評価結果
 
評価結果

事後評価 : 【FS】探索タイプ 平成27年1月公開 − ライフイノベーション 評価結果一覧

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課題名称 研究責任者 コーディネーター 研究開発の概要 事後評価所見
歯肉退縮を防止する歯表面でのマイクロ・ナノパターン直接形成による新規治療法の開発 北海道大学
赤坂司
北海道大学
金子真紀
歯周病による歯肉のズレ落ちは簡単な治療法がなく、悪化すると歯は欠落する。もし細胞と強く接着するパターンを歯根表面に付与できれば、歯肉退縮の治療法および予防法に繋がる。本課題では、ナノインプリント法を応用し、マイクロ・ナノパターンを簡単に付与できる歯科材料の探索やその歯肉細胞との接着性を検討した。その結果、高流動性コンポジットレジンを用いると短時間で簡単にパターン付与できることが分かった。また、パターン付与の効果により細胞付着性が高く、細胞が剥がれにくいパターン形状およびサイズがあることが判明した。今後は、得られたデータを基に適応できる材料の拡大や細胞との作用データの拡充を計りたい。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、マイクロ・ナノパターンを有する歯科材料を使用して歯肉繊維芽細胞との接着性の向上を見出し、研究目標を大略達成した技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、基礎研究の段階で知財を確保することでの実用化が望まれる。今後は、臨床研究に向けて、無料のPMDA薬事戦略相談事前面談、個別面談をぜひご利用されることが期待される。
細胞内脂肪滴の酸化評価系の作製と食品開発への応用 北海道大学
惠淑萍
北海道大学
松浦孝範
針で採取した細胞の脂肪滴の量をモニターし、内標準法で脂質を定量できた時に、評価法の知財化と技術移転が可能になる。また、脂肪滴の酸化を阻止しミトコンドリア機能維持に役立つ物質が同定された時、最大の知財と技術移転の可能性が生じる。技術的課題、1)培養細胞に脂肪滴を形成、脂肪滴を定量的に評価、2)ミトコンドリア機能評価(膜電位測定)と脂肪滴との関係把握、3)脂肪滴採取と脂肪滴脂質(過酸化脂質を含む)の定量質量分析、以上の問題の解決に取り組み、1)、2)は実施できたが、3)は脂肪滴採取と内標準物質(安定同位体)合成までで時間切れとなった。達成率は90%。今後は現状の評価系での目的の食品成分の探索と、評価系の完成度向上に努め、両面で技術移転の可能性を追求する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、脂肪滴酸化の抑制とミトコンドリアの機能維持に係る化合物の探索に向けた評価系の構築への取組みについては評価できる。一方、現在の方法では長期間の検討を要することが予想されるので、食品評価でのモデル評価系の早期の確立をに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、評価モデルへの構築に向け、新たな解決策も考慮しつつ、準定量法も含め有用性を示すデータを蓄積されることが望まれる。
細胞内低pH応答性膜融合リポソームによる肝臓標的型核酸医薬への応用 北海道大学
櫻井遊
北海道大学
金子真紀
本申請研究では、ヒト肝炎ウイルスの新規治療法としてsiRNAを用いた製剤の開発を最終目標と定めた。siRNAの肝臓送達のため、これまでにリポソーム製剤を開発しているが、その製造法はラボスケールであり、大量の製剤が必要なステージには不向きであった。連続的な調製のため、試薬の混合および不要物除去を、それぞれ流路による連続的混合、タンジェンシャルフローろ過による連続的精製に代替可能であるかを検討した。その結果、従来と同様の物性・活性を有するキャリアの開発に成功した。今後は、よりスケールアップする技術の開発を行い、ペプチドリーム社と共同でキャリアの開発・非臨床試験へと進めていく予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にMC3-LNPに迫るYSK13を開発することによって、実用化に前進した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、当初目標に掲げた長期保存安定性に関する研究を実施することが望まれる。今後は、現在の方向性のまま、研究開発を進めることが期待される。
プレバイオティクスとして機能するエピラクトースの実用的合成法の開発 北海道大学
佐分利亘
スクロースからのガラクトース1-リン酸の酵素合成系と改変型セロビオースホスホリラーゼ (EP) によるガラクトース1-リン酸とマンノースからのエピラクトース合成を組合せ、スクロースとマンノースからエピラクトースを合成することを目的とした。酵素添加量やガラクトース1-リン酸生成に必要なUDP-グルコース添加量を検討したが、エピラクトースの合成は認められなかった。EPがスクロースの加リン酸分解で生じたグルコース1-リン酸に優先的に作用したためと考えられた。一方、ガラクトースからガラクトース1-リン酸を生じるガラクトキナーゼとEPのカップリングではガラクトースとマンノースからエピラクトースが合成され、安価な糖質を原料としたエピラクトースの効率合成の可能性が示された。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標のスクロースではないが、ガラクトースからエピラクトースを合成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、EP酵素の改変の具体的な方法論を検討するなどでの実用化が望まれる。今後は、プロバイオティック効果について調査済のエピラクトースの安価な大量製造の実現まで研究開発を進めることが期待される。
細胞透過光の位相差解析に基づく、移植用培養細胞におけるガン化細胞混入有無判定法の確立 北海道大学
燒リ睦
北海道大学
須佐太樹
再生医療における移植細胞へのガン化細胞の混入の有無を非侵襲的かつ自動的に判定する品質管理技術の確立を目指した。その結果、前立腺上皮のガン細胞PC-3と正常細胞PRECをディッシュ底面に接着し、PLM顕微鏡を用いて個々の細胞透過光の最大位相差をタイムラプス計測した結果、分裂期を除いたPC-3の位相差(3〜4rad)はPRECの位相差(7〜7.5 rad)と比べて明らかに小さかったことから約10時間間隔で2回計測すれば両者を識別できると考えられた。一方、PC-3、PREC細胞の細胞内の位相差プロファイルを調べたところ、それぞれ三角形様、台形様だった。未知細胞の位相差プロファイルがどちらの形状に近いかを数値的に判別することにより、前立腺上皮細胞だけでなく肝実質細胞や骨髄細胞においてもガン細胞をほぼ100%の確率で識別できると考えられた。今後、少数のガン細胞の検出限界検討および培養中におけるガン化の検出が技術的課題と考えられる。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ガン化細胞と正常細胞の位相差分布パターンが明瞭に異なるという研究成果を挙げ、その位相差分布パターン解析手法の知財化を行ったことについては評価できる。一方、、移植細胞の中に存在するであろう異常(ガン化)細胞を検出する手法の開発を目標にしている以上、変異が少ない細胞においてその差の検出に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、細胞移植療法が想定される臓器由来の細胞を用いて本技術が適用できるか否か、また幹細胞などから分化誘導した細胞群の中から異常細胞を検出できるか否か等の検討をされることが望まれる。
農産加工廃棄物カボチャ種子油由来の前立腺肥大予防物質の探索と応用 北海道大学
高橋公咲
テストステロン5α-還元酵素阻害活性を指標とし、西洋カボチャ(Cucurbita maxima)種子由来の前立腺肥大予防物質の探索を行った。その結果、5α-還元酵素阻害活性化合物として(+)- ピノレシノールが単離された。本化合物のインビトロにおける5α-還元酵素阻害活性は、5.5 mMで40%であった。(+)-ピノレシノールが5α-還元酵素阻害活性を示すことは、本研究において初めて明らかにされた。しかし、他のフラクションにも阻害活性が認められたため、西洋カボチャには複数の阻害活性化合物の存在が推測された。また、5α-還元酵素阻害成分は、エタノールにより効果的に抽出されることが明らかとなった。本結果は、西洋カボチャ種子を健康食品として開発するうえで重要な知見となりうる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にカボチャ種子から単離された5α-還元酵素の阻害活性化合物を単離・精製し、構造決定の結果、リグナンの1種である(+)-ピノレシノールと同定ができたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、すでに北辰フーズが取得している特許と今回の課題研究に機能性物質の単離・精製・構造決定以外に新規性が少ないように思われる。in vivoの評価も必要である。今後は、ピノレシノールの構造類似体を合成することにより、より強力な作用をもった化合物が合成できることを期待したい。
腫瘍血管内皮細胞選択的アプタマーを用いるガン治療 北海道大学
兵藤守
北海道大学
須佐太樹
腫瘍血管内皮細胞を標的とするAraHH001アプタマーをリポソームへ担持し、in vivo において血管新生阻害療法を担うためのドラッグデリバリーに適応可能かどうか検証した。その結果、アプタマー修飾リポソームの調製に成功し、さらにそれをin vivoにおいて使用することにより、PEG修飾リポソームと比較して腫瘍血管内皮細胞に結合している様子が観察され、画像定量から、その差は有意であることが示された。アプタマーの修飾量を変化させると劇的に結合様式が変わることからアプタマーによる標的効果は大きいと考えられ、今後の薬剤送達へ向けての道を切り拓くことに成功した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にアプタマーを化学修飾して小胞に結合させ、この小胞が腫瘍の血管に選択的に結合することを証明したのは評価できる。一方、技術移転の観点からは、AraHH001アプタマーが、腫瘍血管とどれだけ特異的に、どれだけ低濃度で結合するかが鍵である。アプタマーなしの小胞に比べて、アプタマーを組み込んだ小胞の方が3.5倍多く結合したが、もっと高い倍率で結合する小胞の開発が望まれる。また、動物実験でこの治療法が有効であることを、証明することが望まれる。今後は、標的に結合させるために、AraHH001アプタマー以外のより優れた物質の開発についても期待したい。
含硫アミノ酸に注目した新規ビフィズス菌増殖因子の開発 北海道大学
吹谷智
北海道大学
金子真紀
本研究ではビフィズス菌の含硫アミノ酸代謝系の解明を目指した。6株のビフィズス菌を用い、含硫アミノ酸の代謝能力を調べた。その結果、メチオニン資化能力の強い株2株、弱い株4株に分類された。メチオニン資化能力が強いBifidobacterium longum 105-A株を対象に、メチオニン資化に重要なC-Sリアーゼの活性を解析した結果、本菌株は 2種類のC-Sリアーゼを持つことと、その1種であるシスタチオニンγ-リアーゼと考えられる酵素がメチオニンにより誘導されることが示唆された。これらの結果は、ビフィズス菌の含硫アミノ酸代謝系の解明に大きく貢献し、新規ビフィズス菌増殖因子の開発につながるものである。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、未解決であったビフィズス菌での含硫アミノ酸の代謝を検討していることは今後の期待成果も含めて評価できる。一方、技術移転の観点からは、遺伝子破壊株での酵素化学だけでなく、オミックス的な解析も加えた総合的な解析などでの実用化が望まれる。今後は、ヒトには吸収され難いがビフィズス菌は利用可能なイオウ源を見出すことの有用性を明確化されることが期待される。
ミトコンドリアを標的とした創薬を実現するドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発 北海道大学
山田勇磨
北海道大学
金子真紀
多彩な機能を有するミトコンドリア (Mt)を標的とした創薬開発を実現するため、『肝臓MtへのDrug delivery system (DDS)の構築』および『in vivoにおけるMt治療戦略の検証』を中心に研究を進めた。体内動態解析を実施し、マウス肝臓Mtへの治療分子送達を可能とするDDS、 肝臓標的型MITO-Porterの構築に成功した。さらに、肝虚血再灌流障害モデルマウスに抗酸化剤・コエンザイムQ10を搭載したMITO-Porterを投与し、他の抗酸化剤に比べて優れた治療効果を示す事を確認した。本研究成果は、Mtが関連する疾患の診断・治療を実現するMt創薬の可能性を示すものである。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に肝臓への移行効率を40%以上と目標設定値近くまであげることができ、実際に動物疾患モデルを用いて、治療効果を明瞭に示したことにより、本技術の実用化が期待できることを示した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、本研究成果を更に発展させるための問題点や課題を明瞭にし、その目標を設定することが次へのステップに必須である。学会発表前に知財化することが技術移転には重要である。今後は、どのような疾患の治療に結びつくか、具体的に示すこと、また肝臓に限定せずに一般化できる技術開発を進めることが期待される。
医薬品合成試薬2−ピリジントリオールボレート塩の開発 北海道大学
山本靖典
北海道大学
山口茂彦
従来、2-ピリジンボロン酸は例外的にクロスカップリング反応条件下不安定であるため、これら反応が医薬品製造に使用された例は少ない、2-ピリジントリオールボレートリチウム塩はボロン酸に比べ安定で反応性に富み芳香族ヨウ化物および臭化物とのクロスカップリング反応に利用できる。しかし、安価で入手容易な芳香族塩化物との反応は非常に遅く実用的ではなかった。本課題において対カチオン、触媒配位子および共触媒の検討の結果、2-ピリジントリオールボレートテトラブチルアンモニウム塩は、触媒としてジクロロビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパンパラジウム、共触媒にヨウ化銅/N−メチルエタノールアミン錯体を用いると多くの芳香族塩化物とのクロスカップリング反応が円滑に進行した。用いる芳香族塩化物の電子的、立体的な影響はなく極めて高い収率で目的のクロスカップリング生成物を得ることができる。本反応では、2−クロロピリジン誘導体も利用でき合成化学上有用な2,2'-ビピリジン誘導体が合成できた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、安定だが高い反応性を持つホウ素誘導体を用いて、反応性の低いピリジンの2位への芳香族置換を安価な塩化物で可能としたことは、実用的な合成技術として評価できる。一方、技術移転の観点からは、反応温度や添加物の低減など合成条件のブラッシュアップと共に後処理の精製手法も検討するなどでの実用化が望まれる。今後は、合理的なプロセスをイメージして大量スケールでの合成と精製の検討も加え共同研究先の企業を開拓されることが期待される。
皮膚に発現する老化診断マーカーの開発 札幌医科大学
國本梨沙
札幌医科大学
佐藤準
酵母で寿命を延ばすサーチュイン(長寿遺伝子産物)の1つSIRT1で発現が著しく抑制され、老化細胞で著しく発現増加するホルモンと思われる分子を同定した。このホルモンはヒトでは高年齢者ほど発現増加が見られた。このホルモンは細胞内チロシンリン酸化が亢進し、細胞は扁平化し老化細胞の特徴を示すした。また、ヒト培養皮膚細胞で色素沈着が抑制され、その原因はメラノサイトの減少によっていた。血中のこのホルモン量を測定するため、モノクローナル抗体を3種類作成した。このうち1つについて、間接サンドイッチ法によりこのホルモンのELISA測定系ををたちあげることに成功した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当該ホルモンが作動薬や拮抗薬が皮膚関連の美容成分や治療薬として応用できる可能性が生まれたことについては評価できる。一方、モノクローン抗体を用いたELISAによる測定系が未完成であり、簡便で鋭敏な定量法の確立に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、レセプター遺伝子の同定など、基礎研究の成果のさらなる蓄積がされることが望まれる。
新型インフルエンザに有効な新規治療薬合成中間体の実用的不斉合成法の開発 室蘭工業大学
中野博人
室蘭工業大学
鴨田秀一
タミフル耐性ウイルスに有効な新しい抗インフルエンザ薬合成中間体である光学活性イソキヌクリジン誘導体を高光学純度で大量合成するための新しい合成方法を開発することを目的として、申請者が開発したアミノアルコール型不斉有機分子触媒を用いる3-ヒドロキシ-2-ピリドン類とジエノフィル類との不斉Diels-Alder (DA) 反応を検討した。その結果、本触媒を用いた場合に、30〜95%の化学収率と11〜99%の光学純度で目的の光学活性イソキヌクリジン誘導体が得られた。このことから、用いるピリドンおよびジエノフィル基質により化学収率および光学純度にそれぞれ違いはあるが、光学活性タミフル誘導体合成のために本触媒を用いるDA反応が有用であることが明らかとなり十分ではないながらも研究目的は達成できた。今後、本研究成果を踏まえ、更なる基質適応性の拡張と用いた基質に対して差異がなく実用性に耐えうる高い化学収率および光学純度を達成できるアミノアルコール型不斉有機分子触媒を開発し、さらには得られたイソキヌクリジン誘導体を用いたタミフル耐性菌に有効な化合物への展開を鋭意推進したい。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、入手容易なアミノ酸を原料としてβ-アミノアルコール型の有機分子触媒を設計し、それらを用いてDiels-Alder反応を系統的に検討して適応範囲を明確にしたこと、特には90%の化学収率と98%の光学純度で光学活性なイソキヌクリジン誘導体を得たことについては評価できる。一方、技術移転や産学共同での実用化のためには、実際に光学活性なタミフル類縁体への変換、もしくは合成ルートの明示に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、本触媒系の特徴を明確化すると共に今一歩進めた合成例を例示することが望まれる。
糖転移酵素を指標に前立腺癌の悪性度を判定し患者個別の至適治療計画を作成する方法 弘前大学
大山力
弘前大学
工藤重光
患者数の急激な増加と共に、過剰診断、過剰治療が問題となっている前立腺癌において悪性度を的確に判断する診断系の構築を目指して研究開発を進めた。本研究で注目した糖転移酵素Core2 beta-1,6-N-acetylglucosaminyltransferase (C2GnT) は前立腺癌をはじめ種々の癌でその発現と悪性度との相関が見られ、これまでに診断系構築のためC2GnTに対するモノクローナル抗体を開発し、特許を取得してきた。
当初の予定では、本抗体を蛍光磁気ビーズに固定し利用する高感度定量測定系の構築を試みてきたが、反応条件を詰めきれず数値化には至らなかった。しかしながら、本抗体の特異性を利用した免疫抗体法を用いて、前立腺圧出液中のC2GnTを半定量的に検出し、悪性度との相関を確認できたことから、目標の70%は達成できていると考えられる。
今後の課題としては、反応条件を見直し、定量系の構築を行う。また、高感度且つ簡便なアッセイ系への応用を目指し、産学連携により実用化の可能性についても検討する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にモノクローナル抗体と蛍光磁気ビーズを利用した高感度定量測定系は実現しなかったが、代用として構築したドットブロット法での半定量系で、C2GnT測定の意義を尿検体を用いて明らかにした点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、アッセイ系を定量化および高感度にすることにより真に悪性度を評価できるマーカーとなり得るか検討することが望まれる。今後は、C2GnTの高感度アッセイ系の構築を産学共同研究開発で早い時期に実現させ、多数検体での評価を行うことが期待される。
新奇タンパク質捕捉型核酸分子を利用したタンパク質検出チップの創製研究 弘前大学
萩原正規
弘前大学
上平好弘
本研究では臨床現場で使用できるレベルの簡便性、迅速性、高い検査精度、再現性、低コスト化等を視野にいれた、優れたタンパク質発現解析ツール創製を目標として、核酸グアニン四重鎖構造を構造フレームワークとしたタンパク質捕捉分子ライブラリーの開発を行った。グアニン塩基の比率を高めた混合塩基を用いる核酸化学合成、さらに遺伝子工学を駆使して作製した核酸ライブラリーにより、当初予定した核酸型タンパク質捕捉素子として有望なグアニン四重鎖構造体核酸ライブラリーを、作製することが出来た。また、本手法により作製した核酸ライブラリーは、ハイスループット化にも対応できることから、将来的なチップ上への高密度集積化の可能性を示唆できるものであった。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、化学合成と大腸菌によるクローニング、酵素化学的手法を用いる「グアニン四重鎖構造体核酸ライブラリー」の構築法を示したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、タンパク質結合については種々のライブラリーが存在するので、本ライブラリーの物理化学的特性を生化学的特性へ発展させるなどでの実用化が望まれる。今後は、グアニン四重鎖構造体核酸の機能が注目されており、新しいタイプのバイオチップとして展開されることが期待される。
光学センサー方式によるカテーテル不要な非侵襲24時間自動連続血圧測定・監視システム(ABPM)の開発 弘前大学
野坂大喜
弘前大学
工藤重光
本研究では近赤外・赤外領域光を用いた非カフ式連続血圧測定技術を研究し、光学式による新たな非侵襲ホルター自動連続血圧測定システム(ABPM)の技術開発を行うとともにその技術移転可能性について検討した。光変調型フォトIC/フォトダイオードと赤外光を用いた生体センシング技術での血圧測定を検証した結果、安静時健常人において個体差によって誤差が10%を超える症例が認められたことから、基盤技術としては一定の有用性は認められるものの、精度を高める上で他のセンシング技術との併用による個体差補正技術の確立が必要であった。 また本技術は末梢部への装着によって体動の影響を大きく受けることから装着部位についても今後さらに検討が必要である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、 収縮期血圧については、おおむね期待した結果が得られ、光学センサー方式による自動連続血圧測定システムの基礎的データを取得し、実現可能性を示したことについては評価できる。一方、拡張期血圧に個体差が見られないこと、および従来法と本法との相関係数が小さことなど技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、安静時環境での運用を前提とした模擬実験を急ぎ、有用可能性を示されることが望まれる。
日本において子牛下痢症の原因となるEimeria属病原種の簡易診断を目的としたMutiplex PCR法の開発 岩手大学
関まどか
岩手大学
小川薫
コクシジウム症は子牛生産現場において最も重要な感染症の一つである。日本では病原性の強いEimeria bovis、E. zuerniiをはじめ、Eimeria 属原虫13種類がコクシジウム症の原因として報告されているが、遺伝子診断法が確立されていないため、原因種を正確に診断することは困難である。そこで、本研究では原因種を迅速かつ簡便に識別できるMultiplex PCR法の開発を目指した。その結果、E. bovis、E. zuerniiを含むEimeria 属原虫10種の塩基配列に基づいて設計した種特異的プライマーを用いたMultiplex PCR法の開発に成功した。さらに複数のEimeria 種が確認された野外症例の糞便サンプルについてMultiplex PCR法を適用したところ、Eimeria 属の混合感染を確認できた。今後は、のこる3種について同様に種特異的プライマーを設計することを目指すとともに、開発したMultiplex PCR法を用いた疫学調査を計画したい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、コクシジウム症の原因とされているEimeria属原虫についてMultiplex PCR用種特異的プライマ−による各原虫の特異性を確認し、糞便サンプルによる遺伝子検査でその有効性を立証した技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、感度の目標値を達成、または達成していることを立証すれば次のステップにつながり、畜産業への社会還元に導かれることが期待でき、実用化が望まれる。今後は、動物医薬品企業は、技術はもとより、コストや市場性を重視するので、早目にコ−ディネ−タ−の支援でコスト計算や市場性調査をされることが期待される。
バオバブ果実繊維高含有・低分子ポリフェノールの健康機能性の解明 岩手大学
長澤孝志
岩手大学
小川薫
アフリカ原産のバオバブ果実繊維のポリフェノールの生体吸収性の向上をはかるために、低分子化物の製造とその抗酸化性、抗糖尿病効果の検討を目的とした。メタノール抽出物のアルカリ加水分解により低分子化プロシアニジンを大量に得ることができ、これは優れた抗酸化性を示した。2型糖尿病マウスに低分子化バオバブポリフェノールを含む飼料を1か月間給与したところ、肝臓肥大の抑制、肝臓中のコレステロール含量の低下、および肝機能低下の抑制を認めた。以上より、低分子化バオバブポリフェノールは健康機能性のある安価なポリフェノール素材として他素材と差別化できたことから、素材提供企業との特許出願と関連学会における発表を行う予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもバオバブ果実繊維のポリフェノールより低分子ポリフェノール化合物を得ることに成功し、高い抗酸化活性や糖尿病モデルラットで一定の効能が期待できることを示した点は評価できる。一方、抽出・精製方法に一段の改良が必要と思われる。また、糖尿病モデルラットで得られた脂質代謝改善効果や肝機能改善効果についてその作用機序の検討が必要でり、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、目的化合物の抽出・精製方法の改善、作用機序の解明、安全性の検討、特許取得などが望まれる。
色覚・視覚特性評価のための刺激呈示装置の開発と回復視機能の評価 岩手大学
冨田浩史
岩手大学
小川薫
ヒトでの視力検査は自覚的検査によって行われており、その方法をそのまま動物に適応することは難しい。動物の視力検査は、多くの場合、行動解析によって行われている。今回、脳波測定による視力測定法を開発することを目的とし、検査プログラムを作成し、ヒトを対象に視力評価が可能かどうかを検証した。ヒトでの実験では被験者に呈示画像に特段の注意を払わないようにしてもらい、ディスプレイに映像を表示し、その間の脳波を測定した。図形認識課題を用いた場合には、呈示画像に注意を払った場合には脳波測定により視力検査が可能であった。一方、色覚検査課題では、注意を払う、払わないに関わらず、脳波測定により色の弁別が可能であった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、色覚検査課題での検査プログラムの作成および解析評価が達成され、特許出願も予定している技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、意思表示の困難なヒトや動物の視機能解析や評価が、客観的な手法で行うことができるようになれば、再生医療の評価だけでなく、視覚障碍者のQOLにも貢献が期待されるなどでの実用化が望まれる。今後は、ヒトの視覚、色覚等の不具合を起こす疾患にもこの方法は利用可能と考えられ発展をすることが期待される。
褐藻類由来のジテルペンが転写因子Nrf2を介して脳を保護する 岩手大学
佐藤拓己
岩手大学
小川薫
褐藻類はテルペノイドの合成能力があることは想定されていたが、従来の研究の殆どが親水性の化合物に集中し、テルペノイドが研究に取り上げられることは殆どなかった。これに対して本研究は、褐藻類のテルペノイドが生理活性に関与することを示した点で圧倒的な優位性を示す。この背景から、「生活習慣病を制御する食材分子」として、褐藻類(シワヤハズ)由来のテルペノイド(ゾナロール)に注目している。ゾナロールはストレス応答を司る転写因子Nrf2の活性化を介して脳を保護することを発見した。日本近海に散在するシワヤハズを、植物工場により生産し、新しい食品市場の創製を目指している。本研究では屋久島の群落を発見し、食材の実用化へ道を開いた。今年以内にシワヤハズの機能性食品の開発を目指して、ハイリスク挑戦などのグラントへステップアップする。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に開発のゾナロールの生理的活性の確認と精製法の簡便化を成し遂げた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、安全性試験、錠剤やカプセルの試作、原料供給などクリアすべき技術的問題があるように思われる。ゾナロールの濃縮方法と閉鎖系での完全培養法の確立を継続的に進めてもらいたい。今後の開発に関しては、企業のノウハウを取り入れ連携を強化することでも実用化を目指すことが期待される。
カスタムフィットプレート製作システムの研究開発とその最適化 岩手県立大学
土井章男
岩手県立大学
大橋裕司
本研究では、「いわて発」高付加価値Co-Cr-Mo合金(コバルト合金)のコバリオン(COBARION)を使用して、骨折箇所の固定を適切に行えるカスタムフィットプレート製作システムの研究開発と最適化に関する研究を行った。具体的には、手術前に撮像した小動物のCT画像やX線レントゲン画像(CR画像)を利用して、骨折箇所を修復し、元の正常骨の状態に近い形で固定可能なカスタムフィットプレートを製作する方式を開発し、実際に動物に外科手術で装着した。本研究では、動物を対象に行っているが、人体や大型動物にも適用可能である。また、動物病院で行われる骨折手術に対して、本製作方式で設計した骨折用プレートを用いて、その評価を行い、実際に必要な経費と全体の処理時間(CT画像撮影、骨折用プレートの設計、骨折用プレート鋳造)を精査した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、試作品の評価はされていないので技術課題も明確になっていないが、CCM合金プレートを試作したことについては評価できる。一方、試作品を評価し使えることが分かれば、動物の骨折治療に有用な方法となるので、試作品の評価実験に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、試作品の評価実験をおこなう必要がある。また、製作に必要な費用・設計製作に必要な時間を算出し、経済的に見合うことを示すされることが望まれる。
牛肉中のオレイン酸蓄積を増大するGH遺伝子多型の簡易検出法の開発 東北大学
加藤和雄
東北大学
青田康典
今回の研究目的は、黒毛和種牛にとって経済的に有用な遺伝子であるC型の多型を検出する方法の開発である。まず、数百の多サンプルを短時間で解析できるDot-plot-SNP法の確立を試みて、基本的に目標を達成することができた。実際、直接的遺伝子解析法による結果とすべて一致した。また、コスト的にも直接解析法の10%程度にコストダウンできる。続いて、少サンプルの解析法確立であったが、まだ確立の途中にある。どうしても、分子生物学的解析法のプロセスを省略できないために、コスト的には直接解析法と大きな差がなかった。
今後は、Dot-plot-SNP法の特許申請上の価値について、検討する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、数百の多サンプルを短時間で解析できるDot-plot-SNP法の確立した技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、積極的に肥育を行うべき個体の選抜で霜降り状態との相関などが明らかになれば、経済効果が高まると思われ実用化が望まれる。今後は、オレイン酸の差は小さいので、C型遺伝子を持つウシのオレイン酸蓄積能力を十分に発揮できる飼養技術を確立されることが期待される。
GATA転写因子を標的としたエリスロポエチン産生誘導剤の開発 東北大学
清水律子
東北大学
後藤英之
上皮系細胞の一部にEPO産生能を保持したまま産生を休止している細胞が存在すること、このメカニズムにはGATA転写因子による遺伝子発現抑制が関与していることがわかっている。本課題では、GATA因子機能抑制してEPO産生を促す化合物の同定を目標とする。ハイスループットGATA因子機能評価系を樹立し、低分子化合物ライブラリと既存薬ライブラリの合わせて16000化合物のスクリーニングを行い、GATA因子活性を効果的に抑制する活性化合物を得た。また、その一部の化合物が通常酸素下でEPO遺伝子発現を誘導できることを見いだした。今後は、得られたリード化合物を出発点として、EPO遺伝子発現抑制を解除して腎臓からのEPO産生を促すことのできる医薬品の創出を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもGATA因子リポーター細胞株を用いた大規模スクリーニングを実施してヒット化合物を中抽出できたことは評価できる。一方、マウス個体を用いた二次評価でヒット化合物がどの臓器でEPO遺伝子発現を誘導するのか、適切な投与量を決定できるか、さらに最適化合物をどのように決定するのかなどの検討が必要と思われる。今後は、ヒット化合物の更なる探索とin vivoで明らかな有効性を示す化合物を見いだせるよう、研究の継続が望まれる。
災害時等における医用X線写真撮影用のX線発生システムの開発 東北大学
千田浩一
東北大学
渡邉君子
災害医療におけるX線撮影の重要性は高い。だが災害時に電源設備が損傷を受けた場合、X線撮影が行えない事があり重大な課題となっている。一方災害時は、救護所など通常はX線撮影を行わない場所で撮影を行うため、X線装置の安全な使用を確保することは重要である。我々は、災害時の電源設備損傷においてもX線撮影装置を稼働できるようにするため、供給電源を多様化したX線発生システムを開発した。すなわち家庭用電源に加えて、バッテリでも稼働する、そして良好な基本性能を有する、移動形X線発生システムを実用化した。さらに災害時X線撮影の安全性等の確保のための基礎的検討を行い、簡易的なX線防護遮蔽具を作製することができた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、災害時における汎用性が高いX線撮影装置の開発として、家庭用電源やバッテリーを電源とする装置の開発が出来た技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、電源のないところでの撮影にあるため、小型で安全な電源供給装置の開発により実用化が望まれる。今後は、実用化に向けて、災害時や電源供給のインフラが無い地域での使用が可能となる電源との組合せの開発が急がれことが期待される。
早期胎仔でも計測可能なマウス用胎仔心電計の開発 東北大学
董宇鵬
東北大学
青田康典
胎齢12.5日目以降のマウス胎仔から直接誘導による心電位の計測に成功した。妊娠末期では母獣子宮壁に設置した電極から間接誘導でも心電位を15分以上連続して計測することも成功した。当初の目標に掲げた胎齢10.5日目からの胎仔心電位の計測には成功していないが、自律神経機能発達に伴う循環器動態の評価が可能なシステムの構築には成功した。
今後の目標は母獣覚醒下での胎仔心電位計測システムの開発。胎仔発生に伴う胎仔の母獣腹腔内の相対的な位置変化に対応し、胎仔を探索し、心電位を計測する母獣腹壁留置型の電極の開発を通して、妊娠過程の長期計測を実施することである。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、皿電極の接着が困難であると判断し縫合糸による固定を行い、針電極による早期胎児の侵襲的観測を行った事に関しては関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、現状では侵襲性が高過ぎ、応用展開の可能性そのものが極めて低い。技術移転につなげるには、母体マウスを閉腹状態で筋電障害要因を除去する方式にこだわって研究を行うことで実用化が望まれる。今後は、閉腹観測での障害要因となっている子宮筋電位の多チャンネルでの除去はよくあるアプローチなので、筋電位の波形特徴を研究するか、筋電位が発生しない条件に関して研究されることが期待される。
超音波計測融合血流解析システムによる動脈硬化の超早期診断法の確立 東北大学
早瀬敏幸
2次元超音波計測融合血流解析システムにより、健常または疾患を有する任意の頚動脈の超音波カラードプラ計測データに基づく血流解析を可能にし、得られる血行力学パラメータに基づく動脈硬化の超早期診断法を確立することを目的に研究を実施した。動脈硬化が進行して狭窄や蛇行を有する血管についても血流解析を行うことが可能になり、システムの汎用性が向上した。また、本血流解析システムにより得られる血流動態や血行力学パラメータと医師による臨床所見とを比較した結果、血管の状態により内部の血流の速度変化と分布が異なることで壁せん断応力分布に差異が生じ、本システムにより動脈硬化を検出できる可能性が確認された。今後、開発した血流解析機能を実際の超音波診断装置内に搭載することにより臨床応用へと展開する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、多数の臨床データを解析して目標とするシステムを組み上げ、新規の特許出願はないが、共同研究先企業が確定しており、実用化の道筋が出来ていることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、血液の粘度が被験者により異なるという問題点を洗いだし、技術的改善に向かっており、実用化が望まれる。今後は、機械系学会のみならず、超音波医学会、循環器学会など、異分野での情報交換で更なる発展をもたらされることが期待される。
米糠の高付加価値成分を長期保持するための貯蔵保管技術の開発 東北大学
宮澤陽夫
ビタミンEの一種のトコトリエノール(T3)は優れた健康機能性が着目され、米が有望な分離源である。米収穫後の貯蔵によりT3は急激に減少することから、減少のメカニズムと抑制する貯蔵法を検討した。精製γT3の貯蔵モデル試験により、経時的なT3の減少と酸化物(8a-hydroperoxide体およびquinone体)の蓄積がみられたことから、減少は酸化によると推察された。しかしながら、T3減少が見られた貯蔵玄米からは明瞭な酸化物は検出できなかった。T3減少を抑制する玄米貯蔵法の検討では、T3は酸素の遮断では有効に抑制されなかったが、低温条件では抑制され10℃以下の貯蔵でT3を90%保持することができた。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、精製トコトリエノール(T3)を用いたモデル系でその酸化メカニズムを推定したことと、玄米を10℃以下にすることによってT3量の維持ができることを確認したことについては評価できる。一方、玄米でのT3減少メカニズムでの酵素の関与の有無や、米糠中のT3の活用に向けた課題に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、経済的なT3の抽出技術の開発など、市場ニーズに沿った商品開発を意識した研究開発を取進めることが望まれる。
高汎用性・高性能低温プラズマ滅菌装置の開発 東北大学
吉野大輔
独立行政法人科学技術振興機構
磯江準一
本研究では、汚染された医療機器や生活用品等を対象として、従来の滅菌法に代わる高汎用性、高性能の低温プラズマ滅菌装置の開発に向け、循環気流発生装置、有害化学種浄化システムを組合わせた滅菌装置を試作することを目標とした。直径120 mm、高さ200 mmの大気圧空気プラズマ滅菌装置を試作し、2種類の滅菌指標菌(高圧蒸気滅菌用、酸化エチレンガス滅菌用)について35分以内で滅菌可能という結果に至った。この時、装置内の温度は室温程度で変化がなく、低温での滅菌が達成できた。また、有害化学種浄化システムを組合わせることで、滅菌時に発生する有害ガスである窒素酸化物を5 ppm程度まで分解、除去することに成功した。医療現場における滅菌保証のガイドラインに従った滅菌評価試験では良好な結果は得られなかったため、有害化学種浄化システムと合わせて更なる改良を進める予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、全体システムの製作と滅菌の検証及び、窒素酸化物の分解、除去の検証による機能の確認は実施できていることは評価できる。一方、実機開発としての装置サイズ、滅菌性能、浄化性能共に、目標に対して大幅に未達であり、ニーズを有する企業と共に継続して研究開発を進め、当初目標を達成するため、さらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、ドライ雰囲気での滅菌は薬液を使わないことや排水後処理などのシステム的な付加が軽減できる事から、実現すれば優位性のある技術であるので、実用化に向けた装置改良に際しては、性能不足の要因を整理、分析して対策を実施することが望まれる。
アルドステロン合成酵素の転写制御因子複合体の同定による新たな高血圧治療の分子標的の探索 東北大学
横山敦
独立行政法人科学技術振興機構
山口一良
本研究課題では、これまでの治療に抵抗性の高血圧症治療のための新たな分子標的を探索することを目的に、副腎組織において産生される昇圧ホルモンであるアルドステロンの合成酵素遺伝子(CYP11B2)の転写調節メカニズムに着目しその詳細にアプローチすることを試みた。 具体的には、CYP11B2遺伝子を制御する主要な転写因子であるNurr1(NR4A2)に着目し、細胞核内に存在するNurr1の転写制御因子複合体を生化学的に精製・同定しその中から治療のための分子標的候補を探索しようと計画した。現在、副腎由来細胞においてNurr1の安定発現株を樹立することに成功し、さらにその複合体を同定しつつある。今後、これら同定された因子の中からNurr1に対する転写制御活性を評価することで、さらなる分子標的候補の絞り込みが行え、この手法による特許取得も可能と考えている。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも粘り強い考察からFLAGタグ付きNurr1の安定発現系の構築に成功している点は評価できる。一方、Nurr1の転写制御因子複合体の単離と構成因子の同定に向けた技術的検討や、その因子がどの程度高血圧発症に関与しているのかデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、Nurr1の転写制御因子複合体の単離に注力して、構成する因子の同定を進めることが望まれる。
がんで異常亢進するシアリダーゼの特異的低分子阻害剤の探索と創薬への応用 東北薬科大学
宮城妙子
独立行政法人科学技術振興機構
山口一良
最近のがん分子標的治療薬の発展にも拘らず、副作用や耐性の出現等、問題点もいまだ多い。本課題は、がんの浸潤や転移に深く関与している膜表層シアル酸量調節の鍵酵素の形質膜型シアリダーゼ(NEU3)に着目して新規治療薬の開発を目指すものである。対象は研究責任者らが世界に先駆けて、クローン化、種々のがんで異常亢進することを発見した分子で、本課題では、この阻害・抑制薬としての低分子阻害剤の探索を行なった。約20万個の化合物ライブラリーから酵素阻害によってスクリーニングし、現在、6次評価を施行中で、3化合物に絞られている。今後、細胞や個体レベルでの評価を行なう。有効な化合物が同定されれば、知的財産権を確保し、製薬企業へのライセンスアウトをめざす。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも得られた薬剤薬剤のスクリーニング系の開発とヒット化合物のシアリダーゼ阻害活性については精力的な研究がおこなわれおり評価できる。一方、同定された化合物の純度の問題と、細胞レベルの活性があるのかなどの問題があり、データの積み上げなどが必要と思われる。今後は、がんの浸潤と転移に対する効果があるかどうか結果を早急に出すことが望まれる。
スクリューとロッドを使用しない革新的高性能脊椎制動具の開発 秋田大学
菅原卓
秋田大学
伊藤慎一
現在広く行われている脊椎固定術の欠点を克服する革新的脊椎制動具の開発を行った。制動具は3Dチタンプリンターを使用して動物の脊椎形状に合わせてオーダーメイドで作成した。動物実験により、椎弓に密着させるための脊椎制動具の設計条件や制動具に十分な強度を持たせるための構造が明らかとなった。また、人工関節を使用した制動システムも正常に機能していることが確かめられた。今後は、これらの結果をもとに臨床試験への展開を視野に入れて公的研究資金の獲得を目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、脊椎安定性と運動制限の軽減に成功し、脊椎のダイナミクスに対応しようとした点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本制動具の最終的に要求されるレベルについて明確な目標設定がなされていないが、対象となる疾患数が多く実用化が望まれる。今後は、臨床応用、あるいは社会還元に多いに貢献されることが期待される。
生体吸収性高分子による心膜用シートの開発 秋田大学
寺境光俊
秋田大学
伊藤慎一
柔軟な生体吸収性合成高分子による心膜代替シート開発について、合成法の改良、動物実験、膜物性の向上の3点について検討を行った。合成法について、有機触媒を用いたマルチブロック共重合体の合成に成功し、スケールアップも可能となった。生体内での使用を考慮すると、従来法である重金属触媒を用いた方法にくらべて安全性の高い材料の作製が可能となった。イヌの心臓を用いた動物実験では検討期間内では再現性よく良好な結果(癒着スコア平均1以下)を得ることができなかった。PLLA-PCLマルチブロック共重合体膜の生体内分解速度に問題があり、この点を改善する必要がある。加水分解時間を長くすると膜強度は低下するもの低分子量成分が混在することが明らかとなった。これが予備検討結果における生体内での早い分解と関与している可能性が高い。一方、分子構造レベルで加水分解特性を向上する検討として、新しい分子構造をもつマルチブロック共重合体を合成した。緩衝液(pH 7.4)中での加水分解に要する日数がPLLA-PCLマルチブロック共重合体の1/4以下と大幅に改善された新生体吸収性マルチブロック共重合体を開発することができた。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、柔軟な生体吸収性合成高分子を用いた心膜代替シートの開発に向けて、高分子合成、動物実験、膜物性評価について今後の展開に有用な知見が得られていることについては評価できる。一方、有望なテーマであるが、競合研究グループとの(機能的・性能的な)差別化に乏しい印象があり、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、より積極的に成果を発表しながら、早急に連携企業を模索されることが望まれる。
4型コラーゲンからのシグナルを利用した新しい喘息治療薬の可能性を検証する 秋田県立大学
岩下淳
秋田県立大学
渡邊雅生
喘息患者の気道では粘液の主成分であるムチンタンパク質が過剰に産生され、気道閉塞を誘導する。ムチン産生の抑制は喘息症状緩和につながる。これまでに研究責任者らは、細胞外基質の成分である4型コラーゲンからのシグナルが、接着分子インテグリンやAktキナーゼを介して、ムチンの産生を抑制する現象を見出し、この経路の制御によってムチン産生を5割抑制することを目標とした。
本研究開発の結果、ヒト気道上皮細胞においてAktの特異的な活性化によってムチン産生を6割抑制できた。また新たに、インテグリンα2サブユニットの特異的な阻害によってムチン産生が7割抑制される現象を見出した。今後はAkt活性化剤、インテグリンα2阻害剤によるムチン産生の抑制効果を明らかにして、新規喘息治療薬開発への展開を図る。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも喘息患者の症状緩和に効果のある気道ムチンタンパク質の産生抑制法の開発を目指しており、ムチンタンパク質抑制効果がある4型コラーゲンからのシグナル制御に着目して、それを実現しようとしている。ヒト上皮細胞を用いた実験において、Aktキナーゼの活性化とインテグリンα2阻害がムチン産生の抑制効果があることがわかった点については評価できる。一方、喘息モデルマウスの樹立に時間がかかってしまい、予定していた実験動物での研究が終了できていない点は今後の課題と思われる。今後は、新薬の薬効の特異性をどのように出すのかを考慮することが望まれる。
非拘束性とQOLを考慮した離床予測センサシステムの開発 秋田県立大学
間所洋和
秋田県立大学
石川直人
本課題では、離床行動のモデリングとセンサ配置の最適化、既存装置を上回る検出精度の達成、及び装置の小型化とモニタリングシステムの開発を目標として、8ヶ月間に渡る研究開発に取り組んだ。モデリングと配置最適化については、ズレの問題を解決するために脚荷重センサを新規に試作した。これにより、配置数を6カ所から4カ所に減らすことができた。検出精度に関しては、長座位では既存センサの性能を下回ったものの、端座位と完全離床ではボルトセンサの効果により100%の検知が達成できた。装置の小型化については、ハードウェア化は達成できなかったが、省電力無線モジュールによるモニタリング環境を構築し、実用化への道筋を付けることができた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、従来技術の課題であった事前キャリブレーションや被験者の体動に伴うズレを完全に回避できるなど、姿勢予測を高い精度で可能とした技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、センサの開発やナースコールとの接続については企業との調整を進めており、産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性が大いに高まっている。臨床現場での長期間モニタリング評価により離床予測の検証を行うなどで実用化が望まれる。今後は、ナースコールとの接続など既存のシステムへの簡便な組み込み方法等、実用化に向けた検討がされることが期待される。
神経細胞内蔵型人工神経の創製を目的とする生体薄膜ロール形成機構の開発 山形大学
井上健司
山形大学
高橋政幸
我々は、現在の治療法では再生不可能な重度の末梢神経損傷に対し、神経細胞を内蔵した人工神経を創製して移植する新しい治療法の開発を目標としている。人工神経は、神経細胞を培養した生体薄膜を巻いてロール状にし、実際の神経の構造を模倣した構造を創製する。本研究では、上記創製法を実現する上で重要となる生体薄膜ロール形成機構を開発した。この機構は、細い六角柱を芯にして生体薄膜をロール状に巻き、ポリ乳酸製の外管に収納するまでを自動で行うことができる。実験の結果、平均太さ2.03[mm]、長さ30[mm]の生体薄膜ロールの作成に成功した。今後の課題は、神経細胞を培養した生体薄膜を用いて人工神経を創製することである。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、人工神経の創製に役立つ生体薄膜ロールの生成に成功しており、この技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、研究成果は人工神経の生成等生物科学や医学に応用展開でき、早急な特許等知財化などでの実用化が望まれる。今後は、社会還元に資することが期待できる独自技術を構築できたので、人工神経創製等への応用展開を進め、産業化されることが期待される。
目視で判断できる癌診断検査キットの開発 山形大学
木島龍朗
独立行政法人科学技術振興機構
山口一良
アゾ還元酵素による色素分解をバイオマーカー検出系に組み合わせた、色の変化で判断できる癌診断用バイオマーカー検出システムの開発を行った。この検出系は癌診断においてマーカーとして重要なL-メチオニンを検出し、その結果をアゾ色素の分解(色が消える)という化学変化で知らせることを期待したもので、本研究では、反応原理の確立とその有効性の確認を目標に検討を行った。その結果、L-メチオニン量とアゾ色素の吸光度変化には相関性があることを確認し、血液サンプル等を用いた実証試験においても反応の進行(アゾ色素の分解)が確認され、癌診断検査キットとしての可能性が示唆された。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、新しい動作原理による酵素による腫瘍マーカー作成の可能性をあきらかにしたことについては評価できる。一方、検査キットに使用できる活性を示すアゾ還元酵素を得ることができるかが、実用化の鍵になるので、活性の高いアゾ還元色素の大量作成に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、早急に特許出願を行い、実用化を意図した産学共同の研究開発ステップにつなぐことが望まれる。
新規生理活性物質セクレトグロビン(SCGB)3A2の慢性閉塞性肺疾患の治療薬としての検討 山形大学
黒谷玲子
山形大学
金子信弘
本研究開発では新規生理活性物質セクレトグロビン(SCGB)3A2の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬としての有効性を培養系およびモデル動物を用いて検証することを目的とした。細胞培養系を用いた検討では、SCGB3A2は、p53のリン酸化を抑制することによってアポトーシスを抑制することが明らかになった。モデル動物を用いた解析では、マウスの系統によって曝露条件を新たに決定する必要があったため、モデル作製に時間を要した。そのため、計画の50%の解析のみが行われた。しかしながら、新たな知見として、SCGB3A2は肺の組織構築に極めて重要であることが明らかになり、得られた情報の意義は大きい。今後は、未解析部分の解析を継続して行い目的を検証し、将来的にSCGB3A2のCOPD治療薬としての利用に繋げていきたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも医療ニーズの高いCOPDに対するユニークな治療法の開発研究として評価できる。一方、今後の研究については意欲的だが、より具体的戦略が望まれる。ヒトの治療法としての有効性をより明確にしていくことが鍵と思われる。今後は、医工連携、産学連携を強力に進めていただくことが望まれる。
脳疾患における酸化ストレス評価用イメージングプローブの開発 山形大学
佐藤慎吾
山形大学
二宮保男
脳疾患モデル動物の酸化ストレス状態を非侵襲的に高感度で画像化することを目的に、13種類の化合物とニトロキシドとの縮合物を合成し、マウス尾静脈から投与後、マウス頭部をERPイメージング法により観察した。ほとんどが脂溶性のために溶解性が低く投与できなかった。グルコースとの縮合物では逆に、水溶性のために血液脳関門を通過できず、脳内移行は観測されなかった。その中で、イブプロフェンとPROXYLとのエステル結合化合物は脳内に良好に移行することが分かったので、15N化した化合物を合成し、脳内炎症モデルマウスで抗炎症作用がどのように働くのか、ERPイメージング法で観察する予定。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、イブプロフェンとニトロキシドラジカルとのハイブリッド化合物が血液脳関門を速やかに通過して十分な濃度で脳内に達することを非侵襲的手法によりリアルタイムで画像化観察できたことについては評価できる。一方、今回合成されたプローブが脳内活性酸素による酸化ストレスを定量できるかの検証に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、企業との連携、技術内容の権利化されることが望まれる。
抗癌剤スクリーニングに用いる癌細胞由来脱細胞化マトリックスの開発 山形大学
干場隆志
生体外で癌細胞が形成した脱細胞化マトリックスを抗癌剤スクリーニング用培養基板として利用するため、多くの癌細胞の抗癌剤耐性が亢進する抗癌剤スクリーニング用脱細胞化マトリックスの作製を目的とした。その結果、血液適合性高分子上で形成された脱細胞化マトリックス上で、従来のものよりも抗癌剤耐性が亢進した(特許出願準備中)。一方、当初の目標である、6種の癌細胞、6種の抗癌剤の比較は行えず、2種の癌細胞間の単一の抗癌剤(5-FU)耐性を比較した。5-FUに対しては、元の組織由来の細胞が形成した脱細胞化マトリックス上で最も5-FU耐性が亢進した。今後も、癌細胞種、抗癌剤の種類の検討が必要だが、抗癌剤スクリーニング用基板としての展開には、血液適合性高分子上に異なる組織由来の癌細胞が形成した脱細胞化マトリックスを複数種、準備し、提供する方法が最適であると考えられた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に癌細胞由来マトリックスと癌細胞を用いた耐性実験系が確立できた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、安定して、ヒト由来初代癌細胞を用いて作製する脱細胞化マトリックス基盤を提供できるかなどでの実用化検討が望まれる。今後は、同組織由来癌細胞を多種類用いて、様々な癌のステージ進行具合に応じたマトリックスを開発することが期待される。
ヒトの知覚プロセスを模倣した触感センシングシステム 山形大学
野々村美宗
ヒトが触覚によってモノの質感を感じ取るプロセスを再現した「バイオミメティック触感センシングシステム」を試作した。このシステムは、ヒト指モデルからなる接触子でモノを擦り、複数のセンサーを装着し、摩擦プロセスで接触子が正弦運動して、ヒトがモノに触った時の界面の状態を模倣する。さらに、金属、布、樹脂、木材、紙などノの摩擦特性を示す「触感ライブラリー」を構築に着手した。今後、触覚と摩擦特性の関係を解析し、センシングシステムの実用化を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、触感を感じるプロセスを再現したセンシングシステムの試作に成功したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、摩擦情報と触感の関係の解析には至らなかったので、今後官能評価と摩擦情報の関係を解析できる新しい手法を導入しての実用化が望まれる。今後は、連携企業による製品化が既に計画されているので、感性評価に関する解析手法を加味して、有用な試験機として上市されることが期待される。
電極制御によるトランジスタ型有機強誘電体メモリの低電圧化 山形大学
福田憲二郎
高性能なトランジスタ型有機強誘電体メモリの開発を目標とした研究開発を行った。電極の制御及び、塗布型有機半導体材料の最適化を行った結果、駆動電圧10V以下、保持時間106秒以上、という目標値を上回る、非常に良好な性能を有する全印刷方式によるメモリ素子の開発に成功した。また、10×10のアレイ化に向けた開発の中で技術的な課題を抽出し、その解決策に対する指針も定めることができた。単体の高性能化という点での達成度は100%以上、アレイ化に関する達成度は50%である。今後は研究責任者を中心として明らかとなった技術的課題の解決に取り組み、その後実用化に向けた企業との連携をさらに推し進める予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、本研究は高性能なトランジスタ型有機強誘電体メモリの開発を目指し、印刷方式により作製したトランジスタ型有機強誘電体メモリについて、当初の目標を達成したことは高く評価できる。一方、技術移転の観点からは、本強誘電体メモリを用いてフレキシブル基板上へのアレイ化と、強誘電体材料の最適化を挙げているので、早期の解決と、特許の出願が望まれる。今後は、有機強誘電体メモリのフレキシブル基板へのアレイ化を達成することにより生体センサなどへの応用展開も可能となるので、早期の実現が期待される。
超音波利用型マイクロバブル発生装置の開発 山形大学
幕田寿典
山形大学
松崎辰夫
本研究では中空超音波ホーンを用いたマイクロバブル発生装置の実用化に向け、開口部の形状や超音波周波数を変化させることにより、20mm以下のマイクロバブルの発生量を増加させることを試みた。その結果、開口部形状については気泡の気液界面とホーン先端との接触部長さが増加することでマイクロバブルの生成が促進された。また、マイクロバブルの発生領域を遠ざけることで発生した気泡の再合体が抑制されマイクロバブル発生量の向上に成功することに成功し、平均30mmで流量1000mL/min以上の発生が可能となった。一方、超音波周波数15kHzと19.5kHzを比較した場合、同程度の酸素溶解能力に必要な装置への投入電力が抑えられたことから周波数を下げることがマイクロバブルの発生では有功であることが明らかとなった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、平均気泡径 20μm 以下の気泡の発生は、達成されていないが、マイクロバブルの発生量は目標が達成されている。また、水の10倍程度の粘度を持つ高粘性流体でのマイクロバブルの発生も達成されていることは評価できる。一方、マイクロバブル発生器の性能は市販品に対して大きな優位性を持つとは推察されないので、さらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、マイクロバブルの産業応用 について、まず具体的なニーズと可能性を検討・把握し、シーズとニーズをすりあわせた開発計画に進むことが望まれる。
アルツハイマー型認知症の早期発見に有用な酵素の開発 福島大学
杉森大助
当初目標の酵素の遺伝子配列の新規性および有用性が確認でき、企業との共願に至る研究成果が得られた。酵素については、技術移転が果たされ、今後酵素試薬として実用化が期待できる。
具体的には、アルツハイマー型認知症の早期発見バイオマーカーであるプラズマローゲンエタノールアミンを選択的に測定できる酵素反応系を確立することができた。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、新規酵素を用いた新たな測定法が考案され、汎用性と定量性および従来法との相関性も立証されている。すでに実用を視野に入れた段階に到達しており、技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からはすでに基礎研究の範疇を超えて実用へと展開している。酵素の生産性と反応性をさらに高められれば、より確固たる独自技術となり、実用化が望まれる。今後は、本支援プログラムの目指すところをすでに達成されており、今後の展開が期待される。
ミトコンドリア機能を標的とする粘菌由来新規天然物の作用機序解析と創薬応用 福島県立医科大学
小椋正人
福島県立医科大学
佐久間健
ミトコンドリア標品を用いたスクリーニングで選定した細胞性粘菌由来の新規脱共役関連物質の代謝改善薬への応用の可能性について検討した。ヒト由来培養細胞に対し、本物質が細胞毒性およびエネルギー産生傷害を惹起することはなかった。マウス個体への本物質の適用は、体重および腹部脂肪体積の減少を惹起した。一方で、腎臓・肝臓の組織像に著変を与えなかった。脱共役機序を解析したところ、本物質は非受容体型チロシンキナーゼc-Srcの活性化を通して脱共役作用を惹起すると示唆された。今後は、脱共役に関与するc-Src標的分子を同定し、代謝改善に関与するシグナル系の全貌を明らかとし、さらなる応用の可能性を追究する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも当初の予定どおりスクリーニングを行い、物質AならびにBを有力候補として絞りこむことができ、体重減少効果を確認することができた。また、物質Aはc-Srcを活性すること、c-Src標的分子として、flotillin-1およびflotillin-2タンパク質を同定し、今後の作用機序の解明につながる成果を得ている点は評価できる。一方、企業が共同研究を受諾するまで、まだ研究が進んだとはいえない。候補物質A.ならびにBの作用機序に関して、更なる解明が必要である。特に、内臓脂肪がどの程度減少したのか、具体的な数値を報告して欲しい。また、体重減少が単なるtoxic な効果でなく、本当にミトコンドリアに作用した代謝改善作用のためであることを示すために、食餌量や熱産生量に関する検討が必要と思われる。今後は、更なる研究の発展に期待する。
ウルトラスループットなPCR→無細胞タンパク質合成を実現するマイクロゲル粒子分散型反応システムの開発 筑波大学
市川創作
筑波大学
柿本茂八
マイクロサイズのゲル粒子を反応場として、PCRから無細胞タンパク質合成を行う2段階生化学反応を超並列的に行い、大規模なDNAライブラリーから新奇な酵素やタンパク質を進化分子工学的手法により獲得するウルトラスループットなマイクロゲル粒子分散型反応システムの構築を目指し、その要素技術の研究開発を行った。その結果、マイクロ流路チップによる均一な粒径のアガロースゲルビーズ作製法を開発すると共に、このアガロースゲルビーズにプライマーDNAを固定化し、PCRによりゲルビーズ内でDNA増幅が可能であることを明らかにした。また、ゲルビーズ内で無細胞タンパク質合成を行い、合成されたタンパク質をゲルビーズに捕捉できることを示した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、マイクロサイズのゲル粒子を反応場とするシステムの有効性を示したことについては評価できる。一方、極めて多種の反応への対応に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、親和性が高まったモノクローナル抗体の取得などに応用されることが望まれる。
ヒト肝細胞からのインスリン分泌細胞再生技術による糖尿病の根治療法の開発 筑波大学
大石久史
筑波大学
山本信行
本研究では、糖尿病治療に資するインスリン分泌細胞を再生するために、インスリンを産生する唯一の細胞である膵臓β細胞をヒト肝細胞より、直接分化転換する技術開発を目的とした。この目的のために、(1)ヒト肝臓細胞を有するモデルマウスの作製(ヒト型モデルマウス)、(2)転写因子Pdx1、NeuroD、MafAをポリシストロニックmRNAとして1つのアデノウイルスベクターに挿入したベクターの構築とそのウイルス作製(Ad-PDA)、(3)ヒト型マウスモデルに対して、Ad-PDAを感染させ、実際に移植肝臓細胞からヒトインスリン遺伝子の発現誘導されること、(4)ストレプトゾトシン誘導糖尿病モデルに対して血糖降下を有することの4点を明らかにした。したがって、本成果は、臨床応用へ向けた基礎研究開発としての当初の目的を概ね達成したと考えられる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、移植したヒト肝細胞からのインスリン分泌型のβ細胞へ分化できたことに関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、人の再生医療へ応用する場合、インスリン分泌型β細胞への分化のための遺伝子組換えの安全性に関する問題が解決されれば、産学共同の研究開発の可能性もあり、実用化が望まれる。今後は、インスリン分泌型の細胞に誘導した細胞を移植することで、糖尿病治療効果があるのか検討してほしい。また、人に応用する場合、安全性の問題をどのように克服するかが期待される。
新しく開発した足関節自動運動器による深部静脈血栓症の予防効果の検証 筑波大学
鎌田浩史
筑波大学
山本信行
整形外科手術において、術後下肢静脈血栓症(以下DVT)予防は重要課題である。本研究では、DVT予防のため独自に開発した足関節自動運動器を用いた運動によって、健常人における下肢静脈血流が増加することを検証した。また、運動時の下肢筋群の筋活動を表面筋電図を用いて評価した。我々の開発した足関節自動運動器を用いた場合、機器を用いないで足関節運動を行った場合に比べて高い血流量と筋活動量を得ることができ、DVTの予防として効果が期待できるものと考えられた。今後、本器の安全性を検討しながら適応患者を選定し、人工関節手術後の患者における血栓予防効果を検証する予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、企業とタイアップした共同研究として、健常者を対象として血流量が増大したことは評価できる。一方、症例・方法論の多くの点で目標が達成されていないが、多くの問題点は明らかになった。今後は、効果が期待できる課題であるので、いったん基礎的な研究段階に立ち戻り、開発内容の詳細を検討しなおし、研究開発をを進めることが望まれる。
高頻度特異的遺伝子変異を利用した血管免疫芽性T細胞リンパ腫の遺伝子診断技術の開発 筑波大学
坂田麻実子(柳元麻実子)
筑波大学
山本信行
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(Angioimmunoblastic T cell lymphoma: AITL)は、高齢者に多い末梢性T細胞リンパ腫のひとつである。従来の病理学的診断のみでは、診断がしばしば困難である。また、従来型治療では、5年生存率20%と極めて予後不良である。申請者らは全ゲノムシークエンス解析により、AITLの70%にRHOA遺伝子に50番目の点突然変異G→Tが集積していることを発見した。本研究ではこの変異の研究技術を高めた。また、血清材料からもRHOA遺伝子変異を検出する系を確立した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、T細胞リンパ腫の特異的変異を発見した点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許譲渡が成立し、検査会社による検査にこの変異の検出が応用されれば、診断などでの実用化が望まれる。今後は、一般の医療機関でも遂行可能な、本来の意味の「安価で簡便な方法」を追究されることが期待される。
iPS細胞の骨再生を効率的に促進する技術の開発 筑波大学
嶋田昌子
筑波大学
山本信行
カルパインの生理機能を間葉系幹細胞で変化させることにより、効率的に骨細胞分化を誘導できる、という仮説のもとにiPS細胞の骨再生を効率的に促進する技術の開発を研究目的とした。
カルパインをlimbーbud mesenchymeで欠損させた遺伝子改変マウスでは胎生期の骨の発達段階にて骨の伸長および海面骨の形成が有意に変化した。この知見を、iPS細胞からの骨再生に応用、骨再生を効率的に促進する新規技術を開発し、骨・軟骨再生医療イノベーションの技術基盤を構築するために同遺伝子改変マウスと対照群マウスの繊維芽細胞からiPS細胞株を樹立しつつある段階にある。確立したiPS細胞株の間葉系幹細胞、骨細胞への再生を今後継続して検討し、正常iPS細胞から骨再生を促進する技術をさらに検討していく。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、カルパイン欠損Tgマウスでの骨分化・骨形成に関して有効なデータが得られたことにより、カルパインの制御による骨分化誘導の可能性が示され、骨分化カルパインの標的タンパク質の有力な候補蛋白の同定に至っている点については評価できる。一方、本事業は、iPS細胞の基盤技術の開発を意識した課題であるが、間葉系幹細胞からの分化誘導の基盤技術に立ち戻っての技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、基礎研究の能力は十分備えているので、基礎研究に立ち戻っての地に足をつけた検討がされることが望まれる。
ホウ素中性子捕捉療法におけるサブミクロンホウ素薬剤粒子の中性子照射による細胞殺傷効果の検証 独立行政法人産業技術総合研究所
石川善恵
独立行政法人産業技術総合研究所
名川吉信
液中レーザー溶融法による球状炭化ホウ素粒子の合成効率の改善に成功し、100nmと300〜400 nmのサイズの異なる粒子をそれぞれ回収することが出来た。これらの粒子の表面にトランスフェリン修飾を施し、HeLa細胞に添加した。2時間経過後に細胞を洗浄し、粒子残存量を評価したところ、100 nmより300〜400 nmの粒子の方が多く残存していた。これらの結果より、100 nmより300〜400 nmの粒子の方がHeLa細胞に対して細胞取り込み特性または表面親和性が高く、BNCT効果も優位である可能性が示唆された。今後、これらの結果の再現性を確認するとともに、粒子サイズと細胞内取り込み・細胞表面との親和性との関係をさらに追及していく予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、選択的細胞取り込みのサイズ効果の検証において、特定の粒子サイズが取り込み、あるいは吸着することを見出していることについては評価できる。一方、粒子を取り込んだがん細胞に対して中性子照射試験を行い、細胞殺傷効果を有することを明らかにするための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、細胞殺傷効果の検証が第一に行われることが望まれる。
リコリスアルカロイドの新規生体リズム制御剤としての製品化に関する研究 独立行政法人産業技術総合研究所
大西芳秋
独立行政法人産業技術総合研究所
丸山進
今回の研究開発において、リコリンならびにリコリシジノール等、リコリスアルカロイドの概日リズムの周期延長作用は、先行技術のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を用いた体内時計のリセット効果や増幅効果と作用が異なり生物時計機構に直接作用することが明らかとなり、概日リズムの障害に起因した疾患の予防、治療用医薬組成物としての製品化の可能性が十分あることが示唆された。さらにリコリスアルカロイドは、アセチルコリンエステラーゼ阻害活性が弱いことより、中枢神経に対する影響が少ないという利点も明らかとなり、今後製品化を行う上での新たな知見が得られた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にリコリン等の周期延長作用が確認出来ている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、リコリンの培養細胞での効果が、時計遺伝子の発現調節に直接作用しているか確認する事や、その作用点を特定する事が望まれる。今後は、リコリンの直接の作用点を明確にすることと、3T3細胞以外に他の組織由来の培養細胞にも有効である事を示すことが期待される。
実用化を目指した中枢神経標的型蛋白医薬の創出 独立行政法人産業技術総合研究所
近藤哲朗
独立行政法人産業技術総合研究所
小高正人
本申請課題では、脳を標的とする高分子タンパク医薬の開発に貢献することを目的とし、指向性進化工学的手法を用いて血液脳関門(BBB)上の膜蛋白・受容体に結合親和性を示すペプチドアミノ酸配列モチーフの探索を行った。探索の評価系としてマウス脳毛細血管内皮細胞および他のBBB構成細胞を用いて、独自に作成したin vitro BBBモデル構築への検討を行った。高次構造に一定の束縛条件を付与したランダムペプチドファージライブラリーを作成し上記BBBモデルを用いて選択を行い、機能モチーフの一つとして脳毛細血管内皮細胞に特徴的に作用する配列候補を得た。今後は、さらに機能モチーフの創出を進めこれらを用いた組換え機能タンパクの作製およびマウス個体への投与を行う予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に技術移転への糸口が見えてきた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、できるだけ早く特許出願申請することが望まれる。今後は、鋭意努力して実りある成果が得られることが期待される。
グライコシンターゼの安定性向上のための改良 独立行政法人産業技術総合研究所
千葉靖典
独立行政法人産業技術総合研究所
新間陽一
エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)に属する酵母由来のEndo-OmとEndo-Cpのドメインシャフリングを行い、Endo-OmのN末端側とEndo-CpのC末端側を有するキメラ酵素(Endo-OmCp)を作出した。同酵素をHis-tagで精製し、二分岐複合型糖鎖切断活性を有することを確認した。比活性を測定したところ、Endo-Omとほぼ同等の活性を示した。またNaClの濃度が0.1 M以下でも凝集を起こさず、高マンノース型糖鎖に対する基質特異性、至適pH、至適温度に関してはEndo-Omとほぼ同じであった。糖鎖切断反応やグライコシンターゼ反応の際に影響しない程度の濃度で保存できることから、優れた特性を持った酵素作出することに成功した。さらに変異を導入することによりグライコシンターゼ化した酵素の作出を行なった。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、既存酵素のメリットを活かすキメラ酵素を遺伝子工学的に作製し、逆反応の応用を意識した点変異体酵素も開発したことついては評価できる。一方、技術移転の観点からは、既存の同種酵素に加えて本酵素を試薬として製品化するメリットを明確にするなどでの実用化が望まれる。今後は、Endo-Mの開発経緯を参考にすると共に、糖鎖工学的応用面では既存のENGaseへの優位点を明確にすることが期待される。
腸管型IL−10産生型制御性T細胞(Tr1)による炎症誘導発がんの抑制 独立行政法人産業技術総合研究所
辻典子
独立行政法人産業技術総合研究所
澤田美智子
粒子状β−グルカンの経口投与が抗炎症性細胞を誘導することにより、全身のサーフェスバリア(腸管、皮膚など)に抗炎症機能をもたらす可能性について検討を行った。粒子状β−グルカンの経口投与により小腸パイエル板にIL-10産生細胞(Tr1様細胞)が増加し、腸炎をはじめとする炎症性疾患を抑制する効果も認められた。In vitro、 in vivoにおいて抗炎症性細胞の発現にはIL-10が必須であった。本研究で用いたβ−グルカンは粒子径が均一で腸管や樹状細胞への取り込みも効率的と考えられる。消化管免疫を高めて炎症を予防あるいは治療する新規経口剤の開発と実用化は、医療コストを下げて国民の健康の質を向上する効果をもたらすことが期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、β−グルカン法によるTr1の機能成熟にはIL-10 の併用が有効であることが示された点、β−グルカン法による抗炎症作用はIL-10を介することが示された点に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、課題名にある発がんに対する抑制作用は直接示されていないが、炎症性腸疾患に対するある程度の治療効果は期待でき実用化が望まれる。今後は、課題名にある、発がんに対する抑制作用の有無と、抑制作用が認められた場合の機序の解明のための研究に注力されることが期待される。
高感度使い捨てチップ、および、スマートデバイスを用いた小型バイオセンシングシステムの開発 独立行政法人産業技術総合研究所
福田隆史
本研究では、従来のイムノクロマト法と同等の簡便性と酵素免疫アッセイ法並の高感度性を兼備する非標識検出を実現すべく、局在プラズモンを利用した超高感度・小型バイオセンシングシステムの開発に取り組んだ。主な成果は以下の2点。
1)使い捨てチップ作製技術の確立と性能検証:樹脂フィルム上へのチップ作製を実現し、実用化に向けた生産性やユーザーの安全面や廃棄容易性につながる成果を得た。また、超高感度センシング機能を確認。
2)検出システムの革新:乾電池駆動・スマートデバイス端末制御によるパームトップポータブル検出システム、および、電子カルテとの連携を模擬したサーバー-クライアントシステム(プロトタイプ)の構築に成功。今後、病院でのポイントオブケアテスティング・在宅診断・開発途上国での現地医療への展開に向けて実用化を進める。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、ハードウェア上の開発にとどまらず、現場のニーズを汲み上げたシステムとの統合にまで進展したことに関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、 実用化が視野に入るレベルに達しており、技術移転の可能なステップへ確実につながる成果と考えられる。システム全体としての最適化にはまだ多くの検討が必要と思われるが実用化が望まれる。今後は、ハードウェアのポテンシャルを活かすためにもシステム全体の方向性とニーズとのマッチングを常に意識して開発されることが期待される。
分子マトリクス電気泳動を活用した高性能POCTデバイスの創出 独立行政法人産業技術総合研究所
松野裕樹
独立行政法人産業技術総合研究所
新間陽一
本研究は、我々が独自に開発したアフィニティ分子マトリクス電気泳動法(affinity-SMME)をPOCTデバイスとして活用できる技術へと高度化させることを目標とする。全血を用いた即時分析と、ターゲット分子検出プロセスの簡便迅速化の2点について技術開発に取り組み、1.5時間以内で血清中の微量ターゲット分子を分離検出できる技術の確立に至った。当初の目標は概ね達成できたと言える。技術の装置化(試作機の作成など)と測定分子や対象疾患の選定などの用途開発への展開が、今後の実用化を目指す上で重要な課題となる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、実験計画に若干の変更は見られるが、期間内に目標を達成した点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、体液から単一成分ではなく、複数の成分を簡便、迅速に測定し健康状態等を診断する装置は、新たな市場を開拓すると予想されるので実用化が望まれる。今後は、このまま実験を継続し、早く実用化されることが期待される。
抗体活性を有する新しいシルク素材「アフィニティーシルク」作製の基盤技術の開発とその応用 独立行政法人農業生物資源研究所
佐藤充
独立行政法人農業生物資源研究所
萩尾高志
アフィニティーシルクの新しい形状としてシルクフィルムを作製した。シルクフィルムをコーティングしたELISAプレートにおいて抗原特異的な抗体活性を保持させることに成功した。また、アフィニティーシルクの実施例を増やすために、ウイルスや疾患マーカーに特異的なアフィニティーシルクの作出を行った。今後も引き続きこれらのアフィニティーシルクの機能性評価を進めていく。様々な疾病の防除や診断にアフィニティーシルク技術が利用できれば、非常にインパクトは大きく、産学共同の研究開発に向けての大きな足掛かりとなる。さらに組換えカイコによる有用物質生産の振興と発展に大きく貢献することが期待される。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にアフィニティシルクの実施例の増加と機能検証に向けて着実に取り組んでいる点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、既存の抗体製品よりも優れた特性のscFv融合フィブロインを作製することが望まれる。今後は、scFvの特異性および結合性などの特性向上を図るための工夫(構造情報や進化工学などの手法の導入)が期待される。
イネ低温発芽性に関するゲノム育種法の開発 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
藤野賢治
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
入来規雄
本研究では、農業就労人口の減少・高齢化状況において、国内の食料自給率の向上、食料の安定生産、安定供給を可能にするイネの直播栽培用品種開発へ向けた低温発芽性に関するゲノム育種法の開発に取組んだ。その結果、既知の有用遺伝資源よりも低温発芽性に優れる遺伝資源の同定に成功した。また、9組合せの交雑に由来する遺伝解析から低温発芽性に関する複数の有用遺伝子の存在を明らかにした。さらに、ゲノムシーケンスを活用することでハイスループットな遺伝子型評価を可能にするDNAマーカーが作出できた。今後、これらの基盤整備により、有用遺伝子を効率的に集積するゲノム育種法を完成させ、品種開発に活用することができる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、低温発芽性遺伝子の同定は終えていないが同遺伝子の存在を確認し遺伝子資源の同定は終えたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、遺伝子の同定後に具体的なゲノム育種法として提示するなどでの実用化が望まれる。今後は、ゲノム解析受託企業との共同開発も検討されることが期待される。
体内で増殖不可能な臨床分離株由来のサイトメガロウイルスワクチンの作成 群馬大学
磯村寛樹
群馬大学
早川晃一
本課題は、ウィルス複製が進行するにも関わらず、宿主のヒトサイトメガロウィルス(HCMV)に対する細胞障害性T細胞(CTL)が誘導できる弱毒HCMVであり、体内では増殖が不可能なDisabled Infectous Single Cycle(DISC)ワクチンとしての応用が期待できる。このDISCワクチンは、体内で増殖しないために安全性が高く、宿主麺免疫の誘導効率が高いという特徴を有すると予想される。そこで今回、組換えHCMV をヒトの内皮細胞に感染させることにより、DISCワクチンとしての安全性を示唆する結果が得られた。今後はUL欠損DISCワクチン株でも後期遺伝子の転写の活性化が起こらないことを確認する予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に当初目標を達成するために必要な基礎検討の答えがいくつか得られた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、UL128- 131が欠損していない臨床分離株をベースに、UL79、 87、 あるいは95を欠損したDISCワクチンを作成することが望まれる。今後は、ワクチンとしての効果をどのように評価するのかについての、戦略をたてておくことが期待される。
視床下部Sirt1の分解を制御するユビキチンE3リガーゼの阻害剤の探索 群馬大学
佐々木努
群馬大学
早川晃一
視床下部Sirt1の分解を制御するユビキチンE3リガーゼの阻害剤の探索を行った。東京大学創薬オープンイノベーションセンターから低分子化合物ライブラリ(コアライブラリー・約1万個)の供与を受けた。次に、愛媛大学プロテオサイエンスセンターとの共同研究で、SIRT1とユビキチンE3リガーゼの分子間相互作用(αスクリーン法により検出)のシグナルを抑制する低分子化合物の網羅的探索を行った。そして、1万個の低分子化合物よりTOP100に絞り、構造情報を創薬オープンイノベーションセンターより開示していただいた。現在、TOP100の低分子化合物について、SIRT1-E3相互作用の阻害の再現性を検証中である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも視床下部Sirt1の分解を制御するユビキチンE3リガーゼの阻害剤をスクリーニングし、低分子1万個のコアライブラリーから阻害剤候補分子100個を同定することができた点は評価できる。一方、いまだ一次スクリーニングの段階であり、動物実験などでの薬効は検討されていないので、期待される抗肥満作用が認められるかどうかは現時点では不明である。今後は、リード化合物の絞り込みや特異性の検討、動物実験での薬理作用・副作用の確認など数多くの基礎研究が必要であり、企業化を目指すためにスピードアップすることが望まれる。
糖タンパク質糖鎖の実践的調製法の確立 群馬大学
松尾一郎
群馬大学
小暮広行
LacdiNAc構造含有複合型糖鎖を標的糖鎖として、我々が開発した位置選択的グリコシル化反応のスケールアップを試みた。その結果、再現性よくグリコシル化反応が進行、選択性に差異なくLacdiNAc糖鎖を従来の10倍スケールで合成できることを確認した。一方、LacdiNAc糖鎖の原料となる2糖および単糖誘導体(ラクトサミン誘導体10g、グルコサミン誘導体40g、ガラクトース誘導体30g)をそれぞれ合成すると共にマイクロ流路によるグリコシル化を検討、大量合成の基盤を整備した。また今回合成したLacdiNAc糖鎖を利用した疾患検査キット開発に向けた研究を行った。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、9糖合成における位置・立体の選択性はスケールアップしても維持されることを確認したことについては評価できる。一方、ネックになった糖供与体の合成法の改善と分離精製の手法の確立に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、反応条件の検討だけでなく、他の転移酵素も検討されることが望まれる。
UVA-UVB広帯域サンスクリーンの開発 群馬大学
吉原利忠
群馬大学
小暮広行
本研究課題は、UVA領域からUVB領域までの紫外線を吸収し、その光エネルギーを分子内エネルギー移動と内部変換過程を利用して熱エネルギーに変換するUVA-UVB広帯域サンスクリーンを開発することである。UVB吸収団としては蛍光性のビフェニル誘導体およびナフタレン誘導体を用い、UVA吸収団としては、高い内部変換効率を示すo-アミノアセトフェノン誘導体を用いた。開発した分子は、(1)UVB領域の吸収団の蛍光強度が200倍以上に低下し、(2)光安定性が既存のサンスクリーンとほぼ同程度を示し、(3)低い細胞毒性を示した。本研究を進展させることで、より性能の高いサンスクリーンを開発することが可能である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、一定の範囲内ではあるが、当初目標の蛍光の低減と光安定性の向上や無毒性などを検証したことについては評価できる。一方、他剤との比較に基づく優位点の科学的根拠の明示、無毒性の確認に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、人工皮膚以外の線維芽細胞や角化細胞での検討も行うことが望まれる。
抗てんかん薬の開発に有用なてんかんモデルラットの開発 群馬大学
若松馨
群馬大学
小暮広行
当研究室で発見し近交系にした「てんかん症状を示すラットHotaka」を抗てんかん薬の開発に必須なてんかんモデルラットとして確立するために、(a) 痙攣発作がてんかんに起因すること、ヒトの重積発作のモデルとなることを脳波測定で確定した。一方、(b) 原因遺伝子については、Hotakaと同様にてんかん発作を自然発症するIharaてんかんラットとは全く異なる事が明らかとなった。現段階でも製薬会社などにアプローチすることは可能であるが、原因遺伝子を特定すればより魅力的なモデルになる。そこで、原因遺伝子の特定に必要な期間と費用を脳機能の遺伝子解析の専門家に相談して、今後の方針を決定する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に「てんかん症状を示すラットHotaka」を抗てんかん薬の開発に必須なてんかんモデルラットとして確立するために、痙攣発作がてんかんに起因すること、及び、ヒトの重積発作のモデルとなること、を脳波測定で確定したことは意義深い。製薬企業が利用に興味を抱くことの出来る成果である。素質の良い研究素材だと評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許出願を行うことを検討するべきである。注意深く観察しながら各特徴について近交を繰り返せば、1個でなく複数のモデル動物が樹立できる可能性がある。今後ゲノム解析を行い、興味深いエビデンスを示すことにより、研究協力者が現れることが期待される。
回転機構を磁気支持する高精度マイクロジャイロの開発 埼玉大学
水野毅
埼玉大学
須田均
6自由度の運動を全てアクティブに制御する形式の磁気支持ジャイロを設計・試作し、目標とする検出精度や測定周波数帯域などを達成できることを実証した。また、これまでに開発した3自由度制御形磁気支持ジャイロより高精度な角速度検出が行えることも確認した。製作の過程で、大きさに関しては、このままの構造で、目標とする質量(従来装置の10分の1)や体積(従来装置の10分の1)とすることは、技術的に難しいという知見が得られた。これに対し、モータを内包する箱状の浮上体を十字ばねとジンバルで支持するハイブリッド支持式回転型ジャイロの構想を得た。これらの知見は、提案する方式のジャイロの実用化を進展させる上で有用である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、磁気支持ジャイロセンサの試作機を製作して、雑音の大きさ、角速度計測の精度及び周波数応答の性能評価実験を行い、目標とした精度が得られたことは評価できる。一方、小型化については、目標が達成されていないので、提案されている方法で試作を行い、MEMSセンサなどの競合既存技術に対する優位性を確保するために、さらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、既存技術に対して、測定性能の面からどの程度の優位性があり、総合的に既存技術を置き換えるほどと考えることができるか、また、どのようなアプリケーションにその長所が活用できるのかをより具体的に示すことが望まれる。
化学酵素合成法によるヘパリン合成 独立行政法人理化学研究所
眞鍋史乃
独立行政法人理化学研究所
二宮裕一
構造が均一なヘパリンを供給することを目的として、化学合成と酵素合成を組み合わせることにより、効率的な合成を行う。ヘパリン合成において、合成が困難である1,2-cis アミノグリコシドの構築には、独自に見出した2,3-trans カーバメート基を持つアミノグリコシドの異性化反応、および、グリコシル化反応中の異性化反応を応用することが可能であった。2,3-trans カーバメート基を持つアミノグリコシドは4位水酸基の反応性に関しても通常の保護パターンのアミノグリコシドよりも高く、グリコシル化反応においての糖受容体として有効であった。グルクロン酸を糖供与体として使用する場合には、反応性が低いことが問題とされていたが、反応性の高いグルクロン酸供与体を得た。このような骨格からなるグルコサミンーグルクロン酸2糖ユニットは、ヘパロサンの基本ユニットであり、ヘパロサン化学合成に有用なユニットを開発した。本合成ルートは、煩雑な複数の保護基導入、除去ステップの回避、酵素による硫酸基の位置特異的導入が可能である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ヘパリン合成において新しい有機合成の研究手法を開発している点は評価できる。一方、ヘパリンは牛や豚などからの抽出と精製の方法が確立しているので、簡便で高収率の手法の確立に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、副作用のない医薬品をターゲットに多種類の化学的に均一なヘパリンの合成を目標とされることが望まれる。
唾液腺細胞の継代安定培養法を用いた唾液分泌細胞再生療法の開発 千葉大学
鵜澤一弘
千葉大学
小柏猛
現在、唾液腺再生の研究が盛んに行われているものの、実用化に至ったものは皆無である。我々は唾液腺細胞においてX作用薬を用いることにより、唾液腺機能を維持した状態での継代培養を簡便且つ確実に行えるシステムを構築した。本研究では、X作用薬を用いることでそのシグナルの下流の変化を捉え、細胞形態を維持したまま培養が可能となったメカニズムを解明した。また、X作用薬の生体安全性を確認したため、今後の臨床応用への推進がスムースになったと考える。したがって、申請時の目標を予定通り達成することができた。今後、生体外で増殖させた細胞を生体に移植する方法を検討する予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、唾液腺細胞をその機能を維持しながら継代培養できるという技術を有していること、また本研究からその培養唾液腺細胞がその機能を維持していることが実証されたことについては評価できる。一方、本研究成果が応用展開されれば多大な社会貢献につながるので、生体内安全性評価としてX作用薬を作用させた細胞の生体内安全性についてもデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、企業連携を獲得するためにも、人体応用をシミュレーションした動物実験などを先行実施されることが望まれる。
ジアシルグリセロールキナーゼδを分子標的とした新規2型糖尿病治療法開発に向けた総合的探索アプローチ 千葉大学
坂根郁夫
千葉大学
富岡登
我々は、2型糖尿病患者でのジアシルグリセロール(DG)キナーゼδ(DGKδ)の発現半減が本症の増悪化を促進することを見出した。従って、DGKδの発現量増加、残存したDGKδの活性賦活や基質DGの蓄積防止が可能になれば本症の治療に繋がると考えられる。そこで、DGKδを分子標的とした新たな2型糖尿病治療法開発へ向けて総合的にアプローチする為に、新規薬剤開発に向けたDGKδ特異的活性賦活剤のスクリーニング系の開発を行った。また、エネルギー調整食とは異なる新たな食餌療法の開発に向けて、DGKδの発現を調節する脂肪酸や、 DGKδが選択性を持つDGが含む脂肪酸を同定し、細胞レベルの糖取り込みに及ぼす影響を明らかにした。今後、個体レベルでの効果も確認し、企業との共同開発を模索する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。一方、技術移転の観点からは、「顕在化タイプ」などの産学協同の研究開発に展開されることが望まれる。今後実用化を進めていくためには、動物モデルによる効能評価や毒性試験が必要と思われるので、検討されたい。必要な特許申請も進める必要がある。
ロボテック神経診察・検査シミュレータの研究・開発 千葉大学
兪文偉
千葉大学
村上武志
本申請事業は、異常所見を表現できる神経伝導検査、反射検査用ロボテックシミュレータの研究・開発を目指すものである。本事業の実施によって、ヒトの上肢と形態的、質感的に近い物理モデルを開発した。さらに、その物理モデルに対する検査動作の検出方法を新たに提案し、検出した検査動作(電気・機械刺激、針挿入)に対し、伝搬経路や障害を考慮した筋群の出力計算の高速化を行い、実用向けのロボテック神経診察・検査シミュレータを構築した。特に針筋電検査については、計画にない項目であり、目標以上の成果となる。今後、臨床医、及び産業界の意見をさらに取り入れ、早期製品化を目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、異常所見を表現可能なロボットシミュレータが開発されており、当初の目標が十分に達成されたと判断できることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、既に産学共同で研究を実施しており、今回の成果は、そのまま次のステップにつながるもので実用化が望まれる。今後は、実用化のためには、どこまでの精度や計算速度、機能が必要かを明確化しておくことが期待される。
敗血症性汎発性血管内血液凝固症に対する抗凝固療法の効果におけるゲノム薬理学的検討 千葉大学
渡邉栄三
日本人における、トロンボモジュリン(TM)一塩基多型(SNP)のgenotype分布を明らかにし、その中で重症敗血症の転帰に関わるSNPを検索することによって、今後のTM SNPを指標とした。重症敗血症に対する個別化治療を目指すものである。まずウルム大学およびASPER Biotecs社と共同で炎症反応関連SNPチップを設計開発した。今回その搭載SNPマーカのうち、13種類のTM SNPsを同チップを用いて解析した。その結果、現時点で63例の重症敗血症患者において、2種類のSNPが、死亡率に有意に相関していることが判明した(p<0.05)。今後、症例数を重ね、さらなる検討を行うことによって、TMの敗血症病態への関与を検証し、リコンビナントTMが敗血症治療薬として科学的に確固たる根拠を得、副作用を軽減したより有効な治療につながることが期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、少ない症例数しかできなかったにも拘わらず、ICU生存率と有意に相関するTMの多型が見つかったのは、今後を大いに期待させる結果で評価できる。一方、技術移転の観点からは、TM以外も含めたより多数の多型の探索、それらを含めたチップ開発にも歩を進め実用化が望まれる。今後は、ゲノムワイドのマイクロアレイのさらなる活用、次世代DNAシークエンサーによる候補SNPの抽出等がされることが期待される。
ICTを活用した個別ライフスタイル改善プログラムの開発 和洋女子大学
難波秀行
本研究開発では、行動記録に基づくデータを可視化が可能な状態にし、自身の行動パターンの振り返りを可能とするコンテンツ開発に取り組んだ。身体活動量に加え、座位時間や行動内容、すなわち運動・スポーツ、家事・育児、移動、仕事の4つのそれぞれにおいて、10段階評価をしてダイアグラムを示した。モニタリング機能を搭載し、目標設定や行動変容を目的としたコンテンツを開発しシステムに搭載した。個人利用者に加え、メタボリックシンドローム予防の栄養指導と組み合わせることにより、特定保健指導の指導ツールとして、保健師、管理栄養士などがプログラム参加者と双方向にコミュニケーションすることが可能なシステムとした。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもスマートフォンなどICT身体活動分析システムにおいて、行動科学に基づき利用者の満足度や幸福度を高めるためのコンテンツ、SNSを利用したコミュニティサイトの開発については評価できる。一方、今後の研究開発計画については鼓動情報の入力の自動化に向けた具体的な開発内容を提示しており、当初目標の「5千人以上のライフスタイル(生活行動記録)のデータ収集による技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。企業および最終利用者からの意見を反映することで、今後も社会還元を念頭に置いた開発が望まれる。
オンチップ高性能分離媒体の開発 東京大学
角田誠
疾病の早期診断を可能とするような医療技術の開発は、今後更なる超高齢化社会を迎える日本において重要である。本研究においては、早期疾病診断、特に、アミノ酸プロファイリングによる予防診断への応用、を可能とするオンチップデバイスの要素技術として、生体分子の高速分析を可能とするオンチップ高性能分離媒体の開発を行った。圧力損失の小さい新規低拡散曲線構造の開発を行い、高流速において十分な分離能を有することを明らかとした。また、多孔性ピラー構造の開発に向けた基礎検討を行い、最適条件を見出した。今後、これらの要素技術を用いて、アミノ酸の超高速分離へと展開していく予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、最終目標である20種アミノ酸の分離分析は達成されなかったが、必要な基本技術にはほぼめどがついたものと思われる。分離流路構築のための技術開発については評価できる。一方、技術移転においてキーとなるアミノ酸の分離分析に関して、具体的な計画が挙げられている。医療現場における高速診断技術はきわめて重要性が高いので、目標に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、分離機能を有するマイクロフローデバイスは、医療のみならず広い分野で応用が可能であるものであり、今後の研究が進展されることが望まれる。
口腔外科領域における画像認識型・拡張現実手術支援システムの開発 東京大学
末永英之
東京大学
長谷川克也
口腔外科手術は、三次元的な形態・位置・方向を正確に把握することが重要であり治療結果に直結する。CT・MRIなどの画像データから構築する立体画像を現実空間に投影・可視化する画像認識型・拡張現実手術支援システムの開発により、高速・高精度・非侵襲なレジストレーション(空間的対応関係を求める処理)の方法を開発した。手術支援システムの精度は正確なレジストレーションによって決まるため、臨床研究の実施に向けて、三次元物体認識における認識対象物の拡張および認識性能の向上をはかる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、264ppiの超高解像度ディスプレイおよびレンズアレイを用いることによる拡張現実ディスプレイの解像度・画質の飛躍的向上させた技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本研究課題で開発を進めた画像認識型・拡張現実手術支援システムが実現されれば、手術ナビゲーションステムとして企業化、産業化される可能性く実用化が望まれる。今後は、幅広い高精度の三次元制御技術へ応用されることが期待される。
抗菌化合物の治療効果を指標とした有機合成展開法の確立 東京大学
浜本洋
本申請課題では、カイコモデルにおいて治療効果を指標に合成展開した化合物の、薬物体内動態の解析を行い、本手法の有用性を明らかにすることである。また、本化合物の作用機序解析解析を実施し、化合物自身の特徴についても明らかにする。これらの結果、カイコモデルにおける治療効果と薬物動態の関係、及び本化合物の毒性について、哺乳動物と同様であることを明らかにした。さらに、本化合物は、殺菌性を示し、肺炎連鎖球菌に対して高い抗菌活性を示すことを見いだした。従って、達成度を90%とした。今後、本化合物は抗肺炎連鎖球菌として開発することが可能であり、さらにカイコモデルを用いた有機合成展開法について実績を積む必要がある。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもマウスによる毒性試験と細胞毒性試験の結果がかい離するという結果をカイコモデルでも確認することができ、カイコモデルと哺乳動物との毒性パラメータが類似する知見を得た点は評価できる。一方、、現時点では、カイコの有用性について、もっと技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、カイコモデルがこれまでの評価法に変わって効率的で有用であることをデータの蓄積で証明していくことが望まれる。
ICGを用いた低被曝ステントグラフト治療支援血管内カテーテルナビゲーションの開発 東京大学
正宗賢
東京大学
長谷川克也
本研究では、血管内治療におけるガイドワイヤの迅速な治療部位への誘導を目的とした、シンプルな血流計測ができるカテーテルのプロトタイプ開発を行った。具体的には、生体適合性を有する薬剤ICGを用いた励起・蛍光用光ファイバによる血流検知用光学ユニットおよび、安全かつ迅速に目的血管へナビゲーションする摩擦車を用いたカテーテルガイドシステムを試作開発し、基本性能の評価実験を行った。ガイドシステムでは滅菌等にも考慮しており、容易にセット出来る設計を行った。これにより患者・術者に極力X線被曝がない短時間の低侵襲治療の実現可能性が示された。今後は動物評価実験を重ね、製品化の検討を進める。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初とは異なった手法ではあるが摩擦車を用いたカテーテルガイドシステムを試作し、それらの基本性能の評価実験を実施し、ICGを用いた新しいステントグラフト治療支援用血管内カテーテルナビゲーション装置の実現可能性を示した技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、動物実験等の評価を行い、医学部などと共同で有用性、実用性を確認することで実用化が望まれる。今後は、出来るだけ早期に、産学官の共同プロジェクトに持ち上げて、開発スピードを上げ、商品化まで進まれることが期待される。
がん標的治療のためのリガンド分子搭載核酸医薬キャリアの開発 東京大学
宮田完二郎
本課題では、核酸医薬の医療応用を目指し、全身投与を介して腫瘍組織へと核酸を効率良く運ぶための「キャリア」の開発を目標とした。結果として、環状RGDペプチドをキャリア表層に導入することでがん細胞に対する遺伝子発現抑制効果(RNAi活性)を高めることができ、また核酸キャリアの全身投与を通じて、肝障害や免疫反応などの副作用を惹起することなく自然発生膵臓がんモデルにおいて有意なRNAi活性を得ることに成功した。よって、当初の目標を十分に達成したものと判断される。今後は、革新的イノベーション創出プログラム「スマートライフケア社会への変革を先導するものづくりオープンイノベーション拠点」に参画し、治療標的遺伝子と疾患モデルの絞り込み及び参画企業との連携を通じて、実用化に向けて研究を推進する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に既存技術の応用範囲を広げる実証研究で、計画した内容がほぼ完了し、かつ目標を達成できた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、本提案は有効性の実証であるため、より実用的な検討課題が実施されることが望まれる。外来性のルシフェラーゼの抑制ではなく、実際の腫瘍が縮小する可能性について示すことが望まれる。今後は、既存の抗癌剤よりも効果の高い標的が的確に選定されるされることが期待される。
癌幹細胞の幹細胞性消失化合物の探索と癌治療応用 東京医科歯科大学
樗木俊聡
東京医科歯科大学
網中裕一
本研究では、慢性骨髄性白血病(CML)ならびに薬剤誘導性大腸癌モデルを用いて、某転写因子の癌発症における重要性を検討した。その結果、同因子欠損マウス未熟骨髄細胞からはCMLが発症せず癌幹細胞も検出されなかった。また同因子欠損マウスでは大腸癌も誘導されなかった。さらに、申請者が同定した某転写活性を抑制する低分子化合物の大腸癌幹細胞への効果をオルガノイド培養系により検討したところ、当該低分子化合物を添加したオルガノイドの形成能は著しく抑制された。その際、癌幹細胞のマーカーであるLgr5の発現量も著減した。これらの結果から、某転写活性を抑制する低分子化合物は癌幹細胞の幹細胞性を減弱・消失し得ること、今後同化合物を最適化することにより癌治療への応用が期待できることが示唆された。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に癌幹細胞における某転写因子の機能を詳細に解析し、さらに同転写因子機能を有効に抑制する低分子化合物を同定したことは高く評価できる。。一方、技術移転の観点からは、。同定した低分子化合物がモデル動物でも有効に作用するのか検証する必要があり、また、正常組織の幹細胞に対する傷害の可能性についても十分な検討が必要と思われる。今後は、同定した低分子化合物の可溶化の克服、複数の有効な化合物の探索、さらに、これらの化合物の詳細な作用機序についての検討が期待される。
未分化型胃がんマウスモデルを利用した新規分子標的治療薬の開発 東京医科歯科大学
島田周
東京医科歯科大学
網中裕一
発症数と死亡数が多い胃がんの中でも、未分化型胃がん(DGC)は予後が悪く、その治療方法の開発は急務である。我々は、ヒトDGCに形態学的にも分子生物学的にも類似した胃がんを発症するマウス(DCKO)と、その胃がん由来初代培養細胞株を作製した。我々は、マウス胃がん細胞株を利用して、1535種類の機能既知化合物をスクリーニングし、マウス胃がん細胞株に特異的に作用する化合物を同定することに成功した。今後は、これらの化合物をDCKOマウスに投与して、生体内での効果を評価するという前臨床試験を進めていく。また、今回確立されたin vitroとin vivoの実験系を利用して、ヒトDGCの治療を可能にする新規化合物を探索していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に細胞レベルのスクリーニング系と動物レベルのスクリーニング系の両方がほぼ確立されており、既知化合物ライブラリーのスクリーニングにおいては既にヒット化合物が得られていることや、女性ホルモンの効果などの新しい結果は評価できる。一方、技術移転の観点からは、細胞レベルから動物を用いたアッセイシステムまできわめて綿密に計画されており、企業との連携を含めて十分で具体的な検討が成されている。今後は、未知化合物ライブラリーのスクリーニングから新しいヒット化合物が見つかり、未分化型胃がんの治療に繋がる薬剤が発見されることを期待したい。
アパタイトコラーゲンの援用による骨膜下デバイスの骨接合促進 東京医科歯科大学
高久田和夫
東京医科歯科大学
渡邊公義
臨床使用を想定して、メディカルグレードの純チタン材料を用いて患者の口腔内に設置可能な形状で試料を試作した。そしてディッピング法でアパタイトコラーゲン(HAp/Col)のコーティングを行った。市販製品と同等の試料が作製され、コーティングも安定しており、問題なく臨床応用レベルのデバイスが製作可能であることが検証出来た。イヌ口腔内に臨床と同様な方法で試料を埋植した。この適用においても手義的な問題はなかった。4週経過の後に試料を周囲組織とともに摘出し組織学的な方法などで評価した。その結果、対照のチタン試料ではカプセル化され骨接合が不可能なのに対し、HAp/Colコーティング試料では類骨組織が形成されて、長期的に骨と十分に接合する可能性が示された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、今回のみに限定すると、当初の目標を完全には達成していないと言えるが、今後の課題が明確に示されている点については評価できる。一方、同じステージの実験を再試行する必要があり、技術移転については、その成功次第である。大動物を用いた実験計画の立案に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、HAp/Colのディップ法のみで材料と骨組織との接合を期待するのではなく、材料表面の粗さの設計も合わせてされることが望まれる。
細菌感染リスクフリーの長寿命型硬組織適合インプラントデバイスの開発 東京医科歯科大学
堤祐介
東京医科歯科大学
渡邊公義
本研究課題では、チタン表面において骨形成を促進する機能をもち、さらに長期間にわたって抗菌性を示し、細菌感染による抜去や再置換のリスクのない革新的なインプラントデバイスを創製することを目的とした。骨形成促進の効果が認められている電気化学的表面処理法を改良し、チタンの表面に銀を含む酸化物層を形成し、擬似生体内環境において銀イオンが長期間にわたって除放されることを確認した。また、細胞実験によりこの試料は毒性を示さないことを実証し、目標の一つを達成した。一方、時間的制約のため、細菌を用いた試験により抗菌性を実際に評価するには至らなかった。放出されるAgの濃度は抗菌性を示すのに十分な濃度であり、抗菌性の目標についても達成が十分に見込まれるため、本期間終了後も、他の研究支援制度を活用し研究開発を継続することとした。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、独自の電気化学的表面処理によりチタンの表面に形成した銀を含む酸化物層から銀イオンが長期間に渡り放出されること及び細胞毒性がないことや間接的に抗菌性が期待されることを示したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許出願に加え抗菌性の評価と酸化皮膜中の銀濃度の最適化などを進めるとともに医療材料として病理組織学的評価等実用化に向けた計画的な検討が望まれる。今後は、大きな社会還元が期待される細菌感染リスクフリーの医療材料として実用化されることが期待される。
血流波形の診断解析プログラムを組み込んだ透過型光電脈波歯髄診断器の開発 東京医科歯科大学
三輪全三
東京医科歯科大学
渡邊公義
透過型光電脈波法を応用した非侵襲的で客観的な歯髄診断器(試作器)は、これまで測定波形の定性的な観察にとどまっていたが、臨床機器として実用化するには歯科医の誰もが容易に使用でき、かつ客観的(定量的)に診断できる装置が求められる。今回は、測定波形を定量的に解析するために、症例ごとに歯の健康状態を分類し、指尖脈波に対して歯髄脈波が同期しているか否か、両者の相互関係を定量診断する手法を考案した。また、歯髄脈波の形状の定量評価も加味したところ、歯の健康状態を分類する診断基準の設定に有用であることが分かった。
また歯面に入光するLED光の照射野を小さく、輝度を確保するためにファイバー仕様にした場合の光量変化について検証を行い、共通プローブ設計への参考とした。今後、本技術による歯髄診断が客観的に可能となれば、現試作器が臨床機器として早期の実用化に期待できる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、歯の健康状態によって対象歯群を分類できる可能性を示すなど、歯髄診断に関する新たな発展が期待できる技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、連携企業との共同研究体制も検討されており、産学共同研究につながる可能性は高まっているものと思われ実用化が望まれる。今後は、個体差の影響は大きいものと思われ、何らかの個体内正規化手法等を検討されることが期待される。
ハンガー反射を用いた痙性斜頚治療デバイスの開発と臨床評価 電気通信大学
梶本裕之
株式会社キャンパスクリエイト
堺奈都
本研究開発では頭部の任意回転軸に対するハンガー反射現象を生成し、痙性斜頸患者に対する短期的および長期的な適用により効果の確認を行うことを目標とした。通常のハンガー反射現象で見られる頭部の左右回旋に関しては、期間中に14症例に対する3ヶ月間の検証により効果を確認することができた。一方でアンケート調査ではデバイス自体に可塑性があり長期使用時に変形して効果が減退してしまう、デザインが良くない等の課題が明らかとなった。通常のハンガー反射現象とは異なる回転軸の頭部回旋に関しては、ハンガー反射現象が各回転軸に対して生じること自体は確認し、数例の適用で疾患に対する効果を確認できた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、痙性斜頚患者の治療に、注射や手術をしないで、簡単な装具装着で病状を改善できた技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、選定した協力企業と実用化への継続研究は進んでいる。装具の使用で病状が悪化した例があるので、個人差の研究が必要であろうが実用化が望まれる。今後は、本方法の妥当性、長期的な装着による効果の持続性も検討されることが期待される。
立ち上がり補助機能を併せ持つロボット型シルバーカーの開発研究 首都大学東京
新田收
首都大学東京
中西俊彦
脳血管障害後遺症による運動機能低下のために日常的に介助を必要とする高齢者を対象とし、起立・歩行をシームレスにアシストする装置の開発を行った。片麻痺患者の歩容を分析し、使用者の姿勢を読み取り、麻痺側の前脛骨筋を適切なタイミングで刺激することで歩行を支援するプログラムとした。開発課題は使用者の姿勢、特に下肢の動きを読みとるシステムと、適切な電気刺激プログラム開発であった。下肢の動き読み取りは試作機後方に設置した、レーザーレンジファインダーで行った。電気刺激プログラムはシステムインスツルメンツ社製低周波電気刺激装置を改良した。試作機はすでに完成し、歩行動作に同期して筋が刺激されることを確認した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、片麻痺患者の歩容分析から、電気刺激するべき筋とタイミングを見出したことは評価できる。一方、片麻痺患者による評価実験をしていないので、早急に片麻痺患者による評価実験をし、技術的課題が明確にすることにより、さらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、起立・歩行支援システムは片麻痺者に限らず、筋力が低下した高齢者にとっても有用であるので、実用化に向けてさらなる検討を重ねることが望まれる。
高感度視神経脊髄炎診断キットの開発 慶應義塾大学
阿部陽一郎
慶應義塾大学
伊藤道雄
視神経脊髄炎(NMO)と多発性硬化症の鑑別診断における抗アクアポリン(AQP4)4抗体(NMO-IgG)の検出は重要であることから、血中NMO-IgGを高感度かつ特異的に検出するELISAシステムの開発を試みた。本検出システム開発においては、(1) 正しい立体構造を持ったAQP4を抗原とすることでELISA法による検出感度・特異性の向上を目指すとともに、(2)ヒト血清中に存在する多様なIgGにより生じる高いバックグラウンドシグナルを除去する方法について検討を加えた。正しい立体構造を有したAQP4を抗原とすることにより特異性の高いシステムが構築できる潜在力は有していると考えられるが、バックグラウンドシグナルの軽減は予想外に困難であり、検出感度については十分目的を達成したとはいいがたい。今後は更にS/N比のよい系へと改良を加えるとともに、必要があれば幾つかの検出方法を組み合わせることにより、より信頼性の高い系の確立をめざす。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、最終ゴールには、残念ながら至っていないが視神経脊髄炎と多発性硬化症の鑑別診断の精度向上を可能とするキットの開発という課題に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本技術の臨床応用には価値があり、研究成果が進展されると、社会には大いに還元されるという期待感は依然として感じられ実用化が望まれる。今後は、固相表面での抗原結合におけるスペーサーの導入、抗体との反応前後における洗浄液の選択など、バックグラウンドシグナルを軽減する更なる検討をされることが期待される。
シングル流路にて多サンプル測定可能なマイクロチップの創製 芝浦工業大学
長谷川忠大
芝浦工業大学
片野陽子
ELISA法は定量・特異性に優れ、疾患等のスクリーニングに広く利用されている。本課題では、厚生労働省が重要課題としているアレルギー疾患の検査を対象とし、シングル流路にて多種類あるアレルゲンを一度に測定するため、チップ内にアレルゲンタンパク質を固定させ、ELISAのサンドイッチ法ではなく直接吸着法を利用したマイクロチップの開発を目指した。これにより、患者の血液を一次抗体としてチップ内へ注入するのみで複数のアレルゲンタンパク質を同時に検査ができる。そこで、アレルゲンタンパク質をチップ内に固定化する4つの方法を検討し、その中の方法にてスギ花粉とダニのタンパク質において全工程35分間で直接吸着法における抗原抗体反応が可能であることを実証した。今後は、反応感度を調査し、4種類のアレルゲンタンパク質を同時測定できる検査チップを試作していく。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、アレルゲンタンパク質の固定化技術については、ニトロセルロース膜を用いた固定法で実現できることを見出した。この点は目標達成した。また、1種類のアレルゲンタンパク質を測定する流路型チップの作成は行い、その性能試験までは実施したことは評価できる。一方、4つのアレルゲンを同時に測定することは、当該研究の特徴となっていたがチップの作成はできなかった。連続測定するためのチップを製作し、性能を試験し、連続測定での技術を明確にすることが望まれる。今後は、抗原抗体反応を専門とする技術者とも連携し、次ステップに進むための課題を明確にして研究開発を進めることが望まれる。
薄膜干渉基板と同心円状に偏光したレーザー光を励起光源とする蛍光顕微鏡を用いた細胞内カルシウムの高感度蛍光イメージング 東京工科大学
秋元卓央
東京工科大学
塚本勝
同心円状に偏光した波長635 nmのレーザーを光源とする蛍光顕微鏡の開発を行った。薄膜干渉基板は銀と酸化アルミニウムを積層させ作製し、そこに蛍光色素のCy5を滴下した。作製した蛍光顕微鏡でCy5の蛍光を観察した結果、通常のガラス基板に比較し約40倍の蛍光増強が得られた。つぎに、薄膜干渉基板上でHepG2細胞を培養し細胞内のカルシウムイオンを蛍光色素Fluo4を用いて観察した。ここでは、励起波長の制約から同心円状に偏光した励起光は使用せず、通常の蛍光顕微鏡を使用した、この結果、酸化アルミニウムの膜厚が100 nm のとき蛍光が最大となり、ガラス基板に比較し約4倍蛍光強度が高くなった。同心円状に偏光した励起光を利用した顕微鏡の開発はおおむね達成できたが、細胞の観察については課題が残り今後も検討を続ける必要がある。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも薄膜干渉基板では、ガラス基板に比較して蛍光が42倍程度増強したことは、目標には達していないものの一定の成果であり評価できる。一方、カルシウムイメージングのための条件設定が不十分であり、同心円状に偏光したレーザーと干渉基板との組み合わせで検討する必要と思われる。今後は、汎用性のある形で顕微鏡に応用できるような見込みをつけ、共同研究先の企業を見つけるところまで進むことが望まれる。
積層造形による指装具作製を想定した3D-CADモデルテンプレート構築 産業技術大学院大学
舘野寿丈
指装具は、使用者の体形や症状などを考慮しながら、義肢装具士により個別に製作されるが、3Dプリンタとよばれる積層造形装置を利用することで、時間とコストを削減できる可能性がある。そのためには、現場の作業者が3Dモデルデータを構築できなければならない。そこで本研究開発では、3D-CADに不慣れな操作者であっても、即座に目的の形状をモデリングできる3D-CADモデルテンプレートの構築を目標とした。提案手法によるテンプレートを試作して試験したところ、適切な指装具形状を構築でき、実際に3Dプリンタで造形できることも確認し、目標を達成した。今後は、採寸から造形まで、一貫したデジタルファブリケーションシステムの実現を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、形状作製のためのテンプレートについては新しい定義方法を提唱していること、および積層造形についてはプロトタイプを作製していることは評価できる。一方、最後の実際に使用できる造形物の作製には至っていないと思われるので、積層技術で作製される義肢装具の材料の選択とその強度に着目した研究を行い、3Dプリンタを使う優位性を示す、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、3Dプリンターが普及するなかで、義肢装具製作所との連携をさらに進め、義肢装具士の個別技術、ノウハウを生かせる技術として、実用化につなげることが望まれる。
短いペプチド系タグと低温発現を融合的に用いた不安定な複数SS結合タンパク質の発現・精製法の開発 東京農工大学
黒田裕
東京農工大学
三浦英靖
安価な生産系として汎用される大腸菌では、SS結合を有する大半のタンパク質は、不溶性画分(封入体)で発現し、天然状態では回収できない。本計画では、SS結合を5個形成するGLucをモデルタンパク質に用いて、タンパク質を天然状態で大腸菌で生産する技術の開発を進めている。本技術は、タンパク質の溶解性を向上させ、天然型SS結合の形成を促進させる酸化還元電位制御兼SEPタグを、低温発現を誘導するCspAプロモーターと組み合せることに基づく。今回、低温発現(16℃)のGLucの収量が低いことと、酸化還元タグ(Ctタグ)の巻き戻し機能が、低温では予想より低かったため、代行策としてpAED発現系(既存pET発現系の代替)を用いて常温(26℃)での発現を行い、天然状態のGLucの収量を検証した。その結果、天然型SS結合を形成する天然状態のGLuc-C9Dが培地1L当たり1 mg以上に向上した。以上のことから、低温発現(16℃)で発現量が低下した場合でも、pAED発現系を用いて常温発現(26℃)で溶解性向上タグを適応することで多数SS結合タンパク質の収量を向上させることが可能であると示された。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、低温での発現の収量が当初予想より低かったことに代替えの系で対応した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、代替えの系の有用性を改めて確認するなどでの実用化が望まれる。今後は、タンパク質の溶解性や安定化について、変性剤などの併用やpH変更などの化学的な手法も検討されることが期待される。
抗原特異的アプタマーを用いたイヌバベシア検出システムの開発 東京農工大学
古谷哲也
東京農工大学
諏訪桃子
本研究の目標は、イヌの血液からの簡便なバベシア原虫の検出システムを実用化するため、抗原を認識する核酸分子アプタマーを用いた検出システムの構築を行う事である。今回の研究期間中に私たちは、イヌバベシア寄生虫であるBabesia gibsoniの主な抗原であるBgGARPとBgSA1について組み換え蛋白発現のためのプラスミドDNAを入手し、アプタマー作製のため必要な精製蛋白質を得るために十分量の可溶性蛋白質の発現を得ることに成功した。現在、高純度BgGARP蛋白質の精製を行っている。また、開発するバベシア寄生虫蛋白検出システムの検出感度と特異性の評価のため、研究責任者のラボでは安全キャビネットの購入によりバイオセーフティーレベル2設備の整備が行われ、ケーナインラボよりバベシア陽性・陰性のコントロール用イヌ血液と複数の患者犬血液の提供を受け、他の検査方法(PCR法)との比較の準備を完了した。研究責任者が所属する国際家畜感染症防疫研究教育センターでは、改良型SELEX法によるウシロタウイルスに対するアプタマーの作製が進行中であり、アプタマーの作製法がパイプラインとして確立しており、今後は精製BgGARP蛋白質を用いて、同様の技法により蛋白質に特異的に結合するアプタマーの作製を開始する。引き続き株式会社ケーナインラボ(本課題に参加)と連携しながら、イヌバベシア抗原検出診断キットの実用化を目指すとともに、A-STEP顕在化をはじめ、実用化のための研究資金の獲得を視野に入れた研究開発を進めていく。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、核酸分子アプタマーの設計と検出システムの構築には至っていないが、検出システムが構築できた際には、他の感染症の検出にも応用できる可能性があり評価できる。一方、評価系の構築を進めていくためには、その材料となるリコンビナント蛋白のクオリティ、更に、その供給体制を改善することがもっとも大きな課題であり、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、蛋白発現や構造解析を専門としている研究者と共同研究をされることが望まれる。
片側装着形歩行支援装置の開発 東京工業大学
武田行生
東京工業大学
尾上二郎
身体の片側の腕と脚が不自由な片麻痺者の日常生活における直立歩行実現を目的とし、図1に示すように歩行運動中の任意の瞬間に3つ以上の接地点で使用者を支えながら安定した支援を行うため、図2に示す。脚運動創成ユニット、杖ユニットおよび装着・旋回ユニットと呼ぶ3種類のユニットから成る装置の構成を明らかにした上で、1台の直動アクチュエータと2台のブレーキから成る脚運動創成機構の目標軌道の決定と駆動効率の検討、杖ユニットの機構の総合と設計変数の値の決定、装着ユニットの製作等を行い、健常な被験者の歩行実験により、装置を駆動した状態で使用者が歩行可能であることを確認した。さらに、歩幅の可変化を可能とするため、類似した構造を有する松葉杖形歩行支援機械で小振り歩行と称する新たな歩容を実現するための運動制御則を構築した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、本研究は身体の片側の腕と脚が不自由な片麻痺者の日常生活における直立歩行実現を目的としており、その目標は達成されていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、身体に不自由な方々の外出支援及び移動に際して床面、道路.障害物等の部分も歩行動作上考慮した、安定化制御のアルゴリズムを構築し、実用化が進むことが望まれる。今後は、現在大手義肢メーカーとの連携を検討中であり、福祉サービス利用者の意見も反映し、社会還元につながることが期待される。
手術の体内遺残防止を目的としたマルチセンシングガーゼカウンタの開発 東京医療保健大学
山下和彦
東京医療保健大学
二宮徹平
医療過誤が社会的問題である。その中でも手術は大きな過誤につながる可能性がある。本研究開発では、ガーゼなどの医療材料の体内遺残事例に注目している。ガーゼなどの医療材料の体内遺残事例の予防には、手術前後の医療材料カウントの正確性が求められるが、看護師による手作業で短時間かつ大量のカウントを行う安全管理体制ではヒューマンエラー誘発することは容易に想像できる。そこで本研究では、手術室で利用可能なガーゼカウンタを開発すること目的に装置の基本構成部分の試作と実用可能性評価を行った。本成果では基礎的取り組みとして10枚程度の自動カウントを実現すべく開発進めている。今後は、実際の手術環境を想定し、医療過誤予防および質向上に寄与できるシステム開発を行う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、手術遺残防止を目的としたマルチセンシングガーゼカウンタの開発にあり装置の基本構成部分の試作と実用可能性に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、医療技術の高度化と超高齢社会の現状から本研究の応用展開は十分期待できるので、マルチセンシングガーゼカウンタと基礎実験のパラメータ項目を検討する事での実用化が望まれる。今後は、特許について連携企業との検討で早急に進めることが期待される。
早期発見および診断支援を目的としたメラノーマ(皮膚がん)自動識別システム 法政大学
彌冨仁
法政大学
村上義英
悪性度が極めて高い皮膚がんであるメラノーマに対する、我々が開発・公開している自動診断支援システム(http://dermoscopy.k.hosei.ac.jp)の信頼性を向上させるため、従来の識別結果だけではなく、利用者(=皮膚科医)に分かりやすい形で識別根拠の提示が行えるための手法を開発した。国内外4大学の1148例(良性腫瘍980例、メラノーマ168例)を元にAdvanced Fuzzy Inference Neural Network(AFINN)を用いた学習を行うことにより、人に分かりやすい色に関する9つの特徴量だけでメラノーマに対して感度81.5%、 特異度73.9%を実現しつつ、識別根拠としてFuzzy if-then形式のルールを提示することを実現した。上記実現により当初の目標を達成できた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、識別の根拠を利用者に分かりやすく説明するという説明能力の高い識別器の開発に成功している技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、メラノーマ領域だけでなくヘルスケア領域への応用は、市場規模が大きいだけではなく、本研究で開発された識別器の設計技術の特徴の有効性が高い分野であり実用化が望まれる。今後は、対象領域の専門家・組織との連携されることが期待される。
科学的根拠に基づいた改新的な術中骨折予防技術の実用化研究 北里大学
酒井利奈
北里大学
佐藤修
本申請では人工股関節置換術で生じる術中骨折に対して、科学的根拠に基づいた新しい骨折予防システムを開発した。医師にとって取り扱いやすく、患者にとって負担のない非侵襲の診断技術であり、医療現場の利用ニーズに応える「正確かつ低コストに測定可能とするシステム」となった。本研究課題の意義は、医師と患者双方にとっての安心と安全を提供することにある。本研究成果が応用展開された際には、社会に十分に還元でき、有益性も高い。本シーズは臨床研究段階にあるため実用化に近く、残された技術課題であるシステムの小型化をクリアできれば技術移転の実現が期待できる。今後の展開として、現在申請中の特許と類似した技術に新知見を加えた新規特許の出願を予定している。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、音響データの解析手法は興味深く、人工股関節置換術で、危険度が高まった時アラームを発する装置は新規性もあり、技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、収集された症例が極めて少なく、統計解析もなされていないので、症例数を増やした検討で有用性を確認したうえで実用化が望まれる。今後は、実際に挿入されたステムのレントゲン写真(CTなども含む)との比較がされることが期待される。
微生物由来の新規抗結核剤の標的分子の解明 北里大学
猪腰淳嗣
北里大学
佐藤修
本研究では、脂肪酸・ミコール酸合成を特異的に阻害するcalpinactamの結核菌におけるターゲット分子(標的タンパク質)を同定することである。 本研究では、2種類のアプローチ(プロテオミクス−標識化calpinactamを用いた結合タンパク質の探索--とゲノミクス−calpinactam耐性菌に生じたタンパク質変異をゲノム解析から探索する)によって、calpinactam のターゲット分子を推定し、結合実験により確認することを計画した。その結果、耐性菌のゲノム解析により、脂質代謝との関係が予想される3つの候補タンパク質を同定した。今後これらの候補タンパク質の遺伝子組み換え体を作成し、calpinactamとの相互作用を検討し、calpinactamの標的分子を特定する予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもcalpinactinの標的である可能性の高い酵素3種類を見出したことは評価できる。一方、標的候補酵素との親和性を早急に解明することが望まれる。今後は、結核菌のターゲット分子を直接つり上げるような優れたプローブの作成も望まれる。
ヒトiPS細胞由来ニューロンの成熟化3次元培養技術の開発 東京工科大学
鈴木郁郎
東京工科大学
塚本勝
ヒトiPS細胞由来ニューロンを成熟化させる培養技術として、脱細胞化脳組織を用いた3次元培養技術を開発した。成体ブタ脳の脱細胞化条件を検討し、脱細胞化脳組織の粉末化および可溶化した材料を培養足場として、ヒトiPS細胞由来ニューロンを培養したところ、生存率、神経突起の伸長、神経突起数に顕著な差が見られ、これまでの2次元培養や既存の3次元培養に比べ成熟化培養に適していることが示唆された。また、脱細胞化脳組織内にヒトiPS細胞由来ニューロンを播種したところ、脱細胞化脳組織内での神経細胞の培養および脱細胞化脳組織の構造に沿った培養が確認された。生体脳組織構造を3次元再構成可能な培養技術としての発展が期待できる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、中枢神経系の3次元モデルの可能性が示唆され、今後の研究方向性を示すことができるレベルまで具体化した技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、病態モデルが完成した場合、創薬モデルとしても重要で、製薬企業等を巻き込んでの実用化が望まれる。今後は、早い段階から病態モデルに着手し、正常と異常がいかに違って再現できるのかを示すことが期待される。
メチル化DNAのピンポイント検出法の開発 東京工科大学
加藤輝
東京工科大学
塚本勝
がん抑制遺伝子のCpGのメチル化率は、がんの早期発見や将来的な発がんリスク予測のためのマーカーとしての利用が期待されている。本課題は、標的DNAと結合することでDNAの分岐構造であるthree-way junction(TWJ)を形成するDNAプローブと定量的PCRを利用した、ヒトゲノム中の特定のシトシンメチル化の迅速・簡便な検出法の開発を試みた。その結果、ヒトゲノム中の一塩基のシトシンメチル化の検出に成功し、当初の目的は達成された。今後は検出操作の簡便化や検出感度の向上を図り、新たな診断・研究ツールとしての可能性を検討したい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、申請者らが独自に開発したthree-way junction (TWJ) 構造を利用して、配列内の特定のシトシンのみを求核剤(アミノオキシ化合物/バイサルファイト)で化学的に修飾する方法を実証したことは評価できる。一方、本アッセイ法が本当に簡便で高感度のアッセイなのか、従来法と比較し現時点では本検出法での利点は必ずしも明確ではないので、さらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、早い時期にがん研究者や企業との共同研究されることが望まれる。
変性軟骨診断のための関節鏡用指示色素の開発 東京慈恵会医科大学
水野秀一
近年、外傷性関節障害の診断や治療の際に関節鏡技術が普及しつつある。変形性関節症に進行する関節軟骨の軽度の変性は、検鏡の際に容易に軟骨損傷も判別できる指示薬が望まれ、その開発を行った。指示薬は、軟骨の陰性荷電に着目したターゲット物質と、臨床応用しやすいように安全性が確保されたインドシアニングリーンを指示薬として組み合わせた。まだ開発は進行中であるが、模擬的に表層欠損を行った軟骨と、正常軟骨の判別は可能である結果が得られた。現在、実際の難しい判別を、術者判定と、組織学的判定の同等性の検証を行っている。複数の候補指示薬が絞られた段階で簡易安全性試験を行い、事業化に向けた安全性試験を行う予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、申請書にあったようなさまざまな条件検討は行わず、正常部位と表層軟骨剥離部位の境目が濃く染まるのは見て取れるが、実際の意義は不明である。ただ、正常軟骨と変性軟骨を見分ける指示色素の開発は有用性が高いテーマであることについては評価できる。一方、 申請書に記載された内容は一部しか行われていないので、残りを進めていくものと考えられる。 「関心を示す企業も出てきており」とあるので、産学共同に発展に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、企業との共同研究に進む成果を出されることが望まれる。
新規エンドソーム脱出機構に基づいた超音波抗原送達法の開発とがん免疫療法への応用 帝京大学
鈴木亮
帝京大学
元治直也
樹状細胞を利用したがん免疫療法において、樹状細胞の細胞質内に効率よくがん抗原を送達することが重要である。そこで、本研究では超音波刺激により液体から気体に相変化する相変化型ナノ液滴を利用した新規エンドサイトーシス脱出法の開発を行った。パーフルオロペンタン、陽性電荷脂質およびリン脂質からなるナノ液滴と蛍光物質を樹状細胞にエンドサイトーシス経路で取り込ませ超音波照射したところ、蛍光物質がエンドソームから脱出することが明らかとなった。このことから、新たなメカニズムを利用したエンドソーム脱出のコンセプト証明ができた。今後は抗原のエンドソーム脱出について評価し、がん免疫療法への応用の可能性評価を行う。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、抗原導入率70%以上のバブルリポソームの開発等設定された目標をほぼ達成していることについては評価できる。一方、現段階では企業に技術移転する技術的な段階に到達していない。動物での抗腫瘍効果を得られる条件等の検討に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、技術移転に重点を置いた研究開発がされることが望まれる。
UV-Aカットマイクロカプセルの開発 横浜国立大学
金井俊光
横浜国立大学
原田享
マイクロ流体技術を用いることにより、UV-A領域(320〜400 nm)の紫外線を防御する新しいマイクロカプセルの作製を試みた。まずUV-A領域の紫外線をカットするシェル材料の設計・作製を行い、設計通りのシェル材料が作製できた。次にガラスキャピラリー型マイクロ流体デバイスを作製し、液体を流動させることによりマイクロカプセルが作製できることを確認した。しかしながら紫外線カット用のシェル材料ではコア材料を内包しきれず、安定性に課題が生じた。本研究により得られた紫外線カット材料の有用性から今後も研究を続けるべきであると判断し、現在、安定化改善策を進めている。またカプセル以外の応用も期待でき、今後検討する予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、コロイド結晶による紫外線(UV-A)のカットを実証できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、当初目標のコロイド結晶をシェルに持つマイクロカプセルの作製だけでなく別形態への適用も検討するなどでの実用化が望まれる。今後は、新たなコンセプトの効率的な紫外線カット材料として開発を取進めることが期待される。
低電力で作動する瞬間小型過熱水蒸気殺菌器の開発 横浜国立大学
森昌司
横浜国立大学
原田享
本申請課題では、小型瞬間過熱水蒸気生成器に関し、含水多孔質体を利用することで、常温の水から過熱水蒸気を小電力で短時間・効率よく生成する手法について検討を行った。その結果、ヒータと含水多孔質の間の隙間領域を無くすことで、過熱水蒸気を迅速・効率的に生成できるという結果を得た。さらにヒータの加熱による外部への熱拡散現象と毛管力による加熱内面への液体の移流現象をモデル化し、多孔質体の種類および幾何形状の情報から熱エネルギー利用効率を予測する理論モデルを構築し、実験結果とよく合うという結果を得た。そのモデルから小型化した場合のエネルギー利用効率について検討を行った。今後はさらに超小型化した場合においても、過熱水蒸気が生成できることを実証していく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、このモデルを用いた最適設計が行われており、目標は一応達成されていると評価できる。一方、技術移転の観点からは、過熱蒸気発生メカニズムの解明、その知見に基づき構築される蒸気発生過程の物理的モデルも、十分ではないと判断されるので、理論解明も重視しながら、実用化を進めることが望まれる。今後は、最終目標とする小型機器が開発されれば、その意義は大きいものと考えられるので、小型化についての問題点を解決し、社会還元につなげることが期待される。
肝腎二臓器より排泄され、腎負荷を低減した新規X線造影剤の開発 聖マリアンナ医科大学
松本伸行
MPO株式会社
井上正範
本研究の目的は、通常の腎臓からの排泄経路に加え、正常肝細胞内に取り込まれ、胆汁からも排泄されるX線造影剤を開発することにある。
我々は候補化合物を作成し、これは、in vitroの実験において肝特異的トランスポーターを介して細胞内に取り込まれることを確認した。この取り込みは構造異性体によって異なる事が示唆された。また、マウスの尾静脈より投与して、尿管内のみならず、腸管内へも造影剤が排泄される事をCTにて確認した。
今後の展開として、より適切な側鎖の決定、腎負荷の評価が必要となる。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、候補化合物を作成し、腎毒性を悪化させる危険性も示唆しているが、胆汁排泄型であることを明らかにしたことについては評価できる。一方、肝蔵での代謝を詳細に解析して、種々の肝障害例での肝毒性の危険性を明らかにしなければ臨床応用には適しない。また、腎障害に関しても詳細な検討が必要で技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、既存のGd-EOB-DTPA(EOB−primovist)との比較による有意差を示すことが望まれる。
インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼの阻害抗体によるペプチド創薬研究 公益財団法人神奈川科学技術アカデミー
朴三用
公益財団法人神奈川科学技術アカデミー
横尾義春
インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼは (PA, PB1, PB2)3つのタンパク質から構成されており、それぞれのタンパク質が正しく結合する事によって転写・複製が行われ、ウイルスの増殖につながる。そのため、他のウイルスタンパク質と比べ変異が起こることが少ないため、新規薬剤ターゲットとして注目されている。本研究は、RNAポリメラーゼのPB2サブユニットのRNA結合ドメイン(530-759)のタンパク質を抗原として、モノクローナル抗体を作製し、ウイルスの増殖の過程を可視化する事に成功した。現在、抗体とのタンパク質複合体の構造解明のため、結晶化を進めている。今後、ウイルス増殖の過程を可視化の技術の高度化や、開発された抗体の分子生物学的なマーカとして、開発して行く予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にウイルスの構造解析等の基礎情報の取得には役立つものと期待できる。特許申請もなされており、高い技術力は評価できる。一方、技術移転の観点からは、早急に企業と連携して開発することが臨まれる。今後はチャレンジを継続することが期待される。
産官学連携による遺伝子注入器の開発と日本発の新規遺伝子治療への応用 新潟大学
上村顕也
新潟大学
尾田雅文
本研究では、申請者らが、医工連携によって開発した、小動物用の遺伝子注入システムの理論に基づき、大動物用の遺伝子注入装置を開発、将来的な遺伝子治療への応用に向けたプロトタイプを開発することを目的とした。研究期間内に、産官学連携によって、地元企業体とのチーム体制で、プロトタイプの作製に成功し、目標は達成された。現在、その有用性の検証を継続しており、本研究によって得られた結果から、将来的なヒト遺伝子治療に向けた基盤が構築されつつある。今後は、本システムを用いた遺伝子治療効果について、動物モデルを用いて、検証を行う予定である。同時に、将来的な多数企業との連携も視野にいれ、本システムの技術的な問題点、汎用化に向けた課題を明確にすることを今後の目標とする。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、犬等の大動物を用いた実験は行われていないが、学術論文誌掲載により手法の独自性をアピールできた点については評価できる。一方、実験による有用性検討がおこなれてないため、実験によりシステムの有用性検証に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、システムの新規性等発想は優れていると思うので、実験検証を進め、システムの有用性を示されることが望まれる。
新規米ペプチドの生体防御作用の解明とその健康機能素材への応用 新潟大学
谷口正之
新潟大学
小浦方格
米タンパク質由来ペプチドであるAmyl-1-18は、歯周病菌とニキビ菌に対して高い抗菌活性を示した。また、日和見感染細菌、日和見感染真菌、侵襲性歯周炎原因菌、う蝕菌などに対しても抗菌活性を示した。Amyl-1-18の微生物細胞膜に対する損傷作用は弱いことがわかった。一方、AmyI-1-18は、翻訳ステップとリフォールディングステップを阻害してタンパク質合成を阻害することが示唆された。AmyI-1-18の抗炎症作用と創傷治癒作用を解明するために、それぞれマクロファージと血管内皮細胞を用いて検討した結果、ヒトの生体防御ペプチドと同じように、抗炎症作用と創傷治癒作用を有することがわかった。AmyI-1-18は、哺乳類の細胞に対して毒性を示さないことがわかった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、米タンパク質の酵素加水分解物から強い抗菌活性と広い抗菌スペクトルを示す抗菌ペプチドを得たことについては評価できる。一方、技術移転の観点からは、抗菌作用の機構を解明すると共に製法も再検討するなどでの実用化が望まれる。今後は、抗菌ペプチドの保存安定性や他成分との相乗的な効果の検討、分離精製を含めたコスト試算など実用化に向けた課題を整理されることが先ずは期待される。
生理機能の恒常性維持に有効な糖タンパク質の低コスト大量製造技術開発 新潟大学
知久和寛
新潟大学
長谷川佐知子
本研究課題では、生理機能の恒常性の維持において重要な役割を担う糖タンパク質の実用的生産技術の開発を目的に、澱粉や砂糖などの安価な天然糖質原料から、アスパラギン結合型複合糖鎖の逐次的な酵素化学合成法を開発する。まず当研究室で見出された新規なホスホリラーゼを鍵酵素とするアスパラギン結合型複合糖鎖のコア2糖マンノシルグルコサミン(ManGlcNAc)の合成のため、反応系における砂糖濃度、グルコサミン(GlcNAc)濃度、リン酸濃度、ホスホマンノムターゼ濃度を最適化した結果、従来の製法の約1.8倍の収率(42%)でマンノシルグルコサミンを砂糖から合成できた。しかしながら、反応収率の更なる向上化のためには、使用する酵素のスクリーニングを行い、より高活性でありかつ高い安定性を持つ酵素を取得することが今後の課題である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、アスパラギン結合型複合糖鎖のコア2糖であるマンノシルグルコサミンをショ糖を原料として生産するワンポット酵素反応系を構築したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、コア2糖の合成には成功しているものの、収率がまだ低く使用する酵素量も多い。高活性で安定な酵素の探索や反応条件の最適化などでの実用化が望まれる。今後は、3糖以上の複合糖鎖の合成技術の開発も地道に取り組まれることが期待される。
3T3J2細胞を用いた羊膜由来幹細胞の選択的増殖方法 富山大学
小池千加
富山大学
平川龍夫
羊膜由来上皮細胞および間葉系細胞は、複数分化能をもつ幹細胞としての性質を保持しており、拒絶を起こしにくく他家移植に適していると考えられ、再生医療の細胞源として注目されている。しかしながら、幹細胞、前駆細胞、分化した細胞を含む細胞集団であることが予想されることと、in vitroでの増殖能はそれほど高くないところに問題があった。放射線照射処理したマウス線維芽細胞3T3J2細胞をフィーダー細胞として使用し、羊膜由来上皮細胞および間葉系細胞を培養した場合には7-14日後にコロニーが観察された。このコロニーは6か月以上、7継代以上の培養、増殖が可能であった。また、得られたコロニーを形成する細胞はKLf4などの幹細胞マーカーを発現していた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、いくつかの幹細胞マーカー遺伝子の発現亢進が見られたことは、幹細胞様の細胞の増殖を示唆するデータとなっており、幹細胞の維持と増殖を支えるメカニズムにつながる重要な知見として評価できる。一方、幹細胞のソースがどんな細胞になろうとも、その維持と増殖を容易にし、目的の細胞への分化をうまくコントロールする手法には、まだまだ改善の余地は多く、そのメカニズム解明に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、本実験系で見られる特徴をうまく解析していくことで、幹細胞の維持・増殖のメカニズム解明といった視点で研究されることが望まれる。
シナプスに存在する転写因子を標的とした自閉症スペクトラムの創薬基盤研究 富山大学
田渕明子
富山大学
平川龍夫
本研究では、自閉症スペクトラム(ASD)の原因遺伝子候補である転写因子megakaryoblastic leukemia(MKL)遺伝子を標的とした創薬基盤の構築に取組んだ。まず、ASD 患者で見いだされたMKL2 遺伝子変異に着目した。その結果、変異型MKL2 は、野生型に比較して、神経樹状突起形態複雑化が減少していることが示された。また、既知のMKL 阻害薬は、樹状突起や軸索の伸長を阻害した。したがってMKL2変異を有するASD では神経突起形態の正常な複雑化が阻害されている可能性が示唆された。当面の目標として、MKL2 変異による樹状突起複雑化減少の分子機構の解明に取組みたい。また、将来的には変異型MKL2 遺伝子組換えマウスやMKL 阻害薬投与マウス作製によるASD モデル動物提供につなげたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも基礎的研究を着実に進め、新しいし知見を得ている姿勢は評価できる。一方、MKL2遺伝子変異の生物学的意味を基本に戻って探る必要があると思われる。今後は、CCG-1423 の作用点とMKL2機能との直接的な関連を示すことが望まれる。
高齢者医療で強力なツールとなるタンパク質運搬微粒子の実用化 富山大学
中路正
富山大学
永井嘉隆
本研究開発課題は、高度先進医療の発展にとって現在求められている、抗体・タンパク質医療の更なる発展・実用化に向けて強力なツールとなる『タンパク質運搬・精密徐倣微粒子』の実用化を目指すものであり、商品開発にとって必要不可欠な知見である「生体内での安全性の立証」「大量・均質製造のための基盤技術構築」に関するものである。本研究期間で、実験動物体内への影響を調べた結果、徐倣したタンパク質の効果が認められる微粒子量では、生体への悪影響(慢性的な炎症や移植部位周辺の組織の異常、毒性等)が認められず、移植した動物に異常は認められなかった。また、均質な微粒子を大量に製造するための方法を探索した結果、一度の製造で約70 mg(移植約100回分に相当)得られる方法を確立した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、品質向上・大量生産技術に端緒を開かれたことは技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、安全性試験が明確な結論を得ないと企業等への技術移転は見込めないので、安全性を検証することでの実用化が望まれる。今後は、安全性試験動物の血液や臓器・組織が保存されていると思います。血液検査、病理組織等を評価し、安全用量と毒性用量を明確に確立されることが期待される。
薬物依存療法の開発に向けた動物ツール・依存形成増強マウスの可能性検証 富山大学
宮本嘉明
富山大学
平川龍夫
近年、我が国では、薬物事犯があとを絶たず社会的問題となっている。しかし、薬物依存の治療法は、皆無に等しい状況にある。そこで、本研究では、我々が見出した薬物依存抑制分子の遺伝子欠損マウスが、薬物依存療法の開発における簡便かつ共通の動物ツールとなる可能性について検証した。その結果、一部、実験条件の更なる検討が必要ではあるが、作用機序の異なる数種類の依存性薬物に対して、本遺伝子欠損マウスが行動学的および神経化学的に高い反応性を示し、その有用性が示唆された。今後、更に各種依存性薬物への反応性を検証し、本遺伝子欠損マウスが共通治療薬の開発に寄与する生物ツールとなることを提案していきたい。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも。薬物の種類に関わらない、薬物依存の治療のためのモデル動物作成という目標については評価できる。一方、データを積み重ねるにはShati/Nat8l遺伝子欠損マウスを実験で使用するため、マウスをある程度量産する必要がある。 さらに、実験を行い基礎的なデータを積み重ねる必要があると思われる。今後は、薬物依存におけるドパミン、セロトニンおよびShati/Nat8lの関係を整理されることが望まれる。
アトピー性皮膚炎治療、再発予防のための皮膚脂質代謝酵素デアシラーゼ阻害薬の開発:設計、合成、薬理評価 富山大学
矢倉隆之
富山大学
平川龍夫
スフィンゴミエリンデアシラーゼおよびグルコシルセラミドデアシラーゼ阻害剤開発のためのリード化合物の創製を目標として研究を開始した。スフィンゴミエリンデアシラーゼがいまだ単離されていないため、デアシラーゼによる加水分解機構を考察し、その遷移状態モデルをデザイン、合成した。また、その活性評価をスフィンゴ脂質のアミド基を加水分解する酵素であるSCDaseの阻害活性を指標に行なった。その結果、興味深いことに、スフィンゴシン誘導体ではなく、フィトスフィンゴシン誘導体において酵素阻害活性が見られ、フィトスフィンゴシンの3,4位ヒドロキシ基の存在が重要であることがわかった。さらに良い構造変換法の開発とより高い活性を持つ誘導体の創製が急がれる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも新たな着想で創薬を計画し、フィトスフィンゴシン誘導体が有望であることを見出した点は評価できる。一方、in vivo試験に使える化合物合成に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。アトピー性皮膚炎の新たな治療戦略を担う薬物となる可能性があり、今後の展開が期待される。
血中循環細胞捕捉用MEMSチップの研究開発 富山県工業技術センター
小幡勤
富山県工業技術センター
冨田正吾
MEMS技術を用いて血液中に浮遊する細胞を捕獲するチップの開発をおこなった。チップは、磁性膜とスルーホールにより構成され、磁性膜とスルーホールによる捕獲、磁性膜、スルーホールのいずれかによる捕獲に対応している。スルーホ−ル形状は十字形であり、中心部分はふるい寸法径となっている。マイクロビーズによるテストでは、穴径付近を境にしてビーズの大きさが分別できた。また、磁気ビーズによる評価では、磁性膜あるいはスルーホールで構成されるトラップ上に最終目標である80%以上の割合で捕獲可能であることが確認できた。磁界を形成している磁石の磁束分布に捕獲場所が影響を受けており、今後トラップ設計の最適化が必要である。また実際の細胞では硬いビーズと挙動が異なることから、ターゲットとする細胞に合わせた設計を再検討していく必要がある。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初の開発目標である、捕集率80%は完全には達成できなかったものの、吸引圧の調整など、様々なパラメタの最適化により実質的には現時点で十分な捕集率を得られていることについては評価できる。一方、磁性膜の効果だけでなく、形状の効果で捕集出来てしまったビーズも多く存在しており、MEMS構造、磁性膜の形状などは更に改良の余地があり、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、世界中の細胞補足技術と比較し実用化に向けて、実用化に向けて時間軸を考慮した研究を進められることが望まれる。
脂質メディエータースフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体を標的としたアナフィラキシーショックの革新的なナノ粒子治療薬の開発 金沢大学
岡本安雄
金沢大学
渡辺良成
アナフィラキシー(AFL)と急性呼吸促迫症候群(ARDS)は代表的な血管透過性障害の病態である。最近、私たちはノックアウトマウスの解析から血管内皮に発現する2型S1P受容体(S1P2)が内皮関門機能破綻を抑制することを発見した。本研究では、野生型マウスを用いて、血小板活性化因子(PAF)静注によるAFLモデルとリポ多糖(LPS)誘発ARDSモデルを作成し、AFLあるいはARDS誘発前に、S1P徐放製剤であるPLGA-S1Pナノ粒子製剤を気道内に投与して肺血管関門機能の破綻が予防もしくは改善されるか否かを検討した。PLGA-S1Pナノ粒子製剤前投与はPAF静注によるAFLによる生存率低下を改善できなかった。一方、LPS誘発ARDSモデルにおいて、PLGA-S1Pナノ粒子製剤同時投与はLPSによる肺胞腔への炎症波及および肺微小血管透過性の亢進を抑制する傾向が観察された。今後、PLGA-S1Pナノ粒子製剤あるいはS1P2受容体活性薬による血管関門機能障害を改善する新規治療法の開発を引き続きめざしていきたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に投与薬剤候補を独自に同定・開発し、そのデリバリーシステムも含めて製品開発を考えている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、モデル動物作製法と薬剤の投与法を改善し、実臨床に近い形で研究が可能になることが望まれる。今後は、多くの疾患モデルで成果を確認することが期待される。
老化抑制および幅広い疾患予防機能を持つ食品・医薬品成分の開発 金沢大学
小川和宏
金沢大学
渡辺良成
研究責任者小川が特許権を持つ、ヘム代謝調節を介して生体防御機能を発揮するポリアミンなどの毒性をマウスで評価し、食品や医薬品への応用を目指した結果、経口投与でポリアミンがかなりの高濃度および高用量でも胃や肝臓などの臓器に悪影響を与えないという安全性が確認でき、当初の目標が概ね達成された。所属機関の研究環境に起因して当初計画の一部が実施できなかったが、別の関連特許も本期間中に取得したので、研究責任者のこれら個人特許群と本研究の成果を基に、追加実験および次の技術的課題として浮上した成分の安定性試験などを進め、技術移転のみならず、兼業制限が緩和された起業も視野に入れて、実用化による社会貢献へ進めたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも本研究によって、経口投与したポリアミンが高濃度、高用量において、胃や肝臓に悪影響を及ぼさないことから、その安全性を示すことができた点は評価できる。一方、ポリアミンの化学的安定性を検討することなどデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、どの疾患を対象としどのような剤形にするか、またどの食品に加えるかなど、より具体化した検討が望まれる。
無機材料を用いた放射線エリア検出器の開発とその放射線医療への応用 金沢大学
黒堀利夫
有限会社金沢大学ティ・エル・オー
山田光俊
ラジオフォトルミネッセンス(RPL)現象に基づく銀活性リン酸塩ガラスおよびフォトルミネッセンス(PL)現象に基づく光学ガラス上に蒸着したフッ化リチウム(LiF)薄膜を作製し、特許出願に基づくディスク型放射線検出器とその読取機を開発することを目標とした。各材料の特性を生かし数ミクロンの空間分解能の実現、2種類の検出器の併用で8桁に亘る広いダイナミックレンジの達成、さらに300℃の温度まで退行しない線量分布イメージの再構築が達成できた。同時に、レーザーを用いた高速・高精細なイメージを取得可能な蛍光読取機を構築した。今後材料の透明性を活かした3次元イメージの実現と技術移転を含む産学共同での実用機開発の方向性が明確になった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、薄膜技術を用いて検出器を開発し、蛍光波長の異なる素材に対し、素子を変えることなく測定可能となる技術と、空間分解能や感度などに対応した設定に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、放射線検出器の需要と期待は、医療のみならず環境放射線に対しても高まっている。検出器の小型化を今後の研究開発計画にしていることは、線量測定においては重要なことで実用化が望まれる。今後は、ガラス関連企業や線量計企業との技術提携又は共同研究契約を取り、本格的な技術開発と産学連携を図ることが期待される。
新規テトラヒドロビオプテリン代替化合物ライブラリーからの革新的脳・神経疾患治療薬の開発 金沢大学
郡山恵樹
金沢大学
渡辺良成
テトラヒドロビオプテリン(BH4)の欠乏は神経伝達物質生成の低下を引き起こし、先天的な乳幼児の代謝異常症だけでなく成人における後天的なパーキンソン病やうつ病といった、進行性の中枢神経疾患も引き起こす可能性が論じられている。天然型のBH4製剤の脳移行性や不安定さのため、可及的速やかなBH4代替化合物の開発が求められている。そこで、我々は新規BH4代替化合物ゲニピンの安定誘導体ライブラリーを構築した。また、IPRG001は特にBH4代替作用が強いことが分かった。今後はゲニピン誘導体による神経伝達物質の生成効果などを調べ、革新的な脳・神経疾患治療薬の開発を目指す。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも精力的な実験をおこない、各実験のデータをそろえる事ができた点と、ライブラリー構築で6種の誘導体に絞れた点は評価できる。一方、BH4の作用機作に関するデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、6つの誘導体の活用法を考え、新たな展開を探ることが望まれる。
核酸医薬品創製に向けた多彩な置換基導入が可能なセレノヌクレオシド類の新構築法の開発 金沢大学
千木昌人
金沢大学
渡辺良成
環内酸素原子を硫黄や窒素などのヘテロ原子に置き換えた擬似糖類はその生理活性の面から近年注目されているが、セレンに置き換えたセレノ糖やセレノヌクレオシド類の合成例は極めて少ない。本研究はセレノカルボニル基(C=Se)の高いジエノフィル性を利用した新しいアプローチであり、セレノヌクレオシド類の合成が短工程で効率よく達成された。具体的には、セレノアルデヒドと1-アセトキシブタジエンとの立体選択的な環化付加と続く立体特異的環縮小により含セレン5員環骨格を構築し、さらにジヒドロキシル化及びセレノプンメラー転位により、非天然型セレノヌクレオシド類の合成に成功した。本手法は多彩な置換基の導入が可能であるため、今後様々な置換基をもつ誘導体の合成を検討するとともに、キラル触媒を用いた光学活性なセレノヌクレオシド類の合成も試みる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に炭素-セレン二重結合の高い反応性に着目し、新規なセレノヌクレオシド誘導体を合成した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、当初の目標であるセレノAZT誘導体の合成と生理活性の検討が望まれる。今後は、合成した化合物の生理学的特性を明らかにすることが期待される。
抗NMDAR抗体陽性患者血清を用いた全身性エリテマトーデス治療薬の開発研究 金沢大学
宝田剛志
金沢大学
渡辺良成
本課題では、SLE患者血清中抗NMDAR抗体によるNMDAR活性化メカニズムを元にして、同活性化を抑制する既存の薬剤・化合物の効果を検証し、Evidenceに基づいたCNSループスに対する新規薬物療法の基盤を開発することを目標とした。本研究開発では、SLE患者血清中抗NMDAR抗体によるNMDA活性化作用が、NR1/NR2Bサブユニットから構成されるNMDARに作用することを明らかとしただけではなく、同活性化を阻害する化合物を見出すことに成功した。この解析結果は、同化合物がSLEにおけるCNSループスの薬物療法に適用できる可能性を示すものである。見出した化合物は、現在臨床適用されている既存薬であるため、ヒトでの安全性と体内動態が臨床にて充分に確認されている。今後は、同化合物を使用した動物実験や、ヒトでの臨床研究を展開し、SLEにおけるCNSループス治療をいち早く実施することを目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に in vitroの成績ではあるが、SLE患者由来の抗NMDAR抗体陽性IgGが、健常者あるいは抗NMDAR抗体陰性IgGよりも強くNMDARを活性化し、「化合物A」により拮抗されることを確認した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、NMDARをターゲットとした薬剤は、脳梗塞や中枢性疾患治療薬として、過去に多数開発されたが経緯があるが、効果・副作用の問題で多くは開発中止に至っている。SLE患者の内、抗NMDAR抗体陽性の割合はそれほど高くないようであり、抗NMDAR抗体上昇と症状発現との関係を検討することが望まれる。今後は、早期に産学連携を目指し、特許戦略をき立てて今後進めることが期待される。
カスタムメイドインプラントを用いた個別化医療の実現 金沢大学
土屋弘行
金沢大学
渡辺良成
我々が開発した抗菌効果と骨親和性を併せ持つヨード担持表面加工を施したカスタムメイドインプラントによる個別化医療の実現を最終目標とし、今回の研究を立案した。本研究開発では、最終的な薬事承認を踏まえ、まず金属試験片による物理特性を評価することとした。JIS規格に準じて金属試験片を3次元積層造形機で製作し、(1)処理なし、(2)酸化被膜のみ、(3)酸化被膜+ヨード含侵の3群で比較検討を行った。いずれの群も医療用チタン合金材料の国際基準であるASTM F136規格を十分に満たすものであった。3次元積層造形にヨード担持表面加工を加えた金属材料は、医療用インプラントの基本的な物理特性を十分に満たすものであることが確認できた。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、医工連携の研究課題において世界で先駆的な取り組みをし、実用的事例が要求されている3Dプリンターの応用で新たなカスタムメイド治療に着眼していることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、検証に時間を要することと、少ない検体からの実験を進めなければならない状況はあるものの実用化が望まれる。今後は、高齢化社会においてますますニーズが増すと考えられるカスタムメイド治療に対して、医工連携の研究課題として推進されることが期待される。
細胞移植を必要としない歯髄組織再生治療薬の研究開発 金沢大学
中村博幸
金沢大学
渡辺良成
現在歯髄炎の治療薬は存在しないため、歯髄の全部除去が唯一の対処法である。歯髄組織の除去後は歯牙が劣化し破折の危険性が高まる。超高齢社会において、歯の延命は口腔機能維持によるQOLの向上や全身の恒常性維持、認知症の予防に重要である。私達は、歯髄幹細胞が細胞外マトリックス分解酵素のMMP-3を高発現していることを見出し、さらにイヌ歯髄炎モデルでMMP-3を作用させると炎症は終息し歯髄再生が誘導されることを報告した。本研究で、歯髄細胞からのMMP-3産生を促進する薬剤を市販薬の中から探索した結果、それがラタノプロストを含有した緑内障治療薬であることを見出した。次にラタノプロストの効果をイヌ歯髄炎モデルで検討したが組織再生効果は確認されなかった。今後は生体内での有効薬剤濃度や投与方法の検討が必要であると考えられた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも炎症を酵素MMP3で抑えることができ、そのメカニズムも解明した点、また、MMP3を増加させる薬剤を同定した点は評価できる。一方、細胞毒性に関する検討は本研究で十分かどうか再考することが望まれる。今後は、成果がin vivoで得られなかった原因を検討することが期待される。(歯髄細胞の問題ではなく、血流の問題かもしれない。根尖孔開存状態と閉鎖状態などで比較してはどうか)
新規慢性骨髄白血病モデルを用いた、抗ケモカイン療法の開発 金沢大学
向田直史
金沢大学
渡辺良成
我々が新規に開発した慢性骨髄性白血病モデルを用いて、1)慢性骨髄性白血病の病態形成におけるケモカインCCL3の病因的役割の明確化、2) CCL3を標的分子とした慢性骨髄性白血病の新たな治療戦略の確立の2点を本課題では目指した。その結果、CCL3は慢性骨髄性白血病の発症過程に密接に関与しているのみならず、慢性骨髄性白血病の分子標的薬であるチロシン・キナーゼ阻害剤(TKI)に対する耐性機構にも関与していることを示唆する結果が得られた。ヒト慢性骨髄性白血病患者の解析から、TKIに対する感受性とCCL3発現とが逆相関する可能性が示唆され、CCL3がTKI治療のバイオマーカーとなる可能性も示唆された。さらに、大腸がん発症に対するCCL3阻害剤の予防効果を示唆する結果も得た。今後、大腸がん接種モデルでのCCL3阻害作用因子発現ベクター投与の効果を実証し、CCL3阻害作用を指標として得られたヒット化合物に関して非臨床レベルでのProof of Conceptを得ることを計画している。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、慢性骨髄性白血病のみならず、大腸がんに対してもCCL3阻害剤が有効である可能性を示唆する結果を得た点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、CCL3阻害剤の慢性骨髄性白血病への応用については具体的な研究開発計画の検討を十分に行わう必要がある。シーエルセントリとTKIと併用を含めて再検討が望まれる。今後は、CCL3阻害剤の慢性骨髄性白血病への応用についても引き続き検討を行うことが期待される。
イノシトールリン脂質代謝酵素を標的とした動脈硬化治療法の開発 金沢大学
吉岡和晃
金沢大学
渡辺良成
より有効な動脈硬化治療法の開発に対する社会的ニーズは極めて高い。本研究では、内皮バリア機能が障害されている内皮特異的PI3K-C2α欠損マウスを、新しい動脈硬化症モデルマウスとして確立するために、従来の標準モデル(ApoE欠損マウス)と比較検討した。その結果、従来モデルであるApoE欠損マウスに高コレステロール飼料を与えると、動脈硬化プラークが12〜16週間要して形成されるが、内皮特異的C2α/ApoE二重欠損マウスにおいては8週間後、ApoE欠損マウスと比べて約2倍強のプラーク過形成を呈した。更にin vitro実験系において、PI3K-C2α酵素によるPI(3)P産生を負に制御する脂質ホスファターゼとしてミオチュブラリン様タンパク質(MTMR)を同定し、C2α-MTMR系によるPI(3)P依存的な内皮バリア調節機構を明らかにした。これらの結果から今後は、このPI(3)Pレベル調節システムを標的とした全く新しい概念の血管内皮機能改善薬の探索に向けた開発プラットホーム作りを進めていく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に研究目標であるPI3K-C2α欠損マウスの有用性と新たな新たな抗動脈硬化の分子ターゲット(MTMR)の同定は極めて評価できる研究成果である。一方、技術移転の観点からは、PI3K-C2α欠損マウスと新たな新たな抗動脈硬化の分子ターゲット(MTMR)を用いた新たな抗動脈硬化シーズの発見が望まれる。今後は、血管内皮機能改善薬としての開発ストラテジーを組むことが期待される。
交感神経イメージングのための総合評価システムの開発 金沢医科大学
奥田光一
金沢医科大学
畔原宏明
総合評価システムの開発を推進するため、ハードウェアであるPlanar校正ファントムを改良し、専用の解析ソフトウェアを開発した。そして、本ファントムを用いて全国の84病院で実験を行い、校正値のデータベース化を行った。
校正ファントムの構造を見直し、40%の軽量化を達成することで、実験での取り扱いが容易となった。さらに、環境試験を実施し、温度サイクル試験および温湿度サイクル試験においてもファントムの品質は担保されていた。また、従来からファントム画像の解析は手動で行っていたために、術者内/術者間の変動が懸念されていた。今回開発したソフトウェアは自動で画像解析を行うことが可能であり、様々な条件で撮像されたファントム画像を統一化された方法で解析ができるようになった。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、コリメータとガンマカメラの組み合わせと心縦隔比との関係の解明、心縦隔比のデータベース化については評価できる。一方、本研究には企業や大学が参画してが、標準化を目指す活動なので関連学会へのPRが不可欠と思われる。学会等関連機関への働きかけや特許出願に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、仲間を増やして学会等で認定されることを目指されることが望まれる。
視機能確保に貢献する脳神経外科手術用眼球保護モニターの開発 福井大学
北井隆平
福井大学
奥野信男
脳神経外科手術中、視機能悪化は眼球圧迫により視神経の虚血、手術による視神経の物理的損傷で起きる。これを防ぐために圧モニターと視神経活動の両者をモニターできる装置の開発を行った。視神経活動を記録する光刺激装置は光ファイバー織物、紙状厚の導光性弾性プラスチックの開発を行った。ファイバー織物は0.25mmの光ファイバーを縦糸に織物にすることで安定した品質のものが供給可能となった。圧センサーは紙状厚のフレキシフォースセンサーが有望であり、これは導光性弾性プラスチックとの融合が有効であることが分かった。しかしながら、圧センシング部分の複数化、一体モジュール化が必要で、患者による実証実験も必須であるが、期間中臨床使用できるほどの安定した試作品の完成は出来なかった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、眼球保護モニターに必要な圧力センサの特性がある程度明らかになり、企業との共同研究に道筋をつけた点については評価できる。一方、研究期間中に技術的課題が多く発生したこともあり、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、海外技術の進歩を観察しこれらとの競合力を検討して、可能性を模索されることが望まれる。
ナノファイバー材料による幹細胞の3次元高密度培養基材の合理的設計 福井大学
藤田聡
本研究では、エレクトロスピニング法により作製したナノファイバーシートを積層することで、造血幹細胞増殖に適した骨髄微小環境に類似した高密度培養デバイスの構築を目指した。ナノファイバーシートに間葉系幹細胞を播種・培養し、これを積層し、各層間に臍帯血由来造血幹細胞を培養することでその効果を検証した。また、in vitroでの培養試験の結果、平面培養と比較して造血前駆細胞を高効率に増幅できることを見出した。以上より、(1)バイオハイブリッド材料の有効性、および(2)高密度培養の可能性について、新規培養デバイス開発に向けた目標以上の基礎的知見が得られ、これをもとに今後デバイスの改良をすすめていく。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ナノファイバーシートを用いて幹細胞の3次元高密度培養に成功したことについては評価できる。一方、本研究をベースとして効率的な汎用性のある幹細胞の3次元高密度培養系を構築に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、産学共同研究により、汎用性のある効率的な培養デバイスの構築を目指されることが望まれる。
血中脂肪酸代謝解析による高精度自閉症早期診断マーカーの確立 福井大学
松撫G夫
福井大学
青山文夫
自閉症児童の血中脂質VLDL分画は定型発達児童に比べて低下している。この所見に関連の深い代謝産物を特定する目的で、新たに収集した自閉症児群・定型発達児群各30例の末梢血血清を対象にメタボローム解析を行った。CE/LC-TOFMS解析で血中の標的代謝産物1200種を測定したところ、まず258種が検出され、うち83種で自閉症児群に有意な変化が認められた。代謝産物と中性脂肪VLDL分画との相関を調べたところ、脂質の分解を示唆する代謝物質20種の濃度が有意に相関していた。これらはROC解析によって新たな自閉症判定のマーカー候補としても有望と期待された。また、この結果から自閉症者の末梢血中ではVLDL脂質の特異的な分解が生じていると推定された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、自閉症において末梢血中で脂質低下の原因を示唆するデータを得ており、企業等との共同研究が予定されていることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、自閉症の新たな病因論の確立に繋がる可能性があり、早期発見につながる可能性がある。未就学自閉症児童のデータ解析を行うことで実用化が望まれる。今後は、未就学自閉症児童のサンプル収集については広く他医療施設に協力を求めることが期待される。
高齢者の社会活動参加を促進するための椅子からの立ち上がり支援具の開発 山梨大学
高橋正和
山梨大学
服部康弘
本研究開発の目的は、筋力の低下により椅子に座りきりとなった高齢者向けの立ち上がり支援具を研究開発することである。支援具を研究開発するに当たり、安全、安価、使いやすい、どこでも使用できることをコンセプトとした。研究開発した支援具の基本構造は、2枚のアルミニウム板を重ねて蝶番で連結し、その間に風船を挿入したものである。風船を膨張、収縮させることで、座面を傾斜させ、高齢者が立ち上がりやすい姿勢を作り出す。高齢者施設の協力により、高齢者による支援具の評価実験を行った結果、立ち上がり動作に関係する数値データが改善され、立ち上がりが容易になったとの評価を得た。今後、耐久性や座り心地の改善を行い、実用化に近づけていく。 当初予定していた成果はある程度達成され、、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも筋力の低下により椅子に座りきりとなった高齢者向けの立ち上がり支援具の開発において実用に近い装置を開発している点については評価できる。一方、当面の耐久性や更なる軽量化などの取り扱い性能の向上や、更に多くのユーザ、介護施設などからの意見をとりいれることによる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、利用者の面だけではなく、市場、コスト、機能面からも技術改善されることが望まれる。
高NA非球面ガラスレンズの精密射出成形法に関する研究開発 信州大学
荒井政大
信州大学
土井達也
ガラスの粘弾性試験結果を元に、射出成形後のガラスの冷却固化シミュレーションを行い、冷却過程においてレンズ内部に生じる残留応力の分布と時間変化について詳細に調査することを目的とした。有限要素解析により800℃における成形後の冷却シミュレーションを実施して、成形プロセスがレンズの成形形状や内部応力に及ぼす影響について評価した。ガラス転移温度までの一次冷却範囲においては極端な内部応力の上昇は観察されなかったが、冷却プロセスにおける内部応力の発生に対する成形条件の影響を明らかにすることができた。それら点を鑑みて、本研究の当初の目的は80%程度達成されたと判断する。成形条件を動的にコントロールし、さらに高効率な成形プロセスを見出すことが今後の課題である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、粘性測定試験をし、これに基づいたシミュレーションを実施している点は学術的にしっかりと進められおり、意義のあるものと評価できる。一方、シミュレーションの妥当に対する検証が実施されていないので確認が必要と思われる。今後は、社会還元のためには、シミュレーションに基づく最適条件を示し、それを企業側に提示する等の活動を実施することが望まれる。
受容体活性調節タンパクRAMPを標的とした創薬 信州大学
桜井敬之
信州大学
百瀬傅一
我々は、生理活性ペプチド、アドレノメデュリン(AM)と、その受容体活性調節タンパクRAMP2によって構成される血管制御システム(AM-RAMP2系)の制御異常が、癌や糖尿病網膜症における病的血管新生に深く関わっていることを見出し、これを制御する方法を開発することが病的血管新生の治療につながると考えた。RAMP2を治療標的分子とした最初のアプローチとして、本研究ではRAMP2抗体を作成し、その評価系として、ヒト型RAMP2過剰発現細胞株を用いたアッセイ系と、ヒト型RAMP2遺伝子置換マウスを用いたアッセイ系の作成を行った。今後、本研究によって得られた研究基盤をもとに、各種病態モデルにおける治療効果の検討を進め、創薬に向けた研究を展開していく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、誘導型RAMP2ノックアウトマウスの作成、ヒト型RAMP2過剰発現細胞株の樹立、抗体作成系および評価系が確立された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、腫瘍や糖尿病性網膜症のような病的血管形成に対する治療効果を確認することなどが望まれる。今後は、アゴニスト抗体の作成と評価を進めることが期待される。
アルツハイマー病における新規創薬ターゲット検索のための、APP細胞内ドメインの神経毒性の解析 信州大学
中山耕造
信州大学
百瀬傳一
我々は、APPもNotchやDeltaと類似したシグナル伝達機構を持ち、それがアルツハイマー病(AD)の発症に関係していると考えている。APPシグナルを遮断するためにAPPの細胞内ドメイン(AICD)の核移行を阻害するという新しい観点から、ADに対する新規創薬ターゲット分子、具体的にはAICDの核移行を調節する酵素を精製し同定する予定である。現在のところ予定よりやや遅れてはいるが、マウスの脳のライセートから各種のクロマトグラフィーを行ない、部分精製に成功している。今後、更に精製を進め、マススペクトルにより同定する予定である。さらに、この酵素を同定後、データーベースの情報を用いて定法に従ってヒトのcDNAをクローニングし、酵素活性を持つリコンビナント蛋白質を得て、阻害剤のアッセイ系を確立する予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも問題解決のために実験方法を、メタボリックラベルを行う方法に変更した結果、HEK239T細胞を用いて、最も効率よくラベルされる薬剤処理条件を見出し、アッセイのための基質を作製し、AICDの核移行に関わる酵素の部分精製を行った点は評価できる。一方、部分精製した酵素が本当にAICDの核移行及び神経細胞特異的な細胞死に関わっていることの確認が行われていない。今後は、酵素の精製、同定と共に、同酵素が本当にAICDの核移行及び神経細胞特異的な細胞死に関わっていることの確認が必要であり、早期に培養細胞を用いて検証することが望まれる。
省電力かつ大振幅な光スキャナ用高速電磁振動アクチュエータの研究開発 信州大学
卜穎剛
信州大学
土井達也
ミラーと永久磁石を同じ可動部に取付ける構造を有する従来方式の光スキャナ用高速アクチュエータは、磁気減衰損失の影響が大きく、高速での駆動が困難である。これに対して、新しいデュアル共振系をもつ光スキャナ用高速電磁振動アクチュエータを提案し、磁気減衰を受けず省電力、かつ大振幅駆動に着目した研究を行った。 提案構造に基づいて、試作機を製作した。磁気減衰が発生する可動子1は振動ミラーである可動子2を駆動し、回転角はそれぞれ0.2度と4.2度であった。可動子1は可動子2の約20分の1の振幅で駆動ができ、その磁気減衰も20分の1となった。提案構造の有効性を確認された。今後、可動子2の回転角を更に大きくする検討を行う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、試作機を作り、設計の通りの振動振幅を示すことが確かめられた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、バーコードリーダ以外の応用も検討しておくことが望まれる。今後は、課題として挙げられている高振幅化が実現したときに、光スキャナの高精度化と、低消費電力化がどの程度実現できるのかを見積もっておくことが必要である。
歯垢の形成を抑制する希少天然オリゴ糖の化学合成法の開発 岐阜大学
岡夏央
岐阜大学
小田博久
本研究は、歯垢の素となる粘着質グルカンの生成を阻害するリボシトリンの合成法の開発を目標とする。リボシトリンは3つのαリボフラノシドと(S)-ホモクエン酸からなるオリゴ糖であり、その化学合成には効率的なαリボフラノシル化反応が必要である。本研究では、重金属等の有害な試薬を用いずに80%以上の収率、99:1以上の立体選択性で進行するαリボフラノシル化反応を開発した。更に、リボシトリンを構成する3つのリボフラノシドと(S)-ホモクエン酸フラグメントを合成した。これらを上記のαリボフラノシル化反応で結合するとリボシトリンが合成できるため、本研究の目標はほぼ達成できたと考えられる。今後は、これらのフラグメントの結合によるリボシトリンとその3糖部位Rib3の合成、及び特許出願、技術移転を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、リボシトリンの大量生産法の礎となるグリコシル化反応に関して改良を加えたことについては評価できる。一方、当初目的の「リボシトリンの大量生産法の確立」に早急に到達すべく技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、合成反応は多工程になるので、重要中間体などの取得には生物化学的手法も検討されることが望まれる。
ハナノキ葉香気成分の健康増進を切り口とする医薬アロマセラピーへの応用探索 岐阜大学
光永徹
岐阜大学
安井秀夫
ハナノキ葉香気成分の吸入により、ラットの交感神経活動の減退と副交感神経の亢進が認められ、またヒトの脳波による生理実験ではリラクゼーション効果、消化管運動促進効果、脂肪分解促進効果およびエネルギー消費増大効果が期待できる結果が得られた。今後は、本研究の再現性確認や活性成分の特定実験など補足実験の実施、さらには特許出願および国際誌への投稿を計画する。また外部資金獲得および実用化開発を目的として、医薬品・化成品、食品、住宅メーカーおよび公設試との共同研究を実施できるようにコーディネータとともに働きかける。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に減圧式マイクロ波水蒸気蒸留装置を用いたハナノキ葉精油の調製とその化学特性の解明、及び当該精油がラットの交感神経活動の減退と副交感神経の亢進を引き起こすことを解明した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、当初の目標としていた動物を用いたハナノキ葉精油の抗肥満効果及び体内時計調節効果の解明や、ハナノキ葉の季節ごとの原料供給と精油採取物の特性比較についての知見を得ることが望まれる。今後は、速やかな補足実験の実施と特許出願、論文投稿を進めること、また、抗肥満効果の検討を行うことを期待したい。
核酸関連医薬品のヘビードラッグ効果:持続性向上と副作用の回避 岐阜薬科大学
佐治木弘尚
岐阜薬科大学
大森茂嘉
申請者らのC-HをC-Dに効率良く変換する技術を駆使して、塩基選択的に重水素標識した核酸誘導体を合成し、核酸代謝関連酵素に対する親和性や耐性の変化を確認する事で、同位体効果を医薬品化学に展開する事を目指して研究を遂行した。当初目標として掲げた重水素標識核酸誘導体の合成はほぼ達成できたが、基質依存的に発生したトラブルにより、重水素効率の向上や単離収率改善のための反応条件最適化検討などに時間を要し、スクリーニングを十分に行うことができなかった。従って、本課題研究終了後も継続して研究を遂行すると共に、酵素親和性・活性スクリーニングからのフィードバックに基づき、重水素化位置や重水素導入数のチューニングを実施し、新たな核酸医薬の開発に向けた研究開発に結びつけていく所存である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも塩基を選択的に重水素化したプリン、ピリミジンヌクレオシド誘導体を合成することができた点は評価できる。一方、同位体効果にもとづく核酸関連医薬品のヘビードラッグの代謝酵素による反応速度への効果を十分に検討する必要があると思われる。今後は、いろいろな位置を重水素化した化合物を合成し、比較検討することが望まれる。
抗アレルギー活性を有する新規化合物の作用機序の解明 岐阜薬科大学
田中宏幸
本研究では、中鎖脂肪酸を母核とするIgE産生抑制とI型アレルギー反応の両者を抑制する新規化合物の薬理作用を明らかにし、企業との共同研究・医薬品の共同開発を目的として基礎的解析を行った。
その結果、当該化合物はマウス骨髄由来肥満細胞 (BMMC) からのIgE依存性脱顆粒反応を100・Mにおいて約50%程度の遊離抑制作用を示した。また、腹腔内投与によりin vivoにおいてヒスタミンによる血管透過性亢進に対し用量依存的かつ有意な抑制を示した。一方、皮下投与ではIgE産生抑制は見られなかった。加えて、スギ花粉反復点鼻投与によるマウスくしゃみ・鼻掻き行動は当該化合物の点鼻投与により用量依存的かつ有意に抑制されたが、IgE産生には影響が見られなかった。
以上の成績より、当該化合物は非経口投与により、感作部位によってはIgE産生を抑制し、かつ、抗ヒスタミン作用を有することが示唆された。今後は、IgE産生や抗ヒスタミン作用の有無、既存薬との薬効比較などを行い、当該化合物の特性を明らかしていく予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもIgE産生抑制作用とT型アレルギー反応抑制作用を有する新規抗アレルギー薬開発につながる可能性を示した点については評価できる。一方、作用機序解明、IgE産生抑制作用の有無の検討や、腹腔内、経口投与での再現性を確認するなどデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、IgE産生抑制作用の再現性を確認し、作用点を特定することが望まれる。
後眼部疾患において眼内注射を不要とする粘膜付着型リポソーム点眼製剤の開発 岐阜薬科大学
田原耕平
岐阜薬科大学
馬場大輔
本研究では、粘膜付着性ポリマーによるリポソームへの表面修飾により、点眼リポソームによる後眼部への薬物移行量の増大を達成することを目標とした。点眼リポソームによる薬物の後眼部送達には、カチオン性ポリマーであるポリ-L-アルギニン(PLA)による表面修飾が効果的であることが明らかとなった。最適なPLA分子量や濃度を選択することで、良好な分散性を有する表面修飾リポソームを調製することができ、点眼後の網膜への薬物移行量が向上した。PLA修飾リポソームが眼粘膜と相互作用したため、網膜への送達効率が増大したと考えられた。今後は、実際の薬物を封入したPLA修飾リポソームを用いて、in vivoにおける薬理効果を評価する予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にポリマー修飾よる点眼リポソームの後眼部への薬物送達効率の改善など、興味深い知見が得られた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、、データ数・検討項目数を検討することが望まれる。本グループは粘膜付着性リポソームについて実績があり、今後は実際の薬物を入れたリポソームを用いて検討し、in vivoでの薬効と安全性の評価を予定通り実施し、その薬理効果を積極的に検討することが期待される。
高磁場MRIによる食中毒クドアの魚体内分布測定法の開発 岐阜医療科学大学
前田悟司
岐阜大学
馬場大輔
本研究開発の目標は、食品の安全を確保するため、食品中のクドアを非破壊的に検査する方法を開発することである。本課題では、食品中よりクドアを非破壊的に検出すことが可能であり、基本特許の取得が可能となった。今後、技術移転のためにも継続申請を行い事業化への展開をしたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ヒラメ魚体内の食中毒クドアの高磁場MRIによる非破壊的な検出の可能性を確認したことについては評価できる。今後、問題となっている食料品をもとに高磁場MRIでの様々な条件でのデータの積み上げが必要と思われる。今後、さらに研究開発を進めることが望まれる。
検出法の簡易化による迅速なバイオフィルム形成阻害剤スクリーニングシステムの開発 静岡大学
金原和秀
静岡大学
橋詰俊彦
バイオフィルム形成阻害剤の効率的スクリーニングを達成するため、多流路デバイス上に形成したバイオフィルムを、LED光源による励起とフォトダイオードによる蛍光検出により計測する装置を設計・製作し、簡便かつ迅速に測定する手法を開発した。緑色蛍光タンパク質GFPを導入した大腸菌を用いて、デバイス上にバイオフィルムを形成させ、その蛍光を検出した結果、弱いながらも蛍光の検出に成功した。測定に要する時間は10分程度であり、従来の共焦点レーザ顕微鏡を用いた観察と定量化に要する約半日と比較して、数十分の1以下となった。これにより、当初の目標を上回る検出システムの基本設計に成功した。今後は感度の向上を目指した装置改良を行い、企業への技術移転を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、測定感度に問題があるが、測定時間の簡便さと短縮には成功したことについては評価できる。一方、感度の向上と実績を上げることが必要であり、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、産学共同研究を構築して、検出感度の向上を検討されることが望まれる。
がん転移機構を解明するため糖質クラスターの開発と転移メカニズムの解明 静岡大学
村田健臣
静岡大学
中久喜輝夫
高齢化社会により革新的ながん治療法の開発が期待されている。本申請では、がん転移にかかわるP-セレクチンとがん細胞の相互作用を拮抗的に阻害する硫酸化糖質クラスターの構築を行った。その成果として、グルタミン酸ペプチドをコア分子とした硫酸化糖質クラスターの合成法を確立した。さらに、P-セレクチンとの親和性を確認した。また、ポリグルタミン酸をコア分子とした硫酸化糖質クラスターは、がん細胞とP-セレクチン間の相互作用を拮抗的に阻害することを明らかとした。今後は、グルタミン酸ペプチドを利用した硫酸化糖質クラスターの動物試験レベルでのがん転移阻害能を検証するため、マウスがん転移モデルを用いた研究展開に結びつける。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも硫酸化糖質クラスターの合成法を確立し、それによる癌転移(増殖)の阻害作用を確認できた点は評価できる。一方、マウス癌転移モデルを用いるとされているが、具体的な今後の計画に関する詳細は特に示されていない。マウスの癌転移モデル試験法の具体的構築に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、動物試験では再現性や安全性(後遺症等)に充分留意して検討することが望まれる。
C型肝炎ウイルスNS2を標的とした新規抗ウイルス薬の探索 浜松医科大学
鈴木哲朗
浜松医科大学
小野寺雄一郎
C型肝炎ウイルス(HCV)は肝臓病の主要な原因ウイルスである。近年、HCV NS3蛋白質に対する阻害剤が実用化されているが、重要なHCV蛋白質の一つNS2に対する阻害剤はスクリーニングのハイスループット化が難しいことから開発は進んでいない。本研究では、NS2阻害剤スクリーニングを通じて、粒子形成過程を阻害する創薬開発のシーズとなりうる化合物2種類を同定した。阻害効果の最も高い化合物はインターフェロンとの併用効果が示された。一方、薬剤耐性化に繋がりうるNS2変異出現の可能性も見出された。候補化合物類縁体の評価を更に行った後、特許出願及び関連企業への技術移転を進める予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標のうち、HCV阻害活性と細胞障害性を解析し、効果の高い2種についてインターフェロンとの併用効果を調べて良い結果を得た点、及び、HCV粒子形成過程を阻害する新しい機序を明らかにした点、は評価できる。また、抗HCV活性の高い化合物3種を同定し、新規の作用機序をもつことを示した点も評価できる。一方、技術移転の観点からは、未実施のリバビリンとの併用効果やR1-41とインターフェロンとの併用効果を確認することも必要である。 新規作用機序をもつ重要候補化合物を取得されたので、今後は、耐性株のできにくい候補化合物を中心に良い成果を挙げることが期待される。
手指の創傷に対する持続陰圧洗浄装置の開発 浜松医科大学
藤原雅雄
浜松医科大学
小野寺雄一郎
【目標】市場化に向けて手指の持続陰圧洗浄装置を洗練させ、装置の手指装着部分に関して特許を取得し、企業とともに本装置の事業化・実用化に取り組むこと。
【達成度】本装置の手指装着部分に関して、JSTの知的財産戦略センター大学支援グループの先行技術調査を経て、特許申請を行った。加えて、装置の手指装着部分のシール手段に関して、より密閉性の高い方法を考案して企業と共同研究を開始した。
【今後の展開】シール手段に加えて、手袋・チューブ・創面の被覆材に改良を加え、手指装着部分をキットとして製造・販売する体制を構築する。そのために、協力企業とともに、JSTのシーズ顕在化プログラム等に応募して、研究の継続・発展を目指す。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、従来は適用の困難であった手指を対象部位とする新規陰圧閉鎖治療器を開発した点に対し、非常に優れた独創性と既存技術に対する優位性が認められ評価できる。一方、技術移転の観点からは、既に商品化を念頭においた企業との共同研究を実施し、技術移転に向けた準備も着実に進められており実用化が望まれる。今後は、医療機器として事業化・実用化されることが期待される。
アンチエイジング作用を有する新規創薬に向けた細胞長寿命化因子の探索と解析 名古屋大学
饗場浩文
名古屋大学
大住克史
ヒトの健康長寿に貢献する創薬ターゲットを発見することを目標として、本研究では高等生物との類似性が指摘されている分裂酵母を対象に細胞寿命制御に関わる因子の同定と解析を進めた。その結果、「長生き変異株」を複数取得し、Pma1変異株や転写因子Php2の欠失株では、カロリー制限様の生理状態となることで寿命が延長することを示した。他方、高発現時に経時寿命を延ばす「長生き遺伝子」としてG4結合タンパク質Oga1をはじめ複数を同定し、Oga1がTOR経路と相互作用する可能性を示した。このように、期待以上に寿命関連因子の探索と機能解析が進んだ。今後は、構造生物学者、有機合成化学者との共同研究を展開し、見出した因子の生理・構造・機能の理解を一層深めながら、ヒトの健康長寿・アンチエイジングに貢献する分子標的薬のデザイン、スクリーニング、合成を通して創薬展開を図る。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にPma1変異株のメタボローム解析およびトランスクリプトーム解析によりPma1変異株で顕著に発現量ならびに存在量が変化する遺伝子ならびにメタボライトの同定に成功し、寿命延長に関わる因子の解析が進んだ点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、新規創薬に向けた今後の研究開発計画が具体的に検討される段階に至ってはいない。高齢化社会における健康維持に資するための重要な研究なので、今後の研究成果の進展が期待される。
ドライバの個別化を可能にする自動運転のための加減速手法に関する研究 名古屋大学
青木宏文
名古屋大学
押谷克己
本研究は、個々のドライバの先行車に対する感覚に基づく接近状態をモデル化し、将来の自動運転の加減速制御に資することを目的とした。先行車に追いつき時の車間距離、相対速度、加速度のモデル式から数値シミュレーションを行い、自車の滑らかな減速プロファイルが算出できることを示した。ドライビングシミュレータを用いて、先行車追いつき時のドライバの減速行動とモデル式を比較した結果、モデル式は減速行動を模擬している事が確かめられた。今後は、求められたモデル式をもとに実際の車両を用いて加減速制御を行い、その有効性を確認し、実用化に向けた開発を行う。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、相対速度と車間距離の関係を表すモデル式を導出し、ドライビングシミュレータによりその検証が行われたことは評価できる。一方、実用化に向けた基本性能の確認までが達成されたと言えない面もあるので、さらなる技術的検討や実績の積み重ねが必要と思われる。今後は、自動車メーカとの共同研究により、制御則の確立に進むことが望まれる。
内側側頭葉てんかんの単遺伝子モデルマウスを用いた治療標的探索 名古屋大学
浅井真人
名古屋大学
大住克史
脳には海馬という記憶装置があり、ここが病的に活発になる病気が「側頭葉てんかん」であり成人てんかんの大部分を占める。このてんかんは薬による治療がうまくいかず海馬を外科的に切除する以外に有効な治療は発見されていない。我々の研究室では海馬に強く発現する遺伝子をノックアウトしたマウスを解析しているうちに、このマウスがヒトの側頭葉てんかんをきわめて忠実にモデルすることを発見した。今年度は、民生品の新世代防犯カメラを初めててんかん大発作の頻度分析に用い確かに全個体が毎日大発作をおこすことを確認し、薬物投与による大発作頻度への影響調査を始めた。またBDNF/TrkBを側頭葉てんかん治療標的と定め、簡便な細胞系を用いたBDNF測定法を確立した。今後、純粋な側頭葉てんかんを豊富に提供してくれるこのマウスモデルを用いて、側頭葉てんかんの発生原因をさらに深くつきとめ、治療法開発に役立てる予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に側頭葉てんかんについてモデル動物の検証ならびに病態把握が行われ、治療薬効果判定につながる知見を得ている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、産学連携について状況を考えながら積極的にすすめることも検討することが望まれる。今後は、細胞モデル、動物モデルの両面から側頭葉てんかんの病態、治療標的について検討を推進することが期待される。
神経変性疾患のFKBP12を利用した凝集体形成抑制による新規治療の開発 名古屋大学
足立弘明
公益財団法人名古屋産業科学研究所
團迫裕
我々は神経変性疾患の一つである球脊髄性筋萎縮症(SBMA)のトランスジェニックモデルマウスを用いて病態抑止効果のある治療法の開発を目指した。分子シャペロンの発現量が多い神経細胞ではポリグルタミン鎖の延長した変異蛋白への耐性が強く変性を起こさず、異常な蛋白質凝集体形成を分子シャペロンが抑止して病態の形成を防いでいると考えられる。SBMAのモデルマウスでは、イムノフィリンであるFKBP12の発現量が脊髄で低下しており、FKBP12高発現によりSBMAモデルマウスの脊髄で凝集体形成が促進されて、表現型が悪化した。今後は、新規イムノフィリンリガンドであるFK1706を使用して毒性のある凝集体形成を抑制し、新規治療法の開発へつなげたい。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にFKBP12高発現が凝集体形成等にどのような影響を及ぼすかを、培養細胞モデルならびにマウスモデルを用いて詳細に明らかにされた点はSBMAの病態理解に大きく貢献する成果であり、高く評価できる。一方、技術移転の観点からは、既存薬FK1706を用いて治療効果を証明するとしているが、FK1706が有効性を示さなかった場合にはどのような進め方をするのか、検討が必要である。今後は、治療効果判定に使う予定であったFK1706の既存薬であるというメリットを生かした、産業化に向けての展開が期待される。
水晶振動子を用いた超高感度・超ワイドレンジ荷重センサによる生体信号計測 名古屋大学
新井史人
名古屋大学
押谷克己
水晶振動子荷重センサの生体信号計測への応用には温度補償とサンプリング周波数の向上が必須である。本課題では、差動法による高精度な温度補償とサンプリング周波数向上の実現へ向けて、センサの大幅な小型化を目的とした。その方法として、微細加工および接合によるセンサの製作を提案した。接合に使用した接着剤の影響から温度特性に非線形性およびヒステリシスを持つことが課題として残ったものの、結果として、従来と比較して部品点数の低減による組立の低コスト・簡略化、および体積比で約10分の1への小型化を実現した。今後、表面活性化接合などを検討することで、高精度な温度補償とサンプリング周波数向上を実現可能と考えられる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、温度センサーを使用せず差動法による温度補償をして、水晶振動子超高感度荷重センサの開発に成功し、新たな特許も出願されていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、接着剤の影響で、ヒステリシスが生じたなどの問題が明確になり、それら問題点に対する解決方法も具体化されているので、解決による実用化が望まれる。今後は、本装置は生体信号を検出する目的で開発されたが、超小型軽量力覚センサの特徴を生かしたウエアラブルな、福祉介護分野の動作管理モニタとしての用途が大いに期待されるので、組み立てプロセスの簡素化によって信頼性と耐久性にも配慮して、実用化を目指した開発に進展することが期待される。
ドライバの運転経過に伴う疲労の推定とそれに基づく運転支援技術の開発 名古屋大学
大日方五郎
名古屋大学
押谷克己
自動車運転時の疲労や覚醒度を測定、評価することができれば、安全運転に大きく寄与できる。本事業では、今まで明らかにしてきた運転経過に伴う疲労の生理指標に基づいて、検証対象を高齢ドライバに広げた。また、車載器で高い精度の疲労推定を達成するため、複数の生理指標を捉え、疲労を推定するセンシングシステムを検討した。疲労レベルの推定に基づいて、ドライバへの警告や運転支援など、ドライバに対する疲労による危険運転の予防や快適な運転環境を提供する仕組みを構築し、検証した。覚醒度の低い状態を瞳孔径などの生理指標を用いて評価し、ドライバに対し警告を与えることはその効果が期待できることを示した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、疲労評価の検証試験に用いたシステムを車載器に適したシステムに組み上げ、通信機能や記録機能を統合したシステムとして構築したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、臨床実験の実績を積むとともに、安全性と関係するため再現性に関する検討を実施し、実用化に進むことが望まれる。今後は、安全性に関するアシスト機能として実用化が期待される技術であるので、研究の焦点を絞って産学連携に進むことが期待される。
新規閉鎖系培養デバイスによる低血清脂肪由来幹細胞の培養法の確立 名古屋大学
尾崎武徳
名古屋大学
武野彰
本研究では低血清培養脂肪由来間葉系幹細胞(LASC)を閉鎖系で培養するシステムを開発することを目的として検討を行った。当初はビーズ上でのLASCの培養を目指していたが、細胞の接着・増殖が優れず回収率も思わしくなかったため、閉鎖系培養法の異なる手段として接着細胞用の細胞バッグの開発、さらには脂肪検体採取時から細胞製剤の回収までの完全閉鎖系ラインの開発の検討を開始した。細胞バッグはバッグの内側両面に接着可能な試作品の作成を企業へ依頼し、培養検討を行った。結果、培養は問題なく行えたものの、回収時に細胞がシート状にはがれてしまったため現在この点を改良中である。閉鎖系ラインの作成は企業と提携し、現在デバイスおよびシステムを開発中である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初の目標は達成できていないが、LASCを閉鎖系で培養するシステムを開発するというコンセプトについては評価できる。一方、技術が確立され、研究成果が応用展開されれば、強皮症などの難病の治療に貢献できる可能性はあるので、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、細胞バックからの細胞の回収方法の改良など、解決しなければいけない課題対策を具体的に立案されることが望まれる。
脂肪由来間葉系幹細胞の新規Xeno-Free培養法の開発 名古屋大学
勝野敬之
名古屋大学
天野優子
本研究では脂肪由来間葉系幹細胞(ASC)の臨床応用を目指し、培養液中の異種由来成分であるFBSを除去し、ヒト血清を用いた培養方法の確立を目指した。過去に健常人血清での培養では十分な細胞数が確保できなかったため、今回は市販されているAB型ヒト血清を購入してLASCの培養を行い(HS-LASC)、その機能をFBS-LASCと比較検討を行った。その結果、ヒト血清を用いても低血清培養は可能であり、HGF分泌能も保たれることが示された。しかしながら本実験においてはヒト血清を細胞のprimaryから使用する検討は行えなかったため、今後の研究課題としている。また同時にヒト血清のドナーを複数用意し、ロット間による差がどの程度LASCの機能に影響を与えるか、またサイトカインアレイによる細胞機能のチェックを行っている。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、Xeno-free培養系により、期待される増殖能、サイトカイン分泌能が得られることが確認された点はについては評価できる。一方、現在の主流は組み替えヒト由来増殖因子ならびに自己血成分による培養技術の確立であり、技術移転には本技術の有意性を示す技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、至適な培養系の確立にはなお時間を要すると考えられるが、網羅的解析法も視野に入れて、研究を発展されることが望まれる。
感熱応答性ポリマーを用いたマイクロ・ナノマニピュレーションデバイス創生 名古屋大学
竹内大
名古屋大学
押谷克己
本本研究では、我々がこれまでに作製してきた感熱応答性ポリマー溶液のゾル‐ゲル相変化を用いたマイクロマニピュレーション用プローブデバイスについて、プローブ先端径の縮小(5ミクロン以下)及び誰もが特別な訓練を必要とせずに使用可能な実用性の高いデバイスを開発することを当初の目標としてきた。
プローブ先端径の小型化については、先端径を50ミクロンから20 %程度減少した40ミクロン程度まで縮小できたが、当初の目標である5ミクロン以下までには至らなかった。また、誰もが使用可能なデバイスとすることについては、特に医学・生物学分野への実用性を示すために動物細胞を用いたデバイスの評価を行い、細胞の生存状態を保持したまま細胞を把持し、移動させることが可能であることを実証した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも細胞の生存状態を保持したまま細胞を把持・移動させたことは評価できる。一方、プローブ先端径については、改善はなされたものの目標は達成されていない。また、電源を含めたプローブデバイスのパッケージングについては可能性を示した段階であり、さらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、設定した目標を達成できれば医学・生物学分野への応用可能性が高く、再生医療などへの社会還元に大いに期待できると考えられるので、実用化に向けた方向で検討することが望まれる。
卵黄IgY抗体の増産技術の開発−卵黄輸送能が増強されたニワトリIgY変異体の作出− 名古屋大学
村井篤嗣
名古屋大学
鈴木孝征
本課題では、感染防御機能を有する卵黄IgYの増産技術を開発するために、IgYの遺伝子配列に変異を加えIgYの卵黄輸送能の強化を目指した。ニワトリIgYの重鎖と軽鎖の発現ベクターを作出し、ニワトリIgYを作出した。さらに重鎖のTyr363を別のアミノ酸に置換した変異体を作出した。変異体の中に、卵黄輸送量が減少するものを見出したが、増加したものを見出すことはできなかった。今後は、基本骨格となるニワトリIgYの作出系を見直すとともに、アミノ酸置換を行う標的アミノ酸の数を増やし、網羅的なアミノ酸置換を行うことにより、高卵黄輸送能を持つIgY変異体の作出を目指す。 当初目標とした成果が得られていない。中でも培養細胞で発現したIgYの卵黄取り込みが極めて低い点での技術的検討や評価が必要である。今後は、免疫グロブリン分子合成とプロセッシングの過程をより深く学ぶことが望まれる。
認知症・タウオパチーの根本治療を志向した微小管切断酵素阻害の探索 名古屋大学
廣明秀一
名古屋大学
鈴木孝征
タウタンパク質は神経細胞内で微小管を保護する役割を担っている。アルツハイマー病などでタウが異常凝集・沈殿して失活した細胞の細胞死を、微小管切断酵素カタニンが加速しているという仮説がある。著者らはこれまでにカタニンの微小管結合ドメインの立体構造決定に世界に先駆けて成功している。立体構造を利用してカタニンと微小管の結合を阻害する薬剤が開発できれば、タウオパチーによる神経死を阻止できる可能性がある。そこで著者らは、ファージディスプレイ法によりP60に結合するペプチドを同定した。KP60のNMRシグナルを指標とした相互作用アッセイより、KP60への結合部位を決定した。更にもっともよく結合するK60BP3に存在する特徴的なPro残基をAlaに変異した変異ペプチドK60BP3PA / K60BP3AAを作成し、KP60との結合を見た。その結果、K60BP3とKP60との結合には、PXXPモチーフは必ずしも必要でないことがわかった。今後はペプチド側に同位体標識を施してK69BP3のどのアミノ酸側鎖がKP60に接触しているかについて、NMRを用いて情報を得る。これにより、KP60阻害ペプチドの論理的設計が可能となる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に積み重ねられた確固たる技術を用いて、KP60の微小管ドメインに強く結合するペプチドを探索を推進した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、KP60による微小管切断に対する阻害活性を解析するための実験形を確立することが望まれる。今後は、よりKd値の低いペプチドの探索が期待される。
抗炎症性/組織再生型M2マクロファージを誘導する新規タンパク複合体による骨再生研究 名古屋大学
山本朗仁
名古屋大学
松谷悦哉
本申請研究では、「新規M2マクロファージ(φ)誘導複合体」による骨再生治療の開発をめざした。具体的には、ラット頭蓋骨欠損モデルにコラーゲンスポンジに含浸したM2φ誘導因子を留置し、骨形成能やメカニズムの詳細を検討するとともに、薬理効果を示す最小有効量を検討した。研究目標をほぼ達成し、PCT出願を完了した。今後はM2φ誘導因子の薬効を担う最小ドメインを決定し、オリゴペプチドによる代替えを検討する。物質特許取得も視野に入れ、M2φ誘導の最適化を計るとともに、臨床応用に必要なGMPグレード製剤の開発経費軽減に取り組む。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に抗炎症性骨再生因子について、最小有効量、モデル動物を用いた試験が完了しており、当初の目標は達成していると評価できる。技術移転の観点からは、因子を投与した際の、骨形成量、炎症サイトカインの抑制活性など十分な効果が認められる。したがって産学協同研究につながる可能性は高い。関節リウマチや歯周病など炎症を伴う骨病変では、骨形成が著しく低下することが知られている。このような病態を改善する新たな治療薬あるいは治療方法となる可能性が示唆される。今後の高次評価の進展に期待したい。
細胞生物学研究分野での日常的利用を初めて可能にする細胞パターニング装置の開発 名古屋工業大学
出口真次
名古屋工業大学
沖原理沙
MEMS微細加工を利用した従来法を用いずに、低コストかつ正確に細胞のマイクロパターニングを行うことができる装置を開発することが目標である。低真空条件下で選択的放電処理を行うことができる機械装置を試作してその性能を調べた。アクチュエータの駆動により細胞培養基板の任意箇所の表面改質が可能であることを確認した。ただし基板の固定方法などが不十分であり、個々の細胞の大きさのスケールでは位置精度が不十分であった。しかし従来法よりも低コストでマイクロパターン基板を大量生産できる可能性があることを実証できた。今後は特に基板の固定方法について再設計を行って位置精度を高め、細胞生物学の問題に適用することを計画している。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。 従来法よりも低コストでマイクロパターン基板を大量生産できる可能性があることを実証し、また簡便な方法で細胞が発生する力等を可視化しかつ計測する方法に関して新たに特許を出願したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、パターニングのための位置制御のゆがみを修正することなどの次のステップへ進めるための技術的課題を解決することが望まれる。今後はパターニングを基礎としつつ、細胞発生力の計測法を活かして企業とのマッチングにより実用化に進むことが期待される。
多様な利用形態に柔軟に対応する自動伴奏リハビリ支援システムの開発 名古屋工業大学
酒向慎司
名古屋工業大学
太田康仁
楽器の演奏は趣味として楽しむだけでなく、複雑な身体動作を伴うことから身体機能や脳機能のリハビリとしても期待できる。楽器演奏によるリハビリ支援で重要なポイントは、支援の度合いが人それぞれであり、利用者の要望や制約に柔軟に対処できることが重要となる。利用者を問わない楽器演奏によるリハビリ支援システムの構築を念頭に、楽器の違いに頑健なスペクトルテンプレートの自動適応手法の検討、テンポ推定精度の高度化を検討するほか、実際の演奏におけるテンポ推定誤りの影響などを調査した。また、計算量と性能の関係を調査するとともに、実時間処理に向けたアルゴリズムの改善を行った。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも様々な楽器に対応可能で、かつ演奏中の揺れに頑健に対処可能な演奏追跡手法を開発し、利用者を問わない楽器演奏によるリハビリ支援システムにおいて一定の前進を達成しているについては評価できる。一方、技術的な課題として、実用上大きく外れたテンポでのテンポ推定の性能評価が重要であること、スマホ実装のために処理の並列化が必要であることに対する技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、リハビリ訓練に限定せず、広く、音楽愛好家のための自動伴奏システムとされることが望まれる。
抗肥満薬HSD-016の低コスト製造方法の開発 名古屋工業大学
柴田哲男
名古屋工業大学
沖原理沙
抗肥満薬HSD-016は、現在、ファイザー製薬が臨床試験を実施している経口摂取が可能な医薬品である。このHSD-016前駆体であるケトンに対して、不斉トリフルオロメチル化反応を行った。この反応は、出発原料から3段階で目的とするHSD-016を合成することが可能である。我々が独自に開発したキナアルカロイド由来のキラル第4級アンモニウム塩とテトラメチルアンモニウムフロリドのコンビネーション法による不斉トリフルオロメチル化反応を用い、触媒コントロール、すなわちシンコナアルカロイド触媒の徹底的な骨格チューニングにより、不斉収率79% eeで目的とするHSD-016を得ることに成功した。目標値90% eeをめざし、今後も研究を続行したい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に光学純度は目標には届かなかったが、92%収率、79% eeの成果が得られたことは、関連反応も同様に進行する可能性が高いことを示している。一方、技術移転の観点からは、ケトン体へのCF3アニオンのエナンチオ選光学純度、不斉触媒のコストや回収再利用可能性、極低温反応条件などに関して、更なる改良が必要である。ケトンへの触媒的求核的CF3化法の実用性を高めることは、含フッ素医薬品の製造コスト削減に繋がる重要な課題であるので、今後更なる研究の発展が期待される。
薬理活性物質タウリン類縁体の効率的合成法の開発 名古屋工業大学
中村修一
名古屋工業大学
沖原理沙
腎・肝機能障害、高血圧などに対し薬理活性を有するタウリン誘導体の効率的不斉合成手法の開発をめざし、アジリジンへのトリメチルシリルイソチオシアネートによる不斉開環反応を検討した。このようなアジリジンへのイソチオシアネートによる不斉開環反応は、これまでにまったく報告されていなかったが、我々が開発したイミダゾリン−リン酸型新規不斉触媒を用いることで、高エナンチオ選択的に反応が進行し、光学活性なβ−アミノチオシアネートを得ることに成功した。また、得られた化合物からタウリン誘導体への高効率的な変換にも成功した。今後は研究紹介を随所で行い、連携企業を見つけた後、企業との共同研究によって、腎・肝機能障害、高血圧に効果を生じるタウリン誘導体の探索合成を行いたい
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、医薬品開発や新たな合成技術として、成果の社会還元を強く意識した目標を達成し、特許出願を踏まえて不斉合成触媒としての製品化を検討していることが評価できる。一方、技術移転の観点からは、基礎反応だけでなく医農薬などで具体的な標的を見出し、スケールアップ等の工業化を目的とした目標の設定とその取組みによる成果の実用化が望まれる。今後は、水系合成の優位性をより具体的に明示するなどで産学連携や技術移転、本成果の工業化へ繋げられることが期待される。
間質性肺炎および炎症マーカーを指標とする新規間質性肺炎薬剤スクリーニング法の上市を目指した研究 名古屋市立大学
金澤智
公益財団法人名古屋産業科学研究所
團迫裕
間質性肺炎モデル動物としてD1CCホモ型マウスの販売が2013年に開始された。次の目標は、D1CCマウスを用いたより付加価値の高い薬剤スクリーニング系の樹立である。現在D1CCマウスを用いた間質性肺炎発症モデルが持つ問題点は、その発症時期が制御できない点にある。そこでD1CCホモ型マウスが示す間質性肺炎が任意の時期に長期間(慢性化)発症できるモデル系の構築を目指した。本研究の結果、発症した間質性肺炎が、長期間持続(慢性化)する誘導系の樹立に成功した。一方その発症率は、従来法によりD1CCホモ型マウスが示す70%には到達しなかった。今後この発症率を上げることで、上市を目標としたモデル系の樹立が可能であることが明らかとなった。基本的なモデル概念は確立することができたので研究と並行して特許化を進める。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもホモ型D1CCマウスにブレオマイシン、マイクロバブル混合液と超音波処理によって間質性肺炎を慢性的に発症させることができた点については評価できる。一方、発症率は従来法よりも低く、血清マーカーと肺炎の病態との関連性も明らかにはなっていないなど、解決しなくはいけない課題も残されており、さらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。誘導型のモデルではなく、自然発症型のモデルであるところに重要性があるので、今後は、マウスのstrainを変えるなどして発症率の高いモデルを作ることも考慮してはどうか。
脳卒中後の手指の拘縮と障害言語機能を改善する高反発力クッショングリップの開発 名古屋市立大学
西野仁雄
我々が開発した高反発力クッショングリップは脳卒中などの後遺症である手指の拘縮を短期間で改善した。また言葉を失っていた人の中には、顔の表情が柔和になり簡単な言葉を話すようになった人が認められた。
本研究では、より効果が強く、より安全安心な数種類のグリップを開発した。またバイブレーション機能を付加したグリップも開発した。
手を握ったり緩めたりする運動は脳機能を活性化させる最も簡便で有効な方法であるので、本グリップを普段から使用すると、拘縮の改善はもとより認知症の予防にもつながることが期待される。
このように本研究の所期の目標を達成した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、高反発力クッショングリップを試作し、手指の拘縮を短時間で改善できることを確認したことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、同一の患者でも回復の程度に合わせて、最適なグリップに変えていく必要があり、適切な指導法を確立することで実用化が望まれる。今後は、認知症予防に資する可能性をさらに明確化する研究を期待する。また、大関節の拘縮予防についても研究展開されることが期待される。
骨格筋量を維持・増加させる生薬「キクカ」の有効成分の探索 名古屋市立大学
大澤匡弘
名古屋市立大学
羽田野泰彦
本研究では、高齢者の活動性を低下させる重大な変化である、サルコペニアと呼ばれる骨格筋量の減少とそれに伴う筋力の低下を改善する物質を、生薬成分から単離することを目的とした。骨格筋量を著しく低下させるメラノーマ接種マウスを用いて検討を行った結果、生薬成分の「キクカ」に骨格筋量の低下を抑制する効果を見出した。また、キクカに含まれる有効成分の単離を行ったところ、ヘキサンに溶け出す分画の中に、非常に強い効果を示す成分が含まれることが、細胞を用いた研究でわかった。今後、この非常に強い効果を示す成分が、動物モデルにおいても、キクカと同様の作用を示すか否かについて検討を行い、サルコペニア改善作用を示す化合物の同定をし、栄養補助食品としての販売の可能性を探りたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもサルコペニアに対する新規治療薬のシーズを見いだすことは、社会に対する貢献は大である。また、PPARγ活性化に対するスクリーニング法を見いだした点は評価できる。一方、活性成分が未知の化合物であれば計画通りに実施できるが、機知の化合物の場合は研究の見直しが必要と思われる。早急に化合物の同定を行うべきと考える。研究の方向性は定まっているように思えるので、今後も研究を続けることが望まれる。
Ready-to-made3次元骨再生キットの開発 愛知学院大学
成瀬桂子
骨再生機能は加齢により低下するため、高齢者における有効な骨再生法の確立は、高齢者の健康寿命延伸にとってきわめて重要な課題になる。
本研究の目的は、高度な設備を必要とせず行うことが可能で、高齢者においても強固な骨が再生する骨再生キットの作成を目指すことにある。本研究では、非動物由来の化学合成ペプチド(Panacea Gel(SPG178)、 メニコン社、名古屋)をスキャホールドとし、若年時の抜去歯より凍結保存することができる歯髄幹細胞(DPSCs)を用いた。我々は従来の方法より優れた骨分化誘導条件を見出し、凍結歯髄幹細胞を融解・培養した細胞を用いて3次元骨分化を誘導することができた。また、SPG178の骨形成スキャホールドとしての有効性については、特許出願を行った(特願2014-19237)。
今後は、SPG178、骨分化誘導因子、DPSCsについて様々な形で組み合わせた数種類の骨形成キットの作成を予定している。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、SPG-178 の 骨形成スキャホールドの有効性については、特許を、出願する事が出来た技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、幹細胞を一旦培養してから骨誘導するキットの作製に関しては、特許化の可能性が有り実用化が望まれる。今後は、骨の形成率が臨床的に充分な程、高いように、分化率の改善、最適化を検討されることが期待される。
ロコモティブ症候群の予防化合物の探索 中部大学
大神信孝
中部大学
岡島敏夫
【目的】 申請者は野生型マウスに低周波騒音曝露すると内耳の前庭機能が低下し、それが歩行・平衡感覚機能を低下させ、ロコモティブ症候群を誘発させる事を見出した。本研究では、この新技術を用いて本症候群の予防化合物の候補を見出すことを目標とする。
【達成度】60%;モデルマウスを用いて、ペプチドやフラボノイド系化合物の予防効果を検討したが、症状を20%未満の低下に抑える事の出来る、有望な候補化合物を得るに至らなかった。一方、平行して実施した内耳前庭のメタロミクス解析により、低周波騒音曝露は内耳の微量元素を部分的に減少させる事が示唆された。
【今後の展開】発症機序の解明および予防化合物の選別を更に進めたい。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、基礎研究において、低周波騒音曝露によるロコモティブ症候群の発症機序の一端を明らかにする事が出来た点については評価できる。一方、企業等との共同研究を進めるためには、候補物質が一つでも見つかるか、このモデルマウスが本当に人のロコモティブ症候群のモデルに相応しいと証明できれば非常にインパクトは強く、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は候補物質の探索においては機能性物質などに詳しい研究者の助言などを取り入れるのも方策と考える。また投与方法なども専門家の意見を参考にされることが望まれる。
新規遺伝子Creg1およびその産物の肥満/糖尿病改善剤への応用開発 中部大学
山下均
中部大学
岡島敏夫
Creg1発現培養細胞の培養液からCreg1蛋白質を精製し、浸透圧ポンプを用いて高脂肪食摂取肥満マウスに2週間投与した。Creg1投与による抗肥満効果は確認できなかったが、生食投与群に比べてCreg1投与群において皮下白色脂肪組織の褐色脂肪化と脂肪肝の改善が確認された。また、Creg1投与群において血中脂質レベルの低下傾向と肝中脂質の有意な減少が認められた。これらの結果は、Creg1によるメタボリックシンドロームの病態改善作用を示すものと考えられた。今後は、対外発表や他制度への応募を積極的に行うとともに、企業との連携を強化し巾広く利用できるメタボ予防・治療剤としての研究開発を行っていきたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、Creg1蛋白の受容体であるIGCreg1蛋白の白色脂肪細胞から褐色脂肪細胞への分化誘導は、アデノウイルスベクターを用いた局所投与およびインヒュージョンポンプを用いた全身的投与にて確認されている点。また脂肪肝の改善も確認されている点は評価できる。一方、Creg1蛋白の白色脂肪細胞から褐色脂肪細胞への分化誘導と脂肪肝の改善の分子機構がブラックボックスであり、機序の解明が必要と思われる。今後は迅速な研究計画の実施が望まれる。
呼気による血中薬物動態モニタリングシステム 中部大学
山本敦
中部大学
岡島敏夫
呼気中からの薬物捕集による非浸襲性治療薬物モニタリングを目的として、エアロゾル物質の捕捉に適した吸着剤の開発・評価を行った。投与薬物は、呼気中のエアロゾルに溶解、あるいは付着して排出されると考えたからである。ネブライザーを使ったモデル実験によって、吸着には基材表面の親水部と疎水部のバランスが重要であることが判明した。ここで合成・評価した吸着剤を使って、テオフィリンを投与したラットからの呼気採取による動物実験を行った。難揮発性の薬物が呼気中に排出されることをTOF-MS分析により確認し、血中と呼気中の薬物濃度には相関があることも明らかとした。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、テオフィリンに対する選択的な固相吸着剤を作製した成果に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、定量的検討が不足しており、応用に向けた検討などでの実用化が望まれる。今後は、テオフィリンに留まらず、呼気中の測定がより有用な薬物を選定して、研究をすすめることが期待される。
酵素抗原法への応用をめざしたHelicobacter pyloriのビオチン化抗原ライブラリの構築 藤田保健衛生大学
水谷泰嘉
藤田保健衛生大学
羽田野泰彦
Helicobacter pylori(Hp)の蛋白ライブラリ構築を目標として、288種類の遺伝子を対象にクローニングを実施した。クローン化した遺伝子をもとに、コムギ無細胞系によりビオチン化蛋白を合成した。最終的に226種類の蛋白からなるライブラリを構築できた。このライブラリを対象に、胃癌患者血清および胃粘膜組織抽出液でAlphaScreenを実施したところ、複数の蛋白で反応シグナルが検出され、構築した蛋白ライブラリを抗原スクリーニングに利用できることが確認できた。今後、蛋白合成に至らなかった遺伝子をクローニングして、ライブラリの規模を拡大するとともに、構築した蛋白ライブラリを対象に、患者血清および病変組織抽出液を用いて、病態マーカー抗原をスクリーニングしていく。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもコムギ無細胞系、AlphaScreen法によるHp抗原蛋白ライブラリの構築方法を確立した点は評価できる。一方、病態特異的な組織病態マーカーの探索研究に必要な実験系は今回の成果と合わせて確立したものといえるが、酵素抗原法により、病変部胃粘膜で産生される抗体の標的抗原を可視化し、胃癌などの特異的・病態評価可能なマーカー抗原を探索することが必要と思われる。今後は、胃癌の胃粘膜組織におけるリスクバイオマーカー候補抗原をみつけることが望まれる。
ループス腎炎のバイオマーカーの同定と新たな診断法の開発 藤田保健衛生大学
三浦惠二
公益財団法人名古屋産業科学研究所
羽田野泰彦
本研究の基本技術であるCSP-ELISAで、抗細胞表面自己抗体価が高値を示すループス腎炎患者血清を用い、免疫沈降法により検出できた55kDaの新規自己抗原の同定を本研究の目標とした。質量分析で、Xタンパクが同定できた。市販の抗Xタンパク抗体をELISAウェルにコートし、可溶化膜タンパク画分を反応、さらに患者血清を反応させるサンドウィッチELISAで陽性を示す検体が確認できた。これは、Xタンパクが、新規自己抗原であることを意味したが、陰性の検体もあり、別の自己抗原の混在が示唆された。今後は、さらに別の成分の同定を進め、判明した成分によるELISA系を構築することで、新たな診断法として特許出願できると考えている。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、Xタンパクが同定でき、サンドウィッチELISAとの相関は低いものの、Xタンパクが自己抗原候補として示されたことから、腎炎の早期診断法に結び付く可能性が示唆されたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、自己抗原候補としてXタンパクが同定されたことから、企業側からのアプローチもあり、産学共同研究へ進めることで実用化が望まれる。今後は、新たなバイオマーカの発見に繋がる可能性があるため、戦略的な特許取得や共同研究に向けた展開がされることが期待される。
セロトニントランスポーターのユビキチン化による代謝機構に注目したうつ病の診断法の開発 名城大学
毛利彰宏
名城大学
福田雄一
末梢血中におけるユビキチン化セロトニントランスポーターの発現がうつ病の診断や治療薬選択の指標となるかどうか、ボランティアの血液サンプルを用いて検討した。血小板中のユビキチン化セロトニントランスポーターは少量でも検出・定量が可能であった。日内変動、日間変動、および性差は認められず、室温保存でも安定して測定できた。さらに、血小板中のユビキチン化セロトニントランスポーター量は、うつ病症状の気質と相関が認められた。うつ病患者での検討については、審査中であり実施できなかった。それらを総じて、本研究の達成度は80%である。バイオマーカーを用いたうつ病の診断や治療薬選択への開発基盤を築くことができた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、技術的な課題とヒト血液中のユビキチン化セロトニントランスポーター活性の日内変動、日間変動を明らかにできたことについては評価できる。一方、ユビキチン化セロトニントランスポーター活性の測定法が、より精度の高いものとするための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、うつ病患者サンプルを集めるための倫理委員会の許可を事前に申請するなど、事前準備を十分に行うことが望まれる。
噴霧急速凍結乾燥法による粉末微粒子設計を基盤としたリポソーム吸入粉末剤の開発 名城大学
奥田知将
名城大学
松吉恭裕
粉末微粒子化後も平均粒子径で約120 nm、多分散性指数で約0.13のリポソームの粒子物性を保持するとともに、吸入器の性能に依らず分散性の指標であるOutput Efficiencyで約90 %、肺到達性の指標であるFine Particle Fractionで60 %以上の優れた吸入特性を発揮するリポソーム粉末微粒子の開発に成功し、当初の目標を達成することができた。また実薬を封入したリポソームについても粉末微粒子化の検討を試み、粉末微粒子化後もほぼ同等の薬理活性ならびに肺内滞留性を有することを明らかにした。本研究で得られた成果について学会発表・論文投稿を行うとともに、今後は他の研究開発支援制度を基にして実験動物を用いた治療効果・副作用の評価に進み、開発したリポソーム粉末微粒子の有用性を更に明確化していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、噴霧急速凍結乾燥 (SFD)法で微粉末粒子が製造ができた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、製剤化による有効性、安全性改善であるが、製剤が凍結乾燥品のため、リポゾームの吸湿性など安定性も検討すべきである。 薬物動態についても明確しておくことが望まれる。 SFDで製造しているため、吸湿などにより、製剤の劣化などが懸念されることから、製剤の安定性(経時変化)を調べることが望まれる。今後は、吸入肺投与での薬物動態を検討し、有効性と安全性との関連を明確にすることが期待される。
セロトニントランスポーターのユビキチン化による代謝機構に注目した新規抗うつ薬の開発 名城大学
野田幸裕
名城大学
福田雄一
プロテインキナーゼ C(PKC)活性化薬はイミプラミンと同様に、セロトニントランスポーターのリン酸化を介してセロトニントランスポーター代謝(ユビキチン化)を調節する新規抗うつ薬としてなりうる可能性が見出された。一方、MAGE-D1(Melanoma antigen gene-D1) 遺伝子欠損マウスを用いた抗うつ薬候補化合物のスクリーニングは実施できなかったが、幼若期社会性敗北ストレス負荷マウスにおいても、MAGE-D1 遺伝子欠損マウスと同様のうつ様行動やセロトニントランスポーターの代謝機構変化を見出した。したがって、候補薬物のスクリーニングのモデル動物として、およびセロトニントランスポーター代謝機構に関わる分子のバイオマーカーとしての妥当性が検証できた。以上のように、PKCを標的とした新規抗うつ薬としての創薬およびうつ様症状の評価・診断の開発基盤を築くことができ、本研究の達成度は80%である。今後はPKCを活性化するような既存の抗うつ薬をスクリーニングして、新規治療薬の開発およびうつ様症状の評価・診断の開発を目指す。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも新規の抗うつ薬のターゲットなり得る分子機構が明らかになりつつある点は評価できる。一方、PKCの活性化とセロトニントランスポーターのユビキチン化という細胞内の機構が明確になりつつあるが、PKCには多くの分子種がありかつ幅広い細胞に存在していることから、神経系細胞への特異性の検討などさらなる考慮が必要と思われる。今後は、薬物の評価系としてのモデルを早期に確立されることが望まれる。
新規細胞培養添加剤の細胞増殖活性の改良及び適用細胞種の拡大 愛知県水産試験場
黒田拓男
愛知県水産試験場
松井正春
細胞培養分野において、培養添加剤として牛胎児血清が広く利用されているが、当血清の使用にはプリオンの混入等の安全性の問題を抱えている。本研究課題は、牛胎児血清に代わる新たな安全性の高い培養添加剤の開発を試みるものである。今回、開発した培養添加剤が利用できる細胞種の拡大を目指し、増殖活性の改良に取り組んだ結果、接着基質への処理によって改善できることが分かった。一方で、増殖活性の維持という点で課題がみつかった。実用化に向けては当課題の解決が必要であり、今後は今回得られた知見を基に、適切かつ効率的な処理方法を開発し、さらなる高い汎用性と増殖活性の安定化を目指す。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも新規細胞培養添加剤の実用化に向けて、一定の成果を上げている点は評価できる。一方、本来的に魚類の体液が、哺乳動物細胞の接着や増殖に必要な因子を保有しているかという種差の検討の視点が重要と思われる。また、水泡眼1匹から少量のサンプルしか採れないことから、大量調製法の確立やロット間差の制御など、実用上大きな課題がある。今後、通常の培地では培養が困難な細胞に対して、本培養添加剤が有用な例を見出すことや、接着細胞に拘らずに浮遊細胞の培養も検討することなど技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
光透過性を可変できる保育器応用に資する調光デバイスの開発 独立行政法人産業技術総合研究所
田嶌一樹
独立行政法人産業技術総合研究所
渡村信治
本事業における目標は調光用保育器に適する調光機能を有する材料開発ならびにプロセス開発が主である。実施例として薄膜材料を用い、方法としてクオリティの高い材料作製が可能であるマグネトロンスパッタリング法を選択した。種々材料性質の影響因子として、成膜時印可電圧、真空度、ガス混合比、膜厚、構造などがあり、特に当該開発において調光機能としての切り替え速度は、成膜時圧力が大きな要因であり、圧力を制御することで円滑な調光機能を発現する薄膜作製条件を見出した。 当該用途においてはポリカーボネートを基材として用いるためフレキシブルデバイスの作製も可能とした。連携研究者は本デバイスの保育器への適用可能性を調査した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ポリカーボネート基材上に薄膜を作製することにも成功しており、技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、臨床応用を考えた場合、薄膜の調光性能について、何を持って最適化されたかという指標を明確にし開発にあたることが重要で実用化が望まれる。今後は、臨床現場と連携し、開発を進められることが期待される。
セルロースナノファイバーを用いたイムノクロマト用着色剤・抗体保持担体の開発 あいち産業科学技術総合センター
伊藤雅子
あいち産業科学技術総合センター
中莖秀夫
セルロースナノファイバーを用いた新規なイムノクロマト用の着色剤・抗体保持担体の開発し、さらに新たなイムノクロマト方式を考案した。イムノクロマト用の基材を通過するサイズのセルロースナノファイバーは、湿式粉砕することで調整できた。反応染料による染色で、鮮やかな色合いに染色できた。また、染色後も基材を移動し、移動ラインを目視で確認できた。セルロースの表面処理を行うことにより、抗体の吸着量を高めることができた。調整した着色セルロースナノファイバー担持担体に抗体および抗原を結合させ、基材上で抗原抗体反応を行う事を確認した。今後は、本方式の精度の向上とその他のアレルギータンパク質をターゲットとして開発をする予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、イムノクロマト用着色剤・抗体保持担体の開発に向かって、粒子径や染色など基礎部分を解決したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、免疫測定に関するデータの蓄積や汎用性を高めることなどでの実用化が望まれる。今後は、特許出願を急ぐと共に、実試料を用いて抗原抗体反応における問題点を抽出することが期待される。
e-テキスタイルにおける新規接続部材の開発 あいち産業科学技術総合センター
島上祐樹
あいち産業科学技術総合センター
池口達治
e-テキスタイルにおける新しい接続手法を確立するため、接続部材の開発、およびその耐久性、センサデバイスとの接続評価をおこなった。
導電性ファスナー(特許出願済)に各種導電性繊維を繋ぎ、接続方法を工夫することによって左右の引っ張り等の変形、洗濯による接続特性の向上を確認した。
また、使用する導電性繊維の電気特性を把握することで、導線として、もしくは信号線として機能することが分かった。
以上の結果を基にLEDの光り方を制御できるe-テキスタイルを試作した。ファスナーの開閉や刺しゅうをタッチすることで袖についたLEDが点灯、点滅が切り替えられる。配線等が繊維部材であるため意匠性も優れ、軽量なのが特徴である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、導電性繊維の接続性としての接続抵抗、接続部材を使ったeーテキスタイルの試作の目標を達成は評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許の出願後、論文等の発表を行うことが望ましい。今後は、産業界との共同研究により実用化がなされると思われるが、エンドユーザの意見も取り入れて開発を進めることを期待します。
乳房超音波画像診断における鑑別支援システムの構築と臨床応用への可能性の検証 三重大学
中山良平
三重大学
加藤貴也
本研究では、乳房超音波画像における腫瘤非形成病変の病理組織型の可能性を評価する鑑別支援システムを構築し、その有用性を明らかにした。まず、11病変形態に対する医師の主観的印象データと最も相関が高い定量化手法を明らかにした。そして、それらの形態的特徴量を用いた人工ニューラルネットワークにより病理組織型を分類し、浸潤がん91.0%、非浸潤がん77.8%、良性疾患94.1%の正答率が得られた。また、観察者実験の結果、鑑別支援システムを用いることにより観察者のROC曲線下の面積(診断能)は、 0.840から0.883に有意に増加した。今後は、臨床評価試験を実施し、臨床応用可能なシステムの確立に取り組む。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、医師の主観的印象データと最も相関が高い定量化手法を明らかにし、人工ニューラルネットワークにより病理組織型を分類し他結果、浸潤がん91.0%、非浸潤がん77.8%、良性疾患94.1%の正答率が得られた技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、経験の浅い医者に対する診断支援装置としては、一定のニーズ、市場が期待されるので、症例数を増やして、正答率を上げるアルゴリズムを完成させることで実用化が望まれる。今後は、診断支援装置としての市場ニーズに応えるためには、開発企業との連携が必要である。コーディネーターとのコミュニケーションを通して、企業との連携を進めていくことが期待される。
眼底画像を用いた視神経乳頭の定量解析手法の開発 滋賀県立大学
畑中裕司
滋賀県立大学
安田昌司
本邦における最大の失明要因である緑内障の診断所見である垂直方向の視神経乳頭陥凹(Cup)と視神経乳頭(Disc)の直径比(C/D比)と、リム(Rim)とDiscの直径比(以下R/D比)を眼底画像から自動計測する手法の開発に取り組んだ。緑内障専門医は2種類の血管の屈曲点を考えていることがわかった。そこで、2種類の屈曲点を自動検出する手法を開発し、その検出結果を従来法に加えることによってCup輪郭を補正する処理を新たに開発した。その結果、ROC(Receiver Operating Characteristic)解析における垂直C/D比とR/D比のAUC(Area Under the Curve)がそれぞれ0.966、0.936の結果を得た。従来法のAUCはそれぞれ0.965、0.896であることから、垂直C/D比の計測精度を維持しつつ、R/D比の計測精度を大きく向上させられた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、眼底画像を用いた視神経乳頭の定量解析手法の開発は社会的ニーズが高いテーマで、症例は少ないものの本手法の能力は専門医に近いことが示されたことについては評価できる。一方、今後の可能性については、現在判定が難しい高度近視眼や乳頭変形が強い眼における高い検出力を示す装置開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、新規技術の導入が進んでおり、対抗が難しくなっている。これら新規技術と融合させた研究を推進されることが望まれる。
炎症性腸疾患治療用の経口投与用モノクロナールIgA抗体医薬の開発のための炎症性腸疾患患者における腸管IgA機能の解析 長浜バイオ大学
新蔵礼子
長浜バイオ大学
堀伸明
マウスの実験から得た、「経口投与用モノクローナルIgA抗体が炎症性腸疾患の新規治療薬になる」という私たちの知見をもとに潰瘍性大腸炎治療薬の開発を目指している。炎症性腸疾患患者に対するIgA抗体の補充の合理性を示すために炎症性腸疾患患者の便中のIgA抗体の細菌に対する結合力に異常がないかどうかを調べることが目標である。2臨床施設との共同研究契約も成立し、若干数の患者サンプルをすでに得た。また対照として健常者サンプルの収集のために長浜バイオ大学の臨床研究倫理審査の承認もすでに受けた。今後患者、健常者それぞれ50名を目標に便サンプルを集めてIgA抗体の機能を解析する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも炎症性腸疾患患者糞便中のIgA抗体が健常者に比して大腸菌に対する親和性が低下している可能性を示したこと。さらに研究成果を特許出願したことについては評価できる。一方、 本臨床検体を用いた糞便中IgA抗体の大腸菌結合能解析のサンプル数が十分でなかったので、今後解析症例数を増加して統計学的有意差がでるようにデータの積み上げなどが必要と思われる。複数の腸内細菌に強く結合するモノクローナルIgA抗体の経口投与による炎症性腸疾患の新規治療薬開発のコンセプトは大変面白い。今後は、対象疾患を偽膜性腸炎など感染性腸疾患に広げると臨床応用がしやすくなると思われる。
ウイルス粒子の蛍光検出システムの高感度化とロタウイルス検出への適用 長浜バイオ大学
長谷川慎
蛍光標識抗体を混ぜるだけで、ウイルスを20μL以下の検体から100粒子の検出感度で5分以内に検出できる分析装置を実用化する。本課題では、新たに熱応答性磁性ナノ粒子による凝集反応を利用し、感度と信頼性を高めた。成果として、第一に、ロタウイルスの本手法による高感度検出が確認できた。第二に、これまでに本技術が苦手とした、小さいサイズのウイルス粒子の検出が、熱応答性磁性ナノ粒子を利用することにより可能となった。今後、研究支援・臨床診断・食品検査・環境計測といった場面で、ELISA法に代替するデータを短時間で収集できる検査装置を完成させる。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、新たな熱応答性磁性ナノ粒子を用いたホモジーナスな凝集反応を用いた検出システムに関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、汎用化・操作性の改善・小型化・低コスト化を図り、臨床検体での試験実施により実用化が望まれる。今後は、産学共同体制を継続した技術移転を行い、実用化がされることが期待される。
新規清酒安定製造法の開発 滋賀県工業技術総合センター
岡田俊樹
滋賀県工業技術総合センター
山中仁敏
伝統的な清酒製造において、酵母の大量培養に硝酸還元菌と乳酸菌を利用してアルコール発酵酵母を醸成する製法がある(生もと系酒母*用語説明 )。これは微生物を自然界から寄せ付け、自然に増殖させるため製造は不安定である。そこで、製造過程から分離した微生物を利用して製造が可能か検討した。その結果、製造で利用可能な硝酸還元菌および乳酸菌の取得ができた。次いで、小仕込み製造試験結果から、これまでの製造方法と成分値等遜色なく、また、製造日数は半分程度に短縮が期待され、安定・安全製造を示唆した。これにより、酒造企業の新製品開発へ繋げることが可能になるものと考えられた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、分離菌株から出発し菌株の選定と小規模製造試験にまで到った点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、官能的香味特性も考慮した菌株の組合せや酒母製造条件を検討するなどでの実用化が望まれる。今後は、消費者ニーズを念頭に、微生物の特性と官能検査も加えた製品特性とを関連付けるなど、体系的な取進めをされることが期待される。
植物工場による機能性成分高含有植物の栽培可能性の追求 滋賀県東北部工業技術センター
脇坂博之
植物の栽培環境を高度に制御しうる植物工場システムを用いて、塩生プルピエ中のα-リノレン酸含有量を高める栽培条件の探索、および試料からのα-リノレン酸の測定、分析条件の検討を行った。その結果、光量等の栽培条件により、株重量、α-リノレン酸含有量を高める知見を得ることができた。また、α-リノレン酸のメチルエステル化によるガスクロマトグラフ質量分析により、分析定量できる条件を見出した。本研究における塩生ロザリナ中のα-リノレン酸含有量は、目標値にはいたらなかったものの、栽培条件との相関を得られたことにより、今後目標値を達成しうる知見を得ることができた。従って、研究開発の目標を概ね達成することができた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、α-リノレン酸の含量の定量化が精度良く行われたことについては評価できる。一方、α-リノレン酸含量を高める栽培条件の確立に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、塩生プルピエ中のα-リノレン酸含量を高めることの有用性を先ず明示することが望まれる。
スピルリナによるサルコペニア肥満改善効果の検証 京都大学
荒井秀典
京都大学
富田義数
本研究の目的は、サルコペニアの予防・改善に対してレジスタンストレーニングとスピルリナの併用が有用であるかを検証することである。地域在住高齢者をレジスタンストレーニングと併用してスピルリナを摂取する介入群と、レジスタンストレーニングのみ実施するコントロール群に分類し3ヶ月間の介入を実施した。その結果、介入群で有意に体重増加およびバランス能力改善効果が得られたものの、メインアウトカムであった筋量増加効果は認められなかった。今後は、実施期間や頻度、それに参加者特性などを見直しながら、レジスタンストレーニングとスピルリナの併用効果について検証を行う必要がある。 当初目標とした成果が得られていない。中でもサルコペニア肥満における有酸素運動とスピルリナ摂取の併用介入は、今回のプロトコールでは、効果が認められなかったため、当初の目標は達成されていない。サルコペニアを少しでも改善する方法を検討する姿勢は評価できる。技術的課題として、トレーニングの内容を再考する必要がある。今後は、ベースのトレーニング方法を改善したうえで、新たな試みを始めることが望まれる。
自己由来細胞による内耳再生医療の開発 京都大学
北尻真一郎
京都大学
谷村洋子
音響外傷、または薬剤障害によって作製した難聴モデル動物(モルモット)の内耳に脂肪組織由来細胞(ADC)の移植を行い、聴性脳幹反応(ABR)によって客観的に聴力の回復の検証を試みた。内耳器官培養 (ex vivo)を用いた前実験においては、ADCの有毛細胞保護効果が確認されていたが、残念ながら難聴モデル動物へのADC移植による顕著な聴力の回復および、傷害に対する顕著な保護効果は確認できなかった。また、ADC移植7日後の内リンパ液からは、器官培養でみられたHGF等の成長因子は検出されなかった。これはex vivoでは見られた、ADCの有毛細胞保護効果がin vivoでは十分に機能しなかったことを示している。その理由としては、ex vivoに比べ相対的なADCの量が移植条件下では少なかった可能性等が考えられるが、鼓室階内の空間的制約もあり、これ以上の移植細胞の増加は難しいと考えられる。しかしながら、細胞生着の足場となる基剤との併用により、より多くの細胞を生着させることができれば、ex vivoと同様の治療効果の向上が期待できると考える。 当初目標とした成果が得られていない。中でも、音響外傷モデルを用いた動物モデルの確立は評価できるが、マウスを用いたex vivoの実験結果を基盤として、モルモットに替えて細胞移植実験を実施するのは、無理がある。技術課題以前の問題であり、予備実験による技術的検討や評価が必要である。今後は、新規実験系の確立をされることが望まれる。
髄液マーカーによる正常圧水頭症の簡易診断法開発 京都大学
木下彩栄
京都大学
谷村洋子
正常圧水頭症(NPH)は認知症患者の数%を占めるとされるが、現時点では特異的なバイオマーカーによる診断方法は確立されていない。本研究は、NPHとアルツハイマー病(AD)を鑑別するための新規髄液検査方法の開発を目的に立案し、NPH患者・AD患者・その他の疾患を有する対照群の髄液を用いて、ELISA法でマーカーとなる蛋白質を測定した。その結果、NPH群はAD群と比較して髄液のtauが有意に低値を、Aβ42においては高値を示した。しかし、当初の予想に反し、AQP1に関しては、統計的に有意差は認められなかった。NPHとADの鑑別マーカーとして、髄液のtauとAβ42は有用であると考えられる一方、新規性に欠けるため特許申請には至らなかった。今後も特異的マーカーの探索を継続していきたい。
当初目標とした成果が得られていない。中でも、NPHとアルツハイマー病(AD)を鑑別するための新規髄液検査方法の開発を目指したが、バイオマーカーとしてのAQP1は統計的に有意差が見られず期待された結果が得られなかった。基礎的な研究により、次の特異的マーカーの探索に向け技術的検討や評価が必要である。今後は、まだ期待されていた結果が得られていないが、有益な研究であり、新しいマーカーを探る研究をされることが望まれる。
核酸の化学修飾による会合体形成と核酸医薬品への応用 京都大学
田邉一仁
京都大学
宮井均
遺伝子導入剤等の補助試薬が不要な核酸医薬品を創出するため、核酸にアルキル基を導入した機能性人工核酸の開発を進めた。この人工核酸は両親媒性化合物として機能し、水溶液中で会合体を形成した。発光部位を付与した会合体を生きた細胞に投与すると、強い発光を示したことから、両親媒性DNAは容易に細胞内に浸透することを明らかにした。また、RNAの切断機能を持つDNAzymeにアルキル基を導入しても切断活性は保持されることを見出した。修飾DNA合成に時間を要し、研究期間内に細胞を用いたDNAzyme活性試験を完遂できなかったが、概ね順調に実験を進めている。既に、細胞実験の評価系は構築されており、今後は細胞実験で人工核酸が実際に駆動するか検討を重ねていく。さらに、実験動物を用いて人工核酸の機能を評価する予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもin vitroでDNAzyme会合体が機能することおよびモデル会合体が細胞内に効率よく取り込まれることを示した点は評価できる。一方、未実施の課題を実施して、当初の目標達成に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、会合体の細胞内取り込みおよび機能発現の細胞特異性・組織特異性の検討についても期待したい。開発される会合体について動物レベルで実証されることが望まれる。
マイクロカプセル化技術の援用による加工前よりも栄養価値に優れた凍結乾燥食品の開発 京都大学
中川究也
本研究課題では加工前よりも栄養価値に優れる即席凍結乾燥食品の開発を最終目標と定め、食品中に含有される栄養成分を、凍結を利用してマイクロカプセル内に格納し、製品中の栄養成分の保持特性の制御を目指した。本課題の主たる成果は下記2項目である。(1) 凍結過程において食品中ポリフェノールをカプセル化させる成分を見出した。(2) 同成分を添加して作製した凍結乾燥食品において、復水後1〜2時間の範囲にて含有ポリフェノール成分の約20%を未放出のまま保持できた。これらの結果は食品中ポリフェノール成分のバイオアベイラビリティー向上を示唆する。今後、本成果を糸口として基礎検討を継続し、実用化に向けた研究開発へと発展させる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、凍結乾燥により食品中のポリフェノールをカプセル化するとの考え方は評価できる。一方、技術移転の観点からは、モデルとした食品中の成分がどのような形態で存在しているのかを今少し整理することなどでの実用化が望まれる。今後は、タンパク質や糖類における抱合役割を分子量や成分保持能、放出時間等の観点で整理し、連携企業と今後の取進めについて協議されることが期待される。
超解像イメージングのための顕微鏡ユニットの開発 京都大学
西山雅祥
京都大学
柘原岳人
光学顕微鏡は、研究分野を問わず幅広く利用されている分析機器である。その分解能は、観察時に使用する光の波長とレンズ系によって制限を受けてしまい、通常アッベの壁と呼ばれている。近年、このアッベの壁を越える分解能を達成させる超解像技術が開発されたものの、未だ普及には言っていない。本研究課題では、市販の光学顕微鏡や光学機器をそのまま利用しつつ、分解能の向上をはかる顕微鏡ユニットの開発を行った。研究代表者の取り組みに良り、結像能を約2倍にまで高めることに成功した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、細胞内のin vivo微細構造などを、高解像度で簡便かつ低コストで観察できる技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、応用範囲は広く、社会的なインパクトは高い研究開発である。既存の超解像顕微鏡に対する明確な差別化が鍵で実用化が望まれる。今後は、国際的に競争力の激しい分野であるから、積極的な企業との連携がされることが期待される。
膜曲率変化を利用した新しい細胞内送達法 京都大学
二木史朗
京都大学
田上款
膜の曲率は細胞内小胞輸送や細胞融合の本質を担う基本概念であり、これを制御することにより、新しい概念による細胞内への生理活性タンパク質・核酸類の送達法の樹立が期待できる。本研究では、生体膜に曲率を誘導可能な適当なペプチドを利用することにより、(i)アルギニンに富む膜透過ペプチド(CPP)とそのコンジュゲートの細胞内送達効率が大幅に向上することや、(ii)Fabなどの効率的細胞内送達が可能であることを示唆する結果が得られた。今後更にその有用性を検討し、特許性があることが確認できれば、事業化の可能性を探りたい。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に多くの曲率誘導能をもつペプチドおよびその誘導体を高純度で合成し、それらの組み合わせで膜不安定化機構による細胞内移行(速度および移行量)の評価を行った点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、候補ペプチドに関しても更にその有用性検討と、特許性の確認が必要でり、そのためのデータの積み上げが望まれる。今後は効率的細胞内送達法の有用性の検討を具体的に実施することが期待される。
動物細胞における効率的組換え型タンパク質生産のための次世代mRNA輸送体の開発 京都大学
増田誠司
京都大学
柘原岳人
HIV-1ウィルスで見られるスプライシング非依存的なmRNA核外輸送システムおよびその各要素に着目し、その効率化を期待したシステムを動物細胞の組換えタンパク質生産に適用し、その効果を検証した。その結果、Revを改変した改変型システムを適用した場合、ルシフェラーゼ活性の増加が見られた。一方、RREを改変した改変型システムを適用した場合には、活性の増加はみられなかった。本研究遂行中にRREの3次元構造が明らかにされた。この知見を用いてRREの改変を行い、さらに効率的なタンパク質発現システムの実現に向けてさらなるRevの改変やRREの三次元構造に着目した新たな改変型Rev-RREシステムの開発を行っていきたい。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも優れた独自の基礎研究テーマに立脚する研究であり、技術革新につながる可能性については評価できる。一方、現時点では、将来的な応用研究展開に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、確固たる要素技術の確立を推進することが望まれる。
脳梗塞に対する骨髄細胞静脈内投与による再生医療と外骨格ロボットスーツHALの効果と脳機能画像・神経心理学的検査による検討 京都大学
宮本享
京都大学
谷村洋子
再生医療学的骨髄単核球の梗塞後静脈内投与により、神経機能改善や血管・神経再生促進の効果があることが臨床試験で示されている。本研究では、脳損傷患者に対し、自己骨髄単核球細胞の静脈内投与を最終目標に、神経機能回復効果の評価指標を作成することを目的とした。また、新たな医療応用が期待されるHALは、コンピュータ制御下で筋活動に伴う生体電位を皮膚表面から計測し、動作の補助を行うロボットであるが、本研究では再生医療とHALを活用したリハビリテーションによる、相乗的治療効果の有無を調べることを最終目標と設定した。本年度は、両下肢型と単関節型HALの使用プロトコールを作成し臨床応用を開始するとともに、骨髄細胞静脈内投与に向けたプロトコールを倫理委員会へ承認申請するところまで達成した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、HAL装着と骨髄幹細胞移植の組合わせを目標にしている中で、臨床の現場ならではの重要な技術的課題が明確にしたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性が着実に高まったと言え、実用化が望まれる。今後は、移植する幹細胞の種類を今回の骨髄幹細胞からiPS細胞などに変える可能性が記載されているが、幹細胞としての有用性や腫瘍化リスクなど注意深くよく考えて研究を進めていくことが期待される。
逆転写反応の正確性の向上 京都大学
保川清
京都大学
佐藤祐一郎
逆転写技術は臨床診断ならびに分子生物学研究において広く利用されているが、DNA合成技術と比較して、反応効率や正確性が劣り、信頼性が低いという問題を有する。本研究開発課題では、蛋白質工学的手法により逆転写酵素を改変することにより、逆転写反応の精度を向上させることを目的とした。基質から一種類のdNTPを除いた条件で逆転写反応を行った結果、一部の変異型モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV RT)による逆転写反応では、野生型酵素による反応よりも誤取り込みの率が低い、すなわち精度が向上していることが示された。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、実際に正確性の高い変異酵素を開発し、反応条件を提示することができていることに関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、実際の実用現場での使用により、既存の技術との比較検討することで実用化が望まれる。今後は、既存の技術との比較データの提示が必須で、正確性と効率に関する達成目標を明確に(数値化して)示すことが期待される。
幹細胞培養技術としての高生理活性バイオマテリアル固体培地の開発 京都大学
山本雅哉
京都大学
岡野恵子
本研究では、幹細胞培養技術としての高生理活性バイオマテリアル固体培地の開発を目標とした。iPS細胞への応用を目指し、本研究では、ヒト間葉系幹細胞をモデル細胞として用いて、まず、高生理活性バイオマテリアル固体培地に対する材料学的な基礎的知見を得るための研究開発を行った。その結果、幹細胞の未分化性を維持するための疎水性低分子薬物の徐放化、機能性タンパク質の配向固定化、ならびにこれらの分子を機能化した高生理活性バイオマテリアル固体培地を用いた幹細胞の増殖や分化に対する機能増強を確認した。本研究成果は、今後、iPS細胞の未分化性を維持するための研究開発に必要な基礎的知見として活用できると期待される。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、モデル細胞および限定されたゲル素材ではあるが、徐放、配向固定化、硬さ評価を実施できたことについては評価できる。一方、培養細胞基材の開発研究は多数実用例がある。そこでは多種多様な人工・天然高分子系マテリアルが応用されているので、技術移転にはそれらをモデルとし、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、実際のiPS細胞を用いた研究提案として実現可能な内容とされることが望まれる。
肌の「若々しさ」を増進する新規小分子化合物の創製 京都大学
渡辺文太
京都大学
喜多山篤
コラーゲンやエラスチンといったタンパク質は、肌の「若々しさ」の保持・増進に重要な働きを持つ。本研究開発では、皮膚細胞においてこれらのタンパク質の産生を活性化する、新規小分子化合物の創製を目的とした。研究責任者らが独自に見出したシードに基づいて設計した化合物群を立体選択的に合成し、ヒト皮膚由来線維芽細胞を用いて活性を評価した。その結果、対照剤に匹敵するコラーゲン産生亢進活性を示し、かつ細胞毒性を持たない化合物を見出すことができた。今後は、物質としての新規性を主眼に置いた研究開発を行い、新しいアンチエイジング素材の開発につなげたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、合成、物性研究として合理的な研究である。一方、技術移転の観点からは、「肌の「若々しさ」を増進する新規小分子化合物の創製」という研究課題を中心にして継続するならば生物学的研究の研究基盤を整える必要があると考える。今後は、gamma-glutamyltranspeptidase酵素阻害による「肌の若々しさの増進」というコンセプトの科学的証明が最優先されることを期待する。
次世代複合処理によるチタン合金製インプラントの小型化および耐久性の改善 京都工芸繊維大学
森田辰郎
京都工芸繊維大学
小島義己
本課題では、チタン合金製インプラントに高い静的強度および長期耐久性(優れた耐摩耗性、高い疲労強度)を付与し、インプラントの小型化による施術時の身体的ダメージを低減するとともに耐用年数を延長することを最終目標として、次世代複合処理の開発を行った。本課題で検討した複合処理により、チタン合金に比較的厚い硬化層が形成され、また母材部の高強度化がなされた。その結果、耐食性を損なうことなく、チタン合金の耐摩耗性を改善すると同時に、引張強度および疲労強度の大幅な改善(引張強度31%改善、疲労強度36%改善)が達成された。数値目標はほぼ達成され、今後、実用化を目指して試作等を進める予定である。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、引張強度、疲労強度、耐摩耗性、耐食性の改善目標を概ね、目標値を達成したと技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、技術移転に対する具体的行動を計画しており、産学共同開発が現実味を帯び実用化が望まれる。今後は、機械的性質の改善を目標としてインプラント用Ti合金への複合表面処理の効果を主に検討しているが、組織変化のメタラジーについても学術的な検討をしたら新規な知見が得られることが期待される。
光イメージングを用いた新たな皮膚悪性腫瘍に対するin situ 診断法の開発 京都府立医科大学
浅井純
京都府立医科大学
羽室淳爾
皮膚腫瘍性病変において、NADHやPpIXなどから発する蛍光を利用して、腫瘍の(1)良性悪性の鑑別、(2)腫瘍部と健常部との境界の診断に有効であるかどうかをヒトおよびマウス皮膚腫瘍を用いて検討した。マウス有棘細胞癌では、腫瘍部のNADH蛍光は正常皮膚と比較して有意に高値を示し、(1)良性悪性の鑑別、(2)腫瘍部と健常部との境界の診断に有効であることが示唆された。ヒトの手術検体では、乳房外パジェット病においてNADH蛍光は正常皮膚と比較して有意に高値を示した。色素性母斑、悪性黒色腫においては腫瘍部と正常皮膚部において有意な差を認めず、メラニンにより蛍光測定が阻害されている可能性が示唆された。今後さらなる症例の集積、解析が必要と考えた。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ヒトの症例数が少なく成果が臨床的に意味をもつかどうかは不明だが、マウス皮膚癌モデルの検討では成果が出ていることについては評価できる。一方、悪性と良性を鑑別する方法として病理組織や免疫染色よりも有用性があるかどうかの技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、基礎的な実験を重ねて、最適な条件をまず設定するべきである。ヒトの症例数を増やして蛍光測定の測定値と病理学的所見とどのように組み合わせて臨床応用するのかを明確にされることが望まれる。
細胞運命決定の制御に資する小分子化合物の探索 京都府立医科大学
岸田綱郎
京都府立医科大学
羽室淳爾
糖尿病とメタボリック症候群は、国民の健康寿命を縮め、国家経済を揺るがす重要な疾患である。我々は、少数の既知因子の遺伝子導入によるヒト体細胞の運命転換技術を通じて、糖尿病とメタボリック症候群に対する新しい再生医療のための基盤技術を開発したが、これを実用化に近づけるには、遺伝子導入に換えて、患者にとってより安全性の高い小分子化合物で、細胞の運命転換を行うことが望ましい。そこで本研究では、ケミカルライブラリ―のスクリーニング系の構築と実際のスクリーニングを行い、結果として一部の因子については代替する化合物の候補を見出した。
因子Aを代替する化合物に関しては、本研究で見出した候補化合物の活性をコンファームし、合成展開を経て最適化するとともに、より大きなライブラリーのスクリーニングも同時並行で行う予定である。また因子Bを代替する化合物のスクリーニング系を確立して実際に候補分子を見出す。ケミカル・ダイレクト・リプログラミングは臨床応用へのハードルを下げ、再生医療新法に基づいた治験が可能になると期待できる。それゆえに、本研究の成果は重篤な糖尿病とメタボリック症候群に対して実用的な新規再生医療に結びつく可能性がある。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にメタボリックシンドローム治療に対する候補化合物が見出されている点は評価できる。一方、技術移転の観点から「顕在化タイプ」などの産学協同の研究開発に展開されることが望まれる。今後は、知的財産権取得に向け十分な検討を進めることが期待される。
老人性認知症の治療を目指したHDAC2選択的阻害薬の創製 京都府立医科大学
鈴木孝禎
京都府立医科大学
羽室淳爾
初めに、既知のHDAC1/2選択的阻害薬と既知のHDAC2/3選択的阻害薬の構造をハイブリッドさせるリガンド構造を基にしたドラッグデザインにより、HDAC2選択的阻害薬の創製を目指した。しかしながら、既知のHDAC2/3選択的阻害薬は、我々の評価系では全くHDAC2/3選択性を示さず、合成したハイブリッド化合物もHDAC2選択性を示さなかった。つぎに、HDAC2のX線結晶構造を基にしたドラッグデザインおよびクリックケミストリーを用いたアプローチによりHDAC2選択性の獲得を目指した。その結果、比較的高いHDAC2選択性を示す化合物を見出すことに成功した。今後、薬理研究グループとの共同研究を行いHDAC2選択的阻害薬の老人性認知症治療薬としての開発を目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にX線結晶構造を基にしたドラッグデザインによりアルキン化合物を合成し、アジド化合物を連結させて、当初の目標を満足する新たな化合物を得ることができた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、新たに得た化合物の特性を明確にするとともに、特許出願を急ぐことが望まれる。今後は、企業との連携が不可欠であるので 早急に企業と連携することが期待される。
CDK阻害分子p18を標的とした分子標的抗癌剤スクリーニング系の構築 京都府立医科大学
曽和義広
京都府立医科大学
羽室淳爾
私達は、癌抑制遺伝子RBの再活性化の戦略として、CDK阻害分子の発現を誘導する化合物の探索を実施してきた。今回、CDK阻害分子p18の誘導を標的としたスクリーニング系の確立を目指した。
神経芽細胞腫では癌遺伝子N-Mycの発現によりp18の発現が抑制されている可能性がある。そこで、N-Myc発現を抑制したところ、p18蛋白質の誘導が認められた。従って、神経芽細胞腫細胞でのp18蛋白質の誘導を指標とするスクリーニング系は、N-Mycを抑制する分子標的抗癌剤のスクリーニング系として有用と考えられる。今後、p18蛋白質定量の迅速化や低コスト化が達成されれば、本手法による創薬が可能となるであろう。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。CDK阻害分子p18の発現を誘導する分子標的抗癌剤を得る為に、そのスクリーニング系の構築を、p18プロモーター活性を測定するcell-basedスクリーニング系の構築、そのcell-basedスクリーニング系の評価を実施されている点については評価できる。一方、スクリーニング系を構築する為には遺伝子の外来性のプロモーターと内因性の遺伝子プロモーター活性の一致する細胞を最初に選ぶべきである。今後は、N-Mycによるp18の制御が転写レベルではないという結果が得られているので、その制御メカニズムを解明するのが望ましい。
高齢者の骨疾患に対する再生医学的アプローチ 京都府立医科大学
松田修
京都府立医科大学
羽室淳爾
我々は、ヒトの骨芽細胞を線維芽細胞より誘導する技術を開発した。この技術はさまざまな骨疾患に対する再生医療用の細胞の作出につながると期待できる。本研究ではこの技術の実用化のために必要とされる、以下の点について検討した。(1)異種タンパクを用いない、骨芽細胞の誘導技術。(2)骨芽細胞を保存するための凍結、融解技術。(3)さまざまな体細胞からの骨芽細胞の誘導。その結果、異種タンパクフリーでも80%以上の効率で誘導でき、また約86%の細胞が回復する凍結・融解法を確立した。また効率は低いものの、表皮線維芽細胞以外の細胞からも骨芽細胞が誘導できた。以上のように、おおむね期待どおりの結果が得られ、本研究の実用化に大きく近づいた。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、遺伝子導入によるりプログラミング法により形質転換した骨芽細胞を用いたゼノフリー培養系の樹立およびその分化能の解析については評価できる。一方、まだ多くの点において明らかにすべきことがあるが、研究開発ステップにつながる可能性についてやや高まったといえる。特に安全性の評価が抜けていることから、安全性確保に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、品質や安全性評価を含めた作業工程の導入および確立されることが望まれる。
中枢性摂食障害に対する創薬ターゲットの探索 京都府立医科大学
松田賢一
京都府立医科大学
羽室淳爾
中枢性摂食障害の罹患者は大多数が女性である。この疾患の病因として、女性ホルモン(エストロゲン)とストレス応答系の影響によって食欲中枢が変調をきたすことが考えられているが、具体的なメカニズムは明らかになっていない。本研究開発では、中枢性摂食障害の創薬ターゲットの探索を目的とし、ストレス誘導性食欲低下動物モデルの食欲中枢をサンプルに網羅的分子解析により、エストロゲン依存的に変動する新たな創薬ターゲット分子の同定を行った。神経伝達物質であるヒスタミンの受容体タイプ1(H1)は食欲中枢においてエストロゲン依存的に発現量が上昇した。今後、H1の賦活剤/阻害剤を脳内投与し、食欲低下に対する治療効果を検証する予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にエストロゲン受容体とヒスタミン受容体との相互作用を見出した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、 同定されたシグナル分子のノックダウンによる解析、およびin vivoによる解析などを行い、より適切な中枢性摂食障害動物モデルを考案することが望まれる。今後は、in vivoにおけるデータ取得が期待される。
マクロフアージ特定亜集団の選択的アポトーシス誘導による加齢黄斑変性の新規治療剤開発 京都府立医科大学
米田一仁
京都府立医科大学
羽室淳爾
マクロフアージ(Mps)の亜集団としての還元型への選択的枯死誘導作用を有するGRA化合物がTNF産生抑制を介し、Mps/網膜色素上皮細胞(RPE)間の炎症増悪回路を遮断すること、逆に、RPEのIL-6産生を抑制する化合物OBP、MpsのTNF産生を阻害する化合物SAGも見出した。Mps、 RPEそれぞれに働く薬剤の併用により、RPEからのVEGF産生が効率的に抑制されることが判明し、抗体によらない脈絡膜血管新生抑制技術基盤を提供できた。
当面の実験研究は初代培養系のマウスMps/RPE共培養系でのVEGF産生阻害効果の確認、ヒト眼球組織器官培養における補体活性化抑制因子、VEGFなど血管新生因子発現の網羅的解析を通じて薬剤効果の効果の検証、眼科系企業へのデータの開示、並びに、用途特許出願の可能性の検討を予定している。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に加齢黄斑変性の新規治療法として網膜色素上皮細胞(RPE)とマクロファージ間の炎症増悪サイクルの改善という観点から、入手したシーズ化合物によるREP、マクロファージがそれぞれ産生するIL-6、TNF‐αの抑制効果を明らかにし、治療につながる可能性を示した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、加齢黄斑変性にとどまらず炎症増悪サイクルの改善がもたらす治療対象を他の網膜炎症疾患に広げることが望まれる。今後は、一つの化合物(標的)に絞り研究を推進していくことが期待される。
生体内で作製する結合組織小口径代用血管の同種・異種グラフトへの応用 京都府立医科大学
渡辺太治
京都府立医科大学
羽室淳爾
本研究期間内には1)Biotube移植後の長期観察としてビーグル犬の頚動脈に自家移植したBiotubeの6年を超える長期開存を超音波検査により確認した。2)ブタ、或はウサギで作製したBiotubeをビーグル犬の頚動脈に異種移植を行った。また、以前、ビーグル犬で作製し、凍結保存しておいたBiotubeを解凍し、同種移植を行った。いずれも、自家移植の際と同様の手技で問題なく移植可能であり、移植直後の急性期の耐久性、開存性には問題なかった。3)ビーグル犬の左内頚動脈-右外頚静脈間にバイオチューブを介在させシャントを作成した。術後は良好なthrillを触知した。また、術後3週間後に施行した血管造影においては、良好なシャント血流が確認できた。今後、1)に関しては長期移植後の組織学的評価を、2)、3)に関しては、長期の開存性、耐久性の評価を行っていく。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、チャレンジングな内容であるが、着実に進歩している。また、きわめて新規性の一般的概念をもたらす機器を定義しているため、完成した際の社会的意義は大きく評価できる。一方、技術移転の観点からは、同種と異種のモデル評価について、免疫学的評価等、さらに具体的に進めていくことなどでの実用化が望まれる。今後は、企業等の適切なパートナーを得るには、探索的段階ではあるものの、完成すべきものならびにその使用方法等、具体的に絞り込むことが期待される。
スキンアレルギーテスト用スマートチップの開発 京都薬科大学
高田寛治
京都薬科大学
内田逸郎
モデル抗原としてpoly-L-arginine(ポリアルギニン)を用いて溶解性マイクロニードル・アレイ・チップを調製した。基剤にはデキストランを用いた。ポリアルギニンの接種量として61.9±4.7、 31.1±1.3、 9.3±1.9μgの3種類でもってラット背部除毛皮膚に投与し、30分間あたりの掻痒回数を測定することにより薬理学的評価を行った。positive controlであるポリアルギニン溶液の皮内注射群(10.0μg、 35.0μg、 70.0μg)と比べて、掻痒回数が5から20倍に増大した。すなわち、溶解性マイクロニードル・アレイ・チップとすることにより5〜20倍もの高い感度でアレルギー反応を検出することができた。溶解性マイクロニードルは従来のプリック試験の代替法として有用なデバイスとなることが示された。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、限られた条件ではあるが、可溶性マイクロニードル・アレイ・チップの可能性は示された技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、新たな臨床検査用マイクロチップが開発されれば、患者の診断に役立ち、それぞれの抗原に対応した、より良いアレルギー治療に結びつくことが期待されるなど実用化が望まれる。今後は、研究責任者が立ち上げるベンチャー企業で研究及び実用化への試みを継続することが予定されており、フォローアップ支援体制も整っている。診断用デバイスの真度、精度、感度が改善されることが期待される。
新規デカリン型骨格を有するSARS 3CLプロテアーゼ阻害剤の創製 京都薬科大学
服部恭尚
京都薬科大学
内田逸郎
アザーデカリン型阻害剤の構造最適化を行った結果、マイクロモルレベルの阻害活性を得ることに成功し、高活性を示す立体化学を決定した。合成した阻害剤とプロテアーゼとの共結晶を作成し、X線結晶構造解析を行ったところ活性中心に入っていない部分構造があることが明らかとなった。このために目標とするナノモルレベルの阻害活性に達しなかったが、以前の報告から目標の達成が十分に期待できる。また、オキサーデカリン型阻害剤は合成困難であったが、最終生成物まで2段階を残すのみとなった。本阻害剤の合成を速やかに完成させ、阻害剤の構造最適化を行う。
以上により、目標とするレベルの阻害活性を示す化合物の創製を実現させ、阻害剤とその製造方法に関する知的財産権を確保する。さらに、産学協同の研究開発を実施し技術移転を目指す。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもアザーデカリン環の活性型の立体構造が決定できた点については評価できる。一方、学術研究型の印象が強く、実用化にむけた準備や技術目標が明確ではない印象がある。本研究では知財がとても重要と思われる。今後は、新規性のあるドラッグライクな中心骨格としてのデカリン型は魅力あるもので、その立体化学制御する薬物探索にむけた合成技法の発展が望まれる。
臨床診断への実用化を目指したポリユビキチン分子検査技術の開発 京都薬科大学
藤室雅弘
京都薬科大学
内田逸郎
ポリユビキチン(ポリUb)化とは、蛋白質に多数のユビキチン(Ub)分子が鎖状に重合しポリUb鎖を形成する蛋白質の翻訳後修飾である。近年、がん、感染症、神経変性疾患、腎疾患等において患者血液内にポリUb分子が検出されることが明らかになり、ポリUb 分子を病態マーカーとして利用する診断技術が期待されている。そこで、本研究では、血漿中のポリUb 定量用サンドイッチELISAの開発を実施した。また、臨床診断法としての実用化を目指して本検出法の高感度化を検討した。さらに、確立した検出法を用いて免疫抑制下の腎移植患者と、敗血症患者の血漿中ポリUb 分子の挙動解析を行い、各疾患と血液中に放出されるポリUb 分子量の相関を明らかにした。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ポリUb ELISAの高感度化について感度等基本的な課題は解決できた技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、病態と関連した測定の意義については未知数のため、早急に目途をつけることで実用化が望まれる。今後は、血中ポリUb量と病態との関連性が明らかにし、各疾患について既存の診断法に加えて有効な情報を提供されることが期待される。
骨格筋細胞培養ディッシュの研究開発 立命館大学
岩中伸壮
立命館大学
近藤光行
本研究開発は、筋細胞を単に3次元培養するのではなく、生体機能を持たせるように工夫し、培養ディッシュを高機能化することを目的として実施した。達成目標として、株化骨格筋細胞を形状的に骨格筋組織に近付けることが可能な培養器を製作し、その生体機能を評価することであった。培養器製作における基礎実験は概ね成功した。株化骨格筋細胞においても伸長方向の揃った直鎖状の筋管を形成し、任意収縮可能な培養系を構築できる可能性を見いだせた。しかしながら、得られた基礎データを培養器に集約し、製作するにはさらなる検証が必要である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、コーティングの見直し、犠牲層基材の選定、犠牲層作成プロセスの見直しなど新たな技術的課題が明らかとなった点については評価できる。一方、 コーティングの見直しや犠牲層の選定などの課題がクリアされれば、技術移転を目指した産学共同研究開発に繋がる可能性が高いと考えられ、高度なコーティング技術を持つ企業との技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、運動療法や薬物療法の効果を生体に近い状態で検証できる可能性があり、研究開発を継続されることが望まれる。
新規構造を有するアングサイクリン類を生産する放線菌の効率的な探索と生合成遺伝子の利用 立命館大学
川崎崇
立命館大学
橋本敏信
抗腫瘍活性や抗生物質などの有用な活性を持つ物も多い芳香族ポリケチドであるアングサイクリン類を生産する放線菌をアングサイクリンの生合成遺伝子を指標として効率的に探索する方法を確立した。また、生合成遺伝子を指標に探索した放線菌において新規構造を有する可能性があるアングサイクリン類が見出された。そこで見出されたアングサイクリンの単離と精製を行い、生物活性評価を行った。今後の展開としては、取得したアングサイクリンの構造を決定すると共に、有用な生物活性があるかどうかの評価を行う予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、コロニーPCR法を用いるスクリーニング手法でアングサイクリン化合物を生産する菌株を選別し、その菌株を培養することから2種の新規化合物を見出したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、新規化合物の構造と作用機構の解明などでの実用化が望まれる。今後は、構造活性相関に基づく化学生物学的アプローチや異種放線菌による生産性向上について検討されることが期待される。
ヒトiPS(induced pluripotent stem)細胞を特異的に傷害する新規単クローン抗体の再生医療への技術転移をめざして 立命館大学
豊田尚英
立命館大学
矢野均
研究責任者らは、ヒトiPS/ES細胞による再生医療の早期実現を支援する目的で、ヒトiPS/ES細胞と特異的に結合する2種の単クローン抗体を開発した。その内の一つR-17FはヒトiPS細胞の膜糖脂質に結合し細胞傷害活性を示した。本課題では、R-17Fの技術移転の必要性・緊急性に鑑み、R-17Fによる細胞傷害活性の増強方法の開発、iPS細胞コロニー系での細胞傷害活性の解析、R-17F (IgG1) Fab領域(可変領域)の遺伝子配列の決定に取り組んだ。いずれの研究も期待通りの成果をあげ、目標を達成することができた。その結果、これらのマーカー抗体がヒトiPS/ES細胞マーカー試薬としてばかりでなく、革新的な再生医療医薬として利用される可能性を示すことができた。なお、本研究は豊田研究室と、川嵜研究室との共同研究として実施した。今後は、基礎研究レベルからトランスレーショナルレベルに実験系を移して実用化を目指す研究を展開したい。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、R-17Fに関しては特許出願済みであり、R-17F細胞障害活性が有効、有用であることを示唆した技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本研究の成果が応用展開された場合には、iPS細胞による再生医療の進展に寄与し、その成果は社会に還元されるものと期待することができるので実用化が望まれる。今後は、R-17F抗体の抗体医薬品としての可能性を探るためのもっと臨床応用を考えた研究計画をされることが期待される。
ペプチドアプタマーを用いた基質特異的Aβ産生抑制方法の開発 同志社大学
舟本聡
同志社大学
尾崎安彦
γセクレターゼは、C99のアミノ末端領域を認識することでC99を切断し、40アミノ酸ほどのAβを産生する。このことはC99アミノ末端領域を何らかの方法で事前に捕捉しておけば、C99のγセクレターゼによる切断を免れ、Aβ産生を抑制できることを意味している。本研究は、C99アミノ末端領域に結合するヘビ毒素骨格をもつペプチドアプタマーの創製を目的としている。C99アミノ末端領域を認識するWO2抗体のCDR配列を含むペプチドアプタマーを構築した。in vitroアッセイや培養細胞においてアミロイドβタンパク質を低下することができた。今後は、このアプタマーのループ配列を最適化して、親和性や安定性の高いアプタマーの構築を目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にWO2 CDR配列を含むペプチドアプタマーを作製し、HEK細胞では分泌Aβ量が低下することを示した研当初の計画がうまくいかなかった時点で、CDR配列が既知のWO2抗体のAβ産生抑制能に着目することにより、Aβ産生抑制能を持つペプチドアプタマーを作製できたことは高く評価できる。一方、技術移転の観点からは、親和性の高いアプタマーが構築できれば、産学共同等の研究開発につながる可能性は高い。今後は、創薬を考えたときに、HEK細胞ではなくて、成熟したシナプスを有するiPS細胞由来分化神経細胞などを用いた実験データが有れば望ましい。また、実際の生体への投与方法なども考慮し開発を進められると良いと思われる。
薬剤に依存しないブロイラーのカンピロバクター感染抑制技術の開発 京都府農林水産技術センター 畜産センター
西井真理
特定非営利活動法人近畿アグリハイテク
北村實彬
先行研究によってブロイラーに籾米を給与すると食中毒細菌のカンピロバクター感染を抑制できることを確認したが、その感染抑制メカニズムを解明することを本研究の目的とした。ブロイラーに籾米を給与すると筋胃の摩砕活動が昂進し、筋胃が著しく肥大するが、この現象が、粒度による効果なのかを検証するため、籾米と粒度を揃えたトウモロコシを給与したところ、筋胃の発達や筋胃内pH の低下は認められず、筋胃の発達は、粒度以外の要因によるものであった。またそのうでは、ラクトバチルスが優勢なフローラを形成しており、それらの大腸菌群数との関連を調べたが、サンプルのばらつきが大きく傾向は明らかでなかった。ブロイラーにカンピロバクターを接種して、48時間後に消化管各セグメントのカンピロバクターを調査したところ、トウモロコシを給与した時の盲腸でのみ確認できた。本研究で穀物粒子の粒度が筋胃の機能昂進の要因でないことが判明したので、今後は、籾米の有するどのような特性に起因するものかを、籾がらに着目して研究をすすめたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、感染抑制は穀物粒度の効果ではないことを実証し、研究対象を籾殻の機能に絞ったことについては評価できる。一方、籾殻のもつ多様な物理化学的な要因の中で感染を抑制する要因の絞り込みに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、地道な観察実験の蓄積と共に研究の飛躍につながるアプローチを探求することが望まれる。
病原性大腸菌の付着制御に向けたメカノ腸管デバイスの開発 大阪大学
尾島由紘
大阪大学
山近洋
機械的ぜん動運動を加えることが可能なフローセル流路をポリジメチルシロキサン(PDMS) 素材で作製した。作製したデバイスを液流れ制御システムに接続した状態で、ヒト腸管上皮細胞Caco-2を培養したところ、ぜん動運動を負荷しながらの培養が可能であることがわかった。Caco-2細胞の分化指標であるアミノペプチダーゼ活性を測定することで、ぜん動運動を負荷しながら培養した場合は、その他の条件と比較して高い活性を示し、分化が促進されていることが裏付けられた。続いて、大腸菌O157:H7の付着試験を試みたところ、本システムを用いた長期培養では、気泡が発生し分化したCaco-2細胞を剥離させるという問題点が明らかとなった。今後は、この点について改善を行い、付着性試験ならびに最終目標である付着制御物質の発見へと展開していく予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、MEMS技術を駆使し、独自のメカノ腸管デバイスを製作し、このデバイスを用いてヒト腸管内面に極めて近い状態で大腸菌O157:H7の付着をゼロにする生理活性物質を発見する、という研究の流れ自体については評価できる。一方、実際の大腸菌付着試験を実施することが困難であった。この問題の改善に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、発想・着眼点は興味深く、企業とも良さを訴えながら協力して行う体制をなんとか築きあげることが望まれる。
Wnt5aと受容体との結合阻害を標的とした抗癌剤シーズの探索 大阪大学
菊池章
大阪大学
金允政
Wnt5aはWntシグナル経路を活性化する細胞外分泌タンパク質(リガンド)であり、その発現が種々の癌で浸潤転移と相関することを私共は報告している。本研究では、Wnt5aシグナル阻害化合物のスクリーニング法の確立を目標として、2種類のWnt5a受容体を固相化することにより高感度でWnt5a-受容体を検出するアッセイ系を確立した。試験的に2000化合物のスクリーニングを行ったところ、3化合物がWnt5aと受容体の結合を阻害した。今後は、今回開発したCell-free ELISAアッセイ系を基盤として、精度や感度をさらに改善したハイスループットアッセイ系を構築し、製薬会社との共同研究によりスクリーニングを行いたいと考えている。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にWnt5aのバイオロジー研究に加えて、阻害剤評価系の構築を行い創薬を睨んだ研究を進めている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、ヒット化合物の細胞運動能を評価する時には、細胞毒性も評価することが望まれる。今後は、製薬会社との連携と活用が期待される。
高血圧症に対するDNAワクチンの開発 大阪大学
郡山弘
これまでに形成したDNAワクチンの基盤技術をもとに、実用化を目指した高血圧DNAワクチンの製剤開発を行うことを目標として研究を行った。その結果、ワクチンの長期的な臓器保護効果の確認や、アンジオテンシンII DNAワクチンが高血圧モデルラット(SHR)の寿命に与える影響についてのデータを得ることができた。よりヒトに近い大型動物(ビーグル犬)でも抗体価が上昇することが確認できた。またこれらの検討の過程でDNAワクチンに関する新たな技術を見出し特許出願準備中である。今後はこれらの成果をもとに企業との共同開発体制をより一層推進し、臨床試験を目指してまずはGLPに準拠した製剤開発を進めていく方針である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に高血圧モデル動物において、本ワクチンの降圧効果が確認できており、新規特許出願が行われた。また、単に降圧作用に留まらず、臓器障害や心不全に視野を拡げている点が評価できる。一方、技術移転の観点からは、複数の動物実験モデルで、降圧作用だけではなく、臓器障害の軽減や心不全に対する効果、さらに免疫系への影響の解析などを行う必要がある。降圧作用については、軽症ないし中等症は薬剤治療に任せ、特に重症高血圧に重点をおくべきと思われる。今後は、他施設の協力を得て、動物実験を多施設で行うことが期待される。
低分子claudin binder探索系の開発 大阪大学
近藤昌夫
大阪大学
金允政
昨今の上皮細胞バリアの生物学の進展と相俟って、claudin(CL)が創薬標的として注目されつつある。しかしながら、CLはリコンビナントタンパク質の作製が難しく、利便性および汎用性を兼ね備えたCL binderスクリーニング系の開発が立ち遅れており、CLを標的とした創薬研究は遅々として進展していない。上述した背景を踏まえ、本研究では、CL binderのハイスループットスクリーニング(HTS)系の構築を試みた。CL binderなどを用いてCL binder HTS系を開発、約1万種類の化合物ライブラリの中からCL binder候補分子を取得し、本システムが低分子CL binder探索系として機能することを見出した。
以上、当初計画を大凡予定通り達成した。今後は、本成果を有効活用することで、任意のCLに対するbinder HTS系の構築、druggable CL binderシーズの創製(基本骨格の同定)、権利化、ライセンスアウトなど、実用化に向けた研究を展開していく予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に低分子CL binder探索系の構築に取り組み、今回、CL-3についてその構築および、binder/modulator候補化合物の単離に成功した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、CL-3以外の分子種についても探索系の構築を行う必要があると思われる。また、ヒット化合物が得られた場合は、早急に特許出願を行うべきと思われる。今後は、創薬に関わる企業との情報交換を通して共同研究へ展開されることが期待される。
金ナノ粒子および幹細胞を併用した滅菌および皮膚創傷治療応用へのin-vitro研究 大阪大学
DakrongPissuwan
大阪大学
BeringKristian
The oil base formulation of gold nanorods with and withoutantibacterial peptides were prepared and characterized. Following this, the formulations were applied to resistant antibiotic bacteria(S. aureus MRSA) with laser irradiation at a near infrar ed wavelength
(NIR). The results show that the complex of gold nanorod-antibacterial peptide in an oil base formulation (GNR/ abp/O) could decrease the cell viability of bacteria to around 53.4%. The results from my investigation of penetration of GNRs in a form of GNR/abp/O through the mouse skin, imply that GNR/abp/O formulation applied with laser irradiation could have a potential to destroy bacteria onthe skin surface and may also be effective in the deeper areas of the skin.
当初目標とした成果が得られていない。中でも、金のナノ粒子を用いて滅菌に応用するなどの試みとしては興味深い内容ではあるが、実用化という観点からは無理な実験的設定もなされている点での技術的検討や評価が必要である。今後は、赤外照射パワー、時間と皮膚温度との関係を調査されることが望まれる。
誘発脳波に基づく客観的かつ高精度な疼痛の有無と強弱の判別法の開発 大阪大学
中江文
大阪大学
加藤浩介
日本成人の慢性痛保有率は約22.5%と高く、慢性痛患者の痛みも7割が適切に緩和されていないことから、適切な疼痛管理に役立つ技術が切望されており、本課題において、客観的かつ高精度で、疼痛の有無と強弱を判別する方法の開発を目指した。今回、誘発脳波から抽出される特徴量で、疼痛を客観評価する方法を考案し、今回のモデルに適応可能と考えられる被験者データで強弱判別モデルを構築した。その結果、弱い痛みかほとんど痛みのないレベルと高度な痛みの判別率は80%、弱い痛みと中等度の痛みの判別率は84.6%であった。高齢者では同様の方法が適用可能な被験者が33.3%で高齢者への応用の課題が残る。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、目標が達成されたとは言い難いが、人を用いての実験プロトコールが確立されたことについては評価できる。一方、本研究の成果は特に鎮痛薬の開発などに大いに利用されることが考えられるので、種々の痛みに対する強弱の判別アルゴリズムの開発は社会還元に大きく進展するものと思われる。人を用いての痛みの研究は方法から制限されるので、動物実験によって、神経性疼痛など幅広い疼痛に展開して、強弱判別アルゴリズムの開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、動物実験を視野に入れた機器の開発、創薬に向けた強弱判別アルゴリズムの作成を目指すことにより、成果の応用展開されることが望まれる。
がん特異的アミノ酸トランスポーターに取り込まれる蛍光プローブを用いたがん診断法の開発 大阪大学
永森收志
大阪大学
金允政
がん特異的アミノ酸トランスポーターLAT1は、細胞増殖に必須なアミノ酸をがん細胞に供給する役割を担い、がんの悪性度と関わり予後不良因子の一つとなる。LAT1阻害薬は抗腫瘍効果を示すことが動物実験で実証されており、LAT1をがん治療の新たな分子標的とした抗がん薬の開発が進んでいる。本課題では、代表者が見いだしたLAT1により細胞に取り込まれる蛍光化合物をシーズ化合物として、生体内でがん細胞を検出する新しいがん診断法の開発を推進した。シーズ化合物を含めて、類似の構造を持つ化合物10種類を試験し、そのうち7種類の化合物がLAT1によってがん細胞に取り込まれ、さらに2種類がLAT1選択的に取り込まれることを見いだした。それらを用いてLAT1安定発現株や高発現がん細胞株を用いてイメージング試験を行い、LAT1による化合物の取り込みを可視化することに成功した。今後は化合物の構造展開を進め、LAT1選択的抗がん薬のコンパニオン診断も可能な蛍光プローブによる診断法開発を推進する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、新規プローブについての基礎的検討がよくなされていることについては評価できる。一方、まだアカデミックな研究のレベルであるが、プローブが完成すれば社会還元に導かれる可能性があり、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、パートナーとなる民間企業などを見出すことで、実用化が加速されることが望まれる。
不活性型CRISPR/Cas9系を用いた簡易eChIP法の開発 大阪大学
藤井穂高
大阪大学
安原利正
目標:dCas9を用いたenChIP法(名称を変更)により、ハプロイド内に1コピー(2倍体細胞では2コピー)以下の内在性ゲノム領域を1箇所以上単離して、質量分析法により、そこに結合してしている蛋白質を同定することを目標とする。本研究成果を実施例として、現在出願中のenChIP特許(特願2013-26310)に加えることにより、特許の一層の強化を図る。
達成度:dCas9を用いたenChIP法により、ハプロイド内に1コピー(2倍体細胞では2コピー)の内在性interferon regulatory factor-1 (IRF-1) 遺伝子座領域を単離して、質量分析法により、そこに結合している蛋白質を同定することに成功した。また、出願中のenChIP特許にこの結果を加え、PCT出願した(PCT/JP2013/74107)。従って、目標を完遂した。
今後の展開:今後は、本研究の成果を踏まえて、(1) dCas9を用いたenChIP法を実施するための有用なベクター系の開発、(2) dCas9を用いたenChIP法を用いた研究成果の発表、(3) マウス個体由来の初代細胞でdCas9を用いたenChIP法を実施するためのトランスジェニックマウスの作製、等に研究を展開し、dCas9を用いたenChIP法の価値を高め、研究ツール販売企業などへのライセンスアウトの確率を高めて行く。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にdCas9を用いたenChIP法により、簡便に内在性ゲノム領域に結合している分子を同定することが可能であることを示した。さらにEMD-Millipore社等と共同研究を行い、同法の普及に努めている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、これまでの既存法を組み合わせアッセイ法であり、類似の方法により特許抜けされないように工夫していただきたい。今後は、enChIPのキット化が順調に進行し、エピジェネティック分野での有用な技術提供となる事を期待したい。
細胞内侵入抗体を用いた難治性循環器疾患に対する創薬基盤技術の開発 大阪大学
南野哲男
大阪大学
金允政
近年、疾患部位特異的に発現上昇する細胞膜上分子を標的としたモノクローナル抗体を用いた“抗体薬物複合体”の概念に基づく創薬が注目されている。本研究では、申請者が見出した、冠動脈不安定プラーク部位ならびに重症不全心臓において発現が増大する細胞膜上分子に対する抗体を用い、様々な架橋剤により抗体核酸複合体を作成し、in vitro およびin vivo で機能評価を行った。その結果、in vitroおよびin vivoで抗体依存的に核酸を送達可能な抗体核酸複合体の開発に成功した。今後、難治性循環器疾患モデル動物を用いて薬効評価を行い、アンメットメディカルニーズに応える医薬品の創出を目指す。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に抗体を用いたドラッグデリバリーを考案し、抗体への核酸等の結合架橋方法もしっかり選定した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、現在よりももっと対象疾患を拡大できる可能性があり、そちらの検討も望まれる。今後は、本技術を多施設に提供し、動脈硬化治療法の開発を共同研究することで創薬に近づけることが期待される。
前駆内臓脂肪細胞における継代培養方法の確立 大阪大学
宮田佑吾
大阪大学
安原利正
前駆内臓脂肪細胞の継代培養法の確立目標に検討を行った。具体的には培養液への種々の液性因子の添加や培養基面の加工を行い、継代培養が可能になるかの検討を行った。その結果、液性因子を加えることで対照群に比べてやや前駆内臓脂肪細胞性が維持できた。また培養基面を加工することでも対照群に比べて前駆内臓脂肪細胞性を維持できた。しかしこれらの条件下でも、継代培養とともに前駆内臓脂肪細胞性は低下してしまった。この条件のみでは継代培養は難しいことが示されたが、液性因子や培養基面の加工が前駆内臓脂肪細胞性の維持に貢献していることが示された。従って今後は液性因子や培養基面の更なる検討を行う予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも前駆脂肪細胞の継代培養法として培養器材と培地に添加する液性因子について検討し、問題点が明らかになった点は評価できる。一方、今後の研究開発展開や産学共同等の研究開発ステップにつながる課題が不明瞭であり、現時点の研究開発の内容では産学連携に展開するための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、培養技術の確立に向け、まず前駆内臓脂肪細胞自身の十分な検討が望まれる。
神経障害性疼痛の新規標的分子を基にした治療法の開発 大阪大学
山下俊英
大阪大学
金允政
神経障害性疼痛は耐え難い痛みに慢性的に襲われる難治性疾患である。その発症機序は完全に解明されておらず、有効な治療もいまだに確立されていない。本研究課題において我々は神経障害性疼痛の新規分子メカニズムを明らかにし、得られた研究結果を疼痛治療薬の創薬開発にスムーズに繋げていくための基盤技術を構築することを目指した。得られた研究結果を基にして特許を出願し、国内学会での研究発表および科学雑誌への論文投稿を行った。更に製薬企業が募集する創薬シーズのコンペティションに応募し、共同研究契約を締結することが出来た。今後は疼痛治療薬の開発に向けて一層のfeasibility研究を実施して行く予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にNetrin-4-Unc5B受容体の結合によりSHP2のリン酸化が起こることを明らかにした点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、スクリーニング系の構築の再検討が望まれる。今後は、早めに企業との産学共同研究に進めることが期待される。
脂肪加水分解酵素群に着目した脂肪肝炎の新規診断法の開発 大阪市立大学
松原勤
大阪市立大学
樋口堅太
脂肪肝炎は近年急増している生活習慣病であるが脂肪肝炎を簡便に判定する診断法はない。これまでの研究で脂肪肝炎と肝臓の脂肪加水分解酵素活性に関連性があると推定された。ヒトとマウスの両方で代謝される脂肪加水分解酵素の基質の開発し、脂肪性肝疾患マウスを用いて脂肪肝炎診断における本基質の有用性の評価を行う研究を実施した。基質候補化合物として2種類のアゼライン酸-クマリン誘導体に合成に成功し、その有用性を評価するためのヒトおよびマウスの脂肪加水分解酵素過剰発現細胞を構築した。今後、脂肪性肝疾患マウスモデルで基質の有用性を評価する必要性がある。
当初目標とした成果が得られていない。中でも脂肪加水分解酵素(TGH)の合成基質の準備、また脂肪肝炎モデル動物の作成方針などの点で技術的検討や評価が必要である。今後は、産学連携の機会を出来るだけ早く作り、基質合成等を企業に分担して頂く等検討することが望まれる。
体液中マイクロRNAの直接定量に基づく新しい病態診断基盤技術の開発 大阪府立大学
石橋宰
大阪府立大学
鈍寳宗彦
これまでの研究から、マイクロRNA(miRNA)は、様々な疾患の病巣において特異的な発現変動パターンを呈することが示され、また血液、尿および唾液といった体液中にも検出されることが示されている。そのため、miRNAは非侵襲性検査を可能にするバイオマーカーとして注目されているが、RNA分子は一般的に体液中では極めて少量かつ不安定であり、それを高感度、安定的、さらに簡便に検出・定量する技術を開発する必要がある。本研究では、体液中のmiRNAが微小小胞であるエクソソーム(Exo)に内包された状態で存在することを利用し、まずExo表層に局在する蛋白質(CD63等)に対する特異的抗体を用いて体液中Exoを補足し、それが内包するmiRNAを1段階逆転写PCRより直接検出する基盤技術を開発した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、体液中のエクソーム内包miRNAの検出による非侵襲的診断法の開発は社会的に必要性の高い技術であり、今後のさらなる発展が望まれ評価できる。一方、腫瘍モデルマウス体液からのmiRNA検出方法の技術的改善が必要で、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、マーカーとなるmiRNAの決定と健常者、担癌患者の体液を用いたmiRNA検出を試みることが望まれる。
アシルホモセリンラクトン生合成酵素阻害剤を用いた抗細菌病原薬の開発 大阪府立大学
甲斐建次
大阪府立大学
野村幸弘
酵素阻害剤から抗病原薬への発展を目指し、アシルホモセリンラクトン合成酵素阻害剤の難溶解性向上のため、阻害剤の構造改変を進めた。ヒドロキシ基導入は種々の溶媒に対する溶解性を向上させたが、酵素阻害活性を大きく低下させてしまった。そこで、エーテル基を試みたが同じ結果となった。アデノシン部分が原因で結晶性が高くなることを予想し、アデノシンのリボース部分を改変したアナログ体を合成したところ、溶解性が飛躍的に向上し、かつ酵素阻害活性が大きく低下しなかった。そこで、細菌を使ってアシルホモセリンラクトン産生が阻害されるかどうかを検証したが、アシルホモセリンラクトン産生阻害活性は認められなかった。細胞への透過性向上には、溶解性向上だけでは不十分であることが分かった。今後は大胆な構造簡略化やケミカルライブラリーからのスクリーニングなどにより膜透過性が優れた薬剤の創製・選抜を進める。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも研究計画目標はすべて遂行した点については評価できる。一方、細菌の増殖阻害を指標にしたスクリーニング系を利用した短時間で大量の化合物の検定とそれに見合う化合物の網羅的作製が求められる。今後は、細菌の薬物取り込み機構を考慮するような生物学的知見に基づく改変法を考慮することが望まれる。
酵母を用いたレアメタルおよびレアアース回収システムの開発 大阪府立大学
岸田正夫
大阪府立大学
野村幸弘
カドミウムを吸収する酵母菌体を用いて、まずレアメタル溶液と反応させたところレアメタル類を吸収していることが確認できた。さらに酵母の培養方法を検討して、酵母を用いてレアメタル類を回収する際の好ましい培養条件なども明らかした。今後は、レアメタル吸収に関して更なる最適な条件を解明、検討する必要がある。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、カドミウム吸収能のある耐塩性酵母を用いてレアメタル類の吸収を確認したことについては評価できる。一方、吸収した菌体の回収と振盪培養での高い吸収の実現に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、所要酵母の大量培養法やレアメタル比率に応じた酵母菌株のカクテル化も検討されることが望まれる。
水環境の安全性確保:野外にて実施可能な水系感染症の簡易鑑別診断法の開発 大阪府立大学
笹井和美
大阪府立大学
野村幸弘
クリプトスポリジウム(C. parvum)の野外での汚染状況を迅速かつ簡易に検査できる診断法を開発するために、まず、幼齢ニワトリで作製した既知の珪藻類に反応を示さない5種類の抗体を用いて、近隣の3箇所の湖水から採取したC. parvumを含まない貯水サンプルを用いて自然に生息する珪藻類との交差性について免疫蛍光検査法により検討した。5種類の抗体のうち3種類の抗体は標準CP株に陽性反応を示したが、湖水から採取したサンプルにおいては擬陽性が観察された。現在、交差性を示さない抗体を幼齢ニワトリ及び幼齢マウスにて作製する準備を実施している。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、湖水から採取したC. parvumを含まない貯水サンプルを用いて自然に生息する珪藻類との交差性についてある程度解明したことについては評価できる。一方、本研究で得られた免疫寛容を誘導する技術が、抗体医療等の開発において利用可能なものか技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、水系感染症の簡易鑑別診断法の開発に興味のある企業を見出し、市場ニーズ等を協議して開発目標を明確にされることが望まれる。
特異的シグナル伝達制御因子を標的とした糖尿病治療薬の新規探索システムの開発 大阪府立大学
佐藤孝哉
大阪府立大学
西村紀之
骨格筋におけるインスリン不応答性糖取り込み能の低下は、2型糖尿病の一因である。本研究では、骨格筋におけるインスリン応答性糖取り込みシグナル伝達系の蛋白質性構成因子を標的とする創薬を目指した候補化合物のスクリーニング系の開発を計画した。とくに、研究開発担当者らがこの系で重要な役割を果たしていることを独自に見出したGTP結合蛋白質Rac1の調節因子であるFLJ00068標的とした。本年度は、このスクリーニング系で用いる細胞株の構築、Rac1の活性化と糖取り込みを同時に検出する系の構築を目指して検討を進めた。使用する細胞系の構築は現在進行中であり、検出系に関しては、種々の条件検討を進め、一定の知見を得ることができた。スクリーニング系の完成に向けて、現在も研究が進行中であり、今後の継続とさらなる進展が望まれる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも 次のステップへ進めるための課題スクリーニング系の確立のための努力がなされている点は評価できる。一方、スクリーニング系を早期に確立するための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、スクリーニング系を早期に確立し成果を出すことが望まれる。
アミラーゼ阻害タンパク質を利用したヒトアミラーゼ分別測定法の開発 大阪府立大学
炭谷順一
大阪府立大学
柴野裕次
ヒトアミラーゼアイソザイムの一方のみを阻害する阻害タンパク質を得ることを目的として、ヒトアミラーゼを阻害しないアミラーゼ阻害タンパク質Paimを用い、阻害に必須ではないと考えられる42アミノ酸に対してsaturation mutagenesisを導入し、ヒト唾液由来アミラーゼに対して阻害能を獲得した変異阻害タンパク質のスクリーニングを行った。いくつかのライブラリについてスクリーニングを行った結果、あるライブラリから5つの陽性クローンを取得した。それらのうち阻害活性が強い3株の置換アミノ酸を同定したところ、3つとも同じアミノ酸だった。現在、得られた阻害タンパク質の詳細な性質を検討している。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ヒト唾液由来アミラーゼに対して強い阻害活性をもつ3つの変異体を得たことについては評価できる。一方、 膵炎の臨床検査方法は、すでに多種類ある。報告者らの膵アミラーゼ検査が優位の市場位置を占めるかには、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、実用化に向けては、基礎研究から応用研究への切り替えをすることが望まれる。
アムホテリシンBの新規作用メカニズムによるプリオン病治療薬への応用 大阪府立大学
高野桂
大阪府立大学
鈍寳宗彦
本研究目的は、抗真菌薬であるアムホテリシンBが、グリア細胞の機能調節を介して、プリオン病の治療効果を発揮する可能性を探索するものである。今回の研究の結果から、アムホテリシンBが、細胞レベルだけでなく動物レベルでもアストロサイトおよびミクログリアの機能を変化させることが明らかとなった。今回の期間内では、プリオン病に対する治療効果を発揮するかどうか、疾患モデル等を用いた研究成果までには至らなかったため、アムホテリシンBによる神経細胞保護効果について、今後、さらに検討する必要がある。
当初目標とした成果が得られていない。中でも神経細胞とグリアとの共培養下におけるアムホテリシンBの薬理効果を解析する点での技術的検討や評価が必要である。今後は、アンホテリシンBがプリオン病への治療薬として確立するために必要となる基礎資料を明確に示すことが望まれる。
ホウ素‐中性子捕捉療法によるメラノーマ治療のための分子標的型ホウ素薬剤の開発 大阪府立大学
服部能英
大阪府立大学
西村紀之
本研究は、がん-ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)によるメラノーマ治療のための、腫瘍選択性・集積性に優れた新規ホウ素薬剤の開発を目指すものである。そこで、メラノーマに高発現するチロシナーゼを標的とし、毒性が低くチロシナーゼ阻害活性の高い美白剤を母核としたドデカボレート含有チロシナーゼ阻害剤(DB-TI)の分子設計・合成・評価を行った。
その結果、最適な母核分子を特定するとともに、現行の臨床薬より腫瘍集積性の高い有望な新規化合物を2種類開発した。今後、新規化合物について特許出願を行うとともに、より多様なDB-TIライブラリーを構築して、真に実用的なホウ素薬剤の開発を目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に難治性メラノーマの高いQOLでの治療法の提供が可能であると期待できる。また、ホウ素原子含有率が高く、水溶性で毒性の低いドデカボレートを活用する多彩で迅速な合成技能と特許化手法を展開している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、腫瘍モデル動物を用いたin vivoでの評価も含めた、膨大な数の化合物のスクリーニングを行う必要性があり、より高い臨床効果が期待できる薬物を母核とした展開が望まれる。今後は、真に実用に耐えうる薬剤開発として、探索戦略を検討することが期待される。
In vitro神経発生毒性評価のための幹細胞分化形態パラメーターの創出 大阪府立大学
森英樹
大阪府立大学
西村紀之
本研究では生体外にて神経幹細胞を用いて神経発生毒性を定量的に評価する方法を検討した。その結果、細胞や細胞凝集塊の顕微鏡画像をもとに形態的特徴を形態パラメーターとして数値化することが神経発生毒性の評価に有用であることがわっかた。さらに、作製した細胞形態の特徴抽出プログラムによって、塩化カドミウムを被験物質として曝露した時の細胞数1000個程度のマウス脳由来神経幹細胞やその分化細胞顕微画像から、塩化カドミウムの毒性と相関する三種類の形態パラメーターを得るという新知見を得た。形態的パラメーターの精度は撮影画像に影響されるため、今後観察撮影装置の改良も視野に入れた更なる研究開発を考えたい。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、従来、扱いにくいと考えられていた細胞の形態変化を適切なアルゴリズムを確立することにより毒性評価に用いようとした独創性に対してはは評価できる。一方、既存の方法よりも、簡便で信頼性の高い方法を確立できれば、様々な応用が考えられる。全体の研究計画内における個々の実験系(観察系)において、的確な目標を設定に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、神経幹細胞の塊は、培養条件によっては、分化度の異なるヘテロな細胞集団となることも多いので、どの分化状態をターゲットとするか、明確にし、培養条件をそろえ、研究を進められることが望まれる。
障がい児の体幹-足部運動連鎖型補装具の開発のための実証的研究 大阪府立大学
米津亮
大阪府立大学
金澤廣継
今回、障がい児の体幹運動をトリガーとして、足部の運動を制御・調整できる補装具の開発に向け活動を展開した。今回の研究を通して、障がい児を対象とした運動シミュレーションと健常児を対象とした試作補装具利用時の実証実験を実施した。その結果、試作補装具の利用により、立ち上がり動作中に観察される代償的運動が軽減し、より効率的な運動を再現できることが示された。このことは、開発予定の補装具の制御システムが、障がい児の動作改善に寄与することを示唆するものである。今後は、企業と共同でより早期に補装具を完成されたうえで、障がい児を対象とした実証実験を通して実用的課題の把握が必要となる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、障がい児を対象とした運動シミュレーションによる実証実験と健常児を対象に試作予定の補装具機能を予備的に再現した実証実験を実施した点、またK社と共同で補装具を開発していく点については評価できる。一方、今後の技術課題、研究の進め方の方針については検討されているが具体性に欠け、開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、当初予定した実証試験を実施するには至らなかった理由を明確にし、より実用化に近い実証試験を行うことがが望まれる。
細胞治療を指向した人工受容体-活性化システムの開発 大阪府立大学
中瀬生彦
大阪府立大学
西村紀之
本研究課題は、人工コイルドコイル形成ペプチド配列を利用した人工受容体活性化システムの構築研究であり、将来の細胞治療に活用可能な技術開発に繋げることが大きな目標である。研究成果として、人工受容体を効率的にクラスター化及び活性化誘導できる人工リガンドの創製に成功した。受容体応答のみならず、細胞特異的な薬物送達への技術応用が可能であることを新たに示し、短期間に大きな成果を上げることができた。現在in vivo評価に移行しつつあるが、現段階においてもin vitro研究で細胞機能制御やケミカルバイオロジー等で大いに活用できるツールであると考えられ、細胞遠隔操作・治療技術開発への基礎研究で貢献することが強く期待できる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、特許性の高い新たなリガンドを作成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、疾病を限定して薬の効果を示すなどインパクトが強い優位性を示すなどでの実用化が望まれる。今後は、臨床応用を見据えて、再生医療や細胞医療の研究者との協力体制の構築されることが期待される。
間葉系幹細胞を用いるヒト造血幹細胞の体外増幅システムの開発 関西医科大学
薗田精昭
関西医科大学
三島健
本研究では、研究責任者がヒト臍帯血中に同定した非常に未分化なCD34抗原陰性(CD34-)造血幹細胞HSCをヒト骨髄由来間葉系幹細胞(DP MSC)と共培養する系において、長期骨髄再構築細胞であるCD34+CD38-CD90+ HSCを効率的に産生するシステムの開発・確立を目指した。約420個のCD34-CD133+ HSCを出発材料として前記システムで増幅を試みた。限界希釈実験より、約50個のCD34+CD38-CD90+ HSCの産生が確認されたが、HSC数としては約1/8に減少していた。この原因は、DP MSCが臍帯血由来CD34-HSCの最適ニッチではなかった可能性が考えられた。今後、すでに樹立に成功している胎盤由来のニッチ細胞を用いる増幅系の開発を進める予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ヒト由来のニッチ細胞(間葉系細胞)を用いたヒト造血幹細胞の増幅系は確立できれば極めて魅力的であり、その試みはについては評価できる。一方、ヒト由来のニッチ細胞(間葉系細胞)との共培養のみで本当にヒト造血幹細胞の大量増幅が可能かの検証に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、研究を効率的に進めるために、小規模な実験で、幹細胞の増幅を検定できる工夫を検討されることが望まれる。
TAK1-JNK経路を標的とした新規免疫制御薬の開発 関西医科大学
松田達志
関西医科大学
三島健
TAK1-JNK1特異的阻害剤であるLL-Z1640-2は、活性化T細胞選択的な細胞死を誘導する。本研究では、新規のTAK1-JNK経路阻害剤の同定を目指し、富山大学・和漢医薬学総合研究所ならびに金沢大学・がん進展制御研究所から供与された化合物ライブラリーのべ1000種類を対象に各種のスクリーニングを行った。しかし、TAK1を阻害可能な化合物は複数見出されたものの、LL-Z1640-2の示す活性化T細胞特異的アポトーシス誘導作用は観察されなかった。今後は、他のMAPKK-Kファミリーへの非特異的効果を視野に新たなスクリーニング系を構築し、より大きな化合物プールでスクリーニングを進めたい。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも1000種類の化合物から候補となるJNKシグナルに対して相対的に高い阻害活性をもつ3つの化合物を見いだした点は評価できる。一方、大規模TAK1阻害剤スクリーニングを行うには、費用がかかるため、明確な目標(複数)を決めた共同研究を行うことが必要である。LL-Z1640-2の短所を改善、克服できるような化合物を同定できなかったことから、今後、本スクリーニングにおけるTAK1阻害活性探索における特異性を高めるしくみの導入が不可欠であろう。
in situでの骨治療に供するバイオアクティブ連通多孔質体の開発 関西大学
岩舞ラ彦
関西大学
中本博幸
超高齢社会に突入した社会状況を背景に、本開発研究は、新たな充填型骨再生用マテリアルを提供することを目的として実施された。水と反応して水酸アパタイトに転化し硬化するα-リン酸アパタイト微粒子とポリ乳酸-グリコール酸(PLGA)微粒子によって安定化されたエマルションを調製し、連通孔構造をもつ多孔質硬化体をin situで調製することに成功した。PLGA微粒子のサイズと混合比により連通孔の孔径と気孔率をそれぞれ制御することが出来た。この多孔質体への骨芽細胞の浸潤を確認するとともに、北海道大学病院との共同研究により、多孔質硬化体が炎症反応を惹起しないことも明らかにした。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、連通高孔構造を有する多孔質硬化体の調製法を確立し、骨芽細胞が増殖可能で、かつ炎症反応を惹起しないことを明らかしたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、骨欠損モデルにおける骨修復能の評価という課題も残されており、臨床でこの多孔質の有用性を示すことで実用化が望まれる。今後は、動物の骨欠損モデルにおける骨修復能を明らかにされることが期待される。
並列インコヒーレントディジタルホログラフィック3次元動画像記録法とその光学システム開発に関する研究 関西大学
田原樹
関西大学
石原治
本課題の目的であった蛍光の単一露光・深度3次元画像記録法を提案でき、実現光学システムを示せた。また、計算機シミュレーションにより実現可能性と性能を明らかにでき、マルチカラーのインコヒーレント光3次元画像情報同時記録システムの考案へ発展させ特許出願した。他に、広視野のホログラム記録時の劣化を補正する方法を提案し、特許出願した。残り、インコヒーレント光の3次元動画像記録可能性を実験的に示すために現在光学システムを設計し、構築中である。以上より、当初の目的であった記録法の提案、実現可能性の提示に達成し、さらに機能付加、性能向上を果たし特許出願を行なった。今後の展開としては、技術の実証と目標であったインコヒーレント光の3次元動画像記録応用が挙げられる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に少数生体分子の同時3次元動態可視化可能な蛍光の単一露光・深度3次元画像記録法を提案し、その光学システム開発を行っている技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、複数物体の3次元動態測定は、生命化学分野に大きな進展をもたらす可能性を秘めており、医療を通じて社会還元されることが望まれる。今後は、産学連携の進展と共に、早急な企業との連携を推進されることが期待される。
家庭用こどものための発達障害スクリーニング機器の開発 近畿大学
岡田志麻
近畿大学
根津俊一
本研究では、家庭におけるこどものための完全に非接触な発達障害スクリーニング機器の開発を目的とし、動画像を用いた簡易なスクリーニング機器の開発を行った。当初、課題として考えられていたものは、これまで病室における動画計測では備え付けるものとなっていたため、家庭用に向けて小型で簡易な画像計測装置を開発する必要があったこと、また、収集した動画を処理し、発達障害の1次スクリーニング結果を表示するソフトウエアを組み込む必要があったが、発達障害を抽出するための体動閾値やアルゴリズムは決定されていなかったことが挙げられる。これらを解決するために、まず、小型カメラとFPGAを用いた動画処理システムを構築、家庭での使用を可能な小型化に成功した。また、動画から体動を算出するプログラムを自動化し、保護者や介護者の映り込みを自動に除去し対象者の夜間体動のみを抽出するプログラムを構築した。さらに、検証用の定型発達児と発達障害児の就寝中の体動データを元に、発達障害児をスクリーニングするための体動閾値のパラメータとして体動静止持続時間を考案し、このパラメータによって発達障害の疑いがあるか否かをスクリーニングするための数値決定を行った。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、申請書の計画通りに研究が進み、当初の目標を達成していることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本研究の研究成果は、現代においてその数が増加している発達障害を早期に診断し、なるべく速やかに対策をとることが可能とすることができるので、社会への貢献は高いと考えられ、実用化が望まれる。今後は、臨床データをさらに収集し、エビデンスレベルを高めることが期待される。
超小型USB培養細胞監視装置の開発 近畿大学
加藤暢宏
近畿大学
鈴木義彦
生殖補助医療の高度化とコスト低減に寄与する、培養細胞の常時監視を実現する安価なデジタル倒立顕微鏡システムの開発を行った。3次元CADを高度に活用する事により、インキュベータ内に設置可能で、胚の卵割を常時監視できる性能を持った装置を開発する事ができた。無限遠補正系の顕微光学系と高解像度の撮像素子を採用する事により、高い画質を持った装置となった。対物レンズを駆動するための機構・電子回路を設計・製作する事で、制御用PCからの遠隔操作でピント調整、撮影を行う事ができた。一方で光学系の変更に伴い、装置の奥行きは若干長くなってしまったが、当初の目的であるインキュベータに内蔵する事には支障はない。実際の培養細胞の観察による評価には至らなかったが、今後早急に評価を行う。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、無限遠補正光学系、ミラーボックスを採用して光路を屈曲できたこと、および低電圧低消費電力で駆動可能なピント調整機構を実現したことは評価できる。一方、高温、多湿の過酷な環境での使用になるので、耐久性に対する評価が必要になると思われる。今後は、ウシ体外受精胚の培養、その後共同開発医療機関との検証へとステップアップすることが望まれる。
多剤耐性真菌制圧のための真菌の薬物排出機序の解明 近畿大学
小堂直彦
近畿大学
根津俊一
出芽酵母では、薬剤排出ポンプの発現制御を行う複数の転写因子が存在し、これらに突然変異が生じると多剤耐性形質が付与される。突然変異が生じる転写因子により、耐性を示す薬剤、依然として感受性を示す薬剤が異なる事実を発見し、これまでに薬剤のスクリーニング法に係る特許を出願した。本研究では、本特許価値をさらに高めるために、「転写因子-排出ポンプ-薬剤」の関係を詳細に解析した。ヒト用抗真菌剤を中心に解析を進めてその詳細を得ることに成功した。今後は、この研究成果に基づき、多剤耐性真菌に対しても有効な薬剤をスクリーニングできる方法として、製薬会社などに導入を働きかけることとする。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に。耐性菌と感受性菌を迅速に区別できるような系がある点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、各種ライブラリーを迅速に処理し、有効な化合物を同定できるように、系を改善する必要がある。今後は、現場で使える系の開発と耐性獲得機序の詳しい解析が期待される。
機能性食品としての利用が期待される新規オリゴ糖アルドン酸の生産法の確立 地方独立行政法人大阪市立工業研究所
桐生高明
地方独立行政法人大阪市立工業研究所
内村英一郎
イソマルトオリゴ糖を原料とした場合に、イソマルトースを酸化しイソマルトビオン酸(IsoA)生産する反応が阻害される原因の解明を目指した。当初の予想と異なり、イソマルトトリオースなどは反応を阻害する原因ではなかった。その後の研究で、その反応阻害の原因の一つである可能性の高い事象を見出した。IsoAを生産する候補の酵素をコードする遺伝子を欠失させた酢酸菌を作製した。本菌株の野生株はイソマルトースを酸化しIsoAを生産したが、遺伝子欠失株はイソマルトース酸化活性を全く示さないことから、本遺伝子がイソマルトビオン酸を生産する遺伝子であることを明らかにし、目的遺伝子の特許化に大きく前進することができた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、生産性の向上には反応系から阻害物質、グルコースを除去することが必須であることを明確にしたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、オリゴ糖酸化酵素に関係する遺伝子の発現強化と生産性の関係を明確にすると共に、細胞膜の電子伝達系のバランスも解析するなどでの実用化が望まれる。今後は、検討した酢酸菌の中に高活性のものがあるので出発株を再検討されることが期待される。
体内で自らつくる自家移植用シートの厚みを制御する技術の開発 独立行政法人国立循環器病研究センター
森脇健司
独立行政法人国立循環器病研究センター
大屋知子
任意厚の組織薄膜を作製する技術の確立を目的として、ラットを対象に本技術の実現可能性を検討した。結果として、目標厚みに対し誤差が多少生じるものの100〜 1000 μmの範囲で任意厚の組織薄膜作製に成功した。微細弾性構造観察から膜厚に関わらず弾性率はほぼ一定であること、破断試験から膜厚が増加するほど耐圧性が向上することを明らかとした。さらに、2度の手術をしなければならないという本技術の欠点を克服する方法も考え、基礎的検討から狙い通り組織体を作製できることを確かめた。今後は中型動物での実施や作製した組織薄膜の適応例の探索を行う予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、 任意厚の組織薄膜を作製する技術の確立が目標であったが、ほぼ実現できた。自己組織から1.0mm程度の移植片を作製し、厚みまで制御する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、まだデータ量が不足しているようだが社会的なインパクトもあり、社会還元に導かれることが期待され、実用化が望まれる。今後は、技術移転の可能性を視野に、より高精度の技術確立と、動物種の幅広い検討をされることが期待される。
正常心臓および心奇形の解剖学的構造および機能理解のための3次元イメージング画像の開発研究 独立行政法人国立循環器病研究センター
植田初江
循環器疾患、脳血管疾患は日本国民の死因の2位、3位を占め国民病となっている。しかし病名からは疾患のイメージはつかめず、とくに血行動態や心臓の動きがあるものはグラフィック化して動画で示すことが重要である。国立循環器病研究センターでは1983年以来3000例以上の循環器・脳血管疾患に特化した病理検体を保存しており、このコレクションは日本でも有数である。これらの典型例、希少例からグラフィック化することで医師対象から中・高校生の一般教養までを対象として広く教材に使える資料構築を目的とした。これまで正常心臓およびファロー四徴症の外観、血流の流れ、心臓弁の動きなどグラフィック化してきた。今後さらに症例を増やし、ホームページ上で順次公開していく予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、「将来のデータベース化を考慮したデータ構造を持つように質の高いモデル構築」の目標はまだ達成できておらず今後の課題として残されているが、心臓の3次元CGモデルの構築については評価できる。一方、技術を持った専門家を必要とする段階であり、技術移転につながるノウハウや客観的な方法論が確立に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、特別な知識がなくても3次元モデルの形状入力を支援する手法が開発されることが望まれる。
小口径ステントグラフトへの応用を志向した血液適合性素材へのペプチド固定化法の開発 独立行政法人国立循環器病研究センター
柿木佐知朗
独立行政法人国立循環器病研究センター
大屋知子
本研究は、生理活性ペプチドを血液適合性素材に固定化する方法の確立と、その機能評価ならび小口径ステントグラフトへの応用を目標とした。僅か8ヶ月の研究期間で、チロシン残基を含む細胞接着性ペプチドの合成と、チロシン残基の酸化反応による延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)基材へのペプチドの固定化とそれによる細胞接着性の向上を達成した。チロシン残基の酸化反応の条件をより緻密に制御することによって、ペプチド固定化の更なる高効率化が期待される。また、本研究の方法は、ePTFE以外の高分子や金属などへの生理活性ペプチドの固定化にも有用と考えられ、今後はステントグラフトを含む医療デバイスの生理的機能化への応用の可能性を検証したい。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、チロシン残基の酸化反応を利用した方法でePTFE素材上に血管内皮細胞接着性ペプチドを固定化できることを明らかにしたことについては評価できる。一方、ePTFEに血管内皮細胞親和性を効率的に付与できるか否かの検証に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、動物実験で有効性の検証がされることが望まれる。
Apelinシグナル制御による網膜内機能的血管再生を目指した虚血性網膜症治療法の開発 摂南大学
石丸侑希
摂南大学
上村八尋
生理的条件下では、網膜内に構築されたアストロサイトの発現するfibronectin(FN)を足場として血管が形成されるが、糖尿病網膜症などの虚血性網膜症では、網膜から逸脱した異常血管が多数形成され、それらが破綻し失明に至る。したがって、網膜内へ血管を誘導する機構を解明することが本疾患の治療に有用であると考えられる。これまでに我々は、異常血管の形成にオリゴペプチドapelinが関与することを見出していたことから、本研究では、FNの発現に対してapelinが関与するか否かについて検討した。その結果、虚血性網膜症モデルマウスの網膜では、異常血管の周囲にFNの強い発現がみられ、そのFNの発現はapelin欠損により抑制されることを見出した。この結果は、apelinシグナルを抑制することで、虚血により惹起されるFNの発現異常を正常化できる可能性を示唆するものであり、網膜内に血管を誘導する機構の解明に繋がると考えられる。今後は、apelinによるFN発現制御機構について詳細な検討を行う。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもapeliapelin欠損で虚血性網膜症の病的血管形成が抑制されることを明らかにした点は評価できる。一方、虚血性網膜症の異常血管形成におけるapelinの関与する分子機構をより詳細に明らかにするためのデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、医療への応用を抗体医薬作製を含めての方向性を明確にすることが望まれる。
認知症ケアを高齢者の感情面から予防する情動ロボットによる新療法 大阪芸術大学
中川志信
認知症の要因である人間の老化は、知力、体力より「感情の老化」が認知症要因との諸説から、家族と対話機能のある認知症ケアロボットとのコミュニケーションで認知症高齢者を情動させ、認知症進行を抑制する仮説を立て実験を行った。視覚、聴覚、触覚を刺激する情動ロボットを完成させ、認知症高齢者への検証実験と脳波測定を行った。家族との対話機能と、それを引き立てるロボットの情動は、実験後の脳波結果からも有効であることが明らかになり、認知症進行抑制の新療法としての可能性が発見できた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、アバターロボットの完成については、情動ペットロボットの開発は未だ途上であるが、進展があったことについては評価できる。一方、目標どおりに研究開発が進展すれば、認知症高齢者に対して新しい形でのケアを提供できる可能性がある。研究成果が応用展開された際には社会還元に導かれる可能性があり、さらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、情動ペットロボットの完成のための研究開発の方向性は示されているので、より具体的な研究開発計画を立案されることが望まれる。
超分子素材を利用した生分解性マイクロニードルによる薬物の経皮吸収 神戸大学
大谷亨
神戸大学
燻R良一
本研究では、在宅医療への将来性を見据えた「皮膚に貼る薬物治療」を目標とし、安全性が高くかつ製造が容易な超分子素材を利用したマイクロニードルを作製し、これに難経皮吸収性薬物を含有した薬液をコートして皮膚からの薬物吸収特性を明らかにすることを目的とした。ポリグリセロールデンドリマー(PGD)をポリエチレングリコール(PEG)で化学修飾した「PEG修飾PGD」を超分子素材として用い、長さ約780μmのマイクロニードルの作製が可能であったが、機械的強度が不十分であった。難経皮吸収性薬物としてドーパミン誘導体(L-DOPA)を選択し、PGDに溶解させて培養皮膚からの吸収を検討したところ、真皮への透過量が10mg/cm2/L以上となった。以上から、PGDはL-DOPAの経皮吸収促進剤として有望であり、今後は、生分解性マイクロニードルとしての成型加工条件の最適化を検討する必要がある。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、第一目標である生分解性マイクロニードルの作製が達成されていないが難水溶性薬剤であるドーパミンについて、適切な経皮吸収促進材を見いだせた点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、従来の技術では経皮吸収が困難であった薬剤について、開発された経皮吸収促進材により適用範囲が広がる。、マイクロニードル方式で進めるのであれば、何よりも作製条件の確立が重要で実用化が望まれる。今後は、鍵となるマイクロニードル作製についての技術的課題が不明で、新規出願による知財確保も考慮し、研究開発方針を検討されることが期待される。
高眼圧の早期診断と創薬に向けたスクリーニング系の開発 神戸大学
平島正則
神戸大学
鶴田宏樹
C57BL/6近交系においてFlt1+/-マウスとFlk1+/-マウスを交配し、6ヶ月齢で70%以上のFlt1+/-;Flk1+/-マウスが牛眼を呈することを目標として、研究開発を実施した。メンデルの法則に従えば出生マウスの25%はFlt1+/-;Flk1+/-マウスであると期待されたが、実際にはわずか8.3%であり、Flt1+/-;Flk1+/-マウスは出生後の発育も顕著に悪かった。これらのことは、Flt1+/-;Flk1+/-マウスがおそらく循環器系の発生異常をきたして一部が胎生致死となっている可能性を示唆しており、新しい知見として学会発表から論文投稿へ繋げていく価値があると考えられる。今後は、現在飼育中のマウスの解析等を継続することで牛眼発症率を明らかにして、眼圧降下作用を示す新規薬剤の開発に有用なマウスモデルかどうか検証する。 当初目標とした成果が得られていない。中でもFlt1+/-マウスの交配によって得られるマウスは少なく、牛眼の発症率は向上できていない点でさらなる技術的検討や評価が必要である。Flt1+/-マウス胎仔の解析の病理学的解析は意義があるので、今後は、実験マウスの数を増やすことが望まれる。
ロコモティブシンドローム予防のためのハイブリッド型他動運動装置の開発 神戸大学
藤野英己
神戸大学
荒谷典利
加齢等に伴う筋減弱症を予防・改善することができるハイブリッド型他動運動装置を開発した。これまで優位性を検証してきた変調中周波電気刺激を用い、自力的な運動に依らず、臥位姿勢で安全かつ筋力増強運動と同等の効果を得られる運動装置を開発することを目的とした。一方、電気刺激のみでは、筋減弱症を予防・改善することができる程度の刺激強度を得ることが困難であることから、筋に対する適切な刺激強度を得る手段として、他動関節運動による機械的な伸長刺激を組み合わせた。その結果、電気刺激による負荷量に比較して、2倍以上の運動負荷が可能となり、筋減弱症を予防・改善することができる目安である筋負荷量を超えることができた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ハイブリッド型他動運動装置における生体の様々な反応について明らかにした技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本装置が必要となるのは大半が高齢者と予想されるため、高齢者を対象にした基礎的研究がおこない、実用化が望まれる。今後は、特許出願のための準備や適切な企業との共同研究体制を確立し、研究室レベルの開発研究から、臨床レベルでの使用を目指す応用展開がされることが期待される。
神経保護・再生機能を持つ活性化アストロサイトを検出するための放射性イメージング剤の開発 神戸大学
森田光洋
独自に開発した脳傷害モデル「光傷害マウス」は顕著な脳組織再生を示し、この再生部分に神経幹細胞のマーカーであるネスチンを発現した活性化アストロサイトが集積する。本研究開発では、ネスチン陽性活性化アストロサイトにおける脂肪酸代謝の亢進に着目し、PET/SPECTによる脳組織再生の画像診断に有用な放射性プローブを探索した。その結果、[14C]パルミチン酸と脂肪酸関連SPECTプローブであるBMIPPが光傷害モデルの再生部位に顕著な蓄積を示すことから、脂肪酸の有用性が明らかとなった。BMIPPはすでに心臓の診断に利用されているが、SPECTは普及率が低いため国内市場に限定されている。今後は、プローブの構造を最適化するとともに、PETプローブとして再開発し、本成果を世界市場における脳梗塞や頭部外傷の診断方法として発展させる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、特許の申請を行っており、脂肪酸の有用性を明らかにし、BMIPPを用いた活性化アストロサイトの画像化の可能性を示したこと関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、 実験動物で画像化が達成されたことは、企業化に向けて大きく前進したと考えられ、実用化が望まれる。今後は、BMIPPの集積が実際に活性化アストロサイトによるものか、ヒトへの応用を考えても十分な量が集積しているのかを明らかにすることが期待される。
ドッキングシミュレーションによる血管内皮リパーゼ(EL)阻害薬の探索研究 神戸大学
保多隆裕
神戸大学
鈴木茂夫
本プロジェクトではドッキングシミュレーションに基づくEL阻害薬の探索を目指し、X線小角散乱(SAXS)技術による溶液中の立体構造情報とホモロジーモデリングのデータを融合させることで、ヒトELの立体構造解析を行った。統合計算化学システム(MOE)によるドッキングシミュレーションでは、これまでに約350個の候補化合物を選出した。一部をEL酵素アッセイで評価したが、IC50値で10uM以下のものはまだ見いだせていない。今後もドッキングシミュレーションとEL酵素アッセイを継続することで、EL阻害薬の探索を行う。また、これまで困難であったヒトELの結晶化にも成功しており、詳細な構造解析が可能となることでドッキングシミュレーションの精度がさらに向上することが期待される。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもX線小角散乱(SAXS)によるELの立体構造情報を得るこEL阻害薬の限定化にドッキングシュミレーションが有用であることを示したことは治療薬の限定化に役立つ可能性があり評価できる。一方、ドッキングシュミレーションによるEL阻害薬の限定化は産学協同の創薬につながる可能性はあるが、最終的なELの結晶構造解析やIC50が3μM以下のリード化合物の検出が望まれる。今後は、EL結晶構造解析の手法を他施設協同研究などで早期に得ることが望まれる。
機能性ウイルスカプセルの試験管内合成:ドラッグデリバリー及びバイオイメージングへの応用 兵庫県立大学
今高寛晃
兵庫県立大学
八束充保
本研究で開発している製品および技術は機能性ウイルスカプセルとヒト因子由来再構成型タンパク質合成系である。試験管内で機能性ウイルスカプセルを合成し、バイオイメージングやドラッグデリバリーに応用できるようにしていくことが当研究の本貫であり、同時に新奇な技術としてヒト因子由来再構成型タンパク質合成系を開発し、それにより機能性ウイルスカプセルを合成し、そして技術転移していこうとするものである。機能性ウイルスカプセルについては、癌細胞のバイオイメージングへ応用が期待できるものが細胞培養での機能検定レベルにまで漕ぎつけている。ヒト因子由来再構成型タンパク質合成系は新たな試験管内タンパク質合成系としての目途が立ち、場合によっては機能性ウイルスカプセル合成から切り離した技術として製品化を行えれば、と考えている。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ヒト因子由来再構成型タンパク質合成系の開発と機能性ウィルスカプセルの合成を目指した独創的研究であり、実現すれば非常に高いインパクトを与える開発研究で評価できる。一方、がん細胞への集積性の向上に向けて、ターゲティングのためのペプチド配列の再検討が必要である。また、細胞に取り込まれたカプセルから薬品を細胞質へ放出させる方法に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、機能性ウイルスカプセルの合成と、新規タンパク質合成システを切り離して連携に持っていけるように、より具体的な目標設定がされることが望まれる。
健康の維持増進に役立ち嗜好性の高い鹿肉加工食品の開発 兵庫県立大学
吉村美紀
兵庫県立大学
八束充保
シカ肉の機能性食品としての活用を促進させるために、特に、脳機能向上や疲労・ストレス軽減作用のあるアシルカルニチン類について調理と加工における損失を防ぐ方法を検討した。その結果、加工法として、真空調理によるスチーム加熱が適していた。スチーム加熱の温度について検討を行い、80℃加熱の方が100℃加熱より有意にアセチルカルニチンを多く含み、物性測定において80℃加熱の方が有意に軟らかく、官能評価においても軟らかく好まれることが認められた。健康の維持増進に役立ち嗜好性の高い鹿肉加工として、安定した量を得ることができる「もも肉」を用いて、80℃・30分間の真空スチーム加熱を行う方法を有効と評価した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、真空調理で80℃のスチーム加熱がカルニチン類の残存及び物性面から優れていることを見出したことについては評価できる。一方、健康の維持増進を謳うとすれば加工調理に伴うカルニチン量の変動だけの研究では物足らず医学系との共同研究の実現に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、嗜好性の高い鹿肉加工品の開発に的を絞り、食品加工業者と連携し、鹿肉の収集から始まる諸問題をより具体的に検討されることが望まれる。
MRI性能向上に向けたNSI(核スピンイメージング)用の超偏極3Heガス生成研究 神戸常盤大学
田中正義
公益財団法人新産業創造研究機構
中嶋晴久
本研究では、肺イメージング用3He-MRI用造影剤である超偏極3He生成原理である強制偏極法(Brute Force Method)の実証を目標とする。そのために、希釈冷凍機とポメランチュクセルを用いた極低温化と液化3Heの固化による3He超偏極生成を目指す。既設のポメランチュクセルは全金属・ピストン圧縮型・ポメランチュクセル方式だったが、熱容量が大きく、熱伝導性が低く、極低温で高圧に耐えられなかった。本研究では、新たにセル本体を非金属のエポキシとし、ピストンの代わりにカプトンを圧力伝達メンブレーンとして使い、熱伝導向上のため、焼結銀を用いたポメランチュクセルを設計・製作し、それを用いた超偏極生成検証実験を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、核磁気共鳴信号を桁違いに大きくする技術確認に向けて、技術整備と問題点の所在を明らかにしている点。また、Brute Force法では安定して超偏極希ガスが提供できる点の技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本質的な技術革新であり、医療をはじめ多分野で社会貢献することが期待できる。医学領域を含む多分野研究者との協力体制があれば研究が加速する可能性があり、実用化が望まれる。今後は、大型の研究費をもとに、より多分野の研究者を交えて研究を進めることが期待される。
汎用自動免疫分析装置のポータブル化に向けた流体制御システムの集積化 独立行政法人理化学研究所
田中陽
独立行政法人理化学研究所
井門孝治
微細流路に化学操作を集積したマイクロチップは反応時間短縮・試薬量低減など革新的分析診断への応用が期待されている。とくに血液分析に必須なマイクロ免疫分析システムは実用性が高いが、ガラスの硬さゆえに流体制御系を組み込むのは難しく装置の大型化が問題となっている。そこで本課題では、申請者が創製した超薄板ガラスを用いた全ガラス製ポンプ・バルブシステムの改良としてチップの任意の場所にアクチュエータを固定できるジグと高速フィードバックが容易な制御ソフトを開発し、流体制御系のオンチップ集積化への道筋をつけた。達成度としては当初予定が達成されたわけではないが、基本的な部分を固めることができた。今後、実機搭載に向けたアプリケーションへの適用に取り組む。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、問題点を早々に見つけ出して研究内容の修正を図り、アクチュエーターの固定器具ならびにソフトウエアの開発に成功し、ポータブル化に向けた流体制御デバイスの基礎的な部分が強化された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、実用面で重要な課題がクリアされたので、本来の目的であったマイクロ流体制御の研究に取り組み、実用化につながる成果をあげることが望まれる。今後は実用性のある小型送液システムの開発は大きな需要が見込めるので、本研究に興味を持つニーズ側(応用分野)の企業とのマッチング、企業との情報交換をさらに積極的に進め、社会還元につなげることが期待される。
培養基材表面を制御したiPS細胞パターニングエコカルチャー技術の開発 公益財団法人先端医療振興財団
西下直希
目標: 本研究課題は、『iPS細胞パターニングエコカルチャー技術の開発』に関する要素技術開発研究である。本課題を実現するために必要な技術項目を細分化し、培養基材表面処理を施すことで、a).iPS細胞のシングルセル培養技術開発 b). ECMの非吸着表面の処理技術の開発 c).シングルiPS培養からのパターニング培養 d).ECM再利用の有効性評価についての研究を実施した。
達成度(90%)
研究の結果、a).iPS細胞のシングルセル培養技術の確立 b).ECMの非吸着表面の処理技術の確立 c).シングルiPS培養からのパターニング培養技術の確立 d).ECM再利用の有効性評価 等の各技術的課題をクリアするで、培養基材表面処理技術による『iPS細胞パターニングエコカルチャーに必要となる基盤技術の確立』に成功した。さらに、この表面処理技術を施した後、ECMを回収し再利用試験の結果、ECMが再利用できることも確認した。 以上の結果より、iPS培養の細胞品質評価が可能な大量培養技術』と『低コスト化培養技術』に応用可能な手段の一つであると考えられる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、(1)iPS細胞の吸着性を制御するECMの表面加工技術の開発、(2)パターニング培養基盤の検証とiPS細胞のシングルセル培養法の検証、(3)低コスト化に向けたECMの再利用技術の検証に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、、シングルセル培養法とパターニング培養法である程度のレベルに達した場合には、iPS細胞の安定培養技術や全自動培養技術の共通基盤となることが期待される。今後は、安定した培養系が確立されれば、プローブを用いた培養環境の測定やライブセルイメージングによる増殖管理などにより、iPS細胞全自動培養システムにも大きく貢献しうる技術となることが期待される。
骨再生医療に貢献する骨芽細胞シートの保存・輸送法の開発 奈良県立医科大学
赤羽学
奈良県立医科大学
大野安男
本研究は、細胞シートを安定に保存し輸送する方法の確立を目的として、ラット、ヒツジおよびヒト骨髄細胞を用いて実験を行った。24時間以内の保存時間で、保存温度条件を37℃、室温(22℃)あるいは低温(4℃)とし、細胞培養液あるいはHBSSを保存液とした。いずれの条件でも24時間保存後も細胞シートの形態は維持されていた。ATPとLDH測定によって算出した細胞生存率は、新鮮細胞シート(保存なし)に比較して37℃と室温保存では有意に低下していたが、低温保存では24時間まで維持されていた。人工骨と保存細胞シートを組み合わせて移植したサンプルの組織像ではラット、ヒト骨髄細胞ともに骨形成がみられた。室温および低温保存で24時間まで骨形成能が維持されていたため、簡便な保存・輸送に適していると考えられた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標が達成されており、様々な条件下で詳細に検討されていることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、現場の状況を把握しているので、24時間以内の保存という明確な条件設定ができている。社会還元は十分に可能であるので早急に特許を申請するなどでの実用化が望まれる。今後は、ヒト骨芽細胞を用いた実験でその有用性を確認されることが期待される。
分子シミュレーションにより設計された新規ペプチド薬の抗腫瘍実験 奈良県立医科大学
小林浩
奈良県立医科大学
大野安男
癌細胞が浸潤する機構には様々なタンパク質分解酵素が関与している。uPAと癌細胞表面の受容体uPA receptor (uPAR)の結合が癌浸潤を引き起こすことが知られている。そこで、uPAとuPARの結合を阻害することで癌浸潤を防ぐことができると考え、両者の結合を阻害する低分子ペプチドをコンピュータシミュレーションした。
その結果、uPARに結合するペプチドのアミノ酸配列として、3種類のペプチド候補を同定した。その中で最も表面荷電が少なく安定な9個のアミノ酸からなるペプチド(未発表のためH1と記載する)を使用した。コントロールペプチドとして当該アミノ酸のシャッフルしたもの(H2)も合成し比較検討した。卵巣癌培養細胞に対してH1およびコントロールペプチドH2は100μM の濃度で毒性を認めなかった。H2に比較してH1は10μM の濃度でin vitro invasion assayにおいて有意に癌細胞の浸潤を抑制した。
今後は動物実験でH1ペプチドのがん転移抑制効果を検証し、さらに毒性試験で安全性を検討したいと考えている。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもuPA/uPAR複合体の構造情報に基づいてH1ペプチドがデザイン・合成され、H1ペプチドが、がん細胞浸潤を阻害する活性をもつことを示したことについては評価できる。一方、想定されるようにuPARに結合しているか、ドッキング構造を明らかにするとともに活性を向上できることが、結果的には技術移転の実現につながると思われる。今後は、H1ペプチドとuPA受容体のドッキング構造の解明とその構造情報に基づいて、H1ペプチドに比べ比活性を向上させたペプチドを得ることが望ましい。IC50が100 nM ー 1 microMを実現することが望ましいと思われる。
外耳道閉鎖症に適用可能な軟骨伝導補聴器の開発 奈良県立医科大学
西村忠己
奈良県立医科大学
大野安男
実用化を念頭に軟骨伝導補聴器を試作し、外耳道閉鎖症に対してフィッティングを行った。試作補聴器は小型化、省電力化を達成し、この点については市販の補聴器と遜色ない結果が得られた。振動子の形状については様々な形状を作製し試したが、耳型を採取しシェルを作製、その中に振動子を埋め込むタイプが現時点では伝導効率、固定の点から最も適していると考えられた。実際に効果を外耳道閉鎖症の被験者で試したところ、十分な装用効果が得られた。今後は臨床試験での症例を増やし、安全性、耐久性、審美性について評価ならびに検討していくことで、製品化することを目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、新構造の電磁型振動子の開発とシェル埋め込み型への実装によって大きく製品化の可能性を引き出した技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、既に特定企業との製品化研究が始まっており、製品化のフォローのためにも、軟骨伝導の解明と合わせて最適値を導出することで実用化が望まれる。今後は、対象者がどれくらいかが不明であるが、良い補聴器を上市されることが期待される。
超高速リアルタイムPCRシステムを用いた性感染症起炎菌の高速(即日)診断 奈良県立医科大学
千原良友
奈良県立医科大学
大野安男
超高速リアルタイムPCRを用いた性感染症起炎菌診断システムを構築し、臨床試料を用いた診断精度の検証を行った。リアルタイムPCRは異なる蛍光標識した3種類のプローブを用いたmultiplex法にて行い、一度のPCRで淋菌、クラミジアの同時検出が可能であった。尿試料からのDNA抽出とPCRに要する時間は約20分であった。臨床試料を用いた検証では淋菌は感度81.8%、特異度91.9%の精度で診断が可能であり、クラミジアは感度71.4%、特異度95.1%で診断が可能であった。本検証に用いた臨床試料は淋菌感染尿11例、クラミジア感染尿7例であり、検出感度の低下は症例数不足に起因すると考える。したがって症例の収集と本システムの検証は継続して実施する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、従来法で4〜5日かかっていた淋菌およびクラミジアの検査が同時に20分で可能となるシステムに関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、従来法で検出できた症例が今回開発の方法によると淋菌でもクラミジアでものがしているのは、比較的深刻な問題である。原因の究明を行うか、システムの誤差をなくす方向の検討などでの実用化が望まれる。今後は、検査薬・機器メーカーとの共同研究や技術移転が進展されることが期待される。
人工染色体技術と多色発光バイオイメージング技術の融合による細胞内活性酸素および活性窒素のリアルタイム定量システムの構築 鳥取大学
尾撫[彦
鳥取大学
増田紳哉
本研究は、炎症環境下での発現誘導される細胞内活性酸素および活性窒素をそれぞれ発光および蛍光物質をレポーターとして発現させ、生細胞内の活性酸素および活性窒素産生量を定量できる簡易検出系の創出を目標とした。活性窒素産生の指標となる遺伝子プロモーター領域に発光および蛍光遺伝子をそれぞれ結合させ、発光量および蛍光量により活性窒素産生量を評価できる細胞株を確立した。本成果は当初目標の5割程度達成されたと考えられる。今後は、当該成果をもとに活性酸素産生を評価する細胞の確立を遂行し、得られる成果をもとに知的財産権の取得を図る。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、NOX2、 iNOSプロモーター領域のPCR増幅産物が得られなかったため、代替遺伝子としてCOX-2を選択した点はについては評価できる。一方、多くの疾患と関連する活性酸素、活性窒素の細胞内リアルタイム測定系が確立されれば、大きな社会還元となるので技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、公的資金を活用し、NOX2、 iNOSリアルタイム測定系を開発されることが望まれる。
子宮内膜症の早期治療に不可欠な診断分子マーカーの開発 鳥取大学
伊澤正郎
鳥取大学
増田紳哉
子宮内膜症は、不妊症の原因疾患である。しかし、根治療法はなく、対症療法に依存している。早期治療のための診断分子マーカーは無く、その開発は急務である。本研究は、子宮内膜症に特異的な末梢血DNAのメチル化領域を想定して、診断分子マーカー候補となるメチル化DNA領域の選別抽出に挑戦した。子宮内膜症患者末梢血と健常者末梢血のDNAを用いて、網羅的DNAメチル化解析を試みた。DNAメチル化変動倍率による絞り込みにより、特異的メチル化DNAの170領域を抽出した。
これらの中から、23領域を診断分子マーカー候補として最終選別した。これらの候補領域は、次段階で計画する実用化へ向けた中規模症例集積による検証の出発点となった。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、DNAメチル化に着目したマーカー開発において、特異的なメチル化DNA領域の選別抽出を行い、15遺伝子上に位置する24領域を診断分子マーカー候補として選別した技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、科学的には有用な基礎情報が得られているが、選別された候補について検討を進め技術移転が行える知見が得られれば社会還元につながる可能性が高まり、実用化が望まれる。今後は、簡易実用検査法の開発において、早めに検査メーカーと協業されることが期待される。
ホスト-ゲスト相互作用の制御に基づく超音波応答型DDSの開発 鳥取大学
井澤浩則
鳥取大学
長島正明
本事業では、シクロデキストリン(CD)を高分子ネットワークに含むナノサイズの微粒子を創製し、その超音波応答性を評価することを目標とした。当初の計画とは異なる分子構造ではあるもののCDを高分子ネットワークに含むナノサイズの微粒子をキトサンとb-CDから簡便に創製する手法を見出し、製造方法に関する特許申請を行った。興味深いことに、その微粒子が超音波に応答し、グラフト型と比較して約4倍の遅延放出挙動を示すことが示唆された。これは期待とは真逆の機能ではあるものの、技術移転の可能性を秘めた新しい現象である。今後は、本事業で得られた現象に関する知見を深めて、技術移転につなげるべく研究を継続する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、超音波によるシクロデキストリン包接物の放出制御を行えるポリマー微粒子を得るという目標は達成したことは、基礎研究として評価できる。一方、ただちに社会還元できる研究成果ではないが、DDSを指向するような性能(粒径制御、短時間での超音波応答)が発揮されるかの見極めに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、科研費等の基礎研究を行う研究助成で行うことが望まれる。
発達性読み書き障害のためのマルチメディア語彙指導教材の開発 鳥取大学
関あゆみ
鳥取大学
前波晴彦
発達性読み書き障害児へのRTIモデルによる音読指導の個別指導段階で使用するマルチメディア教材の開発を行った。指導者の経験の有無に影響されず、同等の指導が可能な教材を開発することを目的とした。
2年生の教科書から指導対象語を選定し、発達性読み書き障害児の特性に配慮し、読みが困難であっても容易に語の意味を確認できるよう工夫するとともに、学習した内容を登録し、復習できるようにした。指導者へのアンケート調査と指導場面の評価により、経験のない指導者でも必要な指導が行えること、子どもが意欲的に取り組める教材となっていることが確認された。
今後、本教材を用いた指導の効果検証を行うとともに、3年生以上を対象とする教材の開発をすすめる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、マルチメディア教材を作成し、指導経験なしの教官にとって有用な教材となる可能性が示された技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、現場の声を反映させて、毎年ブラッシュアップできるようなプログラムを構築できれば有用性が高まり、実用化が望まれる。今後は、障害者の学習効果を向上させることが最終目的で、その評価法の確立と、教材としての有用性を検討されることが期待される。
薬剤の安全性評価に有用なCYP誘導性と肝毒性の高感度同時評価系の開発 鳥取大学
多田政子
鳥取大学
増田紳哉
創薬開発や安全性試験の加速化には重篤な副作用をもたらす化合物を早い段階で評価できるシステムが必要である。この実現にはヒト成人肝細胞に匹敵する代謝能をもつ代替細胞の開発と普及が急務である。我々は、肝細胞分化をモニターできる遺伝子ツールを開発し、細胞の機能性や化合物の危険性を光で簡単に評価できるヒト肝細胞モデル細胞の作製に成功した。既に国内外の企業2社と連携し細胞事業を行う部門を産学官連携事業「とっとりバイオフロンティア」に創出する計画を進めている。今後、本細胞を最短期間で上市することを目指し、JST A-STEP等の研究費支援を求めながら品質管理と次期商品開発を見据えた継続的な実用化研究を行う。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にCYP3A4G/7R BAC導入ヒトHepaRG細胞を評価してCYP3A4誘導性試験と肝毒性評価への道筋ができた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、多くの薬剤の検討が必要であり、質の高い細胞を安定的に作製できる品質管理技術の確立が望まれる。今後は、細胞の安定的供給体制を確保して、薬剤の肝毒性をin vitroとin vivoで評価することが期待される。
アルツハイマー型認知症の血液診断マーカーの高感度化に必要な糖鎖変化に関連する新規機能因子の検索 鳥取大学
谷口美也子
鳥取大学
増田紳哉
本申請課題では、アルツハイマー型認知症(AD)の血清中におけるトランスフェリンのシアル酸量の変化が何に起因するものであるかを検証するとともに、その要因がシアル酸量の変化よりも有用な診断マーカーとなりうるかを検討することを目的とした。本研究期間では、シアル酸を付加するシアル酸転移酵素に関連する数種類のタンパク量と機能を測定したところ、すべてにおいてADの血清中で有意に低下しており、さらにADにおける転移酵素量の低下が、感度・特異度ともにシアル酸量よりもより有効な指標であることが示唆された。今後はAD特異性について確認すること、また病気の進行のどの程度初期の段階から検出できるかについて長期的な追跡調査を実施していきたいと考えている。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも血液中のSTase量がADで有意に減少することを、症例を増やし証明したことは評価できる。一方、STase量の変化とβセクレターゼ活性の関連性についての考察は、示されたデータからは説得力が乏しいため、さらなる検討が必要と思われる。今後は、既存の髄液マーカーと比較して、その有用性を検証し示すことが望まれる。
ムコ多糖症IIIB型に対するシャペロン治療薬の開発 鳥取大学
檜垣克美
鳥取大学
山岸大輔
ムコ多糖症IIIB型に対するシャペロン治療薬の開発を目的とし、低分子化合物ライブラリーよりシャペロン候補化合物の探索を行った。試験管内酵素阻害活性および酵素安定化活性の測定スクリーニングにより、12の異なる化合物を選別した。さらに、ムコ多糖症IIIB型患者由来培養皮膚線維芽細胞を用い、化合物の変異酵素に対する効果を調べた結果、4化合物において有意な変異酵素活性上昇効果を認めた。以上より、治療薬候補化合物が複数得られ、当初の目的は概ね達成した。今後は、候補化合物の変異型特異的な効果、およびモデル動物に対する効果を検討し、ムコ多糖症IIIB型に対する新規治療薬として特許申請を行う予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に脳に到達する可能性のある低分子化合物として、シャペロン治療薬の候補分子がライブラリーから選別できた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、マウスなどの実験動物への応用へ研究を展開するべきである。今後治療薬として実現するためには、民間企業との共同研究が有効な課題であり、協力企業のマッチングを期待する。
細胞膜透過性ペプチドを搭載した人工ウイルスの創製 鳥取大学
松浦和則
鳥取大学
長島正明
本研究では、ウイルス由来のb-Annulusペプチドが自己集合して形成される人工ウイルス殻(キャプシド)に細胞膜透過性ペプチドH16を搭載させ、内部にDNAやRNAを内包した「細胞透過性人工ウイルス」を構築し、新たな核酸医薬デリバリーシステムとして応用することを目的としている。本実施期間において、化学合成および遺伝子工学合成により、b-AnnulusにH16を導入したペプチドを合成することに成功し、それらの自己集合によりH16搭載人工ウイルスキャプシドの調製に成功した。また、人工ウイルスキャプシド内に蛍光ラベルDNAが内包されたことを示唆する結果を得ている。今後は、人工ウイルスキャプシド内へのDNA内包の詳細な解析や、細胞毒性の評価、細胞膜透過性の評価などの基礎的な知見を得るとともに、癌治療用マイクロRNAを内包した人工ウイルスキャプシドを構築し、癌細胞に対する治療効果を検討する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目的のペプチドを合成法を改善するなどでDNAを内包した人工ウイルスを作成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、がん治療用マイクロRNAを内包した人工ウイルスキャプシドを構築し治療効果を確認するなどでの実用化が望まれる。今後は、細胞膜透過性と内包されているDNAの放出に関する知見を先ず集積されることが期待される。
少子高齢化時代に向けた疾病予防のための高機能野菜の開発 鳥取大学
渡辺文雄
鳥取大学
加藤優
高齢者に多発するビタミンB12(B12)欠乏性神経障害が世界中で問題となっており、特に急速に超高齢化社会へ向かう我国においては、今後、深刻な社会問題となることが予想される。B12はビタミンの中で唯一植物性食品に含まれない特異なビタミンであるが、野菜を水耕栽培することで高齢者に吸収されやすい遊離型B12を強化する方法を開発した。B12は不安定な物質であるが、野菜に吸収されることで安定化され、収穫後の品質管理に特別な配慮は必要なく、通常の野菜と同様に取り扱うことができることを明らかにした。また、B12を強化することで他の栄養素含量に悪影響を及ぼすことなく、野菜の保存性が向上する傾向が観察された。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、水耕栽培によりビタミンB12強化レタスを栽培、その安定性やレタスの保存性を確認し、産学共同研究も始まっている点、また、V.B12強化に伴いV.Cも増加するという副次的現象も見出している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、V.B12強化時における、添加V.B12の収量や安定性が記載されてないため、コスト的な検討を加えることが望まれる。今後は、事業化に向けて推進していくことが期待される。
ユーザモデルに基づく高齢者用歩行車のブレーキアシストの開発 島根大学
廣冨哲也
島根大学
丹生晃隆
歩行機能の低下した高齢者は自立した移動を補助する歩行車を使用するが、ブレーキのかけ遅れ等で転倒する危険がある。本研究で開発したブレーキアシストでは、まず、ユーザの体幹と歩行車の距離および移動速度を1分間程度計測し、ユーザモデルを構築する。そのモデルにより、個人の歩行特性に応じたきめ細かなブレーキ制御を行うことが可能である。ブレーキアシストの性能を評価するため、高齢者23名と高齢者疑似体験スーツを着用した学生7名による実験を行った。その結果、約90%のブレーキ推測精度を達成し、一定の速度を超過したタイミングでブレーキをかける従来手法と比べ、ブレーキをかけるタイミングが良く、ユーザがより安全・安心に感じることがわかった。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に歩行車のブレーキアシスト機構の実験評価に基づくユーザモデルとブレーキ制御システムの構築と有効性を確認している技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、福祉機器製造メーカとの連携がはじまっており、早急な実用化が望まれる。今後は、利用者拡大を前提として、安心、安全について客観的な評価項目を具体化して評価されることが期待される。
軟骨特異的プローブによる関節軟骨in vivo造影と定量性の評価 岡山大学
大橋俊孝
岡山大学
桐田泰三
変形性関節症などの軟骨組織の破壊および摩耗に起因する関節疾患の治療は、現在のところ、進行を遅らせる対処療法に限られることもあり、早期診断技術が希求されている。本課題は、動物モデルにおけるX線・CT撮像を目指した高解像関節軟骨可視化プローブのin vivo造影データ取得と定量性評価を行うものである。我々の開発したプローブを用い、ex vivo高解像度マイクロCTによりラット「関節不安定性OAモデル」の膝関節の軟骨基質減少を数値化することができた。さらに、蛍光ラベルプローブを用い、骨折モデルでの軟骨仮骨形成をin vivoイメージングすることに成功した。In vivo軟骨基質定量への道筋を立てることができた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、本造影剤のex vivo小動物での有用性が検証された技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本造影剤の有用性を大動物を用いたin vivoの実験により検証できれば社会還元に導かれることが期待され実用化が望まれる。今後は、大動物でのin vivoでの検証実験を早期に実施されることが期待される。
新規な動物細胞ディスプレーを用いたガン細胞特異的ナノ抗体の高機能化 岡山大学
金山直樹
岡山大学
宇根山絵美
ナノ抗体は抗原結合部位が小さく、新規な標的への結合を期待できることから、次世代の抗体医薬として注目されている。本研究では、これまでに開発してきたニワトリB細胞株DT40を利用した抗体作製技術をさらに改良し、抗体医薬の候補となりうる高機能なガン細胞特異的ナノ抗体の効率的な作製技術を開発した。その結果、ガン細胞特異的発現を示す抗原に特異的なナノ抗体の一つについて、元の抗体の親和性が数nMと高いにもかかわらずその親和性を数倍向上させることに成功した。今後、抗体遺伝子への変異導入方法および高親和性クローン選択方法を最適化し、標的抗原への結合活性の極めて高いナノ抗体の作製技術として実用化する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に抗体遺伝子への自発的変異能力を有するDT40を用いたタンパク質ディスプレーシステムを確立し、元の抗体の親和性を数倍向上させることに成功している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、高い親和性を有する抗体の親和性をさらに向上させるため、変異導入頻度の上昇、高親和性抗体の検出方法の改善など、さらに検討が必要である。今後は、ナノ抗体の実証データを如何に迅速に得るか検討することが望まれる。
線維組織が豊富な難治性膵がんのナノ医療によるスマートな治療法開発 岡山大学
狩野光伸
膵がんは生存率が著しく低い。しかし、ナノ薬剤による治療が奏功すると期待され、30nmと小粒径のシスプラチン内包ナノ薬剤が膵がんにおいて第3相臨床治験に入った。他方、一般的な100nm前後の粒径での治療はまだ実現されていない。本課題では有効なナノ薬剤の開発加速に資するため、膵がん腫瘍組織の八割を占めると報告される線維組織でのナノ薬剤の透過性改善がこれまでの研究成果から肝要と考え、線維組織を簡便に体外で再現するため、ヒト由来線維芽細胞によるヒト膵がん線維組織と同様の厚みを持つ積層培養系の構築を行い実現した。対応する動物モデルとして、膵がん由来細胞をマウス皮下に移植した系を応用し線維化の厚みをヒト腫瘍組織に近づける方法を見出した。確立した系においてナノ薬剤の移動度を検出する方法論の開発は本課題では至らなかったが、これを今後確立し、前臨床実験系の提供に至る。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも 厚さ50μmの線維組織を体外で作製する手法の開発に成功した点は評価できる。一方、新たな実験系の開発は重要であり、臨床応用を進める上で動物実験は必須である。そのためには動物モデル作製における問題点を明確にして技術的課題を克服すべきであると思われる。今後は、膵癌細胞と線維化に関与する細胞との共培養系の確立についても望まれる。
屈折率と温度の計測可能な長波長帯光ファイバ型センサシステム 岡山大学
深野秀樹
岡山大学
平野芳彦
センサ部となるマルチモードファイバ(MMF)の両端をシングルモードファイバ(SMF)で挟み込んだ構造のマルチモード干渉(MMI)構造において、MMF部分に温度変化によってその屈折率が大きく変化する被覆材料の検討を行い、シリコン樹脂において目標の温度分解能0.01 ℃以下を実現した。さらに、本研究では、屈折率と温度を同時に測定できる計測システムの実現を目指し、MMI構造により得られる干渉波形の構造依存性を詳細に調べた。屈折率と温度のそれぞれに対して、異なる干渉波長を構造最適設計により割り当て可能な技術を開発し、MMI構造のタンデム接続を行い、それぞれの干渉波長の変化を計測することにより、屈折率と温度の分離、同時測定が可能であることを明らかにした。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標の温度分解能を持つ温度センサを実現し、それと屈折率センサをタンデム接続することによって、温度と屈折率を同時測定できる複合センサーを実現したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、計測点の多点化、さらなる制度の向上、簡易な光源部、読み取り部を含めた生産性の向上の検討を行い、実用化に進むことが望まれる。今後は、ユーザの意見を聞く等の活動を通じて、産学連携体制を構築し、実用化につなげることが期待される。
在宅認知症ケアにおける情報共有のための訪問看護師向け医看連携支援システムの開発 岡山県立大学
渡邉久美
岡山県立大学
小林東夫
医師−看護師間で在宅の認知症高齢者の情報を共有するための訪問看護師向けのシステムとして、訪問看護での利用者との会話や観察を中心にアセスメントできるマニュアルと、その情報を処理して認知症の重症度を推定するアルゴリズムと、その結果を「情報共有シート」として出力するICTシステムを開発した。訪問看護師、開業医へのヒヤリングなどから出力シートの構成項目とデザインを検討し、紙媒体を開業医へ提示したアンケートの結果、認知症の状態像を示す5項目について8割以上が「必要」と回答し、追加項目の意見はなく、約9割が多職種連携に役立つと回答した。また開発過程において、現場では独居の認知症者に使用可能なシステムへのニーズが高く、代替項目を追加開発した。今後の実用化に向けて、操作性やシート出力様式をより見やすくするなどが検討課題である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、在宅ケアの重要性が増す中で、医看連携のために必要な共有情報を段階を経た調査によって精錬した点、今後の研究計画を明確にもち、競争的資金の獲得に向け努力している点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、全国で患者情報の共有化が盛んに試みられる中で、研究者らの独自性をどのように示していくのか、特許取得に繋がるような技術として検討することでの実用化が望まれる。今後は、研究結果からも医師により必要だと考える情報に幅がみられたが、ユーザが項目を追加できるようなフレキシビリティを持ったシステム構築にされることが期待される。
新規がん転移抑制剤の創製を目指したCaMキナーゼホスファターゼ特異的阻害剤の研究 広島大学
石田敦彦
広島大学
伊藤勇喜
本研究では、CaMキナーゼホスファターゼ(CaMKP)の特異的阻害剤が、細胞毒性の低い、すなわち副作用の少ない新しいタイプのがん転移抑制剤として有効かどうかを検証した。乳がん細胞株を用いた細胞遊走アッセイにおいて、CaMKP阻害剤は細胞に殆ど毒性を示さない濃度で細胞極性の形成を抑制することにより、遊走を顕著に阻害することが判明した。従って、これらの化合物は進行がんの転移・浸潤のみを抑制する副作用の少ない新規がん治療薬、或いはその開発のためのリード化合物となる可能性が期待できる。今後、様々な阻害剤アナログを合成し、CaMKP阻害活性、細胞遊走・浸潤阻害活性を指標にして、より有効な阻害剤を創製していきたい。
当初目標とした成果が得られていない。中でも二つの化合物を検討しているが、細胞遊走阻害と浸潤阻害には必ずしも良好な相関関係は見られなかった。従って、新規がん転移抑制剤の創製という点での技術的検討や評価が必要である。今後は、さらにがん細胞浸潤の基礎研究が必要であると思われる。
消化管内視鏡画像診断支援のためのリアルタイムハードウェアシステムの開発 広島大学
小出哲士
広島大学
榧木高男
本研究では、消化管内視鏡画像診断支援のためのリアルタイムハードウェアシステムの開発を行った。診察時におけるリアルタイム診断支援を実現するためには、システムをハードウェア化して、ソフトウェア処理に対して1000倍以上の高速化を実現することが必要である。提案システムは3つの処理から構成される:(1)特徴量抽出処理(D-SIFT: Dense Scale-Invariant Feature Transform)、(2)識別特徴ベクトル変換処理、(3)3タイプ識別器による病理判定処理(SVM: Support Vector Machine)。そこでレイテンシ1秒以内、処理速度1〜5fps以上を実現するハードウェア向けアルゴリズム、基本アーキテクチャを開発し、FPGA実装によりその有効性を実証した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、消化管内視鏡画像診断支援用のリアルタイムハードウェアシステムの基盤技術を開発できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、実用化に向けたハードウェアアルゴリズム・アーテクチャの知的財産権を確保することが望まれる。今後は、基盤技術の開発ステージから、プロトタイプの開発を進めると共に、医師との連携により技術移転に進めることを期待する。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)診断ツールの開発 広島大学
松尾裕彰
広島大学
山岡秀明
本研究では食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)の新規診断ツールの開発を目指して、エビFDEIAの原因抗原解析を行った。2名のエビFDEIA患者血清を用いてバナメイエビ抗原を解析した結果、70 kDaおよび40 kDaの分子量を有する2種の抗原候補タンパク質を同定した。同定した抗原候補は、これまでエビアレルギーの原因抗原として報告されていない新規抗原であった。疑い例を含むエビFDEIA患者7名中3名で70 kDaの抗原候補に特異的に結合するIgEが検出されたことから、70 kDa抗原特異IgE検査はエビFDEIA患者の診断に有用な検査であると示唆された。さらに、各抗原の精製法を検討し、硫酸アンモニウム分別沈澱条件および陰イオン交換カラム条件を決定した。しかしながら、単一タンパク質として精製するまで至らなかった。したがって、予定していた精製アレルゲンを利用した診断法の作成については、本研究期間内に完了できなかった。今後、エビFDEIA患者数をさらに増やして、70 kDaおよび40 kDa抗原に対する特異IgEを評価し、本検査のエビFDEIA診断における有用性を確認し、各精製アレルゲンコンポーネントを用いた検査技術の特許を取得する予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、エビFDEIA患者血清の解析結果から、70 kDaおよび40 kDaの分子量を有する2種の新規抗原候補タンパク質を同定したことは大きな成果で評価できる。一方、技術移転の観点からは、抗原の精製が必要であり、新たな検査キットの開発が期待され実用化が望まれる。今後は、新規抗原候補タンパクが明らかになっているので、今後の計画通り、進めることが期待される。
難治性線維化治療薬としてのインテグリン阻害低分子化合物 広島大学
横崎恭之
広島大学
山岡秀明
線維化促進作用をもつインテグリンα8β1の機能を阻害する低分子化合物を、企業に眠るライブラリーから同定することを目的とした。今回は、RGD tripeptide認識インテグリンαIIbβ3阻害作用が既知である低分子化合物20種類を対象に、α8β1のリガンド結合阻害作用を解析した。何故ならα8β1もRGDを認識するインテグリンであるため、αIIbβ3とリガンドの形状を共有する可能性を考えたためである。その結果、濃度20 nMで約50%以上の阻害活性を認める化合物を3種類同定した。今後は、これらの化合物を化学的に修飾・改変し、α8β1に対しての親和性と特異性を上げる事が必要である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に α8β1阻害化合物が見つかったことは技術移転につながる研究成果といえる。一方、技術移転の観点からは、3つみつかったα8β1阻害化合物はいずれもαvβ3も阻害したため、α8β1だけを特異的に阻害する化合物は見つかっていない。αvβ3を阻害すると副作用が大きいことが予想されるため、α8β1特異的な阻害化合物を見つける必要がある。抗インテグリンα8β1抗体の方が医療応用までのハードルが低いと考えられるが、抗体医薬は高コストであり医療費を高める問題がある。本研究が目指す低分子化合物がみつかれば、より低コストで経口投与可能な薬になると期待できる。他のインテグリン(αvβ3など)に影響しない化合物が見つかるかどうかはまだ不明であり、スクリーニング対象を広げるなど一層の努力が望まれる。今後は、特異性の高い化合物の探索が期待される。
持続可能社会の構築に貢献するSST用学習ツール・パッケージの開発 広島大学
若松昭彦
広島大学
櫟村浩
本研究開発課題では、発達障害のある子どもや青年・成人に対して、対人関係やコミュニケーションの基本ルールを段階的に教えていく、ソーシャルスキルトレーニング(SST)を補完する学習ツール・パッケージの開発を行った。協力児・者への実際の試行が可能なレベルのプロトタイプの作成が開発目標であった。研究開発期間内に、タブレット端末でも動作するプロトタイプを作成することができたが、目標の全体的な達成度は7割程度であると評価される。しかしながら、福祉施設での試行等の結果、プログラムの改良に向けた多くの示唆を得ることができた。今後は、さらに大型の外部資金を獲得して、ツール・パッケージの改良を行い、実用化を目指す予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に高機能自閉症、アスペルガー障害等の発達児童者などを対象とするタブレット端末による社会的スキルを学習するためのソフトウエア(SST用学習ツール)を開発した技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、開発したSST用学習ツールのシステムとしての効用や性能、すなわち発達児童者における学習効果を定量的指標により評価することで実用化が望まれる。今後は、改善部分克服策として、本研究の課題について特別支援学校の教員へ意見を伺い取り入れるうことが期待される。
免疫誘導を促進する細胞膜融合性ナノ集合体を用いた点鼻ワクチンの開発 山口大学
通阪栄一
山口大学
櫻井俊秀
本課題では、粘膜免疫組織へのターゲティング機能と抗原提示細胞への高い抗原導入機能を併せ持つ機能性エマルションの開発を目指した。界面活性剤によりワクチン抗原の表面を細胞融合性の高い脂溶性に変換し、その抗原を内封したエマルションを経鼻投与のためのキャリアとして利用した。エマルションの組成、粒子径を制御し、またエマルション表面に粘膜付着性高分子を修飾することで、粘膜部の免疫組織への集積性が向上し、血中の抗体価を大きく上昇させることに成功した。このことから、本課題の目標を概ね達成したと考えている。今後の展開として、実際に感染症の無毒化が可能なワクチン製剤を調製する。そして、本研究の最終目標としている、投与が簡便で安全な低侵襲性の噴霧型経鼻ワクチンの開発を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、血中抗体価を上昇させることに成功し、ワクチンデリバリーの基本特許申請への目途がついた技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、ワクチンデリバリー基本特許申請の目途がつきつつあるので技術移転を目指した産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性が高まったと考えられ実用化が望まれる。今後は、日本発(山口発)の噴霧型経鼻ワクチンが実用化されることが期待される。
ハイパースペクトルイメージング技術の消化器内視鏡への応用 山口大学
西川潤
山口大学
田中久美子
本研究は、内視鏡を介して生体内の胃癌のハイパースペクトルイメージング(HSI)データを取得し、胃癌診断に有用な波長の同定、癌と正常部を鑑別する診断基準の確立、画像解析による癌部の強調表示を行うことを目標とした。ハイパースペクトルカメラと消化器内視鏡の接続機器を開発し、接続を行った状態でHSIデータを取得することに成功した。消化器内視鏡として、ファイバースコープを利用し、径内視鏡的にHSIデータを取得するために、ハイパースペクトルカメラの感度上昇などのversion upを行い、撮影条件を確立したため、生体内でのデータ取得の開始が可能になった。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、内視鏡を介した生体内の胃癌のハイパースペクトルイメージング(HSI)の有用性の確立については評価できる。一方、生体内での高速撮影可能なハイパースペクトラルカメラHyperspectral camera (HSC) を用いた臨床研究等に向けて技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、早急に内視鏡を介したHISによる消化器がんの診断に関わる試験を開始し、実際にがん診断に有効であるかの検討されることが望まれる。
脳内血腫の硬さ計測および撹拌・吸引デバイスの開発 山口大学
森田実
山口大学
森健太郎
本研究課題では、頭蓋内内視鏡に適用可能な血腫の硬さ計測および撹拌デバイスの開発について、実用化を目指した撹拌および計測実験を行った。実験では小型の変位拡大構造を用いた曲げ振動を発生させることで、模擬血腫を十分破砕可能な数種類の振動を発生させることができた。また、光ファイバセンサを用いて生体の弾性特性と粘性特性を分離して高速に計測するアルゴリズムを開発し、模擬血腫の力学特性を評価する事ができた。これらの結果から本デバイスの実応用が期待でき、現在は共同開発企業と協力して微細加工技術を駆使した撹拌デバイスの加工と再設計を行い、より高出力・高精度な撹拌・計測デバイスの開発を目指している。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、着実に研究推進している状況は確認できる。まだ、基礎研究のレベルだが、計測値(定量化)に基づいて治療することに新規性があり評価できる。一方、技術移転の観点からは、具体的なパートナー企業も見出し、実用化を目指した方向で推進しており、実用化が望まれる。今後は、商品化までのステップは、まだ先が長く、工学的研究以外の要素も徐々に増えるので、粘り強く取り組まれることが期待される。
イオンスイッチを導入した機能性リポソームの薬物輸送の評価 宇部工業高等専門学校
三留規誉
宇部工業高等専門学校
黒木良明
リポソームは、ドラッグデリバリーシステム(DDS)など医薬品分野で利用されている。これまでの研究で、イオンポンプであるATP合成酵素に分子架橋スイッチを導入してリポソームに組込み、リポソーム内のイオン濃度が制御可能な機能性リポソームを開発した。本研究では、DDSでの応用に向けて、この新規リポソームの薬物輸送能を評価した。具体的には、親水性の模擬薬物として蛍光粒子(Qドット)を高効率でリポソーム内に導入する条件を検討した。機能性リポソームの作製法として、凍結融解法とバイオビーズ法でリポソームへのQドットの取り込み効率とリポソーム内への水素イオンが流入を調べた結果、どちらもQドットを高い効率で取り込み、リポソーム内への水素イオンを流入させ、濃度を保つことができることを確認した。今後は、細胞レベルでイオン濃度を制御したリポソームを使用した場合の有効性を実証し、実用化に向けての開発を展開していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、モデル薬物(Qドット)をリポソーム内へ導入し、リポソーム内のイオン濃度の制御を検証したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、実際の細胞に導入しその生育に影響を与えないことを早期に実証するなどでの実用化が望まれる。今後は、動物レベルでの試験研究に発展させるべく上位の研究支援制度を活用されることが期待される。
癌病理診断の自動化に向けた凍結組織標本作成のための転写フィルムの開発 徳島大学
石丸直澄
徳島大学
増田隆男
現在、癌の診断においては、投薬の選択のための病理診断が必須となっている。そのための凍結組織切片標本は病理診断には不可欠である。凍結組織切片標本の作成は、検体をOCTコンパウンドに包埋し、凍結したブロックを薄切し、スライドガラスに載せて染色し、観察するものである。手術中に診断する必要があり、質の悪い標本や薄切が難しい標本などが多く、診断を困難にしていた。
本研究開発において、特殊な粘着剤とフィルムを組み合わせることにより、これまで接着が不可能であったOCTブロックに接着し、組織を薄切できることが確認できた。今後は、企業と共同で開発を行い、組織切片の質の向上や多様な組織にも対応できる粘着剤付きフィルムの製品化を目指したい。また、合わせて、自動化装置の開発にも取り組みたい。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の課題における凍結組織の4μmの薄切を安定的に可能としたことや、-20℃の環境で柔軟性を保ち、機械的な強度を保つことを達成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、自動化について、フィルム基剤の安定性に問題のあることが明らかとなっており、課題を克服して、実用化に進むことが望まれる。今後は、企業化、量産化されれば、術中迅速標本作製の一助となりうる技術であり、応用展開により、社会還元につながることが期待される。
光応答によるラジカル発生機構を応用した抗菌性ポリマーの創製 徳島大学
白井昭博
徳島大学
平岡功
香粧品の新規防腐剤として応用できる、光応答分子を備えた新規抗菌性ポリマーの創製を目的とした。そのポリマーは、光によって殺菌種となる活性酸素種を発生し、乳化系においても有用な殺菌力を発揮できることを特徴とした。本研究目的を達成するために3つの目標を設定した。1つ目は新規モノマーの合成と、350−385 nm波長の光照射条件におけるその殺菌力評価であり、2つ目はポリマー合成、3つ目はポリマーの殺菌力評価とした。全体の達成度は50%程度であった。今後は、本研究において、光照射下において殺菌活性の高い分子設計を見出したので、その構造を有したポリマー合成し、殺菌力評価および実用化に向けた性能試験を実施する。また本研究では、紫外領域ではなく可視光領域(464−475 nm)で活性化する分子を見出したので、その構造も含め今後の新規抗菌剤の開発に展開する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、細胞吸着と光応答の部位を持つ化合物を合成しそれらの紫外光による殺菌力を評価したことについては評価できる。一方、抗菌化合物のポリマー化と、化合物濃度・菌濃度・紫外線の照射量との相関などの実用レベルの殺菌力の評価に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、殺菌機構を解明し香粧品や食品、医薬品の防腐剤として応用展開されることが望まれる。
高齢者の寝たきり防止を目的とした新しい治療法開発―ユビキチンリガーゼを治療ターゲットとした廃用性筋萎縮予防法― 徳島大学
田中栄二
徳島大学
平岡功
本研究は 機械的負荷の減少により減弱したIGF-1シグナルを機能性ペプチドにより回復する全く新しい廃用性筋萎縮に対する治療技術の開発を最終目的とする。萎縮刺激として低栄養下で培養したC2C12細胞におけるIRS-1の分解抑制は、ペプチド単独よりもアテロコラーゲンとの複合体として添加することで増強した。低栄養状態下で筋管の直径は減少したが、ペプチド/アテロコラーゲン複合体添加により有意な増大がみられた。また、ペプチドを投与した筋管では、AKTのリン酸化が上昇していたことから本ペプチドによる萎縮抑制がIGF-1シグナルの回復によるものであることが示された。また、筋萎縮モデルマウスにペプチド/アテロコラーゲン複合体を局所投与したところ、萎縮に対し抵抗性を示し、同ペプチドによる筋萎縮抑制効果が明らかとなった。本課題の目標は概ね達成されており、今後は廃用性筋萎縮に対する臨床研究を行う予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に計画通りの成果が上がった点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、Cblin/ATCOL複合体の筋委縮効果が確かめられたが、Cblinの効果は既に他の研究者により報告されているため(Mol Cell Biol, 2009)、新規特許性がない。この点に配慮した今後の研究開発計画を工夫する必要がある。医薬品開発なのか食品開発なのかというように、目標を具体的に煮詰めて、共同開発企業を見つけて、できるだけハードルを低くした開発が必要である。
ヒト iPS細胞の分散培養培地の開発 徳島大学
中島義基
本研究では、ヒト iPS細胞の培養ストレスを1.5 倍低下させる培地添加物の開発を目指した。その結果、細胞生存率を1.7-3.7 倍に高める培地添加物を3つ開発した。その添加物は分子量が小さく人工合成も可能な安価な物質である。非加熱での培地滅菌操作(ウイルスを除去出来る0.04 μmフィルターろ過滅菌)を行える利点を生かし、今後、産業用途向けの培地添加物としての利用を目指す。また、実験の過程で未分化ヒト iPS細胞に特異的な生存抑制を示す培地添加物も発見した。今後、作用機序を明らかとし、ヒト iPS細胞の癌化リスクを減らす医療向けの培地開発を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもiPS細胞を含めた幹細胞分野の課題のひとつである分散培養について、一つの可能性が示された点は評価できる。一方、応用範囲は広いが、実用化されるに至るまで先が長い。使用するペプチドの機能向上のためのデータの積み上げなどが必要と思われる。iPS細胞の高密度、分散培養については、最近、ゲル剤によるスフェロイド撹拌培養法が発表になった。今後は、それら他の手法との比較も行うことが望まれる。
発熱量が大きい磁性ナノ粒子の開発と磁気ハイパーサーミアを利用した腫瘍ターゲティングの促進 徳島大学
林幸壱朗
株式会社テクノネットワーク四国
矢野慎一
本研究の目的は、(1)磁気ハイパーサーミア用発熱体として応用可能な大発熱量を有する磁性ナノ粒子の開発、(2)開発した磁性ナノ粒子を用いた磁気ハイパーサーミアによるナノ粒子の腫瘍集積量の向上、である。(1)に関しては、目標を大きく上回る487 W/g の磁性ナノ粒子を合成することに成功した(目標は発熱量90 W/g)。(2)に関しては、開発した磁性ナノ粒子を発熱体として用いた磁気ハイパーサーミアにより、腫瘍集積量を2〜2.5 倍増加させることに成功した。よって、本研究課題の目標を概ね達成することができた。今後は本研究課題により得られた知見を基に磁気ハイパーサーミアに関する研究を発展させる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、癌の局所温熱療法である磁気ハイパーサーミアに用いる磁気ナノ粒子として当初目標の5倍の発熱性能を有し、これを温和な常圧下で合成する方法を見出したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許出願を進め患者の身体的・精神的負担が少なく効果的な癌の局所温熱療法として本磁気ナノ粒子を用いた磁気ハイパーサーミアとして実用化されることが望まれる。今後は、特許戦略の構築や臨床試験向けた活動を進めるとともに産学連携による共同研究の推進など実用化に向けた体系的な取組がなされることが期待される。
抗生物質耐性菌の発生抑制剤の開発 徳島大学
間世田英明
徳島大学
小山秀子
本研究課題は、申請者が見出した細菌の抗生物質耐性化を引き起こすタンパク質を阻害し、今まで全く開発されてこなかった新規コンセプトである耐性菌の出現阻害薬・感染症発症予防薬の実現を可能にする効率的スクリーニング法を確立するものである。そして、そのタンパク質の機能が抑えられた時のみ、薬剤耐性や蛍光が発揮されないようなスクリーニング系の構築を試みた。その結果、実際に、抗生物質耐性化を引き起こすタンパク質を破壊した株では、耐性が発揮されないが、破壊していない株では、抗生物質耐性を高頻度で発揮したことから、阻害剤を効率的にスクリーニング可能なアッセイ系の作成に成功した。しかし、残念ながら、蛍光発現によるアッセイ系の作成には成功しなかった。今後は、新たなアイディアによる蛍光発現アッセイ系を作成するとともに、現在までに作成しているアッセイ系や作られるであろう蛍光のアッセイ系を用いて、世界初となる耐性株をださない薬の開発をすすめていく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にクロラムフェニコール耐性を指標としたスクリーニング系を確立した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、クロラムフェニコール耐性を指標としたスクリーニングを開始するとともに、早急にpSCmベクター系による蛍光発現アッセイ系を作成する事が望まれる。今後は、興味を持っている企業と連携し、さらに耐性菌スクリーニングを推進していくことが期待される。
NFATシグナル抑制薬による新規アレルギー治療法の確立 徳島大学
水口博之
徳島大学
小山秀子
本研究では、花粉症症状発現に重要な2つのシグナル経路を抑制する天然物由来化合物の単離・同定及び分子薬理機構解明を通じ、症状を高度に改善する新規治療法の確立を目指した。その結果、ある天然物からNFATシグナル抑制成分の単離に成功した。また、抗ヒスタミン薬とシグナル抑制成分の併用による2つのシグナルの同時抑制により鼻過敏症状をほぼ完全に抑制できた。今後、花粉症患者において抗ヒスタミン薬とシグナル抑制成分の併用による強力な花粉症症状軽減作用を検証する。また、シグナル抑制成分含有サプリメント用粉末を作成し、その抗アレルギー効果を証明すると共に、粉末を用いた種々の機能性食品等の製品化を促進させる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも天然物からNFATシグナルを抑制する成分の抽出を行い、単離精製した各成分の構造分子から多糖類であることを同定した点、さらにサプリメントとしての製品化を踏まえて有効成分を大量生成する抽出法を民間企業と共同で進めてきた点は評価できる。一方、まだ単一成分を大量取得するまでにはいたらず、課題にある新規アレルギー治療法の確立という点で有効成分の分子構造、作用機序、標的分子の解明等の研究継続が必要と思われる。今後は、サプリメントとして内服したときに消化管からの吸収が可能かどうか等、製品化の過程で明らかにすることが望まれる。
新規ゲノム編集法とiPSを用いたヒト臓器再生法の基礎技術開発 徳島大学
三戸太郎
徳島大学
増田隆男
ヒト臓器再生に向けた基礎技術開発のために、新規ゲノム編集法CRISPR/Casシステムによる遺伝子ノックアウトマウス作製の高効率化と、マウスiPS細胞を用いたノックアウトマウスの胚盤胞補完法の開発を目指した。マウスと、より簡便なモデルシステムであるコオロギにおいて、ノックアウト効率を向上させることができ、ノックインを含む新規の基盤技術を開発した。これにより目標の一つを達成する事ができた。一方、CRISPR/Cas法により作製したノックアウトマウスの胚盤胞にiPS(もしくはES)細胞を導入する実験システムを構築することができ、導入細胞のホストへの取り込みを確認するには至っていないもののCRISPR/Cas-胚盤胞補完法の確立にはあと一歩のところにきている。本研究により胚盤胞補完法に必要な臓器欠損モデルの作製が促進されると考えられ、今後早期にiPS細胞による補完を確認した上で、ゲノム改変iPS細胞の導入や臓器・器官作製を試みたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にコオロギ、マウスともにCRISPR/Cas技術を用いた遺伝子ノックアウトの高効率を達成できた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許申請可能な研究進展が望まれる。CRISPR/Cas技術は急速に進歩し、すでに汎用性のある技術となりつつある。その点を考慮した上で、今後の展開方向を考える必要があると思われる
天然資源成分から新規マラリア治療薬物開発を目指した抗マラリア活性化合物ライブラリーの構築 徳島文理大学
久保美和
徳島文理大学
堤一彦
申請者は、保有する500種類の植物抽出物から、これまで報告されている天然素材よりもはるかに強力で、マラリア原虫に対して高い選択毒性を有する数種類の植物資源を見出した。本研究開発は、その活性成分を見つけ出し、抗マラリア活性ライブラリーを構築することを目的とする。研究開発の結果、最も強力な抗マラリア活性が確認された植物資源の活性画分から3つのアルカロイド類を単離し、それらの化学構造を明らかにすることに成功した。また、あらたに4種の植物資源に強力な抗マラリア活性が認められることを見出した。今後、活性画分の精製を続け、活性化合物の化学構造を明らかにし、抗マラリア活性を詳細に調べ、新規抗マラリア剤のリード化合物候補群となる抗マラリア活性化合物ライブラリーを構築する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもある種の植物のメタノール抽出物が抗マラリヤ作用を持つことを明らかにしていること、この抽出液について精査し、単離したフェナントレンアルカロイド3種に抗マラリア作用を見いだしていることについては評価できる。一方、活性化合物が抗マラリヤ化合物のリード化合物になるか技術的検討やデータの積み上げなどがさらに必要と思われる。今後は、3種のアルカロイドを合成し、実際に抗マラリヤ活性を示すか検証することが望まれる。
電子常磁性体共鳴 (EPR) 生体放射線被曝線量測定用口腔内共振器の開発 香川大学
三宅実
香川大学
倉増敬三郎
放射線被ばく線量は、電子常磁性体共鳴測定装置(L-band in vivo EPR)を用い歯のエナメル質に生成されるラジカルを計測することで直接計測が可能になる。本研究開発目標は米国ダートマス大学と共同で開発した同装置における口腔に適応させる専用共振器(検出装置)の開発である。緊急時の被ばく線量測定に使用できる前歯での歯冠部エナメル質測定に特化した口腔内の固定用アプリケータと、高感度で、定量性に優れた共振器の開発を行った。 ループ径を変え2機の試作機を作製した。目標性能を1 Gy 照射で感度90%以上、特異度80%以上の当初目標を達成できた。今後、装置自体の小型化を図る計画で、従来のNEOMAX磁石は約1.3トンであるが、既に小型ポータブルマグネット(約29kg)の実用化も終了し同装置の工業製品化も可能となる。それにより今回開発した共振器の市販を行える。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、被曝線量の把握のためのプロトタイプ機の製作とその効果が確認され、従来製品を越える性能を達成している技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、ヒトの歯での実測実験をどうするかが課題で、具体的な解決法を早急に検討することで実用化が望まれる。今後は、関連する企業との共同研究を積極的にされることが期待される。
柿抗酸化性成分を利用した新たな特定保健用食品開発への基礎研究 香川県立保健医療大学
天川雅夫
高い抗酸化能を有する柿種皮を特定保健用食品などに利用するため、糖尿病病態マウスに柿種子抽出物を5か月間、経口投与を行い、継時的に随時血糖値、活性酸素・抗酸化測定、インスリン濃度や血液成分のメタボローム解析を行うことで、柿抗酸化性物質の生体内における機能性を評価した。その結果、随時血糖値(増加率)は5か月目にcontrol群との間で有意差を認め、活性酸素・抗酸化測定においても継時的にBAP/dROM比(潜在的抗酸化能)が柿種子投与群ではcontrol群や柿の葉茶の柿葉群と比べ緩やかな減少傾向を認め、新たな特定保健用食品素材としての可能性が示唆された。今後の展開として、さらに糖尿病マウスを使用した再現性の確認および血糖値増加抑制効果の検証として、肥満マウスを使用した糖尿病発症時期遅延による立証を実施し、新たな特定保健用食品として研究開発する予定である。
当初目標とした成果が得られていない。 糖尿病病態モデルマウスにおいて、柿種子と葉の抽出物は血糖値抑制効果を示さず、当初目標は達成できていない。抗酸化作用については、対照区と処理区と間に明確な差がなく、統計処理がなされておらず、効果を強く主張できず、メタボローム解析の結果が意味するものが不明慮になっている。一方、柿の種子や葉の抽出物の実用化に企業が前向きに考えている点は評価できる。今後は、当該抽出物の機能性を充分に担保して知財を確保するとともに、機能性に関する作用機構も併せて明確にし、その後に実用化を目指すことが望まれる。
ICカードを用いた在室管理支援システムの構築 香川高等専門学校
中山仁史
香川高等専門学校
関丈夫
本研究では非接触型ICカード(NFC)を用いて誰もが安心・安全な住環境で暮らせることを目標に、ICカードを用いた在室管理支援システムの構築を行った。具体的な目標としては、(1)カードをかざすことでカードユーザの在室・不在を表示する機能、(2)インターネット経由で遠隔地もしくは別棟にいる関係者また支援者等への情報提供機能を実現することである。そこで、在室・不在を管理する在室管理支援システムの構築を行った。このシステムは在室管理と在室確認の2つの主機能からなるもので、前者はICカード検知に伴い、ユーザの在室・不在ステータスを管理し、後者はこのステータス情報を一覧として表示するものである。システム構築の結果、提案システムはカード検知に伴うステータス情報を正しく切換え、在室・不在時刻などの情報を適切に処理・表示できることを確認した。また、ユーザ毎にファイル化されたステータス情報をインターネットに対して公開可能なディレクトリに保存することで、リアルタイムで関係者らに情報提供することができる。以上の結果、該当年度で実施すべき目標を達成することができた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもリモコンなどのキー操作をICカード化し、“かざす”だけで利用可能なインタフェースを開発し在室・不在時刻などの情報を適切に処理・表示できることを確認している技術については評価できる。一方、現存するICカードシステムの利点をさらに強調し、弱点を克服できるものに仕上げることによるための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、試験運用している施設との連携をはかりながら、新規性のあるシステムの実用化に向けた取り組みが望まれる。
GPS機能付き携帯電話を用いた発話困難児者向けコミュニケーションエイドの開発 愛媛大学
苅田知則
コミュニケーションは人間の社会生活の基盤となる生活機能であり、発話困難によりコミュニケーションできなくなると、当事者の生活の質は大幅に低下する。本課題では、発話困難児者の円滑な会話を支援するために、全地球測位システム(GPS)機能付き携帯電話を用いた音声出力型コミュニケーションエイド(GPS-VOCA)の開発を行った。本課題で開発したGPS-VOCAはiOSを搭載した端末で動作するアプリケーションであり、(1)GPS機能・時計機能・VOCA機能が連動し、利用施設と時間に応じて、ユーザーが表出したいメッセージリストを登録できる機能、(2)登録した地点・時間において必要なメッセージのリストが自動的に表示される機能、(3)メッセージリストを操作することで音声が再生される機能を有する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に全地球測位システム(GPS)機能付き携帯電話を用いた音声出力型コミュニケーションエイド(GPS-VOCA)の開発において、GPS連動機能の改良、時間と連動したVOCA機能を開発している技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、インタフェースの改善、操作手順の整理、屋内利用時の確実性の向上など残された課題を克服することでの実用化が望まれる。今後は、発話困難児者の日常生活場面でフィールド調査を実施することやパートナー企業を確定し技術移転を目指した産学共同研究を進めることが期待される。
ポイント・オブ・ケア診断キットを目指したファージ尾部吸着タンパク質を利用するイムノクロマトグラフフィー法の技術開発 高知大学
内山淳平
株式会社テクノネットワーク四国
安田崇
近年、細菌検査におけるポイント・オブ・ケア診断キットの社会的ニーズが高まっている。本申請研究課題では、「ポイント・オブ・ケア診断キットを目指したファージ尾部吸着タンパク質を利用するイムノクロマトグラフィー法の技術開発」を行った。本研究で提案する技術は、ファージ尾部吸着タンパク質を細菌検出に使用する技術である。イムノクロマトグラフィー法の変法であるため、ファージクロマトグラフィー法と命名した。はじめに、黄色ブドウ球菌を標的とし研究開発を行った。ファージクロマトグラフィー法は、現在、流通しているキット類と比較して、感度・精度は優れており、また、他の細菌種との交差反応は認められていない。既存技術と比較して技術的優位性を有しており、十分技術移転可能であると考えられる。現在、本法の更なる技術改良を行っている。さらに、様々な細菌種に対するファージ吸着タンパク質の分離を行い、ファージクロマトグラフィー法の構築を目指して研究を継続している。
本研究成果により、ファージ尾部吸着分子の十分技術移転が可能であるという結果を得た。今後、研究を継続して行い、様々な菌種に対して、高感度に検出可能なファージクロマトグラフィー法を作製し、事業化を目指したい。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、細菌検出系において十分な感度が得られ、新規検出系の開発に成功した。また、その研究成果に基づき新規特許出願等が行われた技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、クロマトグラフィー法を利用し新規目標好感度細菌検出系を開発したことから、技術移転を目指した産学共同等の研究開発ステップにつながり、実用化が望まれる。今後は、クロマトグラフィー技術以外のより簡便な検出系の開発につながる技術も研究されることが期待される。
スタチンを応用した新規炭酸アパタイト骨補填材の開発 九州大学
熱田生
歯科領域では骨増生術の必要性が高まっている。そこで本研究では骨リモデリングサイクルに組み込まれる炭酸アパタイトと骨新生促進効果や軟組織治癒促進効果、感染防止効果が報告されているスタチンとを組み合わせることで新規骨補填材料を開発することとした。今回の研究では1)炭酸アパタイトースタチン複合体の調製を行った。その結果、スタチンを炭酸アパタイトに封入することに成功した。2)調製した炭酸アパタイトースタチン複合体をラット骨内に埋入し、組織学的に骨補填材料としての評価を行った。その結果、コントロール群と比較して有意に高い骨新生を確認した。今回の研究を通して本手法の有効性が示唆された。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、in Vivoでは、良好な、骨増生が観察され、スタチンー炭酸アパタイト複合体の有用性を示唆できていることについては評価できる。一方、in Vitro系の実験データが不十分と思われる。細胞毒性も含めた、データの蓄積に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、骨増生を目的とした術式、材料は、大変多くのものが報告されており、本研究の優位性を明確にされることが望まれる。
操作者の手先・指先のようにあやつることが可能なマイクロサージェリー・ロボット 九州大学
荒田純平
九州大学
太田康仁
手術ロボットは、直感的な器具操作により、繊細な手術が簡便に実現される。しかしながら、術者と術具先端にはロボット装置が介在しており、直接、医師が手術器具を握り手術するような直感性・操作性には、至っていない。本課題では、動作するロボット器具をあたかも操作者身体の一部として認知する現象である「身体所有感の転移」を効果的に発生する仕組みを内包するロボット・システムとして、微細血管縫合に応用可能なマスタ・スレーブシステムを構築した。システムを用いたユーザー評価実験により、操作に有効な身体所有感の転移が生ずることが明らかになり、提案技術のフィージビリティが示された。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、心理物理学分野のラバーハンド効果を医療システムの用いたアイデアとフィージビリティを確認できたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、使用者によって個人差が大きな効果なので、全ての使用者に強い効果がでる条件を今後も研究し、実用化が望まれる。今後は、薬事法が関連する分野なので、この問題を解決することに能力を有するパートナーを選定されることが期待される。
抗細胞老化物質の探索を目指した、カタラーゼのペルオキシソーム輸送効率測定法の確立 九州大学
奥本寛治
九州大学
松園裕嗣
抗酸化酵素カタラーゼの細胞内小器官ペルオキシソームへの局在化効率は、細胞老化の進行に関連することが見出されている。薬剤依存的発現誘導が可能な蛍光タンパク質融合型カタラーゼレポーターの作製およびその安定発現細胞株の樹立と、レポーターの蛍光検出系を組み合わせることで、簡便かつ定量的にカタラーゼのペルオキシソーム輸送効率を測定する方法を確立した。また、細胞老化抑制効果が期待されるカタラーゼのペルオキシソーム輸送亢進物質のスクリーニングの実用化に向けて、カタラーゼのペルオキシソーム輸送効率測定系のハイスループット化対応を進めた。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、蛍光色素融合型カタラーゼレポータの作製と安定発現CHO株細胞の樹立について低発現ではあるが、2株の安定発現細胞株を分離することに成功していることについては評価できる。一方、カタラーゼ・レポーターそのものが未知の細胞毒性を有している可能性が大きく、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、現実にスクリーニングを行うとして研究を進めることが望まれる。
連通多孔体形成骨置換型セメント 九州大学
中島康晴
九州大学
平田徳宏
β型リン酸三カルシウム顆粒と第一リン酸水素カルシウム-リン酸水溶液からなる連通多孔体形成骨置換型セメントが臨床応用できるかどうかを検証することを目的として、本研究では、β型リン酸三カルシウム顆粒連結硬化体を作製し、硬化性および連結部位の結晶形態や結晶構造を評価するとともに、実験動物を用いた病理組織学的評価を行った。顆粒の連結に寄与するリン酸水素カルシウム二水和物を表面に被覆したβ型リン酸三カルシウム顆粒を、ラットの頭蓋骨に形成した骨欠損に埋植し、新生骨の形成を評価したところ、β型リン酸三カルシウム顆粒を埋植した場合と比較して、顆粒の間隙において多くの新生骨形成が認められた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、動物実験モデルにおいて、適切な評価可能な組織標本が完成し、対照群と比較して明らかに骨形成能が示され本品の有効性の一端を示すことができたことに関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、他の骨誘導材料との比較も必要で、本品の優位性を広く示す必要がある。実際に使用する疾患を意識した動物試験を実施するなどでの実用化が望まれる。今後は、本品を用いてどのような疾患治療を想定するかを明らかにした上で、企業等適切なパートナーを求めることが期待される。
ウイルス検出のための誘電泳動インピーダンス計測法の改良 九州大学
中野道彦
九州大学
古川勝彦
DEPIM法(誘電泳動インピーダンス計測法)を用いたウイルス測定を目的に研究開発を行った。その検出感度の目標値を0.1ng/mlを5分で測定するとした。病原性ウイルスであるアデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルスを検出対象ウイルスとした。DEPIM法は検出対象の誘電泳動を基盤とした測定法であるが、これらウイルスの誘電泳動特性がこれまでに報告されていなかった。そこで、まず対象ウイルスの誘電泳動特性を明らかにした。次に、対象ウイルスのDEPIM測定を行った。その結果、1分間で10〜50ng/mlの検出感度を示した。当初の目標値には達しなかったものの、ウイルス検出においてDEPIM法が使用できることを示すことができた。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、誘電泳動インピーダンス計測法によって、アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルスを検出できることが示せたについては評価できる。一方、検出感度の向上が大きな課題であり、対象物の電気的性質ばかりでなく、夾雑物を含む流体の特性の解明が不十分なためと考えられるので、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、ノイズを含む流体中のウイルスを検出するナノスケール流動制御に取り組むことが望まれる。
機能性食品成分の超簡便・超高感度センシング技術の開発 九州大学
藤村由紀
九州大学
前野伸策
本研究では、申請者独自の質量分析(MALDI-MS)に基づく非標識低分子化合物の超高感度・ハイスループット解析法ならびに組織内分布可視化法を応用・最適化し、低分子の機能性食品成分の超簡便・超高感度センシング法の開発を概ね当初の予定通りに達成できた。今後、本成果を学会・論文にて公表すると共に、多彩な食品成分に対する網羅性確保のために、MALDI-MS用マトリックスおよび今回新たに見出した複合成分分布の革新的一斉可視化法の改善、さらには種々の食品への適用事例を拡充させることで、技術的検証・先鋭化を推進し、機能性成分を標的とした農産物(食品)の品質管理、生理活性スクリーニング、生体内動態分析を支援する基盤技術へと昇華させる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に多種多様な成分を含んでいる食品中から簡便にしかも感度良く分析できる方法が構築されたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、イメージング分析による多成分を同時に解析できる事を見出しているので、この方法をもう少し改善することでハイスループット解析につなげることが出来るのではないかと思われる。機能性成分が機能を発揮出来る濃度についても考慮した分析方法を検討することが望まれる。イメージングは一般消費者達にとっては非常に理解しやすい表現方法なので、今後はこの分析方法に特化するのも良いのではないか。
骨を用いたメタボリックシンドローム予防効果を有する食品素材の開発 九州大学
松田美穂
九州大学
松園裕嗣
骨の細胞が作る骨基質タンパク質が全身の代謝を活性化するとことで注目されている。本研究の目標は、骨基質に多く存在する基質分子を食品素材として実用化し、メタボリックシンドロームの予防への応用を目指すことである。今回、材料として食用廃棄物使用した。溶媒を用いて抽出した結果、代謝を活性化するのに十分な量の骨基質分子が抽出された。それらをマウスに経口投与したところ、長時間消化管内に留まる上、代謝活性化に有効な成分の割合が増加していた。また、抽出液をマウスに1ヶ月間継続投与したところ、糖代謝が改善する傾向が見られた。今後は、マウス個体に対する詳細な解析と抽出や投与方法の簡便化を計り、実用化の検討を行う。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも投与したオステオカルシン(OC)が24時間後に定量的に0.1%小腸内で確認している点については評価できる。一方、代謝活性を有するGluOCの基礎的実験をさらに進める必要がある。GlaOCが胃酸により代謝活性を有するGluOCに変換すると考えているが、胃内より小腸で絶対量が減少しているので小腸までにGlaOCの方がGluOCより分解されやすいとは考えられないか等、基礎実験のデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、メタボリックシンドロームの予防の効果について具体的な数値を示すことにより、実用に向けての到達目標を明確にすることが望まれる。
植物由来生理活性成分の可視化を実現するMALDI-MS用マトリックスの探索 九州大学
三浦大典
九州大学
三和正人
MALDI-MSは極めて高感度な質量分析技術であり近年注目を集めている質量分析イメージングにおいて最も良く用いられるイオン化法であるが、既知のマトリックスで測定可能な対象物質が極めて限定的であり、かつ各マトリックスで測定可能な分子が異なる事から、低分子化合物測定への用途拡大は制限されている。本申請研究では、有用作物に含まれる生理活性成分の分布可視化を可能とするマトリックス探索を行い、高い感度で検出可能なマトリックスの探索に成功した。また、同じマトリックスを用いる事で、植物中に存在する生理活性成分の分布可視化に成功した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、精力的なスクリーニングにより幾つかの有用なマトリックス候補と新たな検出ターゲットを見出したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、イオン化の促進・抑制に関する機構の解明など科学的な考察も加えるなどでの実用化が望まれる。今後は、マトリックス設計の指針などを示すことも期待される。
脳を標的とする酸化還元応答MRI造影剤の開発 九州大学
山崎俊栄
九州大学
前野伸策
本研究課題では、脳移行性を有する有機MRI造影剤の開発を目的に、造影効果の高感度化、移行性の評価を検討した。造影効果の高感度化のために、1分子内のラジカル化合物を2または目標にした3分子含有する有機スピン化合物の合成に成功した。これらの化合物は、MRIにおいて高い造影効果を示し、そのスピン数に応じたT1緩和度を持つことを確認した。しかしながら、開発した化合物は極めて水に対する溶解性が低く、実験動物への投与が困難であったため、今後、架橋分子での水溶性向上を図り、移行性評価を検討したい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもMRI造営剤の開発を目ざしたラジカル化合物を合成することができたことについては評価できる。一方、実用的なラジカル化合物にするためには水溶性の化合物に変換する必要があり、それに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、水溶性の化合物を早急に合成して物性を確認されることが望まれる。
蛍光Nitroxideを用いたアスコルビン酸計測の実用化研究 九州大学
大和真由実
九州大学
松園裕嗣
本申請課題では、病態モデル動物や食品にアスコルビン酸測定用蛍光プローブを適応し、その有用性を示すことを目的とした。病態モデルとして、脳虚血再灌流モデルラット、老化マウス、糖尿病モデルラットを用いた。各組織および血漿サンプルでは、HPLCと同等の精度で、アスコルビン酸を評価することに成功した。また、市販飲料水についても簡便にアスコルビン酸の評価が出来た。アスコルビン酸は、生体内の反応に関わる還元剤であり、その評価は生理機能や病態メカニズムの解明につながる。また、添加物であるアスコルビン酸の測定は、食品の品質管理においても重要である。本研究の成果は、市販化に向け重要かつ強力な推進力になると考えている。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、開発してきたアスコルビン酸計測用のプローブの応用化、実用化例を具体的に提示することに成功していることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、プローブとして完成度が高く、試薬メーカーからの問い合わせや、市販化に向けた協議が順調であるので実用化が望まれる。今後は、特許等の知的財産の取得や、研究開発の主体性を保持されることが期待される。
骨修復機能を持つ植物由来接着剤の創製 九州工業大学
金子大作
九州工業大学
田中有理
本研究は、申請者らが開発した植物由来の接着剤を様々なアパタイト触媒を用いて創製し、ヒトや動物の骨を接合するための接着剤へと展開する事を目的とした。
研究期間中に、当初の予定通り、毒性試験及び骨接合試験等を行いそれら目標は概ね達成できた。骨や歯を強力に接合させ、且つ歯髄細胞や骨芽細胞への無害性、分化を阻害しないという成果は、国内外の多くの企業の関心を誘った。研究開発期間中に歯科用材料メーカーと共同研究契約締結に至り、接着剤・樹脂材料として、今後3年以内を目途に製品化してゆく。その他、多数の共同研究、MTAを締結するに至り、今後様々な分野の企業と連携していくための下地を構築できた。また、工業材料専門雑誌の特集号や国外テレビでの紹介、JSTサイエンスニュース2013でも取り上げられた。さらに、本研究に関する特許を3件(内2014年4月申請予定2件)申請し、現在PCT出願についても準備中である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、長期アルキル鎖を導入することで耐水性を強化し、in vitroで生体適合性を確認すると共に特許を出願したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、早急にin vivoでの骨接合試験を行い、生体内での接着耐久性と安全性を確認するなどでの実用化が望まれる。今後は、水中で接着性を示す素材として多方面への利用が考えられるが、当面は想定されている高付加価値分野へ展開されることが期待される。
微小血管における循環能を活性化するポリフェノールの開発 九州工業大学
北村充
最近我々は、従来知られている茶カテキンとは全く異なる構造のポリフェノール(PP)の単離に成功している。PPの生理活性として高い抗高血圧効果が挙げられ、その他種々の血液に由来する疾患に対して効果を示すことが分かっている。本研究では、PPの上市を念頭に、その大量供給ルートの開拓を目的として検討した。その結果、PPの前駆体のグラムスケールの合成に成功し、さらに、その合成における副生成物がリード化合物のPPよりも高い抗酸化能を有することを見出した。今後はPPの合成を進めると共に新たに見出した抗酸化能物質の構造を決め、新しい抗高血圧薬の開発を進める。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも目標化合物の合成には至っていないが、中間体の大量合成ルートが開発されている点は評価できる。一方、目標化合物の合成法を確立して、各種ポリフェノール誘導体の生理活性を確認するための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、ポリフェノール誘導体が抗高血圧薬のリード化合物となる可能性を見極めることが望まれる。
歯周病抑制菌を活用したオーダーメイド式の口腔内プロバイオティクス技術の開発 九州工業大学
前田憲成
九州工業大学
山崎博範
本研究では、全身疾患に深く関与している歯周病に対する有用な口腔内ケア技術を確立するため、多くのうがいサンプルから歯周病抑制菌の探索、歯周病原菌などの定量を行い、研究期間中に可能な限りデータを蓄積した。具体的には、8検体の歯周病患者サンプルと5検体の健常者サンプルに対して、歯周病抑制菌の探索、分離頻度の比較、および歯周病原菌と歯周病抑制菌として過去に分離された緑膿菌の存在比を比較した。その結果、歯周病患者8検体のうち2検体(分離頻度25%)から、健常者5検体のうち3検体(分離頻度60%)から歯周病抑制菌が見つかった。さらに、いくつかばらつきはあるものの、歯周病患者の検体では、歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis菌が多く存在していること、健常者には緑膿菌の数が多いことがわかった。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、歯周病を抑制する可能性のある菌種の同定に至った点については評価できる。一方、学術的批判に耐えうる程度まで、うがい液のサンプル数を増加させ、統計学的結果を示す必要がある。また、歯周病抑制菌を明らかにすることが必要である。技術移転を目指した産学共同研究開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、適切なサンプルサイズでの研究遂行が求められ、データ収集方法や解析における効率化をはかるなどの工夫をされることが望まれる。
空気圧方式によるピッチングマシーンの高機能化への商品開発 福岡工業大学
溝田武人
福岡工業大学
大野富生
これまで一流の投手が実際に投げてはいたが学術的には知られていなかった硬式野球ボールの変化球のなかで、回転軸がボール進行方向を向く変化球の様相が、申請者の風洞実験やボール飛翔の映像解析などにより学理として明らかになった。特に回転軸がボールの進行方向から少し傾くと不思議な横力が作用することを見出している。しかし従来のピッチングマシーンでは正確にこれを再現させることは出来なかった。この研究により正確にボールスピードと回転数および回転軸方向と縫い目の関係を再現できる発射装置を開発する。最終目標としては、これを発射装置“トップガン”のメーカーである共和技研(株)と協調して商品化する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、高圧ガス発射法によるピッチングマシーンという基本構成に関わる部分について、ほぼ目標は達成されたと評価できる。一方、技術移転の観点からは、本事業の核心となる技術部分における研究開発業務については、さらなる検証と改善を加えることにより実用化されることが望まれる。今後は、産学共同の研究開発は、これまでも確固たる協力関係を保ちながらやってきており、社会的インパクトもあり、社会還元が大いに期待される。
白麹菌スフィンゴ脂質を使った抗炎症作用を持つ革新的肌保湿剤の実用化検証 佐賀大学
北垣浩志
佐賀大学
末安亜矢子
白麹菌・黄麹菌の脂質抽出物及び精製画分の抗炎症作用を調べた。その結果、白麹菌・黄麹菌のグルコシルセラミド画分に、抗炎症作用を認めた。しかしながら、同時にグルコシルセラミド以外の画分の脂質にも抗炎症効果が認められた。これらの結果は、白麹菌・黄麹菌にはグルコシルセラミド以外にも抗炎症作用を持つ脂質成分があることを示している。質量分析の結果、抗炎症効果をもたらす物質の構造についても情報を得た。今後、これらの抗炎症効果をもたらす物質を同定していきたい。これらの結果は、白麹菌・黄麹菌からの抗炎症素材の開発に道を拓く成果である。
当初目標とした成果が得られていない。中でも白麹菌、黄麹菌からスフィンゴ脂質を抽出し、その中に抗炎症作用のある分画があることを見出しているが、当初の目標である肌透過能低減効果の検討はおこなわれておらず、保湿剤としての実用化検証にはいたっていない。白麹菌のスフィンゴ脂質には抗炎症活性を持つ成分が存在するが、同じ精製画分は細胞毒性が見られている。今後は、早急に抗炎症作用を示すスフィンゴ脂質を同定して、研究を加速することが望まれる。
無侵襲膀胱内尿量モニタリングシステムの開発 佐賀大学
木本晃
佐賀大学
佐藤三郎
本研究の目標は、膀胱内尿量測定システム(2号機)により複数の被験者で実験を行い、無侵襲膀胱内尿量モニタリングシステム確立に向けての測定精度や実用化に向けての課題を明確にすることである。1号機をもとに、回路系の改善、多点計測可能な2号機を製作し、接触状態の安定化を図った。実験として、被験者10名により排尿量と提案システムによる測定値との比較を行った。78回の測定結果から、目標である測定精度25 %での提案システムによる排尿量測定には至らなかったが、実用化へ向けての課題を明確にすることができた。今後、実験結果をもとに、測定回路系及び多点計測法の改善を図り、実用化へ向けて実験を行う予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、実用化に向けた課題の明確化作業が進められており、立位状態での測定可能性を示す結果も得られている。基礎データ収集の段階ではあるが評価できる。一方、 ソフト関連企業2社との連携が行われ、製造に関する専業メーカーへの打診も進められており、産学共同研究に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、個体差の大きい生体系の計測システムを検討する上で、体脂肪率や体重等で分けられたグループ間の相違に関する検討も必要で、今後より詳細な検討がされることが望まれる。
顕著な抗腫瘍活性を持つ高活性BBPI誘導体の開発 長崎大学
岩尾正倫
長崎大学
石橋由香
研究責任者らにより開発された水溶性トポイソメラーゼI阻害剤BBPI-7は、マウス結腸がんcolon26に対して、臨床で用いられているトポイソメラーゼI阻害CPT-11(塩酸イリノテカン)と同程度の抗腫瘍活性を示すことが明らかになっている。本研究においては、CPT-11を上回る抗腫瘍活性が期待される新たな水溶性BBPI誘導体を設計・合成し、活性評価を行った。その結果、新規BBPI-19がcolon26に対してCPT-11を上回る有意な抗腫瘍活性を示すことが明らかになった。今後は、BBPI-19を臨床応用につなげるため、更なる構造最適化、薬物体内動態解析、ヒトがん腫に対する抗腫瘍活性評価等に取組む。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも最初計画した合成ルートに改良を加え、目的とする化合物BBPI-18とBBPI-19を合成することができた点。また、マウスを用いた抗腫瘍活性評価の結果、BBPI-19がイリノテカンに比べて有意に高い抗腫瘍効果を示した点については評価できる。一方、本研究で到達した化合物BBPI-19の副作用を改良するため、体内動態の検討に基づく投与法の改良、化合物の構造の更なる最適化が必要があると思われる。今後は、化合物BBPI-19の構造中のどの部分が副作用を現わすのか考察することも重要と思われる。
ハイブリッド活性ペプチド合剤による脳梗塞治療薬開発 長崎大学
植田弘師
長崎大学
藤原雄介
脳保護分子プロサイモシンアルファ(ProTa)の、神経保護作用と神経免疫賦活化作用を担う機能性アミノ酸配列を同定し、ペプチド製剤として脳梗塞予防・治療薬に資することを目的とした。ProTa全長をフラグメント化したペプチドを合成し神経保護活性について評価したところ、虚血病態に対し予防と治療のハイブリッド活性を保持するペプチドと、神経免疫賦活化作用による予防作用のみ示すペプチドをそれぞれ1つ見出すことに成功した。今後は、神経免疫賦活化作用を有する神経疾患の予防薬、という新たなコンセプトのもと、更なる高活性化や、全身投与でも安定性を示すようにシーズの改良を試みつつ、知財の確保を優先的に進める。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に当初予定した実験は計画通り実施され、ProTαのペプチド断片であるP6ペプチドとC末端デカペプチドがともに神経免疫賦活化作用を示すことが見出された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、神経保護作用を有すると報告されている物質(例えば、パルミトイルエタノールアミド)との比較が必要である。今後は、改変・誘導化により高活性化・安定化を図ることや、末梢投与でも有効か否か等、さらなる基礎研究が期待される。
芳香族性複素環類の触媒的ラベル化反応 長崎大学
栗山正巳
一般性に優れた触媒的重水素化反応の開発を目標として研究を行った。近年、重水素導入による生理活性制御の有効性が注目されており、この種の反応は医薬品開発において重要性が増している。反応効率向上の鍵となる新規配位子を種々合成して検討を行ったところ、化学収率の顕著な向上が見られた。また、本重水素化手法は、高い化学選択性と優れた重水素化率を示すことが明らかとなった。一方で、触媒量の低減や複雑な構造を持つ分子への適用に関しては改善の余地があり、今後の課題となっている。しかし、有効な配位子構造に関する知見の蓄積が出来たことから、これらを基盤として更なる検討を加えることで改善が可能と期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、重水素を触媒的に組込むための配位子を最適化したことについては評価できる。一方、適用している出発化合物が限定的なので、その拡大に向けた、自動合成や受託合成などの検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、第一級アルコールへの適用や、既に重水素化されている医薬品候補を標的の一つとすることなどが望まれる。
骨形成促進剤のスクリーニング 長崎大学
小守壽文
長崎大学
藤原雄介
骨芽細胞分化のマスター遺伝子Runx2の誘導は、骨芽細胞を動員し、正常な骨を増やす。骨形成促進剤を開発するために、Runx2を骨芽細胞特異的に発現させるエンハンサーを用いたレポーターアッセイで、化合物のハイスループットスクリーニングを行った。自動化装置を用いることにより、迅速にエンハンサーを活性化する化合物を得ることができた。Runx2 mRNAを誘導する化合物も得ることができた。今後、さらに低濃度でRunx2 mRNAを誘導できる化合物を探索、その作用機序を解明するとともに、動物実験で骨量増加作用を検討する。動物実験で骨量を増加させる化合物は、現存しない、経口の骨形成促進剤の有力候補となる。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に骨芽細胞の分化に必須な転写因子Runx2の転写を誘導する化合物を得ることを目標に3000化合物をスクリーニングし、誘導活性のある10化合物を絞った。さらに、その中で1化合物は、高濃度でRunx2の発現を誘導することを見出している点、また、100種の天然物ポリフェノール中1つの化合物が、誘導活性があることを見出している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、骨の量を評価するためには、高いコストが必要であり、企業にとって、コスト面での障害になり易い。産学協同事業を拡充し、障害を乗り越えていただきたい。骨形成を促進する低分子化合物は、未開発の領域である。その点において、既にいくつかの低分子化合物の候補を得ていることは、大きな進歩である。今後、活性の強い化合物を同定されることが期待される。
抗HTLV-I薬の開発研究 長崎大学
中村龍文
長崎大学
石橋由香
本課題ではプロスルチアミンがHTLV-I感染細胞に対してアポトーシスを惹起出来るというin vitroの成績をもとにHTLV-I感染ヒト化マウスモデルを用いて、in vivoで本薬剤による抗HTLV-I効果の検証を行った。その結果、本薬剤の高用量投与群において有意差は示さなかったもののHTLV-I感染細胞の低減効果が認められた。今後は本課題の更なる研究開発に向けて、平成26年度厚生労働科学研究委託費・難治性疾患実用化研究事業に応募申請中である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもモデル動物におけるプロスルチアミンの投与方法が確立して、今後のメカニズム解明に向けた実験系の構築が示せた点は評価できる。一方、効果のばらつきが大きく、評価系が機能しているのかが明確でない。確実に評価できる系を確立し、さらにメカニズム解明を行う為の技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、メカニズムの解析を通して、新たな治療方法を開発されることが望まれる。
悪性度の高いがん細胞選択的に作用する新規抗がん剤複合体の開発 熊本大学
有馬英俊
熊本大学
松本泰彦
本課題では、葉酸修飾メチル-b-シクロデキストリン(FA-M-b-CyD)自体の抗がん活性と低分子抗がん剤との複合体を悪性度の高いがん細胞へ選択的に送達することにより、相乗的な抗腫瘍効果を検討した。FA-M-b-CyDはドキソルビシン(DOX)と安定な包接複合体を形成した。さらに、FR高発現がん細胞に対して、DOX単独よりもDOX/FA-M-b-CyD複合体は優れた殺細胞効果を示した。これらの結果より、FA-M-b-CyDはFR高発現細胞選択的な抗がん剤キャリアとして有用である可能性が示唆された。今後、投与条件の最適化およびDOXの体内動態解析を行い、民間企業と共同開発を展開する予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にFA-M-β-CyDが各種抗がん剤と安定な複合体を形成し、また、悪性度の高いがん細胞選択的な取込みが認められることを示し、FA-M-β-CyDが腫瘍細胞選択的な抗がん剤キャリアとして有用である可能性を見出した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、FA-M-β-CyDは、DOXと安定な複合体を形成したが、体内動態に関する検討や投与条件の最適化の検討、DOX以外の抗がん剤における in vivo抗腫瘍効果に関する検討などが望まれる。今後は、新規抗がん剤への有効性を確認すること、動物モデルで有効性および安全性を検討することが期待される。
圧電素子アレイによる着座式心拍・呼吸信号計測システムの開発 熊本大学
伊賀崎伴彦
熊本大学
上床貴子
着座での心拍・呼吸信号の計測に特化した圧電素子センサ、およびそのアレイデバイスから計測された信号から心拍・呼吸信号を正確に抽出するアルゴリズムの開発を目標にそれぞれの試作を行った。圧電素子については、ステンレス基板のPZT圧電膜が有効であることが確認され、目標とする圧電素子としての可能性が示唆された。アレイデバイスについては上下に配置した2枚のPVDFの間に緩衝材を挟んで左右に2組配置することで、上のPVDFで心拍・呼吸・体動の混合信号を、下のPVDFで体動信号のみを計測できていたことから、体動除去の可能性が示唆された。アルゴリズムについては、左右に配置したアレイの出力信号から体動の影響を受けずに心拍・呼吸信号を抽出できていたことから、目標とするシステムとしての可能性が示唆された。今後はステンレス基板のPZT圧電膜をアレイ化し、高精度の体動の除去および心拍・呼吸信号の抽出の実現化を目指す。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、PVDFを用いた2層型センサによって、呼吸統制下では呼吸間隔の誤差率を改善できていることについては評価できる。一方、体動の影響を取り除くことと、PVDFより優れた特性を示しているように思われるPZTを用いた開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、硬質のPZTセンサを柔軟物(椅子の座面や人体の臀部)を対象として座り心地に影響がないか、また耐久性に問題がないか検討し、信号処理に関しては体動をノイズとみなして統計的信号処理法を適用することを検討されることが望まれる。
ミクログリア活性化制御薬の新規スクリーニング法の開発 熊本大学
香月博志
熊本大学
槐島慎
本課題では、新たな概念に基づく神経疾患治療法の開拓を企図し、ミクログリアの活性化状態を組織保護・修復性に指向させる化合物を探索する新規手法の確立を主眼とした。ミクログリア系株細胞を用いて、ハイスループット化の可能な薬物一次スクリーニング法の構築に着手し、作業の最終段階に到達した。今後、技術的問題の解決も含めて知見を集積し、特許出願を目指す。また、薬物の二次スクリーニングに供するための培養脳組織実験系を用いて、既知の化合物1種に関して、ミクログリアのオルタナティブ活性化を介して神経保護効果を発揮するという新規の薬理作用を見出したので、論旨を補強するデータを近日中に蓄積し、論文投稿へとつなげる計画である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもいくつかの基礎データを補強できた点と二次スクリーニング法開発と候補物質検索について着手できた点は評価できる。一方、達成できなかった主目標のハイスループットスクリーニング法の早急な確立が望まれる。技術的問題については解析できているようなので今後得られた知見をもとに成果を挙げられることを期待する。
2型ミクログリアの抗酸化活性を指標とした神経疾患治療薬候補のハイスループット・スクリーニング系の構築 熊本大学
川原浩一
熊本大学
松本泰彦
研究期間内に、本スクリーニングシステムを完成することはできなかった。主な理由は、本システムの出発材料の提供を予定していたトランスジェニックマウス(雄性)のホモ接合型は、繁殖能力がないことが判明したためである。しかしながら、野生型マウスを用いた混合グリア細胞系において、ある種のGPCRのアゴニスト(7残基のペプチド)が、ミクログリアの抗酸化酵素HO-1の発現を著明に増大させることを見出した。今後は、本化合物がアルツハイマー病モデルマウスに対して治療効果があるかを検証する必要がある。一方で、出発材料をヘテロマウスに変更することにより、ハイスループット・スクリーニング系の構築に向けての再検討を行う。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもミクログリアの持つ神経傷害作用と神経保護作用を区別して、ミクログリアのサブタイプを分離する独自の方法をもとに、神経保護作用促進物質をスクリーニングしようとする独自性は高く評価できる。一方、Nrf2活性化を指標にしたスクリーニングに重点をおくのか、ある種のGPCRのアゴニストあるいはその類似化合物の作用に焦点を絞って、重点的に研究を行うのかを明確にすべきである。
食道扁平上皮癌の早期発見・診断における血中FGFRL1エクトドメインの有用性評価 熊本大学
土屋創健
熊本大学
松本泰彦
本研究開発では、Fibroblast Growth Factor Receptor-Like 1 (FGFRL1) エクトドメインが食道扁平上皮癌の早期発見や診断バイオマーカーとなりうる可能性を探索するため、FGFRL1エクトドメイン定量法の確立を目標として解析を行った。その結果、Multiple Reaction Monitoring (MRM) 法とWestern blot法において、それぞれ、FGFRL1エクトドメインの定量法を確立した。さらに、実際にヒト血漿中にFGFRL1エクトドメインが存在することを世界で初めて見いだし、FGFRL1エクトドメインが食道扁平上皮癌における早期発見・診断等のバイオマーカーとなりうる可能性がさらに高まった。しかしながら、ヒト血漿サンプル数がまだ十分ではなく、有用性評価は今後の課題となった。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、血中FGFRL1エクトドメインの存在を質量分析法とWestern Blotting法で検証したことについては評価できる。一方、研究成果ががんの診断に応用展開されると、新しい社会還元に導かれることが期待できる。症例数を増やして、診断に向けた有用性を確認するデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、血中量を早急に把握し、定量解析できるようにされることが望まれる。
高選択的ケモカインシグナル阻害薬の開発 熊本大学
寺沢宏明
熊本大学
松本泰彦
本申請課題は、ケモカイン受容体とその下流シグナル伝達因子フロントの結合を阻害する抗炎症薬シーズ化合物を、NMR法に基づいたフロントの立体構造情報を利用して最適化することを目標とする。我々が独自に立体構造決定に成功したフロントのケモカイン受容体結合領域に対して、創薬シーズ化合物を結合させ、フロント-候補化合物複合体の立体構造を決定した。さらにフロントの構造変化を誘起するアロステリックな阻害様式を示す創薬シーズ化合物があることを見出した。また、新規な炎症反応の検出系の構築に関する検討を行い、実験動物を用いて炎症反応を効率よく検出できることを強く示唆する結果を得た。以上より、当初の予定以上の成果を得たと考える。今後は、新しい炎症反応の検出系を確立し、創薬シーズ化合物の阻害メカニズムを解明し、炎症抑制効果との相関を調べる予定である。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。ケモカインのシグナルを特異的に阻害する抗炎症薬は未だ開発されていない。したがって、その独創性は高く評価できる。一方、技術移転の観点からは、LPSを脳内に注入して海馬における炎症反応をMRIで検出する方法は一般的ではない。関節リウマチ等もっと一般的な炎症モデルでの検討が望まれる。今後は、モデル動物を用いてフロント機能の特異性や抗炎症効果が明確になれば興味深い。
音響式肺機能検査システムの開発 熊本大学
鳥越一平
熊本大学
東英男
肺機能の検査で従来用いられているスパイロメーターは、被験者の負担が大きい上に、呼吸器系疾患に関して不十分な情報しか得られない。また、FOT法では、口唇位置におけるインピーダンスしか測定できないため、声門から口唇までの上気道の影響を受けるという欠点がある。本研究は、上気道の影響を除き、臨床上重要な声門以深の末梢側インピーダンスを直接測定することができる検査システムを開発することを目指したものである。本研究開発で提案する方法によって、被験者への負担が小さく、手順が簡便で検査時間も短かい検査装置が実現できる。
試作実験装置と肺気道の模型によって検証実験を行い、検査システム開発上のキーとなる基本的な課題について、実現可能性を確認することができた。今後、産学協同に向けて研究開発を継続していく予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、検査時間が短縮できる肺機能検査装置の実現は患者の負担軽減に役立つ点については評価できる。一方、ヒトの上部気道を模擬した模型では、断面積が可変の形状であるが、人体の気道をどの程度模擬したのか不明で、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、ヒトの気道模型の実現には、医工連携に基づく検討が不可欠で、複数の研究組織との連携がされることが望まれる。
癌化学療法の耐性克服を目的とした革新的な一酸化窒素デリバリーシステムの構築 熊本大学
丸山徹
本研究では、ヒト血清アルブミン(HSA)を用いた一酸化窒素(NO)の腫瘍デリバリーシステムを構築し、抗癌剤の組織集積性や癌組織の微環境を改善し、癌化学療法における耐性/抵抗性の克服を試みた。1)NO付加HSAダイマーは腫瘍へのNO移行性を顕著に亢進した。2)NO付加HSAダイマーは、既存の高分子抗癌剤であるドキソルビシン封入リポソーム及びアルブミン懸濁型パクリタキセルの腫瘍集積性を亢進し、腫瘍増殖を有意に抑制した。3)NO付加HSAダイマーは、腫瘍微環境やオートファジーを改善する結果、血管新生阻害剤の耐性化を克服した。今回、NO付加HSAダイマーが抗癌剤に対する抵抗性/耐性克服剤としての可能性を秘めていることを初めて見出した。今後は、その有効性をヒトでの治療抵抗性/耐性細胞を移植したモデルで実証する予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、NO修飾HSAの抗腫瘍増強効果や抗体医薬の耐性克服の可能性について基礎検討を行い、期待される成果が得られた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、NO修飾HSAによる効果は今回検討した抗癌剤や抗体医薬に限定されるのかそれともすべての抗癌剤に適用可能なのか検討することが望まれる。今回の成果がヒトに適用できれば、抗癌剤を低濃度で使用可能であり、副作用の低減につながる。また、抗体医薬の場合は、薬品費負担の低減につながる可能性がある。今後協力企業を見出し、早く実用化されることが期待される。
新規C5a受容体アゴニスト・ペプチドの消炎剤への可能性試験 熊本大学(2014.4.1〜社会福祉法人 恩賜財団 済生会熊本病院)
山本哲郎
リボソームタンパク質S19(RP S19)の架橋化多量体が形成できないGln137Glu-RP S19ノック・イン・マウス(NIマウス)と野生型マウスとに、カラゲニン胸膜炎とアレルギー性胸膜炎とを惹起した。いずれもNIマウスに強い増悪が見られた。また、NIマウスと野生型マウス由来の凝血塊を野生型マウスの腹腔に挿入したところ、KIマウス由来の凝血塊に吸収遅延が認められた。これらのNIマウスの病態は、組換えキメラタンパク質C5a/RP S19投与で是正された。C5a/RP S19を代替するペプチドの開発を試みたが期間内には終了できなかった。今後は「RP S19研究会」を作り、新たに熊本大学大学院生命科学研究部の3名の教授や准教授の参加を得て、研究を発展させていく。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもRP S19のGln137をGluに変異させたNIマウスはRP S19のリボソーム外機能が特異的に阻害され、抗炎症作用が抑制されている。このNIマウスではカラゲニン胸膜炎が遅延・増悪し、キメラタンパク質(C5a/RP S19)を投与するとカラゲニンによる急性炎症の増悪は完全に抑制れ、卵白アルブミンを投与したアレルギー性胸膜炎でも炎症を抑制できた。これらのアッセイ系が確立している点については評価できる。一方、企業化に向けC社も期待している課題であり、早く正しい配列の合成ペプタイドを用いたin vitro、in vivoの実験を終了させ、国際特許を出願して欲しい。今後は、多くの炎症モデルにもRP S19のペプタイドが有効であるか検討し、抗炎症薬としての可能性を探ることが望まれる。
エキソソームに内包された腫瘍マーカーを測定することによる、がんの早期スクリーニング技術の開発 崇城大学
牧瀬正樹
熊本大学
荒木寛幸
本課題では、エキソソーム(細胞外分泌性微小泡)に内包される2種類の腫瘍マーカー分子(Nup88, βカテニン)を高濃度に回収し、既存定量技術に供して、高感度かつ早期に検出する新規診断技術への実用転化試験を行った。3種類のNup88安定発現細胞株を用いた検討から、エキソソームによる上記マーカー分子の濃縮率は理論値よりも低く、検出感度の向上がそれほど見込めないことが分かったため、動物実験の実施には至らなかった。一方、一部の上皮様がん細胞ではNup88が培養上清に比べ約30倍濃縮された。今後はNup88が分泌され易いがん種を特定し、その検出量とがんの悪性度との相関性を調べ、新たなマーカー診断技術の開発につなげたい。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、 核膜孔因子 Nup88 が癌細胞発生の段階において、βカテニンの核での蓄積を促進することを見出し、それらを指標として癌の検出を目指そうとする申請者らの研究目標については評価できる。一方、Nup88 に関する基礎研究に重点を置いた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、もう少し基礎的な実験事実、確実な実験による証拠の積み上げがされることが望まれる。
ソフトな清掃洗浄を実現する抗菌性キトサン微粒子口腔ケア材料の開発 熊本県産業技術センター
齋田(林)佳菜子
キトサンはバイオマテリアルとして、無毒で、生体適合性に優れた特徴を持つ。本研究では、キトサン微粒子を口腔ケア材料として用いるために、う蝕原因細菌の一つであるミュータンス菌への抗菌効果などを検討した。まず、申請者らが開発したイオン交換相分離法により、多価アニオンを利用することでキトサン微粒子を調製した。調製した微粒子は、通常のキトサンが沈降してしまう水に対して高分散性を示し、ミュータンス菌に対して抗菌性を示した。キトサン微粒子は生体適合性の高いキトサンを利用していることや、ミクロンサイズの微粒子という形状から口腔や歯の清掃材として適していると考えられる。今後は、歯周病原因菌などへの影響も評価する必要がある。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、キトサン微粒子に着目し口腔ケア製品への応用の可能性を示し、企業との共同開発に到ったことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、プラーク除去効果は研磨作用と必ずしも直結せず、歯磨きによる楔状欠損や喫煙によるヤニ等の問題もあるので、ターゲットを絞った実用化が望まれる。今後は、既存の口腔ケア製品に対するキトサン微粒子の優位点を明確にし差異化を図ることが期待される。
完全位相制御磁場及び周波数掃引仕様電磁ホーン型ESR装置開発と難治疾患診断への応用 大分大学
小林正
大分大学
後藤保広
ホモダイン方式電磁ホーン型ESRを改造し、QIFMを 用いて位相が90度異なる実部と虚部ESR信 号を同時に得る新規なQD法電磁ホーン型ESR装置を試作した。磁場掃引と周波数掃引でのQD法CW-ESRスペクトルを初めて計測し、所期目標を達成した。更に磁場掃引QD-ESRでは実部と虚 部ESR信号から、回転行列処理で位相制御を行い、位相制御された吸収と分散ESRスペクトルを取得し、所期目標を達成した。周波数掃引ESRではフーリエ変換し、サインベル関数を用いてノイズ低減し、逆変換で測定感度の 改善が行えた。今後の展開として、高感度ESR計測が必須の生体試料等に対して、特殊機器を設置し、更なる感度の改善を行うことと、YIGマイクロ波発生 器使用故に生じる、位相θと周波数νの関係式θ(ν)を得て、周波数掃引QD法ESRスペクトルの完全位相制御とESR定量計測を確立する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、新規な構成の電磁ホーン型ESRを試作し、新規な方式でESR計測・解析するという当初の目標を達成した。本技術の優位性の根幹である基本特性が検証され、技術移転に向けて前進したことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、実用化の要件を数値的に設定する段階である。技術のさらなる改良だけでなく、実用化に必要な要件を数値的に設定し実用化が望まれる。今後は、大学(研究)、企業(製造・販売)、大学医学部(ユーザー)3社のほぼ理想的な協力体制が構築されつつある。この関係をさらに強固に推進されることが期待される。
新規白血病幹細胞マーカーを標的とした白血病治療法の検討 宮崎大学
兼田加珠子
宮崎大学
新城裕司
新規白血病幹細胞マーカーとして同定したGPR56を標的とした抗体医療を目指して検討を行った。難治性白血病細胞株を用いて市販抗体の効果を検討した。抗体処理により、GPR56を抑制した場合と同様のシグナルタンパクの変化が確認され、薬剤耐性性の減退も確認された。このことによりレセプターを介した特異的シグナルを遮断することによる治療効果の存在が確認された。シグナルを効果的に遮断する抗体を開発する為に過剰発現細胞の構築及びそれを用いた抗原の調整を行い、市販抗原とともに現在抗体作成を進めている。支援期間内に白血病モデルを用いた検討が終了しなかったが、今後さらなる検討を続け、新規抗体医療の開発を目指して検討を続けたい。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも遺伝子のノックダウンで認められた、抗腫瘍効果が、予想通りに抗体でも認められることが示された点、抗がん剤抵抗性のがん幹細胞の新しい標的治療として期待できる可能性が示された点は評価できる。一方、目的の抗体が得られるかどうかは現時点で判断できない。治療用の抗体作成への道のりをつけるための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、良い抗体の開発については、現時点で、抗体作成技術に長けている企業との連携を模索することが望まれる。
ストレス応答を利用した抗腫瘍薬のスクリーニング系の確立 鹿児島大学
河原康一
鹿児島大学
中武貞文
p53は約半数のヒト腫瘍で変異を認める代表的な癌抑制因子である。我々は核小体ストレス応答がp53を安定化させ、腫瘍細胞の増殖や腫瘍化進展を抑制すること見出した。このことから、核小体ストレス応答が魅力的な癌治療標的と考えられた。本研究ではMDM2とリボソームタンパク質L5とのタンパク質結合を検出する蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)プローブを作製し、新たに様々な細胞株に利用可能な、核小体ストレス応答を簡便に、特異的に検出できるFRET検出システムを確立した。このFRETシステムは蛍光プレートリーダーを用いると多数の試料を同時に簡便に検出できることから、今後大規模な化合物ライブラリーから核小体ストレス応答を特異的に誘導する薬剤が選択でき、新規作用機序をもつ抗癌治療薬の開発につながることが強く期待できる。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に核小体ストレス応答を起こす薬剤をスクリーニングする系をp53制御蛋白MDM2とリボゾーム蛋白L5の相互作用をFRETを用いて検出する事により開発している。系の確立やアッセイの条件については詳細な検討がおこなわれており、また相互作用の阻害が特異性を持って検出できる様に改良が加えられている。また使用する細胞を変え得る事による汎用性の検討もおこなわれている。更にPiggyBac トランスポゾンによる発現システムをもちいて、安定性のあるアッセイ系の構築もおこなわれている。計画がユニークであり、十分な基礎実験を経て実際に使用できる系を開発している点が評価できる。一方、技術移転の観点からは、実際に抗がん剤の開発に繋がるのかを判断するためには更なる研究、実際のスクリーニングを早期におこなうことが望まれる。今後は、二次スクリーニングの方法など、一次スクリーニングでヒット化合物を得た後の具体的な研究計画を立てる事が期待される。
認知症モデル動物における接触逃避行動の計測技術および計測装置の開発 鹿児島大学
口岩聡
鹿児島大学
中武貞文
私達の特許を実用化した対物攻撃行動計測装置(ARM)を基礎に、「接触逃避行動計測装置」の開発研究を行った。本研究では、1)動物の接触逃避行動をARMによって疑似計測し、対物攻撃行動との連結データを得た。2)そのデータをもとに、動物の生命活動に伴う動き(呼吸、心拍、震え、等)をデータから除外するフィルターを設定した。3)刺激棒基部のセンサーで検出される力を行動の作用部にかかる力に変換し、動物の動きを正確に検出した。以上から接触逃避行動計測理論の実行性を確認し、さらに4)本装置の有用性を動物実験において確認した。今後は、製品の量産化とカスタマイズ化を目指し、それに向けたハードウェアとソフトウェアの改良を進める。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも動物の複雑な動きの中から接触逃避行動を選択的に動物の行動評価は、煩雑で苦労が多い。繰り返し繰り返し、着実にデータを積み重ねた点は評価できる。一方、これまでの研究成果(特許)に対して、企業との連携が行われてきた経緯がある。現時点では、装置の作製依頼(注文)の関係であり、次のステップとして、共同開発として産学連携研究の目的を意識した開発を行うことを期待したい。今後は、装置作製を依頼しているM社との連携を目指して、企業側の助言を得ながら装置開発を行うことが望まれる。
MHC確立ミニブタを用いた前臨床移植肺実験モデルによる新規ドナー臓器保護剤としての硫化水素の効果と事業化への展開 鹿児島大学
佐原寿史
鹿児島大学
中武貞文
本研究では、抗炎症作用を有する硫化水素の移植医療への応用を目指し、脳死ドナーからの肺移植時の硫化水素が移植肺生着延長効果を有するかについて評価を行った。硫化水素投与によって明らかな副作用は認めず、また移植後早期の虚血再灌流障害は著明に抑制され、移植肺機能は良好であり、病理学的および移植肺の遺伝子発現解析によっても炎症反応抑制効果を認めた。また硫化水素により移植肺生着は著明に延長することが明らかとなった。今後、ドナーへの投与のみでも効果が得られるか、至適投与量はどこにあるかの評価、副作用のモニタリング手法を確立することによって、移植医療への新たな治療手法になることが期待される。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、硫化水素が脳死ドナーからの肺移植後早期の虚血再灌流傷害を抑制し、移植肺機能も改善し、移植肺の生着も顕著に延長した成果に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、企業と血中硫化水素をモニターできる機器の開発し、その血中濃度と移植臓器の炎症度、定着率の相関を明らかにすることで実用化が望まれる。今後は、硫化水素の副作用を考えレシピエントへの投与は慎重にする必要がある。従ってドナーへの硫化水素投与のみで十分であるか早く決着をつけることが期待される。
医療用「迅速ゲル化インジェクタブルゲル」の開発とDrug Delivery System(DDS)徐放担体としての応用 鹿児島大学
玉井努
鹿児島大学
中武貞文
我々は、基礎研究で高分子材料を用いた、「迅速ゲル化インジェクタブルゲル」を開発した。本研究ではこれを応用し、経カテーテル的に「迅速ゲル化インジェクタブルゲル」を目的部位に注入する事で、新規の血管内塞栓物質やDrug Delivery System (DDS)として医療への実用化に向けた、基礎研究を行った。
カテーテルを使用して本ゲルを血管モデルに注入し、血管モデル内でのゲル化を確認した。また高分子化合物に抗がん剤を添加することによるゲル化への影響は少なく、DDSとして機能する可能性も確認した。
動物モデルを用いた実験にて、本ゲルの門脈内への投与、および門脈内への貯留を確認し、塞栓物質として機能する可能性を見出した。
当初予定としていた目標は十分に達し、臨床応用に向けて十分に可能性が示唆される研究結果が得られたと考える。一 方、臨床応用に向けては、今後さらなる物質の改良が必要と考えられた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、生体にやさしい素材を利用したゲルの開発により、新しいDDS構築に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、DDS分野に大きな進展をもたらす可能性を秘めている。副作用などの調査には十分な時間をかけて、間違いのないデータを蓄積したうえで実用化が望まれる。今後は、DDSとして利用するためには、徐放性についてのデータの蓄積が重要で、特許をはじめ、成果の公表もされることが期待される。
次世代型補聴システムのためのリアルタイム聴覚シミュレータの開発 鹿児島大学
村越道生
鹿児島大学
中武貞文
本研究では、確立した技術をもとに次世代型補聴システム(モデルベースト補聴器)の開発に取り組んだ。その結果、高速デジタル信号処理装置でリアルタイム実行することに成功した。これら技術は、次世代型補聴器の開発に応用できると期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、聴覚伝音機構に関するシステム工学的アプローチ法の開発につながる可能性があることについては評価できる。一方、将来期待できる可能性はあるが、まだ基礎的学術研究の段階で、実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、聴覚分野の神経生理学研究者および、補聴器開発企業などとの共同研究がされることが望まれる。
糖鎖固定化ナノ粒子を用いたギラン・バレー症候群の簡易検査法の開発 鹿児島大学
若尾雅広
鹿児島大学
中武貞文
免疫性末梢神経障害症であるギラン・バレー症候群(GBS)は、日本では特定疾患に認定されている難病である。重症化すると神経障害に伴う自力歩行障害などの後遺症や死亡に至るケースがあるため、早期診断・早期治療が必要であり、迅速かつ簡便な診断法が求められている。
本研究課題では、これまでに見出しているGBSに関与する抗ガングリオシド抗体の検出法の簡便化と迅速化について検討し、特定のガングリオシド糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を用いることによって、抗ガングリオシド抗体を特異的に検出できることを明らかにした。また測定キットの作製についても検討し、簡便に目視検査ができる装置を開発した。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、既に基本技術を確立して特許申請しており、産学協同の研究開発について今後の進展が大きく期待できる技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本研究課題の簡易検査法はGBS以外の糖鎖関連疾患等の診断に応用展開が可能であり、社会還元につながることが期待され実用化が望まれる。今後は、報告書において今後の課題として挙げられた項目を着実に実施して、成果を上げられることが期待される。

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独立行政法人 科学技術振興機構