることが期待される。
金属触媒作用を利用した規則性メソポーラスカーボンのグラファイト化による電気二重層キャパシタの高容量化 横浜国立大学
稲垣怜史
横浜国立大学
村富洋一
電気二重層キャパシタは、電極表面に電解質イオンを静電的に蓄えることにより充電するデバイスである。「かさ密度」「細孔径」を変えずに電解質イオンの吸着サイトを増やすことができればキャパシタの高容量化を実現することができる。本研究では、炭素材料調製時に金属触媒を微量添加することで、メソポーラスカーボンCMK-3を構成する炭素ネットワーク構造の部分的なグラファイト化するための条件探索を勧めた。グラファイト化を進めるFe金属触媒成分を添加することによって、CMK-3細孔壁の部分的なグラファイト化を達成し、Fe担持量の最適値は約0.2 mmol/g-SiO2であることを明らかにした。また部分的なグラファイト化を実現したCMK-3では7μF cm-2の充放電容量を得たが、目標とした10μF cm-2には到達しなかった。この達成には炭化温度の変更ないし触媒金属成分の変更が必要であると考えている。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも炭素材料調製時に金属触媒の添加により規則性メソポーラスカーボンの部分的なグラファイト化を実現し、充放電容量を向上できたことは評価できる。一方、さらなる充放電容量の向上を目指すにあたっては基礎研究に立ち戻り、充放電容量に有効な金属触媒成分をメソポーラスシリカに高分散に固定化する手法の検討から進める技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
単結晶Si及びSiCを用いた自己冷却デバイスの開発 横浜国立大学
中津川博
横浜国立大学
西川羚二
自己冷却デバイスは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタや絶縁ゲート型電界効果トランジスタ、中央演算処理装置などのパワー半導体デバイスからの発熱を低減化する為に提案され、これまで研究開発がなされてきた。今回、我々はN型単結晶4H-SiCウェハーを用いた自己冷却デバイスを開発し、市販のパワーMOSFETと組合せて構成された自己冷却デバイスに50Aの電流を印加した時、パワーMOSFET上部の平均温度が3.4℃低減されることを確認した。これは、単結晶4H-SiCが自己冷却デバイスの候補材料の一つとして有力であることを示唆している。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、N型4H-SiCの付与によりパワーMOSFETの上部温度を当初の目標2℃を超える3.4℃低く抑えることに成功したことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、実用化に向け本手法の費用対効果の試算や特許出願を進め自己冷却デバイスとしての実用化が望まれる。今後は、企業連携に向けた広報活動を展開し、実用化に向けた共同研究につながることが期待される。
電気モーターの大幅な低消費電力化を実現する<100>配向電磁棒鋼の製造技術開発 横浜国立大学
福富洋志
横浜国立大学
村富洋一
新たな集合組織形成メカニズム、“優先動的結晶粒成長機構”を見出した申請者らが、高温押出加工による電磁特性の優れた<001>繊維集合組織の付与がFe-3mass%Si鋼に期待できることから着手したものである。Al-Mg合金をモデル材として押出加工の可能性を検討することから開始した。その結果、予測と一致する<001>集合組織の発達が確認できた。しかし、この合金の高温圧縮変形で先鋭な集合組織が形成される加工条件と、押出加工で集合組織が発達する条件とは異なっていた。このことから、Fe-Si合金においても、これまでの高温単軸圧縮加工での集合組織発達条件と押出加工での加工条件は異なると考え加工条件を選定した。ダイス形状によって大枠が決定されるため、加工条件を大きく変えることができず、本研究期間内に目的の集合組織を十分な先鋭度で付与するには至らなかったが、条件をさらに追及すれば、目的の集合組織が実現する見通しが得られた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、集合組織の「先鋭化」による特性改善の可能性が示されたことは評価できる。一方、実用的可能性を検証するには、金型条件、加工条件を含めて多くの最適化条件検討が必要と思われるので、企業と連携した共同作業によるデータの積み上げが必要と思われる。あるいは、他の歪み導入手法も検討する必要があると思われる。今後は、レアメタルを使用しない電磁鋼板の性能向上を金属のミクロ組織制御で行うという提案は新規性があるので、実用化を目指した最適加工条件の検討が進展することが望まれる。
ピンポイント領域のpHセンサの試作と評価 東海大学
槌谷和義
東海大学
加藤博光
生体工学などの分野では、ビーカー等の巨視的環境での観察ではなく極微細領域でのpH測定の必要性が増してきている中、本申請課題は、ピンポイントでのpH変化の連続モニタリング測定を可能にするpHセンサを目指し、アンチモン電極法をコアに固体比較電極を考案、これらを同軸上に配置すること、数μm程度の極微小領域でのpHセンサを試作、評価を目標に研究を遂行した。その結果、直径50マイクロメートル程度の見かけ上、1本の同心円状pHセンサの開発を行い、標準液のpHと同センサにより検出された電圧との間に線形性の確認ができた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に細胞内あるいは組織局所におけるpH測定を目指し、新しいコンセプトによる電極を設計し、実際に性能試験を行った点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、電極の微小化と測定の再現性の限界を技術面から見極め、目標に対して最適な作製技術を検討することが望まれる。今後は、技術移転先、分野を決め、必要とされるニーズと性能を明確にして研究開発を進めるのが期待される。
骨誘導能を有する次世代骨セメント創製による新規顎骨再生療法の開発 神奈川歯科大学
松本剛一
よこはまティーエルオー株式会社
小原郁
顎骨再生の新規材料としての具備すべき要件である(1)生体吸収性(2)骨置換性(3)機械的強度の3つを備えた材料として考案した、リン酸カルシウム系骨セメント(骨セメント)に熱架橋したゼラチン顆粒を混合した骨セメント(CPC+gelatin)に、骨形成性タンパク質(BMP-2)固定化多角体(BMP2-PH)をサイトカイン徐放製材として混合することで、特に骨置換性を高めて短期間で成熟した骨を再生することが可能な部材の開発について検討した。実施した検討内容はビーグル犬下顎骨欠損部への移植モデルによる顎骨再生実験を行った。その結果、CPC+gelatinは強度的に安定し、下顎骨欠損部への移植後も咬合圧に耐えて十分に形態が維持されていた。またCPC+gelatin にBMP2-PHを併用すると骨再生能の促進効果が認められたことから、CPC+gelatinと BMP2-PHの併用効果の有用性も確認することが出来た。今後はBMP2-PH とgelatinの相互作用という観点から検討を行い、さらに徐放効果を高めた、骨置換性の良い生体吸収性材料の開発を行う予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、申請者らのグループが独自にBMP-2徐放性カイコ多角体を開発し、さらに、多孔性α-TCPを用いたスキャホールドによる骨成形法を併用した点に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、現時点のレベルでも、歯周病や抜歯後の歯槽骨の補添などによる顎堤形態の改善やインプラント床としての歯槽骨増成などに応用できそうであるが、骨量をどれだけ豊富にできるかがキーとなり、実用化が望まれる。今後は、骨量を増やすために、どのような形態付与が良いかさらに検討されることが期待される。
低磁場配向プロセスによるc軸配向Si3N4セラミックスの開発 公益財団法人神奈川科学技術アカデミー
煖エ拓実
公益財団法人神奈川科学技術アカデミー
唐澤志郎
SiCパワーデバイス実用化に向けて、従来品(放熱基板用で85〜95W/m・K)より高熱伝導率(150W/m・K以上)をもつSi3N4セラミックスの開発と、実用化に向けた低磁場配向プロセスの開発を目的として行われた。高熱伝導率Si3N4セラミックスの開発では、高熱伝導率を示すSi3N4のc軸の配向制御と、緻密化と粒成長を促進する焼結助剤(Y2O3-MgO)の添加により、目標を達成(149W/m・K)した。低磁場配向プロセスでは、β-Si3N4種粒子表面に磁化率の大きいグラフェンや黒鉛粒子を被覆した複合粒子の合成に成功した。焼結後、粗大なβ-Si3N4柱状粒子のc軸(長軸)方向は磁場に対して平行に配向していたことから、被覆量の最適化と複合粒子の分散制御で、さらなる高配向化が期待できる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に高熱伝導・高強度窒化ケイ素セラミックスの熱伝導性をc軸配向制御及び緻密化と粒成長を促進する焼結制御によりパワーモジュール基板として実用上画期的な材料を得たことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許出願もされ今後の研究開発も具体的かつ的確に計画されており、さらなる特性の向上とともに自動車等の高効率の電力制御機器として実用化されることが望まれる。今後は、産学連携を積極的に推進し実装モジュールでの性能や信頼性の評価と改善を推進し、実用化が加速されることが期待される。
アンテナ結合型高温超伝導THzレーザーの開発 長岡技術科学大学
加藤孝弘
長岡技術科学大学
品田正人
本本課題では、超伝導アンテナ結合型の固有ジョセフソン発振器の開発を目指して研究を進めてきた。第一に、独自のデバイス作製方法として極低濃度塩酸を用いBi2Sr2CaCu2Oxを極低濃度塩酸に浸漬させBiOCl結晶へと改質させる方法を再現性あるものとするために改質結晶の生成速度を詳細に調べた。その結果、pH1.65およびpH1.80の塩酸を用いた場合には結晶のc軸方向へは時間の平方根に比例した拡散律速機構、ab面内へは時間に比例した反応律速機構によって改質が支配されている事が分かった。また、pH1.5の塩酸を用いた場合には、レジスト下部が階段状に改質される特異な現象が発見された。また、同時進行で進めた発振特性の評価では、素子の自己発熱効果の影響がTHz発振に影響を及ぼすことが明らかとなった。現在、自己発熱効果の制御には至っておらず今後は得られた改質条件と併せて、素子の放熱特性の改善によって実用化デバイスとしてのTHz発振器の開発を進める。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、新規なテラヘルツ発振器構造が計画通り作製され、本研究の固有接合スタック作製法の優位性が実証された点は評価できる。一方、新たに発熱問題が出現し、当初計画した高周波電磁界シミュレーションやデバイス構造の最適化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、放熱の問題を解析し、素材、デバイス構造を既存技術と比較して優劣を見極めることが望まれる。
生体親和性発光ナノ結晶創製による非侵襲がん診断技術開発 長岡技術科学大学
多賀谷基博
長岡技術科学大学
品田正人
増殖・転移の遅い段階の「超早期」腫瘍を、生体親和性の高いマーカー材料によって細胞レベルで高感度に検出する診断技術が求められている。本研究では、生体親和性および発光効率の高いナノ粒子を創製し、細胞レベルで腫瘍部位を特定するイメージング技術開発を目標とした。その結果、生体親和性の高い色素分子の末端基を核形成場として水酸アパタイトおよび酸化チタンのハイブリッドナノ粒子を新規に創製し、粒子表面へがん細胞に対して特異的に結合・取込まれるリガンド分子を化学修飾する技術を確立した。さらに、開発した粒子は、腫瘍部位(サイズ: 2 mm以下)へ生体毒性なく効率的に結合・取込まれた。以上により、新規生体親和性発光ナノ粒子創製によって非侵襲がん診断の基盤技術を確立した。今後、がんの超早期予防・診断医療技術への展開を実施し、医療・バイオ分野へ貢献する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、材料をナノレベルから人工的に組み立てる手法によって、発光性色素を含有した無機ナノ粒子の合成技術を確立し、腫瘍イメージングに展開した独創的研究に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、個体レベルでの実験による性能評価は必須であり、医学分野の研究者との共同研究も視野に入れて検証を進めるなどでの実用化が望まれる。今後は、腫瘍イメージングのための発光プローブを開発するには、個体レベルでの検証実験が必須である。医学的見地に基づいたプローブの評価・改良がされることが期待される。
過酷環境で動作できる高い信頼性を持った非鉛強誘電体材料の開発 金沢大学
川江健
金沢大学
澤村奏絵
本研究では、500℃超の高温域を想定した過酷環境で動作可能な高い信頼性を持った非鉛強誘電体材料の実現を目標として、研究プロジェクトに取り組んだ。
目標に対する達成状況として、多元素同時置換BFO薄膜に対して最高温度450℃、104秒の記憶保持(自発分極の減衰量3.7%)を達成した。この結果は、数値目標とした最高温度500℃超に肉薄するものである事に加え、現状では同水準に達する強誘電体材料は世界的にも未だ実現されておらず、当該分野における将来の応用に向けた多元素同時置換BFOの優れた有用性が示された。
今後の展開として、メモリ・キャパシタデバイスとしての長期信頼性をさらに向上させる事、および医療応用分野での実用化を想定、各種の放射線照射に対する耐性検査を実施して実用化に向けた高い信頼性の確保に取り組む。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、開発した多元素同時置換BFO薄膜を用いて、高温動作について、当初の目標が概ね達成された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、知財の確保を優先することが望まれる。今後は、高温領域においては、材料以外にも影響があると思われるので、それらを含めた総合的なデバイスの信頼性を考慮して研究を進めることが望まれる。
発光性らせん高分子を利用した高性能蛍光キラルセンサーの開発 金沢大学
前田勝浩
金沢大学
渡辺奈津子
本研究では、光学不活性なポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体から高分子反応により一方向巻きのらせん構造を有する光学活性ポリマーを簡便に合成し、これらのポリマーが強い発光性を有している特徴を利用して、ゲスト分子のキラリティーを蛍光の変化として検知可能な蛍光キラルセンサーの開発を行った。その結果、誘導体化したキラル化合物に対して明確なキラリティー識別能を有していることを実証できた。今後は、側鎖構造の最適化により選択性の更なる向上を達成することで、迅速かつ簡便なキラル識別が可能ならせん高分子型蛍光キラルセンサーの開発を目指す。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、らせん共役高分子を用いて、新たなキラルの識別手法(蛍光センサー)の可能性を示したことについては評価できる。一方、キラル検出/識別法としての特徴の明確化と感度の向上に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、共役高分子のらせん構造や側鎖の置換基とキラル識別との相関を明確にして、合理的な分子設計をされることが望まれる。
エレクトロスプレーマイクロリアクターによる発光性ナノカーボン材料の高効率合成 金沢大学
比江嶋祐介
金沢大学
渡辺良成
本研究では、エレクトロスプレーによって生成するマイクロメーターサイズの液滴を反応場として利用して、発光性のナノカーボン材料であるカーボンドットの合成法の開発を行った。その結果、本手法で利用可能となる、印加電圧や送液流量など種々の操作因子を用いて液滴径を制御することで、従来の液相反応よりも制御性を向上させることが可能であることや、カーボンドットの発光特性を青色から黄色まで制御できることを発見した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、マイクロ反応場の提案は興味深く、マイクロドットの革新的製法に応用するとの着眼点は評価できる。一方、本手法の特徴である液滴径制御による三原色作り分け、急速加熱・急速冷却による収率・品質向上などに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、既存法を上回る可能性を示す実証データの取得や精密な原理検証がなされることが望まれる。
薄膜制御に基づく複合テクスチャを有する高機能化研磨パッドの開発 金沢工業大学
畝田道雄
金沢工業大学
成田武文
本課題では申請者による「研磨パッド表面性状評価法」と「研磨液(スラリー)流れ場評価法」、共同研究者による「プラズマによる機能性薄膜形成法」を融合させ、今後のグリーンデバイス用基板材料であるサファイアやシリコンウェーハの高能率研磨を可能にする「高機能化研磨パッド」の開発を試みた。具体的には、汎用研磨パッドに特殊な成膜を施すことを試み、その結果、耐摩耗性の高い成膜プロセスを確立することに成功した。さらには、汎用研磨パッドと比較して研磨レートの約1.3倍の向上を可能とすることにも成功した。今後、さらなる薄膜付与の最適化を試みることで当初目標とした約2倍の向上は達成できると考えている。また、基板表面精度の観点からの検討は今後の大いなる課題であり、今後も研究を継続・展開させる必要がある。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、従来の研磨パッドに対して本研究による改善の効果が得られたことは評価できる。一方、研磨レートに対して、目標とした約2倍の向上は達成できてはいない点、また既存パッドと比較してスクラッチ発生確率を1%以下を目標としているが未達成と思われる点が、今後の課題として残されており、研磨条件などの最適化とともにさらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、本研究は企業側のサポートが入ることでより効果的な成果が得られると思われるので、まずは産学共同開発につながるデータの蓄積が望まれる。
リン酸ジルコニウムによる希土類金属の選択的吸着回収に関する研究 山梨大学
熊田伸弘
山梨大学
服部康弘
酸性溶液中で希土類金属に対して高い吸着能を有する g-リン酸ジルコニウムについて、希土類金属吸着後に放射光X線回折データを用いてその結晶構造解析を行った。その結果、g-リン酸ジルコニウムの層間において3個のPO4四面体の酸素原子と3個の水分子の酸素原子によって配位された位置に存在していることがわかった。この結晶構造モデルを基に第一原理計算により、同構造を持つリン酸チタンおよびリン酸ハフニウムでの吸着反応の自由エネルギー変化を計算した結果、リン酸ジルコニウムだけが希土類金属を吸着可能であることが示された。また、メソポーラスシリカへのリン酸基の導入により、水溶液中の希土類金属を高効率で回収することに成功した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、リン酸ジルコニウムでの希土類金属の吸着メカニズムの解明とリン酸基を導入したメソポーラスシリカでより高効率吸着の可能性を示したことについては評価できる。
一方、実用化を目指し本課題にて得られたメソポーラスシリカにリン酸基を導入した化合物を吸着剤に用いた場合の回収効率の確認や希土類金属の高効率回収に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
PMMA/マイクロポーラスSiO2複合材料による有機−無機ハイブリッド Li イオン伝導性ポリマー電解質の開発 信州大学
清水航
信州大学
村上昭義
マイクロポーラスSiO2を複合化したリチウムイオン伝導性ポリマー電解質の開発を行った。無機酸化物粒子の添加は、ポリマー電解質の結晶化を抑制し、イオン伝導性が向上する。一方で、粒子の凝集による不均一化と、それによる添加量の制限が課題であった。本研究では、SiO2比率の向上と、それによるイオン伝導度の向上を目的として、マイクロポーラスSiO2を合成し、ベースポリマーとの複合化を試みた。本課題では、マイクロポーラスSiO2およびLiTFSIを複合した固体ポリマーの合成法を確立した。さらに、得られた固体ポリマーの伝導率は60℃で0.87×10-4 Ω/cm、70℃で1.33×10-4 Ω/cmに達し、従来の固体ポリマー電解質を上回る特性を実現した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、マイクロポーラスSiO2およびLiTFSを複合した固体ポリマーの合成法を確立し、固体ポリマーのイオン伝導率1.33×10-4 Ω/cmを実現したことについては評価できる。一方、実用化の目処となる10-3 Ω/cm達成に向けた技術的検討や耐久性などのデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、SiO2の役割や他のイオン源物質の検討や特許出願を含め実用化に向けた体制作りも視野に入れることが望まれる。
常温圧縮せん断法を利用した燃料電池用セパレータのマイクロ流路の成形に関する研究開発 信州大学
中山昇
信州大学
井上俊哉
本研究では、厚さが0.1〜0.2mm、曲げ強さが70MPa、体積抵抗率が10mΩ・cm、接触抵抗値*が10mΩ・cm2である燃料電池用セパレータを作製することを目標とした。さらに10〜100μmのライン アンド スペースからなるマイクロ流路を成形することを目標とした。Tiにカーボンナノファイバーの一種であるVGCFを均一分散させ、常温圧縮せん断法にて成形した結果、目標とした機械的性質および電気的特性を達成することができた。さらに、マイクロ流路を有する薄板を作製することもできた。今後は、大面積化を目標としてさらなる検討を行い、セパレータ材料として利用できるように研究を継続していく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、小サンプルではあるが曲げ強度、体積抵抗率、接触抵抗値の目標値を達成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、セパレーターとしての要求仕様について評価をするなどでの実用化が望まれる。今後は、加工条件の検討に留まらず、前工程で用いる複合体の体積率や要素粉末の種類、サイズ、アスペクト比や形態等の最適化も検討されることが期待される。
金属硫黄を複合化した高導電性炭素薄膜の開発 信州大学
藤森利彦
信州大学
村上昭義
本研究開発の目標は、金属硫黄・カーボンナノチューブ・グラフェンからなる複合炭素薄膜を開発することである。これにより、現行ITO代替となる透明電極としての応用展開をめざす。具体的には、グラフェンの高い光透過性を維持しつつ、微量の金属硫黄-カーボンナノチューブ添加による高導電化をねらいとして研究開発を進めてきた。最適な複合化プロセスを検討し、金属硫黄-カーボンナノチューブの最小添加量を決定した。金属硫黄-カーボンナノチューブ-グラフェン複合化により、グラフェンの光透過率をほとんど損なうことなく、導電性の向上が実現できた。品質のばらつきが技術的課題として残るが、原料の品質向上や薄膜作製の精密オートメーション化により、将来的な技術移転が見込めるレベルの研究成果が得られた。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、当初目標としたシート抵抗500Ω/□を大幅に超える最終目標のシート抵抗100Ω/□以下で良好な光透過特性を有する透明電極実現の可能性が示されたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許出願及び産学連携体制も構築されており、タッチパネルや太陽池だけでなく今後更なる用途拡大が期待される資源有用性の高い透明電極として実用化されることが望まれる。今後は、安定した薄膜特性の実現に向けた学術的検討の進展が期待される。
組物CFRPの自転車フレームへの適用研究 岐阜大学
魚住忠司
岐阜大学
馬場大輔
組物技術により「乗り心地の向上」という新たな機能を有する自転車フレーム材料の開発を行った。曲げ試験により組物パイプが従来パイプよりも優れた曲げ強度を有し、また、繊維配向角度制御により曲げ弾性率の向上が可能であることを示した。振動特性評価により、組物パイプが従来パイプよりねじり固有振動数を低くできる可能性を示した。また、波動特性評価により、組物CFRPが従来パイプに比べ振幅にしてある周波数帯で90%の波動伝播低減効果が得られることを示した。更に数値解析により、自転車のフレーム構造にみられる閉ループ構造による波動伝播抑制効果を明らかにした。これら結果より従来パイプによる自転車構造よりも乗り心地に優れた自転車フレームの可能性を明らかにした。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、組物CFRPが従来パイプに比べ振幅にしてある周波数帯で90%の波動伝播低減していることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、周波数帯への影響因子を明確にし、全ての周波数領域で従来CFRPパイプより優れた特性する構造を設計するとともに、人が快適に感じる周波数帯へ設計指針を明らかにし、実用化につなげることが望まれる。今後は、自転車フレームをターゲットにするのであれば、現行の自転車フレーム用CFRPパイプと比べ、組物パイプを自転車フレームに用いた場合の安全性、軽量化、強度などにおける優位性を明らかにし、社会還元につなげることが期待される。
蛍光ソルバトクロミズムを示すホウ素錯体の開発 岐阜大学
窪田裕大
岐阜大学
馬場大輔
蛍光ソルバトクロミズムを示す有機蛍光色素の開発を目指し、ホウ素錯体の合成を行った。5種類のホウ素錯体1-5が蛍光ソルバトクロミズムを示すことを見出した。これらのヘキサン中(低極性溶媒)およびアセトニトリル中(高極性溶媒)での最大蛍光波長Fmaxはそれぞれ、1 (Fmax: 467および542nm)、 2 (Fmax: 531および627nm)、3 (Fmax: 532および627nm)、 4 (Fmax: 543および686nm) および 5 (Fmax: 551および710nm)であった。今後、開発した色素へ導入する置換基をスクリーニングすることにより、蛍光波長の更なる長波長化とソルバトクロミズム特性の向上を検討する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、単核ホウ素錯体から二核ホウ素錯体に骨格を拡張することで、ある程度の蛍光波長の長波長化とソルバトクロミズムの特性の向上を達成したことについては評価できる。一方、色素骨格へ導入する置換基のスクリーニングや基本となるホウ素錯体の合成法の技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、蛍光波長の長波長化とソルバトクロミズムの特性の向上にはpush-pull効果が有効と考えられるので、push-pull共鳴構造が可能なピラジン核を有する二核ホウ素色素錯体の研究を追究されることが望まれる。
炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料のテキスタイル加工性、界面接着性、含浸性を考慮した界面設計 岐阜大学
仲井朝美
岐阜大学
馬場大輔
CFRTPは、界面接着性が低いという問題を有しており、界面接着性向上を目的とした樹脂や繊維表面の改質がおこなわれてきたが、含浸性やテキスタイル加工性が犠牲となっている。本研究では、CFRTPのテキスタイル加工性、界面接着性、含浸性の向上を同時に達成すること目的とし、炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の界面設計をおこなった。その結果、分散率を増加させ含浸性を向上させるために、サイジング剤量の少ない炭素繊維を用い、繊維損傷の抑制と分散率の向上の双方に最適なクランクの振幅を選択することが有効であることが明らかとなった。さらに、最適な撚り数の撚り加工、または最適な処理濃度の表面処理をおこなうことにより、成形性および力学的特性に優れた連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料が作製可能となることがわかった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料(CFRTP)のテキスタイル加工性、界面接着性、含浸性を同時に向上させることを目的に、撚り加工条件や表面処理条件等を検討していずれも当初設定した目標値を達成し、新規特許出願を行ったことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、界面接着性の改善、均一含浸性の向上、生産性の向上などの課題を克服し、実用化に進むことが望まれる。今後は、既に企業と共同研究も実施しているので、早期の社会還元につながることが期待される。
高分子の半球をテンプレートに用いたキャビティ構造圧電体膜の作製とこれを用いたシングルエレメント超音波トランスデューサの試作 静岡大学
脇谷尚樹
静岡大学
斉藤久男
高分子の半球をテンプレートに用いたゾルゲル-キャスティング法によりキャビティ構造を有する圧電体厚膜を作製し、これを用いてシングルエレメント型の超音波トランスデューサを試作すること目的とした。研究開発の結果、目的とする構造は当初の方法では作製できなかったが、本研究で開発したスリップキャスティング-スピンコーティング法により達成された。作製したシングルエレメント型の超音波トランスデューサからは基本波と、それの奇数倍と偶数倍の両方の高調波が発生すること、およびその超音波が収束することが明らかになった。さらに、複数のシングルエレメントを2次元に並べたアレイ型の超音波トランスデューサも作製し、同様の特性が得られることを明らかになった。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に当初提案の作製方法の問題点を他の方法で克服して成果が得られたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、膜厚依存性などの基本特性を早々に検討した上で、早期の特許出願を行うことが望まれる。今後は、すでに企業との共同開発の計画があるので、事業化へ進展が期待される。
天然由来の光学活性体からなるらせん高分子を用いた高性能キラル材料の開発 名古屋大学
飯田拡基
名古屋大学
野崎彰子
入手容易な天然由来の光学活性有機分子であるアミノ酸やシンコナアルカロイド、リボフラビン(ビタミンB2)を、側鎖あるいは主鎖に導入した種々のらせん高分子やそれらの誘導体を合成した。得られた光学活性高分子やその誘導体の不斉触媒能や光学分割能について詳細に検討した結果、それらが高度な不斉選択性や不斉識別能を示すことを見出し、ユニークな高分子不斉触媒や光学分割材料として機能することを明らかにした。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、天然由来の光学活性物質を化学修飾して触媒に用いる試みに関しては評価できる。一方、目標性能に未達の理由の解明に向けた分子レベルの理論計算などに基く技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、選択性や触媒回転の改善を図ると共に、企業との連携についてどのレベルで進めていくのかロードマップを準備されることが望まれる。
異種金属の冷間スポット鍛造接合法の開発 名古屋大学
石川孝司
名古屋大学
山本鉱
異種金属の接合に関して、申請者らが開発した冷間鍛造を利用したスポット接合法により軽量化効果が高い高張力鋼板と高強度アルミニウム合金板のハイブリッド継手の接合に成功した。現段階で綱母材破断が発生する実用十分な接合強度が得られており、実用プロセスたり得るとの判断を下した。有限要素解析による変形と応力の可視化により、界面での摩擦仕事量と真実接触面積に関する2パラメータが接合可否基準となり得ることを見出し、接合支配因子の解明および工法最適化の見通しが立った。当初の目標を100%達成したので、既に出願済みの特許に加え、新規特許出願の検討に入っており、今後は本接合法の最適化と適用拡大、実用化検討に移行する。この成果によりモビリティ車体設計における安全性と軽量化の両立。最適化が高い自由度の元で実現できるようになり、COI STREAMビジョンのなかのモビリティ超軽量化技術に貢献する。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、異種金属の接合に関して、申請者らが開発した冷間鍛造を利用したスポット接合法により軽量化効果が高い高張力鋼板と高強度アルミニウム合金板のハイブリッド継手の接合に成功したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、多種多様な材料の組み合わせによる検証が望まれる。また、理論的解明が望まれる。今後は、疲労特性、高温特性等のデータも取得し、実用化に進むことが期待される。
高品質立方晶SiC溶液成長 名古屋大学
宇治原徹
名古屋大学
虎澤研示
立方晶SiCは、双晶欠陥や積層欠陥が形成されやすいという問題がある。我々は、これまでに溶液法による高品質立方晶SiCの成長の研究開発を行い、過飽和度による速度論的多形制御技術により双晶欠陥の完全抑制に成功してきた。本研究では、最後に残された欠陥である積層欠陥の低減技術を確立し、世界最高品質の立方晶SiCバルク結晶を実現することを目的とした。3C-SiCの積層欠陥は、種結晶に用いる6H-SiCの貫通転位から発生することがわかった。そこで、成長初期にマクロステップによる転位変換現象を利用して、種結晶から貫通転位を減少させた。その結果、積層欠陥密度を大きく低減させることに成功した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、独自の発想により高品質立方晶SiCの溶液成長に取り組み、短期間で欠陥低減メカニズムの立証に結び付けたことは高く評価できる。一方、本課題にて得られた欠陥低減メカニズムによる溶液成長プロセスの最適化や新たな視点での制御手法の必要性など高品質立方晶SiCの溶液成長の実現に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。本課題の実現は学術、産業応用の両面で大きな期待が寄せられており、今後の更なる研究の進展が望まれる。
高性能熱伝材料窒化アルミニウムの効率的な合成方法の探索 名古屋大学
勝野弘康
名古屋大学
虎澤研示
本研究においては、高性能熱伝材料である多結晶窒化アルミニウムの効率的な合成方法の探索をおこなった。融液成長法における特有の条件を明らかにし、その合成メカニズムの知見を得ることができた。この知見をもとにして、窒化アルミニウムの高密度化、低コスト多結晶体作成のための手立て、さらには現状の問題点を明らかにできた。多結晶体サイズの大型化には至らなかったため、引き続き研究開発を進めていく。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、融液成長法による材料の合成装置を考案し、実際の合成実験をおこなったことは評価できる。一方、実用的に有効な大型サイズの多結晶体の合成はできていない。提案された仮説の検証が必要と思われるが、ブレークスルーできる新しい発想の導入も必要かと思われる。今後は、新規なバルク体生成法であり、成功すれば産業的視点から意義は大きいので、研究の発展が望まれる。
軽量マルチマテリアル構造を実現する樹脂/金属浸透構造界面の開発 名古屋大学
小橋眞
名古屋大学
押谷克己
本研究課題では、次の2項目を実施した。
(1) オープンセル型多孔質AlおよびFeを基板上で直接合成(スポンジ構造層付与)
Al系試料については、NaClをスペーサーとしたホットプレス法により目標が達成できた。また、Fe系試料では、C粉末をスペーサーとして用いた反応プロセスにより、多孔質層を合成することができ、目標を到達した。
(2) 樹脂のオープンセル型構造層への浸透
Al系、Fe系のいずれも、実験条件を適正な範囲で制御することにより、エポキシ樹脂が含浸した。また、Al系試料について接合強度を測定した。気孔率を適正な値にすることにより、母材破断が生じるレベルの接合強度をもつ接合部材を得ることに成功した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、Al基板に関してはスポンジ構造と樹脂浸透接合、Fe基板に関してはスポンジ構造について目標を達成し、金属表面の多孔質層の効果を示したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、特にFe基板の樹脂浸透に係る課題を解決し汎用性が高いことを示すなどでの実用化が望まれる。今後は、本手法の大面積や曲面形状への適用を検討することでより実用性の高い技術とされることが期待される。
ヨウ素ドープカーボンナノチューブを用いた透明導電膜の開発 名古屋工業大学
川崎晋司
名古屋工業大学
山田秀夫
ヨウ素の新しいドープ法として開発した電解酸化法をさまざまな直径のカーボンナノチューブに対して試み、チューブ径に依らずに効率的にヨウ素ドープが可能であることを明らかにした。チューブ径とドープされたヨウ素の構造の関係についてはXRD実験によりある程度明らかになった。構造の詳細は今後予定しているXAFS実験により明らかになることが期待される。ヨウ素ドープしたナノチューブをガラス基板上にスプレーコートすることにより透明導電膜の作製を行った。作成した導電膜について4探針法により電気抵抗の測定を行った。ヨウ素ドープにより電気抵抗が約1.5桁減少すること、およびヨウ素ドープ量に比例して電気抵抗が小さくなることがわかった。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、独自の電解酸化法によりヨウ素ドープしたカーボンナノチューブ(CNT)により透過率95%、シート抵抗21Ω/□の特性を有する透明導電膜を形成する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、共同研究先企業と更なるシート抵抗の低減、塗膜形成、耐光性などの実用特性の評価を進め新規の透明電極などでの実用化が望まれる。今後は、抵抗低減の機構や透過率と抵抗の関係などの基礎事項を明確にし実用化に向けた検討がなされることが期待される。
高強度および低摩擦係数を両立させる自己潤滑性金属基傾斜機能材料の開発 名古屋工業大学
佐藤尚
名古屋工業大学
岩間紀男
本研究では、強度および摩耗特性に優れたCu基軸受部材を念頭にし、Cu母相中にグラファイト粒子が分散した自己潤滑型Cu基傾斜機能材料の開発を試みた。強度と摩耗特性を両立させるために、グラファイト粒子の最適分布およびTi添加による母相の合金化を行った。その結果、強度および摩耗特性の両方に優れた傾斜機能材料を製造するためには、比較的大きなグラファイト粒子を少量添加することが必要であることが分かった。また、Cu母相中にTiを添加することで傾斜機能材料の強度および耐摩耗性の改善に成功した。以上より、高強度および優れた摩耗特性を両立した自己潤滑型Cu基傾斜機能材料の設計指針を提案できた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、グラファイトの分散によって高潤滑性、耐摩耗性、高強度化を狙った研究で概ねの当初目標が達成し、実際の素材を鋳造法で製作し特性を評価できた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、大型部材の製造技術の確立、技術課題の明確化、利用技術とリンクした性能、競争力の検討、中空軸受の開発などが挙げられており、次のステップへ進み、実用化につながることが望まれる。今後は、回転機器に適用されれば、省エネルギー、長寿命の観点から社会に還元できるので、企業との共同研究を進めて、成果につながることが期待される。
垂直磁化方式のトンネル型スピンフィルター素子の改良に関する研究 名古屋工業大学
田中雅章
名古屋工業大学
山田秀夫
本研究では室温での垂直磁化方式のトンネル型スピンフィルター効果の実用可能性の探索を目的に、垂直磁気異方性を持つ平坦な強磁性絶縁体コバルトフェライト薄膜のパルスレーザー堆積(PLD)法による作製及び、磁気トンネル接合(MTJ)素子の磁気抵抗(MR)測定によるトンネル型スピンフィルター効果の評価を行った。
立体型の遮蔽板を用いて成膜をすることで、PLD法による表面平均粗さ0.1 nm以下の平坦かつ垂直磁気異方性を持つコバルトフェライト薄膜の作製に成功した。また、垂直磁気異方性を持つFe層を参照層とした「Fe/MgO/コバルトフェライト」を基本構造とする膜面垂直型のMTJ素子を作製し、MR測定を行った。MR測定では、室温で1.7%のトンネル磁気抵抗効果が得られ、垂直磁化方式のトンネル型スピンフィルター効果の観測に成功した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、立体型の遮蔽板を用いたPLD法により、製膜条件を適正化することに成功し、室温(300K)でのスピン注入を実証できた点は、評価できる。一方、技術移転の観点からは、垂直磁気異方性エネルギーと格子ひずみとの関係を明確化、スピン注入効率を高める方策の検討が必要である。今後は、歪を積極的に導入する成膜法を確立するとともに、成膜中等の欠陥の導入による歪緩和を抑制する検討が望まれる。
機能性色素フタロシアニンのフッ素コーティングによる長寿命化の実現 名古屋工業大学
徳永恵津子
名古屋工業大学
沖原理沙
我々は長期間安定に使用できる機能性色素として全16個の水素原子をトリフルオロメチル(CF3)基で置換したフタロシアニンの合成を目標として研究を行った。原料となるヨードフタロニトリルの合成にはオルトリチオ化反応を低濃度条件下にて行うことでヨウ素を3つまで導入することに成功した。その後CF3化反応を行い、フタロシアニンを合成することで12個のCF3基を持つフタロシアニンを合成した。また水素原子を持たずフッ素原子とCF3基のみを有するフタロシアニンの合成を行ったが、反応中フッ素原子が外れてしまうことわかった。今後も実験を継続し、反応条件の検討を行うことで目標であるCF3基のみを有するフタロシアニンを合成し、安定性や溶解性、凝集形態などの詳しい物性を解析していきたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目的物の一歩手前までの合成と12のトリフルオロメチル基を有するフタロシアニンの合成に成功したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、当初の目的物に拘らず現状のものなどでの実用化が望まれる。今後は、現保有化合物の光学的特性や熱特性のデータとを取得しサンプルも準備することで、企業との接触を図ることが期待される。
半導体の持続的な進化を支えるGaN系半導体向けプロセス「イオン注入+局所アニール」技術に関する研究 名古屋工業大学
分島彰男
名古屋工業大学
山田秀夫
結晶中に大きなストレスを内包しているために一括高温アニールが適用できないSi基板上のGaNに対して、イオン注入と局所アニール技術によりウエハ面内でキャリア濃度の制御が可能か検討を行った。主目標であったn形キャリア濃度〜1019cm-3には到達しなかったが、レーザーアニール法を用いることにより、必要な個所のみを加熱して注入イオン(Si)の活性化が可能であること、さらに、3×1017cm-3程度のドーピングでは、ほぼ100%の活性化を得られることが分かった。移動度が低い点に関しては、レーザー照射時間(アニール時間)を延ばすことで改善できる見込みである。以上から、本研究開発で取り組んだ技術は、GaN-on-Siトランジスタ構造を自在に作製可能とする基盤技術として有望であり、実用化に向けて今後さらに詳細な検討を進めていく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、イオン注入したSiをレーザーアニールにより活性化することを確認した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、レーザーの照射時間などの条件による効果を詳細に調べる必要がある。今後は、レーザー照射による結晶のダメージ等の状況の観察を行って、研究を進展していくことが期待する。
アルミ鋳造用高性能結晶粒微細化剤の開発 名古屋工業大学
渡辺義見
名古屋工業大学
岩間紀男
鋳造Alの強度を向上させるためには、結晶粒微細化剤が不可欠である。現在用いられているAl-Ti-X系の結晶粒微細化剤では、板状でかつ対称性の悪い結晶構造を有するAl3Tiが異質核として働く。結晶の対称性の悪さゆえ、異質核としての性能は結晶面によって異なるが、占有率の高い板面(001)面が、一番性能の悪い面となってしまっていた。したがって、板状から球状へと粒子の形態を変化させることが可能であるならば、異質核としての性能を向上させることができる。そこで、平衡には存在できない球状Al3Ti粒子を含む結晶粒微細化剤をガスアトマイズと放電プラズマ焼結により実現した。開発した結晶粒微細化剤を用いて鋳造実験を行ったところ、微細化能を有することを見出したが、非常に短時間でフェイディング現象が発現した。この現象を解明することを目的とし、結晶粒微細化剤の熱安定性を調査したところ、ガスアトマイズにより作製した球状Al3Ti粒子が時効中に小さな粒子に分断されることが見いだされた。したがって、開発した結晶粒微細化剤の工業的利用のためには、ガスアトマイズで作製した球状Al3Ti粒子の粒界構造を制御することが必要である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標とした3点の課題はいずれも完全には達成されたとは言えないが、その効果が示されたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、鋳造後の保持時間の経過と共に起こるフェイディング現象の解消、結晶粒微細化剤の工業化のために作製した球状粒子の粒界制御法の検討などの残された課題を克服し、実用化に進むことが望まれる。今後は、最終目的である従来材の2倍の微細化方法の開発を早く達成されることが期待される。
ニットの編成テクニックを活用したCFRP用基材の開発 あいち産業科学技術総合センター
田中利幸
あいち産業科学技術総合センター
池口達治
インレイ及びプレーティングのニット編成テクニックを活用し、高付加価値なニット基材CFRPを開発した。
インレイのテクニックを用いて、炭素繊維をニットに編成しながら横方向にも炭素繊維が挿入されたニット基材CFRPを作成した。作成したCFRPは横方向の強度が向上し、異方性の小さいCFRPを製造することが可能となった。また、 プレーティングのテクニックを用いて、炭素繊維とアラミド繊維が捻じれなく同時に編み込まれたニット基材CFRPを作成した。アラミド繊維を加えることにより、耐衝撃性に優れたCFRPを製造することができた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、プレーティングのテクニックを用いて、炭素繊維とアラミド繊維が捻じれなく同時に編み込まれたニット基材CFRPを作製でき、耐衝撃性に優れたCFRPを製造する技術を確立していることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、応用展開を拡大するためにはさらに詳細な製造条件を検討して高性能化と低コスト化の実現が必要と思われるが、既に企業と共同で製品化に取り組んでいるので、早急な実用化が望まれる。今後は、今回の研究成果は様々な複雑形状の製品を一体成形できる技術として、様々な分野での応用が期待できるので、広い分野での社会還元が期待される。
液中プラズマ法による機能性セラミックスナノ粒子の合成 あいち産業科学技術総合センター
行木啓記
あいち産業科学技術総合センター
齊藤秀夫
各種磁性材料、電子材料等の製品用原料粒子として使用されている機能性セラミックスでは、焼結温度を下げるため30nm〜100nm程度のナノ粒子が用いられている。本テーマでは、通常合成には高温が必要である機能性セラミックスナノ粒子について、常温下で高温結晶相ナノ粒子が得られる液中プラズマ法での合成を目的とした。これまで液中プラズマではγアルミナ粒子が合成されており、それを考慮しMg,Al塩水溶液をプラズマ処理したところ、数十〜百数十nmのスピネルナノ粒子が得られた。また、同じスピネル構造を有し工業材料として重要な、亜鉛フェライトおよびニッケルフェライトナノ粒子の合成も行い、相の生成を確認した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、水溶性塩溶液中プラズマ法により機能性複合酸化物微粒子が作製できることを明らかにしたことについては評価できる。一方、生成複合酸化物粒子の単相化、粒径制御などの基礎的な技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
今後は、技術移転に必要な課題解決の具体的手法の確立に焦点を絞り、研究開発を加速することが望まれる。
ポリ酸イオンを用いた抗ウイルス作用を持つ消毒剤の開発 中部大学
石川英里
中部大学
岡島敏夫
抗ウイルス活性を持つポリタングステン酸イオンを用いた新しい消毒剤の開発を目指している。この消毒剤の実用化を妨げている問題はこのポリ酸イオンを十分に供給できないことであった。そこで本研究ではポリ酸の大量合成法の確立を目的とした。その結果、研究開始時にタングステンベースで約25 %であった収率を63 %まで向上させることに成功した。これまでの合成法で得られる生成物は不純物を含むために再結晶による精製を必要としたが、今回見出した合成法では目的とするポリタングステン酸をさらに精製する必要がない純度で直接、得ることができ、合成手順の簡便化に成功した。今後はより実用化に近づけるためにこの合成を実験室の10倍以上のスケールで実施できる合成システムを構築することを目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ポリタングステン酸イオンの収率を63%まで上げたことについては評価できる。一方、次亜塩素酸、ピューラックス、イソジン、イセフォールなどの既存品との競争力や優位な使用場面の検証に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、重金属の回収も含めた量産を踏まえた検討も行うことが望まれる。
2層化シード層を用いた酸化スズ系フルスペクトル透明電極の開発 中部大学
山田直臣
中部大学
岡島敏夫
TiO2-NbO2/ZnOからなる2層化シード層を用い、ガラス上に100配向したTa:SnO2(TTO)薄膜を形成し、高い透明性と導電性をもつ透明導電膜を得ることに取組んだ。光学シミュレーションから、シード層の厚さとTTOの電子濃度の調整にて広い領域で高い透明性を実現できることがわかった。実験的には、2層化シード層を用いて100配向したTTO膜の成長に成功した。しかし、高い導電性は得られなかった。原因は、シード層構成元素がTTO膜へ拡散するためと考えられる。導電性の向上には、成膜プロセスの低温化やシード層材料の再検討等が必要である。 導電性以外の目標はおおむね達成できた。導電性の目標を達成するための課題が明かになったので、今後の取組みにより目標を達成できると思われる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、独自の2層化シード層を用いて光透過性に優れたTa:SnO2(TTO)薄膜が得られたことは評価できる。一方、膜の導電性の向上については、成膜プロセスや界面状態の原子・分子スケールのメカニズム解明などの基礎的な研究やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、成膜条件の最適化だけでなく、熱力学データ等を参考にした化合物形成の可能性を考慮したシード層材料の選択など学術的な検討も望まれる。
自己組織化単分子膜による毛織物へのドライプロセスはっ水加工技術の開発 あいち産業科学技術総合センター
村井美保
あいち産業科学技術総合センター
吉村裕
自己組織化単分子膜(SAM)形成技術を利用した毛織物へのはっ水加工技術を確立することを目指し、研究開発を行った。毛織物にはっ水性能を付与するためのSAM処理条件について検討し、処理布の物性を評価した。SAM処理条件は、織物の水分率を高めることにより一定の効果が得られることが分かった。また、初期性能として水滴接触角140°以上、はっ水度4級を得られる条件を見出すことができ、目標を達成した。また、この条件で処理布の洗濯耐久性も向上できることを確認した。物性面では、風合い測定の結果から、曲げ剛性、せん断剛性がSAM処理により和らぎ、ソフトさを向上させる傾向があることを確認できた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、SAM形成技術を利用し、ドライプロセスによる羊毛繊維のはっ水加工において、従来技術との差別化を図ろうとし当初の目標は概ね達成されたと評価できる。一方、当該プロセスの特長として、フッ素系薬剤を使用しない低環境負荷が上げられているにもかかわらず、SAM加工において、含フッ素薬剤が評価対象になっており、含フッ素薬剤を使用しない加工技術の構築に向けて、さらなる技術的検討や、データの積み上げが必要と思われる。今後は、研究成果が応用展開された場合には、社会還元に導かれることが期待できるので、耐久性や風合いの改善など、残された課題を克服し、実用化に進むことが望まれる。
高融点材料の摩擦撹拌接合を実現するサーメット製ツール材料の開発 独立行政法人産業技術総合研究所
細川裕之
独立行政法人産業技術総合研究所
渡村信治
摩擦撹拌接合ツールに求められる特性は高耐高温酸化性、優れた機械的特性である。超硬合金は優れた機械的特性を有するが、耐高温酸化性に乏しい。他方、TiCN系サーメットは耐高温酸化性に優れる。しかし、機械的特性に劣る。よって本開発では、高耐高温酸化性、優れた機械的特性を有するTiCN系サーメットの作製を目的に、高温耐酸化性(曝露試験(800℃×2時間)で酸素増加量0.1kg/m2以下)であり、硬度1000HV以上、抗折力3000MPa以上を目標とした。組成の最適化を図った結果、耐高温酸化性0.045kg/m2、硬度940HV、強度2910MPaを達成した。耐高温酸化性は目標を達成し、硬度、強度はそれぞれ目標値の94%、97%に達した。また、本材料で摩擦攪拌接合を行い、継手強度75%を達成した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ツールの耐酸化性、硬度、曲げ強度、ならびに被加工材の継ぎ手強度に関して、ほぼ数値目標が達成されていることは評価できる。一方、接合実験後にツール自体の著しい変形(あるいは摩耗)が認められるといった問題が顕在化しているので、高温での硬度、強度の上昇、耐酸化性の向上がについて、さらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、近年、産業界において鋼やチタン合金等の硬質・高融点材料を被加工材とする摩擦撹拌接合の需要は急激に増しているので、それに答え得るツールとして期待されるので、継続した研究の進展が望まれる。
有機・無機ハイブリッド材料を用いた高放熱・高耐熱メタルコア基板の開発 三重大学
青木裕介
三重大学
横森万
産業電力機器、電気自動車向けの放熱基板材料としての応用を目指して、高耐熱性、高絶縁性を有する有機・無機ハイブリッドを利用した電着技術によるメタルコア基板の作製技術の検討を行った。その結果、熱伝導率2.5W/mK以上、絶縁耐力95kV/mm以上の性能を有し、300℃で連続使用してもその性能は変化せず、また、300℃までの耐熱衝撃性能を有するアルミナコーティング膜を金属上に形成可能となり、従来にない高性能基板が作製可能となることが明らかとなった。今後は実用化に向けて、セラミックス層の薄膜化、高耐電圧化(5kV以上)、高熱伝導化(10W/mK)を目指すとともに、大面積基板作製技術の確立を目指した実用化研究を進めていく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、300℃の高温まで長期耐熱性を有する、実装基板の新しい材料の概念を検証したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、熱伝導率と絶縁耐電圧を向上させることなどでの実用化が望まれる。今後は、素材の組合せもあり実験材料は多岐に亘り膨大な実験とデータの蓄積が必要となるので、早い段階で企業との共同研究の形で取進めることが期待される。
高耐久性導電性高分子開発に向けた新規モノマーの効率的合成法の開発研究 三重大学
八谷巌
三重大学
横森万
当初掲げた電気伝導度、空気中における安定性、耐熱性のいずれもがPEDOTの2倍の値を示す新規PEDOT誘導体の効率的製造プロセスの構築を行うことはできなかったが、市販の2,3-ブタンジオンから、わずか2工程で置換基を有するモノマーのEDOT誘導体が合成できることを明らかにした。今後、2,2-ジメトキシ-2,2-ジメチル-1,4-ジオキサン誘導体合成の収率向上、およびその誘導体からモノマーのEDOT誘導体合成の反応条件を確立する。さらに、EDOT誘導体の重合による新規PEDOT誘導体を合成し、その電気伝導度、空気中における安定性および耐熱性を評価し、有望なモノマーへ絞り込んだ後、工業的モノマー合成プロセスの構築ための新規加熱方式の検討を実施する予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、PEDOT関連材料の簡便な合成の可能性が示されている点については評価できる。一方、ジオキサン4からチオフェン5への変換反応について収率の向上と適用基質の拡張に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、PEDOTの置換基と性能の関係も解析されることが望まれる。
AlN/AlGaN超格子構造を用いた高品質AlN導電性テンプレート基板の作製 三重大学
平松和政
三重大学
伊藤幸生
本研究では、n型伝導性を有するAlN/ AlGaN超格子構造と高品質n型AlN導電性テンプレート基板の作製を目標に、転位密度の異なるAlN下地基板上にn型AlN単結晶薄膜の成長、低キャリア濃度(1015cm-3)でのn型伝導性の制御の評価、凹凸ストライプ基板(AlN/サファイア基板)上への高品質Si添加AlN成長層の作製を行なった。
低キャリア濃度ではn型伝導性が制御されたAlGaN成長層を得ることができた。また、周期溝加工AlN/サファイア基板上へボイドを形成ながらAlN結晶成長を行なうことで、表面平坦性が良好な高品質Si添加AlN成長層が得られた。
今後は、超格子構造を用いることとCH3SiH3の流量を変えることで、更に高濃度のAlGaN成長層が得られるものと考えられる。また、得られた成長層の上に超格子高導電層を成長させることで、導電性を有しかつ高品質であるAlN膜の作製を実現が可能であると考えられる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、高品位基板を用いることにより成長層の欠陥を減らし価電子制御とある程度のキャリア濃度を実現できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、超格子構造による結晶品質の改善が望まれる。今後は、周期溝構造基板の活用という提案は興味深いが、早期に素子を試作し優位性を検証することが期待される。
高性能アルミ電解コンデンサを実現する環状構造含有新規二塩基酸の開発 三重大学
溝田功
三重大学
横森万
身の周りの電子機器に必須なアルミ電解コンデンサの高機能化及び長寿命化の鍵は、コンデンサを構成する電解液にある。従来品に用いられている電解液は、セバシン酸や1,6-DDAなどの二塩基酸であり、その性能限界はコンデンサ雰囲気温度105℃、耐電圧550V、寿命3000時間である。今回、耐電圧650V、寿命5000時間を目標とする短工程で合成可能な環状構造を有する二塩基酸の開発を行った。その結果、入手容易な原料から一段階で合成することに成功し、また、それらの評価試験を行ったところ、良好な溶解性及び耐熱性を有し、更に耐電圧が700Vを超える有効な環状二塩基酸の開発に成功した。今後の展開として、合成収率の向上およびシンチレーション値の改善により極めて性能の高い二塩基酸の開発が可能となる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初予定を超えた実用化レベルに近い性能のアルミ電解コンデンサ用の有機電解質を合成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、想定外であったシンチレーションの制御問題を克服するなどでの実用化が望まれる。今後は、企業との共同研究により、開発したキー化合物の様々な類縁体についての系統立った構造と性能に係る検討を短期間で効率的に遂行されることが期待される。
軽量低負荷環境を創出する多機能制振チタン合金の設計開発 鈴鹿工業高等専門学校
万谷義和
鈴鹿工業高等専門学校
澄野久生
Ti-Nb合金において、組成・熱処理・塑性加工を組み合わせた組織設計制御法により得られる高い制振性を、実用的に展開できる形で評価するため、本研究開発で装置を組んで温度範囲-20〜120℃、周波数範囲500〜12kHzのデータを測定した。その結果、組織因子を適切に使い分けることにより、各範囲で損失係数を0.01以上にできることを明らかにした。また、制振性と結晶構造、その弾塑性変形挙動と機械的性質を評価し、これらの相関関係を明確にした。これらの実験結果により得られた知見をベースとして、各用途でのニーズを満たしつつ、低コスト化を視野に入れた多機能制振チタン合金の開発を推し進めていく。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、制振性の評価法の確立と最適な制振チタン合金の設計に対する目標値は達成していることは、評価できる。一方、今回得られた最適組織条件などは、特許化できると考えられるので申請が必要と思われる。今後は、今回得られた成果は、音響、医用、海洋、航空宇宙用の機器に留まらず、一般産業機械や自動車など適用可能範囲も非常に広いと思われるので、今回の成果の応用展開とともに低価格化のための技術開発を進めることが望まれる。
レーザ重畳照射法による微細形状金型の高度焼入れシステムの開発 滋賀県立大学
小川圭二
滋賀県立大学
安田昌司
提案したレーザ重畳照射法を用いることで、従来法では不可能であった高精度かつ均一な硬度分布が得られることが実証され、技術的優位性が明らかになった。しかし、硬度分布のバラツキ値としては、目標値に至っておらず、課題解決に向けた新たな取り組みが必須である。その一方で、早期の技術移転を実現するために、現状レベルで適応できる製品についての調査を平行して進める。これが実現されれば、携帯端末用シート切断用極小刃物金型やμTASチップ成形用極小金型など、ごく少面積を高精度に均一硬化処理でき、鉄鋼材の機械加工と同じ機上で取外さずに処理が行える低コストな工程集約型工作機械システムが期待できる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも炭素鋼S45Cを用いた焼き入れ処理の実験では、当初の目標値は達成されていないものの、従来のレーザ照射に比べて硬さのバラツキ、硬化深さのバラツキが低減され、提案手法の有効性が示されていることは評価できる。一方、硬さバラツキの目標値を達成していないので、さらな改善、研究の継続が必要と思われる。今後はマシニングセンターで加工終了後、引き続き焼き入れ処理を行う本提案は、金型加工分野に貢献できる技術であるので、開発ターゲットと特性目標を絞って実用化に進むことが望まれる。
液相法由来前駆体により作製した低温熱処理赤色発光体の開発 滋賀県工業技術総合センター
山本和弘
滋賀県工業技術総合センター
山中仁敏
本研究は液相法により前駆体を使用することで、従来法(1400℃以上)よりも低温で熱処理を行うことでMn4+を発光中心とした赤色発光体粉末を作製し、その発光特性や粒子径などを評価することを目的とした。
ホスト材料としてMgO-GeO2系を、発光中心活物質としてMnを用いた。原料をそれぞれ溶液に溶かし込んだ後に撹拌することで、均質性の高い前駆体を得た。得られた前駆体は各熱処理温度で加熱を行い、熱処理条件およびMn添加量による発光特性の評価を行った。その結果、1200℃付近での熱処理により蛍光強度が最大となり、最適なMn添加量の見出すことができた。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ゾルゲル法により低温熱処理で赤色蛍光材料であるMnを固溶したMg4GeO6結晶が得られたことは評価できる。一方、ゾルゲルプロセスの最適化や発光量子効率の向上等に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
小型希土類分析装置の実用化に向けた技術開発 京都大学
今宿晋
関西ティー・エル・オー株式会社
安部英理子
本研究では、これまで研究責任者が製作した小型希土類分析装置を実用化に向けて性能を向上させることを目指した。具体的には、焦電結晶を用いて発生する電子線強度を上昇させて発光強度を10倍にし、電子線強度を安定化させて再現性の良いデータが取得できるようにすることを目標とする。焦電結晶と試料間の距離を0.1 mmにすることで、発光強度がこれまでの11倍になり、焦電結晶の温度変化率を138 °C min-1にすることで、再現性の良いデータが取得できるようになり、当初の目標をほぼ達成できた。また、焦電結晶上に金属製の針を立てることで、さらに発光強度が上昇する可能性があることがわかった。今後は、さらに発光強度を向上させ、試料の前処理条件を確立すれば、希土類元素を含むリサイクル材料の識別にこの装置を応用することができると考えている。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に分析装置の感度が11倍になり、再現性のよいデータが取得されたことから、当初の目標は達成されていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、実用化に向けての課題も明確になっているので、更なる性能向上と実用化が望まれる。今後は実用化に向けて、明らかになった研究課題を解決するとともに、リサイクル現場に携帯できる小型装置の設計、装置のコストなどの検討も必要と思われ、産学共同研究に向け、関心のある企業を発掘するための努力を継続して行うことが期待される。
高効率純スピン流=電圧変換材料の開拓 京都大学
白石誠司
京都大学
宮川勝彦
(1)純スピン流=電圧変換材料であるPyをどの基板上に成長するかによって効果の大きさをある程度制御可能である。
(2)Pyは現状、もっとも高効率に純スピン流=電圧変換を実現できる材料である。
(3)スピン軌道相互作用の小さな材料であっても高密度高効率に純スピン流を注入できれば純スピン流=電圧変換は実現できる。
本研究成果については当初想定していた連携予定企業から注目していただき、2014年4月より共同研究のフェイズで研究を推進していくことになった。また、論文を2本投稿中、または準備中の状況である。特許に関しては今後連携企業から順次出していくことになると思われる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にスピン軌道相互作用の小さな材料でも、純スピン流-電圧の変換が可能であることが示された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、成果については早めの特許出願が望まれる。今後は、企業との共同研究を活用して、実用化に向けて研究が進展することを期待する。
フェリックリーチングを利用した安全・安価な化合物半導体エッチング技術の開発 京都大学
野瀬嘉太郎
京都大学
宮井均
本研究では、半導体基板の新しいエッチング技術として、Fe3+/Fe2+の還元反応を利用したフェリックリーチングを用いた技術を提案し、その実証を試みた。基板としては、GaAsを用い、Fe3+源としてFeCl3を用いた。FeCl3溶液、臭素水、HCl溶液の比較から、Fe3+が酸化剤として働き、基板がエッチングされることを実証した。FeCl3を水に溶解させるだけでエッチング液を作製することができ、エッチング時にガスを発生せず、また室温で十分エッチング効果が得られるため、簡便で環境にやさしいエッチング技術を開発できた。さらに、Fe3+濃度など種々の条件を変化させて実験を行い、実用化に対して有用な知見を得た。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、鉄イオンの還元反応を利用したフェリックリーチング法による化合物半導体(GaAs、InP)のエッチングの可能性を実証したことから、本研究は当初の目標をほぼ達成したと評価できる。一方、技術移転の観点からは、フェライト処理による廃液処理の検討等、次のステップへ進めるための技術的課題は明確にされており、その解決による実用化が望まれる。今後は、従来の手法に比べて安価なコスト、有害気体を発生しないなどの高い安全性を有し、比較的小規模の半導体企業にとってもハードルの低い技術であることから、早期の技術移転が期待される。
ナノ微細加工を応用したプラズモニックレンズ・アレイ素子の研究開発 京都工芸繊維大学
武田実
京都工芸繊維大学
小島義己
表面プラズモン応用光学デバイスとして有望なプラズモニックレンズの研究開発を進め、構造最適化、ナノ加工技術のブラッシュアップを行った。波長405nmの半導体レーザー用として、従来は単一のスパイラル形状のスリット開口のみの構造でサブ波長サイズの集光スポットを得ていたが、光利用効率が低いため光記録(加工)に適用するには問題があった。今回は新たに2つの構造のレンズを設計し、電磁場シミュレーションにより、サブ波長の集光特性を保持しつつ光利用効率の大幅な改善が可能なことを確認した。なおレンズはFIB加工等により作成し、微細パターン加工精度を評価した。また集光特性を、レジスト露光により評価する光学系の準備を整えた。今後はこの露光実験により特性を評価し、レンズアレイ作製用のナノインプリント方式の検討を進める。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、シミュレーションによる検討で、高い光利用効率の目処が立ち、実用化への可能性のある成果が得られたことは、評価できる。一方、技術移転の観点からは、素子の性能向上を利用した集積化したレンズアレイの作製と評価を早めに行うことが望まれる。今後は、重要な考案・改善策については特許出願が重要であり、必要な出願を行う必要がある。
棒状分子液晶と円盤状分子液晶間を光相転移する液晶の液晶温度の低温化 龍谷大学
内田欣吾
龍谷大学
筒井長徳
コアとなるトリフェニレン環に6つのアゾベンゼンメソゲン部をエステル結合で連結した誘導体は、分子形状の変化に伴って棒状液晶相であるスメクチックA相(SmA)と円盤状液晶相であるレクタンギュラーカラムナー相(Colr)を形成し、紫外光(365 nm)照射強度の変化によりSmA相とColr相間を等温制御できることを報告してきた。研究計画に上げた枝分かれ側鎖の導入では目的とした液晶発現温度域を100℃以下にすることはできなかったが、エステル結合部をエーテル結合に変えた誘導体を合成したところ、相転移温度が約150℃低下し、37−70℃の温度範囲で液晶相を示す誘導体の合成に成功した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、エステル結合をエーテル結合に換えることで液晶転移温度が大幅に下がることを見出したことについては評価できる。一方、棒状分子液晶と円盤状分子液晶の両相の安定性とエステル結合・エーテル結合との関連性など、光相転移の発現温度の低下のための分子設計の指針となる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、実用化に向け企業との連携も検討されることが望まれる。
Naフラックス法による半極性面高品質GaNバルク基板開発 大阪大学
今出完
従来の+c面GaNバルク液相成長技術と、非極性面結晶成長技術を融合することで、世界でも最大級(およそ2inch径)の非極性面GaNバルク基板の作製に成功した。
Naフラックス法により得られた非極性面GaNバルクの主面X線ロッキングカーブ半値幅はおよそ50秒であり、従来の液相成長により得られたc面GaNバルクと同程度の高い結晶品質を有していることが確認された。
本研究成果により、従来技術とは異なる成長面を制御した新しい手法による、低コスト・大口径基板技術の実用化において大きな進展が得られた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に2インチ直径相当のバルク非極性GaN結晶を成長できることを示したことは大きな成果につながることが期待でき評価できる。
一方、技術移転の観点からは、実用化に向けた課題が明確になり更なる研究の進展によりLEDやパワーデバイスなどでの実用化が望まれる。
今後は、共同研究先企業との良好な研究開発体制を活用し、本結晶を用いたデバイスの試作や評価が期待される。
籾殻由来シリカの半導体用封止材への適用可能性に関する検証試験 大阪大学
近藤勝義
キレート反応を利用した籾殻中の金属不純物の除去方法として、旋回流方式による大型強制撹拌装置を適用したところ、クエン酸濃度0.1%以上の条件下では、籾殻焼成灰中の炭素量は0.1%以下となり、シリカ純度も99%を超える高純度化を達成した。土壌由来の金属不純物等の合計量も0.2%未満に低減でき、発癌性の恐れがない非晶質・高純度シリカ生成が可能となった。封止材用原料へ適用すべく、粉砕シリカ微粒子から火炎化処理により球状シリカを作製した。現行鉱物系シリカに比べて籾殻由来シリカの粒状化率が増大し、封止材用原料としてより適切であることを検証した。また粉砕加工前の鉱物系原料(数十cm)に比べて、籾殻由来シリカ原料は数mmと微細であり、かつ多孔質構造を有することで、数μmレベルにまで微細粉砕する際の加工時間の短縮化=低コスト化が可能といった経済的利点を確認した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、農業廃棄物の籾殻に含まれるシリカに着目し、半導体封止材に適用する球状高純度アモルファスシリカの合成法を開発するとともに量産化基礎検討や低コスト化の目途が得られたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、本シリカの樹脂との均一混合分散性やその混合物の絶縁性などの実用評価を行い、半導体封止材用原料として実用化されることが望まれる。今後は、実用化に際し複数の企業との連携が必要と思われ、これら企業との連携体制を構築し実用化されることが期待される。
抄紙プロセスでつくるフレキシブル透明導電紙 大阪大学
古賀大尚
大阪大学
清水裕一
植物セルロースナノファイバーでつくる「透明な紙」をフレキシブル透明基板として、抄紙技術を銀ナノワイヤやグラフェン、PEDOT/PSS等の先端導電ナノ材料の均一塗布プロセスとして応用することにより、電気を流す透明な紙を開発した。この「透明導電紙」は光透過率90%でシート抵抗値8 Ω/□を達成し、プラスチック基板上に従来塗布法で作製した場合と比べて、抵抗値を約112分の1まで低減させることに成功した。また、折り畳んでも導電性を保つ優れたフレキシブル性も実現し、電子ペーパーの作製にも成功した。今後、製紙産業、スマートフォンやタブレットのようなモバイル産業、分散エネルギー供給源を支える太陽電池産業等、広範な分野への実用展開が期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ITOと同等の導電性・透明性を持ち、折り畳みが可能で平滑な導電膜を作成し、電子ペーパーの試作にも成功していることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、表面の平坦性を向上させ耐久性を確認するなどでの実用化が望まれる。今後は、特許出願を速やかに行い、タッチパネルメーカーなどと製品化に向けた開発を加速されることが期待される。
自己形成による新規カーボンナノ構造の制御と生成方法の開発 大阪大学
河野日出夫
大阪大学
松村晃
カーボンナノチューブの自発的潰れによるナノリボン/ナノ四面体形成と、カーボンナノチューブの多重成長という我々の独自技術を発展・融合させて、カーボンナノ構造の新展開を目指した。カーボンナノ四面体/ナノリボン構造においては、曲げ及びジュール加熱に対する挙動を透過型電子顕微鏡その場観察により明らかにし、またカーボンナノチューブ内カーボンナノチューブ成長においては、生成条件の最適化を行った。さらに、ナノチューブ内ナノチューブ成長におけるリボン化を確認した。これら研究成果により、カーボンナノチューブに基づく新規ナノ構造創成の可能性を飛躍的に高めることができた。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ナノテトラヘドロン/ナノリボン構造がタングステンの融点(約3400℃)程度までの非常に優れた熱的安定性を示すことを明らかにしたことは評価できる。一方、カーボンナノチューブの形態制御に関し、独自の自発的潰れによるナノリボン/ナノ四面体形成、カーボンナノチューブの多重成長をもとに新規で有用なナノ構造の創製に向け、基礎的な技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
高比強度チタンクラッドマグネシウム合金薄板のレーザー溶接技術開発 大阪府立大学
井上博史
大阪府立大学
亀井政之
マグネシウム合金の表面に軽量で耐食性と意匠性の良好なチタンを圧延接合したチタンクラッドマグネシウム合金(TCM)板の実用化を推し進めるために、強度と成形性のバランスがとれ、曲げ加工性が良好な2層AZ61Mg/Tiクラッド薄板の溶接管を製造することを想定して、レーザー突合せ溶接継手の作製とその特性評価を行った。構成金属の融点が大きく異なるため、融点の高いチタン層の表面をレーザー加熱することにより突合せ溶接が可能かどうかを検討した結果、適切なレーザー溶接条件下で良好な継手効率を有するAZ61Mg/Tiクラッド薄板突合せ溶接材が得られた。今後の展開として、最適条件下でレーザー溶接したTCM薄板角管を試作したい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、チタンクラッドマグネシウム合金のレーザークラッド接合において、最適条件がみいだされたことは評価できる。一方、技術的には、界面状態の観察や接合メカニズムの解明が必要と思われるとともに、使用装置に依存しない普遍的な最適条件の表示が必要と思われる。今後は、協力川下企業を見つけて使用用途に応じた接合を実現し、社会還元されることが望まれる。
カーボンナノコイルの大量合成を可能にする触媒とプロセスの開発 大阪府立大学
岩葡q宏
大阪府立大学
赤木与志郎
本研究では、カーボンナノコイル(CNC)の工業的な大量生産の実現を目指して、装置構造が非常に簡単なロータリーキルン型反応器を試作し、ニッケル・鉄・銅からなる触媒粒子を用いてさまざまな条件のもとでCNCの合成実験を行った。CNCの生成量は合成条件(反応時間、反応器回転速度、触媒仕込み量、等)や触媒粒子の形態に強く依存し、これらを最適化することで流動層型反応器を用いたカーボンナノチューブの製造と同程度まで向上できた。また、CNCの形状を触媒粒子の組成により調整できることを示した。CNC生産量をさらに大きくするには、反応原料ガスと触媒粒子との気固接触の向上が必要であり、そのために反応器の内部構造の改良などを今後進めていく予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、安価で安全な防音・防振材料としてのカーボンナノコイル(CNC)の大量合成に関して、装置設計の基礎となる反応炉が試作でき、触媒や合成条件に関する基礎的な知見が得られたことは評価できる。一方、CNC生成量の向上や形状制御や収率などに加えカーボン繊維、カーボンナノチューブに比べた定量的な優位性の確認など実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、他の炭素源や研究者が見出した新規複合触媒などにより更なる生成量の増加が望まれる。
Ni基金属間化合物合金を用いた新規多機能コーティング材料の開発 大阪府立大学
金野泰幸
大阪府立大学
阿部敏郎
溶射・肉盛りでは、表面に付与したい機能に応じて溶射材料が選定されるが、金属系の溶射材料で耐熱性、耐摩耗性、耐食性を兼ね備えたものはなく、その開発が望まれている。本研究では、研究代表者等のグループが開発したNi基超々合金を用いて、低温から高温にかけての耐摩耗性と、耐環境性を兼備した新規の高機能コーティング技術の開発を行った。Ni基超々合金粉末を用いてプラズマ溶射法によってSUS304基材にコーティングを行った結果、密着性のよい皮膜が得られ、さらにこれを熱処理することで、本合金特有の2重複相組織が形成し、当初目標であった600HV以上の硬さを実現することが出来た。今後は溶射材料の合金組成や溶射条件等を最適化し、さらなる皮膜特性の向上を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標の、密着性、硬さ、耐食性を達成し、開発材を用いた溶射コーティングの製造特許を出願していることは評価できる。 一方技術移転の観点からは、コーティング層の熱処理条件と硬さの関係の明確化、溶射のままで目標の硬さ・密着性を課題として挙げており、その克服を通じて実用化に進むことが望まれる。今後は、耐熱部品への応用の可能性があるが、適用分野をある程度絞って、高温特性等の目標設定を行い、社会還元につなげることが期待される。
ポリマレイミド系超耐熱ナノハイブリッド材料の開発 大阪府立大学
松本章一
大阪府立大学
稲池稔弘
定序配列ラジカル共重合を活用してマレイミド系コポリマーの繰り返し構造を精密制御し、官能基で表面修飾したシリカナノ微粒子とハイブリッド化することにより、光学特性と優れた耐熱性を併せ持つ新規耐熱高透明ポリマーハイブリッド材料を合成した。マレイミド系コポリマーに導入した反応性の側鎖アリル基をチオール‐エン反応に利用し、表面をチオール基で修飾したシリカナノ微粒子と分子レベルで複合化することによって、250℃以上の熱変形温度と400℃以上の熱分解開始温度に加えて優れた透明性をあわせもつ耐熱透明ポリマーハイブリッド材料を開発した。コーティング材料として十分な透明性や耐熱性に優れた材料が開発できた一方でフィルム用途向けの高シリカ含有ポリマレイミドの設計には機械的強度を改善したさらに分子レベルでハイブリッド化する材料設計が不可欠であることを明らかにした。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、精密な構造制御と合成法を用いて耐熱性・透明性など光学特性の優れたシリカ含有のマレイミド系材料を作成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、ハイブリッド構造のネットワーク化などで機械的強度を上げるなどでの実用化が望まれる。今後は、製膜による物性評価だけでなく他の成形法とその物性評価による適用拡大も検討されることが期待される。
高機能ハイパーブランチポリマーの新規ワンポット合成と熱硬化性の制御 大阪市立大学
佐藤絵理子
大阪市立大学
田中豪太郎
高機能ハイパーブランチポリマーの新規ワンポット合成法を確立し、重合条件により官能基導入率を制御できることを明らかにした。また、得られたハイパーブランチポリマーは自発的に熱硬化し、硬化剤フリーの架橋性ポリマーとして利用できることを見出した。官能基や官能基導入率により熱硬化性を制御できること、熱硬化により耐熱性が著しく向上しその制御が可能であることを明らかにし、当初目標を十分クリアした。さらに、揮発性有機化合物削減に効果を発揮する高機能性材料としての有用性を示し、実用化に向けて大きく前進した。さらなる物性評価により、材料価値をさらに高められると期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、可溶性ハイパーブランチポリマーのワンポット合成と熱硬化反応により、接着性に優れた材料を作成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、材料特性やコストなどを既存品と詳細に比較するなどでの実用化が望まれる。今後は、オリジナリティの高いポリマーなので材料特性は広い観点から取得されることが期待される。
積層型歪抵抗薄膜を用いた高温小型オイルレス圧力センサの作製 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所
筧芳治
地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所
岡本昭夫
本研究では、室温〜400℃以上のガス温度まで対応可能な圧力調整式流量制御器に必要な(SiC/Cr/SiC)積層型歪抵抗薄膜を用いた高精度の小型高温圧力センサを作製することを目的とした。本研究実施の結果、SiC膜とCr膜間へのTiCバッファ膜の挿入およびCr薄膜作製時の酸素流量制御により、(SiC/TiC/CrOx/TiC/SiC)積層膜において10以上の室温におけるゲージ率と±100ppm/K以内の電気抵抗の温度微分係数を同時に実現することができた。そして、この積層膜を用いて試作した圧力センサの出力は、従来と比較して大きく向上したが、温度上昇とともに減少した。本センサの実用化のために、この出力の温度依存性の改善を目指した研究が今後必要である。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、感度(GF)向上と温度依存性(TCR)低減の両特性を改善した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、高温でも利用可能なセンサーの開発と実用化が望まれる。今後は、高温での動作特性の改善のために、成膜条件の最適化と、多層膜構造の検討が必要と考えられる。
ナノポーラスガラスの室温インプリントによる光学素子の実現 神戸大学
今北健二
神戸大学
鈴木茂夫
無機材料の新しい微細加工技術として、ポーラスガラスのインプリントに注目し、サブマイクロスケールのインプリントの実現を目標として、研究を行った。一般的な分相性ポーラスガラスに対し、アルカリ処理、熱水処理を施すことで、従来よりもポロシティが高く、透明度の高いポーラスガラスの作製に成功し、その結果、室温大気雰囲気下のインプリントにより、100nmの回折格子構造を10nm程度の精度で転写することに成功した。紫外域から近赤外域をカバーする広い範囲で高い透過率を有することから、従来の樹脂ナノインプリントでは実現が困難であった、紫外域あるいは近赤外域用のサブ波長光学素子への応用が期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に酸処理、アルカリ処理、熱水処理を組み合わせることによりインプリント精度を1桁向上させるとともに紫外域から近赤外域の広い範囲の波長領域で高い透過率を実現したガラス材料のナノインプリント加工技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、複雑な構造の成形の可能性を検討し光学素子などでの実用化が望まれる。今後は、産学連携を進め光学デバイスなど本技術の特質を活かした新たな微細形状加工技術として実用化されることが期待される。
高次構造セルロース微粒子材料の創成とその物性評価 神戸大学
南秀人
神戸大学
河口範夫
本研究は、セルロースと汎用高分子を微粒子内という局所場レベルでの複合化を行うことにより、物性の飛躍的向上したサスティナブル複合微粒子材料の創製を目指した。セルロース微粒子は条件を変化させると、その多孔構造の制御が可能であることを明らかにし、多孔構造だけでなく中空構造の制御にも成功した。さらに、汎用高分子との複合については、シード重合を応用した湿式合成法についてその可能性を示すなど、当初の目的はほぼ達成できた。さらにセルロース粒子に関して当初予想していなかった複屈折構造や扁平状粒子など新たな機能性微粒子の可能性についても見出すことができた。今後は、無機化合物との複合について検討を行い、その湿式プロセスについて検討を継続していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ナノレベルで複合化した、様々な形態のセルロース/PMMA複合粒子を合成する技術は評価できる。一方、技術移転の観点からは、複合化した粒子の物性や特性について更に検討するなどでの実用化が望まれる。今後は、セルロースのモルホロジーについても整理すると共に、具体的な対象製品を見出し、企業と共同開発をされることが期待される。
砂糖の新規加熱熔融特性の創出による食品加工技術開発 兵庫県立大学
坂本薫
兵庫県立大学
八束充保
市販のグラニュ糖(スクロース結晶)の純度は99.9%以上と試薬並みであり、日常的には品質に差があるという認識なく使用されている。融点に大きな差があるものがあり、加熱時の色や食味も異なってくるが、その原因は解明されていない。本研究では、低融点および高融点のグラニュ糖とその粉砕糖を用いて加熱熔融特性を検討した。粉砕するだけで低融点の砂糖の融点は高温へと移行し、DSC分析やX線回折の波形が変化した。加熱による着色状況はその温度と加熱時間により一様ではなかった。融点変化の機序を解明して砂糖の加熱熔融時の着色状況や熔融状況をコントロールできるよう研究を継続し、食品業界の品質管理および食品加工技術の開発につなげたい。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、加熱熔融時の挙動特性を融点測定により詳細に検討したことについては評価できる。一方、本結果に基づき加熱熔融の機序について考察し、再検討した技術的課題に向けたデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、食品業界における品質の異なる砂糖の使用状況やその理由、品質等のニーズを把握して、応用展開の目標を明確にすることが望まれる。
0.1秒で100℃に自己昇温する瞬間発熱ナノ粒子の開発 兵庫県立大学
生津資大
兵庫県立大学
上月秀徳
目標は、粉末射出成形や霧化加熱法を用いてナノ〜サブミリサイズの発熱微粒子の製作技術を開発することである。まず、粉末射出成形でサブミリサイズのテトラポッド型多孔質Al粒子を作製し、それに発熱機能を付与することに成功した。次に、多孔質ナノ粒子製作装置を設計・開発し、ポリスチレンビーズとシリカゾルの混合ミストを用いて多孔質ナノ粒子の試作を行い、多孔質ナノ粒子の作製に成功した。条件を種々変化させ、様々な粒径、空隙率、空孔径の多孔質シリカナノ粒子を製作できた。溶融塩プラズマ電解法で作製したシリカ粒子の還元を試みた結果、酸素の比率が大幅に低下して還元効果を確認できた。達成度は80%程度である。今後は未到達の多孔質シリカナノ粒子の完全還元と、空隙へのTi堆積術の確立を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、瞬間的に100℃まで自己昇温する発熱ナノ粒子を作成したことについては評価できる。一方、技術移転の観点からは、早期の特許出願を検討する過程で強い特許にするためのデータを取得するなどでの実用化が望まれる。今後は、興味深い素材なので、アプリケーションの可能性を広げるためにも本技術の広報活動にも努めることが期待される。
炭素材料におけるエッジ炭素の定量分析技術の開発 兵庫県立大学
村松康司
兵庫県立大学
上月秀徳
エッジ炭素の識別・定量分析技術の開発を目的として、エッジ炭素のX線吸収端構造(XANES)のシミュレーションを試みた。計算には第一原理計算手法CASTEPを用い、炭素数が100個程度の巨大クラスタ計算ができる計算機環境を整えた。まず縮合多環式芳香族化合物と炭素数が50個程度のクラスタの計算から、水素終端エッジ炭素は、CK端XANESにおけるπ*ピークの低エネルギーシフトとπ*〜σ*ピーク領域に特異なピークを生じることがわかった。この特徴をXANES上で測定することによりエッジ炭素を分析できることが示唆された。精度を高めるためにC96H24クラスタを計算したが、このような巨大クラスタの計算には、クラスタモデルの構造最適化が重要であることが判明した。今後、構造最適化法を検討して巨大クラスタのXANESシミュレーションを完成させつつ、エッジ炭素を制御した炭素材料のCK端XANESとの比較からエッジ炭素の識別・定量技術を確立する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、C数100個程度の炭素材料について、放射光による軟X線吸収分析と吸収スペクトルの理論計算から、エッジ炭素を識別し、その定量化の可能性も示したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、放射光分析を更に活用し、より複雑なクラスターモデルを構築するなどでの実用化が望まれる。今後は、本技術を用いた放射光分析サービスの展開に向けて、炭素材料に係る放射光分析技術の知財権の取得を検討されることが期待される。
深絞り加工による高機能ハイブリッドクラッド容器成形技術の開発 兵庫県立大学
原田泰典
兵庫県立大学
上月秀徳
異種材料を組み合わせたクラッド容器は、工業製品として幅広い分野で利用されている。しかし、組み合わせる材質に制約があることやクラッド材自体に良好な成形性が要求されることがある。そこで、本研究では複数枚の異種金属を重ねた状態で深絞り加工を試み、破断などの異常を生じないクラッド容器作製条件を明らかにすることを目標とした。その結果、軽金属薄板をチタン薄板でサンドイッチした構造である異種金属積層板からの容器成形のための深絞り加工条件を明らかにし、目標とした容器薄肉化と容器寸法が得られ、当初の研究開発目標を達成することが出来た。今後は成形した容器の形状評価や強度評価について明らかにする計画である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、総板厚1mm以下で3層(Ti-Al-Ti)の複数工程深絞りを行い、角部で10%以下の減肉に抑えることが目標を達成できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、利用時に要求される性能、たとえば層間の密着度、強度など、利用時のニーズから来る要求を早急につかみ、利用分野を特定したデータ収集を行い、実用化されることが望まれる。今後は、基礎的な技術開発を継続すると共に、商品化の対象を絞り、そこで必要とされる性能、ニーズを明確にした技術開発をおこない社会還元につなげることが期待される。
低次元分子結晶を用いた電流励起有機レーザーの可能性探索 奈良先端科学技術大学院大学
柳久雄
奈良先端科学技術大学院大学
戸所義博
電流励起有機レーザーを目指して、強発光性でロバストな活性材料として(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー(TPCO)結晶を用いて一次元光閉じ込め構造をもつ有機電界効果型トランジスタ(OFET)を作製し、その光励起発光特性とトランジスタ特性を評価した。多結晶蒸着膜を加工した一次元構造において、結晶グレインをマイクロキャビティとする光励起下でのレーザー発振を観測し、そのOFETは正孔のみが注入・輸送されるp型のユニポーラ特性をもつことがわかった。また、TPCOをエピタキシャル成長させたニードル状一次元単結晶を用いてOFETを作製した結果、粒界をもつ多結晶膜一次元構造に比べ、2桁高いmh=3.4×10-1 cm2/Vsの正孔移動度が得られた。しかし、どちらのOFETにおいても電子の注入・輸送は起こらず電流励起発光は観測できなかった。今後、電子注入層の形成と電子トラップを軽減するバッファ層の挿入が必要であると結論づけた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、コオリゴマー(TPCO)結晶を用いて一次元の光閉じ込め構造をもつ有機電界効果型トランジスタを作製し、光励起下でのレーザー発振を観測した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、光励起レーザー発振の共振器構造と、電子注入について改善が望まれる。今後は、電流励起による有機レーザー発振が実現されれば、大きなイノベーションにつながるので、今後の研究の進展が期待される。
有機ELディスプレイの一般普及を実現する低コスト新規材料の創出 岡山大学
岩崎真之
岡山大学
平野芳彦
本研究では、われわれが開発したパラジウム触媒反応によって、実用的な有機 EL ディスプレイ材料であるトリフェニレン誘導体を低価格に提供することを目的として、検討をおこなった。その結果、パラジウム/ホスフィン触媒系を用いることで、調製容易な出発物質から目的の化合物を安価かつ簡便に合成することに成功した。また、本手法は基質一般性に優れており、巨大な化合物ライブラリを構築することができた。今後は、合成したトリフェニレン誘導体を用いて実際にデバイスを作成して、有機 EL ディスプレイとしての性能を評価することで、実用的な高機能・高寿命の新規材料の開発へと展開する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、青色蛍光発光材料としてトリフェニレンに注目し、触媒的クロスカップリング反応で様々な誘導体を導いたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、得た化合物の当該用途に必要な基礎物性、発光量子収率や耐久性を明らかにするなどでの実用化が望まれる。今後は、ワンポットの効率的な合成法ではあるが、Pd触媒の完全除去を含め、より温和でより高収率の合成法としてブラッシュアップを図ると共に、得た化合物のEL現象を活用する分野を幅広く視野に入れることが期待される。
リン酸化反応を利用したポリビニルアルコール系難燃材料製造技術の開発 岡山大学
沖原巧
岡山大学
齋藤晃一
ポリビニルアルコール系材料のリン酸化反応において、リン酸塩とのマイクロ波加熱を利用したリン酸化法を見出し、反応条件の最適化等を行った。本反応を用いると有機溶媒を利用せずに反応時間も非常に短縮することができることがわかった。また、反応を促進する因子も解明し、リン酸化度を制御することが可能となった。またこの反応を用いると、固体表面への、リン酸基の導入は可能であることがわかった。難燃性の評価については、リン酸化したポリビニルアルコールを加工したフィルム等では、目標の難燃性を得られたが、表面にリン酸化反応を施したフィルムでは、十分な難燃性を付与できなかった、そのため、解決方法としては、リン酸化したポリビニルアルコールを加工段階から加えてフィルム等を成形する必要があることがわかった。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、マイクロ波加熱によりポリビニルアルコール系材料をリン酸化したことについては評価できる。一方、連続工程での適用や、フィルムや繊維状材料への応用に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、接着や金属分散の用途での有用性が期待できるので、メーカー等のニーズを把握し適した用途を見つけることが望まれる。
革新的な潤滑特性を有する酸化グラフェングリースの開発 岡山大学
木之下博
岡山大学
薦田哲男
本研究では酸化グラフェンの優れた潤滑特性の適用範囲拡大を目指し、酸化グラフェンをグリース状にして、今まで実現できなかった無害で高面圧摺動でも適用できる高粘度潤滑材の開発を行った。摺動材料としては、ボール材料を超硬とし、基板はSUS304を用いた。この組み合わせは、酸化グラフェンを水に分散した分散水の時に高い摩擦性能を得たものである。グリースは金属セッケンでは無く、無害性を加味し食品に添加物から水の粘度を高める物質を選び配合した。その結果、酸化グラフェンの濃度などが摩擦係数に大きく影響することが明らかとなった。 当初目標とした成果が得られていない。中でも、酸化グラフェンとるカルボキシメチルセルロース(CMC)とを用いた潤滑剤は当初予想したものと逆の結果になり、酸化グラフェンをグリース状にすると摩擦係数が大きくなり、その結果摩耗深さも深くなった。酸化グラフェン分散水に水溶性増ちょう剤であるカルボキシメチルセルロース (CMC)を混合した高粘度潤滑剤は、摩擦係数が高いが通常グリース潤滑するような部分、例えば転がり摩擦における振動減衰性の向上という逆の発想をすると次のステップにつながるような成果が得られる可能性があるので、目的を見直した検討、評価も必要と思われる。今後は、今回の取組は予想と全く異なった結果になったが、それはそれで意義があることであり、振動を抑制したい場合に適用できる可能性があり、計画を再度見直して、成果につながる研究を継続されることが望まれる。
ロバスト水素社会実現に向けた水素製造技術の多様化:高性能カーボンナノチューブ光触媒の創製 岡山大学
高口豊
岡山大学
今井俊夫
太陽光を利用したオンサイト水素製造技術への応用を目指したカーボンナノチューブ光触媒の改良について検討し、助触媒である白金使用量の大幅な削減を達成するとともに、これまで必要であった添加剤(電子リレー)を不要としたより実用的な光水素発生系の構築に成功した。さらに、シェル部の改良により可視光量子収率の目標値である50%を超える世界最高値(53%)を達成した。改良型カーボンナノチューブ光触媒について特許出願を行った。また、実用化を目指した検討を民間企業と連携して行い、技術課題の抽出を行った。今後はオンサイト水素製造技術への応用へ向けた検討を加速させ、太陽光エネルギー変換効率の向上、耐久性・信頼性の向上、そしてスケールアップに関する研究開発を行う。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、可視光量子収率の目標値50%を超える世界最高値(53%)を達成し、改良型カーボンナノチューブ光触媒について特許出願を行った点は大いに評価できる。一方、技術移転の観点からは、触媒としての耐久性の評価・改善を進め産学連携によるオンサイト水素製造などでの実用化が望まれる。今後は、さらなる研究の進展により早期に実用化されることが期待される。
超高強度で超低抵抗の超軽量カーボンナノチューブ線材の開発 岡山大学
林靖彦
岡山大学
薦田哲男
基板上に長尺で高密度に成長したカーボンナノチューブ(CNT)から、バインダー無しに直接高強度で低抵抗の軽量CNT線材を開発する。CNT線材の実用化には、引っ張り強さや抵抗率の特性を向上させる必要がある。紐状に撚って作製するCNT線材には、多数の長尺なCNTの接合箇所がこれらの物性の向上を阻んでいるため、本研究では、炭化水素雰囲気中でCNT線材に通電しCNT間を接合する方法を提案した。真空中で通電することでCNT線材の機械的・電気的特性が向上し、炭化水素を導入することでさらに向上が確認できた。CNT線材は、自動車の組み電線など電線代替として有望であり、さらなる物性の向上に向けた研究開発を行う。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、独自のCNT繊維作製技術を基に導電性と機械的強度を向上させる技術として炭化水素ガス中での通電加熱が有効であることを検証したことは評価できる。一方、基礎的な研究及び当初目標の導電線などでの応用可能なレベルのCNT繊維の長尺化などの技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
高分子ゲルによる新規な反応場の構築と金属ナノ粒子作製 広島大学
後藤健彦
広島大学
榧木高男
本課題では高分子ゲル内で鉄イオンの還元反応を行うことで磁性ナノ粒子を作製し、高分子ゲル内部にFe3O4粒子を分散させたFe3O4ナノ粒子複合体を作製することに成功した。一方で、粒子径を高分子ゲルのネットワークで制御することは難しく、ゲルの合成条件による粒子径の制御は困難であった。実用化に向けて、今後は反応場である高分子ゲルのネットワーク構造およびネットワークの種類を変化させることで粒子径を制御することが目標である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、イオン化したゲル内部のPHを制御し、サイズの揃った磁性ナノ粒子を高効率で作製したことについては評価できる。一方、高分子ゲルの二次構造、複合体の作成条件と粒子径制御との関係の把握に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、作成した複合体が実際に優れた実用材料となることを示されることが望まれる。
分岐鎖をもつビスフェノール類を用いたフレキシブル基板用フォトレジスト樹脂の開発 宇部工業高等専門学校
山崎博人
宇部工業高等専門学校
黒木良明
従来、フレキシブル配線基板のレジスト材として、アクリル系樹脂を成分としたドライフィルムレジストが広く使用されているが、この解像度は、30〜300μm程度である。これに対し、半導体などのエッチング用レジスト材に用いられているノボラック樹脂の解像度は1〜10μmと高いが、膜質が脆く、柔軟性に欠けるため、それをロール状製品とすることに難点がある。本研究で検討したフェノール成分にビスフェノールAとビスフェノールPからなる混合物を、架橋剤にグルタルアルデヒドを用いて合成されたノボラック樹脂は、実用域に到達する柔軟性を有していたが、露光時に光を透過せず、描画が困難であった。今後、現像液への溶解性の向上を目指した検討を行う必要がある。
当初目標とした成果が得られていない。中でも、レジストの現像液への溶解速度や光透過性などのレジスト材料に必要な基本特性を把握するなど、材料設計の段階での技術的検討や評価が必要である。今後は、開発した樹脂が露光時に光を透過させない問題点の解決について新たな戦略を構築されることが望まれる。
T1強調磁気共鳴と蛍光の多機能マルチモーダルイメージング・ナノ粒子の開発 徳島大学
中村教泰
徳島大学
増田隆男
磁気共鳴機能性分子と可視蛍光分子を同時に有機シリカナノ粒子内部に効率よく含有させることに成功した。T1強調磁気共鳴においては有意な緩和時間の短縮に成功し、一粒子の可視蛍光の検出も可能であった。さらに近赤外蛍光分子と磁気共鳴機能性分子を同時に含有したナノ粒子の作成にも成功した。T1強調MRIにてマウス生体内の腫瘍組織の検出と粒子分布を観察することができた。さらに蛍光イメージングでは近赤外蛍光による腫瘍組織のin vivo検出、可視蛍光による腫瘍組織における粒子の分布や細胞から分子レベルに至る連続的観察を行うことができた。本開発により腫瘍組織のT1強調磁気共鳴と近赤外蛍光と可視蛍光による蛍光のマルチモーダルイメージングが可能となった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、短期間に多くの実験を行い目標のマルチモダーリングプローブを作成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、一つの粒子に二つの物質が同時に含有されていることを明確に示すなど本技術の優位性を検証することでの実用化が望まれる。今後は、マルチモーダル粒子の作製技術を幅広く展開されることが期待される。
硬脆材料への小径穴あけ加工における加工精度の安定化の実現を目指した加工技術の開発 徳島大学
溝渕啓
本研究では、硬脆材料へ加工精度の高い穴を加工するための加工技術を構築するために、市販工具と違った工具形状を成し、かつ他に類を見ない工具を開発し、この工具の加工性能について検討を行った。本工具により、小径貫通穴加工時に問題となる工作物表面および裏面での欠けや割れ等は、肉眼で判別できないほど小さくできた。工具の耐久性は実用化可能穴数に近づき、加工穴数に対する穴直径の減少推移は小さかった。また、高精度な穴加工の実現のため、穴の精度や直穴以外の穴形状の加工などの検討も行い、穴深さの深い穴や斜め形状の穴等を高品位で高精度に加工することに成功した。本研究の成果から、ガラス以外の硬脆材料にも安定した加工精度で多数の穴を加工するための技術を構築することが期待できる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、硬脆材料としてソーダガラスを選び、開発したダイヤモンド電着工具を用いて安定して微細穴(φ1mm)をあけることに成功し、目標どおりの穴直径になり、かつ穴出口での割れや欠けも小さく押さえられていることは評価できる。また、斜め穴や深穴も高精度に加工することに成功し、石英ガラスの穴あけにも成功したことは評価できる。一方、耐久性の面では、加工可能本数が少なく、さらなる工夫と技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、加工品質を保ちつつ、工具寿命を延ばすことを検討することが望まれる。
希土類添加セラミックスナノ蛍光体の生産プロセスと表面機能化プロセスの連続化に関する研究 阿南工業高等専門学校
小西智也
香川高等専門学校
関丈夫
希土類添加セラミックスナノ蛍光体の大量合成と表面修飾処理を連続化して行う手法を開発し、生産プロセスへ向けた実用化の足がかりとした。表面修飾処理は、蛍光体に偽造防止用インクや蛍光バイオイメージングマーカー等への応用に必要な機能性を付与するために不可欠であるが、発光強度の著しい低下や粒径増大の要因となることも知られている。本研究開発では、反応場である溶液のpH・温度等を最適化することで粒子表面を改質しつつ、表面修飾分子との化学反応を効率化することにより、処理の連続性を損なわずに発光強度70%確保、粒径500±100nm以下を達成できた。今後、用途に応じた粒径の最適化を行うとともに、本プロセスをベースとした新たな機能性高分子の開発を軸に起業との連携を進め、実用化につなげていきたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、希土類添加セラミックスナノ蛍光体の大量合成に成功した。 表面修飾処理後も処理前の70%以上の発光強度確保およびナノ蛍光体の500nm以下の粒径確保に関する技術に関しては評価できる。
一方、技術移転の観点からは、特許出願しセキュリティ・インクやバイオイメージングマーカーなどでの実用化が望まれる。
今後は、新たな表面修飾用機能性高分子開発するなど実用化に向け企業との共同研究が推進されることが期待される。
一次元構造を有する窒化ケイ素フィラーを添加した高熱伝導エポキシハイブリッド材料の開発 香川大学
楠瀬尚史
香川大学
渡辺利光
LED基板として用いられているエポキシ樹脂の熱伝導度は0.2W/mK程度しかないため、LEDの熱劣化が深刻な問題になっている。樹脂の熱伝導を改善するためにBNやAlNフィラーの研究が進んでいるが、機械的特性や耐水性の問題があるため最善の選択とはなり得ていない。そこで本研究は、近年、177W/mKの高熱伝導焼結体が報告されたSi3N4に注目した。出発原料として、粒径の大きなシリコン粉末を用い、Si3N4への反応促進剤を添加して、高温窒素雰囲気中で熱処理を行うことにより一次元状に粒成長したSi3N4フィラーの合成を行った。得られたフィラーを60体積%添加したエポキシ樹脂は10.4W/mKの高い熱伝導度を示した。従来のBNやAlNフィラーに比べ、強度や耐水性において優れたフィラーになることが期待される。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にエポキシハイブリッド材料として、β-Si3N4フィラーの含有率60vol.%で10W/mKと高い熱伝導度を達成するとともに、β-Si3N4フィラー合成の技術的知見が得られたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、産学連携により競合するフィラーに対する性能・品質・コストなどの優位性や課題を明確にし、本高熱伝導樹脂基板の有効性が発揮される分野での実用化が望まれる。今後は、さらなる熱伝導度の改善とともに信頼性などの樹脂基板としての実用性評価がすすめられることが期待される。
粒界すべりと溶質雰囲気すべり機構との重畳効果による自動車部品用Al-Mg合金の新規高速超塑性の発現 香川大学
水口隆
香川大学
小倉長夫
本研究では、摩擦撹拌処理(FSP)による結晶粒微細化を施したAl-Mg系5083合金を対象に、350〜450℃、1×10-3〜1×10-1/sの種々の条件で引張試験を行い、粒界すべりと溶質雰囲気すべり機構の重畳効果による1×10-1/sでの200%以上の伸びの発現を目指した。FSPにより、結晶粒径約8mm程度の等軸結晶粒組織が得られた。引張試験の結果、400℃以上では、粒界すべりと溶質雰囲気すべり機構の重畳効果による巨大伸びが得られたが、200%以上の伸びが得られたのは、1×10-3/sの場合のみで、1×10-1/sの場合では、100%程度の伸びにとどまった。この原因として、FSP後に結晶粒内に残存する若干の転位組織が考えられ、目標達成には、FSP後の焼鈍が必要である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、粒界辷り、粒内辷りの重畳による超塑性を実現させた点は評価できる。一方、実用上の利点を高速加工性をあげているように、歪み速度の高いところでの超塑性発現の可能性を示す条件探索を継続調査することが必要と思われる。今後は、自動車メーカ、素材メーカへの情報発信を継続して行い、産学連携による研究開発体制を構築することが望まれる。
可変型ギャッププラズモン導波路素子の開発 香川大学
山口堅三
香川大学
渡辺利光
本研究の最終目標は、可変型ギャッププラズモン導波路素子(AGPW)を用いた光電子集積回路の開発である。研究責任者が開発したNEMSアクチュエータ機構による表面プラズモン(SP)共鳴波長の可変化技術をギャップ型プラズモン導波路(GPW)に適用し、伝搬型SPの電気的制御可能なAGPWの基盤技術の確立とした。
そこで、AGPWの(1)光学現象の解明と構造の最適化、(2)作製とその光学特性の評価を実施した。薄膜基板を採用し、中空なAGPWの作製に成功し、複数の共鳴を観測した。また、共鳴波長の電気的可変制御として50 nmのシフト(10 V印加時)を確認した。さらに、本光学特性は、数値計算結果と定性的に一致した。
今後の展開としては、開発したAGPWとLSIとの集積化を実現するためにMEMS加工プロセスの導入を検討する。一方、本技術の新たな可能性を追求として、他のPWG構造での可変化へ挑戦し、次世代コア技術へと結びつける。さらに、公的な研究開発支援制度を活用し、産学共同に向けた研究開発を継続していく。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、可変型ギャッププラズモン導波路素子(AGPW)の開発に取組み、光学シミュレーションと共に、試作を行い、光学特性を測定し、数値計算結果と定性的に一致する性能が得られ、目標を概ね達成できた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、微細加工技術、光計測技術分野の研究者と連携協力することで、優れた成果の効率的創出につながることが予想される。今後は、産業界のニーズを吸い上げ、用途に応じたデバイス設計・開発を推進し、早期の実用化を目指すことが期待される。
革新的な高分子合成法による安全で高効率な伝導性電解質膜の開発 愛媛大学
井原栄治
愛媛大学
松本賢哉
ジアゾ酢酸エステルの重合における分子量の制御については、用いるPd錯体の配位子の構造を工夫することにより、従来は得られなかった分子量5万を超えるようなポリマーを与える重合開始剤の開発に成功し、また、ある種の極めて立体的に嵩高い置換基を有するモノマーの重合において、分子量の揃った、望みの分子量を有するポリマーが得られる重合(リビング重合)の実現を期待させるような結果が得られた。主鎖の立体構造の制御に関しては、用いるPd錯体上の配位子の構造が、ポリマーの立体構造に確かに影響を与えるという、今後の立体特異性重合に繋がる確かな実験的証拠を確認した。
水酸基、ホスホン酸といった極性の官能基を有するモノマーの重合により、主鎖の全ての炭素にこれらの極性官能基が結合した、官能基集積型の新しい高分子の合成に成功した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標の高分子量化を達成し、リビング重合と立体特異性重合の実現の可能性を示したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、用途から要求される平均分子量や分子量分布の具体的な数値目標を明確化するなどでの実用化が望まれる。今後は、連携中の企業と共同研究により燃料電池用の電解質膜として実用展開されることが期待される。
ランタン−シリケート酸化物イオン伝導体SOFC用電極材料の開発 新居浜工業高等専門学校
中山享
500℃以下で従来の酸化物イオン伝導体の中で、最も高い酸化物イオン導電率を示す研究責任者が開発したアパタイト型ランタン−シリケートを電解質材料に用い、この電解質材料に適した電極材料を探索することで、中温域タイプ固体酸化物型燃料電池(SOFC)の実現を目標とした。500℃での導電率が0.017 S・cm-1であるランタン−シリケートセラミックスを電解質材料に用いて、本研究開発課題に取り組んだ結果、ランタン−シリケートセラミックスの導電率を今後0.5桁程度向上させることができれば、中温域タイプSOFCの実現が十分に可能な電解質支持型SOFC単セルを作製できることがわかった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、アパタイト型ランタン−シリケートを電解質材料に用い、中温域タイプ固体酸化物型燃料電池(SOFC)にて21mW/cm2を達成した技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、酸化物空気極やNiサーメット燃料極を検討や固体電解質のさらなる導電性の向上などにより実用化が望まれる。今後、実用的な電極材料を用いた系統的な材料探索や電極反応機構の解明などが期待される。
ナノ・バイオ機能解明のための超効率的量子化学演算システム 九州大学
青木百合子
九州大学
山内恒
本課題では、これまで開発してきた大規模分子系の高速高精度量子化学計算のための三次元系用Elongation(3D-ELG)法に、AO-cutoff法およびQFMM法を導入することにより、オーダーN計算時間を達成できるよう開発した。領域局在化分子軌道(RLMO)を基底としたFock行列の表現において、三次元系においては、Active部分が行列全体に分布するためにAO-cutoff法が適用できず、従来法に比べて優位性は低かった。しかし、RLMO基底FockをCutoff、 Frozen、Activeの順番に並べ替えることにより見かけ上一次元系と同様の作業行列を作り、一次元系のAO-cutoff法と同じ扱いを適用するという単純な手法により問題が解決した。絡み合い高分子等複雑モデル系に応用して検証した結果、三次元系に対しても高精度を保持しつつ高速演算が可能となることが実証され、ナノ・バイオ系への実用化に向けた大きな展開となった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも「ナノ・バイオ系」のような量子化学計算の対象としての「大きな系」は、一般的にはきわめて多大な計算時間を要するが、3D-ELG法を改良することによりオーダーN計算時間を達成できるようになり、ナノ・バイオ系での適用に見通しが得られている点については評価できる。一方、他分野・他領域技術者や、または、量子化学計算の現状について、その概要を理解している実験研究者との交流などの協調により技術的検討が必要と思われる。今後は、実用化を急ぐならば、技術的課題を整理し、企業等に何を期待するのかを具体的かつ明瞭に提示した連携が望まれる。
紙がつくる金属ナノ触媒のグリーン合成戦略 九州大学
北岡卓也
九州大学
三角可恵
樹木多糖類の新機能創発に向け、身近な生物素材の「紙」に着目し、セルロース繊維結晶界面の1級水酸基をアルデヒド基に変換することで、還元剤や加熱処理なしで金属イオンを「紙自身が還元・固定化」する新たな触媒合成戦略を考案した。安定ニトロキシラジカルを用いる水系酸化で導入された固体還元基により、種々の金属イオンがその場還元され、ナノサイズの金属触媒を紙表面に露出・高密度で固定することに成功した。湿潤紙力剤の配合により水系利用も可能になり、4-アミノフェノールの高効率合成を達成した。回収・再利用が容易でハンドリング性に優れる紙は、今後様々な触媒のマトリックスとしての機能設計と実用展開に期待が持たれる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、パルプを原料として、その表面積の大きさを活かした、ナノサイズの新規金属触媒の作成に成功し、水系での利用も可能にしたなどの研究成果は評価できる。一方、技術移転の観点からは、アルデヒド基の導入量と触媒効率の向上などによる実用化が望まれる。今後は、原料の供給元の企業と連携を深め、セルロース系有機高分子と金属系無機触媒から成るシート状触媒の実用化の可能性を更に高めることが期待される。
微細下部組織を有する耐水素脆化・超高強度オーステナイト鋼の創製 九州大学
中田伸生
九州大学
安達淳治
Fe-Niオーステナイト合金に対して特殊な熱処理を施すことで、試料の大半において2度の相変態が生じることが確認された。この2度の相変態によってオーステナイトの結晶方位が可逆的に復元する現象が確認される一方、その内部には高密度の転位が内在していた。この高密度転位によって、供試材の降伏強度は汎用鋼の約2.5倍に相当する450MPaに向上した。さらに、電解水素チャージ後も延性の低下は確認されず、耐水素脆化・超高強度オーステナイト鋼としての可能性が示された。ただし、当初目標である『引張強度1,000MPa以上かつ水素脆化感受性指標が10%以下のオーステナイト鋼』は達成できておらず、更なる研究が必要である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、2.5倍の高強度化を達成でき、メカニズムを明らかにしていることは評価できる。一方、当初目標値にはほど遠く、目標値設定に問題があったと推測される。今後、2.5倍の高強度化メカニズムを詳細に検討し、他のオーステナイト系ステンレス鋼に展開する等の、計画、方針変更が必要と思われる。今後は、技術移転に向けた、企業との連携に対する努力が不十分のようにも思えるので、技術移転の方向性を見定めた新たな目標設定、研究計画の策定を行うことが望まれる。
複雑な表面構造の解析のための低速電子回折法の開発 九州大学
水野清義
九州大学
姫野康隆
電界誘起ガスエッチング法を用いてタングステン針を原子レベルで先鋭化し、その先端から放出される電子線を磁場レンズによって収束させて試料表面に照射し、シャープな回折パターンの測定に成功した。電子源となるタングステン針には安価な<110>方位を向いたワイヤーを使用し、再現性良く開き角5度程度の安定な電界放出電子線を得ることができた。この電子線を、コイル状の磁場レンズを用いて収束させることができた。収束させた電子線のサイズを正確に測定できるように装置改良を行っている。この電子線をシリコンカーバイド上のグラフェン表面に照射して回折パターンを観察することができた。得られた回折パターンはスポットの半値幅が従来装置の半分以下でバックグランドも低いことがわかった。今後、有機分子吸着構造の解析などに役立てたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標はほぼ達成し、革新性と従来技術に対して優位性のある研究成果が得られていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、本研究で未確認となった研究目標は本技術の優位性の根幹をなすものであり、早期に確認し、優位性、革新性を実証することにより、実用化に進むことが望まれる。今後は、本技術が完成すれば現在よりも大幅に安価な解析装置が社会に供給できる可能性があり、有機分子の構造解析など、新たな適用対象への拡大も期待できるので、早急な技術移転が期待される。
ナノダイヤモンド・水酸化フラーレン混合スラリーによるサファイア高効率研磨技術に関する研究 九州工業大学
鈴木恵友
九州工業大学
小川由紀子
本研究ではナノダイヤモンドスラリーに水酸化フラーレンを混合させることにより材料除去レートの高速化や表面粗さおよびスクラッチの低減が実現可能な研磨技術の確立を目指すものである。材料除去レートの高速化については従来のダイヤモンドスラリーより3倍向上させることを目標としており本研究では水酸化フラーレンの混合やナノダイヤモンド・水酸化フラーレン混合スラリーに光照射を行うことにより従来の4.5倍程度の向上効果を確認した。次にスクラッチや表面粗さの低減するためダイヤモンド粒子径に関する評価を実施した。ここではナノダイヤモンド粒子の粒子径が小さくなるにつれスクラッチの低減は確認できた。s 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、溶液中でフラーレンを凝縮し、紫外光を照射することにより、ダイヤモンドライクカーボン粒子を作製し、従来比4.5倍の研磨速度を達成した点は評価できる。一方、未達成である表面粗さについては、実験方法を再検討して、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、独創的な技術であるので、技術移転を目指して、継続的な改善と、コスト低減や他の材料への応用研究を期待する。
高機能スピンMOSFET実現に向けた規則構造ハーフメタル薄膜の形成 九州工業大学
中尾基
九州工業大学
波多江俊一
本課題において最大の目標としていた強磁性体Fe3Siの選択的形成を達成することができた。Fe3Siの形成において最も重要なイオン注入プロセスもシミュレーションにより最適なパラメータを算出することができ、スピントロニクスデバイスの作製に不可欠である強磁性体であるということも確認できた。さらに、スピントロニクスデバイス作製のために必要となるトンネル障壁の形成方法も確立することができ、これらの技術を掛け合わせることで我々の最終目的であるスピントロニクスデバイスを作製することができると期待できる。しかしながら、本プロセスはコスト、生産性の面においても大量生産には不向きであり、今後、量産に向けたイオン注入に代わるFeの供給方法を探索し、応用していく必要がある。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、スピントロニクスデバイス作製の基本となるFe3Si形成などの要素技術が構築できたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、今回得られた要素技術をさらに進展させるとともに、極薄絶縁膜を用いたスピンMOSFETデバイスの実現に向け電極形成等の要素技術の構築が望まれる。今後は、本課題の成果のFe3Siジャンクションを足掛かりとしてデバイスを試作し特性の優位性を示し、賛同する企業と連携し基礎研究が進展されることが期待される。
セラミック加飾応用をめざしたナノ構造をもつ光干渉性顔料の開発 九州工業大学
安田敬
九州工業大学
山崎博範
ナノ・スケールの層状構造をもつ物質は光の干渉によって構造色と呼ばれる特異な発色を示す。本研究では、構造色を呈し約1000℃でも融解しない粉体を高温用途の加飾顔料として開発した。層状構造をもつ顔料の各層の構成要素を選定し、高温焼成後の光学的性質を調べ、ナノ構造を制御する製造プロセスを検討した結果、従来は5層以上の積層数において金属光沢を示す高い反射率が得られていたのに対し、新規顔料では、コスト面で有利な3層構造でも同等以上の反射率を実現した。本研究の顔料は、市販の干渉性顔料では融解あるいは分解して適用できないセラミックの装飾にも応用できる耐熱性を有することを示した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、1000℃超でも融解しない光干渉性の顔料を見出し、これを釉薬表面に焼き付けできることを示したことは評価できる。一方、応用範囲が限定されるであろう短時間の焼き付け技術の改良やTiO2/SiO2以外の物質に係る技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、色見本のサンプルを早急に作製し、釉薬との反応性抑制による顔料の使い勝手の向上などを目的に陶磁器メーカー等と連携されることが望まれる。
安全・安心な社会構築のための微小エネルギー応答型応力発光体の開発 独立行政法人産業技術総合研究所
藤尾侑輝
独立行政法人産業技術総合研究所
犬養吉成
本研究開発課題は、応力発光体の微小ひずみに対する感度を向上させることと、微小ひずみに対する応答性を出現させる材料因子を明確にすることを目的とした。応力発光体の製造条件の系統的な調査およびトラップ準位・局所構造解析により、微小ひずみに対する応答性は「伝導帯付近に形成された浅いキャリアトラップ準位」および「異方性の粒子形態」によってもたらされたと結論づけた。今後は微小ひずみに対する応答特性のさらなる向上と高速道路、トンネル、橋梁などの構造物や水素社会を支える圧力容器の安全性診断技術への実証試験に取り組む予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、小さい歪への感度を向上できたことや感度を向上するには粒子の形態やトラップ準位が影響することを明確にしたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、さらなる微小ひずみに対する感度の向上に対する技術検討をすすめ、高速道路などのインフラ構造物や圧力容器の安全性診断技術として実用化されることが望まれる。今後は、感度の向上と実用化を睨んだ実証試験が産学連携により推進されることが期待される。
粉末積層造形による陶磁器成形技術の研究 佐賀県窯業技術センター
副島潔
佐賀県窯業技術センター
安田誠二
有田焼等の磁器で使用される磁器原料の粉末により、素地成形を3Dプリンターで直接行うことを可能にする原料開発を目標として研究に取り組んだ。インクジェット噴射による成形は事前の予備実験による結果に反して非常に困難であり、評価した粉末では3Dプリント後の状態が非常に脆く、良好な解決策を見いだすに段階には至らなかった。噴射側のバインダーを変更する実験でも、研究機材のインクジェットノズルの詰まりを誘発する結果となった。総括して、達成度は50%程度であり、当初の目標を達成する段階には至らなかった。成型が終了していれば、ほぼそのまま焼結することは確認できており、成型が可能となる材料開発を継続して行いたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、3Dプリンターを用いて、形状自由度の高い陶磁器を造る発想は斬新であり評価できる。一方、3Dプリント後の成形体の状態が非常に脆く、良好な成形体を得られるにはいたっていない。材料の開発から、さらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、3Dプリント技術が、樹脂、金属、ゴム等から無機材料に展開できれば、陶器産業に限らずに応用製品が広がることが期待できるので、まずは成形体を形成する条件を見いだすことが望まれる。
真空アーク蒸着法を用いたSi基板上への厚膜磁石の成膜と微細加工 長崎大学
中野正基
ここれまで申請者らは、希土類系磁石であるNd-Fe-B系ターゲット表面にアーク放電を生じさせ、それより飛び出す「数ミクロン径の液状微粒子」を利用した高速成膜下での「20 μm厚程度のNd-Fe-B系厚膜磁石」を金属基板上に作製すると共に、研究当初の目標値である10 MGOe程度の(BH)maxを有するNd-Fe-B系厚膜磁石を実現してきた。本申請研究では、上記の高真空中かつ高速成膜可能な「厚膜作製技術の独自技術」の利用範囲の拡大を目的として、微細加工が応用可能なSi基板上への成膜技術を確立すると共に、100 μm厚以上の厚膜化を目指した。真空アーク蒸着法によるSi基板への成膜を試みたものの、(1)成膜時の基板温度の上昇による結晶化や(2)成膜時等の機械的剥離の問題が生じ、その課題克服にあたり、「基板冷却」・「複数のアークプラズマガンを利用したバッファー層ならびに厚膜磁石の多層化」に対応した。その一方で、レーザ蒸着を利用したSi基板上へのNd-Fe-B系厚膜磁石の成膜も同時に取り組み、Nd-Fe-B系厚膜磁石のNd含有量を制御することにより、再現性良く50 μm厚までの試料の厚膜化を実現すると共に、一部の試料においては100 μm厚を超える厚膜化も実現した。上記の試料の(BH)maxは現状で7-8 MGOe程度であるものの、ダイシングを用いた加工後においても、その磁気特性が劣化しない事を確認した。
今後は、「レーザ蒸着」で得られた知見を利用し、より簡便な手法である「真空アーク蒸着法」によるSi基板上へのNd-Fe-B系厚膜磁石の成膜を引き続き検討する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、アーク放電による実現は困難であったが、エキシマレーザを用いて厚膜化を実現したことは評価できる。一方、エキシマレーザを用いた蒸着法とアーク放電を用いた蒸着法の本質的な違いと成膜特性の違いを明確にすることが望まれる。今後は、真空アーク蒸着法で予測された問題点に対する対策法や、改善を検討することが望まれる。
超低損失SiCパワーデバイス製作のための紫外光援用研磨法の開発 熊本大学
久保田章亀
熊本大学
東英男
本研究では、パワーデバイス用SiC基板の作製に対応できる高能率・高精度・低コスト研磨技術の開発を最終目標とし、砥粒や薬液を一切用いない紫外光を利用した新しい研磨法の確立を目的として、研磨装置の開発とその適用可能性を実験的に検証した。その結果、2インチサイズのSiC基板の全面研磨に成功するとともに、当初設定していた研磨能率、表面粗さ(RMS:0.1nmオーダ)の目標値を達成することができた。今後、さらなる研磨能率の向上や基板平坦性の改善に向けた取り組みを進めるとともに、GaNやダイヤモンドなどのパワーデバイス用材料に対して、本研磨法の適用可能性を検討する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、紫外線援用研磨法を提案し、表面粗さ、加工能率ともに目標値を達成していることは評価できる。本加工法は固体間の化学反応を利用したものであり、原理的に平滑でダメージのない面を加工することができる。一方、技術移転の観点からは、大きなウエハの加工を可能にすることが課題であり、実現できれば、次世代パワーデバイス材料として期待されているSiC基板の高精度・高能率加工の実用化につながることが望まれる。今後は、効果の科学的解明、加工条件の最適化、K20大面積の適用など研究を発展させることにより社会貢献につなげることが期待される。
ニッケル系二次電池の高容量化を可能にするチタンおよびスズ置換によるα型水酸化ニッケルの開発 宮崎大学
酒井剛
宮崎大学
和田翼
本プロジェクトでは、ニッケル系二次電池の正極材料の高容量化を目的として、スズやチタンといった4価のカチオン置換によるアルファ型水酸化ニッケルの合成と評価に取り組んだ。スズおよびチタンの最適置換量は、スズでは10〜20%、チタンでは10%であるとの結果を得た。これらは、アルカリ溶液中での安定性も高いことを明らかにした。スズ置換系は、水熱処理によって100m2/g以上の高比表面積化が可能であることもわかった。正極材料としては、充放電容量がいずれのレートでも市販のβ型よりも大きいことが示唆された。しかしながら、初期充放電特性ではアルファ型の特徴がみられたが、充放電を繰り返すと結晶構造が変化することがわかった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、スズやチタンなど4価のカチオン置換によるアルファα型水酸化ニッケルの合成に成功するとともに、正極材料として用い市販のβ型水酸化ニッケルに比べ1.3-1.7倍の初期放電容量を達成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、繰り返し充放電特性の改善に向けた技術的検討により、高容量ニッケル系二次電池としての実用化が望まれる。今後は、充放電の繰返しよる結晶構造の変化の基礎的解明による、本質的な改善法が見出されることが期待される。
高強度軽量自動車部品の3次元塑性流動可視化に基づく複動鍛造法の確立 鹿児島県工業技術センター
牟禮雄二
燃費の向上策として車体の軽量化は必須であり、軽合金への材料転換が図られている。軽合金を用いて自動車部品を高強度・低コストで鍛造加工するには材料の変形特性に適合した合理的な塑性流動に基づく成形加工を実現する加工方法、金型形状、加工条件を決定する必要がある。本研究では実需要があるタイロッドエンドの鍛造加工を対象として取り組んだ結果、新規に考案した複動鍛造法により、目標であった工程数削減(従来2工程→1工程化)、高品質化(目標強度400MPa以上→442MPa)、低コスト化(現状の材料廃棄率7%→0.95%)を完全に達成することができた、今後、さらなる実用化へ向け、明らかになった課題に対して研究成果の適用予定企業と連携して取り組む予定である。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、鍛造時可視化技術を活用し、複動鍛造金型を設計し、成形技術を作り上げ、タイロッドエンドのAl合金を成形でき、バリ除去重量も1%以下となり、目標はすべて達成できたと評価できる。また、特許申請も行っている。一方、技術移転の観点からは、複動鍛造法を用いたタイロッドの成形は、基盤的な成形技術として、ほぼ完成の所まで出来たと考えられるが、実用品の製造技術、利用技術として、サイズ効果による熱処理時の変形、加工時の微細なキズ、利用時の疲労特性の把握など、実用化、利用技術としての課題をクリアしての実用化が望まれる。今後は、技術移転のため、企業との連携も進めているので、早期の商品化が期待される。
両連続相マイクロエマルションを用いた抗酸化物質の評価技術の開発 沖縄工業高等専門学校
藏屋英介
久留米工業高等専門学校
三島淳一郎
本研究では、 界面活性剤によって親油性と親水性の溶媒が、熱力学的に安定なマイクロエマルションを形成して特異的な反応場となる両連続層マイクロエマルションを積極的に利用し「両連続相マイクロエマルションを用いた新たな抗酸化物質の電気化学分析法の開発」を行った。親油性の高い化合物と親水性の高い化合物を同時に両連続相マイクロエマルションに溶解しつつ、電極の親疎水性を制御し、それぞれの物質の還元力を電気化学的な手法により測定して抗酸化物質の定量が可能であるか検討を行った。その結果、代表的な物質について抗酸化能を定量したところ、0.1〜10mMの濃度範囲において非常に良い直線性が得られ、BME中での電気化学測定により親油性と親水性化合物の抗酸化能を独立して定量できることが確認された。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、熱力学的に安定なマイクロエマルションを用い、再現性が良くダイナミックレンジも広い、植物等の天然由来の抗酸化物質や健康食品等の抗酸化物質の評価技術とした成果が顕著である。一方、技術移転の観点からは、電極の耐久性を確認し適正なコストの簡易装置とするなどでの実用化が期待される。今後は、連続測定の可能性と共に知財権の取得も検討されることが期待される。

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