評価結果
 
評価結果

事後評価 : 【FS】探索タイプ 平成27年1月公開 − グリーンイノベーション 評価結果一覧

※他分野の評価はこちらからご参照ください。 >> 事後評価 : 【FS】探索タイプ 平成27年1月公開
課題名称 研究責任者 コーディネーター 研究開発の概要 事後評価所見
堆肥熱の効率的回収と供給による寒冷季節でのチコリー伏せ込み生産 北海道大学
荒木肇
北海道大学
畠隆
厳寒期に固液分離機で含水率72.3%の牛糞堆肥を製造し、その発酵熱を銅管内の不凍液と熱交換し、栽培ベッドに移送した。20-23℃の温水が循環して栽培ベッドは10-13℃に保温され、チコリー根株を定植することで、3週間後に可食部チコンが形成され、自然エネルギーのみによるチコリー生産が実証された。このシステムでは切り返しの継続、銅管を広げて堆肥全体からの発酵熱回収が重要技術要素であった。また、発酵熱を回収しても堆肥化は進行し、チコン収穫後の堆肥ではコマツナの発芽阻害は認められなかった。厳寒期の栽培ベッド温度向上のために、地中熱等の自然エネルギー利用とシステムの自動化を検討する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、堆肥熱を利用したチコリー栽培が可能であることを実証したことについては評価できる。一方、重要な循環水及びベッドの保温など工学的な熱交換と温度制御を加えた技術的検討やその上でのデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、自動撹拌に必要なコスト等も考慮し、植え付けから収穫までの実現可能な運用体制を構築されることが望まれる。
キヒトデ由来複合脂質の特性を生かした化粧品用リポソームの開発 北海道大学
高橋是太郎
本研究では、共同研究者の清水が開発したLibMec法(特許)により調製したキヒトデ複合脂質リポソームの安定性について先ず評価し、粒子径が揃い、且つ温度変化、アルコール濃度変化に対して非常に安定性が高いリポソームを容易に調製できることを証明した。次ぎに、得られたキヒトデ複合脂質リポソームの肌水分保持能について評価した。その結果、試料を塗布、水洗後に水分の浸透・保持力を評価した試験、及び試料を塗布後経時的に水分量の変化を観た試験の何れの場合においても、優れた水分の浸透、保持機能を有していることがわかった。
本研究の実施期間中に、派生事項として、セレブロシドの高純度化新規技術を開発するに至り、生産設備を有する民間企業に技術供与ができた。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、廃棄物としてのキヒトデから付加価値の高いリポソームの取得とセレブロシドの精製法に関する成果が顕著である。一方、技術移転の観点からは、原料の調達体制の構築と緻密で信頼性の高い安全性を含めた評価手法の確立などでの実用化が期待される。今後は、化粧品や健康食品だけでなく他の用途へも積極的に応用展開されることが期待される。
太陽光励起レーザー用新規単結晶Cr,Nd:CaYAlO4の実用化へ向けた試み 北海道大学
樋口幹雄
北海道大学
小野寺晃一
高効率太陽光励起レーザーシステムの構築を目指して、浮遊帯溶融法によってCr,Nd:CaYAlO4単結晶を育成し、そのレーザー媒質としての実用化の可能性について検討した。原料の化学組成および育成条件を最適化することにより、高品質結晶の作製技術に関してはほぼ確立することができた。しかしながら、巨大な吸収断面積を示すCr3+の吸収帯における励起ではNd3+によるレーザー発振には現段階では成功していない。吸収されたエネルギーが何らかの機構で熱的に失活して、光エネルギーとしての放出が極めて小さいためと考えられる。今後、当該物質に関して巨大な吸収断面積を活かすために、失活の原因について基礎的な研究を継続しておこなっていく予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、浮遊帯溶融法により原料の化学組成や育成条件を最適化することにより、高品質結晶のCr,Nd:CaYAlO4単結晶育成技術を確立できたことについては評価できる。一方、本単結晶によるレーザー発振に向け熱失活などの想定される原因を精査するなどの技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、太陽光エネルギーの有効利用に貢献する高効率太陽光励起レーザーシステムの構築を目指し基礎研究が推進されることが望まれる。
実用金属表面の超撥水・超撥油化 北海道大学
幅崎浩樹
北海道大学
山口茂彦
アルミニウムの(1)化学エッチングによるマイクロピット表面の形成、(2)そのアノード酸化によるナノポーラス酸化膜の形成とポアワイドニングによるポア径・多孔度の調整、(3)表面のフルオロアルキルコーティングによる表面自由エネルギーの低減の組み合わせにより、表面張力22 mNm-1のオクタンをも弾く超撥油表面を達成した。さらにアルミニウム板の代わりにアルミニウムメッシュを用いることによりヘキサン(表面張力18 mNm-1)にも全く濡れない表面となり、ほぼあらゆる液体に汚れないアルミニウム表面を実現できた。ステンレス鋼についても電解エッチングとアノード酸化の組み合わせにより菜種油を弾く超撥油表面を得ることができた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、アルミニウムとステンレス鋼において水および菜種油に対して、超撥水、撥油の目標がほぼ達成されていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、残された課題であるセリウムコーティングによる耐久性の向上、ステンレス鋼に対する超撥油性能の改善などを実現し、実用化することが望まれる。今後は、アルミやステンレスは送電線、配管のほか、飲料缶や缶詰め容器などその用途が広いので、企業との連携を積極的に具体化、促進することにより社会還元につなげることが期待される。
腸粘膜バリア機能の強化に関与する米遺伝子の探索 帯広畜産大学
加藤清明
帯広畜産大学
嘉屋元博
米品種「ゆきひかり」のもつ腸粘膜バリア機能を強化する米成分の同定とその含有量を制御する米遺伝子の候補をリストアップすることを目指して、機能性の無い米品種6種と「ゆきひかり」の全ゲノム配列を比較して「ゆきひかり」特異的な遺伝子の機能に影響する一塩基多型(SNPs)と挿入欠失変異(InDels)を抽出した。本研究により、「ゆきひかり」特異的な遺伝子72種を特定した。このうち、5遺伝子の推定コードタンパク質が特定の二次代謝産物の修飾と生合成に関わることから、当該成分を候補成分、そして5遺伝子を当該成分量の制御に関わる候補遺伝子とした。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、「ゆきひかり」に特異的な遺伝子から腸粘膜バリア機能を強化する候補遺伝子を選定し、候補化合物を特定したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、候補化合物の特定根拠や米アレルギーとの関連などについての解明するなどでの実用化が望まれる。今後は、米から離れて候補化合物と腸内細菌叢との関係の解明にも注力されることが期待される。
スクッテルダイト型構造化合物を用いた高性能熱電変換材料の開発 室蘭工業大学
関根ちひろ
室蘭工業大学
鴨田秀一
マルチアンビル型高圧プレスによるホットプレス法と放電プラズマ焼結(SPS)法を組み合わせた製造システムを利用し、常圧では合成不可能な試料を、モジュール化に必要な均質かつ大型多結晶の形で得る手法を確立した。この手法により、中温域(300〜500℃)の温度差発電に利用可能であるスクッテルダイト型構造を有する新規熱電変換材料の開発に成功した。今後、化合物組成の最適化を行い、さらなる性能向上を図るとともに、モジュール化に向けた耐熱性試験等を経て、モジュールの試作を行う予定である。将来的に、工場の廃熱を利用した温度差発電用熱電変換ユニットへの適用を図る。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に高温・高圧(1000〜2000℃、数万〜十数万気圧)の条件下で材料合成ができるマルチアンビル型高圧プレスを用いたホットプレス法と、パルス通電によって自己発熱・焼結ができる放電プラズマ焼結(SPS)法を組み合わせた製造システムにおいて、熱電変換特性材料を開発し、性能評価の知見から方法論を導いている点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、従来の1000℃超を要したミッシュメタル充填スクッテルダイト化合物合成に比して焼成熱量の低減につながっているかの評価を示すことや、更なる高圧適用で組成検討範囲拡張、ミリング方法検討で焼結性向上の可能性の進展による実用化が望まれる。今後は、LCA解析による総合評価が要求されているため、ZT値に固執することなく広い視点で優位性訴求する取り組みにも期待される。
リサイクル炭素繊維強化樹脂複合新素材の開発 八戸工業高等専門学校
杉山和夫
八戸工業高等専門学校
佐藤勝俊
本研究の目的は、炭素繊維強化樹脂複合材から取り出した炭素繊維を用いて熱可塑性や熱硬化性樹脂と混ぜて再び軽量かつ高強度の炭素繊維強化樹脂複合材を作製することである。複合材の作製にあたって、その機械的材料強度を高めるためには炭素繊維表面に酸性を有する含酸素官能基を多数存在させることが重要である。独自技法である「電解酸化法」により再生した炭素繊維には新品炭素繊維よりも多量の酸性表面官能基が存在していた。この特性を有する再生炭素繊維はポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂と相性がよく、これらを複合化させたリサイクル炭素繊維強化PET樹脂は引張強度や曲げ強度など優れた機械的材料特性を示した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、リサイクル炭素繊維を用いて良好な複合材料を得ると共にその裏付けを明らかにしたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、リサイクル炭素繊維を広く展開するため、他の樹脂での検討も加えて適用商品に合せた複数の材料系を提供するなどでの実用化が望まれる。今後は、炭素繊維協会が確立した熱硬化性炭素繊維に対するリサイクル技術や東レ社が公表したリサイクル事業との整合性、競合もしくは連携を検討されることが期待される。
グリーン・インテリジェントディスプレイの実現に向けた低温多結晶ゲルマニウム薄膜トランジスタの開発 東北学院大学
原明人
東北学院大学
佐藤忠行
スパッタで形成した非晶質ゲルマニウム(a-Ge)薄膜に対する(1)CLCレーザ結晶化技術の調査および技術の確立(2)スパッタhigh-k Al2O3の形成条件の確立(3)低温poly-Ge TFT作成 の一連の研究を終了し、デバイス動作を確認した。まず、結晶化に関しては、self-sustaining固相結晶化と呼ばれるメカニズムで成長していることを確認した。これは本来目指していた融液成長によるラテラル成長ではなく固相成長のモードであるが、Geの場合は薄膜でも固相成長でラテラル結晶を成長することが可能であることを示唆する重要な結果である。スパッタリングhigh-k Al2O3膜に対しては成長条件および後処理の最適化を行い、比誘電率5.6を実現し、ヒステリシスやコブの極めて小さい薄膜を形成することに成功した。これらを用いて325℃プロセスでガラス上に厚さ25nmのpoly-Ge薄膜を有するp-ch poly-Ge TFTを形成した。トランジスタ動作は確認できたものの、その性能は不十分であり、問題点の抽出を行った。その結果、今回は極端に薄いpoly-Ge薄膜を利用したため大粒径poly-Ge薄膜が形成できていないこと、更に高いSD抵抗が原因であると結論づけられた。この問題点を克服するための解決策を考案し、必要なマスクを設計・作成し、これを利用した新たな研究をスタートした。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、FET特性を確認するところまで進んだ点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、デバイス構造の改善による薄膜トランジスタの実現の前に、当初の予定の移動度の高い薄膜a-Geの作製プロセスの実現に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、a-Geの結晶性および電気的な特性評価と膜成長条件との関係を詳細に進めることで、結晶化プロセスの改善が促進されることが望まれる。
フルスペクトル光作動高感度コンポジット型光触媒の創製 東北大学
殷しゅう
東北大学
岩渕正太郎
微弱可視光で作動できる高感度光触媒の創製に成功したと共に、紫外線だけではなく、可視光及び太陽光の50%を占める赤外光でも励起・作動できるフルスペクトルコンポジット型光触媒材料の創製に成功した。昼間だけではなく、消灯後も触媒作用が続くフルタイム稼働型光触媒システムの構築を行い、微弱可視光・赤外光等の長波長光の利用、光の散乱・反射を複数回に渡って利用することによる光触媒の高性能化を実現した。尚、知的財産権を取得すると共にする、研究成果を論文と学会発表を通じて公表し、今後は実用化を視野に、企業との連携を深めたいと考える。当初設定目標以上の成果を達成した。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、微弱可視光で作動できる高感度複合型光触媒により太陽光利用効率の向上が実現できたことに関しては評価できる。
一方、技術移転の観点からは、特許出願がなされているとともに研究者とコーディネータによる広報活動により産学連携も進んでおり、フルタイム稼働型光触媒として実用化されることが望まれる。
今後は、全波長利用に向けたさらなる材料開発により応用範囲が拡大されることが期待される。
ビフィズス菌増殖因子ラクト-N-テトラオースの実用的合成法 東北大学
正田晋一郎
水溶媒中での新製造プロセス開発はグリーンイノベーションの中核である。本研究において、人の健康維持に大きく貢献するビフィズス菌増殖因子ラクト-N-テトラオースの酵素的製造に必要な基盤技術を創出した。すでに水中で原料二糖ラクト-N-ビオースを対応するオキサゾリンへ直接変換する画期的な技術を開発しているが、この結果を踏まえ実用化を視野に入れた触媒酵素のマイクロリアクターへの固定化法を確立した。当初の目標を十分に達成することができ、実用化の一歩手前まで到達することができた。今後糖転移反応場としてのマイクロリアクターの設計・調製ならびにフロー系によるラクト-N-テトラオースの大量合成へと展開させる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、酵素による糖転移反応をマイクロリアクターで行うという手法は評価できる。一方、技術移転の観点からは、固定化触媒への担持率向上とマイクロフロー合成条件の最適化などでの実用化が望まれる。今後は、マイクロリアクターによる反応手法アシル化など他の酵素についても試みることが期待される。
塑性加工性を有し、700℃の温度領域で使用可能なばね用耐熱超合金の最適化 東北大学
千葉晶彦
自動車の排ガスの流路切換えに用いられる耐熱ばねには、塑性加工が可能で、耐熱性とばね性を兼ね備えたニッケル基合金が使用されているが、その使用可能温度は650℃以下に限られることから、設計上の効率低下を余儀なくされていた。本研究では、自動車の燃費向上のため、より高い温度で使用可能なばね材料の開発を目指し、状態図の計算に基づいて合金組成と加工熱処理の最適化し、微細組織評価と高温力学特性・へたり性について調査を行った。その結果、700℃における降伏応力が1200MPa以上で、曲げ応力下のへたり性に優れる耐熱ばね合金の開発に成功した。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、転位強化とγ’ 相析出強化のハイブリッド機構による耐熱ばね合金の開発に成功したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、元素の添加量、線材への加工方法などについて、より広範囲の実験を行い、知見を増やし最適な選択を容易にし、実用化することが望まれる。今後は、この研究が成功した場合、内燃機関のエネルギー効率が向上するなど効果が期待され、すでに企業との共同研究が実施されているので、早期の社会還元が期待される。
自己組織化ナノ構造体を用いたバブル径制御可能なナノバブル発生装置の開発 東北大学
庭野道夫
本件の目標は100nm以下の泡を発生させるナノバブル発生装置の開発にある。
この装置は、水中内でアルミナ細孔膜に空気圧をかけることでナノバブルを発生させる。100nm以下のナノバブルを発生させるためには、100nm前後のアルミナ細孔膜を作製する必要があったが、陽極酸化法を用いた自己組織化により60〜200nmのレンジで任意の大きさに細孔サイズを調整したアルミナ細孔膜を作製することに成功した。
また、アルミナ細孔膜が0.1MPa以上の圧力に耐えられる必要があったが、陽極酸化およびエッチングの条件最適化により0.3MPa程度まで耐えられる強度をもったアルミナ細孔膜を作製することができた。
このアルミナ細孔膜を用いることにより、100nm以下の泡を発生させるナノバブル発生装置が開発することができた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、100nm以下の泡を発生させるナノバブル発生装置の開発に成功しており、当初の目標を達成していることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、成果に関する特許出願後、装置の改良、応用分野の開拓を行い実用化に進むことが望まれる。今後は、協力企業も確定しているので、産学連携による早期の社会還元が期待される。
窒化物半導体の素子応用に向けた高In組成InAlNエピタキシャル成長に関する実用化 東北大学
松岡隆志
東北大学
芝山多香子
高In組成側のInAlN薄膜の有機金属気相成長(MOVPE)を目的とし、そのホスト材料であるInN薄膜の結晶成長条件について減圧・加圧型MOVPE装置を用いて探索した。成長用基板の窒化処理、GaNバッファ層の導入、および、InN薄膜層の成長温度等の成長条件を最適化し、加圧環境下においてサファイア基板上に結晶配向性の良いInN薄膜を成長することができた。また、準安定相である立方晶InNの混在形態や出現条件についても明らかにした。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、低温成長により、準安定相であ立方晶InNが混在した配向性の優れた六方晶InN薄膜の成長に成功したことについては評価できる。一方、今回の成果を活かし、当初目標の高In組成InAlN単結晶薄膜形成に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、本研究が進展し高輝度の緑色発光ダイオードや高速通信用光源として実用化されることが望まれる。
チタン系酸化物による高性能熱電モジュールの創製 秋田県産業技術センター
杉山重彰
秋田県産業技術センター
斉藤耕治
本課題では、安全、安価で、高温領域での使用が可能な酸化物系熱電材料に着目し、(1)マグネリ相の生成メカニズムの解明、(2)チタン系酸化物への化合物添加によるマグネリ相の作製と熱電特性評価、(3)高性能酸化物系熱電モジュールの創製、について検討した。通電加圧焼結装置を用いて作製したTiO2-xmol%TiN(x = 0、1、5、8、10、20)組成焼結体はマグネリ相を生成し、無次元性能指数ZTは、x = 10組成において最大値を示した。また、TiO2系熱電材料を用いて、スパッタ法により電極層や電極・配線層の形成を行い、n型熱電材料のみで構成されるn-n型の熱電モジュールを作製した。今後は、酸化物系熱電材料の更なる熱電性能の向上、並びに熱電モジュールの実用化について検討を進める。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもTiO2系熱電材料を用いn型熱電材料のみで構成されるn-n型の熱電モジュールの作製と性能評価で検討された技術は他の機能素子にも適用が可能であることが期待され評価できる。
一方、技術移転の観点からはTiO2系酸化物熱電材料の熱電性能向上に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、TiO2系酸化物の熱電性能指数向上に向け、熱電特性支配要因を明らかにする等基礎に立ち返った研究が望まれる。
もみ殻由来熱硬化性バイオプラスチックの開発 秋田大学
熊谷誠治
秋田大学
伊藤慎一
処分に苦慮されるもみ殻を有効活用した上で、既存バイオプラスチックでは実現が困難な“熱硬化性”という機能を付与した新バイオプラスチックの提供を目指した。もみ殻粉末の粒径、ホットプレス圧力、ホットプレス温度など製造条件の最適化を行い、既存熱硬化性プラスチックに匹敵する強度、剛性かつ熱安定性を有するもみ殻バイオプラスチックを実現することができた。特に、ホットプレス温度には最適値が存在し、もみ殻粉末間の結着に大きな影響を与えることが分かった。一方で、もみ殻バイオプラスチックは高い剛性を示すものの、じん性に乏しいことが分かった。少量の添加物の利用などにより、実用化に必要な諸特性を付与させる研究を今後実施していく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、引張と曲げ、熱膨張、電気抵抗の各特性の目標値を達成したことについては評価できる。一方、技術移転の観点からは、じん性など目標に未達の特性の改善を図ると共に、パイロットプラント規模での品質の確認やコスト検討などでの実用化が望まれる。今後は、廃棄処理も含めた技術を確立し、熱硬化性バイオマスプラスチックとして実用化されることが期待される。
電球型有機EL照明の開発 山形大学
小林秀幸
目標1として構造最適化、目標2として電球型有機EL照明の試作を挙げた。構造最適化に関しては、半球レンズと有機EL素子の発光寸法の比率の関係性、光取り出し効果にはレンズ形状よりも厚みが本質的に効果を与えていることなどの知見が得られたが、シミュレーションによる原理理解は達成できなかったことから達成度60%と自己評価している。電球型有機EL照明の試作に関しては、形状を作成することはできたが、目標の全光束480lm にはほど遠い14lm 程度しか達成できなかったため達成度10%と自己評価している。全光束向上のための大電力駆動が今後の最重要課題として明確になった。総じて達成度40%と考える。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、次世代の有機ELを電球型照明に応用する際の問題点、課題を明らかにした点は評価できる。一方、光の取出し効率に関するシュミレーションを行い、空間配置や使用するレンズの物性、熱放出などの最適化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、有機ELの優位性はフレキシブルな点にあるので、電極型に限定せずに多様な形態の照明を検討することが望まれる。
耐食鋼のグリーンスチール化を実現する表面改質技術の開発 秋田大学
原基
秋田大学
佐藤博
過酷水溶液環境や高温環境では、鋼に耐食性を付与させるため、Cr,Niを高濃度に含むステンレス鋼が使用されている。本研究では、CrとNi量の低減を図っても耐食性を維持させるために、鋼表面にユビキタス元素で安価なSiを含有させる簡便な表面改質技術の開発を目指した。本研究では、Fe-低Cr合金を基材試料とし、これをSi,NaF、SiO2混合粉末中に入れ、950℃、2時間の加熱処理を行った。その結果、合金表面上に Siを約12原子%含むSi含有層の形成が認められ、この合金が高温溶融塩中で高い耐食性を示すことが明かにされた。さらに、高耐食性の理由が腐食生成物分析により検討された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初の目標である多量のSiを含有する皮膜の形成に成功し、良好な耐食性が得られていることは評価できる。一方、本技術の適用可能性を評価するには、本施工法のコストが重要であり、適応する場所を特定した上で、技術的検討を継続するとともに、コスト評価も実施する必要があると思われる。今後は、適用分野を特定し、それに応じた施工方法、目標、課題を明確にし、実用化に向けた検討に進むことが望まれる。
溶融塩化物を用いた電解法によるネオジム磁石からのNdおよびDyの高効率選択回収 秋田大学
福本倫久
秋田大学
伊藤慎一
Fe,B,Nd,Dyを添加した溶融LiCl中での電気分解によりアノードにおいて発生するCl2によるDyの塩化とDy塩化物から電離したDyイオンのカソードでの還元によりDyの電析、回収が試みられた。Dyを添加したLiCl浴中では、電極電位-2.5 VではDyの電着が観察されたが、-3.0 VではDyの電着が観察されなかった。-2.5 Vにおけるカソード電流密度を増加させるために、LiCl浴にDyCl3を添加して分極した結果、溶融塩中に金属Dyを入れた方が、Ni-Dy合金から成る電析層が厚く生成した。さらに、DyF3を添加したLiCl浴中では、金属Dyを溶融塩中に添加することにより、この電析層が約2倍厚くなった。DyF3を添加したLiCl浴中にネオジム磁石の構成元素であるFe,B,NdおよびDyを添加してカソード分極した結果、Dyを多く含むNi-Dy-Nd合金層が生成した。そこで、試料電極を黒鉛棒に変えて、同様にカソード分極した結果、約96 at.%のDyから成る粉末状物質が電極表面に析出した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ネオジム磁石の構成元素(Fe,B,Nd,Dy)を添加した浴からDy及びNdを選択的に回収できることに加えDyは選択的に96at%の高純度でDyを回収することが可能となったことは、ネオジム磁石の高効率リサイクルに向けた貴重な成果であり評価できる。一方、技術移転の観点からは、Ndの回収効率向上に向けさらなる研究開発を進め、ネオジム磁石からのNdおよびDyの新たな高効率回収技術として実用化されることが望まれる。今後は、特許出願や産学連携を積極的に進め、実用化に向けた研究開発が加速されることが期待される。
多年生花卉の連年安定生産に向けた休眠調節技術の開発 公益財団法人岩手生物工学研究センター
今村智弘
公益財団法人岩手生物工学研究センター
横田紀雄
多年生花卉であるリンドウにおいて、越冬組織の休眠不良に由来する越冬性の低下によって、次年度の生産が著しく低下する問題が起きている。本研究は、越冬性の低下を克服し連年安定生産を実現するために、休眠調節技術の開発を行なった。休眠不良を起こしやすい品種について、複数の成長調節剤を処理したところ、ABA様肥料で休眠不良を改善する結果を得ることができた。休眠不全を起こす要因について探索をした結果、GA処理によって休眠から覚醒する結果を得ることができた。当初の計画とは異なるが、最終目標は充分に達成できたと考える。今後、休眠改善効果を実証することができれば、ABA様肥料の使用用途拡大につながるとともに、多年生花卉の連年安定生産につながる休眠調節技術の確立が期待できる。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、温暖化に関連した生理障害(休眠不良)の解決技術としてリンドウを対象に越冬性を1割向上させる資材を見出したことについては評価できる。一方、実際のリンドウ栽培現場での実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、既存の肥料に留まらず新たな資材の開発も目指すことが望まれる。
次世代シート状デバイスに適用する静電シートステイプルの開発 山形大学
杉本俊之
山形大学
松崎辰夫
次世代のシートデバイスを接着剤や粘着剤を使わずに静電気力で貼り付ける補助装置(静電シートステイプル:Electrostatic Sheet Stapler、以下ESS)を試作し、シートの帯電と除電による吸着力の実測を行った。試作したESSは30×110mm(33cm2)のシートに対して、半分を正極性、もう半分を負極性に帯電させることで対象物に吸着させるものである。膜厚25μmのテフロンシートに対して、帯電電圧±750Vで約20gf/cm2の吸着力を得た。これは、シート全体で80g(単3乾電池4個分の重さ)にまで耐えられる大きな力であり、実用が想定されるシート状デバイスの吸着には十分な大きさであることが判明した。 また、吸着させる相手の材料が1012Ω程度のほぼ絶縁体の領域においても、5gf/cm2以上の良好な吸着力が得られた。
吸着したシートを剥がすときには除電操作を行えばよく、除電後の吸着力は除電前の1/12(約1.6gf/cm2)まで低下することも確認された。また、除電法を改善して完全な除電を行えば、帯電時の1/50(0.4gf/cm2)まで吸着力を低下させることが可能であることも判明した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、静電シートステイプルを試作して、吸着性能を実験的に確認した点は高く評価できる。一方、技術移転の観点からは、性能を活かせる応用について探索する必要がある。今後は、既存技術に対する優位性は示されているので、実用化するターゲットを絞って、アプリケーション開発を進めることが期待される。
フッ化物イオンを高効率・高選択的に回収できる有機高分子ゲルの開発 山形大学
前山勝也
山形大学
櫻井宏樹
有機溶媒中で優れたフッ化物イオンの選択的・高効率的捕集を実現した、ジウレアナフタレン型高分子ゲルの水中への適用を目指し、ゲルを構成するコモノマーへの親水性付与を試みた。アクリル酸ナトリウムやN-アルキルアクリルアミドなどをコモノマーに用いた時、いずれもジウレアナフタレンを含む高分子ゲルが得られた。そこで、フッ化物イオンの水中での捕集挙動について調査したところ、一部の高分子ゲルにおいて、水中での選択的捕集が確認された。しかしながら、有機溶媒中よりも捕集量が一桁少なく今後分子設計の更なる改良により、改善が必要である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、親水性モノマーや架橋剤の検討などで詳細な基礎データを得たことについては評価できる。一方、選択的捕集の目標値に到達に向けた抜本的な技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、親水性モノマーの基本骨格の見直しが望まれる。
セロビオースリピッドの紐状ミセル形成とその実用に関する研究 独立行政法人産業技術総合研究所
井村知弘
再生可能資源を活用した酵母による発酵プロセスで、双頭型バイオサーファクタントの一種であるセロビオースリピッド(CL)を生産し、そのナトリウム塩(CLNa)がごく微量の添加(0.5 wt%)で水溶液をゲル化することを見出した。また、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、水中におけるCLNaの特異なゲル形成には、その紐状の三次元集合体が寄与していることを実証した。さらに、CLゲルが、日和見感染症を引き起こす真菌に対して抗菌活性を示すことも確認した。加えて、界面活性剤としての実用に必須不可欠な各種界面パラメーターを明らかにした。今後は、スキンケア素材としての実用を目指し、より複雑な相挙動の解析や製造技術の高度化を図る。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、セロビオースリピッドのナトリウム塩が界面活性剤・ゲル化剤としてユニークな特性を持つことを示したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、紐状ミセル中やゲル中の分子の集合状態に関する更なる検討、第3成分の添加の影響の把握などでの実用化が望まれる。今後は、利用分野の特定とコスト試算に基づく開発目標を設定し、生産技術を確立されることが期待される。
ニオブ系鉛フリー圧電セラミックス材料の電子デバイス実用化への検証 独立行政法人産業技術総合研究所
王瑞平
独立行政法人産業技術総合研究所
小森和弘
本課題の目標は、開発した無配向の鉛フリー圧電セラミックス材料を用いたアクチュエータ及びセンサのプロトタイプを製作し、電子デバイスの実用化への可能性を検証することである。本年度中、プロトタイプ超音波距離センサとバイモルフ型アクチュエータを製作し、その性能を評価した。
開発した無配向の鉛フリー圧電セラミックス材料を組み込んだプロトタイプデバイスは、鉛系圧電材料を用いたデバイスと同程度の性能を示し、鉛を含まない圧電デバイスの実用化への可能性が示された。今後、企業との共同研究より開発した鉛フリー圧電セラミックを組み込んだ電子デバイスの実用化を推進する。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、鉛フリー圧電セラミックスを用いた実用レベルの圧電デバイスが実現できた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、駆動電圧の低減が必要であり、そのための積層技術の確立が望まれる。今後は、早い段階で企業と連携をして、具体的な応用展開を想定したデバイス開発を行うことが期待される。
局所加熱・急冷による表層アモルファス化による鋼材の摩擦力増大 宇都宮大学
山本篤史郎
宇都宮大学
網屋毅之
鉄鋼丸棒材表面を電子ビーム蒸着装置でFe-Si合金膜で被覆した。この試料に対し、水中で高周波誘導加熱を行い表層のみを加熱した。水の温度が上昇する程度までは加熱できたが、表層のみが赤熱するほどには至らなかった。そこで、大気中で加熱し水中に急冷したところ、表層がアモルファス化した可能性を示す結果が得られたが、アモルファス化した部分を具体的に見つけることはできなかった。一方、本研究の過程でFe-Si合金膜そのものがアモルファス化していることが分かった。特に、90at.%以上の高いFe濃度であっても、ほぼアモルファス単相であることを見出した。これだけの高Fe濃度を含むFe基二元系アモルファス合金は報告されていない。今後、この高Fe濃度アモルファス合金被覆の特性を調査したい。 当初目標とした成果が得られていない。中でも、当初の目標どおりに計画を実施したところ、鉄鋼材料の表層のみをアモルファス化することができなかったので、さらなる技術的検討や評価が必要である。今後は、Fe-Si合金薄膜そのものがアモルファス化していることを発見したので、従来多元系で行われてきたFe濃度の高いアモルファス合金の製作方法に代わる、より単純で製作の容易な2元系による新しいアモルファス合金として、応用を睨んでこのこの技術を進化させることが望まれる。
電源回路の帯域選択ノイズスペクトラム拡散技術 群馬大学
小林春夫
群馬大学
大澤隆男
スイッチング電源回路ではスイッチング周波数の整数倍の周波数のところにピークをもち電磁ノイズをまき散らすEMIの問題が大きい。この問題を軽減するため、スイッチングクロックに意図的にジッタを与え電磁ノイズを周波数拡散させEMIの問題を軽減する”スペクトル拡散クロック技術”が使用されている。しかしながら直接的な手法ではAMラジオ帯域等ノイズを拡散してほしくない帯域にも拡散されてしまう。ここではノイズを拡散してほしくない帯域を選択できる”帯域選択ノイズスペクトル拡散技術”を開発することを目標とした。
具体的には電源回路の帯域選択ノイズスペクトラム拡散技術のための、次のクロック変調アルゴリズムを検討した。(1)パルスサイクルΔΣ変調 (2)パルス位置ΔΣ変調 (3)パルス幅ΔΣ変調 (4)疑似ランダムΔΣ変調 (5)これらの組み合わせ、これらのアルゴリズムのシミュレーションにより効果を確認し、ノイズが拡散されない周波数帯域を表す数式を導出した。また、1つの例としてパルス位置ΔΣ変調を実現する回路をFPGAで実現した。
今後は開発したアルゴリズムの多くをFPGA実現し それを電源回路にも組み込み、そのスペクトルを実測してEMI低減効果・ノイズ拡散帯域選択を確認していく。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ノイズフィルタをなくし、刄ー変調に注目して、ノイズが拡散されない数式を導出している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、実証実験が行われていないので、現実の回路による実証実験が望まれる。今後は、早期に実験を行って、シミュレーション結果が良好に検証されれば技術移転への可能性が高まることが期待される。
オキサビシクロ骨格を有する新奇ポリエステルの創成 群馬大学
橘熊野
群馬大学
小暮広行
本研究では、環境調和型材料としては石油に依存しない「非可食バイオマス資源の利活用」と、環境中で水と二酸化炭素に分解され、環境中に蓄積しない「生分解性高分子の利用」の両立を目指し、非可食バイオマス由来の生分解性高分子の創成を検討した。バイオマス由来のモノマーとして研究責任者らが開発したオキサビシクロ骨格を有する酸無水物を用いてポリエステルの合成を行った。得られたポリエステルは市販されている生分解性高分子であるポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)と同等の力学的物性を有し、さらに生分解性を有していた。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、得たポリエステルが破断伸びが1100%の柔軟な高分子であることを示したことについては評価できる。一方、成型加工性の評価やバイオマス比率の向上に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、共重合体比と力学的性質、共重合体比と生分解性についても基礎的な知見を蓄積されることが望まれる。
ダイカスト廃棄物利用による低コスト・高強度ポーラスアルミニウムの開発 群馬大学
半谷禎彦
群馬大学
小暮広行
本研究開発では、自動車用の超軽量・高衝撃吸収部材としてのポーラスアルミニウムを、(1)原材料としてダイカスト工程で発生した廃棄物利用による低コスト化、(2)作製時に外部熱源が一切不要、(3)気孔形態の制御が容易、(4)汎用のフライス装置で作製可能、といった様々な特徴を持つ世界に例を見ないプロセスにより開発した。本研究開発により、本プロセスでダイカストの廃棄物を利用したポーラスアルミニウムが作製可能であることが示された。作製したポーラスアルミニウムは高強度アルミニウム合金から作製されるため、約2倍の強度を持つことが分かり、ポーラスアルミニウムの高強度化にも寄与できることが示された。更に、本プロセスは大型化も可能な方法であることが示唆された。今後、更なる大型化や、特性が変化する傾斜機能ポーラスアルミニウムなどへ展開できると考えられる。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、Al合金ダイカスト工程で発生した切削粉の粒径の影響や回転ツールの押込条件などが作製したポーラスAlの圧縮特性に与える影響について系統的に調査することで、従来の純AlからなるポーラスAlと比較してプラトー応力・エネルギー吸収量が共に2倍以上を有する高強度ダイカスト用Al合金からなるポーラスAlを作製する目標を達成したことは、評価できる。一方、技術移転の観点からは、実用化に不可欠と思われる、製造可能な部材の大型化、複雑形状化、傾斜機能化の3点についても具体的な検討方針が示されており、課題克服による実用化が、望まれる。今後は、本課題で開発された技術は、自動車部品に限らず、軽量化が求められている風力発電用プレートや建材・プランターなどへも適用ができ、広く技術報告を実施し、社会還元を進めることが期待される。
生体分子を用いた低毒性量子ドットの開発 群馬大学
松井雅義
群馬大学
小暮広行
本研究では、重金属を含まない安全な量子ドットをタンパク質から調製するための方法を確立することを目標とした。市販の精製済みタンパク質を原料として、オートクレーブを用いた水熱合成により青色の蛍光を示す量子ドットが得られた。不定形の凝集体などの夾雑物を一切含まない量子ドットを得るための合成条件を見出し、添加剤とタンパク質の種類に依存して量子ドットとともにより大きな粒子が得られることを明らかにした。本研究で得られた成果は量子ドットの多色化の実現のために極めて重要であると考えられる。
当初目標とした成果が得られていない。中でも、実用化を視野に入れ、時間軸を考慮した適切な目標設定とその遂行に向けた技術的課題の再検討や評価が必要である。今後は、良いコンセプトを活かすべく、発光原理の詳細検討など解決手法について多角的な視点から見直されることが望まれる。
高純度二酸化炭素分離のための酸化セリウム複合膜の創製 埼玉大学
柳瀬郁夫
埼玉大学
笠谷昌史
種々の環境下における混合気体からのCO2分子の分離回収はCO2資源化のための重要な技術であるが、ミクロ細孔を利用する従来法では同程度サイズや小さいサイズの分子が混入してCO2分子を高純度で分離回収できない問題がある。当研究室ではこれまでにCO2のみと化学反応する物質としてLiFeO2の研究を進め、酸化セリウム(CeO2)との複合化によってそのCO2吸収能が向上することを報告するとともに、CO2分離回収材料への応用開発を進めてきた。本研究ではCeO2との複合膜を作製するためのLiを含まない化合物を開発してCO2吸収能の評価を行った。その結果、従来物質LiFeO2のCO2反応温度よりも低温の100℃付近から顕著にCO2との反応が始まり、かつ高CO2反応率を示す無機化合物を見出した。さらにこの無機化合物の原材料費は従来のLiFeO2よりも充分に安いことから、CO2分離用セラミック複合膜の開発をより一層進めやすくなると期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に従来材料より低温の100℃からCO2を選択的に分離回収可能な材料として高価なリチウム金属を含まない材料を開発したことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、CO2回収分離材料などでの実用化が望まれる。今後は、CO2吸収量の評価などの基礎データの蓄積や特許出願を進めるとともに、実用化に向け産学連携体制が構築されることが期待される。
水を燃料とする光燃料電池 千葉大学
泉康雄
千葉大学
横山直也
両極への紫外可視光照射に応答して、燃料の水がTiO2で光酸化され、高分子電解質膜を隔てたAg-TiO2でO2が光還元される光燃料電池の技術移転を目指した研究開発を行った。電流-電圧特性より開放電圧1.59 V、11 microW/cm2の最大出力を得たが、直列抵抗35 kΩcm2を下げる必要性が明らかになった。TiO2とAgナノ粒子間のSchottky障壁で整流されたが、n-TiO2とp-BiOClを両極に組み合わせ、電荷移動効率を高めたところ、開放電圧1.76 V、最大出力16 microW/cm2まで改良された。電極基板および光触媒の粒径を変えた実験より、光触媒粒子間の接触効率が直列抵抗に大きく効いていることが示唆された。アノードの伝導帯とカソードの価電子帯の電位差に基づき起電力が得られることを、セル内での反応についての速度論モデルで説明した。さらに、アノードで光生成したO2がカソードに内部循環して水へ再光還元されることも示した。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に酸化チタンを基とする2つの光触媒電極により水の光酸化およびその逆反応を進めることで、バンドギャップ相当の起電力を有する光燃料電池において開放電圧1.59 V、11 microW/cm2の最大出力を得ている技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、大面積での実験や、光吸収率などの光利用効率などの改善での実用化が望まれる。今後は、ガス内部循環型装置を更に展開されることが期待される。
湿潤下における高性能二酸化炭素吸収システムの開発 千葉大学
加納博文
公益財団法人千葉県産業振興センター
伊藤譲
NaHCO3やKHCO3を加熱処理して得られるNa2CO3やK2CO3が水蒸気存在下、室温程度で効率的にCO2を回収できるよう、詳細な実験を行い、K2CO3については303 Kにおいて湿度50〜85%で、CO2分圧が10〜95%に対して、6.1 mmol/g以上のCO2吸収量が得られることを確認した。また、温度変化やCO2濃度変化の影響について基礎的に理解することができ、CO2回収技術における重要な因子を明らかにした。
Na2CO3やK2CO3のナノコンポジットを調製し、CO2回収後の試料再生温度を80℃程度まで下げることを目標とし、少量ではあるがナノコンポジットを得ることができた。しかし十分量ではないので調製方法のさらなる改良に努めている。また、アルカリ金属を混合させ、結晶を歪ませることによって、再生温度を下げることを目標とし、NaとK、Csの炭酸塩混合物の組成比を変えて有望な固溶体試料を得た。本実験については引き続き行っており、最適な金属の組み合わせと、組成比について絞り込んでいる途中である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも NaとKの炭酸塩固溶体が調製できK2CO3については303 Kにおいて湿度50%以上の湿度環境で、6.1 mmol/g以上のCO2吸収量が得られることを確認したことについては評価できる。一方、アルカリ炭酸塩(Na2CO3およびK2CO3)とカーボンナノコンポジット材料の調製やCO2回収後の試料再生温度を80℃まで下げることなどの技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
プロセス・トモグラフィー法による4D非接触温度分布可視化計測法の確立 千葉大学
武居昌宏
公益財団法人千葉県産業振興センター
長島智
本研究では複数電極間における各々のキャパシタンス計測から比誘電率を計算し、感度関数Seと組み合わせることにより比誘電率の分布を画像化する技術とデバイの式を組み合わせることにより温度分布画像を取得することを目的としている。
測定対象は金型内の高分子であるが、準備として指定温度毎に純水のキャパシタンスを計測し、温度分布画像の取得に成功した。その後、2電極間にて複数の高分子材料の比誘電率と温度の関係を取得することに成功した。つまり、上述2点の技術を複合することにより金型内の流動高分子材料の温度分布が画像として取得できると考える。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、複数電極間におけるキャパシタンスを計測して、比誘電率を求める新たな原理に基づき金型内の流動高分子材料内部の温度分布を求める方法を提案し、単純化されている装置で行った実験装置ではあるが、当初の目標は達成していることは評価できる。一方、精度の検討、温度分布に関する微粒子の電気的特性、また金型加工では場所による電極間距離違い等による影響等クリアするべき課題は大きと思われるので、さらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、金型内の高分子材料の温度分布を計測可能となれば、産業界のニーズは高いので、産学共同による開発につながる技術の確立が望まれる。
電子書籍爆発時代における人の行動に即した表示法の研究 東海大学
山田光穂
東海大学
深堀健一
本研究課題は、紙書籍、電子書籍を利用する際の人の読書行動を詳細に調査できる装置を開発し、電子書籍の使用感を紙書籍より向上させることを目的としている。そのために、人の眼球運動、頭部運動、手・指の動きを同時に測定し、読書時の人の読書行動と書籍上の注視位置を正確に再現できる装置を開発した。具体的には、磁気センサを用いて、読書時の頭部運動、電子書籍端末等を保持する手の動きに伴う加速度を眼球運動量に換算し、頭部の座標系、手の座標系と眼球の座標系を一致させ、頭部と手が自由な状況での空間上の視線の移動量を算出し、電子書籍読書時の人の読書行動を測定できる装置として完成させた。今後、本装置を用いて電子書籍爆発時代に即応した、電子書籍の読みやすい表示法について提案していく予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に人の眼球運動、頭部運動、手・指の動きを測定し、読書行動と書籍上の注視位置を把握する視線測定装置を開発している技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、紙書籍と同様の操作性や読みやすさを実現できる電子書籍端末の仕様、端末上への表示法、紙書籍に取って代わることのできる新たな電子書籍端末を考案するなどについては更に検討を進めることにより、早急な企業と連携した実用化が望まれる。今後は、視線計測のみならず、電子書籍端末の使いやすさを具体的に向上するための工夫を実現されることが期待される。
高効率を実現する新型太陽光追尾式発電系の開発 日本大学
天野耀鴻
日本大学
小野洋一
本研究は、電流センサーを用いて太陽光発電パネルから流れ出す電流を測りながら、制御システムにこの情報をフィードバックして太陽光発電パネルの位置と向きを再調整すること、また、最大発電入射角に従って太陽光発電パネルを常に調整できる新構成の実現を目標とした。
しかし、この新構成に合う既存品がないため、まず始めに複合センサーを開発し、次に光源に向けて太陽光パネルの向きを駆動させる等の課題をクリアすることが必要であった。このため、複合センサーを用いて太陽光パネルから得られた電力を測定し、太陽光発電パネルの最大発電の光入射角度に合わせるよう太陽光発電パネルの位置を調整することにより、太陽光発電の高効率を実行したことで、最終的に発電効率を30%向上させることができた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に複合センサーによる太陽光追尾式発電系により発電効率30%を達成するに関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、追加設備投資に見合う変換効率の妥当性を明確にすることによる実用化が望まれる。今後は、関連する企業などへの技術紹介と更なる実用化に向けた応用展開が期待される。
イオン液体−グライム混合溶液の二酸化炭素吸収特性の解明 日本大学
下村拓也
日本大学
小野洋一
本研究課題では、C4mimTFSA-ジグライム溶液に対するCO2溶解度を測定し、C4mimTFSA-ジグライム溶液のCO2吸収特性を明らかにした。また、C4mimTFSAに分子性液体であるジグライムを添加することによってCO2吸収量が増加することもわかった。
したがって、本研究結果から、イオン液体-分子性液体混合溶液のCO2吸収特性に関する基礎的知見が明らかになっただけでなく、イオン液体を用いた吸収液のさらなる高性能化に対する指針を示すことができた。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、イオン液体−グライム溶液のCO2吸収特性に関するデータを取得し整理したことについては評価できる。一方、対抗技術との比較に基き、実用化を想定した定量的な目標を再設定した上での更なる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、グライムの蒸気圧の取扱いなども含めた、プロセスイメージをまず組み立てることが望まれる。
表面エネルギー制御によるめっきの多機能化探索 早稲田大学
齋藤美紀子
早稲田大学
久保田正文
本研究は、めっき法を用いた膜形成において、表面エネルギーを制御し、さまざまな分野への応用を目指した。表面エネルギー制御としてマクロ微細構造体の形成や選択溶解法によりナノメータの凹凸を有する膜を形成することを試みた。評価は液中でのオイルの接触角測定の3態系による測定を行った。Cu-Ni系めっき膜系において超撥油性の数値目標である160°の接触角を達成できることを確認した。また選択溶解はめっき膜の表面エネルギーを変化させた。CNT上にCo-Cuめっき膜を形成し、CNTの欠陥部に金属が配位することを顕微ラマン分光法から確認した。本研究成果は半導体の実装や印刷、エネルギー分野へとつながると考えている。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、表面エネルギー制御による親水性かつ撥油性、疎水性かつ親油性めっき膜については、Cu-Niめっき膜の組成と結晶構造、表面あらさ、接触角との関係について明らかにし、大豆油にて150度の撥油性を達成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、共同研究先企業と実用化に向け具体的な応用分野を想定した更なる研究の進展と実用化が望まれる。今後は、大幅な改善が必要な接触抵抗値の目標に対しては、新規の取組みがなされることが期待される。
補酵素非依存型酵素を利用したバニリン合成プロセスの開発 早稲田大学
古屋俊樹
早稲田大学
落合澄
香料や食品素材として有用なバニリンは、その用途からナチュラルな生産方法が望まれているが、天然のバニラビーンズから抽出できるバニリンの量は限られており、ほとんどは化学合成により生産されているのが現状である。本研究では、補酵素非依存型の酵素を利用してバイオマス資源のフェルラ酸からバニリンを合成するという、石油資源や化学合成に依存しない新しいプロセスの開発を目的とした。補酵素非依存型の脱炭酸酵素と酸化酵素を発現させた高活性細胞を開発して反応条件を詳細に検討し、バニリンの高生産が可能なことを実証した。今後は、本研究を通して律速段階となることが明らかとなった酸化酵素の高活性化を図り、さらなる高生産と実用化を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標には届かなかったがバニリンの高い生産能力を確認したこと、また、律速となる工程を明らかにしたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、律速となっている第2工程について高活性な酵素の探索や、高濃度化に即した溶媒の検討など系全体の改良などでの実用化が望まれる。今後は、発酵法のみでバニリンを生産する系に近づけることが期待される。
微生物によるリパーゼ発現・活性促進法の開発 中央大学
赤沼元気
中央大学
加藤裕幹
リパーゼ発現誘導促進タンパク質EliAを高発現させることで、Ralstonia sp. NT80株においてステアリルアルコールによるリパーゼ生産誘導時間を12時間短縮させることに成功した。さらに、リパーゼの工業生産に利用されているBurkholderia glumaeにおいて、生産誘導までの時間、誘導効率ともに一般的な誘導剤であるオリーブオイルよりもステアリルアルコールが優れたリパーゼ誘導剤であることを見出した。また、ステアリルアルコールによるリパーゼ誘導時には、リパーゼの比活性を向上させる因子も同時に発現誘導されていることをin vitroで証明した。EliAのより安定かつ恒常的な発現系構築と、リパーゼ比活性向上因子の同定が今後の課題として残されているが、技術移転を目指した研究開発へのステップアップの可能性が示されたと言える。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、実用化レベルまでリパーゼの生産性を向上させたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、育種を含めリパーゼの高効率な生産システムを確立すべく、実生産現場を意識した具体的な課題を抽出し企業との共同研究を行うことなどでの実用化が望まれる。今後は、技術移転の可能性を高めるために成果物の知財化も検討されることが期待される。
光産業における可視光エネルギーの高効率利用を目指した光酸発生錯体の開発 中央大学
小玉晋太朗
中央大学
武田安弘
可視光に高い感度を示す光酸発生剤の開発を目指し、ルテニウム錯体をクロモフォアにもつ光酸発生剤(光酸発生錯体)の配位子置換反応を検討した。置換可能なクロロ基を有する光酸発生錯体にイソチオシアネートを反応させることにより、新規錯体が生成した。置換反応前の錯体と比較して、可視光吸収量の顕著な増加は見られなかったが、極大吸収波長が変化したことにより、超高圧水銀灯から放出できる g-線の波長 (436 nm) におけるモル吸光係数の値が向上することが明らかとなった。可視領域全域において光吸収量を増加させる配位子の探索が今後も必要であるが、本研究成果は、極大吸収波長の変更によってある特定の可視光に対する光酸発生剤の感度を簡便に向上させる新手法として展開可能と期待される。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、イソチオシアナート配位子の金属錯体を合成し、可視光特性に優れ既存のNITfに遜色ない性能を持つことを示したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、特性の更なる向上や金属錯体の光分解と酸発生のメカニズムを明らかにするなどでの実用化が望まれる。今後は、試作品を示すなどにより、企業との連携を図ることが期待される。
粘土鉱物に吸着した放射性セシウムイオンの除去方法の開発 首都大学東京
高木慎介
首都大学東京
阿部紀里子
天然の雲母鉱物であるフロゴパイトを用いて、微量セシウムイオンの吸着挙動について検討した。その結果、非常に安価な試薬である、塩化バリウムで処理したフロゴパイトが、効率よくセシウムイオンを吸着できることを見い出した。また、この際に、単なる撹拌混合ではなく、自転公転ミキサーを用いることで、迅速にフロゴパイトの処理が完了することも見い出した。また、様々な電荷密度の異なる粘土鉱物を用いてセシウムイオンの吸着能力を検討することで、粘土鉱物における特異なセシウムイオン吸着メカニズムについて、独自の提案行った。粘土鉱物による特異な吸着挙動は不明な点が多く、これまでに十分に解明されていない。この吸着メカニズムを解明することができれば、より高性能なセシウムイオン回収材料の開発が容易となろう。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、セシウムの吸着脱着のメカニズムを提案するとともに、より安価な材料でのセシウム回収の可能性が確認できたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、メカニズム解明をすめるともに実証研究を進め除染材料としての実用化が望まれる。今後は、産学官の連携による実証研究が推進されることが期待される。
シリコンインクと有機・無機ハイブリッド太陽電池の開発 東京工業大学
野崎智洋
東京工業大学
佐々木俊夫
平均結晶サイズが5.8nm、2.5nmのシリコン量子ドットを合成し、半導体ポリマーとブレンドしたシリコンインクを開発した。シリコン量子ドットの表面を水素でパッシベーションすることでn型半導体として機能する新しいドーピング法の開発に成功し、開発目標である変換効率4.0%に相当する3.6%を達成した。開放電圧について、表面ドーピングによって開放電圧を0.4Vから0.63Vまで上昇させることに成功した。平均結晶サイズを約2.5nmまで下げ、さらにリンをドープしたサンプルを合成することで、開放電圧は最大で0.7Vまで上昇することを確認したが、短絡電流は逆に低下した。不純物濃度の調整と太陽電池に応用した時の開放電圧の制御については、引き続き詳細な検討が必要である。
今後の展開:シリコン量子ドットの結晶化度を現状の90%からさらに高めることが必要である。すなわち、シリコン量子ドット表面のパッシベーションを確実に行い、短絡電流のさらなる増加を実現する。不純物のドーピングを引き続き検討することで開放電圧1.0 Vを実現し、変換効率10%を達成するための研究を継続的に実施する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に独自のインフライトプラズマCVD法によるサイズの揃ったシリコン量子ドットの表面の水素パッシベーションやリンのドーピングにより変換効率3.6%を達成する成果が得られたことは高く評価される。
一方、技術移転の観点からは、特許出願や超精密なドーピング技術の開発など今回の研究成果と知見に基づき実用化に繋がる変換効率のさらなる向上を進め、低コスト高効率太陽電池として実用化が望まれる。今後は、産学連携により実用化を見据えた研究が一層加速されることが期待される。
バイオマスから合成された汎用プラスチックの簡易判定技術の開発 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
永川栄泰
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
田中実
ポリエチレン(PE)のバイオマス由来を液体シンチレーション計測法(LSC)により判別可能であることを実証した。固体バイオPEペレットのシンチレーション光発生は、PEの非晶領域への液体シンチレータの浸透が主な機構であった。浸透により、固体内部で14Cβ線がエネルギー損失することなく発光・計数に寄与したことが明らかとなった。また、PEペレットを加熱、粉砕処理することにより計数効率は上昇した。前処理をした固体PEのLSC計測と加速器質量分析法によるバイオマス度評価を比較したところ、両者は統計誤差の範囲で一致した。本法はバイオPEの簡易判定のみならず、バイオマス度評価も行えることが明らかとなった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、液体シンチレーション計測法でバイオマス度合いを評価可能であることを示したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、高分子化合物と液体との相互作用に関する基礎的な物理化学、放射線化学等の知見に基き、実験結果の考察を深めることなどでの実用化に向けたデータ蓄積が望まれる。今後は、バイオマス由来のプラスチックの普及の度合いを見計らいながら企業へのアプローチをされることが期待される。
RGB画像に基づくハイパースペクトルイメージング法を利用した低コストかつ高効率な植物計測システムの開発 東京農工大学
梅澤泰史
東京農工大学
三浦英靖
植物の生育は、外環境の要因(ストレス)によって左右されるため、生産現場でストレス状況を簡便に計測できる技術が求められている。本課題で開発を目指した技術は、3チャンネルRGB画像のスペクトル情報をピクセル毎に推定し、多波長分光画像を再構成する方式であり、低コストかつ汎用的なことに加え、光伝搬理論に基づき植物内部の状態を推定する点が独創的である。本課題において、計測システムを植物に最適化した後、ストレス状態の植物体から各波長領域のスペクトル情報を取得し、特に近赤外領域付近に有意な差を認めた。このことから、本技術がストレス状態の評価に使える可能性があるため、今後は評価指標の確立や、装置の小型化あるいはカスタマイズ等の実用化研究をめざす。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、表現形のみならず分子レベルでの細胞内変化にも着眼して、統計的な解析データを蓄積したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、対象植物をシロイヌナズナ以外にも拡げてより普遍的なデータの蓄積をすることなどでの実用化が望まれる。今後は、適切な光源と偏光板を利用を検討すると共に、装置の小型化、操作の簡易化など、将来コストも考慮した検討を取進めることが期待される。
低温での金属焼成体の作成を可能にする低温分解性バインダーの開発 東京農工大学
中野幸司
本研究開発課題では、低温分解性バインダーへの応用を目指し、エポキシドと二酸化炭素との交互共重合によって得られる脂肪族ポリカーボネート(APC)の熱分解温度の低温化や水溶性の付与について検討した。側鎖に水酸基を導入したAPCの合成に成功し、通常のAPCに比べてより低温で低分子量化できることを明らかにした。今後、水酸基の導入位置等を最適化することで、低温での低分子量化および完全分解が期待できる。また、側鎖にカルボキシル基を導入したAPCの合成に成功し、通常のAPCに比べて、弱塩基性水溶液への溶解性を向上させることに成功した。従来もちいられている水溶性バインダーの代替材料開発への展開が期待できる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、合成戦略に従い目標とするポリマーを合成できたことについては評価できる。一方、目標とした物性が出ていないので、分解過程の解析や他の誘導体の合成など、分子設計を見直しに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、バインダーとして使用するためには分解性、溶解性の他に成型性などの性能も考慮されることが望まれる。
高出力密度を有するマイクロ液圧アクチュエータの開発 法政大学
田中豊
法政大学
村上義英
液圧によるパワー伝達はマイクロ環境下でも高出力密度を実現できることが指摘されている 。一方、最近開発された機能性流体 ECFを用いた液圧駆動原理はマイクロ環境下に適している。本研究開発では、これまでの知見を整理し、より小形で高出力なマイクロポンプモジュールに必要な電極形状や配置方法について検討した。また新たなマイクロポンプモジュールと電極対を製作し、実験により形状パラメータの最適化を図った小形で高出力なポンプモジュールの構造を提案した。従来の円筒形マイクロポンプモジュールの全長を10分の1、内径を3分の1に小形化し、印加電圧5 kVで最大圧力5.0 kPaの性能を実現できる見通しがついた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、小型化、高出力化について詳細な検討を行い、電極形状を工夫するなどして吐出圧力5kPaを実現できる見通しを得ていることは評価できる。一方、高出力化については十分な成果が得られたとはいえない。最適な電極形状の選定および加工法の確立のため、試行錯誤的な研究の継続とノウハウの蓄積が必要になると思われる。今後は、研究課題の究明とともに、関係企業との連携、協力体制を強め、開発技術の実用化を図ることが望まれる。
海水溶存レアメタルの回収資源化の事業化を可能にするレアメタル高蓄積大腸菌の開発 法政大学
山本兼由
法政大学
中江博之
大腸菌K株を基盤としたゲノム育種により、レアメタルを高蓄積する大腸菌株のそれぞれを作製することを目的としている。本研究では、マンガンの大腸菌細胞内高蓄積能に関連するゲノム上の潜在的な共通システムについて遺伝子改変させ、高い蓄積能の付加を目指した。まず、マンガン特異的取り込みシステムやマンガン特異的結合タンパク質を高発現する大腸菌形質転換体を開発し、これが細胞外マンガンに対する抵抗を示すとともに、細胞内マンガン量が増加する(マンガン高濃度環境で、遺伝子改変大腸菌がマンガンを高蓄積できる)こと、を確認した。さらに、広範囲な金属で機能する排出ポンプ遺伝子による大腸菌細胞内の金属蓄積能の向上を目指したが、予想外にもその遺伝子の高発現は大腸菌の金属感受性を増加させた。今後は、複数遺伝子のマンガン蓄積能に対して評価するシステマティックなスクリーニングも導入し、効率的なゲノム育種を行う。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、mntH遺伝子の高発現によりマンガンについて野生株の約2倍強の蓄積結果を得たことについては評価できる。一方、金属排出ポンプの欠損の効果、タンパク質分解酵素の遺伝子破壊や塩耐性の付与とモリブデンの高蓄積化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、金属トランスポーターに関する基礎的な解析や細胞内で金属蓄積のメカニズムなども検討されることが望まれる。
アルミ合金高密度プラズマ窒化技術の自動車部品内面・複雑表面処理への展開 芝浦工業大学
相澤龍彦
芝浦工業大学
鴻丸幾久夫
自動車の軽量化において、構造部品の軽量化、特にアルミ合金化は必須の技術である。しかしアルミ合金固有の低耐摩耗性・低硬度が大きな軛となっている。EV車においては、純アルミのヒートシンクあるいは熱電素子アルミ基板の高熱伝導性を保持しつつ、高電気絶縁性を付与することが求められている。当該、高密度アルミプラズマ窒化技術は、4時間の窒化でも表面硬度を800Hv以上に高硬度化できることに加え、プロセス条件を制御することで、AlN緻密層を形成することもできる。本研究では、3次元電磁界シミュレーションと定量的プラズマ診断を行うことで、基本となるプラズマの姿勢制御ならびに窒化反応を促進する生成核種の最適化を行う。その上で、A2011ディスクサンプルにて、当該プラズマ窒化による高硬度化を実証するとともに、モデル・ヒートシンクのプラズマ窒化に成功した。さらに、ホローカソードの利用により、パイプ内面のみを選択的にプラズマ窒化できることを示した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標であるアルミ合金部品の内面及び複雑形状へのプラズマ窒化を目的として、パイプ内面及びヒートシンク底部に表面硬さ800Hv程度のAIN層が形成されたことを明らかにした点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、窒化層の厚さ(深さ)に関する結果が報告されていないので、窒化条件と深さに関するデータを明らかにするとともに、アルミ合金の構造部品及び機能部品への応用を進めることが望まれる。今後は、研究成果及び特許を持って本技術を積極的にアピールすることにより、電子部品メーカや自動車・電装部品メーカーなどとの共同研究が実現し、関連産業への貢献が実現することが期待される。
蒸気を利用したマグネシウム合金への層状複状水酸化物含有耐食性皮膜形成プロセスの開発 芝浦工業大学
石崎貴裕
芝浦工業大学
石井均
本研究では、蒸気を利用した手法によりマグネシウム合金上に耐食性皮膜を形成させる技術を確立させることを目的として、(1)LDH層間内アニオン種の選定、(2)皮膜中のLDH含有量の最適化、(3)皮膜/基材界面形成技術の確立、に関する研究開発を行った。LDH層間内アニオン種の選定では、溶液種とその濃度、pH、温度等の最適化を図り、硝酸イオンが最適なアニオン種であることを明らかにした。皮膜中のLDH含有量の最適化では、処理時間を変えることにより、皮膜中のLDH含有量が変化し、LDH含有量の増加に伴って、耐食性の指標である腐食電流密度が低下、すなわち、耐食性が向上することを明らかにした。皮膜/基材界面形成技術の確立では、加熱処理により、基材の結晶粒サイズが増加するが、皮膜の密着性には影響しないことを明らかにした 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、皮膜の耐食性、均一性、密着性について当初の目標が達成されたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、具体的に用途ターゲットを絞って、処理コストも考慮して要求特性を満たすことにより実用化に進むことが望まれる。今後は、企業との連携も始まっているようであるので、早期の社会還元につながることが期待される。
MSE型ゼオライトの迅速合成で得た新規触媒の固体酸性質制御による高性能化 横浜国立大学
窪田好浩
横浜国立大学
西川羚二
MSE骨格をもちAlを含有する新規なゼオライト触媒YNU-3を固体酸触媒として用い、パラフィンの接触分解における低級オレフィン、特に需要の高いプロピレンの高選択製造を検討した。その結果、YNU-3がヘキサンのクラッキング反応に対して、既存の工業触媒としても有用なZSM-5ゼオライトと同等以上の活性を示すとともに、プロピレンをより高選択的に与えることを確認するとともに、YNU-3触媒の活性点となるAlサイトの量を制御する調製方法を確立した。さらに、活性点位置の制御につながる仮説を見出したので、これを利用して今後はさらに高性能な触媒の設計につなげていく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、プロピレン/エチレン比が大きく、優れた活性とライフの触媒を開発できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、ゼオライト合成による粒子径制御と脱アルミ加工のバランスを検討するなどでの、選択性の改善とプロパン/エチレン比の更なる向上による実用化が望まれる。今後は、企業との連携により、触媒調製のコスト低減を図ると共に早い段階でのベンチテストを実現されることが期待される。
フライホイール用複合材料円盤の高速回転試験技術の開発 独立行政法人宇宙航空研究開発機構
八田博志
炭素繊維強化複合材料製フライホイールの回転試験を行った。高速化を実現するために、回転試験機の改修を行った。また回転円盤と回転軸との接合方法が技術課題であったが、伸びのある樹脂材料をハブとする検討を行なった。これまでの回転試験では周速800m/s付近において、軸振動の増加が観測されたが、今回の2つの検討の結果、この周速においては、軸振動の抑制された回転試験を実施することが可能となった。今後は、回転試験を継続して1,200m/sまでの安定した回転試験の実施を目標とする。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、フライホイール回転試験中の軸振動増加の原因を解明して試験体の接合方法を改善し、回転円盤と回転軸の接合方法として樹脂製ハブを用いることにより改善効果は認められたことは評価できる。一方、炭素繊維強化複合材料製フライホイールの回転試験を継続して1,200m/sまでの安定した回転試験の実施の目標は達成されていないので、抽出された課題である3D-CFRP円盤自体の均質化の改善にに向けて、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、次世代のエネルギー技術として将来の実用化が期待される課題であるので、まずは、明確になった課題を克服し、目標を達成することが望まれる。
糸状菌を用いた食品廃棄物のトータル利用プロセス開発 長岡技術科学大学
志田洋介
長岡技術科学大学
品田正人
植物バイオマス分解酵素であるセルラーゼ・ヘミセルラーゼの高生産糸状菌であるトリコデルマ・リーセイにおいて酵素生産コストの低減を目指し、セルロースを含有する安価な食品廃棄物を培養基質として用いた効果的な酵素、タンパク質生産法を確立した。また、本方法はセルラーゼ・ヘミセルラーゼの生産だけでなく、有用タンパク質生産株であるオリゴ糖化酵素の生産にも有効であることを明らかとした。本方法で得られたオリゴ糖化酵素を用いて、セルロースから効果的にセロオリゴ糖を生産することに成功した。今後は、さらなる高効率セロオリゴ糖化酵素生産株の開発を進めるとともに、セロオリゴ糖の分離・精製にむけて企業との連携を進める。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、糸状菌トリコデルマ・リーセイを用いてオカラからセロオリゴ糖を得ることを検証したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、スケールアップの検討によるオカラの処理プロセスの確立などでの実用化が望まれる。今後は、オカラの回収と前処理も含めたトータルの製造原価を試算すると共にオリゴ糖の機能性評価、市場性も検討することが期待される。
燃料電池アノード触媒のPt使用量1/100削減へのナノ相分離構造体の利用 長岡技術科学大学
白仁田沙代子
長岡技術科学大学
品田正人
燃料電池用の電極触媒には、50 wt%のPtが使用されている。従来のアノード触媒からPt使用量100分の1を目指して本研究課題を行った結果、0.01 ppm以下のPt担持量においても水素酸化反応に対してバルクPtと同程度の立ち上がり電位を有することを見出した。手法としては、TiO2とSiO2から成るナノ相分離構造体を導電性基板上に成膜し、めっき法によってPt粒子を担持固定化した。めっき前後において、バックグラウンドボルタモグラムの形状は変化せず、SEM-EDX測定においてもPt粒子を観察することはできなかった。しかしながら、電子移動反応ではマイクロ電極に似た挙動が観察され、水素酸化反応において明らかな活性向上が確認された。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも従来のアノード触媒からPt使用量削減を図り、微量のPt担持量にも関わらず水素酸化反応が起こり、電子移動反応によるマイクロ電極挙動を確認している点については評価できる。一方、Ptの定量的な把握およびアノード、カソードに本技術を展開するための課題の整理に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、微量Pt効果のメカニズム解明と併せ、実用化に向けた課題の整理および特許出願を優先されることが望まれる。
レアメタルフリー超低コスト環境調和型薄膜太陽電池の効率改善 長岡技術科学大学
田中久仁彦
長岡技術科学大学
品田正人
低価格化、環境適合のため、レアメタル・有毒元素を含まないCu2ZnSnS4(CZTS)を光吸収層とする薄膜太陽電池を大気圧下で作製している。これまで、低効率の原因となる塩素を含まない原料溶液を用いることでガラス上に高品質なCZTSを堆積できる。しかし、モリブデン電極へ堆積させると剥離することがわかっていた。そこで、本課題では塩素無し原料溶液でも剥離しない堆積法の開発を目標とし、それによる効率改善を試みた。剥離が炭素を多く含む中間層に起因することがわかったため、水蒸気雰囲気での加熱処理、紫外線・オゾン照射で中間層低減を試みた。その結果、剥離防止・中間層低減はできた。しかし、完全には中間層がなくならず効率改善には至らなかった。剥離防止はできたので、今後は剥離しない状態での炭素除去法を検討し、効率改善を目指す。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもレアメタル・有毒元素を含まないCu2ZnSnS4(CZTS)を光吸収層とする薄膜太陽電池においてMo電極において剥離する原因が残留炭素に有ることとその対策について検討している点については評価できる。一方、溶液塗布方法の改善や残留炭素の抑制方法に向けての技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、企業と連携して共同研究を推進することが望まれる。
ミミズが有する低温高活性な糖質・脂質分解酵素を活用したバイオマス資源化 長岡工業高等専門学校
赤澤真一
本本課題はミミズが有するバイオマス資化酵素を網羅的に解明し、低エネルギー廃棄物資化による持続可能な循環型社会の構築を目指したものである。バイオマス資化酵素であるセルラーゼの一種b-グルコシダーゼ及びリパーゼの粗精製条件を明らかにしたところ、粗酵素中のリパーゼの至適pHが9.0であったことからアルカリ耐性を有する可能性が示唆され、工業的に有用である可能性を示した。さらに、データベースよりこれら遺伝子の配列を入手し、次のステップである各種酵素の発現解析をするための基礎データを取得した。今後の発展が期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ミミズの酵素に着眼しそれらの発現解析のためのデータ、情報を取得したことについては評価できる。一方、本研究で得られる成果の利用場面の想定に基き、集積すべきデータや情報を明確にした上で、更なる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、「低エネルギーバイオマス資化」のコンセプトに沿った焦点に検討内容を絞ることが望まれる。
多角バレルスパッタリング法で調製した高活性CO2固定化触媒の民生展開への検討 富山大学
阿部孝之
富山大学
永井嘉隆
本研究では「多角バレルスパッタリング法」で調製したRu担持TiO2(Ru/TiO2)触媒をメッシュサイズの異なる炭化ケイ素(SiC)多孔体(メッシュサイズ:20、13、8)に固定化し、大流量なCO2を供給した際の「CO2水素化反応(CO2+4H2→CH4+2H2O)」について検討した。得られた結果として、Ru/TiO2触媒はいずれのメッシュサイズのSiC多孔体にも固定化でき、その担持量の制御も可能であることがわかった。さらにRu/TiO2固定化SiC(Ru/TiO2-SiC)触媒を用いると、ラボベースの150倍以上のCO2ガス流量であっても100%CO2還元温度はラボベースで得られた結果と同程度であり、従来法で調製した触媒より約150℃低温化していた。これらの知見はCO2水素化反応の民生展開に向けた大きな進歩であるとともに、本反応は、近年、グローバルな課題として取り上げられているCO2の排出量削減やエネルギー問題の解決の一手段と成り得ることを示した。また、CO2水素化反応で得られるメタンは次世代のエネルギー源である「水素」のキャリアとして利用でき、本反応を利用した水素エネルギー社会の実現が期待できる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、CO2が大流量の場合でもCH4への水素化が可能な触媒を開発したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、貴金属Ruの担持量の低減や他の金属触媒系の検討と共に実用面からの要求性能と現触媒の性能に基づき実用性を明確にするなどでの実用化が望まれる。今後は、欧州ではなく国内での有用性を訴求するためにも、トータルシステムでの物質収支とエネルギー収支を明示されることが期待される。
自己冷却機能を持つ超伝導軽量線材の開発 富山大学
松田健二
富山大学
永井嘉隆
磁気熱量特性と超伝導特性を併せ持つ新規な軽量超伝導材料の開発を目指して、Gd-Ge-Si系化合物を含むMg基合金の作製およびその特性評価を行い、申請者の持つハイブリッド材料製造技術である「3次元溶湯浸透法」の適用の可否を判断することを目的とした。大気溶解でありながら、Mg-Gd-Ge-Si合金の作製に成功し、3次元溶湯浸透法への適用が可能であると判断された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、各開発要素に関して一定の進捗がなされたことは評価できる。一方、磁気熱量効果を示すMg-Gd基合金相の作製には至っておらず、それに超伝導合金MgB2を分散し線材化することの当初の目標には程遠い状態である。合金設計・選択、加工プロセスの検討、組織観察に加えて超伝導特性や磁気熱量特性評価と研究内容が多岐にわたっているので、個々の項目に関して、方法論の整理、再考を含めてさらなる技術的検討やデータの積み上げが必要と思われる。今後は、リスクはあるが技術革新性の極めて高い開発課題であるので早急な技術移転を追い求めるよりも基礎研究に力点を置いた研究開発が望まれる。
環境に優しい凍結防止剤(融雪剤)の開発 富山県立大学
中島範行
富山県立大学
山田惠宣
凍結防止剤の候補化合物としてプロピオン酸ナトリウムを設定した。北海道苫小牧での野外での凍結防止剤散布試験を行ない、塩化ナトリウムと同程度の路面のすべり抵抗値の改善(散布効果)、特に散布直後の改善が顕著に得られることがわかった。粒状の塩化ナトリウムと比べ、今回粉末状のプロピオン酸ナトリウムを用いたため、溶液化が早かったことが要因と推察された。測定日の気象条件によって試験結果にばらつきがあり、ある日の散布条件では散布効果が高く、最も高い散布効果を示していた。一方で、プロピオン酸ナトリウムの塩化ナトリウムへの20%混合散布の場合は、塩化ナトリウム単独での散布より、小さい散布効果を示した。
今後、薬剤の形状・散布方法・持続性などの検証や価格の低下に向けた取り組みを行う持続的に行なう必要があると考えている。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、研究計画に沿い北海道で実際にテストしたことは評価できる。一方、道路端の植物や動物等を含め、有機酸を用いる凍結防止剤の環境影響の確認、実用場面での利便性の明確化などに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、関連企業に加え公共機関との連携も検討されることが望まれる。
アルミナ基板上BiFeO3系非鉛圧電厚膜の開発 富山県工業技術センター
二口友昭
幅広い応答周波数範囲を有する音響振動センサや振動発電素子へ応用するために、優れた圧電性能が期待できるBiFeO3系材料を安価なAg系下部電極とアルミナ基板を使用して作製する研究開発を実施した。Ag/Pd比率や焼成温度を検討することにより、96%アルミナ基板上に1100℃焼成にて緻密で密着性のよい下部電極が得られた。この上に形成されたBiFeO3-BaTiO3系圧電体厚膜の残留分極は31μC/cm2で抗電界は39kV/cmであった。また、キュリー温度Tcは450℃で、圧電定数d31は63pm/Vであった。通常用いられる高価なジルコニア基板上Pt下部電極を使用したものと比べて圧電定数d31は9割程度確保され、キュリー温度Tcは全く低下せず少し高い値であった。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、安価なアルミナ基板上Ag系材料を下部電極とする非鉛のBiFeO3-BaTiO3系圧電体厚膜にて良好な圧電性が得られたことについては評価できる。一方、特許出願や更なる圧電定数の向上に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、本デバイスの長所を生かした実用デバイスの特定とその要求性能、コストなど具体的な市場要求に対応した開発が産学連携により進められることが望まれる。
超小型レーザ・ディスプレー用3原色レーザ集積化光合波器の開発 福井大学
勝山俊夫
福井大学
奥野信男
めがね型網膜走査ディスプレーに代表されるレーザ・ディスプレーの超小型化を目指し、その鍵技術である3原色レーザ集積化光合波器の研究開発を進めた。本研究責任者が発明し、実際にそのプロトタイプを実現している導波路型の光合波素子をベースに、半導体レーザを同一Si基板上に集積化するための最適構造の検討を行った。その結果、合波素子をSi基板上に実際に作製することに成功した。またレーザからの光入射効率の向上、レーザチップからの熱を外部に効率よく逃がす半導体レーザの配置方法の最適化を達成した。最終的なレーザ集積化光合波器プロトタイプの作製は、現在進行中のA-STEP研究成果最適展開支援プログラム・シーズ顕在化タイプのテーマの基に実施し、ここで目標光出力効率:70%以上、合波器長:7mm以下を達成する見込みである。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にレーザ・ディスプレーの超小型化のキーデバイスである3原色レーザ集積化光合波器を開発し、半導体レーザを同一Si基板上に集積化している技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、素子の光入力部構造と導波路型合波素子との最適化により、光出力効率70%以上を実現していることや、また、集積化方法を考案していることなどでの早期実用化が望まれる。今後は、放熱問題やコスト面からの小サイズに向けた検討が期待される。
電気化学的バイオセンサによる乳酸光学異純度の検出システムの開発 福井大学
里村武範
福井大学
奥野信男
本申請では超好熱菌由来色素依存性D-乳酸脱水素酵素を素子とした長期間連続使用可能で高感度にD-乳酸を検出可能なバイオセンサ開発を目的として研究を進めた。その結果、超好熱菌Sulfolobus tokodaii由来の色素依存性D-乳酸脱水素酵素を素子としたセンサシステムにおいて本申請のD-乳酸の検出目標値を上回るD-乳酸バイオセンサシステムの構築に成功した。今後、本酵素を用いたD-乳酸センサシステムの実用化のために、センサシステムの小型化、ハイスループット化を目指して企業との共同研究を進めていく予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、超好熱菌の酵素を用いて高感度で長寿命のD-乳酸の検出センサーの略開発を終えたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、酵素の汎用カーボンナノチューブへの固相化法の更なる工夫と知財権の取得などでの実用化が望まれる。今後は、センサーの小型化など民間企業とのマッチングにより開発を加速されることが期待される。
ラン藻細胞外放出多糖の安定的大量生産システムの開発 福井県立大学
大城香
特定非営利活動法人近畿アグリハイテク
北村實彬
ラン藻(シアノバクテリア)が生産する細胞外放出多糖(以下EPS)は、高い保水力、優れた金属吸着能等を有する機能性生物ポリマーであり、この特性を生かした工業的利用が期待される。EPS安定的大量生産系確立を最終目標に、新規に分離した高EPS生産株を用いてバイオマス生産量を向上させる培養法を開発した。EPS生産ラン藻は細胞塊を作って増殖するため、培養液深度を浅く(<2.5cm)することで、撹拌や通気を必要としない培養が可能となった。浅い培養液を入れたプラスチック容器を培養槽として利用することで培養槽軽量化(<5Kg)による細胞回収・容器洗浄作業等の負担軽減、さらに培養容器を立体的に配置することで培養容器単位面積あたりのバイオマス生産量を向上させることが可能となった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、大量生産につながる培養法を見出し特許を出願したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、生産株や培養装置/施設だけではなく培養条件(気温・湿度・照度等)の最適化検討などでの実用化が望まれる。今後は、機能性の評価に基く用途開発に加え、精製や廃液処理などのエンジニアリング検討も行うことが期待される。
植物病原菌類の細胞壁成分を利用した耐病性向上剤の実用性評価 福井県立大学
木元久
特定非営利活動法人近畿アグリハイテク
北村實彬
本研究開発の目標は、キチンオリゴ糖を耐病性向上剤や生長促進剤、品質向上剤として農業利用することである。イネや野菜を用いて試験を行った結果、これらの効果を実際に確認することができ、全ての目標を達成することができた。今後は試作品を施設園芸・植物工場展2014(GPEC)へ出展し、来場者からの意見や反応を参考にして商品化する予定である。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、カニ殻由来のキチンオリゴ糖による耐病性向上や成長促進効果をイネと野菜で確認し、商品化にむけて地元企業との連携体制を構築した成果が顕著である。一方、技術移転の観点からは、成長促進や品質向上の効果の内容を充分に確認するなどでの実用化が期待される。今後は、耐病性向上が認められる症例や乾物重量の増加効果が認められる作物種をを増やすと共に適用限界についても言及することが期待される。
潤滑層形成によるチタン合金の加工性改善 福井工業大学
神田一隆
福井工業大学
佐々木博
本調査研究は2つの目標を持って進められた。その1つ目はチタン合金の線引きや切削加工におけるチタン合金の溶着防止に関する研究、2つ目はメガネフレームの可動部分などチタン合金が相手材と摩擦する部分でのチタン合金の溶着防止法に関する研究である。第1番目の目標に関しては、チタン合金と他の金属とが摩擦する界面にチタン合金と反応して溶着しにくい物質を生成し、溶着を低減する計画であったが、潤滑油とそれに添加する材料が均質に分散しないことがわかり、その対策を模索中である。第2番目の目標に関しては、チタンに浸炭処理を施すことでチタンの摩擦係数を大幅に改善することができ、溶着も防止できることが明らかとなった。また、TiCコーティングでもその目標を達成できることがわかった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもチタン摺動面に対する摩擦低減として、浸炭処理を施す表面処理を試み、その妥当性を示していることは評価できる。一方、当初目標とした、チタン合金の線引きや切削加工におけるチタン合金の溶着防止に対しては、全く成果が見られないので基礎研究に立ち戻って、新たな提案に資する技術的検討が必要と思われる。今後は、摩擦駆動部における溶着については、表面処理により成果が得られており、地元メガネ産業に寄与できる技術と思われるので、製造コストに対する配慮等を行い、技術移転につなげるべく研究を発展させることが望まれる。
傾斜電荷分布による自己分極処理機能を持つ自律型圧電材料の開発 山梨大学
和田智志
山梨大学
還田隆
本来130℃というキュリー温度(TC)を持つチタン酸バリウム(BaTiO3、BT)圧電材料に内部電場を導入することでTCを高温側にシフトさせる世界初の原理確認とそのための技術開発を行った。30kV/cmを超える内部電場をBTセラミックスに導入するため、TCが430℃と高いニオブ酸カリウム(KNbO3、KN)でBTセラミックスを挟むKN/BT/KN積層構造を持つセラミックスを300℃以下の低温で作製する技術を開発した。この積層セラミックスを分極処理することで、BTセラミックスのTCを3℃ほど高温側にシフトさせることができた。この値は一見小さな値に見えるが、圧電セラミックスに内部電場を導入することでTCを増加させる試みは世界初であり、その実証に成功した。今後は、BT積層厚さの最適化に加え、分極処理方法および材料自体の耐圧を向上させることでBTセラミックスのTCを200℃以上までの増大を目指す。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、チタン酸バリウム(BT)をニオブ酸カリウムで挟んだ積層構造をつくることによってBTのキュリー温度を上昇させる原理を確認したことについては評価できる。一方、BTのキュリー温度を200℃に上昇させるために内部電場を大きくする積層構造の最適化、分極処理法、材料の耐電圧などの技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
超間歇高速起動水晶発振回路による超低消費電力システムの開発 山梨大学
秋津哲也
山梨大学
還田隆
水晶発振回路の高速起動回路の定数最適化を研究しCR発振回路を内包することによって高速起動を実現。定常発振時は周波数引き込みにより共振周波数に安定化されることを確認した。32.768kHz、40kHz、153 kHzの音叉水晶共振器ならびに173 kHzQ-MEMS共振器の発振回路を開発、提案回路を実験により定数を最適化し、1ms以下の起動時間を実現した。水晶共振器センサーの開発と並行して、測定用タイムベースの高性能化、2軸回転SCカット水晶共振器の主共振モードを分離し安定に励起できる水晶発振回路を開発した。OCXO等の超安定タイムベースとしての応用が可能である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、二重モード同時共振の新しい知見はオリジナルであり、評価できる。一方、高速起動時の周波数安定について、当初より課題であったが手が付けられていないので技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、間欠発振モードでは本研究の効果は限定的になる。用途に合わせたコストと起動特性を考えてることが必要である。
2重共振による高速起動で省エネルギー化したピエゾ抵抗センサー回路の開発 山梨大学
秋津哲也
山梨大学
還田隆
慣性航法ではGPSによる水平位置データの取得を中心に考えてきたが、高さの情報を加えるために、製水晶共振器圧力センサーの低デューティ発振に関する開発を前年度行った。高さの情報の多重化が必要であるため、ピエゾ抵抗センサー(気圧・高度センサー)のアナログ回路部分の開発を行った。供試サンプルはゲージ圧センサーであったため、大気圧を中心として+側と負圧側の測定に用いるアナログアンプ部分の開発を行った。一般的なAD変換で位置情報が得られる。タイムベースの高周波化、安定性の改良のために、100MHzのSCカット水晶共振器によるタイムベースの安定性ならびに、低電流駆動回路を開発した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、2重共振による発振回路を製作し、起動時間の短縮を確認できた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許出願を行い、企業と連携して研究を進めることが望まれる。今後は、実用化のため、高速の低消費電力AD変換回路が必要と説明されているので、実現されることが期待される。
持続可能な社会に必要となる高強度繊維強化熱可塑性プラスチックの開発 信州大学
鮑力民
信州大学
村上昭義
繊維強化複合材料(FRP、熱硬化性樹脂を使用)は高強度で、航空宇宙を始め、広い分野に発展している。FRPのリサイクルが困難などのため、母材に再利用しやすい熱可塑性樹脂を使用することが注目されている。本研究では今までの連続繊維強化熱可塑性プラスチック(FRTP)の繊維含有率がかなり低い欠点を克服し、FRPなみの力学特性をもつFRTPの新成形法を提案し、高温熱可塑性樹脂(エンプラ)への応用を試みた。成形方法の改善や改良によりFRPと同じ繊維含有率と力学特性を持ち、FRPより高い耐高温性をもつFRTPの開発が成功した。新方法がシンプルで、会社への移転について数社と話中で、運送体などへの応用を期待している。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、新たな溶剤/溶融成形法により、FRP・CFRPと同等の強度と耐熱性を持つ、熱可塑性樹脂の繊維強化複合材料(FRTP・CFRTP)を作成する技術に関する成果が顕著である。一方、技術移転の観点からは、リサイクル性も含めて量産の検討を協力企業と取進めるなどでの実用化が期待される。今後は、早急に特許を出願し、企業レベルの成形加工技術として確立されることが期待される。
シース/コア構造を持つ環境配慮型難燃繊維の開発 信州大学
後藤康夫
信州大学
村上昭義
繊維の難燃化は、火災から我々の生命を守るために極めて重要である。本課題では、カーボンニュートラル且つ利用用途が大きい一方で燃えやすい素材の代表であるセルロース繊維に難燃性を付与することをテーマに掲げた。ガスバリア性に優れた板状ナノクレイを繊維外層部に極在化させたシース/コア構造型構造を繊維に取り入れることで、優れた難燃性を持つ繊維の作製に成功した。用いた繊維原料(ポリマーおよび難燃剤)は、いずれも食料問題とは競合せず、且つ安価で人体に無害であることから、本課題で得られた成果は、環境負荷低減ならびに安全・安心社会の構築に貢献できる。今後は、企業の協力を得て実用サイズの布帛を作製し、難燃試験を実施したい。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、シース/コア紡糸法の条件を確立し板状ナノクレイがセルロース繊維を難燃化した成果が顕著である。一方、技術移転の観点からは、特許出願を踏まえた早期の実用化が期待される。今後は、難燃化技術としてキュプラなど繊維の応用拡大と共に他分野への応用も検討されることが期待される。
活性コークス誘起マイクロ波プラズマによる瞬時起動型非平衡排ガス処理 岐阜大学
板谷義紀
岐阜大学
安井秀夫
内燃機関の触媒式燃焼排ガス処理装置に代わり、触媒の昇温までの作動時間遅れのない瞬時起動型高効率排ガス処理技術の開発を目指して、マイクロ波プラズマによる排ガス処理特性評価試験を実施した。活性コークス充填層をすすなどのPM用フィルターおよびマイクロ波プラズマ誘起媒体に利用した場合、アルゴンバランスガス流通では充填層上流側にダイナミックなプラズマが生成し、95 %以上のNO分解反応率を達成した。一方、窒素バランスガス流通では充填層上流側でのプラズマ生成が認められないものの、充填層内での微弱プラズマまたは放電や昇温に伴う炭素質の還元効果により、ある程度の脱硝効果が得られた。本成果から、反応動力学的機構の解明を通して最適な活性コークス充填層型反応装置設計等の課題が明確になり、革新的排ガス処理技術開発のための基礎的知見が得られた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にマイクロ波プラズマにより脱硝反応分解率90%以上、反応遅れ時間1分以内という目標を達成でき新規性のある重要な成果が得られたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許申請を行うとともに企業との共同研究に繋げることが望まれる。今後は、本研究課題の排ガス処理システムによる効果と総コストとの関連を早急に検証されることが期待される。
革新的ソリューションプラズマプロセスによるカーボンナノ材料表面修飾技術の開発 名古屋大学
上野智永
名古屋大学
虎澤研示
本研究開発において、ソリューションプラズマプロセスによるCNTの表面修飾技術の開発を行った。CNTと反応性が高い官能基を特定し、その官能基を有する化合物を修飾剤として反応させることで、種々の表面機能をもったCNTの作製に成功した。CNTとの反応機構の解明を試みることで、反応制御に必要となる基礎的な知見を得るとともに、用途に応じた機能を発現するCNTの作製に成功した。本方法は、従来の方法に比べて、環境に配慮した簡便な方法で、CNTの表面修飾が可能であり、かつ種々の機能をCNT表面に付与することができるため、技術的優位性が高い。本研究で得られた成果を元に、企業との共同研究が開始され、産学連携が加速された。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、低温プラズマ処理にて環境負荷の少ない中性溶液中といった温和な条件で処理することにより特定の官能基を有する化合物でCNTを表面修飾する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、複数社と本技術を用いた応用デバイスの開発に関する共同研究を実施しており、実用化が望まれる。今後は、本技術の更なる応用展開に向けプラズマの修飾反応に及ぼす効果と機構をプラズマ条件等のパラメータを考慮に入れて解明されることが期待される。
超臨界プラズマ酸窒化ナノ微粒子生成装置の開発 名古屋大学
近藤博基
名古屋大学
虎澤研示
超臨界流体化学気相堆積とプラズマ酸窒化が同一チャンバ内で同時に可能なプラズマ支援超臨界流体ナノ微粒子合成装置の構築に向け、超臨界プラズマ 生成用電極を試作し、放電特性の評価を行った。具体的には、対向型電極構造などの各種電極構造を検討し、周波数60MHzのVHFならびにDCバ イアス、パルスバイアスを印加して、低圧下およびCO2およびHe雰囲気下での放電特性を評価した。これらの知見を基に、超臨界下を含む高圧状態 でのプラズマ形成と、超臨界プラズマを用いた酸窒化微粒子合成技術の開発を進めた。 当初期待した成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、試みた電極では高圧領域での安定な放電が得られなかったため、ナノ微粒子生成は実現できなかったが、電力導入部の絶縁など装置全体の改善の方向性を見いだしたことは評価できる。一方、既に企業との共同研究体制を築いているので、安定な放電を実現できるように、研究を継続することが必要と思われる。今後は、具体的な製品イメージはできているので、本装置の実現が望まれる。
量産プラズマ製造装置用汎用小型ワンポート型側壁ラジカルモニターの開発 名古屋大学
竹田圭吾
名古屋大学
虎澤研示
今回の研究開発においては、現在幅広い分野で活用されるプラズマプロセス内部の重要活性種である原子状ラジカルの絶対密度計測を可能する汎用性の高いラジカルモニターの構築を目的とした。真空紫外吸収分光法をベースとした本モニターの開発には設計・部材の選定等から進め、最終的にはICF114サイズのポートに接続可能な1ポート型壁際ラジカルモニターの構築に成功した。そして、構築したモニター装置の実プロセス(窒素プラズマ)での評価の結果、窒素ラジカル密度の時間変化のリアルタイムにモニタリングや、200mmウエハー対応のプラズマエッチング装置への適用も十分可能であり、本装置の汎用性と有用性の高さを十分に示す結果が得られた。以上の成果より、本モニター装置は、現在のプラズマプロセス装置の更なる高度化を実現するとともに、プラズマ技術を要する新成長分野の発展を促進するものと期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、小型ワンポート型側壁ラジカルモニターの開発について、材料の検討・設計・開発を行い、プラズマ装置での計測評価を行い装置の汎用性・有用性を検証しており、当初の目標を達成していると評価できる。一方、技術移転の観点からは、ラジカルの空間分布などの装置の有用性にかかわる改善、装置の小型化の検討などをおこない、実用化につなげることが望まれる。今後は、設立した関連ベンチャー企業と共同で早急に実用化されることが期待される。
直並列形電力変換器によるループ配電系統の線路損失低減とノード電圧制御 名古屋工業大学
竹下隆晴
名古屋工業大学
岩間紀男
太陽光発電などの発電量急変により電力配電系統の電圧変化が大きくなってきている。この対策として、本開発では、従来の放射状系統をループ化し、ループコントローラとしてUPFC(Unified Power Flow Controller)を用いてノード電圧制御と変換器容量低減制御を開発した。具体的には、UPFCの直列形変換器では配電系統のノード電圧のバラツキを抑える働きが、並列形変換器では配電系統全体のノード電圧を降圧または昇圧する働きがあることをそれぞれ明らかにした。変換器容量低減法として、直列形と並列形変換器の協調制御法を提案した。配電系統モデルにおける電圧制御実験で、協調制御により、並列形単独制御の変換器容量の32%に低減できた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に電力配電系統において、各ノード電圧の制御と、線路損失低減をを実現する制御法を開発し、その有効性をシミュレーションと試作システムによる実験検証により確認している技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、新規ループコントローラを開発する段階で共同研究を実施した電力会社との研究を推進することや、日本の配電系統にも適用できるように、放射状系統にUPFCを用いた場合の各ノード電圧制御法を検討することなどでの実用化が望まれる。今後は、電力会社や電力機器メーカと緊密な連携を取り、積極的に製品化を進めることが期待される。
高精度・高適用性のシームレス分級機の性能実証と有効な多産物化法の開発 名古屋工業大学
土田陽一
名古屋工業大学
岩間紀男
本研究では、高精度・高適用性を特長とするシームレス分級機について、三産物分級機の性能実証と有効な四産物分級機の開発を目的として、分級実験並びに流れと粒子運動の数値解析を行った。三産物分級機については高性能の実証に至らなかったが、その原因は明らかであり性能改善法についてのいくつかの新たな知見を得た。今後はこの知見をもとにあらたな改善法を確立する必要がある。四産物分級機については、数値解析結果ではあるが、かなり有効な四産物分級機であることが分かったので、今後は最適な分級機形状や給水・産物捕集法並びに流量配分や支配パラメータの最適条件を明らかにするとともに、それらを実証する必要がある。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、数値解析による性能評価を実証する目的に十分到達できたとは言えないが、性能改善に向けた次の技術的な課題や知見が得られていることは評価できる。一方、数値計算による分級性能を実証する設定目標が到達されれば、シームレス三産物分級機からさらに四産物分級機へと高性能化を図ることができると思われるので、さらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、分級機の設計、操作条件に関する知見を得ているので、性能改善と数値計算における妥当性の検討を行い、最終目的を達成することが望まれる。
革新的アルキル化技術を用いた人工アミノ酸の実用的合成法の開発 名古屋大学
波多野学
公益財団法人名古屋産業科学研究所
大森茂嘉
イミノエステルの完全な位置選択的アルキル化技術を鍵とし、実用性の高いアミノ酸、ベータラクタム等の高効率合成を目標とした(>95%収率、位置選択性>99%、ジアステレオ選択比>99:1)。特にアルキン化合物の高い反応性を見出し、ほぼ完全な目標値通りに人工アミノ酸ライブラリーを構築できた。グリーンイノベーションに相応しい資源豊富で安全・安価な塩化亜鉛と500種類以上も市販されているグリニャール反応剤からなる亜鉛アート錯体の活用が高い確実性と高い実用性の柱である。副生成物が限りなくゼロ近いことは、製造の大幅なコストダウンに繋がるため、企業への早期技術移転が見込まれ、精密有機合成化学から医薬品化学や機能性材料化学を中心とする企業での応用展開が期待できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、イミノ化合物のグリニャール反応に、実用的な亜鉛錯体を用いて高収率・高選択的で光学活性なものも含めα−アミノ酸誘導体を得たこと(人工アミノ酸化合物ライブラリー構築)は評価できる。一方、技術移転の観点からは、得られる人工アミノ酸やその誘導体に実用価値を付与する研究も展開するなどでの実用化が望まれる。今後は、数値目標に達しないネガティブなデータとその推定要因も明示することも含めて企業に積極的に技術紹介をすることが期待される。
高密度電子流衝突を利用した疲労損傷治癒による金属材料の長寿命化 名古屋大学
細井厚志
名古屋大学
押谷克己
本研究は、高密度の電子流を金属原子に衝突させることにより原子拡散現象を誘起させ、金属原子の再配列・再結合による疲労き裂治癒技術を世界に先駆けて実現し、機械・構造材の残存寿命を格段に改善することを目的とした。本研究では、電子流の衝突により疲労き裂を閉口させた後、適切な条件で熱処理を行うことにより、原子拡散現象が生じ、疲労き裂治癒効果が格段に向上することが分かった。また、電流を印加せずとも適切な熱処理を施すことで、疲労き裂を自己治癒させることができることも明らかにした。一方、疲労き裂発生前の損傷が治癒するメカニズムとして、電子衝突によって電子風力が作用し、疲労負荷によって蓄積した転位が移動・消滅することを実験的に明らかにした。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、亀裂修復を実現し、亀裂修復のメカニズムを検討、実証したことは評価できる。一方、大型構造物に適用可能かどうかを判断できるデータを提示することが必要と思われる。今後は、ニーズを取り入れた応用をイメージした進め方を検討し、社会貢献に寄与する道筋を示すことが望まれる。
炭素繊維フィルターを用いた触媒フリーのナノ粒子浄化技術の開発 名古屋大学
山本和弘
名古屋大学
安田匡一郎
近年、大気汚染や地球温暖化などの環境問題が深刻化している。ディーゼル車はCO2の排出を抑制できるが、排気ガスに含まれるナノ粒子が問題である。現在主流であるセラミックス製のDPFは高い捕集性能を持つが、PMを捕集すると背圧が上昇し、燃費が悪化するなどの問題が生じる。そこで白金などの触媒を用いて微粒子を酸化・除去するが、触媒には高価で希少価値の高い貴金属を使用している。触媒に頼らない技術が求められているが、従来の経験則に頼る設計手法では革新的な進展は見込めない。本研究では、高い耐熱性を持つ炭素繊維を素材に選び、触媒を用いない新しい微粒子除去フィルターの開発を行った。特に、微粒子の捕集と再生を同時に行う連続再生型の後処理方法について検討した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、触媒フリーの新たな排ガスフィルターを開発するための基礎実験を行い、フィルターの仕様や作動条件をある程度明らかに出来たことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、企業との共同研究により、従来のセラミックス製フィルターとの比較実験を行いながら、開発したフィルターの優位性を確立することが計画されているので、成果に基づいた実用化が望まれる。今後は、触媒フリーで且つ排気中の微粒子が効率的除去できれば、社会的インパクトは大きいと思われるので、実機試験での確認を早めに行うことで社会還元につながることが期待される。
有機触媒のみを用いたアルコールの金属フリー空気酸化反応の開発 名古屋工業大学
荒木修喜
名古屋工業大学
沖原理沙
酸化反応は基本的で重要な有機反応の1つである。酸化剤として常圧常温の空気中酸素を終末酸化剤とする反応が理想的であるものの、一般には金属触媒を必要とし基質が限られ、また反応は遅い。申請者はテトラゾリウム系メソイオン化合物から誘導された有機触媒が、酸素のみを酸化剤として、ベンジルアルコールといった活性なアルコールばかりでなく、脂肪族第1級アルコールは触媒的にアルデヒドに、脂肪族第2級アルコールはケトンに高収率で酸化できることを見出した。また、新たなテトラゾリウム系メソイオン触媒の開発も検討した。今後も、新たな触媒の開発を継続し、種々の基質への空気酸化反応の開発を更に進めて行く。また、実用化に向けて触媒の固定化法も検討したい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初の目標に関しては、酸化しづらい脂肪族アルコールの酸化反応が高収率で進行することを明らかにした点は評価できる。一方、目標としたTOF=100に関しては、新たな触媒開発がなされなかったことにより達成されていない。技術移転を目指す結果を得るためには、本申請では達成できなかったTOF>100を目指した新規触媒の創製は不可欠ではないかと思われる。今後は、本手法が有機触媒を用い、酸化剤を空気とするグリーンケミストリーの概念に合致する反応手法であり、更に高収率、高回転が達成されればグリーンイノベーションとして、技術の社会還元がされる点では今後が期待できるが、新たな触媒の開発がキーになるとも思われるので、さらなる発展が望まれる。
有機薄膜太陽電池用グラフェンナノウォール透明導電膜の開発 名古屋工業大学
曽我哲夫
名古屋工業大学
山田秀夫
本研究は、触媒金属を用いることなくマイクロ波プラズマCVD法で直接基板上に垂直に配向したグラフェンを成長し、有機薄膜太陽電池の透明導電膜へ応用するものである。これまで垂直配向したナノウォールは基板の極一部分しか形成できていなかったが、本研究で均一に得られる領域を大幅に拡大することが可能となった。また、基板とナノウォールの界面にはグラファイトの微結晶が形成されるという成長機構が明らかになり、ナノウォールの高さ、層数、密度等をある程度制御することができた。今後は基板全面に均一な薄膜を実現し、有機薄膜太陽電池の透明導電膜に応用することにより、太陽電池のエネルギー変換効率の向上を目指す。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも触媒を用いずに半導体基板上にグラフェンナノウォールを直接合成できた点は評価できる。一方、大面積で均一な薄膜成形に向けた堆積パラメータのさらなる最適化などの技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、マイクロ波プラズマCVD装置の構造に依存した因子の検討を進め今後は、基板全面に均一な薄膜を形成する技術を確立し、これを用いた有機薄膜太陽電池の性能向上に貢献することが望まれる。
半導体ハイブリッドMOS電極構造を用いた超高感度FET型ガスセンサの開発 名古屋工業大学
三好実人
名古屋工業大学
山田秀夫
ガス感応性の酸化膜半導体を窒化物半導体エピ膜上に形成し、高温動作が可能な半導体ハイブリッドMOSダイオード型ガスセンサを試作した。試作したダイオード素子の電気特性を評価したところ、良好な整流特性と、十分に低い逆方向電流特性を得た。また、ガスセンサ評価用チャンバを製作し、試作したMOSダイオードのガス検知試験を行ったところ、環境温度250℃にて、空気中ガス濃度40ppmとなる一酸化窒素(NO)ガスを検知できることを確認した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、MOSダイオード型センサの試作ならびに250℃でガス検知能が確認できたことはは評価できる。一方、技術移転の観点からは、FET型センサの試作と特性評価はまだできていないので、技術的課題を明確にすることが望まれる。今後は、記述されている計画に沿って、コーディネータと連携を取りながら、着実な進展を期待する。
希塩酸を用いる白金の低環境負荷型溶解プロセスの開発 独立行政法人産業技術総合研究所
粕谷亮
独立行政法人産業技術総合研究所
都築明博
低濃度の塩酸を用いて白金含有複合酸化物を完全に溶解させるため、希塩酸への塩化物の添加効果を検討した。白金含有複合酸化物は白金粉末とアルカリ金属塩を空気中で焼成することにより合成した。溶解試験の結果から、飽和量のCaCl2を希塩酸に添加することで、白金含有複合酸化物(Li2PtO3、Na2PtO3および(Na,Li)2PtO3固溶体)からの白金溶出速度が大幅に増大したことがわかった。Li2PtO3を用いた場合では、80℃で溶解処理を行うことにより、白金をほぼ完全に溶解できた。本プロセスでは劇物指定となる濃度よりも低濃度の塩酸を用いて白金を溶解できるため、王水等を用いる従来の溶解プロセスよりも安全性を大幅に向上できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、従来白金族金属の回収プロセスにおける溶解処理において腐食性、有毒性の高い酸化剤を用いる手法に対し、白金含有複合酸化物(Li2PtO3)に対して低濃度塩酸に塩化カルシウムを加えることにより80℃と温和な条件でほぼ完全に溶解処理可能な技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、安価なNa塩での白金複合酸化物の溶解性向上や白金以外のPd等に対する本技術の有効性などの技術的検討を進めるとともに特許出願し産学連携展開による安全で環境負荷が少なく低コストの白金族金属回収プロセスとして実用化が望まれる。今後は、共同研究企業とともに基礎研究を進めるとともに事業化に向けイニシャルコスト等のコストや将来の需要など総合的に検討し事業化されることが期待される。
光電界センサを用いた静電気計測技術の開発 独立行政法人産業技術総合研究所
菊永和也
本研究では、非近接で静電気を計測する技術を確立することを目標として、ポッケルス効果を用いた光電界センサを駆使することで、その高感度な検出技術の確立を行った。そこでは1cm×1cmの帯電体を振動させることにより誘起される100Hz程度の超低周波の電界において、アンテナ構造を最適化した光電界センサを用いることで、ノイズを低減させ、対象物から5cm以上離れた位置においても超低周波電界を検出することに成功した。これにより狭領域・非近接型静電気計測技術を確立することができた。今後は、光電界センサの更なる高感度化を行うことで遠方での静電気計測技術の確立を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、静電気検出誤差5%以下の計測技術開発の目標が達成できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、計画している高感度化されたセンサとそれを利用した静電気分布の高感度計測の実証を経て、実用化に進むことが望まれる。今後は、帯電状態の可視化と除電方法ヘのフィードバックが完成すれば、液晶用基体フィルム製造などで大きな市場を確保できることが期待されるので、企業との連携による早急な社会還元が期待される。
天然繊維と合成繊維を用いたクールビズに対応したハイブリッド生地の開発 あいち産業科学技術総合センター
池上大輔
あいち産業科学技術総合センター
齊藤秀夫
天然繊維と合成繊維を交撚させて作成した糸を緯糸として織り込んだ二重織り組織の生地を作成した。作成した生地の目付、厚さ、通気性、透湿性、接触冷温感、遮蔽性(防透け性)の評価試験を行った結果、いずれもほぼ目標値の値を達成することができた。しかし、遮蔽性(防透け性)では、ブランク生地との差がなかったことから交撚糸を用いたことによる効果は得られなかった点が課題である。今後は、淡色の生地を作成した場合の防透け性や、その他吸水性や風合い特性などの評価試験を行っていき、作成した生地の機能性を更に検討していきたい。また、得られた成果を講習会、学会、展示会などで公表していき、地域の企業の技術移転に貢献していきたい。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、天然繊維と合成繊維のハイブリッド生地13種類を比較検討したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、遮蔽性の改良に淡色の生地を用いる理由を明確にし、ヒトの感性に係る評価も含め具体的で定量的な評価を加えるなどでの実用化が望まれる。今後は、繊維の特性に限らず糸と布の構造や特性にも着目した系統的な検討を追加されることが期待される。
バイオポリウレタンを用いた天然繊維織物強化樹脂(NFRP)の開発 あいち産業科学技術総合センター
伊東寛明
あいち産業科学技術総合センター
吉村裕
生活用品、輸送車両、建築材料等において広く活用されるガラス繊維強化樹脂(GFRP)は不燃物であるため処理しやすいNFRPが注目を浴びているが、現行の熱可塑性樹脂/天然繊維系NFRPは、天然繊維や樹脂の劣化により脆化や老化する問題がある。本研究では、二液硬化性樹脂であるバイオポリウレタンを開発することで、熱プレスの低温成形による天然繊維の熱劣化対策を検討した。その結果、成形温度110℃成形時間10分でNFRPを熱プレス成形することができた。また、現行のNFRPは天然繊維の使用しており強度不足の問題があるが、本研究では、天然繊維で織られた天然繊維織物を使用して、繊維含有率を68.4%まで高めたことにより、引張強さ86.4MPa、アイゾット衝撃値25.1J/mという強固なNFRPを作製することができた。さらに、耐候性試験200時間前後の引張強さとアイゾット衝撃値を比較したところ、物性保持率92%以上と耐候性にも優れることが確認できた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標とした機械的強度、耐候性などを持つバイオポリウレタンを合成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、天然繊維やバイオポリマーに含まれる不純物や水分の品質などへの影響の把握と管理の確立などでの実用化が望まれる。今後は、特許出願を急ぎ、新たなニーズや技術課題に取組むためにも企業との連携を検討されることが期待される。
MEMS熱絶縁技術による波長選択赤外光源の高効率化 豊田工業大学
佐々木実
特定波長を高効率で出射する熱型赤外光源を実現する上で重要な、高温部から周囲への熱伝導損失を最小に改良したマイクロヒータを試作した。薄膜化と大面積化を基本とするが、機械強度が減少する。文献では一辺0.5-1mmのデバイスが多いが、内径2.5から外径5.4mmの薄膜領域で中心部が高温となるマイクロヒータが製作できた。電気接続用の銀ペースト処理155℃、30minで膜が割れ、赤外光源の評価には至らなかった。但し、基本デザインの有効性が確認でき、真空中動作実験の準備ができた。熱膨張率が等しいSi薄膜デバイスを試作中である。並行して、過去のデータをまとめることで得た知見を特許出願し、学会等への発表も進めた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、同心円構造を基本とし、中心に赤外線出射開口、周辺にマイクロヒータによる高温部、さらに周辺部に熱絶縁性の高い自立したSiN薄膜を持つマイクロヒータを試作しており、当初の目標は達成され、特許申請も行われていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、今回実施できなかったマイクロヒータ駆動と赤外光源の特性評価を早急に実施し、実用化開発に進むことが望まれる。今後は、企業との共同研究開発体制も整備されているようなので、早急な技術移転がが期待される。
広ダイナミック磁界センサの開発と電気自動車用電流センサへの応用 豊橋技術科学大学
高木宏幸
豊橋技術科学大学
白川正知
磁磁気飽和状態で高い磁界感度を持つスピン波に着目し、磁性フォトニック結晶をスピン波デバイスへと応用させ、高磁界感度と広ダイナミックレンジを持つマグノニック結晶磁界センサの開発と電流センサへの応用を検討した。本成果として、高磁界感度のマグノニック結晶の設計方法と作成方法を確立するとともに、非接触型の広ダイナミックレンジの磁界および電流センサへの応用の可能性を得た。今後は本成果をもとに、実用化に向けてより実際の状況に近い段階での研究開発を実施して行く予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、磁気飽和状態で高い磁界感度を持つスピン波に着目し、SN比を改善する効果のあることを示した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、特性改善に向けて、トランジューサ構造の最適設計を早めに着手することが望まれる。今後は、実用化のための研究開発と基礎研究について、産学連携を推進して、早期の技術移転と共に、デバイス構造に関わる基本特許の取得を併行して進めることが期待される。
省力、高機能性の種子・肥料入り水溶性テープの開発 豊橋技術科学大学
三枝正彦
豊橋技術科学大学
生田始
我が国の園芸土壌、とりわけ施設園芸土壌では硝酸態窒素やリン酸、塩基類が集積し、収穫物の硝酸集積が著しい。またホウレンソウをはじめとする野菜の栽培では間引き作業にかかる労力が大きい。これまでの研究でアンモニア系肥効調節型肥料を接触施用すれば、人の健康に関わるホウレンソウの硝酸含量や蓚酸含量が低減し、逆にビタミンC(VC)が向上することが明らかにされている。そこで近年開発された水溶性シードテープを用いて、ホウレンソウやレタス、コマツナ、ハツカダイコンの肥料、種子同位置設置シードテープを作成し、これら野菜栽培の大幅な省力化と生産物の硝酸含量の著しい低減、およびVC含量の向上の可能性を明らかにした。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、大部分の土壌で保管3か月後でも発芽率を維持している点については評価できる。一方、播種と施肥の組合せの最適化や安定な肥料の開発などのホウレンソウの発芽の改善に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、適用対象の拡大も含めて、テープ状以外の方式も検討されることが望まれる。
高効率高速空間光変調素子 中部大学
脇田紘一
中部大学
中津道憲
本素子は光の超並列性・超高速性を活かして光の波面を空間的に自由に制御するもので、既存素子を速度・駆動電圧で凌駕する新しい光情報処理システム実現を目指している。当初計画に比べ予期せぬ装置の故障(結晶成長装置と水素純化装置)及びポスドク研究員の急な帰国で、高純度エピ層が枯渇して素子作製に支障をきたしたため、結晶性評価用の半絶縁性基板上に形成されたエピ層を流用し、これに直接ショットキー電極、アース電極を形成して基本性能を調べた。その結果、残留不純物は故障以前のレベル1013cm-3台に戻り、空乏層厚はゼロVで数µm、10Vで数10µmとなり、十分な消光比の得られるレベルであることが判明した。作製素子の容量測定から応答速度を計算し、所期の値となっていることを確認した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、装置トラブルにもかかわらず、素子を試作し、基本性能である駆動電圧と、応答速度の値を見積もった点は評価できる。一方、試作が可能な素子構造において、実験的に得られる性能を示し、問題点の考察に向けた技術的な検討やデータの積み上げが必要と思われる。今後は、原理を明確にし、さらにその応用展開の可能性を明らかにするための基礎的な研究の継続が望まれる。
高性能アルミ電解コンデンサの開発に向けた新規多塩基酸の創成 三重大学
清水真
三重大学
横森万
アルミ電解コンデンサの最も重要な構成要素は電解質であり、中でも電解質として用いられるカルボン酸の特性でコンデンサ性能が大きく変わり、その構造が高性能化へのポイントとなっている。本研究では、選択的有機変換反応を駆使することにより多様な多塩基酸類を新たに創成し、業界の求める耐電圧650V以上の高性能・高耐久性アルミ電解コンデンサ開発を図った。その結果、カルボン酸α位にアルキル置換基を有する二、三、四塩基酸などの多塩基酸の一般的合成法を開発できた。また、不純物としてしばしば問題となる含ハロゲン化合物の簡便な除去法も開発できた。今回合成したエーテルを有する二および三塩基酸は、耐電圧では標準物質に若干劣ったが、耐熱性では極めて有望な化合物であることを示す事ができた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、アルミ電解コンデンサの性能向上において、多塩基酸さらにそのα位側鎖に着目し、得られた電解液での性能評価を行っている点は評価できる。一方、耐熱性では既存の系を上回っている分、シンチレーション発生電圧も既存の系を超えるための工夫が望まれる。今後は、計画された項目で未実施のものがあるので、結果を確認することが望まれる。
ケイ化マグネシウム熱電変換素子作製のための簡易な反応焼結手法の開発 三重県工業研究所
山本佳嗣
三重県工業研究所
米川徹
熱電変換材料として期待されるケイ化マグネシウムについて、高価な高真空装置等を用いることなく、従来の窯業用設備を転用した簡易な合成手法により緻密な焼結体を作製することを試みた。グローブボックスを用いてAr雰囲気下で坩堝を封止することにより、坩堝内を不活性状態として合成、焼結を行うことを試みたが、封止強度が十分でなく、炉内を空気雰囲気とした場合では原料の酸化を抑えることができなかった。そこで炉内をもAr雰囲気としたところ、合成、焼結に成功し、冷却を非常にゆっくり行うことで緻密な焼結体が得られた。焼結体中には未反応Siが残留しており、これが材料の熱電特性を低下させていることが示唆された。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に高真空及びガス置換や、ガラス管封入を用いた反応焼結法によりケイ化マグネシウム焼結体を作製する手法において炉内をもAr雰囲気としている技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、窯業用電気炉での反応焼結によるケイ化マグネシウム作製で真正な物性発現を前提にした焼成条件の絞込みや、封止方法の改善をはかり、熱電特性を実用レベルに引き上げることによる実用化が望まれる。今後は、Ar以外の焼結雰囲気ガスや、Mgの蒸発を予期してその分過剰に加えて評価されることが期待される。
周波数変調信号ラべリングによる高速・低消費電力ルーティングシステムの開発 滋賀県立大学
岸根桂路
滋賀県立大学
安田昌司
周波数変調により付加情報をデータフレーム信号に重畳して送受信する伝送システムにおいて、受信部で変調信号(ラべリング信号)を抽出し、ラベリング信号に基づき経路選択動作(ルーティング)を実現するための復調回路設計と動作検証を実施した。 検証は、65nm-CMOSのモデルパラータを使用したシミュレーションと復調動作モデルによる数値計算により行った。 10Gb/sデータフレーム信号に対し、ルーティング切り替え速度:0.1μs、切り替え可能な経路(チャネル)数:10chでの実現目標に対し、切り替え速度:0.084μs以下、経路数:10ch以上の結果が得られた。今後は、実ボード上にシステムを実装して高速モードで動作させ、復調動作の限界をハードウェアで検証する。これら検討により、より広範なシステムに対応する回路開発への適用が可能となる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に周波数変調信号ラべリングによる高速・低消費電力ルーチングシステムのための復調回路設計と動作検証を回路シミュレータを用いて行い、当初目標を上回るルーチング切り替え速度とチャネル数を得ている技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、ラべリング信号検出に(既知の0/1交番連続信号を持つ)特定のデータシーケンスを必要とする点への改善や、複数チャネル間通信を行うルーティングシステム全体の評価を進めることにより実用化が望まれる。今後は、プロセッサを用いる従来のルーチング手法と比べて高速性、低消費電力性能などに関する定量的比較による本方式の優位性の実証が期待される。
微細藻類等の含水率の高い原料からの燃料製造プロセスの高度化 滋賀県立大学
小坂田潔
滋賀県立大学
安田昌司
本本研究は、微細藻類等の高含水原料からの脂肪酸メチルエステル製造において、過熱メタノール蒸気法で乾燥と油分抽出および反応を同時に行った場合に、水分が反応や燃料品質に及ぼす影響を実験により明らかとすることで、製造プロセスの高度化を行った。
その結果、水分はグリセリドの加水分解を促進し、反応流出液中のグリセリド類(トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド)の割合は減少するが、遊離脂肪酸が多く流出することが明らかとなった。このことから、本製造プロセスで高品質の燃料を製造するためには2段反応もしくは蒸留等が必要となること、原料とメタノール蒸気との接触効率の向上が課題となることがわかった。
当初目標とした成果が得られていない。中でも、熱力学に基く反応の予備検討結果やメタノールー水系の飽和蒸気圧など物理化学データからプロセスの技術的検討や評価が必要である。今後は、2段プロセスの研究を取進めることが望まれる。
ペプチド修飾シリカを用いた充填カラムの開発とレアメタルイオンの選択捕集システムへの応用 滋賀県立大学
谷本智史
滋賀県立大学
安田昌司
本研究の最終目的は、ペプチドで修飾したシリカ粒子を調製し、金属イオン選択捕集カラム充填剤とすることである。期間内には適応可能な金属イオン種とペプチド種の組み合わせについて検討し、選択捕集の可能性を探ることを主たる目的とした。
ペプチドとしてポリグルタミン酸とポリリジンを選び、それぞれのペプチド修飾シリカ粒子を作製し、金属イオン水溶液からの捕集実験を実施した。AuとPdの混合系での捕集実験を実施したところ、ペプチド修飾シリカ粒子が金イオンの選択捕集に適用できることがわかった。結果を速度論的に解析した結果、金とパラジウムの吸着速度の違いを明らかにできた。また、捕集金属の脱着についても検討した。ポリグルタミン酸で白金を捕集する系での高効率な脱着性能を見出した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、金属イオンとペプチドの組合せで、複数の金属イオンの混合溶液からの選択的捕集と濃縮率の向上の可能性を検証したことについては評価できる。一方、実用化に繋がる具体的な目標設定に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、ペプチド修飾シリカ粒子による貴金属の分離機構を分子論的に明らかにすることも望まれる。
白色LED照明下におけるCe3+添加ガーネット残光蛍光体の開発 京都大学
上田純平
京都大学
園部太郎
残光輝度が高く、かつ、残光時間が長い、青色蓄光可能な長残光セラミックス蛍光体の開発に成功した。近年、紫外線や紫光を全く含まない白色LED(青色LED+可視蛍光体)が、その長期安定性、省エネルギー、高い発光量子効率などの特長から、室内照明として、蛍光灯を置き換えつつあるため、白色LED蓄光可能かどうか、つまり、青色光による蓄光が可能な長残光蛍光体の開発が求められている。我々は、青色励起可能で緑〜黄色の発光を示すCe3+添加Y3Al5-xGaxO12ガーネット蛍光体に着目し、残光特性の付加とその特性向上を目指した。まず、青色蓄光を可能にするため、Ce3+の最低5d励起準位とホスト伝導帯の相対エネルギー位置関係を、ホスト組成のGaを調整することによって、近づけて、青色励起による伝導帯への電子移動を可能にした。次に、室温で、最適な残光を実現するために、0.65eV程度のトラップ深さを持つ共ドーパントの最適化を行った。この最適化によって、新規青色蓄光可能な高輝度緑色長残光蛍光体(Y3Al2Ga3O12:Ce3+-Cr3+)を見出し、特許出願も行った。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、バンドギャップやトラップ準位のエネルギーレベルを調製することによって所望の特性を有する長残光蛍光体が得られるとの考察に基づき、材料設計戦略を構築し、実証したことは評価できる。
一方、技術移転の観点からは、特許出願もされており更なる材料開発により白色 LED照明下における避難用標識用の可視長残光蛍光体などでの実用化が望まれる。今後は、共添加材の効果について系統的な研究を行い材料設計指針が得られ実用化に向け研究が加速されることが期待される。
マイクロリアクターを用いたsp3炭素-リチウム結合生成法の開発 京都大学
永木愛一郎
京都大学
宮井均
フローマイクロリアクターを用いたsp3炭素−リチウム結合の選択的生成ならびに反応のための精密制御法の開発により、「グリーンイノベーション」分野の革新的製造プロセス技術への新展開を図り、sp3炭素−リチウム結合を有する不安定有機リチウム種として、これまで選択的発生が不可能とされた各種ベンジルリチウムを鍵中間体とする新規なフロー分子変換反応プロセスの開発に成功した。今後も本研究を継続するとともに、企業との実用化研究開発に展開することにより、「革新的フローマイクロ製造プロセス技術」を基軸とする「活気ある持続可能な社会の構築」への貢献を図る。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、通常の方法では発生させることができないアルキルリチウム種を効率的に発生させ、炭素−炭素結合形成へ収率良く利用できる技術を考案したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、現在の技術を大規模化するリアクターの開発を進めるなどして、実用化を進めることが望まれる。今後は、有機合成化学の分野に大きく貢献することができ、社会還元につながる可能性は大きい課題であるので、開発した技術を利用することに興味をもつ企業との共同研究を行い、社会還元につなげることが期待される。
傾斜機能を利用した水素ガスシール用天然ゴムナノコンポジットの創生 京都工芸繊維大学
池田裕子
京都工芸繊維大学
神谷靖雄
天然ゴムラテックスを用いて、シリカ充てん量に傾斜をつけたパーオキサイド架橋in situシリカ充てん天然ゴムフィルムの作製を行った。ゴム粒子周りへの選択的シリカ粒子導入とシリカ粒子が形成するフィラーネットワーク類似構造の構築に成功した。シール材としての硬度を上げるための高含量傾斜化in situシリカ充てんも達成できて、研究目標の階層構造を有するシリカ系ナノコンポジット天然ゴム材料を作製することができた。力学的性質に関してもシール材として活用できるコンポジットゴムが得られた。しかし、実際の水素供給システム用に展開可能な水素シールゴム材料の創生には、高含量シリカ導入や高圧下での安定性評価が必要であり、本研究で得られた知見に加えてさらなる材料設計が必要である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、水素ガスのシール材の開発には到らなかったが、ゴム表面にシリカをコートすることでゴムの水素透過性と耐熱性を向上させたことは評価できる。一方、ブチルアミンでの反応条件の検討など、シリカ含量が高く水素透過性が低いゴムシール材の作製に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、水素透過性と耐熱性が向上したゴム材料としての実用化も検討されることが望まれる。
焼酎粕を培地として増殖し化成品中間体であるプトレッシンを菌体外に生産する大腸菌の育種 京都工芸繊維大学
鈴木秀之
京都工芸繊維大学
神谷靖雄
lacIプロモーター下流にcitT遺伝子を持つプラスミドを導入した大腸菌株は、焼酎粕培地に生育し、培地中に存在した13.4 mMのクエン酸は、菌の増殖とともに減少し、培養開始10時間後には、ほぼ全て消費された。一方、枯草菌のエンドα-1,6-グルカナーゼ遺伝子malLをクローニングし、大腸菌の細胞質内で発現させた。この株の無細胞抽出液は、イソマルトオリゴ糖を分解しグルコースを生成した。枯草菌はイソマルトオリゴ糖を単一C源とする培地に生育したが、上記の組換え株は、生育しなかった。これは大腸菌が、イソマルトオリゴ糖を取り込めないためと判断した。そこで、MalLを菌体表面に提示することを試みた。さらに、ポリアミン代謝系遺伝子を改変した大腸菌株を作成し、M9ガラクトース最少培地にピリドキシン塩酸塩を添加して培養したところ0.2 g/Lのプトレッシンが菌体外に得られた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、育種した大腸菌を用い好気条件でクエン酸の代謝に成功したことについては評価できる。一方、当初の目的物プトレッシンと代替としたカダベリンの生産検討の妥当性に関する机上検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、焼酎粕処理や有用化成品中間体の生産など環境保全や産業を意識した研究を進めるのであれば、研究室用微生物だけではなく現場に即した実用微生物の使用も検討されることが望まれる。
天然物酵素反応における水ナノ分散の実用化研究 京都市産業技術研究所
橘洋一
京都市産業技術研究所
北川和男
天然漆の硬化に必要な主要成分を抽出した酵素反応型塗料を用いて、屋外用塗料としての実用化研究を行った。これまでの屋外使用での問題点であった光沢の減少に対して、塗料中に含まれる水の分散をナノレベルで制御することにより、非常に高い光沢を保持させることができた。また、促進耐候性試験を行い、実用化への検討を行うと同時に、光沢・膜厚の測定及び塗膜の硬度測定を行い、データの相関をとった。試験初期において、天然漆と比較し今回水のナノ分散を制御した酵素反応型塗料は非常に高い光沢であった。一方、時間の経過と共に、光沢度の減少が見られるという、当初の想定外の問題点が新たに見出された。この点については、ラジカル開始剤などの乾燥(硬化に相当する)促進添加剤を加えるなど塗膜の乾燥を十分に行うことでクリアできる見込みであり、研究をさらに推し進めることによって、酵素反応型塗料の実用化が達成できると考えている。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、天然漆を屋外用塗料として実用化する際の問題点であった光沢の減少に対して、硬化速度に着目し塗料中の水分の分散をナノレベルで制御することで解決できることを示したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、工程の簡素化と耐久性の両立など、コストと性能を意識した実用化が望まれる。今後は、自然に優しいとの訴求点だけでは利用範囲が限定されるので、塗料としての高性能化を連携企業と取進めることが期待される。
固体試料直接ICP分析法のレーザーアブレーションによる高度化技術の開発 京都市産業技術研究所
南秀明
京都市産業技術研究所
北川和男
材料分析において、前処理を必要としない固体試料直接分析法が求められている。そこで、レーザーアブレーションにより発生した微粒子をICP発光分析装置に直接導入する分析法に関して、分析精度「併行標準偏差」の向上を目指し、レーザーアブレーション条件の検討を行った。その結果、レーザーアブレーション条件(照射径150μm、走査速度:50μm/s、レーザー出力:50%、パルス周期:20Hz、アブレーションパターン:矩形ライン)において、併行標準偏差が小さくなることを確認した。この条件で銅合金試料を分析したところ、分析面積:1mm角、分析深さ:0.5μmで、Cd10ppm、Pb400ppm、Cr200ppm濃度レベルの分析だけでなく、主成分Cu、Zn、微量成分Fe、Ni、Snの分析も可能であった。今後は、本課題で明らかになった微小面積、浅い分析深さの利点を生かし、各種表面処理品などの局所分析の検討を進める。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、今後の材料開発等において期待される簡便で汎用性のある主成分から微量成分まで定量可能な分析技術としてICP分析法とレーザーアブレーションを組み合わせ固体試料の解析技術が開発できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許出願を行うとともに様々な金属を含んだ系での分析条件の最適化や他の分析手法との精度比較などを行い汎用性のある分析技術の確立が望まれる。今後は、分析機器メーカー等との積極的な連携により実用化が加速されることが期待される。
バッファ層が不要のCu(In,Ga)Se2薄膜太陽電池の開発 立命館大学
峯元高志
立命館大学
安川竜二
Cu(In,Ga)Se2 太陽電池ではCdSバッファ層とZnO窓層が用いられている。プロセス簡略化からp型のCu(In,Ga)Se2の上に直接、n型の透明導電膜を形成することが望ましい。我々は新規な透明導電膜としてスパッタ成膜のZnO1-xSx:Al(x≦0.15)を提案した。xを変化させたZnO1-xSx:Al透明導電膜を用いてバッファフリーCu(In,Ga)Se2太陽電池を作製した。x=0.10 の時にはCdSバッファを有する太陽電池の変換効率12.4%に対して、バッファフリーの太陽電池の変換効率11.1%を達成した。CdSバッファを有するセルに対して相対値で90%程度の効率が得られた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもスパッタ成膜のZnO0.9S0.1:Alを透明導電膜としてを用いた場合に従来のCdSバッファ層を有するCIGS(Cu(In,Ga)Se2)太陽電池の90%の効率である11.1%を達成したことについては評価できる。一方、バッファーフリー化の障害となる透明電極/CIGS層の界面不整合の生成メカニズムを材料科学的に検討し、それに基く不整合密度低減に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、スパッタリング条件の最適化にとどまらずカソード構造など装置面からの改善提案も積極的に進めることが望まれる。
リチウム内包フラーレンアニオンを応用した高効率有機太陽電池の探索 大阪大学
小久保研
東北大学
山口一良
本研究では、最終段階の1つを除き、3つの目標について概ね達成することができた。リチウムイオン内包フラーレンラジカルアニオンの物性評価やドナー部位連結型新規リチウムイオン内包フラーレン誘導体2種類の合成に成功し、1種類については構造同定の分析もきちんと行うことができた。これらの成果は有機太陽電池デバイスの実用化に向けた知見の一つとして、当該分野に貢献するものと思われる。これにより、分子レベルでの分子内電荷移動錯体形成ならびにその光励起による安定な電荷分離状態が得られ、有機太陽電池デバイスの光変換効率の向上が期待される。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、リチウム内包フラーレンがドナー性芳香族溶媒分子と電荷移動錯体を形成することを見出したことについては評価できる。一方、高価格の原料を使いこなすだけの、デバイスとしての評価検討や誘導体の分子設計に係るデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、センサーなど機能面での新たな展開も検討されることが望まれる。
ガスハイドレートナノ反応場を利用した高効率なアルコール類合成法の開発 大阪大学
谷篤史
大阪大学
松村晃
微小粒径のガスハイドレートを高効率かつ大量に生成し、「ガスハイドレートナノ反応場を利用したアルコール類合成法」の収率向上による産業応用への魅力を高めるため、超音波霧化法を用いた微小粒径のメタンハイドレート生成装置の開発を行った。高圧力容器内で使用可能な超音波振動子を選定し、組み込み容器を作製した。高圧ガスの下でガスのリークなく超音波振動子を作動させることに成功した。一方、大気圧に比べ噴霧量が高圧力下で減少することが明らかとなった。高効率なガスハイドレートの合成を高圧下で行うためには、その圧力環境下での噴霧量を増やすための技術開発が必要であることがわかった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、紫外光を用いてメタンハイドレートからメタノールを得る技術の問題点を明確にしたことについては評価できる。一方、エンジニアリング会社と協力し、プロセスシミュレーターを用いたメタンの水溶解度の温度と圧力との依存性データの積み上げや、既有の超音波発信機の微粒子発生条件でのメタノール生成量と微粒子外表面積・メタン溶解度との相関に係る技術的検討が必要と思われる。今後は、超音波発信機の設置場所も検討すると共に、積み上げたデータに基くメタノールの生成機構を科学的に解明することが望まれる。
メタルフリー光触媒による有機化合物のクリーン脱酸素法の開発 大阪大学
白石康浩
大阪大学
山近洋
エポキシドなどの含酸素化合物を脱酸素する反応は、重要な官能基変換反応である。ところが、これらの反応は、高温・高圧の過酷な反応条件、ならびに貴金属触媒が不可欠であった。本課題では、常温・常圧下で脱酸素を進行させる光触媒プロセスを開発した。我々は、ルチル型二酸化チタン(TiO2)をエポキシドを含むアルコールに懸濁させて紫外光を照射すると、アルコールを還元剤として、対応するアルケン類が高効率かつ選択的に生成することを明らかにした。この反応では、ルチルTiO2表面の酸素欠陥サイトが脱酸素活性サイトとなる。表面Ti3+種からエポキシドへの電子移動により、オキシラン環の開裂を経てアルケンが生成する。この際、表面Ti種は酸化されるが、TiO2の光励起により、アルコールを電子源として表面Ti種が再生される。今後は、触媒の改良により量子収率の向上を図るほか、種々の含酸素化合物(ケトン、エステル)の脱酸素反応への応用を図る。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ルチル型TiO2への紫外光照射によるアルコールを還元剤としたエポキシドの脱酸素反応により、常温・ 常圧下で高効率かつ選択的なアルケン合成を可能にする光触媒プロセスを開発するとともに反応メカニズムを明らかにしたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、基礎研究を継続することにより、光量子効率の高い可視光利用プロセスの実現に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、基礎研究の継続的推進と進展が望まれる。
寄生植物の組織接続機能を活用するための研究 大阪府立大学
青木考
大阪府立大学
鈍寳宗彦
植物の間で寄生関係が成立する分子機構を接木技術効率化や樹木傷害治癒に活用することを目指し、2つのアプローチで研究を行なった。第一に、寄生部位で発現している遺伝子を高速シークエンサーで網羅的に明らかにし寄生成立関連遺伝子を候補化した。第二に、寄生植物から細胞外に分泌されているタンパク質の分析を試みた。当初レーザーマイクロダイセクション法を用いる予定であったが、寄生植物液体培養を用いる方法に変更し、培養液中のタンパク質取得に着手した。今後は、寄生関連遺伝子を5個程度に絞り込むこと、また寄主細胞存在下での細胞外タンパク質同定を行なうことで、細胞接続成立に関与する分子を明らかにしていく。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、寄生植物の寄生メカニズムに着眼し、細胞内に転写物が蓄積しているのを見出していることについては評価できる。一方、3種類の寄生系での遺伝子解析やタンパク質の特定に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、遺伝子の解析を終えた段階で知財権取得の検討をされることが望まれる。
高活性有機溶媒耐性プロテアーゼの活性制御法の開発 大阪府立大学
荻野博康
大阪府立大学
亀井政之
有機溶媒耐性プロテアーゼは水溶液中だけでなく、有機溶媒存在下でも高い活性と安定性を有している。一方、プロテアーゼはタンパク質であるため、高活性を有するプロテアーゼは自己分解を生じやすい。本研究では、PST-01プロテアーゼから構造安定性に寄与するカルシウムイオンを除去せずに、活性発現に必要な亜鉛イオンのみを除去する方法の開発に成功した。また、亜鉛イオンを除去することにより、活性は喪失するが、構造変化はほとんどなく、亜鉛イオンを除去したPST-01プロテアーゼは常温での安定性が向上した。また、亜鉛イオンを除去したPST-01プロテアーゼに再度、亜鉛イオンを配位する方法も確立した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、比較的に簡単な方法でPST-01プロテアーゼのアポ酵素とホロ酵素が調整する技術は評価できる。一方、技術移転の観点からは、実際のオリゴペプチドの合成でも安定的に活性が保たれるかどうかを証明するなどでの実用化が望まれる。今後は、当該酵素がペプチドやポリペプチドの合成に優位に利用できることを実証することが期待される。
難分解繊維とされてきた植物二次細胞壁を利用できる細胞壁分解可溶化酵素を生産する微生物の探索 大阪府立大学
笠井尚哉
大阪府立大学
西村紀之
大豆、馬鈴薯、りんごの絞り粕が難分解性とされる原因に二次細胞壁(以下2CWと略称)がある。そこで、2CWのみの分離調製を行い、検索を試みたが当初想定よりはるかに透明度が高く、可溶化目視は困難を極めた。そこで、実用化を目指して、泡盛などの発酵食品由来の登録麹菌計31株による顕微鏡を用いた可溶化菌検索に変更し実施した。その結果、大豆・りんごは大豆2CW液体培地にて未報告の目的可溶化酵素生産麹菌を見出した。また、馬鈴薯2CWに対しても従来報告の可溶化酵素製剤よりも顕著に可溶化できる麹菌を見出した。方法変更はあったが目標は達成でき、今回、新規に見出した麹菌による新しい展開が期待される。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、調整した二次細胞壁の位相差顕微鏡観察により、登録済みの31菌株のコウジカビから幸運にも二次細胞壁の分解株を単離できたことについては評価できる。一方、分解酵素の実態や特性ならびに分解生成物の解明に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、同種にも拘らず分解活性が認められない株が存在することや分解機能の由来についても検討することが望まれる。
第3の炭素素材「ねじれたグラフェンシート」の開発 大阪府立大学
神川憲
大阪府立大学
阿部敏郎
本研究課題では、「ねじれたグラフェンシート」の開発を行った。平面分子であるジベンゾクリセンの末端にヘリセンユニットを導入することにより、「ねじれ」を付加することができる。このような分子の設計を目的として検討を行った結果、パラジウム触媒を用いたカップリング反応を用いることで、目的の化合物を合成することに成功した。また、得られた化合物は、当初の想定どおり有機溶媒に対する溶解性も良好であった。そこで現在、X線結晶解析を行い、より緻密な化合物の構造解析を行うべく、検討を重ねている。また、今後は、ねじれた炭素素材の持つ特性を開発することを目的として、企業や他大学との連携を模索していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ねじれた新規なグラフェンシートの合成と評価に関する研究であり、複数のグラフェンシートが合成され、溶解性の向上などの物性が明らかにされたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、今回の研究期間では合成できる種類は限られ、材料としての物性評価は十分におこなわれていないので、さらなる研究の進展が望まれる。今後は、次世代の炭素材料を提供する社会的意義は大きいと考えられるので、分子磁性体や電磁波吸収体など研究目標の焦点を絞った、研究の発展が期待される。
構造・組成を精密制御したフェノール樹脂由来ナノカーボン材料によるキャパシタの大容量・長寿命化 大阪府立大学
齊藤丈i
大阪府立大学
赤木与志郎
フェノール樹脂とフラン樹脂の球状粒子(粒径10 μm)を原料とし、窒素雰囲気中で1 ℃/min、1時間、600 ℃で炭化した。その後、30分、800度でKOHによる賦活を施して、活性炭を作製した。ラマン散乱法により1590 cm―1付近に見られるピーク(G band)と、1350 cm―1付近に見られるピーク(D band)の強度比を比較したところ、炭化・賦活による活性炭の結晶性(G/D比)の低下に伴い、比表面積SBETが増大した。電流密度20 mA/gで測定した面積比容量Ca(= Cm / SBET)[μF/cm2]は、フラン樹脂由来活性炭の面積比容量が他と比べ3倍程度大きく、炭化後のフラン樹脂由来活性炭ではD bandにピークが現れており、より活性化された表面を有し、大きな面積比容量になる可能性が示された。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、電気二重層キャパシタ用新規材料としてフェノール樹脂由来ナノカーボン材料を開発し、その構造と充放電特性との関連を明らかにしたことについては評価できる。一方、大容量キャパシタ用材料として実用化に向けては、フラン樹脂などの新たな樹脂材料、炭化や賦活化条件などの技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
フラボノイドによるプライミングを用いた優良根粒菌の優先感染技術の開発 大阪府立大学
大門弘幸
大阪府立大学
下田忠久
マメ科作物と根粒菌による窒素固定を作物生産に効率的に利用するには、変動する環境においても、根粒が安定的に着生する技術が必要である。本研究では、エンドウ、ダイズ、ルーピンを供試して、根粒着生遺伝子の発現を活性化するフラボノイドで前培養(プライミング)した根粒菌の接種による根粒形成の促進を試みた。エンドウとダイズでは、ナリンゲニンとゲニスチンによるプライミングで根粒が早期に形成された。ルーピンでは、ルテオリンによる前培養は菌の増殖をやや促進した。エンドウでは二次側根の形成と根粒数にトレードオフの関係があると推察された。接種技術として炭に菌培養液を噴霧して接種したが、その効果の有無については、さらなる検証が必要である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、イソフラボノイドによる根粒着生の促進を図る取組みについては評価できる。一方、根粒菌とマメ科植物、土壌環境の相互関係を解明するための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、炭を利用する技術として育て上げることが望まれる。
無線LANマルチキャストにおける低消費電力型マルチメディア配信基盤 大阪府立大学
谷川陽祐
大阪府立大学
田中政行
本研究開発では、無線LANマルチキャストにおいて低い伝送レートしか使用できない端末局が存在する場合、全端末局に低レートで伝送する現状に対し、各パケットを高レートと低レートで複数回並行伝送して高レート受信可能な端末局の送受信機稼働期間を短縮させることで、端末局全体での総消費電力量を削減した。高レート値について、値の引き上げによる送受信機稼働期間の短縮化と引き下げによる高レート受信可能端末局数の増加に関するトレードオフを考慮しながら制御することで、高品位な伝送を行いながら総消費電力量を削減できることを示した。今後は複数マルチキャストの混在環境や通信が行われていない期間における端末局のスリープ制御を組み合わせることで、さらなる省電力化を行う予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に単一パケットフローを高レートと低レートでシーケンシャルに伝送して高レート受信可能な端末局の送受信機稼働期間を短縮させることによる省電力な無線LANマルチキャスト装置用伝送プロトコルに関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、当初目標である消費電力の1/10化に向けた更なる検討や、企業との連携による実用面からの制御方式の評価を進められての実用化が望まれる。今後は、スリープ制御のみならず、さらなる省電力化に向けた発展研究に取り組んで頂くことが期待される。
高エネルギーメカノ効果を利用したメカノ水熱ハイブリッドプロセスの開発と応用 大阪府立大学
中平敦
大阪府立大学
濱田糾
従前のプロセスよりも高効率で短時間に新規なナノ材料を省エネルギープロセスにて合成するため、新規水熱合成法にて従来よりも環境低負荷な条件およびプロセスで合成することを目的とした。研究は、ミクロポーラス材料のゼオライトおよび層状化合物ナノセラミックスを対象に実験を進めた。特にメカノケミカル効果を付与したメカノ水熱ハイブリッドプロセスにてナノセラミックスが可能となり、これにより廃棄物減減容化、CO2削減、非有機溶媒での合成など環境負荷を低減できる条件での合成プロセスが実現でき、併せて反応制御や反応時間などの短縮、コスト低減、歩留まり収率の向上、廃棄物低減など実用化に向け期待が大である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、水熱合成法にメカノケミカル効果を付与する新しいプロセスと装置の開発を目標としたが、A型ゼオライトを選択して基礎的な検討を行い、ほぼ目標を達成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、水熱合成とメカノケミカル法を組み合わせたセラミックスの合成法及び装置の開発をターゲットとし、基礎的な成果は収められているので、次のステップとしての合成パラメータの確立、種々の材料への適用拡大、工業的製造へのスケールアップ等の検討に進み実用化されることが望まれる。今後は、本研究に興味を示す企業があるようなので、企業との共同研究により実用化を加速されることを期待される。
一点緊張係留型洋上風車の大振幅動揺の減揺法確立と浮体・係留系の最適化 大阪府立大学
二瓶泰範
大阪府立大学
井上隆
実施、及び明らかに出来た内容を以下に示す。(1)一点緊張係留型洋上風車の水槽試験を実施し、大振幅動揺現象(分数調和振動)の動揺量を明らかにした。(2)分数調和振動の解明に向けて係留系・浮体運動の連成モデル化を行った。大振幅動揺は係留索・浮体のSurge/Heave/Pitchの連成による同調現象、またはパラメトリック励振の一形態であることが明らかになった。(3)ブレードのピッチコントロールを考慮した動揺予測シミュレーションプログラムを構築した。Morison式とポテンシャル理論の併用による荷重推定法により波力値が説明可能であるということを明らかにした。(4)Mathieu型方程式から大振幅運動の動揺低減方法について明示した。(5) Spar、及びセミサブ浮体の最適化を実施した。但し係留と浮体の複合的な最適化に関しては今後の課題と言える。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に一点で緊張係留された浮体式洋上風車において大振幅動揺現象を解析し、動揺予測シミュレーションプログラムを開発している点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、次のステップとして係留と浮体との連成挙動の解析と研究開発目標を明確にされていることなどでの実用化が望まれる。今後は、増幅する大幅な動揺を抑止できるの動揺の限界値や波浪や風圧のレベルによる対策の体系化が期待される。
コロイド科学的手法による水素高生産性バイオフィルムの設計 大阪府立大学
野村俊之
大阪府立大学
稲池稔弘
消化発酵槽から単離した水素高生産性・高付着性菌CFPA-20株を、種々の材質・形状の担体に固定化し、回分式リアクターにより水素発酵試験を行った。担体材質はポリウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロンが菌体固定化に適しており、形状はスポンジが発酵効率の向上に適していた。バイオフィルム厚には上限があり、水素生成速度は0.6 L-H2/L-培養液/hで最大となった。また、安価なデンプン基質を用いても、グルコース基質と同程度の水素生産能が得られ、浮遊状態では発酵が起こらない高負荷条件においても固定化により発酵が可能となった。以上より、連続式リアクターや遺伝子組換えが今後の技術移転の課題として明らかとなった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、微生物を高密度に固定化する技術については評価できる。一方、固定化したバイオフィルムのどの部分が水素発生に寄与するかなどの技術的検討や大型化に向けたデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、本シーズを生かせる出口を絞り、そのニーズ側の意向を踏まえた技術検討を取進めることが望まれる。
温室効果ガス亜酸化窒素の効率的除去・再資源化法の確立 大阪府立大学
安田昌弘
大阪府立大学
井上隆
亜酸化窒素は炭酸ガスの310倍もの温室効果があり環境負荷が大きいが、有効な処理・再資源化方法が確立されていない。研究代表者が開発したNOxを吸着する担体には、亜酸化窒素も吸着する事実を見出したので、担体への亜酸化窒素の吸着実験を行った。種々の構造のゼオライトへの亜酸化窒素の吸着量を調べた結果、最高で0.002 kg-N2O/kg-担体の担体を得た。担体をステンレス製カラムに充填し、450度で加熱したところ、吸着した亜酸化窒素のほぼ全てが放出され、500度以上で加熱すると、窒素と水に分解された。アジピン酸製造プロセスで実証試験を行い、NO2ガスを含むガスでも亜酸化窒素を完全除去できることを確認した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、吸着量ベースでは当初の目標には達していないが、実ストリームからの窒素酸化物除去試験において技術移転の可能性を示したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、亜酸化窒素の効率的除去技術としての可能性が高く、吸着量の改善検討により、実用化に進むことが、望まれる。今後は、亜酸化窒素の安全な分解方法を目的とし、産学連携により、実用化のための技術開発がさらに進展することが期待される。
ダイズ内生ペプチドエリシターによる病虫害抵抗性と機能性の向上 大阪府立大学
山口夕
大阪府立大学
下田忠久
傷傷応答を起こさせない条件でのダイズ植物体へのペプチド投与方法を確立し、病害抵抗性に関わる遺伝子の発現レベルを解析したところ、抗菌活性のあるキチナーゼや、ファイトアレキシンであるグリセオリン合成に関わる遺伝子が誘導された。また、ダイズ落葉病菌への簡便な感染方法を確立して、ペプチド処理後にダイズ落葉病菌を感染させたところ、ダイズ落葉病菌の特徴的な病徴である茎内部の褐変化が抑えられた。これらのことから、内生ペプチドエリシターが、実際に病害抵抗性を向上させることが明らかとなった。また、ダイズの機能性成分であるグリセオリンの合成が活性化されている可能性が高まった。今後、内生ペプチドエリシター遺伝子を使った分子育種により、病害抵抗性と機能性の向上が実現できるか検討したい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもダイズの内生ペプチドエリシターによりダイズの病害虫抵抗性が誘導される可能性が判明した点は評価できる。一方、基礎実験の迅速化が求められる。今後は、最重要病害虫に対する抵抗性誘導を取り上げるなど、的を絞って、内生ペプチドエリシターを有効利用できる研究を推進することが望まれる。
電力パケット伝送に基づく分散制御型電力分配ネットワーク 大阪市立大学
杉山久佳
大阪市立大学
倉田昇
(目標1) 同期QoS技術における帯域テーブル形成法を基盤とする、送電容量テーブルの形成法。
(達成度)電力パケットの低損失な送電方式:直接中継方式の詳細を明らかにし、その運用の基盤となる送電容量テーブル形成法の基礎的な原理が明らかになったことにより、中程度の達成度と考える。
(今後の展開)双方向キャンセルを加えた、より詳細な送電容量テーブル形成法についてさらに検討する。
(目標2) 電力ルータにおける電力パケットの蓄積を不要とする、低損失ルーティングプロトコルの設計。
(達成度)目標とするルーティングプロトコルの設計に先立って、双方向キャンセル技術の詳細を明らかにし、同技術を含むネットワーク送電容量の評価を行った。中程度の達成度と考える。
(今後の展開)得られた送電容量を達成するルーティングプロトコルの設計を目指す。

概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に電力パケット伝送に基づく分散制御型電力分配ネットワークの実現に必要な低損失な送電方式:直接中継方式に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、双方向キャンセルを加えた、より詳細な送電容量テーブル形成法のほか、実用面からの課題の存在が予想されるため、既存電力ネットワークとの連携等について企業との共同技術開発などでの実用化が望まれる。今後重要となる小規模分散制御電力ネットワークシステムを支える基盤技術であり、長期的視野で基礎研究を続ける必要があると思われる。
新規フェントン触媒と水熱酸化法による有機ハロゲン化合物の高度処理 大阪市立大学
米谷紀嗣
大阪市立大学
田中豪太郎
本研究は優れた省エネルギー・省資源特性を有する有機ハロゲン化合物の水熱酸化処理装置の開発を目的としている。今回は、純チタン材質を用いた触媒充填型反応器を作製し、高酸化剤濃度条件下でクロロフェノール水溶液の長時間連続処理試験を実施した。その結果、チタン製反応器が実用上問題のない耐久性を有し、触媒も長時間高活性を維持することを明かにした。また、pHの影響について調査し、本技術がpH=3〜10の広範囲で利用可能であることを確認した。最後に、本技術の移転先を調査した結果、ダイオキシン等を含有する汚染地下水処理への適用が有望であると判断し、関連企業との具体的な連携を開始した。以上のとおり、当初の目標をほぼ達成することができた。今後は連携企業とともに汚染地下水処理の実証試験を行うことを計画している。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、高濃度の塩素系有害物質を含む少量排水の処理法として有効であることを明らかにした成果が顕著である。一方、技術移転の観点からは、装置のスケールアップ検討と共に前処理による有害物質の濃縮に係る検討などでの実用化が期待される。今後は、本技術の広報活動を通して適用範囲の拡大を継続されることが期待される。
鉄鋼スラグを出発原料に用いる陰イオン交換体の創製 関西大学
村山憲弘
関西大学
松井由樹
鉄鋼スラグを出発原料に用いて層状複水酸化物(LDHと略記)を製造する方法と、それを用いてヒ素やクロムなどの有害陰イオン種を除去・固定化する方法を開発することを目的として研究を行った。スラグ中のSiやFeなどの夾雑物を制御しながらCa-Al系LDHやMg-Al系LDHが製造できる可能性が見出され、そのポイントはスラグの浸出操作とLDH合成のpH制御にあることがわかった。スラグLDHを用いて希薄溶液からの有害陰イオン種の除去試験を行った結果より、排水基準値をクリアできる優れた陰イオン除去能を有することが示唆された。様々な組成を有するスラグから優れた能力を持つLDHを合成するための基礎的知見が得られた。今後は具体的な用途開発、例えば重金属の固定化能を併せ持つ土木資材としての利用方法を提案できるように研究開発を進めたい。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、鉄鋼スラグから酸浸出−共沈法による層状複水酸化物(LDH)の合成に関し、制御因子が明確になったことは評価できる。
一方、技術移転の観点からは、特許出願するとともに具体的な用途開発を進め、安価な有害イオンの除去剤などでの実用化が望まれる。
今後は、有害イオンの除去剤として具体的な除去能力を明確にし、用途開発されることが期待される。
高強度マグネシウムシリサイド熱電複合材料の開発 地方独立行政法人大阪市立工業研究所
谷淳一
地方独立行政法人大阪市立工業研究所
高田耕平
Mg2Siは脆性材料であり、熱電素子の実用化のためには重要な機械的特性を改善する必要がある。本課題では、微細なセラミックス粒子を分散させた新規なMg2Si複合材料を開発することで、機械的特性の改善を試みた。添加するセラミックス微粒子の種類、量、混合条件、焼結パラメータ等を最適化することで、Mg2Siの粒成長の抑制と第2相粒子の効果により、曲げ強度、硬度、破壊靭性値などの機械的特性の改善に成功した。また、セラミックス微粒子の添加と不純物ドーピングを同時に行うことで、Mg2Siの熱電特性(ZT=0.6)を維持しながら、曲げ強度を最大92.5 MPa(目標値:50 MPa以上)に向上させることに成功した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、微細なZrO2粒子をMg2Siに分散させることにより、熱電性能指数ZTは若干低下するものの、曲げ強度を当初の目標である50MPaを超える92MPaまで向上させていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、セラミックス微粒子の添加は、Mg2Si粒界での電気抵抗率の上昇により熱電特性の低下を引き起こしていることから、プロセシングの改良、添加物の粒径、量の最適化を今後の課題としており、さらなる改善による実用化が望まれる。今後は、熱電変換素子に応用する際には、ZT>1が条件となると思われ、Mg2Si系では、他元素ドープにより高いZTが得られることが報告されており、それらに対しての強度向上を確認し、実用化に進むことが期待される。
透明フレキシブルな有機人感センサの開発 神戸大学
石田謙司
神戸大学
大内権一郎
鉛フリー・稀少元素フリーな「透明有機人感センサ」の研究開発に挑戦した。本研究では、焦電材料として有機強誘電体、電極材として導電性高分子、基板として高分子フィルムを用いて、可視光領域には吸収特性がなく、赤外領域に吸収特性を持つ、透明な赤外線応答センサの研究開発に取り組んだ。μコンタクトプリント(CP)法にて作製したオール有機透明センサ素子において、可視光域での透過率70%、赤外域での吸収率90%@5umを達成し、目視にてほぼ透明化に成功した。黒体炉を用いて測定した放射赤外線への電圧応答感度として800V/W@0.2Hzを示し、μCP作製したオール有機透明赤外線センサの動作を確認することができた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標はほぼ達成されており、有機透明赤外線センサーの作製技術を見出した点が高く評価される。一方、技術移転の観点からは、技術移転に向けた用途開発と、技術課題である電極のパターニング等が解決されることが望まれる。今後は、電極を付けてモジュール化により、具体的な用途が探索されることが期待される。
DLC正極保護膜によるリチウムイオン電池高温サイクル特性改善 兵庫県立大学
岡好浩
兵庫県立大学
八束充保
リチウムイオン電池の正極表面に膜厚数nm のDLC 保護膜を形成することによって、高温サイクル特性を改善した。複雑な形状の複合体正極表面にもDLC 膜が形成できる成膜条件を確立し、均一に成膜できていることを確認した。DLC 保護膜を形成したLiNi0.5Mn1.5O4 正極を用いたハーフセルにおいて、動作温度55℃での高温サイクル評価を行い、DLC 保護膜により高温サイクル特性が改善していることがわかった。本研究の結果を受けて、リチウムイオン二次電池の高温耐久性に関する研究・開発がいっそう加速されることを期待する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、正極材料のDLC表面加工によりハーフセルでの繰り返し特性の向上を示したことについては評価できる。一方、DLCの加工条件と特性向上との相関やDLC膜の劣化に関する技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、コスト試算を含めた展望を明確にした上で研究開発計画を再立案することが望まれる。
マイクロ波照射による新規ナノバブル作成装置の開発〜高効率セシウム除去法の探索〜 兵庫県立大学
朝熊裕介
兵庫県立大学
八束充保
マイクロ波照射炉その場観察装置により、純水だけでなく、不純物を含む水溶液の表面張力をマイクロ波照射下および照射直後から観察でき、表面張力低下、安定化現象(非熱効果)を発見した。特に、塩を含む水溶液は、マイクロ波照射を照射することで、純水系より大きな非熱効果を示すことを示した。これは、マイクロ波照射により生成されたナノバブルはマイナスの電荷を帯びており、塩のプラスイオンが吸着することによってより安定化し、マイクロ波照射の履歴を残したと考えられる。今後の課題として、マイクロ波照射強度や時間の制御によるナノバブル生成量の定量化があげられる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、マイクロ波照射とナノバブル内表面の電荷集積効果などの減少について詳細な検討が可能な基礎データは一定程度集積されたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、目標とした放射性Csイオンの代替として、電荷数、質量の大きく異なるMg++等を実験に使用している、あるいはイオン吸着と回収法の確立等には研究が深まっていない等、いくつかの課題が残っているとともに、工業化に向けて解決するべき課題も多く有り、それらをクリアして実用化に進むことが望まれる。今後は、放射性物質回収現場で採用される可能性を持つ新しい技術として重要と考えられるので、実用化に向けた開発の進展が期待される。
調光制御薄膜における選択反射波長機能の開発 神戸市立工業高等専門学校
荻原昭文
公益財団法人新産業創造研究機構
山口寿一
太陽光中の熱として作用する赤外線を周囲温度によって自律的に弁別、遮断・透過させ自然エネルギーを直接有効利用可能な調光制御薄膜における選択反射波長機能の開発に取り組んだ。調光制御機能として重要な機能である室内に入射する太陽光の日射エネルギーの制御性能を70%以下に且つ、室外の景色が見える可視光の透過性能80%以上を達成するという数値目標を設定した。モノマーの種類及び添加量等の材料設計及び膜厚等のデバイス構造を検討して調光制御薄膜を作製した結果、調光性能として日射制御性能と可視光の透過性能の両立を達成した。今回の研究成果に基づき、省エネルギー化に重要となる太陽光輻射エネルギーの温度による制御性能のさらなる向上を図り、技術移転を目指す計画である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、日射制御と可視光透過の性能の目標値を達成し、本技術の実用化の可能性を示したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、モノマー添加などによる材料と構造設計の更なる検討などによる実用化への進展が望まれる。今後は、特許出願も検討し企業との共同研究を実現されることが期待される。
海洋性珪藻の環境浄化能を利用した海洋バイオリン鉱石生産システムの開発 関西学院大学
中島健介
関西学院大学
勝又隆
本研究では、海洋性珪藻類が有する高効率無機イオン輸送体を定常的に強化することにより、水質浄化能および物質生産能を高レベルで有する珪藻細胞作製技術を確立し、海洋性珪藻を用いた水中リン浄化および海洋バイオリン鉱石生産システムの開発に繋げることを目指した。水中リン浄化能を強化するため、モデル海洋性珪藻のゲノム上に存在する複数のリン酸輸送体候補遺伝子の発現量および細胞内局在解析を終え、これらを高発現させた珪藻細胞種の作出を行った。また、海洋バイオリン鉱石生産能の強化のため、珪藻細胞内で機能すると考えられるポリリン酸合成・分解酵素の探索、遺伝子の配列決定、発現量解析を終了した。当初目標とした能力には達していないものの最終目標へと繋がる技術基盤は確立できており、今後も、新たな遺伝子改変技術を施し、目的となる珪藻細胞種の作出を目指していく。 当初目標とした成果が得られていない。中でも、リン鉱石に代わるものとして光合成生物を活用するとの観点を活かし、リンの取り込みに係る工程の基礎解析や評価が必要である。今後は、遺伝子発現の解析やコードされるタンパク質の機能解析、遺伝子導入の技術のブラッシュアップと共に焦点を定めた検討を取進めることが望まれる。
バイオベース有機顔料の開発 和歌山県工業技術センター
森めぐみ
和歌山県工業技術センター
中本知伸
バイオマスである「米ぬか」から得られた「フェルラ酸」を原料とした「フロフラン誘導体」から「ジケトピロロピロール(以下、DPP誘導体と略す)」の合成を行い、有機顔料としての高い性能を確保した分子設計を行った。さらに得られたDPP誘導体の有機顔料としての評価(溶解性、鮮明性、耐候性)を行った。得られたDPP誘導体の溶解性はトルエンに対する溶解性1wt%未満を示し、赤色顔料における色相図において、色相角(h)30、彩度(C*)40以上を示したことから鮮明性の高い赤色であることを示唆した。また促進暴露試験における暴露時間144時間での色差(ΔE*ab)についても2以内を示すDPP誘導体が得られた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、米ぬかから得るフェルラ酸から、目標レベルの溶解性・鮮明性・耐候性を持つDPP誘導体を得たことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、詳細な性能評価や添加剤の検討などでの実用化が望まれる。今後は、塗料メーカなどの企業との連携をされることが期待される。
人と環境に優しいネコブセンチュウ防除法の確立 鳥取大学
河野強
鳥取大学
加藤優
本研究では、植物からネコブセンチュウの忌避物質と誘引物質を探索し、これらを単離して構造を決定すること、およびシミュレーション実験により本防除法の有効性を検証することを目的とした。研究の結果、忌避物質、誘引物質の単離に成功したが構造決定には至らなかった。また、シミュレーション実験により誘引物質がネコブセンチュウを効率的にトラップ植物の根に誘導することを立証した。本研究は70%程度の達成度である。今後は、忌避物質ならびに誘引物質の構造決定を速やかに行い、特許出願を行う。また、本防除法の有効性を圃場実験で立証する。加えて、忌避物質ならびに誘引物質の投与法を検討する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にネコブセンチュウに対して植物由来の誘引物質、忌避物質の単離ができ、防除への道筋を開いた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、シミュレーション実験でネコブセンチュウの忌避物質、誘引物質の効果を示すことができたが、より現場に近い形での実用化試験が行われることが望まれる。ネコブセンチュウなど土壌病害虫対策は施設園芸において最重要課題であり、今後、現場に還元できる技術の確立を早急に行うことが期待される。
キチン誘導体をバインダに用いる次世代蓄電池材料の開発 鳥取大学
斎本博之
鳥取大学
長島正明
重合性官能基を有するHMA-CM-キチンの負極材料に対する結着性を評価した。評価方法を変更したものの、活物質同士の結着性と集電体との結着評価を計画通り行った。その結果、HMA-CM-キチンは、想定した通り負極材料に対して強い結着性を示した。しかし、その結着性が強すぎて、バインダに不向きな負極材料表面への面吸着や凝集による電極の不均一化を起こすことが分かった。また、電極の不均一化により、良好な電気的特性は見込めなかったことから、電池性能評価には至らなかった。しかし、本プロジェクトでは、材料化学の視点からの簡便なバインダの結着性評価方法の確立に成功した。今後、それらと本プロジェクトで得られた知見を用いて天然高分子からのバインダのスクリーニングを行うことで、早期なイノベーション創出につなげられる成果が得られることが見込める。
当初目標とした成果が得られていない。中でも、リチウムイオン電池のバインダに求められる機能に見合う天然高分子を用いた技術的検討や評価が必要である。キチン・キトサンの分子構造からはバインダのような柔軟性を要求される用途には不向きと考えられるので、今後は、キチン・キトサンに関する技術蓄積は他の用途に展開することが望まれる。
新発想のフォルムを持ったアルミ押し出し『円形翼バタフライ風車』 鳥取大学
原豊
鳥取大学
和田肇
小型風車の低コスト化と性能向上を目標として、アルミの押出と曲げ加工によって製作した円形翼を回転軸に直接取付けた極めてシンプルな構造をもつ垂直軸風車を試作した。目標値の1つの起動風速3m/s以下はほぼ達成したが、風速11m/sで300Wの出力については、実測が11.3m/sで241Wと目標値には達しなかった。原因は風車と制御装置の不整合であることが判明し、実験値への理論フィッティングから推測した風車ロータの最大出力では目標値と同等程度の特性であることを示した。アルミ押出の円形翼は安価であるため、試作機の直径(約2m)を7.5m程度に大きくすることで、さらなる性能向上と低コスト化が期待できる見通しを得た。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に二重翼構造を有するバタフライ風車において、アルミの押し出しにより円形状の翼を構成し、風速11.3m/s時241Wを実測している技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、低風速での起動条件、通常利用環境での発電状況については、ある程度の成果は得られている一方、今回自然風の影響があるため、実験データにばらつきがあるとしているが、この影響を定量的に押さえておくことなどでの実用化が望まれる。今後は、風車の直径を大きくすることなどの提案がなされているが、大型化を目指すなら、定量的なコスト評価も併せて行い、その有益性を提示されることが期待される。
潜熱物質微細化分散型蓄熱材を用いる蓄熱システムの研究開発 米子工業高等専門学校
森田慎一
米子工業高等専門学校
足立新治
潜熱蓄熱の障害となる過冷却(液体の凝固点温度以下になっても凍結しない)現象を抑制し、より高い温度で潜熱蓄熱を完了する技術の確立が本研究の目的である。超音波印加による過冷却解放は、他の研究例で対象とされた1ml程度の水では効果が確認されているが、本研究開発で対象とするようなO/Wエマルション中の微小水滴(平均直径約7μm)にも効果があるか不明であった。過冷却解放のための超音波印加は、凝固潜熱蓄熱であるためエネルギー授与を最低限に抑制する必要がある。一方で目標を達成のためには、液体相から固体相へ変異するために十分なきっかけとなる超音波印加が求められる。本研究開発においては、潜熱蓄熱中に超音波を印加することにより過冷却解放実験を実施し、過冷却度を20K低減する当初の目標を達成する成果を得た。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、蓄熱材の基本である過冷却の低減の目標は達成されていることは評価できる。一方、過冷却の低減以外は定性的な説明であり、産学共同などへの展開のためには、蓄熱システムとしての性能アップの可能性を概算して数値的(定量的)に説明する必要があると思われる。今後は、さらに特性向上の可能性を追求し、産学連携による技術移転に進展することが望まれる。
放射性セシウムの輸送体が欠損した変異体イネの探索 島根大学
秋廣高志
島根大学
丹生晃隆
本研究の目的は、セシウム(Cs)輸送能を有するイネ輸送体遺伝子に塩基置換が生じた突然変異体を単離することである。本研究ではTILLING法を用いて変異体の探索を行い、3つの輸送体遺伝子の変異体を単離することに成功した。この中の一つはシロイヌナズナホモログの解析により、この輸送体を欠損したシロイヌナズナのCs吸収能が減じることが明らかになっている。今回単離に成功したイネ変異体も同様にセシウム吸収能が低下している可能性が高く、今後は汚染土壌を用いたCs吸収特性試験を実施し、吸収能を評価する予定にしている。 イネにおいてもCs吸収能が低下するという結果が得られれば、Csを吸収しない安心安全なイネや作物の作出に応用できるものと考えられる。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、単離済みの17個のセシウム輸送体遺伝子の中から変異体が単離されていなかった変異体をTILING法を用いて検索し、3つの輸送体遺伝子の変異体を単離したことについては評価できる。一方、Cs吸収量として定量的に示すための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、目標とするセシウムを吸収しないイネ品種の作出に向けた踏み込んだ検討、例えば、栽培する土壌条件(湛水還元的条件下と酸化条件下)や吸収特性の内容(Csに特異的な抑制かカリウムとの拮抗的な抑制か)を勘案した検討をされることが望まれる。
高品質長尺超伝導ケーブルの実現に向けた、超伝導膜接合技術の確立 島根大学
舩木修平
島根大学
北村寿宏
本研究では、送電ロスの無い超伝導ケーブルの長尺化を実現するために必要とされる、高品質な希土類(Rare Earth: RE)系銅酸化物高温超伝導(REBCO)線材の新規な接合技術を確立することを目標として、溶融水酸化物法によるREBCOエピタキシャル成長技術を用いた、簡易的なREBCO薄膜同士の接合を試みた。結果として、REBCO薄膜同士の接合には至らなかったが、溶融水酸化物法の溶剤(水酸化カリウム:KOH)に対する高品質REBCO薄膜の耐性について知見を得た。またそれらの知見から作製条件を見出し、実際に高品質REBCO薄膜を結晶成長の種膜として、高品質な液相エピタキシャル成長REBCO厚膜の作製に成功した。
今後、液相成長REBCO相の作製条件をさらに検討することで、接合の実現が期待できる。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも溶融水酸化物法の溶剤(KOH)に対する希土類系銅酸化物高温超伝導材薄膜の耐性に関する知見が得られたことについては評価できる。一方、超伝導線材の接合の実現に向けさらなる基礎研究やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後の研究の進展が望まれる。
廃ガラスを利用したヒートアイランド緩和放射冷却材料の製造 島根大学
宮崎英敏
一般的な廃ガラス(ソーダライムガラスの廃棄物)から主にナトリウムを水熱処理により除去し、珪素原料としての再利用の可能性を探査した。廃ガラスの水熱処理により得られた処理廃ガラスおよび別途純珪素を、最適な混合比で混合し、窒素中にて焼成することにより、珪素酸窒化物を合成する事が出来た。得られた珪素酸窒化物はこれまでの報告と同様に大気の窓領域に大きな吸収を示し、優れた放射冷却能を示した。以上より、年間数百万トン排出されるガラスについて、廃棄物の削減および廃ガラス有効活用性について示唆された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、廃ガラスを原料とした酸窒化物の合成法の開発という点ではおおむね初めの研究目標を達成していると評価できる。一方、実用展開を考えた場合は様々な不純物を含んだ廃ガラスなどのような原料でも均一な材料作成が可能なプロセスの確立が必要不可欠であると思われるので、さらなる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、実際の工業的規模で廃ガラスのリサイクルの一環としてプロセスが実用化できれば環境関連技術としても注目されると期待されるので、より大きな規模でコストに配慮した処理手法を検討することが望まれる。
バイオマススーパーエンプラの調製と用途展開 岡山大学
木村邦生
岡山大学
齋藤晃一
バイオマス由来である2,5-フランジカルボン酸(FDCA)を必須原料とし、非バイオマス系化合物とにより全芳香族ポリエステルと芳香族ポリエーテルケトンを調製した。全芳香族ポリエステルに関しては、既存の液晶ポリエステル製造用インフラの転用を念頭に、FDCAとビスフェノールに無水酢酸を加え、溶融重合と固相重合を組み合わすことによって高分子量体が調製できることを明らかにした。また、芳香族ポリエーテルケトンに関しては、イオン溶液中でのフリーデルクラフト重合により高分子量体が調製できることを見出し、基本的物性を評価した。高ガラス転移点で低融点という特徴があり、耐熱性と化学安定性に優れた熱可塑性樹脂である。今後は、樹脂の特徴に見あった高付加価値用途の探索研究を行うとともに、バイオマス化率の向上を目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、全芳香族ポリエステルについては8時間以内の重合時間を、芳香族ポリエーテルケトンについてはフィルム化を達成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、安価なフランジカルボン酸モノマーの調達やイオン液体の使用量の低減など合理的なプロセスとするなどでの実用化が望まれる。今後は、付加価値の高い用途も探索されることが期待される。
植物共生細菌由来抗酸化物質の合成機構の解明と発酵生産 岡山大学
谷明生
岡山大学
梶谷浩一
本研究では、植物に広く共生してその生育を促進するメタノール資化性細菌の一種において見いだした、抗酸化活性を持つアミノ酸を大量生産すること、ならびに、その細菌における本物質の生理的な意義について解明することを目的として行った。まず本物質の定量法を確立した。本属細菌の全ての基準株について調べたところ、ほぼ全ての種について生産が認められたことから、本属細菌について広く見られる現象であることが分かった。申請者がエゾスナゴケから分離した植物生長促進作用の高い菌は、中でも好成績であった。本菌をモデルとし、各種炭素源を用いて培養を行ったところ、メタノールが炭素源の時に特異的に高生産することを明らかにした。合成遺伝子と考えられる遺伝子について遺伝子破壊株の構築を行い、遺伝子破壊株が本物質を生産しないことを見いだしたことから、合成経路はこれまでの他の細菌における経路と同一であることが示された。生産性としては最大9 mg/L(28 days)であり、これまでのキノコを用いた方法に比肩するためにはまだ40-50倍の効率化が必要であったが、培養条件の検討などにより実現可能であると考えている。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、直ちに企業化等に結びつく成果は得られていないが学術的な成果は得られていることについては評価できる。一方、エルゴチオネインの生産量の飛躍的な改善は困難としても、細菌を使うメリットが出すために培養時間の大幅な短縮などの技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、エルゴチオネインに関する植物生理の基礎研究として計画を見直すことが望まれる。
抗真菌作用をもつ新たなサイレージ用乳酸菌製剤の開発 岡山大学
西野直樹
特定非営利活動法人中国四国農林水産・食品先進技術研究会
古川廣志
難培養性ホモ発酵型乳酸菌LAB-1のサイレージ用添加剤としての効果を、トウモロコシホールクロップおよび飼料イネで検証した。トウモロコシサイレージは乳牛への給与試験も行い、採食量にネガティブな影響がないことかを明らかにした。また、小規模サイロの実験でLAB-1の変敗抑制作用を確認し、その効果は飼料イネでより大きいことを明らかにした。細菌フローラの解析から、添加したLAB-1はいずれのサイレージでも生残していると判断された。また、LAB-1の添加効果は106>105>104 cfu/gの順に大きかった。乳牛による採食量は、無添加サイレージよりLAB-1添加サイレージの方が12%少なかったが、有意差は認められず、LAB-1の添加でネガティブな影響はないと評価した。
現在、大きな効果がみられた飼料イネのデータ解析を進めており、今後この結果を含めて特許申請を早期に行う予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にサイレージの変敗遅延について目標に近い効果が確認されている。公立畜産研究所などとの共同研究で研究が進められている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、調査例数を増やし問題のないことを確認することが望まれる。今後も幅広く研究連携しながら、抗真菌作用をもつ微生物製剤としての実用化を目指すことが期待される。
チャノキの生産コストを削減する葉の陰葉化技術の開発 山口大学
柴田勝
山口大学
殿岡裕樹
日本茶の高品質化は、新芽を遮光するなどの独特の栽培法により行われているが、光合成を抑える遮光処理は成長抑制や樹勢低下などの問題を含んでいる。このために、遮光処理により得られていた茶葉の品質を誘導可能な栽培管理技術として確立するために、樹木の生態生理を基礎とした茶葉の陰葉化について検討を行った。まず、特定の条件下で葉の展開と共に葉厚の確保などの陽葉化を促し、その後、内部組成を陰葉化させることで、目的とする形質とすることができる(達成度80%)ことを示した。また、樹木特異的な色素による陰葉化指標を用いて特定のハードニング処理を行うことで、色素量の調節を行った(達成度40%)。高機能性成分のテアニンの代謝に関与する酵素類の遺伝子、タンパク質を同定することで、実験の効率化を図った(達成度50%)。しかし、茶葉の陰葉化を効率的に行うまでには至っておらず、処理条件などの検討をさらに要する(全体の達成度は50%程度)。
当初目標とした成果が得られていない。中でも、実際の茶栽培に応用する観点からの技術的検討や評価が必要である。しかし、光順化による葉の形態変化に注目し、陰葉化による茶の成分変化過程を一部でも科学的に解明した意義は大きい。今後は、県や企業だけでなく、農研機構等の国の研究機関との連携や農水省の競争的資金の獲得についても検討されることが望まれる。
触媒膜リアクターによる難分解性有機物を含む水処理技術 山口大学
熊切泉
山口大学
松崎徳雄
難分解性化合物が含まれる排水を低コストで浄化できる水処理技術の開発が強く望まれている。本研究では、触媒湿式酸化法と膜分離法を組み合わせた触媒膜リアクターによる、低温・低圧での処理法を提案し、低濃度でも有害な溶存有機物の酸化分解処理への応用を検討した。目的としたフェノールの分解性能がある触媒膜は得られなかったが、白金触媒の担持法として、従来の水素中還元を代替しうる窒素雰囲気での調整や光還元法を試み、これらの手法でも水中でのギ酸分解が行える触媒膜が作成できること、支持体上にナノサイズの白金が分散担持していることを示した。また、酸化マンガン系の触媒膜の作成方法を開発した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、水中でギ酸分解を可能とする白金触媒膜を作成したことについては評価できる。一方、チャレンジングなテーマ内容を活かすべく、更なるデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、蓄積した知見に基き研究計画を再検討されることが望まれる。
最密充填構造を模倣した廃Siからの3次元マクロ多孔質-Si構造体の創製 宇部工業高等専門学校
友野和哲
宇部工業高等専門学校
黒木良明
Siインゴットの切断加工時に大量の廃棄物シリコンが排出される。本研究では、廃シリコンから合成できるブロモシランを用いて、電気化学的手法により3次元マクロ多孔質Si構造体を作製することを目標とした。細孔サイズが異なる数種類の3次元マクロ多孔質Si構造体の作製条件を明らかにした。結果、廃シリコンから抽出したブロモシランを電気化学的手法により、ナノ構造(や光学材料としての応用)を付与する自由度が高いことが分かった。今後、光学分析と細孔サイズの相関性を明らかにし、マクロ多孔質構造の最適化を進める。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、3次元マクロ多孔性シリコンを所定の成長速度で作製する条件を見出していることは評価できる。一方、早急に構造体の光学特性を評価し、実際にブロモシランを用いた今回の方法が廃シランの有効利用に大きな寄与をすることを明らかにすることが必要と思われる。今後は、シリコンインゴットの切断加工時に排出される廃シリコンの有効利用は、次世代のエネルギーを考えた場合極めて重要な技術であり、次のステップに進むことが望まれる。
カチオンドープ型有機無機ハイブリッド構造制御によるプロピレン/プロパン分離膜の創製 広島大学
金指正言
広島大学
榧木高男
Si間にメチレン基を有するbis(triethoxysilyl)methane (BTESM)(tEO)3-Si-CH2-Si-(OEt)3用いて、ゾルゲル法によりアモルファスシリカネットワークを形成後、カチオンであるAlをドープすることで、ネットワークサイズの精密制御、C3H6分子との吸着親和性を制御したオルガノシリカ膜の開発について検討した。具体的には、(1)有機無機ハイブリッドアルコキシドを用いたシリカネットワークの制御、(2)各種気体透過特性、(3)C3H6/C3H8分離特性、吸着特性の評価を研究項目とした。Alをドープすることで、BTESM膜と比較してネットワークサイズが緻密になることが明らかになり、200℃焼成Al-BTESM(Si/Alモル比: 9/1)において、BTESM膜と比較してC3H6/C3H8透過率比が大きく向上し200℃で35を示し、当初の研究開発目標を達成した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、Alドープ膜で200℃でのC3H6/C3H8の高い選択性を検証したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、Agドープ膜も含め、膜のコストダウンや分離性能と低温での透過能の向上の検討などでの実用化への進展が望まれる。今後は、企業との連携により、技術的課題を明確化しその解決に取り組まれることが期待される。
膜分離技術導入によるアナモックス処理法の効率化と実用化へのアプローチ 広島大学
金田一智規
広島大学
山口裕介
富栄養化防止の観点から、より経済的な窒素除去プロセスであるアナモックスプロセスを普及させるために、増殖の遅い菌体の完全保持・迅速なスタートアップ・安定的な部分硝化を達成する目的で膜分離技術を組み合わせた一槽型アナモックスリアクターの構築を目指した。本研究課題では一槽型プロセスを構築しやすいと考えられる海洋性アナモックス細菌を用いて、アナモックスプロセスの迅速なスタートアップ、安定的なリアクターの構築、膜面洗浄方法の確立、各種排水に対応するための塩分濃度の影響などを明らかにすることはできたが、一槽型プロセスの構築には至っていない。今後は得られた知見を生かして一槽型プロセスの構築・安定化を目指す。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、海洋性アナモックス菌を常温域で安定に維持する装置の運転条件をモデル排水でほぼ確立したことについては評価できる。一方、当初の目標であった一槽式の窒素除去プロセスの構築に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、一槽式プロセスの構築には従属栄養細菌を含めた増殖速度の異なる微生物群の制御が必須であり、酸素や塩分の影響などをまず把握されることが望まれる。
廃棄ナシ剪定枝からの有用物質の効率的な抽出法に関する研究 徳島大学
佐々木千鶴
徳島大学
嵯峨山和美
本研究課題により、農業廃棄物である未利用の日本ナシの剪定枝を樹皮と幹に分けて有用物質の抽出を試みた結果、樹皮に美白作用を有するポリフェノールであるアルブチンの多くが存在することが明らかとなった。また、得られた粗アルブチン抽出液のマウス由来B16メラノーマ細胞を用いたメラニン産生抑制試験では、コントロール(100とした場合)のおよそ70%のメラニン産生抑制があることが確認され、他の顕著なメラニン産生抑制を示す化学物質に見られるような細胞毒性を示すこともなく、天然の植物由来の特性を生かす緩やかな効果を持つことが実証でき、実用化の可能性が示唆された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、簡単な操作の抽出法により樹皮にアルブチンの含量が多いことを明らかにしたことについては評価できる。一方、その抽出液からのアルブチンの効率的な精製法の確立に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、大量スケールでのアルブチンの抽出・精製法を確立し、既存品より安価に供給できる可能性を検証されることが望まれる。
害虫発生モニタリングシステムのための害虫識別アルゴリズムの開発 愛媛大学
有馬誠一
安価で作業性が良い害虫発生モニタリングシステムを構築すべく、害虫数カウントの基本的な画像処理アルゴリズムを開発した。画像入力の対象を広く普及している害虫捕殺粘着シートとし、これに捕殺された害虫を画像処理により、識別・カウントする。一般的に広く用いられている大津二値化法と害虫を示すBlobの面積から害虫を識別し、その数をカウントさせた。人手による害虫数のカウントと比較した結果、絶対的な検出精度は高くないものの、計測の手軽さをもって多地点での時系列計測を実現し、相対的な傾向を見るには極めて有効であった。今後は、害虫識別の精度向上と共に、クラウド環境下で稼働させ、より多地点・広範囲・高頻度での害虫発生状況を把握できるシステムの構築を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、害虫マップの作成がなされたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、害虫カウントの精度は目標値に達しておらず、アルゴリズムの改善により実用化につなげることが望まれる。今後は、害虫発生マップ作成の試みは、植物工場における生産性向上技術の開発に寄与することが期待できる技術であるので、社会還元につなげることが期待される。
メタノール資化性細菌を利用した廃グリセリンの資源化技術の開発 愛媛大学
阿野嘉孝
愛媛大学
入野和朗
バイオディーゼル燃料(BDF)は、カーボンニュートラル・再生可能資源として今後の利用拡大が望まれているが、その製造過程において高アルカリ・メタノールを含有する廃グリセリンを副生し新たな環境負荷物質として対策が求められている。微生物を用いた廃グリセリンの資源化技術はいくつかの事例が報告されているが、生体に毒性を示すメタノールによる反応阻害が確認されている。
本研究課題では、メタノール毒性に強いメタノール資化性細菌を特定の培養条件で増殖させ、生体触媒として用いることでメタノールの存在にも左右されないグリセリン変換反応が実現できることを見出し、廃グリセリンの資源化技術の科学基盤を得ることができた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、休止菌体を用いることで混在メタノールの影響を受けない微生物変換系を作成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、休止菌体の安価な調整法や固定法などを検討し、安定で効率の良いプロセスを確立するなどでの実用化が望まれる。今後は、バイオディーゼル生産プラントとの直接的なジョイントも検討されることが期待される。
イネ澱粉枝作り酵素による次世代バイオポリマーの開発 九州大学
木村誠
九州大学
前野伸策
本研究では、イネ枝作り酵素BE1−マルトペンタオース複合体の結晶構造に基づき、マルトペンタオース結合部位を構成するPhe100とTrp319をAlaに置換した変異体(F100A、W319A、F100A/W319A)を調製し、それらの触媒活性および転移糖鎖長を分析した。その結果、何れの変異体の酵素活性および転移糖鎖長ともに、野生型と比較して顕著な差は見られなかったことから、BE1をプロトタイプとする機能改変体酵素を調製することはできなかった。次に、3%(w/v)のタピオカ、小麦、トウモロコシ、ジャガイモの各糊化澱粉をBEIのアイソザイム(BEIIaとBEIIb)で処理したところ、タピオカにおいて顕著に濁度が減少し、さらに酵素処理による環状グルカンの生成を検討したところ、アミロースを基質にした場合に生成されていることが示唆された。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、多くの実験が為されており、誠実に研究に取組んでいることについては評価できる。一方、酵素の改変とBEIあるいはBEIIb酵素の利用研究が並行して行われてはいるものの、酵素利用に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、イネに限らない他の起源の異なる枝作り酵素との比較や各種酵母や糸状菌による酵素の生産を試みることが望まれる。
石炭ガス化複合発電への利用を目的とした高ガス透過性新規CO2分離膜の創成 九州大学
谷口育雄
九州大学
坪内寛
ポリアミドアミンデンドリマーをポリエチレングリコール架橋体内に物理固定した分離膜は、CO2/H2混合ガスからのCO2分離において極めた高い分離性能を発揮する。この分離膜の実用化を目的に薄膜化によるCO2透過性の向上を計った。この分離膜は相分離構造を形成するが、開発した相溶性架橋剤により、光重合法によって10ミクロン以下でも透明な薄膜の形成が出来た。また、スピンコート法により更なる薄膜化を行なったが、膜厚が160 nmにおいてもそのCO2透過流束は目標値に到達しなかった。これはCO2透過メカニズムが拡散律速から溶解律速になったためであると考えられる。今後はCO2の高分子膜への溶解性を向上させることにより、目標値の達成が可能と考えられる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、独自の分子デザインからCO2分離膜を作成し、その一定の性能を確認したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、予想されるかなりの高コストへの対策や特許出願などでの実用化への進展が望まれる。今後は、共同研究先の企業と連携し分離膜材料として所定性能をクリアされることが期待される。
高効率電力変換用スイッチング素子への適用を目指した極細多芯高温超伝導薄膜線材の開発 九州大学
東川甲平
九州大学
猿渡映子
本研究では、高効率電力変換用スイッチング素子への適用を目指した極細多芯高温超伝導薄膜線材の開発に取り組んだ。具体的には、磁気顕微法を発展させることにより、多芯線材加工プロセスの評価に耐え得る高解像超伝導特性評価手法を開発することに成功し、レーザースクライビング法によって作製された多芯線材に対して、電流容量が確保されていること、磁化損失が低減されていることを実証した。以上の成果から、電流容量を確保したまま磁化損失だけを際限なく低減することが可能な多芯線材加工プロセスの開発スキームが整い、高効率超伝導電力変換用素子実現のための基盤技術を確立できたと総括する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に高効率電力変換用スイッチング素子のレーザースクライビング法による極細多芯高温超伝導薄膜線材に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本成果が応用展開されると、電力変換用スイッチング素子の大幅な損失低減により電力変換効率が飛躍的に向上し、クリーンで経済的なエネルギーシステムの構築、スマートシティの早期実現に結び付くものと期待される。今後は、希土類系高温超伝導薄膜の品質や金属基板上への形成プロセス等が多芯線材加工後の特性に及ぼす影響については早期に検討されることが望まれる。
マイクロ波非平衡プラズマ燃焼法の燃焼促進領域拡大とその効果に関する研究 九州大学
山本剛
本研究では、マイクロ波非平衡プラズマ燃焼法を、発酵メタンや埋立地ガスなどの低品位燃料の燃焼装置に応用するため、その燃焼促進効果について実験的検討を行った。その結果、通常燃焼では検出されないOラジカルやHラジカルなどの燃焼を促進するラジカルの検出や、強力な酸化剤であるOHラジカルの大幅な増加により、燃焼範囲の拡大、燃焼温度の上昇など、効果的な燃焼促進が行われることが示された。さらに、本研究で構築したマイクロ波非平衡プラズマ拡大装置を適用することで、さらなる燃焼促進が起こることが予想されることから、今後はマイクロ波非平衡プラズマ拡大装置の適用を行うとともに、本法の低品位燃料への応用を試みる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、マイクロ波非平衡プラズマ燃焼法の優れた燃焼促進効果を示すことに成功していることは評価できる。本研究で掲げていた燃焼促進領域拡大は、新たに設計・製作した装置により可能性を示すに止まっているが、概ね目標を達成している。一方、技術移転の観点からは、燃焼促進領域拡大や超希薄燃焼に向けた具体的な検討内容を明確にして、実用化に進むことが望まれる。今後は、エネルギー関連産業等との連携により、燃焼後の処理を含めたサイクリックなプラズマ燃焼システムの技術開発による実用化が期待される。
非食料系バイオマスから石油代替燃料の高効率製造を目指した新規金属-固体酸複合触媒の開発 北九州市立大学
今井裕之
公益財団法人北九州産業学術推進機構
米倉英彦
本研究では、植物油や微細藻類油から水素圧が10気圧(通常の1/10)以下のマイルドな条件下で、ガソリン、ジェット燃料等の液体燃料用炭化水素を効率良く生成する金属-固体酸複合触媒の開発を行った。表面積が大きく、マイルドな酸性質を有する固体酸化合物を用いて複合化することで、高表面積、酸性質、ナノサイズの金属粒子が複合した触媒が開発された。複合触媒による脂肪酸エステルの炭化水素化では、数気圧の水素で、原料のほとんどを炭化水素化でき、ジェット燃料留分の生成効率も八割近くに達した。今後は、長期運転に耐えられる安定性、より安全な運転条件で稼働できるより高性能な触媒の開発を進める予定である。加えて、植物油から効率的に高品位燃料油へ変換するため、酸性質を制御した触媒の開発も進める予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、非硫化物系の複合酸化物と特定の酸性担体の組合せによる新たな触媒系や微細藻類の原料化などの可能性を示したことについては評価できる。一方、実バイオマス系での本触媒系と反応システムの具現化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、この種の触媒系には不可避の活性劣化の抑制を目的とした、触媒の細孔分布の制御や移動床などの化学工学的な検討も行うことが望まれる。
廃水処理用電極材料への適用を目的とした炭素材料膜の探索 有明工業高等専門学校
原武嗣
有明工業高等専門学校
上甲勲
本研究では、超ナノ微結晶ダイヤモンド(UNCD)を含有する炭素膜を作製し、廃水処理用電極材料として重要なパラメータである電位窓およびバックグラウンド電流に関して調査を行った。ホウ素(B)を 5at% および 10at% 添加 した炭素膜の電位窓は、市販の白金電極よりも広範囲であり、バックグラウンド電流も流めて小さいことを確認した。また、市販の導電性ダイヤモンド電極と比べると、電位窓に関しては僅かに狭いものの、バックグラウンド電流に関しては同程度の結果が得られている。現在、得られた作製膜を用いて、難分解物質の電解処理を試みている。導電性ダイヤモンド電極と同程度の結果が得られる可能性は十分に高いと考えている。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ホウ素を5at% および10at% 添加 した炭素膜の電位窓が広くバックグラウンド電流が小さいことを確認できたことは評価できる。一方、電極となるUNCD、DLCの生成手法と機能向上に向けた基礎的な検討や実際の廃水を用いた電解処理の実施などの技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、十分な研究推進体制を構築し研究が進められることが望まれる。
強磁性体ステージを有する超高密度ヘリコンプラズマエッチング源の開発 独立行政法人産業技術総合研究所
本村大成
独立行政法人産業技術総合研究所
犬養吉成
積層型集積回路(3D-IC)を量産するために必要とされるシリコン貫通電極の加工速度を高速化、加工形状を高品質化させることを目標に、高密度プラズマ生成方式であるヘリコンプラズマ生成方式に、被加工材近傍のプラズマ密度を上昇させるウエハステージを併用する新開発の高密度プラズマエッチング装置の構築を行った。ウエハステージ前面 10mm で、入力RFパワー 1 kWを投入しプラズマ密度 1018 m-3 を達成できたことから、数値目標を達成できた。本システムを用いたエッチング速度は 1um/min 以上であった。今後、本高速エッチング方式を用いて微細加工パターンが可能なエッチング条件を評価していくことで、新たなプラズマプロセス装置への応用展開を実施していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にプラズマ密度については、目標を達成しており評価できる。一方、技術移転の観点からは、現状のプラズマ密度と加工速度の関係を明確にすることが望まれる。今後は、実用化に向けた指針を得るためにも、パートナーとなる企業を見出すことが必要と思われる。
光マネージメント用微粒子フィラーの開発:光エネルギーの高効率利用 熊本大学
伊原博隆
熊本大学
緒方智成
本課題は、種々のポリマー材との互換性(分散性)が高く、複合化することによってポリマーの光学特性を簡単に変調できる、無色・透明な微粒子フィラーの開発を目的として研究を行った。具体的には、申請者らが開発した蛍光分子をモノマー中で自己組織化させ、懸濁重合法によって微粒子を作製した。得られた微粒子は、近紫外光(350〜400nm)を吸収し、青色領域(400〜500nm)の光エネルギーに変換(発光波長の高ストークスシフト)することが可能であった。得られた粒子の発光特性や耐光性、種々のポリマー基材へ粒子を複合化について詳細に検討した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、発光材料の微粒子化に成功した点については評価できる。一方、現状の耐光性が実用レベルに対してどの程度の位置にあるのかの確認などに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、現象を正確に把握しその原理や機構をまず考察されることが望まれる。
電極への高密着性発電微生物を用いた高性能微生物燃料電池の開発 宮崎大学
井上謙吾
宮崎大学
新城裕司
微生物燃料電池において、高い電流密度での発電には、アノード電極上に電流生成に適したバイオフィルムが形成される必要がある。我々の研究グループが新たに分離した電流生成微生物は、既存の微生物と比較して、グラファイト電極に高い密着性を有し、且つ、高い電流密度での発電が可能である。その新規高密着性電流生成菌を用い、電極にバイオフィルムを形成させた後、実際の下水サンプルを電子供与体として与えたところ、バイオフィルムを形成させていない電極、及び、Geobacter sulfurreducens PCA株(標準株)のバイオフィルムを形成させた場合と比較して、有意に電流生成能力が向上し、且つ、持続的な発電が観察された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、G. sulfurreducens YM82株のアノード電極へのバイオフィルム形成を可能とし、下水サンプルを用いて既存の有用株よりも発電力をに優れていることが示した点については評価できる。一方、発電力は目標値の10分の1以下であり、更なる技術的検討や微生物群集の構造解析などのデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、高性能の有用菌の探索やバイオフィルム形成技術の再検討など地道な研究を継続されることが望まれる。
天然シラス粒子を資源活用した溶接スパッタ付着防止剤の高性能化実証 都城工業高等専門学校
高橋明宏
宮崎大学
和田翼
南九州産物の天然鉱物資源たるシラス微粒子と水とを混合させた溶接スパッタ付着防止剤の開発剤に対して、実用化ための実証を目的として実験を行った。計画よりも微細なシラス粒子(平均径2.5ミクロン)によるスプレー作業が達成できた。また、超音波探傷センサー等を用いた溶接部位非破壊評価による無害化が実証できた。さらにJIS試験に準拠した溶接材曲げ試験特性の材料保証データバンクが構築できた。防止剤塗布による拡散性水素量が地元溶接加工協会からの提示値を12.5%上回り、この要求未達事項が今後の課題となったが、以上の研究開発成果を総括して、シラス含有溶接スパッタ付着防止剤の包括的な実証を推進できた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、天然シラス微粒子と水を混合した溶接スパッタ付着防止剤の開発について、スプレータイプの開発や溶接部材の品質において当初の目標が達成されたと評価できる。一方、技術移転の観点からは、課題として残された、スプレー噴霧されたスパッタ付着防止剤の速乾性や拡散性水素量の低減等を克服し、実用化に進むことが望まれる。今後は、地元の天然素材を活かした産業化として、社会還元に導かれることが期待できる課題であるので、最適条件の探索によって、より優良な条件を発見し、技術移転につなげることが期待される。
きのこ生産による黒糖焼酎粕・バガスの低カリウム化が生み出す島内物質循環システムの再構築 鹿児島工業高等専門学校
山内正仁
鹿児島工業高等専門学校
遠矢良太郎
奄美群島における地域副産物を用いてきのこ培地を調製し、その培地で食用きのこの栽培試験を実施した。その結果、これらの地域副産物はきのこ培地に利用可能であることがわかった。また、本培地できのこを栽培すると発生操作から初回収穫までの日数が対照区と比較して4日短縮され、その後も収穫が対照区より早く、収穫期間が短縮されること傾向にあった。さらにきのこ培地に活用することで、島内土壌のカリウムを低減させる可能性が見出された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標通りに「地域副産物を培地としたきのこ生産」の地域内循環システムの様々な観点からの有用性を確認したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、製品きのこの品質面の評価も加えるなどでの早期の実用化が望まれる。今後は、知財の取得も検討し企業などとの連携で、より具体的な開発を取進めることが期待される。

このページの先頭へ
独立行政法人 科学技術振興機構