評価結果
 
評価結果

事後評価 : 【FS】探索タイプ 平成25年2月公開 − 医療技術分野 評価結果一覧

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課題名称 研究責任者 コーディネーター 研究開発の概要 事後評価所見
熱安定性に優れた人工核酸LNAを用いたヒトDNA鑑定技術の開発 旭川医科大学
浅利優
旭川医科大学
尾川直樹
本研究では、人工核酸LNAをプライマーに導入することによりPCRの検出感度、特異性への影響を明らかにするとともに、ヒトDNA鑑定法として有効となるプライマー設計法の構築を目標とした。プライマー5'末端側へのGCリッチなLNAの挿入はLNAを含まない場合やGC以外のLNAを挿入する場合よりも効率よく蛍光標識産物を得ることを可能であり、SNPを識別するプライマーではプライマー5'末端側へのLNA挿入は特異性を増強する点を新たに見出した。複数座位のSNP同時判定法の構築には至らなかったが、当初掲げた目標を概ね達成することができた。今後はLNA挿入プライマーを複数座位の多型同時判定へと応用し、法医学領域における新たな個人識別法を開発する予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、LAN挿入プライマーの検出効率などの基礎データは得られている点は評価できる。一方、当初の目標であるLAN挿入プライマー設計法であるプライマー内のLAN塩基の数、位置、および延期の種類の決定法、一度のPCRで8−10座位のSNPを識別するプライマーの設計に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。企業化は、デンマークのベンチャー企業が知的所有権を保有しているため制限されており「個別のプライマー配列」でのみ可能であるが、全体の印象としての困難度は高い。今後の進展を期待する。
Ape1遺伝子誘導による再生療法に有用な細胞機能改善法の開発 旭川医科大学
川辺淳一
旭川医科大学
尾川直樹
我々は、内皮前駆細胞(EPC)に抗ストレス遺伝子Ape1を導入することにより生体内での生着性と生体機能が画期的に亢進することを明らかにした。 血管患者由来EPCでは、接着能を含めたEPC機能低下とともにApe1発現が著明に低下しており、特に機能改善を必要とする患者EPC細胞に対する有効な標的遺伝子として期待できる。 また、臨床応用性の広さでも期待される間葉系幹細胞(MSC)においてもApe1の有用性が確認できた。 再生医療で利用されるEPC、MSCなどの細胞において、生体への導入後の生存・生着性を改善するという新しい細胞機能改善法は、生体での機能改善効果が高く、特に老化といった普遍的な細胞機能低下因子に対して効果を発揮する、「導入細胞機能改善の基本方法」としての開発が期待できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、Ape1遺伝子導入実験などの検討を行い、当初期待されていた効果が得られている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、薬剤誘導型糖尿病マウス由来EPCにおいてApe1強制発現によるEPC機能改善効果を、血管障害モデルあるいは下肢虚血モデルを用いて検討すること、マウス脂肪組織や骨髄由来MSCを用いて、Ape1 遺伝子導入による生体内のEPC機能改善効果を、マウス下肢虚血モデルを用いて検討することで成果を示すことが望まれる。今後、共同研究体制の構築を期待したい。
空中超音波ドプラシステムを援用したウロダイナミクス計測システムの開発とその有用性 旭川医科大学
松本成史
旭川医科大学
尾川直樹
本研究の現時点での成果としては、当初の目標のうち具体的に使用可能なウエアラブルデバイスの製作および得られたドプラ信号の信号処理、および計測系全体のファントムによる動作試験、性能検証、実環境におけるボランティアによるデータ採取試行までは完了したが、臨床上の有用性の評価、特に従来手法の代表であるメスカップ式の装置とのデータのコンパチビリティの検討に関しては比較用の従来手法装置の機器更新手続き等の理由で当初に目標とした程度にまでは完了していない。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも測定には羞恥をともなうデリケートな計測に対して、特段の設備を伴わずに簡易に計測できる機器の開発を目指している。試作機は完成しており、テスト段階である点については評価できる。一方、排尿という場合によっては羞恥心を伴う計測であり、これを特段の設備の無い自然な形で計測できる点、社会的還元の意義は大きい。そのための装置高性能化が望まれるが、プロトタイプ機をベースにして、これからの方策が示されている。現時点で一応の性能が得られているため、連携企業との模索中であり、産学共同の開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、試作機は完成しており、テスト段階であるが、まだ従来手法に対する計測精度の優位性は確認できていない。またさらなる小型化も必要である。したがって機器の改良と並行した評価が望まれる。特許出願は済ませており、また展示会場への出展など、広報と技術移転の計画についてさらに発展されることが望まれる。
メタボリックシンドロームにおける発癌リスク診断マーカーの開発 札幌医科大学
山本博幸
札幌医科大学
佐藤準
メタボリックシンドロームにおける発癌リスク上昇の分子機構を明らかにするとともに、メタボリックシンドロームにおける発癌リスク診断マーカーを開発することを目標とした。達成度は比較的良好で、IGFシグナルをはじめとする各シグナル経路のクロストークを明らかにするとともに、いくつかの新規マーカー候補を同定した。今後の展開として、新規マーカー候補の共通のペプチド配列を有するファージを多数のサンプルを用いてスクリーニングすることにより、実用化の見通しが期待できる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、いくつかの新規診断マ−カ−候補が同定されている点は評価できる。一方、cDNA phage libraryを用いてメタボリックシンドローム患者の、早期大腸癌組織で発現している特異的なマーカーの同定に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、目標が達成できれば社会への還元が期待される。
循環動態と動脈スティフネスを補正できる細小動脈内皮機能検査装置の開発 札幌医科大学
田中豪一
札幌医科大学
佐藤準
脈圧および指動脈スティフネスを考慮して補正できる細小動脈内皮機能検査(FCR簡易法)を開発するため、健常青年45名を用い、上腕動脈内皮機能指標(%FMD)を医学的基準変数とした基礎研究を実施した。簡易法におけるFCR比は%FMDと指動脈弾力性(FEI)より重回帰モデルで説明できることが明確になり、FCR簡易法は既存標準検査のFMD法およびEndo-PAT法のいずれとも異なり、独自の病態生理学的意義を有した総合的な健康指標を提供できると示唆された。同時に、小型・軽量かつ操作が容易なFCR比兼FEI検査の試作機(FA-PRO)1台を完成させたが、動脈硬化症患者を用いた臨床研究の蓄積は今後の課題である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。また、今後の研究開発計画について具体的かつ的確に検討されている。課題申請時に審査請求していた特許出願が権利化されていることも評価できる。しかし、最も重要な動脈硬化・高血圧症などの例での検討がなされていない。また、上腕動脈内皮機能指標(%FMD)を比較対象とするのだけでなく、既に世界的な大規模疫学研究が行われている末梢動脈トノメトリ検査(Endo-PAT法)との比較も必要と思われる。今後は、動脈硬化症患者・高血圧症患者を用いた臨床試験を行うことが、細小動脈内皮機能検査(FCR簡易法)の信頼性評価のために必要である。更に、Endo-PAT法に対して本FCR簡易法の優位性が証明されれば、本FCR簡易法の社会的ニーズが高まることが期待される。
赤外イメージング法と顕微ラマン分光法による生薬「カンゾウ」の非破壊的新規品質管理法の確立とデータベースの構築 千歳科学技術大学
木村‐須田廣美
千歳科学技術大学
高杉雅史
日本の生薬は約80%を中国からの輸入に頼っているが、生薬「カンゾウ」は国内でも栽培可能なため注目されている。カンゾウの根は生薬のみならず、甘味料としても広く用いられている。本研究では、“外国産との差別化を図る”、“食の安全を守る”観点から、生薬のデータベース構築も視野に入れ、あらゆる流通経路にも対応可能な生薬「カンゾウ」の品質管理法の開発を行った。具体的には、赤外イメージング法を用いたカンゾウ乾燥物におけるグリチルリチン酸の定性・定量分析の開発を行った。産地や形状の異なるカンゾウの根の赤外イメージング測定を行い、従来法である高速液体クロマトグラフィーと比較しながら定量の精度について検討した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。赤外イメージング法と顕微ラマン分光法による生薬カンゾウ中のグリチルリチン酸の定性・定量法の開発を目標としたが、有効なデータベースの構築には至らず目標の達成はできなかった。成果に基づく特許出願も行われていない。今後の研究開発計画は示されているが、現状では産学共同の研究開発ステップにつながる可能性は低い。ただ、測定データを装置メーカーに提供して、技術移転の努力をしている点は評価できる。新しい概念を取り入れた生薬の鑑定法なので、今後の展開次第では実用化され社会的に認められる方法になるかもしれない。そのためにも、決定的に不足している基礎的なデータの蓄積が必要である。
次世代型シーケンサーによる多検体解析技術の開発 帯広畜産大学
山岸潤也
帯広畜産大学
藤倉雄司
一般に次世代型シーケンサーを用いた塩基配列解析では、従来のキャピラリー型のように検体とその塩基配列を1対1で対応付けることが出来ない。そこで本申請では、次世代型の圧倒的な配列決定能を生かしつつも、各検体とその塩基配列を1対1で対応付けることを目的とした新規技術の開発を起案した。シミュレーション解析の結果、256検体中198配列で9割以上の配列を決定することが出来、本コンセプトが実証された。また、得られた結果に基づき、特許出願を行った。一方で、実用化に際しては全検体で全配列を決定できることが望まれるが、この点については、読み長の大幅な伸長など進化を続ける次世代型シーケンサーへ対応することで、改善を図りたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、提案の手法についてコンピュータ上でシミュレーションを行い、コンセプトが正しいことを大まかに示すことが出来た点は評価できる。一方、それを実データで検証するために技術的検討やデータの積み上げや、今後の技術的課題である「ライブラリー作成の効率化」の具体的方策を示すなどが必要と思われる。産業につなげるためのハードルの在処が明確になった点は進歩している。
ウイルス・毒素の診断・除去を指向した、高性能ナノ糖鎖作製開発研究 独立行政法人産業技術総合研究所
清水弘樹
ウイルスや細菌の感染及び毒素の侵入の多くは、宿主細胞が持つ糖鎖(オリゴ糖)への接着によって開始される。申請者らの有する、ウイルスや毒素との結合活性が見込まれる「多価シアル酸含有新規オリゴ糖」を用い、クラスター効果により結合活性が上昇する、ウイルスや毒素との高結合能を有する高性能ナノ糖鎖を作製する。それを基にして、ウイルスや毒素の除去や、診断、治療などへの医療産業展開を目指す。
本事業期間中に、糖鎖合成に利用するシアル酸転移酵素の副反応制御、利用予定糖鎖の安定性、ナノ粒子作成方法について知見が得られた。今後は、新しいインフルエンザ診断法の開発、様々な感染症の診断薬の開発へと展開する予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、シアリル糖鎖の構造法が確立でき、糖鎖伸長反応において有機溶媒の効果が顕著に表れる技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、大量スケールでの加水分解の問題を解決し安定した糖鎖合成が行えることを示す必要があり、まず糖鎖が導入された粒径のそろったナノ粒子の作成が急務と思われる。糖鎖が導入されたナノ粒子を使用して、ウイルスなどとの結合活性を調べることも必要と思われる。今後、成果が応用展開されれば社会還元は大いに期待できる。
MRI画像診断を劣化させないインプラント材料の構造設計法の開発 ― 適切診断と医療費低減を目指して ― 北海道大学
山本徹
MRI検査において、脊椎固定具などのインプラントによりMRI画像が乱れ、診断を下せない場合が多発している。我々は、生体適合性を持つ常磁性体に粉末の反磁性Graphiteを封入するハイブリッド構造により、画像の乱れを画期的に低減できる独創的アイデアを考案した。本研究では、このアイデアの実用化を目指し、まず画像乱れの原因となる磁場歪みについて、MRI撮像により求まる実測画像を基に、シミュレーション(計算画像)の高精度化を図った。つぎに、このシミュレーション技術を用い、脊椎用固定具を模擬した柱状形状を対象に、そのハイブリッド内部構造の最適設計を行った。さらに、その構造の力学特性がインプラントとして十分であることを力学解析シミュレーションで確認した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもインプラントの磁性制御により渦電流や磁場歪みによるMR画像の画質低下を防ぐという技術に関しては評価できる。さらに中空材および内部注入材とすることで剛性を低下させ、インプラントとして好ましい低剛性化が発現している。一方、磁場歪み分布画像の高精度化について目標とした1mm程度の分解能までが達成されていない他は、当初の目標はほぼ達成されている。実際に企業との連携が開始された点も重要であり、引き続き実用化に向けて検討されることが望まれる。
動物軟骨そのものを培養器として利用した、再生医療有用薬物候補物質効率的スクリーニング系の構築 北海道大学
高木睦
科学技術振興機構
東陽介
再生軟骨組織移植などによる治療効果を臨床応用前に評価するのに、実験動物を用いない評価系の構築を目指した。これまでにブタ関節の軟骨組織片に細胞を移植し、動物軟骨そのものを培養器として利用することで、移植細胞や添加薬剤の効果を定性的に評価できることがわかった。本研究では、培養後の軟骨切片をアルシアンブルー染色、コラーゲン免疫染色し、画像処理で染色の輝度値を測定することで、軟骨再生を定量的に評価することが可能であることがわかった。また、定量的評価に再現性があることも確認できた。ただし、多検体同時測定のためには、軟骨組織片を固定し、多数の検定用欠損を安定に作成できる器具の開発が必要であることがわかった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、軟骨再生を定量的に評価する成果を得ている点と、成果に基づいた特許出願が行われていることは評価できる。一方、多検体同時評価系の構築はできなかったのでさらなる検討が必要である。今後は、再現性など解決すべき課題も多いが、高齢化社会において技術の社会還元が期待される。
重水と水素ガスによる新しい心筋保護法の開発 北海道大学
深井原
北海道大学
金子真紀
独自に開発した新規臓器保存液を用いて、心停止や長時間の冷保存心など、従来は生着させることが困難と考えられていた心臓を、移植用のグラフトとして使用できる程度の障害に抑える方法を見出すことが目的である。われわれが作成した新液は酸素の供給によって保護効果が増強されることが細胞実験で示されていたが、その詳細なメカニズムは明らかではない。
本課題ではラット心の冷保存・移植モデルで新液の心保護効果を検証し、至適条件、作用メカニズムを明らかにするために、冷保存心をメタボローム解析し、作用点を炙り出す。また、心冷保存における、酸素需要、酸素の供給法、を検討し、臨床応用可能な方法論を構築する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。本研究開発課題は重水を用いた低温酸素化、低温酸素化水素化保存液を用い、ラット心臓保存の効果を検証しようとするものである。結果としてラット心臓の潅流は技術的にできなかったが、当初の目標である24時間での効果を検証することに関しては、24時間冷保存で効果があったと記載されている。しかし、その機序解析はほとんど進んでいない。保存された心臓の収縮機能などに関する解析は、今後の問題として残っている。また、次のステップへ進むための今後の方向性が絞り込めておらず、特許申請もまだ行われていない。全体としては、重水による臓器保存効果の改善は興味ある知見であり、心保存法の基準化に繋がる成果であると考えられ、手法がより基準化されれば、臓器保存・移植への貢献が期待される。
脂肪分解および脂肪蓄積を1細胞レベル評価できるアッセイ系の開発 北海道大学
永山昌史
北海道大学
城野理佳子
本研究では、脂肪細胞における脂肪分解作用を1細胞レベルで評価できる細胞アッセイ系構築の可能性を見出すことを最終目標とした。まず、初代細胞と比べ安定的な供給が見込まれる株化脂肪前駆細胞(3T3-L1)を用いて、脂肪分解刺激による脂肪滴収縮および付随して起こる脂肪滴生成をタイムラプス顕微鏡観察できる培養・観察系を構築することに成功した。脂肪滴収縮の分子マーカーとして活性型のホルモン感受性リパーゼ、脂肪滴生成の分子マーカーとしてADRPが有効であることを明らかにした。中性脂肪量評価の定量性に課題が残るものの、1細胞レベルの脂肪分解作用を可視化することに成功し、細胞アッセイ系の構築およびハイスループット化への道を拓いた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、脂肪分解過程における脂肪滴の収縮と新たな生成をリアルタイムで観察できるシステムの開発に成功している点は評価できる。一方、本申請の目的は、一細胞レベルの画像から脂肪的の体積〜中性脂肪変化量を推定することにあったが、共同研究先から定性的なハイスループット化のシステムの助言を受け、一細胞レベルでなく免疫染色画像全体を解析することに変更している。今後、画像解析による量の推定の検討が必要と思われる。社会的にニーズの高い課題なので技術移転されることが望まれる。
迅速かつ明瞭多彩な色調変化を示す糖検出チップの応答選択性向上 北見工業大学
兼清泰正
北見工業大学
内島典子
次世代の糖質インターフェイスとして注目されるボロン酸を用い、従来の酵素法が抱える欠点を克服した新規の糖検出チップ開発を行った。印刷スライドグラス上に、ナノスケールで厚みの制御された複数の糖応答性薄膜を作製し、各々の薄膜表面に種々のアニオン性色素を吸着させることに成功した。これをフルクトース溶液に浸漬すると、糖に応答した薄膜の色調変化が生じたが、色素によって応答特性が大きく異なっていたことから、糖濃度に依存して様々な変色パターンが出現した。以上の手法により、迅速かつ明瞭多彩な色調変化を示す糖検出チップを実現することができた。今後は、グルコースに対する応答感度の向上を図り、簡便な操作により生体サンプル中の糖濃度を正確に測定できる実用的糖検出チップの開発を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、コロイド粒子と薄膜との相互作用が強く、変色に成功しなかったが、アニオン性色素の価数や親水性・疎水性を最適化することにより、薄膜を安定に着色することに成功している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、定量可能な糖の濃度範囲や目標にもあった他の陰イオンの影響等の検討、実試料での確認も必要と思われる。今後、糖検出チップは社会的にも多くのニーズがあり、事業化されると市場も大きく社会貢献が期待される。
スラリー埋没加熱処理を利用したジルコニウムへの骨結合性能の付与 北見工業大学
大津直史
北見工業大学
内島典子
本研究開発では、次世代インプラント素材として期待されているジルコニウムに、申請者が考案した「金属基材をリン酸カルシウム粉末と蒸留水を混練したスラリー状処理剤に埋没させ、そのまま大気中で熱処理する」という簡便な処理プロセスを用いて、その表面に、リン酸カルシウムを含む生体親和性皮膜を、簡便かつ安価に形成させる技術の開発に成功した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、金属基材をリン酸カルシウム粉末と蒸留水を混練したスラリー状処理剤に埋没させ、そのまま大気中で熱処理する」という簡便な処理プロセスを用いることにより、ジルコニウム表面に、チタンに匹敵する骨結合性能を付与する目標がおおむね達成された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、ジルコニウム表面に生体親和性皮膜を形成することにより、どれだけ骨芽細胞が定着しやすいのか、従来のチタン製材に対しどれだけ優れているのかを示す必要がある。今後、技術移転を目指した産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性が高まったと思われる。
前立腺癌の過剰診断を克服する診断マーカーの開発 弘前大学
大山力
弘前大学
工藤重光
本課題は、前立腺癌の過剰診断を克服する診断マーカーの開発を目的として前立腺癌特異的Siaα2,3Gal糖鎖を持つfree PSAアッセイ系の構築を目標とした。まず、蛍光ビーズと糖鎖特異的抗体からなるSiaα2,3Gal-free PSAアッセイ系を構築した。次に、本アッセイ系を用いて前立腺癌および前立腺肥大症患者血清のSiaα2,3Gal-free PSA含有量を測定し、両者を比較した。その結果、従来のPSA検査で前立腺癌の疑いがあると判断された患者で針生検によって良性疾患と診断された患者のうち約75.5%の患者について針生検が不要と判定可能であった。以上より、本アッセイ系は従来法よりも特異度が高いことが示唆された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、前立腺癌の鑑別システムの開発に向けて、LuminexとHYB4法で当初の目標をほぼ達成した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、従来技術に対する本測定法の有用性をより広範に検証する必要がある。また他施設での客観的評価も必要である。今後、本研究が成功すれば前立腺癌の過剰診断を防ぐことにつながり、社会的貢献につながることが期待される。
有機EL液晶波長可変フィルター型蛍光顕微鏡技術を用いた術中乳がん転移検査システムの研究開発 弘前大学
野坂大喜
弘前大学
工藤重光
肉眼的発見が困難な微少転移乳がん症例(0.2〜1mmの微小乳がん転移細胞)を対象として、蛍光検出系を用いた高精度な検出・解析用画像処理技術を研究し、有機EL液晶波長可変フィルター搭載型蛍光顕微鏡の臨床応用による乳がん転移判定迅速病理診断技術の技術移転可能性を研究開発した結果、転移乳がん細胞を精度90%以上で検出し、特異度においても分子生物学的手法と比較した結果90%以上を実現した。本システムは新たな術中迅速診断支援システムとして実用化が期待でき、他の臓器からのリンパ節転移検出やマルチマーカーでの陽性細胞検出手法として応用化が期待できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、微小乳がん転移を対象に、Qドット蛍光系に対するマルチカラ−顕微鏡の感度と特異性についての設定目標を達成している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、蛍光透過率の低下の問題をいかにクリアするかが課題と思われる。染色体分析システムや血液細胞分析システムとしての応用化可能性を示唆しているが危険率(疑似陰性)について考察も必要と考える。今後、標準とされている方法に対してどれだけ有用であるかを検証することが望ましい。
被ばく線量評価における新規細胞遺伝学的指標の有用性に関する研究 弘前大学
三浦富智
弘前大学
工藤重光
細胞遺伝学的被ばく線量評価法の一つである未成熟染色体凝縮(PCC)法を用いた線量評価におけるcell-cycle progression index (CPI)の有用性を検証した。ボランティア21名から得られた末梢血に各線量(0〜10 Gy、1.0Gy/min)のX線を照射し、分離リンパ球培養後、 PCC法による染色体標本を作製した。その後CPIを求め解析を行った結果、CPIと線量には有意な相関があり、個人間、年代別、男女間のCPIに有意な差は認められなかった。従って、CPIは被ばく線量評価に有用な指標であることが明らかとなり、さらにCPIと被ばく線量との検量線を作成することができ、被ばく線量評価のスクリーニングにおける応用化が期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。細胞遺伝子的被曝線量評価法の一つである未成熟染色体凝縮(PCC )法を用いた線量評価におけるCPIの有意性が本測定において認められたことは評価できる。一方、年齢別有為差や性別有為差の評価、被爆後の時間経過時間の定量性への影響、より一般的な1-100mSvレベルでの評価、既存方法との比較等、自動解析システムの開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、医学的な知見を有する専門技術者の参画を得てシステム開発に取り組み、現地の実情を踏まえて研究者間の連携を強化しつつ医学的見地から貢献することが望まれる。
培養細胞を用いたペルオキシソーム増殖剤の肝発がん性の短期評価法の開発 弘前大学
土田成紀
弘前大学
工藤重光
ペルオキシソーム増殖剤(PP)には高脂血症の治療薬など産業上重要な化合物が多いが、長期投与でラットやマウスに肝がんを誘発し、その発がん性の迅速な評価法が求められている。化学物質の安全性の評価は、世界的に動物個体を使用せず、培養細胞などによる方法に変化しつつある。しかし、PPでは動物個体を用いる方法しかなく、90週間の長期投与を行っているのが現状である。本研究は、培養細胞を用いてPPの発がん性を2-3日間の処理で評価できる方法を開発するため、培養肝細胞で、PPの発がん性を予測できる遺伝子を探索し、6種類の候補を見出した。一方、星細胞はPPの直接の標的ではないことが判明し、他の細胞を肝細胞と組み合わせることが必要と考えられた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に異なる感受性細胞でのマーカー探索が進み、候補がいくつか得られた点に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、今後もさらに展開することで、知財や社会に還元できる成果が期待できる。テーマ自体は社会的にも需要があるので、実用化が望まれる。今後は、計画通りに研究が推移し、結果も比較的明確である。まだ実験数が不十分であり、今後規模を広められれば、PP剤の細胞での発がん評価系構築につながる。現状でえられたマーカーの成果は、今後の産業応用のために発表との兼ね合いはあろうが早期に知財を保護できるような形で進めることが期待される。
仮想立位CT画像の生成とその応用 岩手県立大学
土井章男
岩手県立大学
岸本輝昭
人工膝関節置換術では、下肢全長の立位レントゲン画像(CR画像)を使用して行われているが、正面と側面とは別々に撮像するため、矛盾のない、正確な術前計画が困難であった。また、CT画像は臥位置で撮像し、上半身の荷重が膝部分や下肢に作用しないため、正確な荷重線や膝軟骨の状態が立位レントゲン画像のものと大きく異なっていた。本研究では、この問題点を解決するために、臥位のCT画像から、直接、構造解析による姿勢シミュレーションで、仮想立位CT画像を作成する手法を提案する。本方式では、レントゲン技師の負担などもなく、誤差の累積も防ぐことが可能である。また、全体の処理は、コンピュータ上で行うため、全自動化も可能である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。上半身の荷重がかかった状態における下肢全体の仮想CT画像を作成する一連のシステムを完成したことは評価できる。本研究開発は、立位における力学応答の推定が中心課題と考えられ、医師による評価結果は今後の応用展開や産学連携による技術開発の促進に大きな意味を持つものである。今後は、整形外科領域での現場の具体的なニーズに即した有用性を示した上での技術的検討やデータが積み上げられることが望まれる。
軽量コイルにより鼓膜を加振する次世代型補聴システムの開発 仙台高等専門学校
濱西伸治
仙台高等専門学校
庄司彰
本課題では、筆者らが開発した、イヤホンを用いずに鼓膜面に軽量のコイルを留置し、それらを加振させることで補聴効果を得るという「次世代の補聴システム」の更なる高機能化を目指し、入力した音を忠実にコイルの振動で再現し、かつ、音源の位置を正しく知覚(方向定位)出来るようにするための制御システムを共同で試作する。鼓膜・耳小骨を忠実に再現した「中耳模型」に補聴システムを取り付け、実音源による鼓膜振動と、補聴システムによる鼓膜振動のパターンを比較し、低周波数以外では、振動パターンが一致していることを確認した。また、低周波数でのひずみの原因を調べるため、ヒト頭部モデルによる有限要素法解析も行った。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に「次世代の補聴システム」にふさわしい更なる高機能化を目指し、入力した音を忠実にコイルの振動で再現し、かつ、音源の位置を正しく知覚(方向定位)出来るようにするための制御システム開発に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、実音源と補聴システムによる鼓膜振動間における歪みの比較では1〜10kHzでは両者の歪みが5%以内と当初の目的を達成している。一方0.5Hzでは20%以上あって振動パターンは一致しなかった。しかし、実音源に対する鼓膜振動の歪みは50%と改善されている。0.5Hzは低音領域であり、高齢者には聞きづらい。その原因を明らかにするために頭蓋モデル、空気モデルによるアルゴリズムを用いた結果、空気圧分布が影響している点を明らかにした点などで今後の実用化が期待される。
非結核性抗酸菌症の臨床検査を目指した病型判定法の最適化 東北大学
菊地利明
非結核性抗酸菌症は致死的な慢性呼吸器感染症に進展し得る疾患である一方で、病状が数十年間安定している病型も知られている。進行型と安定型のどちらの病型かを判断する方法はなく、本症を診療する上で大きな課題となっている。先行研究では、非結核性抗酸菌症患者の病型は、その患者から検出された非結核性抗酸菌に依存し、菌ゲノム上に散在する多型縦列反復配列領域内反復数で、病型を予測できることを示した。しかしこの先行研究では、菌ゲノム上の多型縦列反復配列領域16ヶ所を調べなければならず、臨床検査法として技術移転を進める上で大きな障害となっていた。これに対し当該研究開発では、当初の目標を上回る感度と特異度を保ったまま、病型を予測するのに必要な解析領域数を目標の4分の1にまで減らすことに成功した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、予測方法を変えただけで精度が格段に上がり、さらに多数の例を追加して検討を加えた結果、16から4ローカスに大幅に対象を減らしてもともに70%以上の特異度(77%)、感度(89%)が得られたという結果を得ている点は評価できる。学術的には、その方法で臨床検査に発展させることは十分価値があると思える。一方、技術移転の観点からは、キット化のための企業との連携が必須と思われる。企業ニーズを把握しながらの共同研究の計画、さらに海外の展示会での発表計画はあるようなので、企業との共同開発の可能性は高いと思われる。今後、非結核性抗酸菌症の治療の要不要を判定する検査という形での医学応用で、社会還元につながることが期待される。
次世代X線CTおよび、国家安全保障への応用をめざした真空紫外線発光シンチレータとガス検出器による高効率かつ高速イメージング放射線検出器の開発 東北大学
黒澤俊介
本研究では減衰時間が短く医療用などの高計数率放射線測定などへ応用が期待されながらも未開拓分野であった真空紫外線発光シンチレータの開発を行った。例えば1)従来のシンチレータの発光量に比べて目標値の2倍を超える明るい新規シンチレータの開発に成功し、2)目標通りテフロンテープを巻く作業に比べて簡単な真空紫外線発光シンチレータ用の塗布型反射材の開発に成功し、既存のテフロンテープ使用時に比べて110%以上の発光量を得ることができた (目標値はテフロンテープの発光量の80-90%)。今後はシンチレータの読み出しであるガス光電子増倍管の検出効率のさらなる向上を目指して、例えばガスの種類の最適化等を行ってゆきたい。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、真空紫外線発光シンチレーターの開発において、目標値の2倍を超える新規シンチレーターが得られており、従来の反射材であるテフロンと比較してフッ化物を用いた方法で、目標値を大幅に上回る結果が得られている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、ガス光電子増倍管の特性向上、光グリスの改良、シンチレーター材料の量産化等の技術的課題が明確に示されているので、これらの課題解決により実用化が望まれる。今後、本技術は医療用放射線イメージング機器への応用が見込まれ、社会還元に導かれることが期待される。
脳機能イメージング用マイクロイメージングプローブの開発 東北大学
小山内実
神経回路における情報処理様式及びその動特性を解明するためには、ニューロン活動を多細胞から同時にイメージング法で計測し、単一ニューロン活動を自由に制御する必要がある。そこで昨年度に引き続き、脳機能イメージングのためのマイクロイメージングプローブの研究開発・評価を行った。最適な光学系を得るためにより詳細な検討を行い、最も効率の良い光学系を見出し、イメージングプローブのプ ロトタイプを完成させた。このプロトタイプを用いて蛍光測定を行ったところ、蛍光ビーズ像、脳ブロック標本中の蛍光タンパク質を発現している細胞の画像を捉えることに成功した。さらに、脳スライス標本におけるカルシウム動態をも捉えることに成功した。この成果は、本課題で開発したマイクロイメージングプ ローブが直ちに in vivo 脳機能イメージングに使用できることを示している。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目的はほぼ達成されており、特に実際に生体におけるイメージングに成功していることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、今後の研究計画に関して、小型化と改良が示されているのみで有り、具体性にやや欠ける。現時点での問題点を整理するべきである。研究成果は医療機器の大きな改良に繋がり、波及効果は関連する光学的計測技術に及ぶ。イメージングプローブの光学系の設計及び試作、光学特性の検討、さらに生体試料からのイメージングまで、申請書に記載された研究計画がほぼ完了している。更に、試作機の制作には企業が係わっており、今後の連携も期待できる。ただ、低侵襲性が本開発のポイントで有ると思われるが、この点についての検証は充分なのか不明である。また、研究実績は内部資料としては蓄積されているのみで、特許、論文、学会発表等の公的なエビデンスが乏しい。まずは、新規性を整理して早急に特許化することが強く望まれる。学術的にも興味深い手法であると考えられるので、積極的な外部へのアピールを期待したい。
カテーテル型パルスウオータージェットメスによる新しい食道癌内視鏡的治療技術の開発−全身麻酔下豚を用いた性能の検討− 東北大学
宮田剛
食道内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施行するためのパルスウォータージェットメスの開発と製品化が最終目標である本研究課題では、研究期間内に(1)「内視鏡操作下における切開能の微細な制御と正常構造物の温存」 (2)「安全な手技と操作性の確立と既存の手技に対する優位性」を動物実験で明かにすることを目標としている。カテーテル型パルスウォータージェットメスの切開能と血管温存能はレーザーエネルギーとstandoff distance(レーザー照射部とノズルとの距離)によって調整でき、豚ESDにおいて良好な視野と操作性のもと、既存の機器と比較し剥離面の熱損傷を減少させ、創傷治癒を促進させることを明らかにした。当初の目標を達成したと考え、東北大学医学部倫理委員会の承認を経て、次段階であるヒト摘出食道で至適条件を検討する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。本テーマでは最終的にブタを用いて内視鏡下パルスウォータージェットメスの有用性を示すことである。トレーニングは摘出食道で行ったが、評価実験は予定通り生きたブタで行い、予測通りの結果を得ている。強いて言えば、ブタのMRで撮り、周囲組織に対する影響も見るべきであると思われる。次のステップでヒトでする場合には、パルスウォータージェットメスのみならず内視鏡の鉗子に肝動脈造影用のカテを使っているので、これの審査も必要となってくると考えられる。
がん個別化治療を目指した標的受容体タンパク質内修飾の高速解析技術 東北大学
立川正憲
東北大学
高橋直之
近年、細胞増殖因子受容体のリン酸化修飾を分子標的とした抗がん剤が開発され、優れた効果が期待されている。これらの抗がん剤の効果の発現には、がん細胞における標的受容体の発現が不可欠であることから、受容体の発現量を計測することが、分子標的薬の個別化治療に必要である。そこで、本研究開発では、増殖因子受容体タンパク質の定量及び修飾状態の高速解析技術の確立を目指している。本研究開発では、高感度かつ高信頼性をもった増殖因子受容体の定量質量分析に必要な、受容体タンパク質の細胞内情報伝達部位を含んだ人工内部標準タンパク質をデザインし、創製した。本技術の実用化によって、抗がん剤の有用性や副作用を、投与前に予測する精度の向上が期待される。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まったEGF受容体全長の安定同位体標識人工内部標準蛋白の合成に成功したため、当初予定していた計画よりも飛躍的に進歩した成果が得られたと考えられる。収量の増加を検討課題としているが、さらに今後リン酸化以外の修飾や汎用性についても検討してもらいたい。技術移転の観点からは、既に企業との連携を行っているようであることから、比較的近いうちに社会還元が可能となる技術と期待される。
低侵襲腫瘍位置計測と変動予測による汎用型超高精度リアルタイム追尾照射技術の開発 東北大学
本間経康
東北大学
高橋哲
本研究開発の目標は、普及型装置を用いた体幹部定位照射の超高精度化に必須な2大基礎技術である、安全な腫瘍位置計測法ならびにその変動予測法を融合し、臨床要求を満足する精度とリアルタイム実装を行うことである。精度達成に必要な手法改善を行い、新たに取得した臨床データ等を用いてその精度を検証した。その結果、位置計測と予測を融合した場合の精度検証は十分行えなかったが、個々の位置計測精度ならびに予測精度の向上に成功し、融合精度の目標達成が十分可能であることが示唆された。また、画像計測手法を並列計算するためにアルゴリズムの定式化を工夫した結果、期待された高速化を実現でき、目標のリアルタイム実装が可能であることを実証した。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に金属マーカ刺入を伴う従来法とはまったく異なる無侵襲的位置推定法により、呼吸に基づく体動の影響を抑制して目的部位のみに放射線を照射する追尾システム技術に関しての成果が顕著である。一方、技術移転の観点からは、精度と計算時間の点でほぼ実用化に支障のないレベルとなっており、臨床評価実験と薬事法審査を企業とともに進める段階で、企業選定も進めている。高齢化によるがん患者増加にともない、放射線治療の対象例も増えており、更なる技術移転、実用化が望まれる。
生後5日以内診断可能な「新生児難聴スクリーニング装置」の実用化開発 東北大学
和田仁
東北大学
芝山多香子
我々が独自開発した<中耳診断装置(SFI meter)>の実用化を睨んだ装置開発を更に進め、<臨床データ取得・治験に繋げるデータベースの構築>を目的とした。 実用化開発は、システムの小型化、静音化、安定化に取組み、従来システムに比べ60%小型化、 20 dBの静音化を実現した。 システムの制御に<リアルタイムOS(RTOS)>を採用しシステムの 安定化を図り概ね計画通りに開発が進んだ。<臨床データの取得・データベース構築>は、正常聴力を有する新生児の目標をほぼ達成した。 聴覚疾患を有する新生児に関しては、計画実施に至らなかった。 今後、聴覚疾患を有する新生児に対する計測実施に向け着実に準備を進めていく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ハードウエアの課題は残るが、集積化・静音化を達成し、計測成功率を向上することができた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、聴覚異常者に対する検証は未達成でり、装置にめどがついたことでさらなる検討ができると思われる。先行研究の課題を着実に解決しながら臨床デ−タが解析されており、技術移転に繋がる可能性は高い。今後、社会的ニ−ズも高いので実用化が期待される。
ELIDファブリケーションの強靱な非晶質酸化層による「高耐久・顎骨再生インプラント」創製 東北大学
石幡浩志
東北大学
芝山多香子
歯は、歯根表面と歯槽骨と歯根膜を介し接合し、加重分散を図り耐久性を維持するが、機能的組織結合はインプラント−顎骨間結合(オッセオインテグレーション)には見られず、耐久性・寿命には限界がある。
本課題でインプラント表面の機能化により顎骨間との3次元的線維結合構築を目指し、ELID研削法で純チタン材表面に微細構造 (マイクロトポグラフィー)を設ける表面改質を試み、ヒト由来組織培養細胞反応を検証した。 ELID法で改質された純チタン表面では培養細胞は旺盛に増殖・伸展し、生成表面トポグラフィーに沿った伸展が認められた。微細表面改質を施したインプラント体は生体と強固に接合し組織を介した機能的接合構築に有意義と思慮できる。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、細胞親和性の高い研削表面の加工技術を確立した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、実際に骨形成、骨結合を促進する研削法の幅広い検討、 細胞の親和性と骨形成、骨結合の促進は必ずしも比例しないので、vivoでの有効性の検討が必要と思われる。今後、新しいデンタルインプラントの開発という点での社会還元が期待される。
刷り込み(インプリント)遺伝子を標的とした男性精子のDNAメチル化異常診断システムPCR-Luminex法の開発 東北大学
有馬隆博
東北大学
渡邉君子
近年晩婚化、少子化に加え、医療の進歩により生殖補助医療(ART)は一般的に定着している。しかし、ARTの普及により、インプリント異常症は増加傾向にあり、安全な治療法の確立が期待されている。不妊症の約半数に精子の異常がみられるが、質的な精子検査はこれまでない。今回の目標は、PCR-Luminex法を用い、世界初のオンリーワン精子検査法として、メチル化インプリント領域の診断システムを再構築することで、Multiplex PCR法とLuminexシステムについて条件検討を行なった。今回設定した目標は十分達成できた。今後引き続き公的支援制度を活用し、次期試作品の開発、出口(キット化、受託)を目指し、実用化に挑戦する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、メチル化インプリント領域の診断システムについて、Multiplex PCR法とLuminexシステムを用いた条件検討がなされており、対象とした18箇所のメチル化部位中15箇所のメチル化異常の検出が可能である点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、残りの3箇所の方法を改良を重ねて確立し、展開として培養細胞、精子検体でのデータ取得も進めているので、地元企業との連携を早急に行い実用化することが望まれる。今後、新規精子検査法として利用されることが期待される。
心不全の進行を完全抑制する新しい遺伝子治療法の開発 東北大学
熊谷啓之
東北大学
渡邉君子
心不全は先進国で入院・死亡に至る最大の原因である。特に拡張型心筋症に代表される重症例では、根治療法は事実上、心移植のみである。ところが移植には社会的、医学的な問題が山積しており、代替治療法の開発が待ち望まれている。
代表者はこれまでに培養細胞レベルで多様な心不全モデルを作出し、それらに共通する分子異常の同定に成功している。心不全はジストロフィンなど心筋細胞膜の補強にはたらく蛋白群が分解酵素カルパインにより破壊され増悪していくが、代表者はこの酵素活性を暴走させている分子機序を世界で初めて明らかにした。本研究では、この機序に基づくラット重症心不全の遺伝子治療モデルを作製すべく、まずはツールとなる発現ベクターの構築を行った。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、必要なレンチベクターの作製は培養細胞系での確認により完成した点は評価できる。一方、本申請課題の中心である蛋白のドミナントネガティブ型をコードする遺伝子の動物心臓への直接的導入が人材面の問題から計画変更され、ツ−ルとなる発現ベクタ−の構築のみとなっており、動物心臓への遺伝子発現の実験を進めることが必要と思われる。今後、心不全に対する遺伝子治療は臨床上有用と考えられるので、研究の展開が期待される。
生体組織内一分子イメージング用量子ドットツールの開発 東北大学
鈴木康弘
東北大学
渡邉君子
量子ドット(QD)による、細胞内分子可視化には、簡便なQDの細胞内導入技術開発が不可欠である。今回は、 我々が開発した高効率膜透過性ペプチド(SCPP)を利用して、細胞内分子可視化法を開発した。 細胞内部で起きる酸化反応でQD表面から離脱するよう加工したSCPPをQD上に重合し、さらにTagリガンド (TagL)分子を付加した。 このSCPP-QD-TagLを用いて、細胞に発現させたTag融合細胞内分子の可視化を行う と、培養液に添加するのみでQD の90%が細胞内に侵入し、細胞内Tag付加分子の可視化を可能とした。しかし、 一部のSCPPはQDから離脱せずにQDの細胞内壁への非特異的吸着を起こす可能性も示唆され、SCPPが完 全に離脱するよう重合方法のさらなる改良が必要である事も示された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。一部に新たな課題が発生しているが、全て改良されて目標は達成している。特に細胞膜透過効率の高い新規CPP結合QDが開発されたことは評価できるが、分子合成を企業に依頼し、また特許出願がなされていないことが気掛かりである。また、今回開発された分子に、まだ改善点があり、その点からもシーズ技術が確立されていない状態であるとは言える。一方、技術移転の観点からは、研究グループが一分子観察技術を有していることはわかるが、CPP分子製作において、どのような貢献をしているのか、どのようにシーズ技術を特許として確立させるのかが見えてこない。また、今回開発された分子は、細胞内動態観察に利用できる段階ではないため、シーズ技術開発の段階を抜け出せていない。将来、本技術を応用することにより、細胞内における種々の分子の動態を調べることができれば、疾患原因の解明や医薬品の開発に貢献することが期待されるが、その段階に至るまで、あるいは事業化されるまでにはまだまだ時間がかかると予想される。何より、シーズ技術の確立を急ぐべきであり、次のステップに進むのはその後である。本研究開発により一定の成果が得られ、基礎研究としては素晴らしいが、改善点が残されていることから、事業化のためのシーズ技術が確立した段階とは言えない。細胞膜透過効率の高い量子ドットが開発され、また細胞内でのエンドソーム滞在率を著しく減少させたこと自体は素晴らしいが、分子合成を企業に依頼していることから、新規分子の分子特許を研究責任者らが取得できるのか気になる。
2型糖尿病DNAマーカーの臨床検査化 東北大学
山田哲也
科学技術振興機構
戸部昭広
独自に開発したDNAアレイでの検討により見出された2 型糖尿病と関連するCNV に特化し、第4 番染色体4p16.3 領域の約800kb-1.7Mb の範囲内のコピー数の減少を、定量PCR にて検出することを目標とした。これまでに18種類のプライマー/プローブ配列を検証することによって、患者のすべてにおいてコピー数減少を検出する共通のプライマー/プローブ配列を見出すことはできなかったが、一部の患者においてコピー数減少の検出に成功した。このことは、定量PCRのシステムがコピー数の減少を検出できるポテンシャルを有していることを示しており、更に配列の検証を進めることによって、より感度を高め得ることが期待できる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも定量PCR法によって2型糖尿病の診断や発症予測に寄与するマーカーの技術に関しては評価できる。一方、再現性ある結果の取得に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、他の糖尿病のDNAマーカーに比した本方式の優位性を明確にされることが望まれる。
生体センサーを利用した環境ストレス検出系の確立 東北大学
山本雅之
科学技術振興機構
戸部昭広
活性酸素や環境汚染化学物質に加えて、酸素や栄養の過不足は生体にとってストレスの原因となる。本研究では、「環境ストレス」に対して生体が備えている防御システムを利用し、環境ストレスモニタリング系の開発を行った。転写因子NRF2が各種環境ストレスによって細胞内に蓄積することに着目し、NRF2と蛍光タンパク質を融合したプローブを構築して、主に酸化ストレスを感知する検出系の確立に成功した。NRF2は様々な疾患に関与していることから、本システムを応用したNRF2活性化剤の化合物スクリーニングを開始した。また、造血因子エリスロポエチン(EPO)の遺伝子発現が低酸素ストレスによって亢進することから、EPO遺伝子発現に同調して蛍光タンパク質を発現する遺伝子改変マウスを用いた低酸素モニタリング系も開発した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にNRF2制御剤の大規模スクリーニング系の技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、基本的な技術開発はほぼ達成されており、企業化を目指す分野並びにそのための方法の明確化が望まれる。今後は、研究代表者を取り巻く周辺のサポート(技術移転機関による事業化に向けた支援戦略等)が期待される。
骨代謝促進により骨再生させるリン酸カルシウム人工骨の開発 東北大学
上高原理暢
科学技術振興機構
山口一良
高齢化が進行している日本においては、骨を修復する技術が重要になっている。本研究では、細胞や薬剤を伴わなくても、骨代謝を促進し骨再生により骨を修復できる人工骨として、ケイ酸を含有したリン酸カルシウム人工骨の開発を目指した。ケイ酸を固溶したケイ酸含有リン酸三カルシウムの合成に成功した。さらに、ケイ酸含有リン酸三カルシウム粉末の成形体を水熱処理したところ、柱状粒子からなるカルシウム欠損組成の水酸アパタイトブロックを得ることにも成功した。これらの特性を調べたところ、リン酸三カルシウムにおいて、ケイ酸の添加が骨との親和性を高める可能性を明らかにした。これらの知見は、骨代謝促進により骨再生させるリン酸カルシウム人工骨の開発にあたり、材料合成プロセスの確立ための基礎的知見として非常に有用である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ケイ素を含有した材料合成に成功している点は評価できる。一方、最終的な細胞を用いた実証実験で骨芽細胞の増殖傾向が認められず、当該材料の効能が不確かである。骨芽細胞の増殖活性のみで人工骨材料として好適であると断定できないが、何らかの細胞機能にて評価しなければならずその点を明確にする必要がある。又、細胞活性が1.5倍向上するというその数値目標の裏付けも必要であり、実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、学術的にも医学的にも明確にアピールできるポイントが望まれる。
形質膜シアリダーゼを標的とするがんオーダーメイド医療の開発 東北薬科大学
宮城妙子
科学技術振興機構
山口一良
がんで過剰発現するEGF受容体(EGFR)は、がんの予後診断や治療の標的分子として広く臨床利用されている。しかし、そのキナーゼ阻害剤は、肺がん等において、遺伝子変異(+)のみ薬剤効果があり、その後の耐性出現など、問題点も多い。研究責任者らは先に、形質膜局在シアリダーゼ(NEU3)が複数のがんで異常亢進し、EGFRの活性化を介してがんの悪性形質を促進することを見出した。本課題では、表層膜局在のこのふたつの分子に着目し、NEU3の診断・治療薬としての有用性について検討した。その結果、NEU3発現が肺がんのEGFRキナーゼ阻害剤の薬剤感受性や耐性に関与し、前立腺がん等の悪性度診断に有用であることがわかった。今後、臨床検体による検討を進め、臨床現場への成果還元を目指したい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、EGFRに変異を持たず、ゲフィチニブによる増殖抑制効果がないとされていた肺がん細胞A549細胞で、NEU3を高発現するとEGFRの活性化が亢進するだけでなく、ゲフィチニブに対する薬剤感受性が上昇し、対照細胞と比較し細胞増殖が有意に抑制された点は評価できる。一方、EGFR変異のない症例でのシアリダーゼの悪性症例の評価や、NEU3の診断・治療薬としての有用性について技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後の応用については、さらなる基礎的研究が望まれる。
培養器内で歯胚形成を可能にするスフェロイド融合培養法 秋田大学
小代田宗一
秋田大学
伊藤慎一
歯胚形成には上皮由来のエナメル芽前駆細胞と間葉系由来の象牙芽前駆細胞の細胞間の相互作用が重要である。本研究では申請者らが樹立したエナメル芽前駆細胞株と象牙芽前駆細胞株を用いて、2種の細胞間に適切な相互作用を誘導できる3次元培養組織を構築することを目標とした。両細胞に適切な空間配置と細胞密度をもたせるためにスフェロイド融合培養法を開発し、また、この培養系を詳細に評価し検討できるように2種の前駆細胞に異なる波長の蛍光タンパク質を発現させ、培養組織中での両細胞の観察を可能にした。この培養法の検討により培養器内での歯胚形成を可能にし、将来的な歯胚移植再生治療の基盤技術の確立を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、エナメル芽前駆細胞と象牙芽前駆細胞のそれぞれに異なる波長の蛍光タンパク質を発現させてスフェロイド融合培養を行い、組織形成時の歯胚前駆細胞の動態を観察し、当初の目標を達成した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、歯胚における細胞外マトリックスの産生に続く象牙質、およびエナメル質の形成を齎す培養法の検討が望まれる。今後、薬事法申請と治療現場で活用できる技術につながることが期待される。
細胞培養に適した生体吸収性材料の開発 秋田大学
寺境光俊
秋田大学
伊藤慎一
ポリ乳酸-ポリカプロラクトンマルチブロック共重合体を合成し、これを用いた柔軟な生体吸収性高分子による細胞培養基材の開発を行った。本マルチブロック共重合体は適度な加水分解特性を示し、水がしみこむ多孔質膜を作製することができた。実験用がん細胞(HeLa細胞)を親水化した多孔質マルチブロック共重合体上で培養したところ、細胞が仮足を伸ばして成長することが観察された。実験動物(ラット)を用いた生体内分解挙動を検討したところ、1週間では膜がほぼ変化なく残っており、6週間でも膜の残存が観察された。これら研究成果を元に特許申請をおこなった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、親水性多孔質膜及びその製造方法、並びに医療用癒着防止膜及び細胞培養基材について新しい技術的成果を得ており、特許を出願している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、基礎データーの不足部分を取得するための対策をよく検討することが望まれる。細胞培養基材として、繊維芽細胞培養から幹細胞への展開も検討しているので、今後、このような生体基材はさまざまな医療で活用できる可能性をもっており、社会還元に導かれることが期待れる。
高度の排便障害患者における簡易的衛生自己洗腸補助具の開発 弘前大学
萱場広之
秋田大学
伊藤慎一
目標
高度の排便障害患者が簡便に洗腸を行える器具を製作し、新たな治療を提供することで生活の質、尊厳を向上することを目的とする。
その達成度
器具の備えるべき条件として、安全性、携帯性、操作性に優れ片手で操作できること、商品としてのデザインに優れること、洗浄などの保守が簡単であることが挙げられる。現在設計試作の段階であるが、第5号試作まで進んでいる。初期のものに比べて携帯性、デザイン性、保守の簡略化が進んでおり、商品化を目指した量産品としての検討も開始され、いくつかのコンセプトモデルが提示され、その中から経費、採算、構造の単純性などから1モデルの試作が終了した。
今後の展開
試作器による実地検証を経て、試作モデルの改善点を検討する。さらに商品化の可能性を検証する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。申請時に予定したモデルが完成し、目標がほぼ達成された。しかし、モデルは予想と異なりかなり完成度が低い。安全性、強度という医療器具としての本質的な部分が全く検討されていない。実用試験による問題点の抽出、デザインに関する検討が行われず、衛生面については問題意識が低い。器具全体が汚れた場合の対策(便の突出、取り付け部分の隙間)が検討されていない。ただ、今回の研究を通じて、今後の課題が医療器具としての安全性、強度、有効性にあることが明確になった点は評価できる。本モデルの課題として、1)重量、2)使いやすさ(片手操作、洗浄時間、携帯)、3)耐久性、4)デザイン性、などの要件が上がっているが、今回は1)と2)の一部について目標が達成されたに過ぎない。本研究者は最大の問題点は価格面としているが、これは需要によって大きく影響を受ける。既に、次のステップにおいてユーザーモニタリングが検討されているが、需要を高めるために排便障害者による試作品モニタリングを実施し、問題点の抽出、改良を繰り返さなければならない。それでも、市場規模を考えた場合、社会に広く応用展開できるとは考えにくい。特定の疾患患者さんにとっては大きな意味を持つ研究と思われるが、中々商品化には繋がりにくいため、社会的な応用展開に至るには、まだ多くの課題が残っている。その課題の解決のためにも、商品化については企業等の積極的な支援を受ける必要があると考えられる。
新しい緑内障実験モデルによる神経保護薬の効果検証装置の開発 秋田大学
石川誠
秋田大学
伊藤慎一
本研究の目標は、緑内障の神経保護効果を検証する装置の開発である。これまで緑内障の神経保護効果を正確に評価する実験系が確立されず、神経保護型緑内障治療薬の実用化が遅れていた。本研究では、閉鎖式加圧装置をもちいて分離眼球標本を加圧し、急性緑内障を誘導する実験系を開発した。その過程で、急性加圧傷害の主要なメカニズムは、MAPK、TGF-beta、及びJak-Stat signaling pathwayを介したグルタミン酸興奮毒性であることが分かった。さらに、本実験系をもちいた緑内障神経保護効果のスクリーニングが可能となった。今後は、本システムをもちいて神経保護型緑内障治療薬の実用開発を行なう予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。新規加圧システム自体の構築は成功していて、その評価を非常に慎重に行っている段階で、当初に設定された目標はほぼ(90%以上)達成されたと考えられる。新規加圧システム自体は十分に技術移転に繋がると考えられるが、研究責任者らは、非常に慎重に、システムの評価をさらに行った上で、技術移転できると考えている。用いる薬剤の少量化や、機械化によるデーターの客観化の効果は非常に大きく、緑内障研究全体を活性化することが期待できる。技術移転の観点からも、高眼圧によるものではない緑内障も含めて、緑内障の実験モデルを開発する端緒になるシステムと考えられ、技術移転をともに行う企業は必ず出現すると考えられる。以上の事から、社会還元に繋がる可能性は極めて高い。
CRP遺伝子多型による次世代固形癌リンパ節転移リスク診断法の開発 秋田大学
本山悟
秋田大学
伊藤慎一
CRP遺伝子多型によるリンパ節転移支配が起こるメカニズムの解明を目的とした。CRP 1846C>T多型(rs1205)により、宿主のCRP(蛋白)産生が決定されるが、この際、宿主側CRP産生が癌のリンパ節転移に関与するとの仮説を立て動物実験およびそのメカニズム解明のための研究を行った。その結果、宿主側CRP産生が固形癌のリンパ節転移に関与することを証明した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。しかし、主たる実験計画であったCRPの遺伝子導入やノックアウトマウスを用いた実験が実施されておらず、さらに他の固形癌での検討もなされていないため、目的が達成されたとは言えない。しかし、CRP投与によってリンパ節転移が減少する傾向があることを示せていることについては、今後の研究開発に繋がる可能性はある。今後の展開については、まず当初の実験計画を実施することを望む。癌腫内のCRP発現変化とリンパ節転移の関係を明らかにするためには、CRP投与実験だけではなく、主たる実験計画として掲げていた遺伝子導入やノックアウトマウスを用いた実験による証明が必要である。また、他の固形癌での臨床データの解析も実施し、固形癌リンパ節転移リスク診断におけるCRP多型の有用性を証明する必要がある。
骨形成促進金属イオンを含む骨疾患治療用包帯の開発 山形大学
山本修
山形大学
歌丸和明
亀裂や複雑骨折さらに骨再生における骨疾患治療は侵襲性がある金属製固定具や足場材料で骨固定し、生体の自発的骨形成能力を期待して行われる。しかし、高齢者や骨疾患患者は骨形成能力が低下しているため、長い治癒期間が必要となる。申請者は、亜鉛イオンに高い骨形成促進効果があること細胞実験から発見した。本研究課題は、この亜鉛イオンの優れた骨誘導性に注目し、コラーゲンに亜鉛イオンを含ませた骨疾患治療用包帯の開発し、頭蓋骨及び大腿骨の再生能力を検討した。動物実験の結果から、8週程度で頭蓋骨及び大腿骨が再生し、自家骨と組織学的に同一であることがわかった。亜鉛イオンは従来の骨再生因子より有意性が高く、整形外科、口腔外科及び形成外科領域での骨治療に応用できると考えられる。今後、動物の個体数を増やし、治療用材料としての評価を行い、治験を目指していく。 
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。しかし、亜鉛含浸材で骨形成の可能性が認められているが、解析手法に大幅な改善が必要と思われること、有効性を言うにはあまりにも検体数が少ないことなど、医学研究者との討論が不足している点は否めない。実験結果についての解析、および、それに応じて追加されるべき実験などの考察が不十分と感じられ、結果的に今後の計画も単なる期待に留まっているように思われる。医との連携を強めることが先決事項である。また、計画中に記載はないが、亜鉛イオンの徐放挙動についてのデータも必要であろう。染色による確認なしに骨形成とは言えない。8週で骨形成100%という表現は考えにくい。全体に、予備実験的な結果に留まっており、今後説得力のある実験プロトコルを作成して進める必要性を感じる。医学研究者との連携なしにこの種の開発は不可能と思われるので、是非体制づくりを進め、今回の実験結果の有効性をアピールできるよう継続して研究を進めていただければと思う。
PCR法に頼らないDNAインク検出のための新規マルチカラー蛍光核酸の開発 日本大学
齋藤義雄
日本大学
松岡義人
本研究課題は、目的の塩基配列を持ったDNAを検出するために用いる蛍光DNAプローブの開発で、これまでに培ってきた様々な色素データを基にして、新たな高感度なマルチカラー蛍光DNAプローブの開発を行うものである。本研究課題で開発している蛍光DNAプローブの特徴は、プローブ周辺の極性環境変化に伴って蛍光強度のみならず蛍光発光波長が変化する点にあり、その心臓部にあたる環境感応型蛍光ヌクレオシド(モノマー)の開発を行った。現在までに、いくつかの環境感応型のマルチカラー蛍光ヌクレオシドの開発に成功し、さらに候補となる分子についてはDNAオリゴヌクレオチド鎖への導入にも成功した。初期段階の性能評価を行ったところ、蛍光強度および発光波長の変化により標的DNA配列の検出が可能であるという結果が得られており、今後の発展・実用化に向けて更なる性能の向上に取り組んでいる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。環境応答型蛍光性ヌクレオシドを利用したDNA検出プローブの研究である。蛍光プローブの設計コンセプトと実際の応用も明確ではっきりしている。当初の目標にしたがって実証実験は進んでいる。今後の研究について方向性や具体的な方法も決まっているようである。特許出願も行なわれており、産学との共同研究も検討されている。現状、オリゴヌクレオチド蛍光プローブの性質は、ヌクレオシドレベルから期待される性質を今の所うまく生かせていないが、問題点も分かっており次の方向も決まっているようである。今後の進展を期待する。
迅速かつ高精度で容易なEPOドーピング検査法の開発 福島県立医科大学
志村清仁
スポーツ競技における持久力の強化に組換えエリスロポエチン (rEPO) が不正に使用される。EPOは生理的にも存在するため、ドーピング検査では生理的EPOからの分別定量が必要である。現行法はゲル等電点電気泳動と免疫染色を組合せて行われており、高い技術レベルと二日におよぶ時間を要するため、競技終了直後には判定できず、また検査できる検体数も限られる。本研究では本研究者が開発したアフィニティープローブキャピラリー電気泳動法(APCE)を用いて被験者尿中のrEPOの正確な定量を15分以内に完了する方法について、その開発の方向付けを行い、迅速に疑いのない判定を下すための基盤を確立することができた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。EPOドーピング検査には高価な装置を用い、熟練した技術者が行ってもかなり長時間を要する難しい検査である。本研究開発は、簡便な方法で短時間に結果を得られるようにする意欲的な提案であったが、8か月ほどの短期間ですべてを実現するのは当初から困難が予想された。当初予定したscFvライブラリーからの抗EPO scFvのクローニングには成功しなかったが、抗EPO抗体産生ハイブリドーマからの抗体DNAのクローニングに成功したので、アフィニティープローブ調製の可能性は高い。一方、研究者の得意とする試料前処理用アフィニティーキャピラリーの調製には目処がついた。ただ、アフィニティープローブ調製で手間取っていて、今後のアフィニティーキャピラリー電気泳動による高感度検出まで達していないので、今後新たな問題も生じるかもしれない。技術移転の観点からは、今回の研究開発の基礎となる特許は取得済であるが、今回の課題に関しては出願されていない。また、EPOドーピング技術は限られた企業しか持っていないし、他の企業が共同研究に参加するかは判断が難しい。しかし、本研究開発課題は本質的には現存の方法より簡便で短時間で結果の出せる方法であり、共同研究に参加する企業のあることを期待したい。全体としては最終目的の組み換えエリスロポエチン(rEPO)検出法の実現までには、まだ、かなりの実験を要するので、すぐに技術移転につながるのは難しいが、その可能性は高まったと判断できる。ドーピング検査の結果が短時間で精確に得られるようになることは、社会的に大きな意義があるので、実用化を望みたい。
診断法のない小児脳症の新規マーカーの開発 福島県立医科大学
橋本康弘
東北大学
山口一良
小児の熱性けいれん(引きつけ)は、重篤な中枢疾患が原因となっているケースがあるので、救急外来では(脳脊)髄液採取による診断が原則である。診断すべき疾患の中には、1) 髄膜炎(髄液による診断は容易だが、強力な治療が必要)、2) けいれん重積症(鎮静剤の投与により完治)、3) 脳症(代表的なインフルエンザ脳症では、50-60%の死亡率を示す)、以上の3者が含まれる。現時点では、けいれん重積症と脳症を区別するよいマーカーは存在しない。本探索において、申請者らが見出した、脳で作られる糖タンパク質GP-Xが脳症の髄液診断マーカーになることが示され、その迅速測定キット開発が行われ、十分な成果が得られた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に新規糖蛋白質の発見と脳症マーカーとしての有用性を見出した点に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、診断マーカーとしての有用性の確認をし、これができれば測定法については種々の方法が開発されることで実用化が望まれる。今後は、脳症マーカーとしての有用性の確認については症例数が少ないために確定できていないが可能性が把握できている。今後、臨床現場で使用可能な試薬にブラッシュアップしていく必要がある。さらに症例数を増やし、診断方法としての有用性を確認、基準値、カットオフ値の設定、診段基準の設定をされることが期待される。
培養法によらない真菌同定検査キットの開発 福島県立医科大学
錫谷達夫
科学技術振興機構
戸部昭広
福島県立医科大学微生物学講座では、すべての真菌のDNAをPCRで増幅でき、そのPCR産物の塩基配列から菌種同定ができるプライマーを開発していた。しかし、DNAの塩基配列決定は病院で行われる臨床検査としては不向きである。そこで本研究では、この技術を基盤に一般検査として菌種が同定できる検査法の開発を目指した。まず、千葉大学真菌センターで収集されている病原真菌32種、175株を解析し、少なくともカンジダ属の11菌種を同定できる塩基配列を決定した。今後この塩基配列を特許化し、企業と共に検査試薬の製品化を目指す。さらに対象菌種を増加させ、バージョンアップを図る予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にカンジダ属11菌種について菌種同定に利用可能なDNA配列決定は評価できる。一方、技術移転の観点からは、検査キットなどでの実用化が望まれる。今後は、カンジダ属のみであっても臨床上で危険な菌種を簡便に検出することに繋がる可能性があり、社会還元が期待される。
急性骨髄性白血病における新たな腫瘍マーカーの探索 福島県立医科大学
小川一英
東北大学
山口一良
合成DNAマイクロアレイシステムで得られる白血病の予後にかかわる可能性のある遺伝子の中から予後予測あるいは再発の早期予知を可能にする遺伝子(いわゆる腫瘍マーカー)を同定することを目標とする。症例を積み重ねクラスター解析を繰り返したところ68遺伝子が白血病の予後に関係する可能性が高いことが判明した。この中で予後不良症例で強く発現している遺伝子は腫瘍マーカーして活用できる可能性がある。そこで臨床転帰がすでに明らかになっている急性骨髄性白血病症例の初発時の骨髄クロットから得られたパラフィン標本で対応する抗体による免疫染色を多数例で行い、発現レベルと予後を突き合わせることで腫瘍マーカーとして有用な遺伝子を選定する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも白血病の予後に可能性のある9遺伝子の絞り込みに関しては評価できる。一方、薬事申請など長い過程に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、JST地域産学官共同拠点を利用し、研究を加速されることが望まれる。
髄液に特徴的な糖タンパク質によるアルツハイマー病の診断 福島県立医科大学
橋本康弘
東北大学
山口一良
髄液は脳周囲を循環する体液であり、神経系マーカーの宝庫と考えられている。我々は、髄液中のトランスフェリン(Tf)がユニークな糖鎖修飾を受けていることを見出し、この脳型Tfが認知症(特発性正常圧水頭症)の診断マーカーとなることを示した(特開2010-121980)。最近になって、“脳型”糖鎖に的を絞ってスクリーニングし、新たに16種類の “脳型”糖タンパク質を見出した。このうちの1つは、アルツハイマー病(AD)脳に斑点状に沈着しており本疾患との関連が示された。本申請研究では、これらの分子の糖鎖を高感度で測定する新規ELISA法を開発し、その髄液中レベルがAD診断マーカーとなるかを検討する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に新たなAD診断マーカーの候補としてGP-Bを見出した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、症例数を増やしてADのマーカーとしての確立で実用化が望まれる。今後は、診断マーカーに適していることを明らかにし、簡便な診断キットとして利用展開が期待される。
iPS 細胞を用いた喉頭・気管上皮の再生技術に関する研究 福島県立医科大学
大森孝一
東北大学
山口一良
(目標)多分化能と増殖能を有し臨床応用において倫理的問題や免疫拒絶反応を回避しうるiPS細胞から喉頭や気管に存在する線毛上皮細胞への分化誘導法を確立し、分化誘導した細胞をスキャフォールドとともに実験動物へ移植して喉頭・気管の上皮を再生させる技術を開発する。
(達成度)iPS細胞から胚様体を作成し、activinおよび塩基性線維芽細胞成長因子を添加した無血清培地で培養したところ、胚様体の一部に線毛様構造を有する上皮組織への分化が確認された。
(今後の展開)より効率的な線毛上皮への分化誘導に必要な条件(添加する成分の濃度調整など)を検討し、実験動物への移植実験を通じてiPS細胞由来線毛上皮細胞移植による喉頭・気管上皮の再生を図る。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも線毛上皮をin vitroで誘導したことは、技術移転につながる成果であり評価できる。一方、臨床応用可能な人工気管、人工喉頭の開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、実験動物への移植に向けて研究を進展されることが望まれる。
結晶性制御技術を用いたストロンチウム置換アパタイト薄膜の開発 茨城大学
尾関和秀
歯科インプラント治療は年々普及しているものの、低骨密度の顎骨を持つ患者には、適用できないケースもあり、早期の骨結合と骨が増強される骨誘導型のインプラントの開発が望まれている。アルカリ土類金属の一つストロンチウム(Sr)はCaと類似し、骨形成の促進と同時に骨吸収を抑制することが報告され、骨粗鬆症治療薬としてSr製剤が欧州で臨床応用されている。研究代表者らは2003年にスパッタリング法によるハイドロキシアパタイト(HA)薄膜の水熱結晶化技術を開発し、HA薄膜インプラントへの実用化を図った。本研究ではこの技術を活用し、HA薄膜へSrを導入及びその比率を制御することで、新たな骨誘導型Sr置換HA薄膜作製技術の確立を目的とする。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ハイドロキシアパタイト(HA)薄膜へストロンチウム(Sr)を導入及びその比率を制御することで、新たな骨誘導型Sr置換HA薄膜を作製する技術に関しては評価できる。一方、HAコーティングをSr薄膜に置換する手法が確立しておらず、最適なSr量を確定することが出来なかったこと等から技術移転につながる成果は十分とは言えない。今後は、これら問題点への対応とともにこのシステムのインプラントを普及させるためには、HAコーティングがTiO被膜より良いというデータを示すことが望まれる。
高度に安定化したPEG化オリゴ核酸の大量製造法開発とin vivo活性評価 筑波大学
池田豊
次世代の医薬品としての期待が高いオリゴ核酸医薬品であるが、最大の問題点がデリバリー技術の開発である。核酸は生体内で不安定であるために、安定化させる必要がある。オリゴ核酸を安定化させる手法としてポリエチレングリコール(PEG)によって修飾する手法が有用であるが、これまでに開発されたPEG化オリゴ核酸医薬品は液相中で反応させるために高コストであるという問題があった。この問題に対し我々はこれまでに固相合成によりPEG化オリゴ核酸を構築する手法を開発した。本研究期間ではこの手法の更なる開発を試みPEG化オリゴ核酸の大量製造へ向けた試みを行った。種々の方法を検討した結果、新たな固相担体を開発し、これまでの固相担体よりも飛躍的な担持量の増加が可能となった。また安定性を検討した結果、これまでに開発されているPEG化オリゴ核酸よりも安定であり、PEG化オリゴ核酸としては世界最高水準のレベルが達成できた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、PEG化オリゴ核酸製造のための新規PEG固相担体および新規PEG誘導体は開発され、後者について特許申請された点は評価できる一方、技術移転の観点からは、開発したPEG化オリゴ核酸のin vivoにおける安定性の確認やPEG鎖長との関係を解明し、次のステップに進むための課題が、「生理活性の高いPEG化オリゴ核酸の開発」なのか「低コスト製造法の開発」なのかも明瞭にする必要がある。PEG化医薬品は今後も増えていくものと思われるため、今後、本課題で開発された製造法が実用化されれば社会への還元が期待される。
機能性物質を高効率で内包できるリポソーム製造技術の開発 筑波大学
市川創作
筑波大学
柿本茂八
多相エマルションを基材とした新規リポソーム製造技術を、食品や薬品産業分野へと最適展開するため、各産業分野において使途に応じた物質内包リポソーム設計・製造の可能性を示すことを目標とした。食品および医薬品製造の安全基準の下で使用できる種々の乳化剤を使用して、親水性物質を高効率で内包化し、サイズ制御された分散安定性の高いリポソームを作製できることを明らかにした。また、リポソーム作製プロセスにおける液中乾燥条件を検討し、安全性の高い乳化剤を使用した系で内包率を78%程度まで向上できた。さらに、リポソームへの内包化が困難とされる低分子の親水性薬理成分ついて、既存法の2倍となる高い内包率を達成できた。これに加え、内包率向上メカニズムについて検討し、乳化剤選択の指針を示した。今後は、本研究で得られた『多相エマルション法』の汎用性を関連産業に訴求し、本製造技術の産業技術としての応用展開を図る。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標としたサイズ制御された分散安定性の高いリポソームを作製した。また安全性の高い乳化剤を使用した系で内包率を78%程度まで向上でき、当初の目標が達成され、多相エマルション法の確立により有用性・優位性が明らかになった点に関しては評価できる。ただ、アレルギーの問題があるのに、試験で何故アルブミンを用いたのかは疑問である。一方、技術移転の観点からは、国内のみならず海外での発展の可能性が大きいと思われ、本研究成果は薬品産業分野へと広く実用化されることが望まれる。また、医薬品だけでなく、もう少しハードルが低い化粧品や食品で先行することも考えられる。今後は、リポソームの大きさの制御ができていないため、これらを早期に解決するとともに、実験室スケールの検討で達成されている高い内包率とサイズ制御との両立を大スケールでかつ高い再現性で実現する、また、具体的な内包物質に応じた製造プロセスの最適化を行うなどが達成されることを期待される。
実用型頭部IVR用局所X線遮蔽装置による患者眼球被ばく低減効果の実証 筑波大学
盛武敬
筑波大学
窪田道夫
バイプレーン血管造影装置に搭載可能な、2遮蔽装置独立制御モデル(4遮蔽板独立制御可能)の開発に取り組んだが、血管造影装置の衝突防止機構との干渉問題に遭遇し急遽対処方法の検討を行った。このため当初予定していた遮蔽板の駆動・制御方式の変更が余儀なくされたが、新たな設計により概ね問題は解決可能であることが分かった。しかし追加部品のための組み込みスペースを考えると、今後さらなる小型化が必要である。また、全体として部品点数の増加や高集積部品の使用が避けられず、実用化に向けてコスト面でのさらなる設計見直しが必要である。今後も引き続きバイプレーン対応型遮蔽装置の開発を行い、最終的な商品化へとつなげていきたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、操作を妨げない重量・設置方法や遮蔽版操作の実現については、当初の目標が達成された点は評価できる。一方、バイプレーン型血管造影装置に対応した両眼独立遮蔽機構や、水晶体防護効果の判定は達成できなかったので、技術移転に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後の研究進展により実用化されることが望まれる。
ストレス診断用簡易発光キットの試作 独立行政法人産業技術総合研究所
金誠培
独立行政法人産業技術総合研究所
小林悟
生物発光を用いたホルモン診断技術が汎用技術として定着するには、使用者側に極めて簡便な診断手段に仕上げる研究が必須である。この実用化課題として、プロトコルの簡略化、試薬量や試料量の低減および低コスト化、バッファー条件の最適化が求められる。この課題解決のために、簡易ホルモン診断キットを設計・試作し、試作過程を通じて課題を解決し、新たな問題点を見つける研究を推進した。本研究でホルモン診断の新たな地平を開いた。当初目標していた発光プローブの検出感度を改善するために新規高輝度人工発光酵素(ALuc)を樹立した。本発光酵素類は従来の最高輝度酵素より50倍以上高期度であった。またホルモン診断デバイスに用いる最適な発光反応バッファー組成を見出した。
更に発光の特性に配慮しつつ安価で高感度・高サンプル処理能を持つ発光計測デバイス1号機と2号機を試作した。まず発光デバイス1号機(原型機)を考案し、テストから得た改善点を反映した2号機(改良機)の開発(写真参考)に成功した。この発光デバイスを用いて唾液中ストレスホルモンの高感度計測に成功した。この研究を通じて今までできなかった生物発光を用いたホルモン診断が小型デバイスで高感度測定できるようになった。当初の研究計画書で目標したとおりに行われ、予想以上の成果を得た。既に1件の論文が受理されており、2報の論文が投稿中であり、更に2報の論文投稿が今月中に予定されている。更に今月中に4件の特許出願を行う予定である。達成度の自己評価では100%を超えていると評価する。
今後の展開として、出願した特許に基づいて本発光診断技術の日本企業への技術移転を試みる。産総研・産学官と連携して既存発光測定装置メーカーに簡便に使えるホルモンデバイスである利点を紹介する。学会発表を行い本技術の普及に努める。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。当初目標とした数値をはるかに超える検出感度を達成し、発光強度の大きな診断キットの開発、使用者の負担を軽減した測定器の製作等、全ての点で目標を達成した。残された課題は製品化のみと思えるところまで達していて、次のステップが明確であると考える。一方、技術移転の観点からは、研究面での検討課題は殆ど残されていないので、企業との共同作業が計画されているようで、産学共同の研究開発が大いに期待できる。本課題の装置が市販されるようになれば、多くの医療場面で利用されると期待できる。短期間でホルモン診断のための装置試作から、化学分析実験に至るまでの多岐にわたる検討をされてきたことは大変優れた成果だと言える。完了報告書で紹介されている発光診断用デバイスは、直ちに市販可能であると判断できる程の完成度であると思え、3色の発光分光ができる等の機能も付加されている。また、新規な生物発光酵素も用いられていて、これまでにないホルモン診断キットが開発されたと評価する。
T&Tオルファクトメーターによる嗅覚検査の自動化に関わる流体制御技術の開発 独立行政法人産業技術総合研究所
小早川達
独立行政法人産業技術総合研究所
池田喜一
現状、嗅覚機能検査のデファクトスタンダードになっているT&Tオルファクトメーターの自動化した医療機器の開発を目的として、その実現可能性を探るために、5臭素x8濃度段階の嗅覚刺激を互いに混じることなく、提示可能な流体制御技術の開発を行った。従来開発された10種類の臭気を切り替えが可能な装置をベースにし、8濃度段階の気体切り替え部を1ユニットとし、5ユニットを組み合わせることで、T&Tの自動化が可能であることを示すことができた。また当初目的になっていたそれぞれの嗅素の気体濃度計測は、計測結果に矛盾点があり、さらなる精度の高い計測が必要であった。
今後は、ニオイ原液から希釈気体を作成する機構を付加することで医療機器としての製品化、ならびに薬事申請まで持っていくことを目標とする。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、臭覚機能検査装置の自動化を目指した流体制御技術の開発目標を達成している点は評価できる。特許出願には至っていないが、試作品は完成しているので技術移転につながる成果も期待できる。一方、技術移転の観点からは、コンパクト化など課題も具体的に示しており、試作品をベースに産学共同研究の可能性が期待できる。今後、臭覚機能検査装置が臨床現場に普及すれば、国民医療に対する貢献が期待される。
リボソームディスプレイー糖鎖複合体アレイシステムによるN-グリコリル型シアル酸検出プローブの創出 独立行政法人産業技術総合研究所
舘野浩章
独立行政法人産業技術総合研究所
平林淳
N-グリコリル型シアル酸(Neu5Gc)は他の哺乳動物では一般的に合成されるが、ヒトでは特異的に欠損している異種移植抗原の一種であり、ヒト血中には抗Neu5Gc抗体が存在している。そのため、医療に用いる生物製剤(抗体や細胞)への、培地成分等からのNeu5Gcの混入が問題をおこす可能性が指摘されている。またNeu5Gcが腫瘍組織や粥状硬化斑に高発現しているという報告もあるが、これまでNeu5Gcを検出するための信頼性の高いプローブがなかった。本研究では高感度Neu5Gc検出システム構築に向けて、Neu5Gc結合プローブを開発することを目的とする。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもリボソームディスプレイー糖鎖複合体アレイシステムを開発して、Neu5Gcに結合するレクチンを創出する技術に関しては評価できる。一方、Neu5Gc結合性改変レクチンを得るための戦略・ロードマップはわかりやすく、モデル系での検証で、少なくとも工程毎の妥当性確認は出来ているが、肝心の目的物Neu5Gc結合レクチン不生成についての技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
三日熱マラリアへの感染履歴や流行地調査に有用な抗体価検査キットの開発 群馬大学
奥浩之
マラリアは世界最大の感染症であり、流行地でも普及可能な抗体検査キットの開発が求められている。ヒトへ感染するのは主に熱帯熱マラリア原虫と三日熱マラリア原虫の2種類である。我々は既に熱帯熱マラリアの感染履歴を測定する抗体価検査キットを完成し特許出願を行った。一方、三日熱マラリアへの抗体検査キットは開発例が無く、検出に適した抗原もわかっていない。本研究では新しい抗原ペプチドを用いた検査キットの可能性を探ることが目標であり、新しい抗原ペプチドの設計・合成を行い、さらに日本における輸入マラリア患者の血清、フィリピンやブラジルの流行地における患者血清について抗体価測定に成功した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。本研究では新しい抗原ペプチドを用いた検査キットの可能性を探ることを目標としていたが、実験を計画通りに行い、当初設定した目標をほぼ達成している。本方法も結局は、血清抗体を検出するという点で、従来のELISA法よりも格段に優れているとは言えないが、新しい抗原ペプチドの設計・合成に成功したことに加え、日本における輸入マラリア患者の血清、フィリピンやブラジルの流行地における患者血清について抗体価測定に成功したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、今後の技術課題も良く整理されており、コーディネータ等による今後のフォーローアップ活動も明確である。特許出願に向けての作業も順調に行われている。また、関連する企業からの共同研究開発に対する意見聴取もされていることは評価できる。ただ、今後、企業が乗り出すためには、利益が出る形にしないと進まないが、かと言って、値段をつり上げると途上国では実用化しないというジレンマがある。ODAなどに関係した研究開発資金により支援されることを期待したい。
両心室補助人工心臓用血液ポンプの開発 群馬大学
栗田伸幸
群馬大学
小暮広行
補助人工心臓への適用を目的として、磁気浮上モータと、それを組み込んだ磁気浮上ポンプの開発を行った。磁場解析結果に基づいて装置を設計することで、目標サイズを満たす試作機を製作できた。また、磁気浮上モータとしての性能評価を行い、目標性能を満たすことを確認した。次に、磁気浮上ポンプを製作し、流体実験を実施した。そして、本磁気浮上ポンプが補助人工心臓に適用可能な性能を有することを確認した。しかしながら、装置を無垢材で製作したため、液中で駆動する際に消費電力が増加した。今後はモータ性能を向上させることにより、体内埋め込みに耐える低消費電力なモータを開発する。さらに、動物実験を行い、血液ポンプとしての性能評価や、それに向けた装置の改良を行う。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初目標のポンプサイズ、ポンプ性能、ロータ可動範囲については設定値を達成している点は評価できる。一方、人工心臓にとって極めて重要な温度上昇に影響する電力損失の低減が達成できていない。10W以下の消費電力目標に対する実績と他の損失との対比を示し、今後の低消費電力化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、人工心臓への適用に関し技術移転に至るまでには大きな距離感があるので、他の用途への検討も進めることが望まれる。
病原体を除去する分岐型マンノース結合高機能性綿球の開発 群馬大学
松尾一郎
群馬大学
小暮広行
分岐構造を有するマンノオリゴ糖(3〜5糖)を導入した綿球を作製し、汚水中の大腸菌を、糖鎖認識能を利用して除去するデバイスの開発を目的とした。還元末端部分にアジド基を有するマンノース誘導体を大量に合成、水酸基の反応性の差を利用して、分岐型マンノオリゴ糖3糖〜9糖を系統的に合成した。一方、市販の綿球をTEMPOにより酸化、セルロースの6位水酸基をカルボキシル基へと変換した。反応条件をコントロールすることで酸化度の異なる綿球を調製した。カルボキシメチルグルコース誘導体とマンノース誘導体との縮合により、マンノース結合グルコース誘導体の生成を確認、同条件を用いて酸化綿球に対するマンノース誘導体の導入を行なった。X線光電子分光分析により窒素原子が観測されたことより、マンノース誘導体がアミド結合を介して綿球で導入されたことを確認した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、分岐構造を有する3〜5糖からなるマンノオリゴ糖を主成分とするオリゴ糖の合成を可能とし、オリゴ糖を導入した綿球の作製までは行うことができた点は評価できる。一方、オリゴ糖の導入率の測定ができておらず大腸菌の除去試験までは行うには至らなかったことから、実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後の研究開発計画は具体的であり研究の進展が期待できる。
標的DNA存在下でのみ発光する、簡便かつ正確な遺伝子検出プローブの開発 群馬大学
篠塚和夫
群馬大学
小暮広行
本課題では申請者らが蛍光量子収率を向上させた「含ケイ素蛍光剤」を活用し、簡便、高感度でかつ 信頼性の高い遺伝子検出蛍光DNAプローブの実用化を目指した研究を行う。本プローブはステム部分 に、含ケイ素ペリレン誘導体(蛍光剤)及びアントラキノン(消光剤)を有するステム・ループ構造を持ち、標的DNA非存在下では両者の相互作用により実質的に無蛍光となる。一方標的DNA非存在下ではこれと二重鎖を形成し、蛍光剤と消光剤が遠く離れる事で、顕著な蛍光発光を行うと期待される。さらに、 遺伝子解析において重要度が高まっている、遺伝子中の一塩基の変異(SNPs)の識別の実現も目指 す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。本課題では、完全に相補的な15量体以上の標的鎖との二重鎖形成時においてのみ強く発光する蛍光プローブの開発を目標としている。研究開発を実施した成果としては、標的遺伝子と完全に相補的な15量体以上のループ部分を持ち、異なった鎖長のステム部分を持つ修飾DNA を網羅的に合成し、完全に相補的な15量体以上の標的鎖との二重鎖形成時においてのみ強く発光する蛍光プローブを見出した。この成果は、本課題の当初の目標をほぼ満たすものである。加えて、ゲノムの標的鎖中の一塩基変異を正確に識別するための方策も提示されている。一方、技術移転の観点からは、ゲノムの標的鎖中の突然変異を簡便で正確に分析することは、医学、生物学研究では重要であり、本研究開発で得られた成果を元にして、提示されている方法でプローブにさらなる改良を加え、その実用化を目指していただきたい。
低温バイオロジーにもとづく新たな脳機能制御法の開発 群馬大学
大西浩史
群馬大学
塚田光芳
本研究は、低温によりチロシンリン酸化を受ける神経細胞の膜型分子SIRPαを手がかりに、神経保護や記憶障害治療の新技術を創出することを目標に、新しい脳の低温応答シグナルの分子メカニズムとその機能的意義の解明、さらにその制御方法の検討に取り組んだ。神経細胞の生存維持との関連についての検討では、実験ツールとして、神経細胞でSIRPαを含む、特定の分子を効率よくノックダウンするベクターの開発に成功し、また、培養細胞で連続的に温度を制御する灌流系の構築を完了した。今後、これらを用いた実際の解析に取り組む予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、サイエンスとしての達成度は高い点では評価できる。一方、実用化研究の面では、shRNAウィルスによるノックダウンの実験系、CD47−SIRPα相互作用を示す細胞培養系が準備できているので、これらを元にして再度研究計画の見直しを行うことにより、新たな展開がもたらされる可能性は大いにある。今後、具体的なゴ−ルを見据えた研究計画を立て基盤技術の確立に繋がる成果を達成されることが望まれる。
多動症におけるCIN85の異常解析と遺伝子診断法の確立 群馬大学
下川哲昭
群馬大学
塚田光芳
本研究開発は多動症患者におけるCIN85遺伝子異常を同定し遺伝子診断法の確立を目標とした。ドイツ ゲッチンゲン大学のシャウキエール博士から提供されたヒト多動症家系のCIN85遺伝子 360 kbpにおける塩基配列をIllumina HiSeqによる次世代シークエンスにより解析した。その結果、男性患者の一人にCIN85遺伝子の部分欠損が認められた(3)研究開発成果に詳細に記載)。この部分欠損は異常なタンパク質の生合成を誘導し、正常な脳機能における細胞内情報伝達機構を撹乱し多動症を発症させると考えられる。本研究開発では多動症患者におけるCIN85遺伝子異常の同定には成功した。しかし、遺伝子診断法は遺伝子解析の期間が予想以上に長期化したために未だ確立していない。今後は遺伝子解析期間の短縮化を計り、同定された遺伝子欠損のPCRによる簡易同定法を確立して行きたい。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも多動症家系の遺伝子解析によりCIN85 異常による多動症の遺伝子診断法を確立する技術に関しては評価できる。一方、多動症患者の1例からCIN85遺伝子の部分欠損を見つけたことに関しては、解析した患者症例数が少なく、健常人コントロールの解析が実施できていないことから、当初の目標の一部のみ達成できている。今後遺伝子解析の低コスト化や迅速化という技術的課題を克服し、多くの症例を検討する必要があるに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが望まれる。
放射線治療用天然高分子ゲル線量計の高感度化 独立行政法人日本原子力研究開発機構
山下真一
独立行政法人日本原子力研究開発機構
笠井昇
低毒性で取扱いに専門知識が要らず白濁化から直観的に線量を見積もることができるゲル線量計を高感度化し、0.1〜2 Gy 程度の線量域で線形性が得られるようにすること、ならびに、線質の違いによる感度の変化を調べることを目標とした。
放射線検出剤の選定、組成の最適化、脱酸素剤の利用により、吸光分析や濁度測定による線量評価では前者を達成できた。後者の目標についても、ガンマ線のほか治療用X線や治療用炭素線に対する線量応答を調べ、特に高LET領域で感度が低下することが分かった。感度低下の原因として、線質の違いによるラジカル収率の違いのほか、異なる照射施設を利用する際のゲル線量計の保管法の違いなども考えられ、保管温度・時間および線量率などについても影響を調べていく必要がある。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。体内に挿入して放射線線量測定する安全性の高いゲル線量計を開発するという新規性の高い研究である。ゲルの材質や脱酸素剤使用法、また線質(放射線の種類)の違いによる感度の相違の検討などの目標はほぼ達成されている。Co−60 ガンマ線、400 MeV/u 炭素線では比較的精度の高い測定の可能性があり、500 MeV/u 鉄線ではやや測定感度が低いという結果が得られている。一方、温度および酸素混入の制御など技術的問題は明確となっており、今後の研究開発計画について具体的かつ的確に検討されている。更に、臨床的状況に合わせる線量計の使用法や線量評価方などを検討し、特許出願を検討されている。今後、放射線照射の際に患部における正確な線量測定が可能となると、精度の高い放射線治療が実現することから、温度および酸素混入の制御など今後の技術的な問題点を解決して、本格的な技術移転に繋がることを期待したい。
半側空間無視を改善に導く効果的なリハビリツールの開発 国立障害者リハビリテーションセンター研究所
河島則天
本研究では、臨床場面で即時応用可能な半側空間無視を改善に導く効果的なリハビリテーションツールを開発することを目的とした。具体的には、タブレットPCとLabVIEWによるグラフィカル開発環境にて、半側空間無視の評価に用いられるBIT行動性無視検査の線分末梢課題・星印末梢課題といった単純な筆記テストをベースに、無視空間に注意を促すような作業課題を考案した。プロトタイプ版を臨床現場(作業療法士)より得たコメントを基に改良した上で、計画通りシステム開発を終え、脳卒中患者10名(うち空間無視患者5名)を対象とした試用評価を行った。その結果、(1)視覚刺激よる注意喚起を用いた無視症状改善のリハビリツールとしての有用性、(2)無視症状の定量的把握のための評価ツールとしての有用性を確認した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、半側空間無視症状の評価ツール開発において、従来法では捉えきれない無視症状を反応時間等の定量的指標により検出可能とした点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、無視症状改善のリハビリツール開発では本システム適用による症状改善の成果が得られておらず、さらなる検討が必要と思われる。現システムは臨床現場で一定の評価を受けており、今後、半側無視患者の機能改善につながる研究成果が得られれば、成果の社会還元が期待される。
化学反応プローブとフローサイトメーターを用いた細菌の検出法の検討 独立行政法人理化学研究所
阿部洋
細菌同定に必要な高感度プローブを、複数の細菌について開発する。感度改良のためのプローブの鎖長、多色染色を可能とする蛍光発生型蛍光色素群の創製、プローブの細菌類への効率的な導入法を機軸とした研究を推進する。開発期間が短期間であることを考慮して、最適なプローブ鎖長の検討、新規蛍光発生化合物の開発にしぼり、最適な鎖長(15量体)並びに現在利用している緑色蛍光化合物から大きく波長を離した赤色蛍光剤の候補化合物を合成できた。今後は、一塩基変異を定量的かつ多色で検出できるプローブを創製し遺伝情報に立脚した細菌定量法へ展開する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に化学反応プローブとマイクロ流路チップ型フローサイトメーター(FCM)を組み合わせた細菌の迅速な検出法に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、最適なプローブ鎖長の検討から最適なプローブ鎖長および新規蛍光発化合物の開発から赤色蛍光剤の候補化合物が合成できたが、プローブの効率的な導入法は確立できなかった。また、次のステップへ進めるため、プローブの導入法の最適化などの技術的課題が明確になった。今後の研究開発計画については、細菌検出の精度と定量性の確認など具体的に検討されている。
インフルエンザ検出用プローブの開発 独立行政法人理化学研究所
伊藤嘉浩
独立行政法人理化学研究所
井門孝治
インフルエンザ検出のための既存の免疫クロマトグラフによる検出能と 同一の検出能で、免疫クロマトグラフ法では測定に要する15分程度に対し、瞬時(10 秒以内)で行えるようにしたインフルエンザ成分と相互作用して蛍光を変化する分子 検出プローブを、開発することを目指し、インフルエンザの検出を行えるようになっ た。当研究では、プローブ分子の取得までを目標としており、蛍光分光器でのインフ ルエンザ検出を可能にしたが、今後センサーへ応用展開し、より容易に利用できるようにする。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まっ た。特に、プローブ分子として蛍光性アダプタマーを調製し、インフルエンザ・ウイ ルスを標的とする結合性アダプタマーを選別した点は評価できる。インフルエンザウ イルスと結合するか否かを蛍光分光器により確認中であるが、確認できれば技術移転 に繋がる可能性が大いに高まると思われる。一方、技術移転の観点からは、すでに技 術移転に繋がる研究体制ができあがっているので、特許出願と臨床応用などの展開が 大いに期待できる。今、提案系が実用化されれば社会的意義も深まることが期待さ れる。
標的細胞をラベルフリーで識別・分離し非侵襲的に収集するためのマイクロチップの設計 独立行政法人理化学研究所
三好洋美
独立行政法人理化学研究所
井門孝治
平面と溝状構造から成るマイクロ構造化表面における異種細胞の運動状態の違いを利用して、標的細胞をラベルフリーで識別・分離するための技術開発を目的とする。平面と様々なサイズの溝状構造から成る細胞試験用基質を作製し、細胞が平面と溝状構造の境界を横切る頻度を計測し、境界を横切る頻度が標的細胞80%以上、非標的細胞20%未満を達成する溝状構造の設計変数を得ることを目標とした。標的細胞(MCF-7)が境界を横切る頻度は約70%、非標的細胞(Swiss3T3 Albino)が境界を横切る頻度については5%という結果を得、目標に近い性能の溝状構造を得ることができた。加えて、単線溝を用いた標的細胞のラベルフリー識別のマーカーも同定した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。種々のマイクロ構造を構築し、モデル物質として標的細胞MCF−7の境界を横切る頻度を70%、非標的細胞の場合5%という当初の目標は達成した。一方、技術移転の観点からは、提案された技術をバイオセンサ技術と連動することによって新たな診断方法、スクリーニング法に発展できる可能性を感じる。しかし、マイクロ構造に対する応答は細胞種毎に異なるため、組合せは無限にあり、これを省除するための技術を開発しなければ、実用化への道は遠い。ラベルフリーは興味ある発想であるが、標的細胞識別率は95%で良いのか。また、実用化を目指すなら、企業との連携、特許出願を急ぐべきである。
患者の顔・舌画像の撮影システム構築と偏光画像解析による漢方効能評価 千葉大学
津村徳道
診察室の机の片隅に設置できるサイズの画像入力装置(30平方センチ以内、高さ50センチ以内)を23年度に開発した。この時、研究責任者(津村)と花王株式会社が開発した先行技術である撮影環境の周囲を暗幕で覆うシステムと異なり、撮影された画像は、診察室における周囲照明の影響を受けるため、定量的な色の撮影は困難であったが、カメラのストロボアタッチメントに高輝度LEDアレイを取り付け、偏光フィルタを光源前面に配置することで簡易なシステムを実現した。平成24年度は患者に対する計測のために、金沢大学における倫理委員会の許可を得て、実際に計測を行った。また、研究期間内の二度以上通院した患者に対して、漢方の処方との相関を解析し、色の変化との相関解析を行った。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、生体の光沢、陰影、メラニン、ヘモグロビンなどの成分画像の抽出顔面計測する患者の顔・舌画像入力技術に関しては評価できる。一方、実用化のためには、色調を定量化するソフトウエア開発と、臨床試験から得られたデーターの蓄積ならびに適応性の評価が必要である。今後、被験者の動きに対する機器の追随性の技術的検討やサンプルデータの積み上げが望まれる。
腹腔鏡手術における血流・測色イメージング 千葉大学
羽石秀昭
公益財団法人千葉県産業振興センター
金田欣亮
胃や腸など管腔臓器に対する腹腔鏡手術において、患部を含む管領域を切除し、残った管端どうしを吻合する術式が広く行われるが、吻合後に血行不良があれば再手術が必要となる。この問題に対して本課題では、舌下微小循環撮影用に独自開発してきた装置を細径化し、腹腔鏡手術に応用する。すなわち、アクセスポートから挿入した超小型カメラにより吻合部の血流を撮影する。一方、従来の腹腔鏡の光源部分にLED照明への切り替え機構を持たせ臓器の測色精度を向上させる。前者カメラによる微小循環の観察と後者カメラによる関心領域の巨視的・高精度な測色とから血行状態の定量的・確信的判断を可能にし、再手術のない安全な腹腔鏡手術を実現する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に超小型カメラにより吻合部の血流を撮影し、かつ測色精度を向上させるためにLED光源を利用して腹腔鏡手術に応用する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、カメラの細径化および臓器の色の定量化はほぼ完了しているが、内視鏡自体の色信号の不安定性で十分な測色精度が得られないなどの点で改良を進めることにより実用化が期待される。
低拡散性近赤外蛍光・X 線デュアルイメージングプローブの開発 千葉大学
林秀樹
公益財団法人千葉県産業振興センター
大久保雅一
近年広く行われるようになった消化管腫瘍に対する完全腹腔鏡下手術においては、消化管内面の病変位置を消化管外側から正確に把握する方法が強く求められている。本研究において、生体組織透過性の高い近赤外蛍光を放つ色素とX線造影剤の両者を内包し、組織中で極めて拡散性の低いマーキングプローブを、有機溶媒を用いることなく生成する技術を確立し、家畜ブタを用いた試験によりその有用性と安全性を確認した。本プローブによりX線CTを用いた術前の手術シミュレーションと蛍光腹腔鏡による正確な術中ナビゲーションが同時に可能となる。本プローブをGMPグレードの生産ラインにて製造できれば直ちに臨床試験も可能になると考えられ、現在製薬会社との技術移転へ向けた交渉が進行中である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ビデオ映像上で病巣を切除する手術法において臓器外部から内部の病変移を正確に把握すべく、低拡散性近赤外光・X線デュアルイメージングプローブを開発し、有機溶媒を用いないマーキングプローブの作成とその物性特性の評価、生体での有用性に関し、概ね目標を達成したことは評価できる。今後益々頻繁に行われるであろう 消化管腫瘍の完全腹腔鏡下手術において、消化管内面の病変の位置を外部から正確に把握する方法が強く求められている。今回のデュアルイメージンググローブに対するニーズも増すものと予想される。現段階では、実験動物を使用した検証試験が少ないように見受けられる。今後は、毒性試験や臨床試験に耐え得るためにも、十分な情報収集が行われることが期待される。
EGFR/FGFRデュアルインヒビターを用いた放射線増強療法の開発 千葉大学
丹沢秀樹
千葉大学
阿草一男
放射線耐性遺伝子の検索は現在世界中で盛んに行われているが、耐性克服法にまで至った研究はほとんどないのが現状である。私たちのグループは、平成15年から19年まで千葉大学で行われた21世紀COEプログラムにおける研究において、放射線耐性遺伝子を網羅的に検索し、25種類の放射線耐性遺伝子候補を同定した。その中でEGFRとFGFRが多くの放射線耐性腫瘍において高発現していることを確認し、さらに同遺伝子のsiRNA法を用いたノックダウンモデルにおいて放射線への抵抗性を減弱させるメカニズムを既に明らかにした。今回の申請はEGFRとFGFRのデュアルインヒビターである低分子化合物(PD173074)を用い、放射線治療の効果増強療法の開発を狙った研究となっている。 当初目標とした成果が得られていない。中でも、当初の目標に関しての結果が示されておらず、報告書の内容はかなり計画との相違点が認められる。記載上の不備だけなのか、内容的に問題があるのか不明である。今後、研究成果として具体的な製品像は明確であるものの、毒性試験や安全性試験などの基礎的検討も含め目標設定に従い研究されることが望まれる。
AKRインヒビターを用いた頭頸部癌放射線化学療法効果増強法の開発 千葉大学
椎葉正史
千葉大学
小柏猛
シスプラチンに対する耐性機構は頭頸部扁平上皮癌治療の主要な障壁となっている。この耐性の分子生物学的メカニズムを明らかにするため、我々はシスプラチン感受性扁平上皮癌細胞株とシスプラチン耐性扁平上皮癌細胞株の遺伝子発現プロファイルを行った結果、シスプラチン耐性株においてaldo-keto reductase 1C (AKR1C)の発現上昇を確認した。AKR1C阻害剤を用いる事でシスプラチンの抗腫瘍効果が増強されたため、頭頸部領域で標準的治療となっている放射線化学療法に応用を試みた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にAKR阻害剤を用いて放射線化学療法の効果を増強する強化放射線化学療法の技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、メフェナム酸単独での放射線増強効果が得られていないものの、5−FU併用による増強効果が確認されているメフェナム酸の処理条件の検討、メフェナム酸と5−FUの併用による増強効果の詳細検討と毒性評価が技術的課題であることが明確に示されている。シスプラチンと5−FUを併用するCF療法は頭頸部癌だけでなく、胃癌や肝臓癌においても標準的治療になっていることから技術移転の可能性は高く、早期の実用化が期待される。また、抗癌剤耐性癌症例への臨床的有用性が期待できる研究であり、研究成果が応用展開された際に、社会還元に導かれることが期待される。
中赤外レーザー光源を用いた非侵襲的血糖測定装置の開発 千葉大学
佐藤謙一
千葉大学
村上武志
【目標】中赤外スペクトル分析による非侵襲的血糖値測定では、他の血中成分や皮膚が妨害因子となる。先ずは全血試料を用いて他の血中成分の影響を受けないスペクトル解析法を開発し、その後非侵襲測定への応用を試みた。標準的血糖測定法(酵素法)に対して誤差15%未満、相関係数r=0.95以上を目標とした。
【達成度】全血試料を対象とした、開発した中赤外スペクトル解析法1では、標準法に比して相関係数r=0.95 を超え、誤差15% 未満となる結果を得たが、非侵襲測定への適用では満足できる結果は得られなかった。さらに改良した全血試料を対象とした中赤外スペクトル解析法2では、相関係数r = 0.99、誤差4% 程度となる非常に良好な結果を得た。現在この解析法を非侵襲測定に応用しているところである。
【今後の展開】新たに開発した赤外スペクトル解析法を非侵襲測定に応用し、酵素法に対して誤差15%未満、相関係数r=0.95以上の精度のよい非侵襲的血糖測定法を確立する。無試薬で微量測定可能な多項目血中成分測定装置への応用を検討する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、全血を用いた場合の測定における実用化レベルの成果は得られている点は評価できる。一方、経皮的非侵襲血糖測定法の開発をめざし、経皮での測定データの積み上げなどが必要と思われる。経皮的非侵襲血糖測定法の開発は極めて有用であり、経時的な測定や他の成分の測定への広がりも大いに期待される分野である。今後は、その分競争も激しいため、臨床機関等との積極的な連携のもとさらに迅速かつ精力的な展開が望まれる。
低病原性腫瘍特異的感染ウイルス成分による癌イメージングシステムの開発 千葉大学
齋藤謙悟
千葉大学
小柏猛
本研究はシンドビスウイルス成分を搭載した腫瘍特異的吸着リポソームを色素標識し、癌細胞を明示化し、生体内での追跡実験や手術のナビゲーション・システムを開発することを目的とした。まず、ウイルス蛋白の融合許容性と、経時的・物理的安定性を持つリポソーム(Liposome NS)を調整し、腫瘍特異的吸着能リガンド成分を加えて、シンドビスハイブリッドリポソーム(SIN Liposome NS)を開発した。更に、蛍光標識として、リポソーム内水層へFITC-dextranを、リポソーム脂質内へはFITC脂質またはrhodamine脂質を付与することができた。蛍光標識したSIN Liposome NSは、 Liposome NSと比較し、癌細胞株への吸着能が35-100%向上した。次に、同リポソームを担癌マウスへ投与し比較したところ、S/N比が20%向上した。今回、ウイルス成分を応用し腫瘍集積する製剤を開発し、癌イメージングに成功した。今後は、生体内でのイメージング効果の向上のため製剤の改良を行なっていく。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にシンドビスハイブリッドリポソームの作製、蛍光標識の選定、癌細胞への吸着性・送達性に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、in vivoでのシンドビスハイブリッドリポソームの腫瘍集積特異性が低いため、技術移転のステップまでには解決すべき問題点が多いと思われる。 in vitroでは、高い癌細胞集積性があったため、in vivoでの腫瘍集積特異性を向上させることが出来れば産学共同の研究開発に繋がっていくと考えられる。
血栓動的可視化モニタリング・システムの開発 千葉大学
武居昌宏
千葉大学
小柏猛
本研究の目標は、管路断面の粒子濃度分布を可視化計測できるプロセス・トモグラフィー(PT)法において、交流周波数1MHzにおいて、赤血球の応答を計測し画像構成することで、血栓の濃度分布を可視化する。そして、患者の入院中や在宅治療中も補助人工心臓内の血栓を早期に検出できる、血液中の血栓動的可視化モニタリング・システムの実用化の可能性を見出すことである。
その達成度として、当初の計画通り、1)センサー部の製作、2)静止状態における画像構成の調整、3)超高速スイッチング装置のプログラミングと調整、4)血液循環試験流路の構築、5)血栓動的可視化モニタリング・システムの実装、および、6)新鮮動物血を用いた血栓検出試験を行い、計画通り達成した。
今後の展開として、薬事申請のため、より多くのデータを取ることとがと求められ、実製品化プロトタイプの作成などが必要不可欠である。したがって、A-Stepの本格研究開発ステージにチャレンジする。

概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に管路断面の粒子濃度分布を可視化計測できるプロセス・トモグラフィー(PT)法において、補助人工心臓内の血栓を検出可能な血栓動的可視化モニタリング・システムに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許申請していないのに学会発表されており、権利化できる技術としての内容の検討が必要と考えられる。
応力センサを導入した非接触駆動型仮骨延長デバイスの開発 東京大学
森田剛
現在医療現場で行われている骨延長手術は、職人的な技術により骨延長が行われている。また、駆動部分が体外に露出しているために感染症などの問題がある。そこで、本研究開発では、骨延長駆動と切断骨間の応力検出を非接触で行い、完全体内内包できるデバイスを開発している。提案手法である磁場制御による駆動方式において、従来試作していたものから断面積比で40%まで小型化し直径7mmし、摩擦軽減により2Nの発生力を実現した。また、非接触応力センサとしてたわみ振動の共振周波数変化を用いる方式を提案し、十分な検出分解能を有することをシミュレーションおよびマクロモデルの実験により検証することに成功した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、生体埋め込み型骨延長装置において応力情報を非接触でセンシングする小型システムの開発において、小型化は達成しており、応力センサもたわみ振動の共振周波数変化を用いて実現しているに点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、目標とする動物実験の実施しその効果を検証する必要があると思われる。今後、研究成果が応用展開された際には、社会還元に導かれることが期待される。
体内留置センシングデバイスに搭載する体内から体外への情報伝送システムの開発 東京理科大学
柴建次
東京理科大学
安江準二
体内埋込デバイスにつけた2枚の電極と、体表面につけた2枚の電極を用いて、体内深部から体外に情報伝送する方法について解析と実験を行った。ワイヤを人体の周りに貼り付けるように配置したモデルを試作して、P2/P1a(負荷抵抗の消費電力÷電源の出力電力の有効成分)を解析した。その結果、提案法は一般的なダイポールアンテナを用いる方法に比べ2.5倍以上大きい値を得、効率の良い通信法であることを確認した。次に、円柱型模擬生体(NaCl水溶液)を用いて、提案する通信方法のアナログ通信実験を行った。提案法は模擬生体の中心(人体深部に相当)からでも途切れず通信可能であることを確認した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、疑似生体を用いた実験の結果、通常のダイポールアンテナを用いたものよりも2.5倍以上の受信効率が得られた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、周波数特性が電磁解析とあまりにかけ離れている点が気にかかる。体内から体外に効率よく情報を伝送する技術による実用化が望まれる。今後、国産ペ−スメ−カなどへの技術移転に繋がる研究成果が期待される。
造影剤を用いないCT画像からの血管抽出法の開発 東京理科大学
相川直幸
東北大学
山口一良
一般に、CT画像内から血管情報を抽出するためには、画像撮影時に放射線に対して高い反応性を示すヨード造影剤を用いるのが主であるが、これが被撮影者との身体的相性によって、かゆみや発疹などの軽度なものから、目眩やしびれ、咽頭浮腫などの重篤副作用となるものまで様々な症状を示す。そこで、本研究開発では、臨床応用に展開するために造影剤を用いないCT画像内から血管情報を抽出する研究を行う。特に、先行研究で十分でない弓部大動脈から腹部移動脈にかけて同時に抽出される肝臓や心臓などの臓器と血管の分離や細部の血管まで抽出を行うための研究を行う。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも造影剤を用いないCT画像からの血管抽出において、境界部分をはっきりさせる輝度補正のための透過関数と、血管の形状と他臓器の形状の違いおよび距離尺度の評価関数を利用した血管抽出技術に関しては評価できる。一方、当初の目標に対して、かなりの進展は見られるが、技術移転につながる研究成果には達していない。次のステップに進めるための具体的な技術的課題の明確化およびCT装置との緊密な連携などが必要であると思われる。CT装置から得られるセンシングデータの改良も含めて展開することが望まれる。
培養下/移植下双方で利用可能な3次元組織構築デバイスの開発 日本大学
野呂知加子
日本大学
渡辺麻裕
本課題では、すでに特許出願した発明である「細胞培養下と実験動物移植下の双方で利用可能な3次元細胞培養チャンバー」を利用して、再生医療研究開発用の3次元組織構築試験デバイスとして実用化することを目的とし、試作品を改良し完成するための技術開発を目標とする。これまでに、企業2社に試作品の作成を依頼し、そのうち一方の企業に技術移転をして、実施許諾契約を結んだ。今後の他の企業も含めた本格的な技術移転のために、本課題では、チャンバーの材質・形状、試験情報管理用無線タグの装着法、外界との境界浸透膜、内部充填マトリックス素材について改良検討を行い、かつ3次元組織構築の定量的定性的解析にむけた評価系を構築する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。iPS細胞への注目が高くなっており、臨床応用のための基礎研究として重要な研究であると認められる。特に、デバイスの有用性を示す有効な生物学的検証を行っている点は評価できる。一方技術移転の観点からは、タグ装着法の検討などが必要と思われる。このタイプの商品は市場開拓型であることから、企業のニーズに合わせた研究が重要となってくることが予測される。今後、本研究の成果が再生医療分野で活用できれば社会還元が期待される。
非侵襲脊髄機能イメージング装置の汎用性向上に関する研究 金沢工業大学
足立善昭
金沢工業大学
南宏之
超伝導の高感度磁場センサを応用して、脊髄の磁場を検出し、非侵襲的な脊髄の機能検査を可能にする脊髄機能イメージング装置(脊磁計)を開発した。本研究は脊磁計を心臓の検査にも適用できるようにして、装置の汎用性を向上させるとともに、従来の心磁計では検出が困難だった微小な心磁信号成分を検出し、新たな知見をもたらすことを目的とする。脊磁計のSQUID駆動回路を改良し、心磁信号を検出するための帯域に対応できるようにした。この改良によって、脊磁計で心磁信号を波形の歪みなく検出することが可能となった。その結果、P波波形の微細構造を観察することが可能となり、脳梗塞を引き起こす心房細動のきっかけとされている肺静脈異常興奮に伴う微小心磁信号を非侵襲的に検出することができた。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。肺静脈興奮による微小臓磁場の計測について、精力的に研究が推進されており、適切な成果が上げられている。一方、帯域分割型FLL駆動回路については、目標を達成したことが認められるが、実用化に不可欠な信号処理技術の効果を明示すべきである。微小心磁信号から信頼性の高い診断を行うには未だ検出感度が不足しているため、信号処理技術による改善が予定されているが、心磁信号のみを検出する専用装置を構築した場合の検出限界を明確にし、実用性を見積もることが必要と思われる。全体として、注目すべき研究成果が上げられており、心房細動の診断・治療を可能とする技術に発展することが期待される。
周波数選択性・時間分解能を考慮した次世代型補聴器の開発 慶應義塾大学
神崎晶
感音難聴では周波数選択性と時間分解能が強く関与している。周波数選択性を250Hz-4kHzの5周波数で測定する機器を22年度の本研究費にて開発した。今回の期間の23年度にこの各周波数の周波数選択性の劣化の程度を、補聴器の増幅技術に応用し、スペクトルエンハンスメント処理を行うことで新しい補聴器を開発を行うことが出来た。
時間分解能に対応する増幅技術は未だ報告がなく、周波数別の時間的なスメアリングをリアルタイムに増幅することが難しい。本年度、時間分解能の低下した模擬難聴を理論的に作成することを目標とし、時間分解能劣化音声による模擬難聴の作成を行うことが出来た。今後は周波数選択性および時間分解能の両面から増幅技術を駆使した新しい補聴器を開発していきたい。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に各周波数の周波数選択性の劣化の程度を、補聴器の増幅技術に応用し、スペクトルエンハンスメント処理を行うことで新しい補聴器を開発する技術に関しての成果が顕著である。一方、構築された模擬難聴モデルの生理学的正当性の検討と、時間分解能劣化補正に関する適応方法の検討が望まれる。技術移転の観点からは、 時間分解能の劣化に関して、時間的に音声のスメアリングを行う理論的方法を確立して模擬難聴モデルを実現するなど次世代補聴器の開発に期待される。
極小カード型脈波センサによるストレス測定装置の開発 首都大学東京
新田收
首都大学東京
草間茂
カオス解析プログラムに極小カード型脈波センサーを組み合わせたストレス測定装置を開発した。試作機は7cm×5.5cm×1.4cmと小型であり、PCのUSB接続することで使用することができる。センサ-部分はカード上面にあり、指先を軽く載せることで脈波加速度を計測できる。今年度同時に開発したストレス解析プログラムはPCにインストールすることで、センサーで得た脈波データをカオス解析し、ストレステの程度を4段階表示することができる。試作機の解析結果制度は、血液データを基準値として妥当性の検討を行った。被験者22名による分析結果では、ストレスに反応するホルモンであるプロラクチンと高い相関が示された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、機器の小型化、血清ストレス蛋白の相関など目標は達成されている点は評価できる。一方、血清タンパクの相関に関してはサンプル数を増加させ、再現性についても技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。これまでの機器はヒロセ電気と共同開発しており、実用化まで共同開発できる可能性は残されている。今後、使用目的、使用場所などを明確にし市場に機器を上市することが望まれる。
自己治癒能力を引き出す再生促進型滅菌済無細胞腱:無細胞ウシ腱を用いたラット前十字靭帯再建実験による再生・安定性評価 早稲田大学
岩崎清隆
早稲田大学
山本健一郎
膝関節靭帯再建では耐久性のある人工靭帯がなく、健常な自己腱を採取して治療されており、複合靭帯損傷や小柄な場合には腱が足りない場合がある。本研究では、生体組織の滅菌で課題であった強度保持を実現する滅菌済み無細胞化ウシ腱を用いてラット前十字靭帯再建術を行い、再生能を評価することを目的とした。凍結乾燥してエチレンオキサイドガス滅菌後に再水和した無細胞化ウシ腱が8週間問題なく機能することを実証し、細胞が多数浸潤し、かつ微小血管が形成されることを組織学評価で実証でき、目標を達成することができた。今後は小動物で生体内での6ヶ月の長期安定性を実証し、大動物実験評価そして実用化へ向けて研究を推進していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、エチレンオキサイドガス滅菌と凍結乾燥の前に所定の糖溶液処理を行う技術を開発を通じて作製した無細胞化ウシ腱を用いてラット前十字靭帯再建術を実施し、in vivo評価まで行った点は 評価できる。一方、技術移転の観点からは、さらに長期のin vivo試験と安定性評価の検討が望まれる。今後、本課題の再生靱帯が臨床応用されれば整形外科に対する貢献は大である。人工材料による靱帯の再建が難しいなか、無細胞化したスキャホールドを用いることによる再生靱帯の研究は重要であり、一方、無細胞化したスキャホールドの研究開発は競争が激しいので、本課題で開発した技術の移転に企業が興味を示すことが重要となる。
PPRモチーフ機能を利用した新規な遺伝子発現制御技術の開発 中央大学
奥田賢治
中央大学
加藤裕幹
PPRユニットを人為的に組み合わせた人工PPR蛋白質がそのデザインから予測されるRNA配列に特異的に結合できるかどうか明らかにすることを目的とした。大腸菌発現系を用いて、これまでに同定したPPRユニットをランダムに連結した人工PPR蛋白質を複数、精製した。作製した人工PPR蛋白質についてそのデザインから予測される標的配列との結合を生化学的に解析した結果、そのうちのいくつかについて特異的結合を確認することが出来た。今後は、人工PPR蛋白質の特異性の向上および多様な配列の認識を可能とするデザインを検討していく。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、6コンストラクトのうち4コンストラクトにおいて、配列特異的RNAへの結合を観察している点は評価できる。試験管内での成果ではあるが、今後の利用において期待が持てる。一方、任意のRNA配列を認識する特異的人工PPR蛋白質の設計という観点から、実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、どのような分子機構で認識が起こるのか、また生体内での相互作用がどのように起こるのか等の検討が進み、実利用への道筋が提案されることを期待している。
汎用型Brain-Machine Interfaceによるライフサポートシステムの試作 電気通信大学
田中一男
株式会社キャンパスクリエイト
高橋めぐみ
汎用型Brain-Machine Interfaceを構築し、これを利用したライフサポートシステムの試作を行った。開発したシステムは携帯可能であるため、車椅子に限らず、様々な機器(ロボット群)への接続が可能となり、しかも、使用者に合わせてカスタマイズ可能な機能を付加することで、ある程度実用性を意識したシステム構築に成功した。また、生体特性フィルタや体動感知センサを導入し、さらには、独自に開発した脳波マップを用いた活動部位の特定などを行うことで、脳波計測時のアーチファクト、個人差、さらには、同一被験者で日々の脳波の違いにも対応できるロバストなシステム構築を実現した。加えて、使用者に合わせて脳波信号前処理及び判別法をカスタマイズすることで、実験タスク成功率を向上させることに成功した。車椅子以外の生活支援ロボットへの適用も試み、その汎用性の評価も行った。今後は、より高精度で操作可能なシステムを構築し、シームレスで汎用的なシステム構築を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、カスタマイズドBMIの開発ということで脳波の個人差、日常環境での脳波の違いに対応したロバストなシステム開発で成果が積み重ねられている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、個人差、日常での変化、生理的変化への対応、体の動きや実環境での雑音除去のための体動感知センサ、生体特性フィルターなどロバスト性を高める着実な開発計画をしており、改良・改善により、体の不自由な方々への支援機器の開発が推進されることが望まれる。今後は、生活支援ロボットの操作によるQOLの向上のみならず、AVSなどでの安全運転などへの応用範囲も広いと考えられるので、安全性と信頼性をクリアし実用化することが期待される。
神経伝達物質のリアルタイム計測を目指したナノカーボン平面多電極アレイ基板の開発 東京工科大学
鈴木郁郎
これまでの技術では難しかった神経伝達物質を高感度かつリアルタイム計測する技術として、ナノカーボン平面多電極アレイ基板の開発を行なった。ナノカーボンの分散化法およびITO微小電極へのめっき技術を開発し、電極表面の構造およびナノカーボンの種類に依存した神経伝達物質の感度特性を明らかにした。開発したナノカーボン微小電極を用いて、細胞から放出される濃度の神経伝達物質を電気
化学的に検出することに成功した。 神経伝達物質を高感度かつリアルタイムに計測できる世界初の技術であり、今後、実用化に向けた研究開発を進める。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、6種類の微小ナノカーボン電極の作製に成功し、そのなかで多層CNTを用いると、ドーパミンとセロトニンについては当初の目標以上に高感度に検出できることが明らかになった点に関しては評価できる。その他の検討事項に関しても概ね当初の目標が達成された。なお、次のステップに進めるため、神経伝達物質の高感度な一斉分析法の開発が技術的な課題として明確になった。一方、技術移転の観点からは、それらの研究成果に基づき新規の特許出願が予定されており、今後の研究開発計画に関しては、神経伝達物質の識別技術の開発など具体的に検討されている。また、企業との共同研究を開始しており、研究成果が社会還元に導かれることが期待できる。今後は、カーボンナノ電極の種類によって神経伝達物質の感度が異なる点、また電位も異なる点について、これらを解明すべきと考えられる。また、各種カーボンナノ電極で全ての神経伝達物質に対して異なる電位で1pM感度を達成と、脳スライスではなく細胞固定ナノカーボン電極でのin vivo計測ができるバイオセンサを目指していただきたい。
環境応答性蛍光色素に結合するDNAアプタマーを用いた標的タンパク質検出法の開発 東京工科大学
加藤輝
東京工科大学
塚本勝
標的タンパク質の蛍光検出法は、生体中の疾患マーカータンパク質を指標とした診断技術やバイオイメージング技術への利用が期待できる。本研究では、環境応答性蛍光色素Dapoxylに結合し、その蛍光強度を増強するDNAアプタマーをDNAプローブとして用いることにより、標的タンパク質を均一系で蛍光検出する技術の開発を行った。本研究により得られたDNAプローブは、標的タンパク質の存在下でDapoxylの蛍光強度を約20倍に増強することが確認され、均一系での新たな標的タンパク質検出法の可能性が示された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標を達成するための工夫がなされ、目標に近い蛍光増強効果を示すDNAプローブが作製できている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、その汎用性の確認や疾患マーカー蛋白質などの検出を可能にするかの検討が必要と思われる。今後、汎用性が確立され既存の方法と比較してその優位性が証明されれば、新しい検査技術として社会に還元できることが期待される。
酵素反応を利用した蛍光金属錯体型糖鎖プローブ分子の汎用化技術の開発 東京工科大学
岡田朋子
東京工科大学
塚本勝
糖鎖が示す特異的な分子認識能を解明することは、癌に対する新たな治療法の開発や予防法の開発研究を促進する。本研究では、糖鎖の分子認識能評価に有効なプローブ分子である蛍光金属錯体型糖鎖に、酵素反応を利用して任意の糖鎖を導入する技術確立を目標とした。分子設計を基にして、基質として糖転移酵素に認識される蛍光金属錯体型糖鎖を合成し、さらに、シアル酸を蛍光金属錯体型糖鎖に導入する酵素反応条件を明らかにした。本方法は、従来の化学合成反応だけでは困難であった複雑な糖鎖を蛍光金属錯体型糖鎖に導入することを可能にし、蛍光金属錯体型糖鎖のプローブ分子としての汎用性を高めた。今後は、修飾糖鎖の種類を増やし、本手法が蛍光金属錯体型糖鎖へ糖鎖を修飾するための汎用な技術である事を、実用化に向けて実証する予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。蛍光金属錯体型糖鎖に、酵素反応を利用して任意の糖鎖を導入するという基本的な技術については可能であることが確認できた点は、糖鎖と配位子の結合部分の構造の最適化については研究開発が一部継続中ではあるが評価できる。但し、シアル酸修飾蛍光金属錯体型糖鎖の合成に成功した、とあるがその判断を下す分析法(クロマトグラム中の吸光度ピークの”減少”のみで判断)に不明瞭な点がある。「シアル酸修飾蛍光金属錯体型糖鎖の合成」を直接的に検出した結果と合わせて評価する必要があると考える。一方、技術移転の観点からは、蛍光金属錯体型糖鎖の構造の最適化、及び結合する糖鎖の多様化については更に研究を進める必要がある。基本的な部分についての特許化は可能であろう。本技術は、特別な糖鎖を発現する組織などへの有用な診断プローブとして、診断、医療面へ利用できる可能性があるので、更に研究開発を進めて、診断薬メーカーなどとの研究開発ステップに繋げ、技術を完成することが望まれる。
固形がん診断用MRI造影剤の開発 東京慈恵会医科大学
白石貢一
(財)神奈川科学技術アカデミー
中村英樹
本研究の目的は固形がん診断用高分子ミセルMRI造影剤の実用化に向け、生体に安全かつ、これまでと同等、もしくはそれ以上の固形がん診断能(ターゲティング能、造影効果)を有する高分子ミセルMRI造影剤の作製をすることである。In vivo実験に対応するin vitro評価系を確立し、作製した本MRI造影剤の細胞毒性実験、マウス血中循環性実験を行った。細胞毒性実験から本MRI造影剤は腹腔マクロファージへの取り込みが極めて低く、IC50が1-3mg/mLであった。血中循環性は24時間後に25%以上が残存し、本MRI造影剤は低い細胞毒性と固形がんへの高いターゲティング能を示す可能性が示唆されたが、正常組織への慢性的な毒性、組織切片評価などにより一層の安全性評価を行うことが必要と考えられる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、本研究での品質の評価の面では十分になされている点は評価できる。一方、安全性の分野でGLP適合性試験を意識したプロトコ−ル作成やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、市場性に関しても十分調査し、有用性を意識した研究成果に期待したい。
直接分化法を用いた心室筋・心房筋純化系の開発 東京大学
竹内純
東京大学
寺澤廣一
現在の分化法では中胚葉性細胞から効率良く心臓細胞へ分化させることが出来ない。また、純化するために多くのステップを必要とする。幼弱心臓細胞からは心室筋・心房筋・刺激伝導系の少なくとも3つの異なった細胞種に分化する。しかしながら、現時点での心筋誘導法ではこの細胞分化を的確に制御する方法がない。本研究期間において、特定因子と特定表面抗原を用いて、直接心筋のみに分化する系を開発した。本技術開発研究では、この発見をさらに発展させ、iPS細胞から直接心室筋・心房筋への純化とヒト細胞を用いて開発を行う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ほぼ計画通りに実験は実施されており、予測する成果も得られている。当初計画にしたがい獲得された生体由来純化成熟心筋の移植試験や分化制御系の確立、あるいはES/iPS細胞からの樹立等、適切な展開と連携の計画は策定されている。技術移転の観点からは、今後の展開と連携の計画は適切に策定されている。ヒトES/iPS細胞での再現性やサルモデルでの移植試験結果などクリアすべきハードルはあるが、プロセス上順調に推移していると思われる。ただし、最近、慶應大学のグループが、iPS細胞から高純度での心筋選択培養技術を開発したが、本研究開発課題の優位性や差別化ポイントなどを明確にすることが望まれる。
膵体尾部切除術用力制御ステープラーの開発 東京大学
小林英津子
東京大学
寺澤廣一
本研究では、膵臓を安全確実にステープリングを行うために、組織にかける圧力をモニターし、圧座速度、時間コントロールする装置を開発することを目的とする。今年度は最終年度として、DCモータと力センサを用いた自動ステープル装置の製作と評価実験を行った。昨年度の結果より、圧座速度が増加すると把持先端部での圧力が大きくなるとともに膜破裂が起こることが観測されたため、力センサの値を一定以上にならないようにステープラーの圧座速度制御を行った。評価実験の結果、 把持時の圧力のセンシングが可能であり、また、圧力を一定値以下に制御とすることで、膜破裂を防止することが可能であった。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に膵体尾部切除術において、膵液の漏洩と臓器の損傷を防止するために、臓器に対する圧挫圧力をコントロールしながら把持動作を行う、自動ステープラー装置を開発すること技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、動物実験が実施できず、重要な膵液漏の検討や圧挫圧力、速度の制御方法については更なる検討が期待される。
Tandem Repeatに基づく感染症診断用抗原の同定 東京大学
後藤康之
東京大学
寺澤廣一
日本には存在しない熱帯感染症は、専門知識を持ち合わせていない医師にとって確定診断が難しい。海外旅行者の安全確保の観点から、また防疫上の水際対策の観点からも検疫所におけるスクリーニングシステムの開発が求められる。我々は熱帯感染症を網羅する血清学的診断の開発を目指しており、そのために必要な抗原を病原体ゲノム情報のコンピュータ解析だけで同定することを試みている。平成23年度は赤痢アメーバ原虫より候補遺伝子となるtandem repeat遺伝子を同定し、その組換えタンパクを大腸菌発現系にて作製した。平成24年度に患者血清を用いたELISAを行い、これら候補分子の血清学的診断抗原としての有用性を検討した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に日本には存在しない熱帯感染症においてTandem Repeat(TR)配列を持つ蛋白質が強い抗原性を持つことを見出し、ゲノム情報からTR配列に基づくコンピュータ解析だけで新規抗原を同定できるとする技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、米国企業から日本住血吸虫測定系に関して共同研究提案あり、早期の実用化が期待される。今後は、疾患の発生している途上国での期待は大きく、社会還元の可能性は高いものと考えられる。
ベッドシーツ型非接触心電・呼吸モニタによる睡眠時無呼吸のタイプ識別 東京電機大学
植野彰規
東京電機大学
中田英夫
申請者が特許出願した方式に基づいて製作したベッドシーツ型非接触心電・呼吸モニタについて、(1)成人被験者を対象とした検証実験と装置の改善検討、(2) 無呼吸状態の自動検出アルゴリズム考案とプログラム化、(3) 無呼吸の種類(閉塞性/中枢性)の自動判別アルゴリズムの考案とプログラム化、を目的に研究を実施した。その結果、(3)のプログラム化以外は全て実施し、 (1)については心電・呼吸の計測開始1時間の平均検出率がそれぞれ97.2%、80.7%であった。また、層構造電極について検討し、振動アーティファクトの低減とS/Nの向上に寄与することを確認した。(2)については、短時間の実験データにおいて呼吸・無呼吸(低呼吸)の検出が行えることを確認した。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、心電および呼吸の情報取得はほぼ目標を達している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、無呼吸の種類判別方法のプログラム化には至らなかったので、さらなる検討が必要である。企業との連携について具体的な検討が始まっている。今後、本研究は喫緊の社会的課題への取り組みであり早急な応用展開が期待される。
密着型歩行補助機の実用化に向けた高精度歩行位相把握システムの開発 東京都立産業技術高等専門学校
池原忠明
首都大学東京
中西俊彦
脳卒中片麻痺患者は、早期にリハビリを受けることにより脳が活性化され早い回復が見込まれる。そこで、リハビリ現場および自宅で使用できる密着型歩行補助機を開発する。本装置は、フレキシブルシャフトを活用して装置を可能な限り小形化し、その特性であるねじりばねの効果を利用して必要なタイミングで力の補助や抵抗を加える歩行補助機である。装置の位相把握には、足底の感圧センサを用いて把握を行っている。しかし、足底が内反してしまった患者の場合、感圧センサで測定することが難しい。そこで本研究は、装置の補助精度を向上させるために加速度センサを用い、高精度の位相把握が可能な密着型歩行補助機を開発することを目的とした。 当初目標とした成果が得られていない。中でも歩行中の位相を感圧センサに加え加速度センサを用いることによって測定精度を向上させ、歩行補助機の実用化と適用範囲の拡大に向けたデータを収集するシステムに関しては技術的検討や評価の実施が不十分であった。特に加速度センサを搭載した歩行補助装置が未完成であり、次の技術的課題は明確となっていない。申請時の計画内容の多くが実施されておらず、本支援プログラム終了後の計画は検討されていない。
3次元血管組織の構築に向けた超高速細胞アセンブリデバイスの開発 大阪大学
秋山佳丈
大阪大学
西嶋政樹
本研究では、細胞のみからなる組織の生体外構築に向けて、磁気アルキメデス効果を利用した3次元細胞アセンブリデバイスの開発を行った。まず、細胞凝集に必要な磁場勾配を得るために必要な電磁石の仕様を磁場解析により決定し、電磁石デバイスの試作した。さらに、このデバイスを用いて、蛍光微粒子の凝集実験を行った。当初の装置では、電磁石で発生した熱がヨークへと伝わりチャンバー内の微粒子に対流が見られたが、ヨークも含めた電磁石全体を冷却することで改善できた。今後、本デバイスにより造形した組織の生物学的評価を行い、3次元組織造形システムとしての可能性を検証していきたい。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。磁場による細胞凝集が可能であり、円筒形状組織の構築が可能なことはわかったが、本来の目標である電磁石による細胞凝集装置の開発及び血管様組織構築はできなかった。電磁石を用いて磁場を発生し細胞凝集させるための装置を開発するための技術的課題がいくつもあることが明確になり、開発は進展しているが、装置の完成には至っていない。現時点では、当初の目標には達していず、期待したほどの成果は得られていないことから技術移転に繋がる可能性は低い。今後の研究開発計画についても、具体的且つ的確に検討されてはいない。実際に細胞を用いた検証を行うことが最も重要で、粒子と細胞では挙動は計算通りにならないであろうことが考慮されていない。しかし、磁場コントロールによる細胞凝集可能な装置が開発されれば、産学協同による研究開発ステップに繋がる可能性があると思われる。さらに、3Dプリンターのように立体的な形状の組織構築が可能になれば、再生医療への応用も期待でき、社会還元に導かれると思われる。
アプタマーを利用した電気化学的VEGF高感度・迅速検出システムの開発 東京農工大学
池袋一典
東京農工大学
木下麻美
血管内皮成長因子(VEGF)の迅速検出を目指し、1本のアプタマーとペプチド核酸(PNA)から成るアプタマーの部分相補鎖(CaPNA)を利用することで、標的に結合したアプタマーと結合していないアプタマーを簡便に分離する手法(B/F分離)を開発した。種々のCaPNAをデザインすることで、VEGF存在下、非存在下において有意なシグナルを観察した。濃度依存性を評価したところ、25 nMのVEGFの検出を行うことが出来た。PNAを利用することで、B/F分離は2分で完了し、DNAを利用した場合と比較し、迅速な検出系を構築できた。しかし、バックグラウンドが高いことにより、pMオーダーの検出限界はまだ達成出来ていない。今後は、更に異なる配列を有するCaPNAをデザインすることで、バックグラウンドを低下させ、pMオーダーのVEGFを数分で測定することを目指した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。しかしながら、CaPNAを数種類合成し、その性能を確認したたけで、初期目標であるpMオーダーのVEGFの測定および最適なCaPNAの確定もされていない。至適なCaPNAの合成、バックグランドの低減、感度アップ等々、解決しなければならない要素が山積みであり、最終目標である「簡便アプタマー・センサー」の開発は程遠い。また、アプタマー利用測定法は以前より提案されながら未だ実用化されていない。本法が他の方法(イムノアッセイ、レセプターアッセイ)に比べて優位性がどこにあるかを検討すべきである。測定法の必要な要素である「正確性」、「再現性」、「高感度」、「操作の簡便性」、「試薬の安定性」等の観点から見て、何が優位か本法の特徴を明確にし、それの達成のために今後の研究開発の展開を計画されることが望まれる。
ケミカルバイオロジーにおける高効率・高汎用型分子標識システムの開発 東京薬科大学
林良雄
Npys基を用いた固相担持型SH選択的ビオチン標識システムを応用し、リンカー付きビオチン標識試薬、親水性リンカー付きビオチン標識試薬、蛍光分子標識試薬、オリゴアルギニン導入試薬の合成を達成した。また、実際にSH基を有する低分子化合物に対し標識・導入反応を行い、対応する化合物が得られる事を確認した。特にリンカー付きビオチン標識試薬、蛍光分子標識試薬については標識された化合物がそれぞれ94%、91%という高純度で得られる事を明らかにした。更にSH選択的ビオチン標識試薬が冷蔵・冷凍の保管条件の下、3ヶ月経過後も合成直後と変わらない標識性能を維持することを明らかにし、本分子標識システムの創製を成し遂げた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標のビオチンや蛍光標識試薬の合成が達成され、これらの反応性や長期保存性も確認された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、より高度な技術が必要なオクタアルギニン標識に関しての条件検討や、他のタイプの標識試薬への同技術の応用などの検討が必要と思われる。今後、商品が市販されれば、生化学試薬として有用であり社会還元に導かれることが期待される。
高磁場環境対応の高性能非磁性薬液注入装置の開発 日本医科大学
平川慶子
我々は、従来の発想とは全く異なる原理に基づいて、高磁場環境下でも磁場を乱すことなく電気ノイズも発生しない、安全かつ簡単に使用できる低価格で製造可能な薬液注入装置を開発した(特願2009-143488)。本研究では、高性能の医療機器、小動物実験用機器としての実用化をめざして、安定した持続微量注入が行えるよう、「送液安定時間の短縮」および「流量変動の改善」に的を絞った改良を行った。改良版試作機の送液安定時間は、流量1mL/hr(5mL容シリンジ使用)で4分以内、流量変動は全領域内で2%以内を達成することができた。今後は、注入圧が高い皮下への持続微量注入に十分対応できるよう改良を行う予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、7テスラの実験用MRI装置内での動作確認されたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、MRI測定画像への影響を、まずファントム評価などで実施し、例えばシ−ル部材、リップ形状などは類似の工業用シリンダ−は多く存在するので、医療用に適したものの調査を行い、開発項目を絞る具体的なアプロ−チも必要である。共同研究・開発する企業候補もあるので、今後の研究開発が期待される。
組織工学的人工歯根の基となる象牙質塊を再生する技術開発 日本大学
本田雅規
目標:歯の代替方法として有効な手法であるチタン製人工歯根療法に代わる天然の組成と同様な人工歯根の開発を目的に、歯髄間葉系細胞と担体を用いて象牙質塊を再生させることである。
達成度:
1)5症例のヒト歯髄組織から採取して培養した歯髄間葉系細胞が硬組織形成能を所有していることを確認した。したがって、象牙質形成能を持つ細胞の採取と培養方法は確立できたと考えた。
2)歯髄間葉系細胞に適した担体を探索した。今回使用したGC社製研究用担体の気孔径80は骨髄由来間葉系幹細胞から骨再生に適していたが、象牙質の再生においては、気孔径をさらに大きくした気孔径90が適していることを明らかにできた。
今後の展開:この象牙質塊周囲に歯周組織再生を可能とする手法を模索し、細胞性人工歯根を作製する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、未分化歯髄幹細胞を増殖させる技術でアパタイトブロックに播種、ヌードマウス背部皮下に移植し、硬組織形成を確認している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、デンチンシアロフォスフォプロテインのブロックへの吸着法など、次のステップへ進めるための技術的課題を解決することで実用化が望まれる。今後、本研究成果が応用展開された際には、現在のチタン中心の人工歯根の概念が変わることとなり、社会還元に導かれることが期待される。
非崩壊型生体吸収性ペースト状人工骨の開発 財団法人神奈川科学技術アカデミー
小西敏功
(財)神奈川科学技術アカデミー
横尾義春
本研究課題では、インジェクションによる低侵襲治療を可能とする「生体吸収性ペースト状人工骨」に 生体環境においても確実に硬化する「非崩壊性」を付与させ、材料特性を臨床応用可能なレベルに引き 上げることを目標に、セメント原料粉体の改良およびセメントの試製を行った。3000 ppm のイノシトールリン酸(IP6)中で市販β-TCP 粉体を 3 h 粉砕することで、非崩壊性セメントを作製可能なセメント原料粉体 の調製に成功した。このセメント原料粉体から作製したセメントは26 minで硬化開始し、その圧縮強度は、 ヒト脊椎椎体の強度(約 15 MPa)を上回る 25 MPa で、水中において非崩壊性であった。また、 in vitroお よびin vivoでのセメントの吸収性も確認した。今後は、材料特性を担保したまま、生体中での荷重によっ てfragmentation(崩壊)を起こさないセメントへと改良し、医療用デバイスとして実用化するための技術を構築する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。本研究開発課題では、低侵襲性治療が可能な非崩壊性生体吸収性ペースト状人工骨の開発を目標にして、セメント原料粉体の改良とペースト状人工骨の溶解性の2項目の研究が行われた。当初に挙げられていた実験はすべて行われ、目標は達成されている。特に、詳細な実験を行った結果、β−TCP−3hがセメント原料粉体として適していること、これを用いたペースト状人工骨の溶解性がHApセメントより2倍以上高いこと、個体レベルの生体適合性評価でも好ましい結果が得られていることなど、実用化につながる有用なデータが多く示されている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、具体的な研究開発計画は示されていないものの、これまでの研究の延長線として、生体中での荷重によって崩壊しないNon−fragmentationセメントへの改良が提案され、セメント形成技術は完成しつつあり、実用化を目指した産学共同研究開発につながる可能性は高いと考えられる。薬事認可の問題はあるが、実用化されれば、骨形成医療に役立つと考えられる。特許の出願には至っていないが、生体適合性を含めた基礎的知見の蓄積により特許出願も可能と考えられ、今後、個体レベルの生体適合性に関する知見が蓄積されれば、実用化への道が開けると期待される。
低周波機械的振動による骨芽細胞の骨形成および細胞増殖促進効果における振動時間の影響 横浜国立大学
白石俊彦
横浜国立大学
原田享
機械的振動を骨折治療器に応用するには、短時間で大きな治癒効果を得ることが重要である。本研究では、研究責任者らの過去の報告より、骨形成を担う骨芽細胞の増殖および骨形成ともに効果があると考えられる振動数25Hz、振幅0.5Gにおいて、機械的振動を与える時間の影響を検証した。細胞増殖については、1日24時間の振動印加により飽和細胞密度が培養13日目で非振動時の約2.1倍となり、さらに振動時間により飽和細胞密度は単調増加することを示した。骨形成については、骨形成に関連するタンパク質であるアルカリフォスファターゼの遺伝子発現を測定し、培養4日目において1日12時間の振動印加によりこの遺伝子発現量が非振動時の約1.8倍になることを示した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。本課題の目標は、低周波皮下振動により骨芽細胞の骨形成や細胞増殖に対する短時間の効果的な振動状況を見いだすことが目的であった。その目的に対し、特定の振動条件下で13日目で飽和細胞密度が2.1倍となり、骨形成をアルカリフォスファターゼ遺伝子発現で見ると別の特定の振動条件下での振動印加により、遺伝子発現量が1.8倍になることを確認できた。骨形成に対する振動時間の影響はさらに検討が必要となるが、評価としては十分であったと考えられる。一方、技術移転の観点からは、実用化に必要な短時間、簡単な機器というテーマについての問題が残っているが、機序の応用の可能性は確認できた。本研究開発成果の発表を行った講演等に対して、既に医療機器メーカから問い合わせがあり、打ち合わせを行っているとのことで、今後の技術移転を目指した産学共同等の研究開発が期待される。
ヒト誘導型癌幹細胞を用いた新規癌治療標的因子の探索 横浜市立大学
梁明秀
横浜市立大学
福島英明
癌幹細胞を標的とする革新的癌治療薬の開発が期待されている。本研究課題では我々が独自に開発した、正常組織由来癌幹細胞を誘導する手法により樹立した複数の臓器由来の誘導型癌幹細胞モデルを駆使した独創的な研究を行った。先ずは、本モデル細胞を免疫原とすることで、癌幹細胞を特異的に標的とするモノクローナル抗体を作製した。また、ジーンチップ法や包括的プロテオミクスを用いて、癌幹細胞の生存や増殖に必須となる転写因子および分泌タンパク質を複数同定した。今後はこれらの成果をさらに発展させることで、本細胞モデルを用いることにより、癌幹細胞を特異的に殺傷する薬剤のスクリーニングやバイオマーカーの探索が効率的かつ飛躍的に進むものと考えられる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、新しい癌幹細胞のバイオマーカーの同定は完全に終了していないが9遺伝子にまで絞り込みが進んでおり、モノクローナル抗体作製は完了している点は評価できる。一方、新たな抗体、遺伝子機能解析、さらに新たな癌幹細胞ライブラリ−作成に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。技術移転を実現するためには、誘導癌幹細胞が、癌幹細胞としての諸性質を維持していると共に、臨床材料から得られる癌幹細胞との類似性についてもしっかりデ−タを積み重ねることが望まれる。今後、癌幹細胞の診断薬、治療薬開発が実現すれば、癌医療に多大な貢献が期待される。
新生児スクリーニングを目指したムコ多糖症の診断試薬の開発 慶應義塾大学
佐藤智典
慶應義塾大学
羽鳥賢一
糖鎖分解酵素の欠損症であるムコ多糖症に対する診断薬の開発を目指して、グリコサミノグリカン(GAG)型のオリゴ糖鎖を糖鎖プライマー法により合成した。糖鎖プライマーXyl-Ser-C12を用いて複数の細胞によるGAG型糖鎖の合成を行い、生成物の回収法を改良することで、29種類の生成物が得られた。LC-MSを用いた構造解析と糖加水分解酵素による基質特異性の解析により、GAG型に特徴的なN-アセチルヘキソサミンとヘキスロン酸の繰り返し構造が得られており、また硫酸化されたGAG鎖が得られた。これらの結果より、得られた生成物には、診断薬の候補となる糖鎖が存在しているとなることが示された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、 ヘパラン硫酸型を含む29種の生成物を確認するなど、目標に向かって限られた期間内で一定の進捗が見られた点は評価できる。一方、デルマタン硫酸型の生成確認、ケラタン硫酸型の生成、合成効率向上、原因酵素の入手による実証試験など、実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、GAG型オリゴ糖ライブラリーの構築に成功すればムコ多糖症の正確な診断に資するものと考えられ、社会還元が期待できる。
抗血栓薄膜の高速製膜技術の開発 慶應義塾大学
白鳥世明
慶應義塾大学
佐藤修
高齢者人口の増加や昨今の災害被災者の救護において体内に挿入する医療器具(内視鏡、カテーテル)の重要は増加している。申請者らは、常温、常圧、水系のウェットプロセスにおいて簡易的に薄膜形成できる交互吸着法により血栓付着防止機能をもつ薄膜の形成が可能であることを報告してきた。本研究課題では、水溶液を主体としたナノスケールの製膜技術を駆使することで、これら医療器具に不可欠な血栓の付着を抑制する抗血栓薄膜を新規提供する。実用性を目指した抗血栓薄膜の施工技術の開発であり、従来にない簡易的かつ低価格なコーティング方法であることから、医療用の抗血栓薄膜の基盤技術となるものと考えられる、 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、噴霧式交互吸着法ではなく、浸漬型交互吸着法による高透明抗血栓膜の開発について検討した結果、その成膜に成功している点は評価できる。基材の形状に依存することなく様々な医療器具(内視鏡、カーテール)表面に簡易的に抗血栓薄膜を実現させる基盤技術確立はできたと思われる。一方、実用化のためには耐久性の向上にむけて検討することが必要と思われる。今後、簡易的かつ低価格な医療用の抗血栓薄膜が達成できることが望まれる。
動物試験代替法のための多階層型の培養皮膚マイクロアレイ 慶應義塾大学
宮田昌悟
慶應義塾大学
湯浅洋二郎
動物実験に代替する皮膚刺激試験法のための基盤シーズとして、生体皮膚と同様に真皮・表皮細胞からなる多階層構造を実現しながら、かつ、マイクロサイズでの細胞組織の再構築とアレイ化を目標として研究開発を実施した。研究成果として、細胞の誘電泳動を基本原理とした多階層細胞集積デバイスの開発に成功し、マウス皮膚由来の真皮細胞、表皮細胞が二層構造を成すような微細な皮膚細胞集積体を作製することができた。また、この皮膚細胞凝集体を培養したところ、各凝集体にて微細皮膚組織の再構築が確認され、真皮層、表層の細胞ともに細胞生存性が認められた。以上、本研究開発の成果として動物実験代替手法としての微細皮膚組織アレイの作製術が確立された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、誘電泳動を用いた表皮および真皮細胞の多階層集積化技術の確立と、多階層構造をなす皮膚細胞スフェロイドのマイクロアレイ化の刺激応答検証を除き達成した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、動物細胞に替わる反応特性を示すことを実証する必要があり、そのための研究と特許化等は今後の課題と思われる。今後は、社会還元のために積極的な発表と広く情報発信することが望まれる。
カイコウイルス多角体による新規ドラッグデリバリーシステムを用いた歯槽骨・顎骨再生療法の開発 神奈川歯科大学
松本剛一
よこはまティーエルオー株式会社
小原郁
多角体に固定化された生理活性因子は、長期間、安定して多角体から徐放されることが明らかにされている。そこで本研究は骨形成タンパク質(bone morphogenetic protein-2:BMP-2)を多角体に固定化して骨再生のマテリアルとして骨欠損部に応用したBMP-2徐放製剤として機能させることで良好な骨再生が得られるかどうか成犬下顎骨を用いて検討を行った。その結果、BMP-2固定化多角体を骨欠損部に移植した場合、空の多角体を移植したのに比べて有意に骨再生が高いことが明らかとなった。これはラット頭蓋骨々欠損部で行った骨再生実験と同様な結果であった。今後の展開としては、血管新生因子を固定化した多角体を併用することで、より効果的な骨再生療法の開発を行う必要があると考えている。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に骨新生促進作用を有する骨形成タンパク質(bone morphogenetic protein-2:BMP-2)を多角体に固定化したものを骨再生のマテリアルとして骨欠損部に応用し、実用性の高い革新的な歯槽骨および顎骨再生療法に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、歯周病モデルでの検討迄は到達できていない為、当初の目標は達成できていない。現状特許取得には至っていないが、既存技術の組み合わせで相乗的な結果が得られる様な開発が出来る可能性がある。今後歯周病に対する有効性、各種骨誘導カクテルを用いた効果の検証、多角体の持続性などの検討を行われることが期待される。
5’末端をコンホメーション制御した人工核酸によるmiRNA検出プローブの開発 東京工業大学
清尾康志
東京工業大学
松本進
本研究では起案者が既に開発したdAChcmP修飾核酸の短鎖RNA選択的結合能を改良し、優れたmiRNA検出プローブを新たに開発するための検討を行った。開発したプローブとターゲット短鎖RNAとの選択的結合能を増強するために、新しい構造を有するプローブの合成と性質の評価を行った。dAChcmP修飾核酸の構造をもとに、さらに塩基部や修飾部位、バックボーンコンホメーションなどを固定化した新規修飾核酸の合成を検討した。
特にバックボーン固定化修飾核酸については合成したプローブの評価を、UV-融解曲線(Tm)により行い、その短鎖RNA選択的結合能を明らかにした。RT-PCR法に用いることを指向し、逆転写反応による評価を行った。dAChcmP修飾核酸やその誘導体がmiRNAを選択的にcDNAに逆転写するための新規プローブとして有用であることを示唆する結果を得た。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、オリゴヌクレオチドプローブの短鎖miRNA への選択結合能を向上させるために、シクロヘキサン環の固定化、塩基の配向等、分子デザインを行い、それに沿った化学合成と選択結合能を実施し、予定の成果をあげている点は評価できる。一方、ΔTm=20℃以上、逆転写反応(100倍以上の選択性)、microarray (100倍以上の選択性)についての技術的検討やデ−タの積み重ねなどが必要と思われる。今後、用途を明確にしさらなる分子設計の改良、向上が望まれる。
感染症診断およびガンのプロファイリングを簡易に行える核酸検出反応システムの開発 東京工業大学
小宮健
東京工業大学
松本進
本研究開発は、微量な短鎖の核酸でもシグナルを指数的に増幅する検出法に ついて、感度性能の向上と多様なサンプルの検出を実現し、miRNAによるガンの 早期診断や核酸検出による感染症診断の実用化を目指すものである。当初予想 しなかった37℃での検出を達成したことで、実用化の可能性が大きく高まっ た。検出感度について、目標とした10 fM濃度の核酸検出には至らなかったが、 感度性能を10〜1000倍に向上させるとともに、反応システムの問題点を明らか にして設計を改良した。今後は実用化に向けて検出対象を選定し、企業等と連 携してさらなる検出所要時間の短縮と感度向上に向けた開発を実施していく。

期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、特に予想しなかった常温での検出が可能になるなどの新たな重要な成果を得たことは評価できる。37℃での検出を達成したことで応用範囲が大きく高まっている。一方、技術移転の観点からは、特許出願はPCT出願を実施しており、今後の開発に向けてすでに相手企業を選定して共同開発も着手しているので、実用化が加速されることが望まれる。今後、比較的安価に種々の診断が可能となるので早期の社会還元が期待される。
CCL2タンパク質によるヒトiPS細胞の安定培養 独立行政法人理化学研究所
長谷川由紀
独立行政法人理化学研究所
井門孝治
マウスにおいてフィーダー細胞なしの状態で、CCL2タンパク質がiPS細胞/ES細胞の未分可能を維持しながら安定して培養させることを見いだした。ヒトiPS/ES細胞においては、未分化能の状態がマウスiPS/ES細胞様のブラストシスト様幹細胞ではなく、エピブラスト様幹細胞であると報告されてきているが、CCL2を添加した培地で培養することで、遺伝子発現変動をみてみるとヒトiPS/ES細胞がエピブラスト様幹細胞からより未分化能が高いブラストシスト様幹細胞に変化していることが確認された。このことから、CCL2添加により、マウスのようにより安定した培養、増殖が可能になるだけでなく、より効率よく安全に分化誘導が可能になると期待される。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。設定された各目標をほぼ達成し、ヒトiPS細胞をCCL2タンパク質の添加により安定的に培養できる系を確立した。特に、フィーダーなしの条件で、CCL2タンパク質の添加によりiPS細胞の万能性、LIF経路の活性化、胚盤胞マーカー発現、形態などが保持されている点に関しては評価できる。しかし、より安価な手法の開発や、サイトカインスポッテイング技術など、課題が明らかになったところもある。技術移転の観点からは、研究成果に基づいて新規特許申請も行われており、今後の技術移転につながる可能性が高まったと考えられるが、今後の研究開発計画については(紙面のサイズもあるが)、具体的かつ明確に示されているわけではない。今後は、長期培養の効果、また分化誘導への影響を検討することが望まれる。展示会での発表、企業との面談を活発に行っているので、これらを通じて具体的な技術移転に繋がることが期待される。
組織再生を目的としたコラーゲン結合性ヒト型上皮成長因子の生産法確立 北里大学
松下治
北里大学
平田伸
上皮成長因子(EGF)をコラゲナーゼ由来のコラーゲン結合ドメイン(CBD)と融合して高密度コラーゲンパッチにアンカーリングすることにより、局所で持続的に表皮、結合組織、粘膜上皮の増殖を促進できた。この新規材料は鼓膜形成術の医療材料として最適であり、様々な再生医療への展開も期待される。本課題では、1)ヒト型EGF-CBD融合タンパク質遺伝子を全合成し、2)GMP生産に適するベクターを構築して、3)生産用宿主と培養条件を検討することにより、ヒト型コラーゲン結合性上皮成長因子の生産法を改善し、評価法を確立した。また、その過程でベンチャー企業に対して秘密保持契約のもと情報提供を行い、当該シードのライセンス契約が実現間近となった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、組織再生を目的としたコラーゲン結合性ヒト型上皮成長因子の生産法確立という目標を達成し、コラーゲン結合性ヒト型EGFのGMP生産に関して開発した技術、EGFに限らず他の増殖因子についても適用可能であり、本課題においてもその方向性について検討されている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、コラーゲン結合性ヒト型上皮成長因子は、鼓膜形成術の医療材料以外にも応用の可能性は高いと考えられるのでさらなる検討が必要と思われる。今後、それらの適用が実現されれば再生医療におけるより大きな貢献が期待される。
発光タンパク質の放射光を利用した光駆動イオンポンプタンパク質の機能発現 明治大学
佐々木貴規
明治大学
久永忠
本研究では、光駆動Cl-ポンプ機能を持つ膜タンパク質ハロロドプシン(HR)と、発光タンパク質ルシフェラーゼ(ELuc)を遺伝子工学的に融合し、暗所下においても発光基質の添加によりCl-ポンプ活性を示す新たな融合タンパク質の作製を目標とした。大腸菌発現系における発現条件の検討により、HR成分、ELuc成分共に活性を有する融合タンパク質(HR-ELuc)を発現させることができた。生体膜上にHR-ELucを発現した大腸菌は、懸濁液中の発光基質を取り込むことで、速やかに発光することも明らかになった。一方、工学的な技術移転に向けたHRの安定性向上については、特定のカロテノイドをHR三量体へ結合させることで、その3次構造の熱安定性を大幅に向上させることに成功した。本研究で作製された融合タンパク質が、野生型HRと比べてどの程度のCl-ポンプ活性効率を持つかの定量的評価、及びその活性効率の向上については、今後の課題となった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、計画していたタンパク質の発現には成功し、この融合タンパク質を発現させた大腸菌が発光することを確認している点は評価できる。一方、発光タンパク質の光で、実際に光駆動イオンポンプ活性が得られるかの技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、新たなパラメ−タ−による画像診断法開発が期待される。
自家骨に代わりうる次世代型多孔質バイオセラミックスの開発 明治大学
相澤守
明治大学
小林直樹
現在、整形外科領域では自家骨が骨の治療におけるゴールデンスタンダードであるが、これは「骨誘導能」という優れた骨形成能を備えているためである。水酸アパタイト(HAp)やリン酸三カルシウム(TCP)などのバイオセラミックスは人工骨として臨床応用されているが、これは骨誘導能を持たないため、確実な骨癒合が得られない場合がある。本研究課題では、研究代表者らの独自のプロセスで創製した「リン酸カルシウムファイバー」を出発物質として細孔構造を精密に制御された「多孔質バイオセラミックス」を創製した。これを大型動物であるブタ筋内にインプラントしたところ、多孔質セラミックスの孔内に骨形成が確認された。このことから、本事業で創製した多孔質バイオセラミックスは「骨誘導能」を備えており、「自家骨に代わりうる新規な人工骨」として実用化が期待できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、バイオセラミックスの気孔径の最適化、およびブタを用いた動物実験による評価によって最適な条件が確認できている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、早期に動物への長期埋め込み試験のデ−タを取り、技術の可能性を見極める必要がある。今後、人工骨は大きな潜在市場であり、社会還元に導かれることが期待できる。
抗歯周病作用を有する機能性ペプチド素材の開発 新潟県農業総合研究所
太養寺真弓
新潟県農業総合研究所
浅野聡
精白米タンパク質抽出物は、歯周病菌のプロテアーゼRgpを阻害することで歯周病予防効果を発揮するが、溶解性が低いという難点がある。この原因は主要阻害因子であるα-グロブリンのタンパク質化学的性質に起因するため、酵素消化でα-グロブリンをペプチド化することにより、溶解性の改善を図った。すなわち、Rgp阻害活性に必要な最小ペプチド配列を決定し、最小配列を保持できると予想される酵素製剤を選択するとともに、酵素処理条件を検討した。適切な酵素製剤を用いることでα-グロブリンのペプチド化が可能であった。ペプチド化によって溶解度が大幅に向上しただけでなく、Rgp阻害活性も顕著に上昇した。酵素消化の有効性は、精白米タンパク質抽出物でも確認できた。これらの成果に基づいて、今後は高活性の歯周病予防食品素材の実用化を目指していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、プロテアーゼRgpを阻害するグロブリンの活性部位がアミノ酸5残基で構成されたことを突き止め、市販分解酵素のスクリーニングで最適な製剤を見出した点に関しては評価できる。ただ、かなり短いペプチドでも阻害活性を示すことから、精白米からではなく、人工合成のペプチドを用いた場合の効果とコストについても検討すべきである。一方、技術移転の観点からは、本研究の過程で既に民間企業の協力を得ており、今後技術移転に向けての研究開発がスムーズに進むと考えられる。歯周病の原因となるプロテアーゼRgpを阻害する精白米由来のグロブリンの活性部位を特定し、ペプチド化による溶解性が改善できたという当初の目標が達成された。さらに、断片化によって阻害活性が大きく向上したことも確認された。これらの成果は、新しい歯周病予防食品素材の開発と実用化につながると期待できる。今後は、最適な分解酵素(No.10)で得られたペプチド断片(約4kDa)についての特性評価(配列など)と、人工の合成ペプチドを利用する可能性についても検討されることが望ましい。
ヒト唾液高プロリン短鎖ペプチドの試験研究:生物活性の安定性評価 新潟工科大学
斎藤英一
(財)にいがた産業創造機構
小林和仁
1)ヒト唾液高プロリン短鎖ペプチドが持つ「菌増殖阻害作用とグラム陰性菌内毒素(LPS)の中和作用」を実用化するために、本課題では「当該ペプチドのう蝕菌(S. mutans)、口内炎菌(C. albicans)および歯周病菌(P. gingivalis)に対する増殖阻害活性」の熱安定性を加速試験(遮光下、40℃で3ヶ月間保温まで)により評価した。その結果、合成ペプチド1, 2, 3, 4, 6を遮光下、40℃で3ヶ月保温 (室温25℃保温、35.87ヵ月に相当) しても、大部分のペプチドがおよそ70%以上の菌増殖阻害活性が残存することが判明した。2)合成ペプチド6の歯周病菌(A. actinomycetemcomitans Y4)のLPS(リポ多糖)に対する中和活性の熱安定性を加速試験(遮光下、50℃で30日間保温まで)により評価した。その結果、3日保温 (室温25℃保温、1.71ヵ月に相当)、10日保温(5.7ヵ月に相当)、30日保温 (17.1ヵ月に相当)の試料 (ペプチド6) のLPS中和活性の残存率はそれぞれ 81%, 61%, 0% であった。菌増殖阻害活性やLPS中和活性はペプチドを空気中で加温保存すると低下するが、その原因としてペプチドの空気酸化が考えられる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、in vitroの試験をメインに熱安定性のデ−タなど行い概ね目標は達成されている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、洗口液への応用を考えた場合、安全性の確認やペプチドを安価に合成できるシステムの検討を行い、既存の洗口液と比較してこの方法の特徴、利点を明確にしての実用化が望まれる。今後は洗口液だけでなく、医薬分野への応用を考慮して開発されることを期待したい。
歯周病予防を目指した安全な米由来抗菌タンパク質成分の探索 新潟大学
落合秋人
新潟大学
定塚哲夫
歯周病は、日本人成人の約80%が罹患している代表的な歯科疾患であり、Porphyromonas gingivalisなどの口腔細菌によって発症する。申請者は、少なからずヒトに副作用や毒性を示す従来の抗菌成分に代わる、より安全な米タンパク質成分を探索した。今回新たに同定した成分は、100pM程度でP. gingivalisの生育を完全に抑制する強力な抗菌活性を有し、かつ70℃の熱処理にも耐えうる高い安定性を有していた。また、分離法を改善することにより、分離効率を50,000倍向上することができた。今後は、同成分の生育阻害メカニズムの解明や、モデル動物を用いた効果の検証等を通して、歯周病予防向けの機能性食品素材への技術移転を目指していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、 歯周病の原因菌の一つであるP. gingivalisの生育を抑制する効果的な米タンパク質成分を分離しており、その高温安定性など、応用につながる結果も得ている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、毒性試験を行うことが重要であり、同時に将来的にどのような機能性食品素材が予想されるのか検討が望まれる。現時点では、技術移転を目指した産学共同等の研究開発ステップにつながるとは言えないが、非常に効率のよい新規成分が見つかっているので可能性はある。今後、本技術により歯周病が適切にコントロールされ、罹患率が減少することは社会還元の点からも期待できる。
遠隔転移の分子機構解明を目的とした扁平上皮癌の網羅的遺伝子発現解析 新潟大学
永田昌毅
新潟大学
定塚哲夫
口腔扁平上皮癌(OSCC)の切除検体のtotalRNAを用いてマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行った。遠隔転移をきたした5症例と4つ以上の頚部リンパ節転移をきたしたが遠隔転移をきたさなかった5症例を比較した。それによりOSCCが遠隔転移をきたす際に特有の分子発現プロファイルの探索(発現レベルの増加が2倍以上、p値(t検定)が0.05以下が選定基準)した。 その結果、143遺伝子が抽出され、現時点で上位4つの遺伝子について遠隔転移8症例と遠隔転移をきたさなかった8症例について追補的なPCR発現解析を行い、一致した傾向が見出された。
遠隔転移性バイオマーカー候補分子の血液中検出を目的にOSCCの15症例で術前術後の血液を採取保存した(未分析)。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、血液サンプルを用いた解析が、15例と少ないが実施されている点については評価できる。一方、更なるマイクロアレイ解析を行い、これにより精度の低いマーカーの除外し、さらにパスウェイ解析により抽出された変動遺伝子群あるいはクラスター分類された遺伝子群の生物学的な解釈を深め、定量PCR解析による候補遺伝子の発現レベル変動について有意性の検証を150例(2グループ)で行うなど技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、予想された結果が認められれば社会還元に導かれることが期待される。
インターネットを利用した遠隔嚥下障害リハビリテーション支援デバイス開発 新潟大学
櫻井直樹
新潟大学
定塚哲夫
本研究の目標は、ピエゾセンサーによる嚥下機能評価装置の精度検定と電気信号の電送法の開発である。正常嚥下可能な健康成人(男性5名)。試作機を使用して反復唾液嚥下試験(RSST)を30秒間の行い、被験者の嚥下運動に対する自覚回数と試作機に表示された嚥下回数の一致率を検討したこの嚥下機能評価訓練装置を用いた反復唾液嚥下試験(RSST)での嚥下運動の検出率は91.5(%)であった。よって試作機では、ピエゾセンサーの湾曲の大きさから出力される電圧値によって、嚥下機能の評価ができる可能性が示された。さらにピエゾセンサーの電気信号を電送できるデバイスを試作機として開発し、目標は概ね達成できた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、筋電位との同時計測、外部との接続実験については課題が残ったが、装置を2回試作し評価した点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、嚥下回数の正解率が90%程度にとどまっており、正解率を上げる検討やセンサ装着の容易さや装着感の改善など、より実用化を意識した技術課題の克服が望まれる。今後、 本技術が実用化されれば社会還元が期待できる。

舌圧センサシートを用いた嚥下機能評価アルゴリズムの構築 新潟大学
堀一浩
新潟大学
定塚哲夫
舌は口蓋と接触することにより、咀嚼・嚥下・構音機能において重要な役割を果たしている。我々は舌と口蓋との接触圧をベッドサイドにおいても簡便かつ精密に測定できる舌圧センサシートシステムを開発した。このセンサシートは5点の感圧点を持ち非常に薄く、特別なアプライアンスを必要としないために生理的な条件下で定量的な測定が可能である。本研究開発課題では、本システムの有用性を確認するために、舌圧の測定結果が嚥下に関わるその他の器官の動きや食塊の動きなどとどのように関連しているかを検証した。その結果、舌圧発現は口腔期だけではなく咽頭期にも及んでおり、舌や舌骨の動きと密接な関係を持っていることが明らかとなった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、舌圧センサーシートシステムと他装置で得られた結果の相関を調査すると共に、最大筋力測定より舌の機能的筋力測定に適していることを明らかにした点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、舌圧に関する測定情報とその他の情報を統合した包括的な嚥下機能診断アルゴリズムの構築に関しては、更なる検討が必要と思われる。 今後、摂食に関わる医療診断補助、リハビリテーション分野での効果判定、食品工学分野での食品開発など幅広い分野で適用されることが期待される。
Campylobacter高速運動駆動ユニット(CHSDU)の解析、阻害剤の探索、および養鶏飼料への添加によるCampylobacter除菌 新潟大学
山本達男
新潟大学
定塚哲夫
申請者らはCampylobacter感染症の原因菌であるC. jejuni/C. coliが鞭毛に連結した新規高速運動駆動ユニット(CHSDU)をもつことを明らかにした。高速運動性は本菌の鶏・ヒトへの定着に必須である。本研究では、CHSDUの構造・運動メカニズムの解明と、運動阻害剤によるCampylobacterの新規除菌法の開発を目指した。本菌の運動メカニズムは菌体のらせん形状には依存しておらず、桿状でもCHSDU構造と高運動性を保持していること、Campylobacter属菌の他菌種でも同様のCHSDU様構造を持つことを見いだした。今後さらに、CHSDUの詳細な構造解析、運動阻害剤の探索・開発を継続し、民間企業との共同開発による新規除菌法の確立を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、CHSDU阻害薬がC. jejuni、C. coliの2菌種以外にも、全てのCampylobacter感染症の制御に貢献できる可能性を見出した点は評価できる。一方、本課題の目的であるCHSDUの構造解析と、運動阻害剤の探索に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、既知のCHSDUによる運動阻害剤により、菌の鶏への感染性や病原性発現が低下されることも動物実験で確認されることが望まれる。
TEシャント弁内蔵型人工喉頭の実用化開発 新潟大学
小浦方格
新潟大学
定塚哲夫
実使用を想定したサイズの人工喉頭モデルを用い、実験により音高、音域制御性を評価した結果、音高の中央値で約420〜470Hz、音高変化幅172〜258centが得られた。音高が当初目標の2倍程度であり必ずしも十分とは言い難いが、音高変化は通常の会話として必要最低限の要求を満たすと思われる。この時の呼気圧は0.6〜2.2kPa、音圧レベルは概ね65〜70dB(flat)であり、人工喉頭単体としては想定した性能が得られた。部品製作上発生した障害のため、予定の評価実験は完了していないが、今後数ヶ月間で当初予定していた評価実験を行う予定であり、音高についても一定の改善が可能と考えている。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。目標に対し、数値目標が一部達成されておらず、実使用時を想定した総合的評価について、課題期間内に着手できなかったようである。一方、技術移転につながる成果については、ある程度得られている。特許については出願済みのものもあり、課題期間内には新たな出願はなかったようである。未達成等のものも含め、今後必要な技術的課題は明らかになっているようであるが、今後の研究開発については、いくつかの項目が挙げられているものの、詳細な計画は記述されていない。実用化を前提とした大きさでの人工喉頭を実現するために検討を重ねているが、初の計画通りに進んだ点もあれば、苦労された点もあるようである。数値目標に対しては達成できなかった部分もあるようであるが、これらの困難は研究開発の途上では予想され、やむを得ない結果ではないかと考える。
絹タンパク質フィブロインスポンジによる脊髄損傷創傷被覆と神経再生促進能を持つ高機能素材の開発と応用 新潟大学
武内恒成
新潟大学
定塚哲夫
脊髄損傷治療において神経再生環境を整え、将来的に脊髄損傷において治療法として有効視されているiPS細胞などの移植再生治療の際の生体内被覆基盤材料の開発と基盤技術の構築を狙っている。そのために高機能フィブロインスポンジの生体内での治療に向けた応用の更なる確認と安全性検証をこの研究課題期間中に完了し、技術移転の可能性を示すことができた。さらに、核酸医薬へのスポンジの薬剤徐放効果と、さまざまな材料との組み合わせによる高機能化を検討した。また生体内への移植による急性期炎症や長期留置における炎症反応性の検討をおこない、優位性と差別化をさらに図った。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。目標も順調にクリアされ、特許の取得にも繋がっている。一方、技術移転の観点からは、どのような核酸医薬にターゲットを絞るか、戦略を明確にする必要があるが、今後の展開が期待出来る。中枢神経再生において内在性の再生阻害因子であるコンドロイチン硫酸の発現を、核酸医薬で抑えるための人工的制御系が可能であることを示すことに成功した。また、生体内へのフィブロインスポンジの埋め込みによる安全性が、非常に優れていることを示すことができている。今後の技術移転が期待される。
オプティカル・イメージング技術を応用した培養骨膜シート検体の非破壊的品質評価のための標準化技術 新潟大学
吉江弘正
新潟大学
定塚哲夫
培養骨膜シートに発現する細胞接着因子を生きた状態のまま蛍光色素標識したプローブを用いて光学的に可視化し、骨膜シートを品質評価する技術を開発する。われわれが開発した自家培養骨膜シートを用いた歯周再生治療法は、他の再生治療法と比較して高い歯槽骨再生効果を示し、かつ有害事象がないという点で非常に優れている。基礎研究から、骨膜シートの骨形成活性は、細胞重層化や細胞外基質の蓄積の程度と相関していることが明らかになってきた。移植治療前にこれらの指標を定量的かつ非破壊的に評価することができれば、性能の高い検体を選別することによって治療効果をいっそう向上させることができる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。提案された課題については全て着手され、目標値に達している。ほぼ完成に近い結果がえられており、次のステップとしては周辺技術の整備と充足を残すのみである。それらの課題についても具体的に、且つ明瞭に予定されている。研究開発で得られた成果をもとに、骨膜シートに関する技術の標準化に向けて計画されている。今後の展開が期待できる。
多血小板血漿と生体吸収性高分子基材の複合化による組織再生材料 新潟大学
川瀬知之
新潟大学
定塚哲夫
従来より用事調製を基本とする自家多血小板血漿(PRP)の臨床応用を拡大するために、生体吸収性素材との複合化によって組織再生活性を維持しつつ保存可能な形態にすることが目標である。PRPの組織再生活性は血小板に含まれる増殖因子とフィブリンである。ポリ乳酸は血小板や蛋白をある程度吸着する能力があり、創傷治癒活性があることを証明したが、これらの吸着・保持能力を向上させることで、新鮮PRPに匹敵する組織再生活性を発揮できるはずである。この課題を基材表面の微細構造に特徴を持たせることによって解決しようと考えた。組織再生治療や救急医療からすり傷のような軽度の傷の治療まで、この材料を活用できる場面が増えるものと期待される。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。計画を見直す必要に迫られ材料選択に時間を要したが、有力候補が見いだせたことは成果として評価できる。しかし、保存性の検証が言及されていない。保存性の検証など、計画が達成できなかった点は急ぎ検証をお願いしたい。今後の研究開発計画については、今回のコラーゲンスポンジが、多方面から総合的に見て最適なのかどうかを、さらに基礎的に掘り下げた検討する必要がある。具体的なポイントも挙げた説明が欲しいところである。また、学会発表、論文採択は積極的に行われているが、特許出願に至っていない。基礎研究データをより一層蓄積していただき、特許出願に繋げて頂きたい。その結果として、技術課題が一層明確化してくると思われる。応用先は明確であり、開発成功となった場合は社会還元に貢献できると思われる。薬事法の高い壁を越えるには、開発者の強い意志が重要なものとなるであろう。
長期培養に起因するヒトiPS細胞の遺伝子異常の抑制:無酵素継代溶液の開発 長岡技術科学大学
大沼清
ヒトiPS細胞は再生医療や創薬の分野で注目されている。一般的なヒトiPS細胞を培養では、タンパク質分解酵素を用いて増えた細胞を剥がして植え継ぐ(継代)が、これが細胞を傷つけて遺伝子異常を引き起こすという問題が指摘されている。この問題を解決するべく、酵素を使用しない継代溶液の開発を進めている。今回の研究開発では、1)ヒトES細胞でも使用できる事、2)最適な溶液組成、3)長期にわたり培養・増殖できる事を明らかにしたが、4)遺伝子異常が起きる可能性を排除できなかった。以上より、おおむね目標は達成できたが、曖昧さが残る結果となった。今後は、より系統立てた研究開発を行うことにより、安全かつ簡便なヒトiPS細胞の培養法を確立したい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ヒトES細胞でも使用できること、最適な溶液組成を最適化したこと、長期にわたり培養・増殖できることを明らかにした点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、目標とする遺伝子の安定性について染色体異常が認められたが、その原因が使用した無酵素継代溶液によるのかは今のところはっきりしないので、遺伝子の安定性についての解析が次の研究課題と思われる。今後、酵素を用いない継代培地は技術移転の可能性が高いので、応用展開されることで社会還元することが期待される。
皮膚組織の細血管内速度と血流量の3D画像計測によるメラノーマとホクロの識別判断 富山高等専門学校
八賀正司
富山高等専門学校
村上達夫
透過型多点同時計測レーザードップラ血流速度測定装置は一本のレーザー光をレンズと鏡を用いて二枚の平面に分け、その面を交差させることで生じる交差線と接触する全ての血管の個々の血流速度を測定する。交差線を走査し、皮膚癌を移植したマウスの耳にある細血管の血流速度の2D画像を得ることが出来た。本申請では、臨床への応用性を高める為に新規に改良した反射型の血流速度測定装置を用い、交差線を平面と奥行き方向に走査させ、皮膚癌を移植した皮膚組織の腫瘍血管の3D画像を計測し、画像を形態学的に評価し、黒子と皮膚癌の識別診断を行う為の生体の細血管内速度と血流量の3D画像を完全非侵襲でイメージングする装置の開発を行う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に反射型の血流速度測定装置において、腫瘍血管を計測し、黒子と皮膚癌の識別診断を行う為の生体の細血管内速度と血流量の3D画像をイメージングする技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、皮膚の細血管内速度を深さ方向に0.25mmの分解能で画像できることが示された。ただし、黒子と皮膚癌の鑑別診断の可能性を示唆しているが、必ずしも黒子と皮膚癌との形態比較は行われておらず、診断法の確立には至っていない。また画像分解能など技術的課題を評価する必要がある。今後、治療機器としての応用展開も端緒についており期待される。
高齢者の寝たきりを予防するポータブル型リハビリ機器の開発 富山大学
戸田英樹
富山大学
梶護
高齢者の骨折などの事故により手術を行った後患者の三割ほどは「拘縮」と呼ばれる関節可動域が狭まりベッドの上からほとんど動けない状況に至る。拘縮を解消するには、原則理学療法士などによる関節動作のリハビリが必要になるが、人件費的にこの対処は難しい課題があった。ここでは、足首関節のリハビリ動作を理学療法士が行う際に、患者のかかとを掴んで前腕部で足裏を押し込むという動作を、(1)かかとを地面に付けない機構、(2)くるぶしを軸にして回転する機構、(3)足首にかかる反力を臀部で吸収する機構、を用いてベルト等で固定し、かかとに過度な負荷がかかるのを防ぐ足首リハビリシステムを開発することに成功した。本装置を用いる事で拘縮に悩む患者と家族そして病院の負担を減らすことを目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、足首関節の伸展・屈曲と外転・内転の動作をモータ2つを用いて同時に行うリハビリシステムの開発が達成されている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、患者の痛みを筋電信号によって検出しながらストレッチ動作を行う検討が必要である。骨折手術を受けた高齢患者の3割程が陥るという関節拘縮の予防には、理学療法士により施術や大型リハビリ器具の使用が一般的であるが十分な対応が困難である。本課題は足首関節の伸展・屈曲、外転・内転を同時に2つのモータで行うポータブル型関節リハビリ装置の開発を行ったったものであり、この種の装置に対する社会的なニーズは高い。今後は、患者側からの使用希望の声もあり、研究成果が応用展開されれば社会還元に導かれることが期待される。
光環境操作による複合的な精神神経疾患治療装置 金沢医科大学
加藤伸郎
金沢医科大学
高田律子
アルツハイマー病とうつ病のモデルマウスに対して、従前と異なるパターンの光刺激を与え、より大きな効果をもたらすような刺激パラメーターを見出すことを目標とした。アルツハイマー病モデルマウスに対して、これまで用いたものとは異なる2種類のパラメーターを試みた。その結果、若干の効果改善はあったが、その差は有意とならなかった。一方、光刺激がうつ病とアルツハイマー病の合併モデルに及ぼす改善効果の検討も進めた。アルツハイマー病モデルマウスをベースにしてうつ状態を導入することができた。今後、この合併モデルを対象に種々の光刺激を与えて効果を検討していきたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。もともとのアイデア、着想および基礎データ自体は優れていて、発展性がある。しかし、本研究での当初の目標が達成されていない。少なくとも、おこなった条件での結果が予想通りではなく、そこで研究がとまっている。申請書では、特定の個体光刺激でHormer1aの発現上昇と認知学習が改善することが既知であると述べていて、本研究では、光度・周波数・波長・照射時間などを検討するという計画であった筈である。少なくとも研究には取り組んだものの、2つの異なる周波数を試しただけに終わっている。そもそも、光刺激で精神疾患を治療する方策は広く知られていて、このような照射条件を絞ることへの意義付が困難であった。但し、極めて興味深い着想点であり、充分な取り組みをしているので、研究開発自体は有効であったと考える。
分光計測と赤外線画像解析による漢方効能評価システムの開発 金沢大学
小川恵子
(1)目標
漢方薬による?血改善効果を簡便にモニターできるシステムを構築し、分光計測と赤外線撮影から改善度を評価するための基準を確立することを目指す。
(2)達成度と今後の展開
金沢大学附属病院内でのデータ計測が、同病院の倫理委員会により許可された。そのため、患者への十分な説明と同意の下、分光測色計と赤外線血流計を用いて測定を開始した。これらのデータを基に、分光測定データ、赤外線画像解析データと臨床所見との相関関係および、各々の治療経過における変化を解析した。結果として、測定データのばらつきが少なかったため、信頼性のあるデータを取得できるシステムを構築できたと評価できる。しかし、対象数がまだ少ないため、有意な結果は導けなかった。今後も研究を継続することにより、分光計測と赤外線撮影から?血の改善度を評価するための基準を確定することを目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に分光計測と赤外線撮影を用いて皮膚・四肢末端の画像データを取得し、その解析によって末梢の血流状態、酸素飽和度を解析し、お血(おけつ:末梢の循環障害)の客観的改善評価を行う技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、測定システムの構築は完了したが、本研究期間内では測定対象が予定より少なく、漢方効果の改善度を評価するための基準の確定には至らなかった。今後、漢方薬の治療効果を簡便にモニターできるシステムは企業への技術移転が要望され、漢方医学の発展につながることが期待される。
共焦点顕微鏡を用いた脳腫瘍判別システムの開発 金沢大学
米山猛
金沢大学
小島敏男
共焦点顕微鏡を用いて、悪性脳腫瘍の神経膠芽腫(GBM)を0.1mm四方サイズで判別する方法を開発した。5−ALAを用いた光線力学診断法により、共焦点顕微鏡で腫瘍領域を観察すると、0.1mm四方の領域でも、発光強度の違いとして観察され、発光強度の分布や平均値を正常部の値と比べることにより、腫瘍の判別ができることを明らかにした。さらに直径7.5mmのプローブタイプの対物レンズによっても発光強度の分布や平均値の違いを求めることができ、プローブを挿入して腫瘍を直接観察・判別する可能性を拓いた。さらに広領域での画像取得と判別を行うため、XYステージと連続撮影システムを構築中であり、今後、微細領域での判別に基づく腫瘍領域の特定や境界判別を実現するための研究を進める。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、摘出組織での検討であり、実際の脳内腫瘍にどのように応用できるのか不明な点もあるが、同一平面だけでなくある程度の深さまで三次元的に蛍光分布を検出できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、臨床応用で有効活用するには、とりわけ悪性グリオーマのような浸潤性腫瘍における浸潤域の評価法の確立であり、共焦点顕微鏡の活用により、浸潤組織に分布した蛍光強度をリアルタイムに定量化できるか否かが重要であると思われる。また、高精度のレンズの開発が必要であることが明らかとなったが、同時に蛍光の定量性についても検討も必要と思われる。今後、定量化が可能になれば社会還元が期待される。
日本人男性不妊症診断ツール(Y染色体微小欠失)の開発 金沢大学
高栄哲
金沢大学
長江英夫
挙児を希望するカップルの10%は不妊症であり、その半数は男性に起因する。Y染色体の長腕には精子形成領域(AZF)がある。AZF微小欠失診断をヒトゲノム人種多型性を考慮し、日本人男性に特化した簡易診断ツールの開発を目的とする。特異的位置マーカプローブはヒトゲノムデータベースを下敷きにしたSTSを利用するものの、我々の研究成果を基礎にした人種特異多型を加味した日本人男性不妊症に特化したプローブを実用化し普及を図る。実用キットはマルチプレックスSTSプローブに特異的なDNAを増幅し、さらに特異プローブを固相化ウェル化し、核酸ハイブリダイゼーション法によって検出する。迅速かつ簡易なキットを作成する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、Y染色体AZF領域の欠失のパターンを網羅できる資材が開発できた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、人種特異性、必要なDNA量の少量化、病院の検査室レベルでも実行可能な実験手順と用いる機器の簡便化、量産体制などさらなるステップが必要と思われる。新規特許も出願中であることから、技術移転につながる可能性が高い。今後、男性不妊の検査のための医学応用という意味で、社会還元につながることが期待される。
感圧繊維による装着型デバイスを用いた活動評価に関する研究 石川工業高等専門学校
藤岡潤
石川工業高等専門学校
吉田博幸
近年の高齢化社会において、健康をモニタリングし、不測の事態を警報するモニタリングシステムが提唱されている。本研究は感圧繊維製のシャツによるこうしたモニタリングシステムの開発を行う。同シャツは、通常の服と同じ感覚で着ることで、着衣者の動作や活動量の評価が可能である。さらに新たに、同シャツと寝具との間の静電容量を測ることにより、睡眠時の呼吸計測も可能となると考えられる。これにより日中は活動量評価を、就寝後は呼吸状態をモニタリングすることで、対象者の24時間を負担無く、かつプライバシーの過度の侵害なく見守ることが可能であると考える。本システムにより日中の突発的な事故や睡眠時の無呼吸症候群などの防止が期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ウェアによる昼間の動作認識とシーツによる夜間の呼吸計測を行う本モニタリングシステムにより、起床―行動―就寝―起床までをサイクルとした24時間の生活モニタリングが可能とした点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、アプリケーションの製作と共に、より高い精度で安定して計測可能な静電容量タイプの計測回路、及び呼吸信号抽出フィルタリングの調整を行い、実用化されることが望まれる。今後、研究テーマとして社会還元が求められるものであり、精力的に研究されることを期待する。
細胞凍結保護作用を持った機能性足場材料の創製 北陸先端科学技術大学院大学
松村和明
北陸先端科学技術大学院大学
山本外茂男
細胞凍結保護作用のある両性電解質高分子化合物を用いて細胞凍結保護活性のある足場材料を創成することを目標とした。架橋剤および架橋条件を検討することにより両性電解質の三次元構造体を作成し、その中に細胞を封入して凍結保存可能な機能性ハイドロゲル材料の合成に成功した。当初の目的であった、カルボキシル化ポリリジンの三次元材料に加えて新規合成した両性電解質によるin situハイドロゲル化に成功した。今後は細胞親和性を向上させることにより再生医療用足場材料としての応用に繋がると期待できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、計画したカルボキシポリリジン、アルデヒドデキストランなどは細胞のゲル内に封入する段階で問題点があったが、 両性電解質デキストランでは良好な結果を得ている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、本材料が細胞レベルから組織レベルの保存に適用可能かどうか検討を行い、細胞親和性を付与するなどして実用化が望まれる。本システムは細胞懸濁液をそのまま毒性無くゲル化させ、凍結保存できる利点(80%を越える細胞の生存率)があり、今後の再生医療の足場材料への適用などが期待される。
放射線障害防護剤としてのニトロプルシドナトリウムの作用機構の解明 福井大学
松本英樹
福井大学
奥野信男
平成21年度シーズ発掘試験研究において、狭心症治療薬ニトロプルシドナトリウム(SNP)に、造血系および免疫系の回復促進による放射線障害の防護および治癒作用があり、放射線障害を起こしたマウスの生存率を上昇させる効能があることを明らかにした。本提案では、SNPのX線による放射線障害に対する防護および治癒作用の詳細な解析を行い、被ばく時の緊急救急処置薬として実用化へ向けて、SNPの放射線障害防護能および治癒促進能の作用機構を明らかにすることを目的として正常マウスを用いて研究開発を実施し、以下の結果を得た。
1. 6.5 GyのX線被ばくにより末梢血の白血球および血小板は枯渇していたが、被ばく直後からのSNP(最終体内濃度30 μM)の投与により白血球数および血小板数の顕著な回復が認められた。
2. 6.5 GyのX線被ばくによりTUNEL陽性細胞(アポトーシス細胞)が認められたが、被ばく直後からのSNP(最終体内濃度30 μM)の投与により顕著なアポトーシス抑制が認められた。
以上の結果から、X線被ばく直後からSNPを投与することにより、造血機能および免疫機能の破綻、および特定細胞の脱落が抑制され、造血機能、免疫機能および組織再生能の回復が促進されることにより生存率が回復することが示唆された。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、SNPによる血球数の回復が示されており、SNPの防御効果については期待通りの成果は得られている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、NO合成酵素欠損マウスの実験でSNPの放射線防御効果発現の機構解明を行い、本治療薬のX線以外の放射線での効果を検証することが望まれる。今後は、放射線障害に対する治療としての可能性があり、実用化されることが期待される。
インプラント型補聴器の開発 福井大学
森幹男
福井大学
宮川才治
本課題では、インプラント型補聴器開発のための骨伝導補聴器口腔内装着に関する検討を行った。まず、装着する歯による周波数特性の違いを34名の被験者に対して調べ明らかにした。次に、簡単な補聴器を試作し、周波数特性(利得)補正による了解性改善を試みた。今回の実験では了解性改善効果があまり認められなかったので、今後さらなる実験・検討を行う予定である。また、当初の予定にはなかったが、歯を介した骨導音が時間分解能に劣ることが主観評価実験によって明らになったことから、この点に関しても今後検討したい。なお、骨導音による補聴器コントロールの基本動作については実用化の見通しが得られた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。本研究開発課題は、音の骨伝導を利用した歯のインプラント型補聴器の開発を目指したものである。そのために骨伝導振動子の装着位置による周波数特性の測定、補聴器回路の検討、口笛音によるコントロールが検討された。当初計画の練りこみの甘さも散見され(周波数特性の測定時にコンプレッションゲージを用いた場合に奥歯で測定できないことなど)、全体的に当初計画から必ずしも期待される成果が得られたとはいいがたい。しかしながら各項目の検討時に別の課題が浮き彫りにされており、今後これらを克服することにより、研究開発が一気に進展されることが期待される。ただ、現状では外部に訴求するほどのインパクトに乏しい。研究成果そのものについては十分な結果が出たとはいいがたいが、様々な分野への技術の横展開が期待できることから、十分に産学共同の余地はある。本研究開発が達成できた時、および、他の分野へ展開された時のインパクトは大きく、広く社会還元されることが見込まれる。また、研究成果の外部発表はなされているものの、特許出願がなされていないことから、より一層の進展を期待したい。特に、成果が得られた中で新たな課題の顕在化を行っていることは、特許発明の機会でもあり出願の検討が望まれる。
クラゲコラーゲンを用いた、日本初のコラーゲン製人工硬膜の開発 福井大学
小寺俊昭
福井大学
青山文夫
目標:1)クラゲ由来コラーゲン・シートの作成、2)培養髄膜細胞によるin vitro実験系の確立、3)各種コラーゲン上での髄膜細胞の生着性、増殖能の検討。
達成度:1)代用硬膜として理想的なシートは完成していない。2)培養液の調整により、髄膜細胞は十分発育・増殖した。3)コラーゲン・シート上ではコントロール群よりも、髄膜細胞増殖能が上昇していた。
今後の展開:1)コラーゲン・シートの性能向上試験と試作、2)試作したコラーゲン・シート上での髄膜細胞培養、3)試作コラーゲン・シートを用いた動物実験。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、クラゲ由来コラーゲンシート作成において、臨床使用可能な強度を有するシートとして成功していないが、クラゲコラーゲン液の処理法について幾つかの改良案が提示されており、克服すべき課題を明確にしている点は評価できる。一方、臨床使用可能なコラーゲンシートの作成において、細胞の生着性、コラーゲン基質の変化、安全性などの臨床応用に向けての重要な技術的検討やデ−タの積み上げなどが必要と思われる。今後、社会還元の観点からの本研究の最大の長所は自家硬膜の再生が可能になることであるので、研究成果として実証することが望まれる。
音響信号による透析内シャント狭窄検出システム 山梨大学
鈴木裕
山梨大学
還田隆
慢性腎不全患者は人工血液透析を行うために透析内シャントを作成する。本研究ではシャント付近の血管狭窄をシャントから発生する血流音(シャント音)によって検出する非侵襲システムの開発を目指す。本助成により専門的な知識を必要としなくともシャント音を効率よく採取するセンサを開発し、スタンドアローンシステムのプロトタイプを構築した。また、信号処理・診断アルゴリズムも改良し、狭窄診断の精度を向上させることができた。今後、更に被験者による評価を遂行し、実用化を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、狭窄部に採音センサを配置し、正常、狭窄の診断が可能であること、SOMにより個人差や狭窄の形状などに対応することができていること、狭窄状況のわかりやすい表示方法の改善にも前進が見られる点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、100%の検出率を実現するために、さらに高性能の音響センサの開発、患者自身でも簡単に操作できるインタフェース、わかりやすい表示方法を次の課題としており、さらなる検討が望まれる。今後、透析患者数も増えている状況であり、血圧などの計測機器と同様携帯用として社会への還元が期待される。
複合歯科応用の為の低コスト・ポータブル・短パルスCO2レーザーの改善 山梨大学
宇野和行
山梨大学
還田隆
本研究開発では、1台の装置で全ての歯科治療(予防歯科、硬組織切削、軟組織切開、止血)を可能とする為のシンプルな短パルスCO2レーザーの開発を行う。ダイレクトドライブ回路による軸方向放電励起短パルスCO2レーザーの高出力化(出力エネルギー80 mJ)を目標とする。このために、レーザー管と励起回路の最適化を行う。レーザーパルスの制御領域も調査する。
本開発により、医療・産業応用に適した低コスト・ポータブル・メンテナンスフリーの短パルスCO2レーザーの開発が期待できる。現在、多くのCO2レーザーが市販されているが、このようなレーザーは開発されていないため、新たなツールとして広く普及すると考えられる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、歯牙切削等への応用を目的とした小型安価デザインメンテナンスフリ−の短パルスCO2レーザ-の実用化の為、必要な単一パルス出力が達成されている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、光源開発から光源応用へと移行していく過程で、ニーズに基づいた技術課題を明らかにしていく必要があると思われる。今後、ナノ秒クラスの小型COレーザーの開発はニッチであり、産業的に有用性が示されれば、ものづくり中小企業へ与えるインパクトは大きい。歯科応用に限定せずに幅広く産業応用を視野に入れて、産業界のニーズに沿った光源開発を進めていくことが望まれる。
超音波動画像解析による腸の消化活動活性度モニタリング法の開発 山梨大学
阪田治
山梨大学
還田隆
本研究開発は、小腸の蠕動運動の活性度を数値化することによって医療機関における入院患者の栄養摂取支援や食品業界における食品プロダクト開発支援を行う技術の開発を目的として行われた。先行研究として腸蠕動音の長時間記録解析に基づいて小腸蠕動運動活性度の長期変動を定量評価する技術は開発されていたが、それに対して任意のタイミングの瞬間的な評価を行う技術は研究されていなかった。本研究開発では、医療用の超音波診断装置で下腹部全面から撮影した短時間記録のB-mode動画像について、そこに描出された消化物の移動を数値化することで、本来B-mode画像として形状を描出することが困難である小腸の蠕動運動の活性度を間接的に定量評価する技術を開発した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、医療用の超音波診断装置で下腹部全面から撮影した短時間記録のB−mode動画像について、そこに描出された消化物の移動を数値化することで、本来B−mode画像として形状を描出することが困難である小腸の蠕動運動の活性度を間接的に定量評価する技術を開発した点は評価できる。一方、連続したスナップショット画像における同一物画像の位置同定から所定の距離を演算する点は、企業関心度があると推察するが、その精度についてプローブの当て方(角度)等で補正が必要となり、種々不安定要因が含まれてしまっているので、この点の解消にめどをつければ企業への展開・営業が可能になると思われる。今後、応用展開されれば社会還元が期待される。
低帯域回線における医療画像の動的品質変化に対応した可変型映像圧縮技術の開発 山梨大学 
安藤英俊
山梨大学
還田隆
インターネット回線を利用した遠隔医療/遠隔講義/テレビ会議等が今後本格的に普及することが期待される。高速回線網が利用できない災害下やアジアやアフリカ等の回線の未整備な地域においては携帯回線が唯一の通信手段である場合が多く、このような低帯域な回線に対応した高品位な映像配信技術の開発が急務となっている。本研究では映像品質を重要度に応じて部分的に動的に変化させる独自の圧縮技術を用いながら、GPUという安価で普及した高速演算装置を用いることで、装置が高価となり普及の妨げとなっている問題を解決した。試作技術は優れた性能を示しており、今後は遠隔医療や救急医療での実証実験を通じて技術移転の可能性を検証する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に画像全体を劣化させるのでなく映像の中で重要な部分の品質を高くしそれ以外の領域は品質を下げるという可変型の映像圧縮技術に関しては高く評価できる。一方、技術移転の観点からは、まずは医療現場以外での実用化が行われることが望まれる。今後は、権利化をすすめ、企業と共同で研究されることが期待される。
柔軟接触型荷重センサーを用いた医療・福祉用ベッドの開発 信州大学
中山昇
信州大学
中澤達夫
軟質樹脂を用いた多層構造からなり、人と接触しても安全であり、物体の位置と荷重方向(垂直・水平)を同時に測定できる新しいセンサを開発してきた。本センサを用いた医療・福祉用ベッドの実用化を考えた場合に、センサの防水化、センサを複数利用した際の測定、荷重分解能の精度等のデータの取得ができておらず、研究開発が必要である。また、他のセンサ機能(温度、湿度等)の追加についても検討を行う必要がある。本研究開発は柔軟で且つ3軸方向の荷重と変位を容易に求められる特徴を持つ柔軟接触型荷重センサを利用いた、医療・介護用ベッドの可能性を見出すことを最終目標とした。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも申請者らが開発した柔軟接触型荷重センサーを多数使用して、1m四方のシートを試作した技術に関しては評価できる。一方、多数センサーの集積に対する統合プログラムの内容および動作解析による改善に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、技術移転の焦点化と併せて改善した上で、安全な医療用ベッドへの技術移転を通して超高齢化社会における褥瘡予防に貢献することが望まれる。
血中免疫細胞のプロテオミクス解析による癌の早期診断マーカーの特定 信州大学
薄井雄企
信州大学
百瀬傳一
癌細胞を抑制している時の免疫細胞と、癌細胞がその抑制を超えて増殖を開始する時の免疫細胞をプロテオミクス解析で比較し、体内の「癌発生バイオマーカータンパク」を特定、定量化することを目的として本研究を行った。当初の計画では試薬投与後7週の時点でマクロサイズの腫瘍形成が起こり、それに伴ったNK細胞の変化を捉える予定であったが、本研究においては試薬投与後7週ではマクロサイズの腫瘍形成が起こらなかったため、細胞の変化を捉えることはできなかった。今後、細胞の評価を短期評価から中もしくは長期評価に転換させ、リンパ球の解析をNK細胞の解析に切り替えることで腫瘍形成に伴った細胞の変化を捉え、当初の目的を達成させることができる可能性はある。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。本研究では、癌細胞を抑制している時の免疫細胞と癌細胞がその抑制を超えて増殖を開始する時の免疫細胞をプロテオミクス解析で比較し、体内の「癌発生バイオマーカータンパク」を特定・定量化することを目的としていた。しかし、 モデルマウス(rasH2発癌モデルマウス)において充分な腫瘍形成が起こらなかったこともあり、 NK細胞が充分に確保されない結果となり、リンパ球へと対象細胞を変更した。しかし、 結局リンパ球のプロテオミクス解析においても有意な変化を見出せていない。今後、対象とする実験動物などから研究計画から見直することが望まれる。研究課題そのものは興味深く、研究成果が得られた場合は、医療分野において充分に社会還元が期待できる。
個人差に対応したカーボンナノチューブの安全性評価システムの開発 信州大学
齋藤直人
信州大学
百瀬傳一
我々はiPS細胞応用技術と臨床プロテオミクスデータベースを利用した「個の安全性評価システム」の構築を最終目標として、まずは正常ヒト由来細胞を用いたMWCNTに対するin vitroでの反応性の個体間差をプロテオミクス技術と既存の方法で検出できるかを検討した。その結果、既存の方法でもMWCNTに対する個人差は検出できたが、プロテオミクスによる方法が最も低濃度の段階で個人差を検出できた。今後、個人差由来の反応の時系列データを採取し、その変化パターンと臨床プロテオミクスデータとのマッチングを行って安全性予測モデルを示し、最終的にはiPS細胞を検討暴露臓器細胞に分化誘導してあらゆる化合物に対する個の安全性評価システムを構築したい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、個人差が現れる低濃度の暴露において細胞毒性を検出する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、化合物に対するタンパク質レベルでの個体間差検出とその指標タンパク質などでの実用化が望まれる。今後は、安全性評価システムが構築されることが期待される。
眼瞼上から眼球運動を測定できる装置の開発 信州大学
後藤哲哉
信州大学
百瀬傳一
脳神経外科手術中に眼球運動神経をモニタリングする際、従来の一般的には、外眼筋の筋電位を記録して評価する。しかしこの方法は術式によっては利用不可能である。そこで、既存技術を補完する目的で、外眼筋の筋電位に拠らない新たな手段として、磁力を利用して誘発された眼球運動を記録し評価する方法について開発と検討を行った。結果、本研究を通じて開発されたコンタクトレンズと同等の形状をもつ薄型で小型の磁石とホール素子を用いた眼球運動の計測装置は、上記目的にかなう性能を持つことが示され、臨床使用に値する有益性を持つ可能性が示唆された。高頻度電気刺激がラット脳に及ぼす組織障害について、微小形態学的な検討を行った。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。瞬き検出のための眼球に直接取り付ける磁石とホール素子の構成例はこれまでになく、閉眼時の眼球運動をモニターする技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、医療現場における眼球運動計測装置としての実用化が望まれる。今後は、磁石の厚さや、その他の仕様についても詳細な検討をし、具体的な設計を行い、臨床試験に進むことが期待される。
中心静脈穿刺用針の開発 信州大学
富田威
信州大学
百瀬傳一
中心静脈穿刺に伴う合併症の軽減と簡便性向上のために新しい針先形状を有する穿刺針の開発を目標として、様々な針先形状を有する試作品をミスズ工業と提携し開発してきた。適正な針先形状の検討にはエックス線透視像を用いて、肉片を利用し体内での試験穿刺針と本穿刺針との追従性や目標位置到達までの確実性を確認した。その中で追従性に確実性に優れた針先形状を2-3種類特定した。針先の耐久性に関しても肉片を用いて問題ないことを検証した。また、使用するガイドワイヤーの種類(太さ、材質)に適応した内径を有する針を作成し、追従性、耐久性に問題ないことを確認した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。しかし、申請時の計画には動物実験によって開発した技術の静脈穿刺における有用性を検証することが重要な項目として挙げられているが、報告書には、その項目が完全に脱落している。肉片を用いた実験で、針先のガイドができるという程度では、静脈穿刺に有用かどうかの判断はできず、現時点では企業化を判断する段階ではない。今後、動物実験において、技術の有用性を検証するためには、動物で静脈穿刺実験を行うべきである。
カリン果実抽出物を用いた胃粘膜保護ゼリーの開発 信州大学
濱渦康範
信州大学
福澤稔
カリン果実に含まれるエキス分にはラットにおけるエタノール誘発性胃粘膜傷害に対する予防効果がみとめられている。本研究ではカリン果実からの熱水抽出エキスを砂糖と煮詰めてゲル化させ、ゼリー状食品とし、強い胃粘膜保護作用を有する加工品として仕上げることを目的とした。ゼリーの胃粘膜傷害予防作用は、果実を長時間煮出したエキスを使用した方が、短時間煮出したものを用いたものよりも強かった。作用因子はプロシアニジンおよび可溶性多糖類であることが示され、強い胃粘膜保護作用はこれら両成分の協調的な作用によることが示唆された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にカリン果実からの熱水抽出エキスを使用してゼリー状食品として完成させ、胃粘膜傷害予防効果のレベルを検証し、かつ、その有効成分を特定する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、胃粘膜障害予防効果のあるゼリー製品を製造する加工条件と抗胃潰瘍活性に関わる機能性因子の特定について、ほぼ目標が達成されている。今後の研究開発計画について具体的に検討されているが、技術移転については、抗胃潰瘍メカニズムの解明が必要であるが、商品化を検討する企業と分担・並行して進めることが期待される。
高自己骨形成性ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂(PEEK)製器具の開発研究 信州大学
伊東清志
信州大学
木下幸彦
本研究は、チタン製器具に替り得る高自己骨形成性ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂(PEEK)製器具の開発を目標とする。本研究では、PEEK製器具を、ネジ状に成型し、表面に数種類の骨伝導性物質を溶射して、自己骨形成性および新生(再生)した骨と周囲の自己骨との結合強度との相関性を検証するものである。骨形成には、数ヶ月単位での経過観察が必要である。中間結果より必要条件が考察された。これらの検証試験により、高自己骨形成性PEEK製器具の最適条件を確立し、製品化に繋げる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもPEEK製器具の弱点を克服する器具を開発した技術に関しては評価できる。一方、組織科学的実験の結果を踏まえて結論を導き、その結論において自己骨形成効果の確認に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、PEEK製素材の弱点を克服する新たな製品の開発を通して、臨床における骨固定時の骨ダメージの低減へ貢献することが望まれる。
髄液漏出防止縫合糸の開発研究 信州大学
伊東清志
信州大学
木下幸彦
本研究実施期間の目標は、ポリプロピレン製縫合糸の試作と動物の硬膜を用いた牽引による硬膜の裂け試験である。縫合糸の試作については、単層及び2層のポリプロピレン製縫合糸について、複数の1:1〜1:1.2のテーパーを付した縫合糸の試作が完了している。また、硬膜の裂け試験について(予備試験を含む)試験を行う予定であったが、試作縫合糸での針付き縫合針の作成が間に合わず実施できなかった。次の実施期間で、試作した各種の縫合糸について、針付き縫合針を作成し、JIS L1092 A法による髄液の漏れ試験および動物の硬膜を用いた牽引による硬膜の裂け試験(本試験)を行って、最適な縫合糸の構造及び径を確認、検証する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。課題申請書の内容とは異なる、標準化されていない研究責任者独自の評価方法による結果ではあるが、概ね研究責任者が目指す髄液の漏出を防げる縫合糸のポリシーを検証できた結果が得られたものと理解できた。当初の目標は達成され、縫合糸の構造のコンセプトは検証できた。従って技術移転につながる研究成果が得られたと解釈できる。ただ、評価方法については、独自のものではなく標準化された方法を用いて再評価が望まれる。また、産学共同研究につながるレベルにあると思うが、注射針の会社が難色を示した理由の再考や、信州メディカル産業振興会へ打診してはどうか。技術面では成熟した段階に来ていることから、市場における需要の再評価、あるいはコスト面で検討を加えることで、技術移転は可能と考えられる。脳外科手術の増加に伴い社会への還元はおのずと高まっていくと考えられる。
真空紫外線表面改質によるMPCポリマーの化学コーティング法の実用性評価 岐阜大学
神原信志
岐阜大学
安井秀夫
医療デバイス(シリコン)表面への抗血栓性MPCポリマーのコーティングにおいて、生体内安全性と安定性をもった低コストの技術が切望されている。本研究では、特徴あるガス雰囲気下でシリコン表面に波長172nmの真空紫外線を照射することでカルボキシル基を修飾し、MPCポリマーを均一に化学コーティングするドライプロセスを開発した。さらに、シリコン表面に微細な孔をつくればMPCポリマーの溶出・剥離を大幅に抑制できることを見いだした。
本コーティング法は、生体内安全性が確認済みの部材だけを用いるため、その安全性に問題はない。一方、生体内安定性(溶出、剥離)の抑制法も開発できたことから、本技術は技術移転の可能性が高いものと評価できる。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特にシリル化はシランカップリング剤の接着成分利用も期待でき、その成果は顕著である。一方、技術移転の観点からは、MPCポリマーの高強度化と接着改善のできる技術であり、実用化が期待される。
エキソゾームを介したRNA分子キャリアーの確立 岐阜大学
赤尾幸博
岐阜大学
小田博久
RNA干渉を利用したRNA医薬を実現させるにはヌクレアーゼによる不活化から回避できる合併症のない薬物搬送システム(DDS)の確立が必須であり、近年リポソームやナノ分子ポリマーにRNAを包埋して試行されている。当研究では、目的のRNA分子をマクロファージが分泌する膜小胞をキャリアーとし、RNA分子搬送システムの構築を目指した。その結果、分泌膜小胞特異的に発現するマーカーCD81との抗原抗体反応により分泌膜小胞単離システムの構築を確立し、またその過程においてトランスフェクション法の最適化に成功した。この系を用いた担癌マウスにおける抗腫瘍効果については有意ではなかったが傾向が認められた。今後さらにこのシステムを用いたDDSの可能性を追求したい。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、分泌膜小胞特異的に発現するマーカーCD81との抗原抗体反応により分泌膜小胞単離システムの構築を確立し、またその過程においてトランスフェクション法の最適化した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、この系を用いた担癌マウスにおける抗腫瘍効果について有意な結果が得られていないので、他モデル動物の検討の方が良い結果がでるかの検討も含め、このシステムを用いたDDSの可能性の検証が必要である。今後、研究成果が応用展開された際に、社会還元に導かれることが期待される。
がん細胞分泌膜小胞を用いた新規がんバイオマーカーの探索と免疫抑制作用の検討 岐阜大学
赤尾幸博
岐阜大学
小田博久
近年、miRNA, mRNAなど遺伝子産物ががん細胞から細胞膜によってできた分泌膜小胞に包まれ放出されていることが明らかになった。さらに分泌膜小胞は他の細胞に伝播し、機能することも報告された(Trends in Cell Biology 2008,19,43-51)。我々はがん細胞がmiRNA-145、-34aなどがん抑制に働く遺伝子を細胞外に分泌膜小胞を介して放出し、自己を保護していることを示した。ただ、分泌膜小胞の内容物が細胞に伝播することは証明できたが免疫細胞への影響については明らかにすることはできなかった。また、大腸癌の新規なバイオマーカーをいくつか発見した。今後、さらに臨床検体を用いて検証を進めていく。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもがん細胞が分泌する膜小胞に包埋されるmiRNAを新規なバイオマーカー、さらに免疫系に及ぼす影響を検証する技術に関しては評価できる。一方、当初の目標の達成度は半分程度である。結果は傾向を示しているが、明確な成果として言い切れるものではなく可能性を示したにすぎない。膜小胞の分泌によるmiRNAが本当にがん細胞を保護しているのか結論するためにはin vitro試験それもひとつの細胞だけの試験結果で結論付けるのは困難であり、今後の技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
次世代がん治療への応用を指向したホウ素導入型ヌクレオチドライブラリーの開発 岐阜大学
岡夏央
岐阜大学
馬場大輔
本研究は、ホウ素中性子捕捉療法による抗がん治療への応用を指向したホウ素導入型ヌクレオチドの化合物ライブラリーの構築を目指したものである。化合物ライブラリーの構築に必要な多種類のホウ素導入型ヌクレオチドを効率良く合成するため、本研究では、我々が開発したボラノホスホン酸型ヌクレオチドのP-H基の修飾法を種々検討し、この単一の出発物質からの多数の化合物の合成を試みた。検討の結果、クロスカップリング反応による炭素官能基の導入法や、化合物をがん細胞に効率良く運ぶ役割を果たすことが期待されるコレステロールやアミノ酸の導入法の開発に成功し、化合物ライブラリーの構築に必要な多種多様なホウ素導入型ヌクレオチドの合成法を確立した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、硫黄官能基の導入、コレステロールやアミノ酸の導入法の開発に成功した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、がん細胞への送達性が増すかの検討が必要であり、リン原子の不斉化という新たな課題もあるが、技術移転につながる可能性は高まったと考える。今後、基礎研究からの発展における課題を克服することが期待される。
新規病態関連タンパクGPNMBに着目したALS早期診断薬開発並びに発症機序解明 岐阜薬科大学
原英彰
(財)名古屋産業科学研究所
羽田野泰彦
本研究は、運動ニューロン疾患の一つである筋萎縮性側索硬化症 (ALS) に対する、新規病態関連因子glycoprotein nonmetastatic melanoma protein B (GPNMB) の役割を詳細に検討し、ALS病態の解明および新規治療薬・診断薬の開発へと繋げていくことを目的として実施した。本研究により、GPNMBの運動神経細胞保護作用が認められ、さらにヒト血清を用いた試験ではバイオマーカーとしての可能性が示唆された。本研究は、GPNMBがALS病態への関与があることを示した世界初の知見である。今後は、GPNMBの運動神経細胞死のメカニズムを解明し、ALSの治療薬およびバイオマーカーの創出へと発展させていきたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、GPNMGの運動神経細胞死のメカニズムを解明している点と、企業との連携により、GPNMB測定ELISAキットの開発を進めている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、臨床データについて、実用化に向けたさらなる検討が必要である。今後、本技術は低侵襲で比較的簡便なALSの診断方法に繋がる可能性があり、完成すれば社会的意義も大きいことが期待される。
簡便かつ高感度なDNA損傷体定量分析法の確立 岐阜薬科大学
村上博哉
科学技術振興機構
菅野幸一
DNA付加体は、107〜109個の未損傷体中に数個程度しか存在しないため、未損傷体の除去とDNA付加体の選択的捕捉を可能にする前処理法の開発が求められています。この需要を達成するために、私はこれまでにDNA付加体用の前処理チップの開発を行ってきました。本研究課題では、前処理チップの汎用性の上昇と多検体分析への適用を可能にする、チップの作製と処理条件などの最適化を行いました。その結果、チップの充填剤と処理手法を改良することにより、高汎用性と簡便性を合わせ持つ処理法の確立を達成しました。今後は実試料へ適用し、その問題点などを改良し、高い汎用性を有するDNA付加体分析系の確立を目指す予定です。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、液クロで用いるチップとしては、十分に感度・精度が高いものが得られた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、ESI用のニードル化を急ぐべきである。ニードル材質の改良を含めた相当量の検討が必要と思われ、その項目に関して解決すべき技術的課題を明確にする必要がある。今後、ESIニードル化してLC/MS/MSで使う計画が達成できれば、検査レベルの医学応用という意味で社会還元にはつながることが期待される。
薬剤師のコミュニケーション能力向上のための薬局版ファーマシストトレーナーの開発 岐阜薬科大学
寺町ひとみ
科学技術振興機構
菅野幸一
「学生版ファーマシストトレーナー」におけるシナリオ開発技術を基本に、「薬局版ファーマシストトレーナーの開発」を目的とした。主な新規機能は、1)糖尿病、高血圧症、脂質異常症、狭心症、消化性潰瘍、一般用医薬品2シナリオの全7シナリオ2)段階的にプレイ可能なシナリオ難易度の選択3)薬剤師認識セリフ4)薬歴記入を盛り込んだシナリオ5)音声認識率および練習モード6)患者設定のカスタマイズ化7)発展学習における、面接の内容に沿った患者との対話シミュレーション8)ネットワーク経由による音声認識であった。今後、実行端末を選ばない、ブラウザー(インターネットエキスプローラー)の導入によりコストダウンが達成できると考えている。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、主な新規機能である段階的にプレイ可能なシナリオ難易度の選択、音声認識率および練習モード、ネットワーク経由による音声認識などの技術移転につながる研究目標は概ね達成している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、患者シナリオの状況にあった対応についての評価方法、ならびに評価の妥当性についての検証が望まれる。今後、研究成果が応用展開された際に社会還元(医薬品の適正使用に貢献)できることが期待される。
中高齢者の糖尿病の非侵襲的な予防と診断技術の確立 静岡県立大学
閔俊哲
静岡県立大学
柴田春一
本研究の最終目標は、各臨床検査機関でヒト爪を用いた中高齢者の糖尿病の非侵襲的な予防と診断可能なキット(誘導体化試薬などのセットと測定手順)を開発することである。本課題では、その前段階として必要な知見・情報を獲得すること、技術を開発することを目標とした。ヒト爪からD,L-アミノ酸の新たな抽出手法の開発に始まり、検体処理能力の向上やキット化に不可欠な迅速分離分析法を確立することができ、当初の目標を概ね達成できた。今後は開発した方法による測定例数を増やし、データの蓄積と統計解析を行い、ヒト爪を用いた糖尿病の非侵襲的な臨床検査法としての確立を目指すとともに、臨床検査会社などにキット化を働きかける。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、糖尿病の診断に向けた爪からのD,L−アミノ酸の抽出とそれの分離分析法の確立を目指した研究において、抽出方法とUPLC−ESI−TOF−MSの測定条件が確立された点は評価できる。一方、健常人と糖尿病患者間で有意差があったと報告されているが、どのように解析した結果かが不明であり、その解明と実際の多数の爪検体を用いての検討が必要である。今後、実サンプル臨床検体によるメソッドバリデーションは必須と思われる。
新規体液採取器具によるインフルエンザ抵抗性体質の簡易鑑別法の確立 静岡県立大学
高木邦明
静岡県立大学
柴田春一
本研究事業は高騰する医療費軽減を目的に抵抗性体質の簡易鑑別法の確立を目標としている。具体的には、ムチン5Bと選択的に結合するファージペプチドをライブラリーから選別し、そのファージが保有するペプチドのアミノ酸配列を決定することが目標であった。実施内容としては、唾液をムチン含有成分とムチン不含成分に分け、ムチン含有成分と結合するファージを4クローン得た。そして、当初の目標通りアミノ酸配列を推定できた。今後は、一般被験者を対象に各クローンの有用性を検証し予防医学貢献用のキット化(製品化)に結びつけたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ムチン5Bと選択的に結合するファージペプチドをライブラリーから選別し、そのファージ保有するペプチドのアミノ酸配列を決定しペプチドを合成して結合を確認する目標において、特に4種類のクローンを単離し、ペプチドの配列を決めることに成功している点は評価できる。一方、技術移転の観点から、これらのペプチドがシステインに挟まれた環状の構造をしているため合成には至らなかったので、ペプチドを合成しムチン5Bに結合するかどうかのさらなる検討が必要である。今後、合成ペプチドの結合能が応用展開のかぎとなるので成果に期待したい。
寿命延伸化合物ラパマイシンを分子擬態するペプチド断片の大規模探索 静岡県立大学
河原崎泰昌
静岡県立大学
柴田春一
寿命延伸因子として知られるラパマイシンを分子擬態(機能代替)し、FKBP12-TOR1間相互作用を惹起するオリゴペプチドを定量的酵母2ハイブリッドスクリーニング系により大規模スクリーニングした。最適ペプチド配列への到達を効率化(偽陽性配列の排除)する目的で、スクリーニング系を改善し、新たな3ハイブリッド系を構築した。2種の変異体提示法と2種類の配列ライブラリーを組合せてスクリーニング系を試み、いずれの場合もラパマイシンを擬態するクローン群を得た。しかしながら、これらの力価は弱く、更なる配列最適化が今後の課題となった。これと並行して、ペプチド発現生産系の構築を検討し、難生産性分泌蛋白質を高効率(数千倍)に生産しうる酵母発現系を確立できた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、酵母から難生産性のタンパク質を、通常の発現誘導で得られる量の数千倍発現する系を開発できた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、十分な分子擬態を示すペプチドを発現する酵母の単離の検討が必要である。市場性や技術の優位性に基づく技術移転を視野に入れることが望まれる。今後、弱いながらもラパマイシンに分子擬態を示すペプチドライブラリーを得ているので、研究が発展し応用展開された際には、社会還元に導かれることが十分期待される。
非接触で心拍数を計測する寝具一体型低コスト心電R-R 間隔モニタの開発 静岡大学
山川俊貴
静岡大学
神谷直慈
申請者の技術シーズである小型・長寿命な低コスト心電R-R間隔遠隔計測システムの技術を、非接触で心電を計測可能な容量性結合型計測法に応用し、この計測法の実用化の上で最大の課題であった装置の複雑さ・高価さを解決することで、一般家庭にも導入可能なほど簡単・低コスト・長寿命で、臨床上十分な精度をもつ計測システムを実現した。提案システムを寝具に組み込むことで、被験者がその上に寝るだけで心電R-R間隔を必要時間、十分な精度で安定して計測可能になった。このような装置が家庭に広く普及することで、高度な健康増進や病気の早期発見につながり、医療費の削減にも貢献できると予想される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に確度95%以上で安静時のR波検出、寝具やストレッチャー等に一体化可能な装置サイズ、臨床上十分なミリ秒単位の計測精度を持つ装置の開発に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、EMC対策を充分に行う必要があり、この視点での技術的課題が解決できれば、低コストかつ簡便な操作方法で心拍におけるR−R間隔を評価できる装置としての実用化が望まれる。今後は、経済面をクリアーすることによって、高度な健康増進、病気の早期発見、心筋梗塞などの突発的な不幸を防ぐことが可能となり、社会に大いに寄与するものと期待される。
近赤外蛍光を用いた新しい生体内分子イメージングプローブの開発 浜松医科大学
小川美香子
浜松医科大学
阿部紀里子
本研究は、機能性ナノ粒子を用いた近赤外蛍光アクチベータブルプローブ作成技術により、動脈硬化不安定プラークのイメージングを行うことを目的としたものである。このために、ICG標識リポソームを用いたイメージング剤の開発をおこなった。この結果、約4倍の蛍光の増強を示すナノ粒子の作成に成功し、動脈硬化モデル動物にて不安定プラークを描出することに成功した。また、ICG標識法を改善することで、100倍を超える蛍光の増強が期待できるとの基礎データを得た。今後、本研究にて得られた結果を基に、より効果の高い近赤外蛍光アクチベータブルプローブ作成技術へと展開する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、動脈硬化不安定プラークを検出する分子標的の作成技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、リポソームへの封入技術の最適化を図った上で、特異的なインビボ光イメージング技術として完成させ、医療現場における早期発見法としての実用化が望まれる。今後は、産学共創基盤研究などを有効活用し、早期に実現されることが期待される。
光学的手法を用いた乳がん化学療法のベッドサイドモニターの開発 浜松医科大学
小倉廣之
浜松医科大学
阿部紀里子
本課題では、乳房全体を無侵襲的に短時間で効率的に検査できるように、現在の時間分解分光装置(TRS-20SH)を多チャンネル化する改良を行い、様々な乳腺腫瘍の光学的特徴と血液動態をX線の照射なしに明らかにできる乳がん化学療法のベッドサイドモニターを開発することを目標とした。今回の研究期間で多チャンネル化を想定した1chプローブでの計測を行い、より精度の高い計測が可能となることが確認できた。今後、開発された多チャンネル装置を用いて計測結果を蓄積し、このモニタリング技術として導入されれば、化学療法レジメンの変更や手術を先行させるなどの治療方針の決定により、乳がん患者のQOL・治癒率向上に寄与できると考えられる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも時間分解分光法においてプローブを多チャンネル化し、光源を光ファイバースイッチで切り替えることで、乳房全体の計測を可能にする技術は評価できる。一方、多チャンネル装置を用いたデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、共同研究企業の協力を得たうえで、症例の蓄積を行い、医療現場において使用可能なモニタリング技術を確立されることが望まれる。
脳機能の解明を指向したNMDA受容体イメージング剤開発 浜松医科大学
高島好聖
浜松医科大学
阿部紀里子
本申請課題は、NMDA受容体アンタゴニストのPETプローブ化を実現するため、ほとんどのアンタゴニストに共通して含まれるフェナシルアミノ構造を11C標識できる一般的な新規多段階合成法の確立を目指すものである。多段階11C標識法の確立のため、本申請課題前半(平成23年度)では、非放射性条件下で多段階合成を構成する各素反応の高速化について検討を行い、後半(平成24年度)には放射性核種を用いた標識実験により[11C]フェナシルアミノ基を構築することを計画した。各素反応が数分以内に進行することを確認し放射性条件下での反応を検討中である。また、連続合成が想像以上に困難となることが判明し、別法についても検討を行っている。複数の合成ルート検討により、11C-フェナシルアミノ構造を構築し、一連のNMDA受容体アンタゴニストのPETプローブ化を目指している。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。11C標識化合物の多段階合成法の素反応を迅速化する試みは、さまざまな条件検討により一定の成果を上げている。一方、連続反応系の構築は困難であることが判明した。現時点では素反応の細かい改良の試みが主であるので、まとまった成果や特許という形での顕在化はできていない。ただ、その過程で興味深い化学反応上の発見をしている点については評価できる。全体としては、それらが本課題の最終目標に寄与するための具体的な方策が検討できてはおらず、技術移転というゴールを考えた場合、足踏み状態が続いていると評価せざるを得ない。ただし、使用可能なPETプローブを増やすためには11C標識化合物合成法についての知見の蓄積は間違いなく重要であり、短期的な成果だけでプロジェクトの成否を決めるのは難しい。今後は、11C標識化合物合成法についての知見の蓄積を続けているために、どういうファンディングスキームが最適であるのかを、研究責任者とコーディネーターが良く検討し直すことが望まれる。
ADL等介護必要度情報の標準化と簡易ITデバイスの利活用法の確立 浜松医科大学
小林利彦
浜松医科大学
阿部紀里子
急性期病院の後方施設として回復期リハビリテーション病院、療養型病院、介護福祉施設等があるが、施設間の患者移動は容易ではない。ベッドが空かないことも大きな理由だが、後方施設への入院・入所に対して、情報伝達・情報共有のシステムが不十分なことも一因としてある。今回、後方施設へのアンケート調査を行い、受け入れ判定に必要な情報の項目確認と地域における共通フォーマット化の可能性について検討した。併せて、手書きが多い紹介状書式等を一部デジタル化(二次元バーコード化)することで、転記の手間を減らし、受け入れ先でのデータベース化につながるモデル構築を試みた。平成23年度は、療養型病院等のアンケート調査を行い、統一書式作成の可能性があることを確認した。平成24年度は、急性期病院側で利用する患者情報のデータベース化ツールを試行的に作成し、それを用いて二次元バーコード付き紹介状印刷を可能にした。今後、バーコードサイズや画面配置等の調整とともに、ソフトウェア開発会社などとの連携も検討したい。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。データーベースソフトを用いた医療情報(ADL等介護必要度)の標準化と簡易ITデバイスの利用に関して、紙ベースの情報の電子化・標準化は達成しているが、実施による評価がまだであり、他のグループの同様の情報管理との標準化の検討、統一に関して課題がある。企業の支援がなければ困難な事業であるが、具体的な計画は記載されていない。一方で、多くの企業が同様の企画を実行しており、それらとの整合性・統一性の検討が不明確である。各医療機関で、どのように利用され問題点が浮かび上がっているかの検討が今後の課題であり、その解決なしに実施は難しい。それらを解決し、簡易型ITの実践が評価されれば、臨床現場で大いに期待できる。さらに全ての情報の標準化・一元化にも応用できる。
エントロピー顕微鏡法の応用開発 浜松医科大学
早坂孝宏
浜松医科大学
小野寺雄一郎
本研究開発はMRSイメージングデータ及び3次元PETデータの各点において情報エントロピーを計算し、画像として可視化するソフトウェアを開発し、これらのデータにおける複雑な振る舞いを俯瞰可能にすることを目標としている。実際にMRSによって得られたDICOM形式データ及びPETで得られたanalyze7.5形式に対して情報エントロピーを計算し、可視化することに成功した。今後技術面での改善が進むことで、これらの装置を用いた大規模計測が可能になり、本研究開発で作成したソフトウェアを用いた解析方法に対する需要が高まることが期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもMRSおよびPETで得られる画像において、エントロピーを可視化する技術に関しては評価できる。一方、研究面でのさらな基盤強化などが必要と思われる。今後は、質量分析顕微鏡の解析ツールとして実用化されることが望まれる。
特異的超音波顕微鏡画像の描出方法の開発 浜松医科大学
三浦克敏
浜松医科大学
小野寺雄一郎
超音波顕微鏡画像の特異的な画像描出を目的として、抗体をもちいた抗原の同定が可能かを検証した。1つはジアミノベンチジンを使うDAB-ニッケル法を用いた免疫発色で陽性画像に一致して音速の増強を認めた。2つめとして金コロイド標識抗体でも抗原の存在部位に一致して音速の増強が認められた。3つめのリポゾームに組み込んだ抗体法では、特異的な画像の描出ができなかった。この結果が、抗体の種類や組織の種類によらず、再現可能であることを証明することが、今後の課題として残った。また、DAB-ニッケル法、金コロイド法以外の金属標識法や、金属イオンを用いる発色方法、光学顕微鏡で用いられている特殊染色法の中に超音波顕微鏡にも適応可能な染色法がある可能性が示唆された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。超音波を利用した新しい顕微鏡を用いて組織観察するのに、どんな標本作製法(染色法)があるのかを探るユニークな計画であった。明確な目標が設定され、それに対しての具体的な結果が出ている。この手法を用いて特定の分子の検出ができることが示されると同時に、これからの目標も明確になった。学会発表などでも内容に対しての検証も行われていることから実用性が高いと考えられる。一方、技術移転の観点からは、実用までにはまだ距離があると思われるが、改良によっては新しい技術の開発として期待される。そのためにも、早めの知的財産権確保が望まれる。
新規深部静脈血栓症予知マーカー(APC感受性)簡易測定法の開発 浜松医科大学
金山尚裕
浜松医科大学
小野寺雄一郎
本研究は、深部静脈血栓症(Deep vein thrombosis:DVT)の予知マーカーとしての利用が検討されている、活性化プロテインC(Activated Protein C:APC)感受性測定の簡易化を行うことにより、DVTの発症予防や、治療に貢献することを最終目的として研究を行う。具体的には現在の測定法では高価な専用測定機器と煩雑な測定操作が必要であるため、汎用測定装置への変更と測定操作の簡略化、簡易化を目的として研究を行う。研究支援を受ける期間の中間地点である平成23年度中に、測定操作の簡略化、簡易化についての検討を行い、良好な結果を得た。測定デバイスの開発においては、APCの安定性が低いという問題が生じたが、開発期間中にこれらを解決する検討を行った。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。当該研究は、深部静脈血栓症の予知マーカーとしてAPC感受性試験に注目し、安価で簡易測定できるキットの開発を目標としたものである。従来の蛍光法に換えて吸光光度法が使用できそうな点に関して目標は達成されていると思われる。しかし、キット化に向けたビーズ固相化等は達成されていない。以前からELISA系の開発には成功しているようであるが、さらに簡便化を求めて、ビーズを用いたEIA法を試行したものの、APC本体の不安定性もあり確立には至っていないようである。そのため、試薬の安定性、不動化など、基礎的なデータを掘り下げる必要がある。また、吸光光度法の確立後、具体的にどのように進展させるのか、キット化との関連も不明である。今後、さらに、適切な素材を使って試行錯誤するか、ELISA法を改良するか、それを待って優れたアッセイ系が確立できれば、非常に有意義なものであり社会に大いに還元されるべきものと考える。
昆虫細胞における血液凝固、抗凝固因子の大量合成法の開発 浜松医科大学
岩城孝行
浜松医科大学
小野寺雄一郎
血液凝固、抗凝固因子の中にはビタミンK依存性γカルボヒシグルタミナーゼの触媒作用で初めて活性のあるタンパク質になるものが存在する。従来、これらの組み換えタンパク質産生においてヒト胎児腎臓細胞由来のHEK293が使用される。組み換えタンパク質を開発することは血液由来の生成法よりもはるかに安全であるが、HEK293細胞を使用するためコスト的に問題である。これに比して、ショウジョウバエ由来のS2細胞は室温培養が可能で培養機器も必要がない。本研究ではビタミンK依存タンパク質受容性S2細胞を用いてヒトの凝固因子および抗凝固因子の発現細胞を分離し各組み換えタンパク質の生成およびその生成効率を検討することを目的とする。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。当初目標の第VII、IX、X因子、抗凝固因子のプロテインC、Sの内、第VII因子の発現・蛋白の分離・精製はできたが、分子量確認、活性測定には至っていない。残りの因子には未着手であり、目標の一部のみ達成した状況である。医療ニーズを踏まえた優先度を考慮すべきではないか。ただ、昆虫での効率的発現系実現の可能性が示され、技術移転の可能性を示した点については評価できる。今後の具体的な研究開発計画は提示されていないが、安定的発現系の確立や、企業との連携での大量培養・精製法の確立等が提案されている。昆虫での血液凝固関連蛋白合成法確立の最初のステップをクリアしつつあるが、産学連携等の次のステップにつなげるためには、発現タンパクの活性確認、発現系の安定性確認や競合者との差別化等が課題であるとともに、医療ニーズの高いターゲットに絞り注力する必用があると思われる。
セルロースナノファイバーを用いた花粉・アレルゲン除去材の開発 あいち産業科学技術総合センター
森川豊
あいち産業科学技術総合センター
彦坂武夫
表面電位が負の値を示す花粉及び花粉アレルギーの原因となるペクチナーゼを吸着する目的で、セルロースナノファイバーを表面処理した。処理によりセルロースにアミノ基を付加してゼータ電位が25.2mVという正の値のセルロースナノファイバーを得た。セルロースナノファイバーは、表面処理によりペクチナーゼ吸着量が増加し1mgあたり0.58mgの吸着量となった。さらに、このファイバーを用いて空気清浄機のフィルタを試作し、花粉除去性能を調べたところ、表面処理により80%と除去率が大きくなった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、花粉アレルゲンの除去法として、正電荷を得る技術を利用して、フィルターとしての機能を開発した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、得られた結果が当初目標の95%以上の除去率に達してはいないので、さらなる検討が必要である。今後、アレルゲン除去の目標が達成できれば社会に還元できると期待される。
低侵襲な肺機能評価のための呼気イソプレン計測法の開発 愛知工業大学
手嶋紀雄
(財)名古屋産業科学研究所
大森茂嘉
患者の肺機能をモニターするために、換気血流(V/Q)比が測定される。しかし不活性ガスを含む生理食塩水を静脈注射しなければならない。本研究の最終目標は、体内に元々存在する揮発性ガスで代替することによって注射を伴わない低侵襲なV/Q比の測定法を確立することである。イソプレンは呼気ガスの1つであり、代替分析成分として有力な候補である。本年度はイソプレンの自動化学分析法の開発を行い、ppmレベルのイソプレン定量法を確立した。呼気イソプレン濃度レベルはppbレベルであるため、イソプレン吸収液の組成を変化させることにより吸収率の向上を図り、今後は感度を高め、さらに他の呼気ガス成分との同時定量法の確立を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、オゾン酸化反応を用いる呼気イソプレンの自動流れ分析法を開発する当初の目標は、ある程度達成されている点は評価できる。一方、検出感度が不十分であったが、改善点について述べられており、感度を10から20倍に上げるための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。呼気中にはいろいろな情報があることが予想でき、安価で簡便な方法が待たれているので、今後は新たな共同研究者と交流し研究を展開していく事が望まれる。
浮遊細胞の継続的な形態観察および分子計測を目的とした培養システムの開発 愛媛大学
大嶋佑介
浮遊細胞を培養条件下で捕捉して、生細胞のラマン分光分析や蛍光イメージング解析を行うための手法、および同一の浮遊細胞を継続的に観察するための培養システムの開発研究である。顕微鏡観察システムに応用できる汎用性の高い浮遊細胞観察システムを構築し、ヒト急性骨髄性白血病細胞の長時間観察および同一細胞でラマンスペクトルの経時的変化の計測に成功した。培地循環や温度制御システムを搭載したシステム化によって、ES/iPS細胞の分化モニタリングや抗がん剤の評価、がん迅速診断など医療分野への応用、そして細胞工学に基づいた産業応用を目的とした新しい技術として実用化していく。

概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に浮遊細胞の近赤外ラマン分光高感度測定可能なチャンバーを製作し、継続的かつ安定に培養システムが動作する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、当初より企業とタッグを組んで開発に取り組んでおり、知財化戦略、開発戦略ともに的確に検討されている。また、iPS細胞、ES細胞などへの応用を視野に入れた評価系の選択を行っている点も優れている。
遺伝子増幅現象のボトルネックを克服した高効率タンパク質生産系の開発 大学共同利用機関法人自然科学研究機構
渡邊孝明
(財)科学技術交流財団
菅野幸一
翻訳後修飾や高次構造が維持された高品質なタンパク質は医薬・診断薬の開発など需要が多いが、その生産には多額のコストを要する。この生産には動物細胞での遺伝子増幅現象が利用されているが、増幅機構が未解明なため約30年にわたり十分な効率化がなされていない。我々は増幅初期の最重要なステップを人工的に誘導することに成功し、Chinese hamster ovary細胞を用いて6.8μg/mLのタンパク質生産性(G-CSF、顆粒球コロニー刺激因子)を約9週間で達成した。今後、ローラーボトルでの大量培養や浮遊細胞化による高密度培養等の適用を検討し、簡便に短期間で生産可能なシステムを目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも動物細胞系が使用されてきた高品質なタンパク質は遺伝子増幅現象を利用しており、二動原体染色体形成のステップを人工的に誘導することにより高品質タンパク質を要する研究に関しては評価できる。一方、プロジェクトリーダーの海外研究機関移動に伴い、研究期間の短縮が行われたが、正確な増幅頻度の算出よりも薬剤選択を継続してタンパク質生産性を検証することを優先するなど当初目標はある程度達成できている。正確な増幅頻度の算出はできなかったが、その結果として得られるタンパク質生産性と増幅選択期間の短縮について実用化が期待される。
化学反応場を利用した薬剤耐性菌の迅速かつ簡便な検出ツールの開発 中部大学
石田康行
まず、細菌細胞膜脂質の分析に適した化学反応場を創製し、それらを構成する一連の飽和、モノ不飽和および環状構造を有する脂肪酸成分の化学組成を高精度に解析する計測システムを開発した。さらに、こうして得られた組成データを、バイオインフォマティクス技術により統計処理することにより、大腸菌における薬剤耐性の有無を2次元プロットとして視覚化して提示することに成功した。この方法では100μgの極微量の細菌試料を用いて、30分以内の短時間で細菌における耐性の有無を容易に判別でき、当初の目標を十分に達成できたと評価している。今後、病原菌を含む、より多種の細菌種における検討を行うことにより、薬剤耐性菌の実用的な検出法として本システムを実機化することを展望している。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、「化学反応場の高性能化」については、当初目標に達しており、「データの視覚化システム」については、本分析結果による判別の可能性を検証した点は評価できる。一方、データ解析については主成分分析結果が示されているだけなので、PLS−DA等の判別分析を複数回実施し、別バッチ間のサンプル比較により系統誤差の検討等が必要と思われる。今後、実際の病原菌への適用は次なるステップであるが、技術的課題を明確にすることが望まれる。
難聴予防化合物の作用機序の解析―難聴予防食品の開発に向けてー 中部大学
大神信孝
中部大学
山本良平
【目的】 世界で約7億人に達する難聴患者は、有効なモデルマウスが存在しない為、未だその予防・治療薬はない。本研究では、「難聴に対して予防効果のある機能性飲料」の開発を目標として、上記の難聴を発症するモデルマウスを用いて、病態解析および予防化合物の選別を行う。
【達成度】80%;加齢性難聴を発症するモデルマウスを用いて、内耳コルチ器の病態解析を進め、病因を突き止める事が出来た。
【今後の展開】
1. モデルマウスを用いて、加齢性・騒音性難聴の予防化合物を選別する。
2. 投与期間を延長して、候補化合物の安全性をマウスレベルで検討する。
3. モデルマウスで選別後、ヒトでも効果があるかを検証する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、加齢難聴モデルマウスにおいて、聴神経の細胞数減少を見出し論文化することができた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、予防効果のある化合物についてはまだ多くの課題が残っているので、まず候補化合物の内耳での組織分布等の検討が必要である。今後、難聴予防食品の開発について技術移転につながることが期待される。
オムツ用湿潤検知センサーシステムの開発研究 中部大学
田橋正浩
中部大学
木本博
超小型かつ低コスト・低消費電力の排尿・排便検出システムの開発を行った。排尿・排便検出部にはにおいセンサーを、センサーおよび送信部への電源管理と信号制御には汎用マイコンチップPSoCを、データ送信および受信部にはXBeeを採用した。これらと電池を含めて名刺サイズに収まる排尿・排便検知システムを作製することができた。さらに、検出システムの動作確認実験を行い、検出の感度、送信距離や駆動時間に関するデータの採取を行った。排尿を模した10%希釈アンモニア水をにおい検出部に近づけたところ、ただちに排尿・排便検出システムはアンモニア検出し、そこから離れた場所に設置されたコンピュータへ電波により信号を送信することに成功した。
   
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。装着者への負担が少なく着脱が容易なオムツ用湿潤センサーを目的としていたが、排便検出を目標に加えたために、センサーを水分検出からにおい検出に変更した。においセンサーの検出感度を高めるために検出部を加熱する必要があり、大電流を要することになった。試作装置ではアンモニア水を検出部に近づけることで、検出と電波送信には成功したが、連続駆動時間は5分程度ということで技術移転にはまだ遠い。今後、本研究の成果が実現されれば、医療・介護現場での活用が期待できるので、実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
高病原性鳥インフルエンザウイルスのヒト間世界流行変異を監視する診断キットの実用化 中部大学
鈴木康夫
中部大学
木本博
目標:高病原性鳥インフルエンザウイルスのヒト間世界流行変異を監視する診断キットの実用化を達成する。これまでにイムノクロマトを原理とする「試作キット」を作製したので、さらに改良し、高感度、高特異的な「完成キット」を創製する。
達成度:測定完了までの反応時間(10分)、キットの軽量性(3グラム)、特異性(ヒト型、および鳥型レセプターシアロ糖鎖識別能力)に関しては、95%以上の目標を達成した。検出感度については、被検ウイルスを発育鶏卵で培養したもの(ウイルス濃縮の必要なし)を用いて検出可能なところまで到達した。(達成度85%)。
今後の展開:このキットを、実際の発生国で実用的に使用し、これまで不可能であった、高病原性鳥インフルエンザのヒト間伝播可能変異の監視システムに適用していく。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。ウイルスの検出感度は、前進はあるものの、当初の目標は達成していない。ウイルス検出の特異性は、結果報告書における記述に具体性が乏しく、目標を達成したと判断できない。課題申請書には、目標とするキットの検出感度は1 HAU(赤血球凝集単位)とある。これに対して、完了報告書の検出感度は、125 HAUであった。従って、キットの改良に進展はあるものと推測されるが、当初の目標は達成していない。目標とする特異性は、「高病原性鳥インフルエンザウイルスのヒト型変異H5亜型のみを「特異的」に検出可能とする」とある。他方、完了報告書における特異性の記述は具体性に乏しく、特異性についての目標を達成したと判断する根拠はない。これらの事実から、検出系の改良は進行したと考えられるが、期待したほどの成果は得られていないと判断せざる得ない。
移植なしで再生を誘導する新しい歯髄炎治療薬の研究開発 独立行政法人国立長寿医療研究センター
中村博幸
名古屋大学
武田穣
現在歯髄炎の治療薬は存在しないため、歯髄の全部除去が唯一の対処法である。私達は、歯髄幹細胞が細胞外マトリックス分解酵素のMMP-3を高発現していることを見出し、さらにラット歯髄炎モデルでMMP-3を作用させると炎症は終息し歯髄再生が誘導されることを報告した。この結果からMMP-3がこれまでにない新しい歯髄炎治療薬として有望である可能性が示された。この消炎と再生のメカニズムの解明し、将来MMP-3を医薬品として協力企業や共同ベンチャーで開発、販売へと進める。本研究では、将来バイオテクノロジー応用医薬品としての申請を行う上で必要なGLP非臨床安全性評価試験へと進める為の基礎的なデータを収集する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にMMP−3タンパク大量発現系を確立し、歯髄炎で細胞外マトリックス成分のバーシカンとヒアルロン酸の複合体が形成、これが炎症を増悪させており、MMP−3がこの複合体を分解することにより抗炎症効果を発揮していることを見出した点に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、MMP−7の模索、企業との連携をどのようにしていくかについて検討されている。また、今回の知見は、技術移転を目指した産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性を高めたと思われる。また、本研究成果が応用展開された際には歯髄炎治療として、薬物療法などでの実用化が望まれる。今後は、MMP−3の安全性を求めて製薬会社との共同研究に活路を見出そうとしているので、産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性がある。また、研究成果が応用展開できれば、社会に還元されることが期待される。
カテーテル用回転直動マイクロモータの開発 豊橋技術科学大学
真下智昭
豊橋技術科学大学
田中恵
本研究開発では、カテーテルの先端駆動に用いることが可能なアクチュエータの開発を目的として、1ミリ立方メートルのステータを用いたマイクロモータを開発し、回転駆動実験に成功した。開発したものは駆動実験に成功したモータユニットとしては世界最小のサイズである。モータはすべてMRIコンパチビリティを有する部品で試作し、ステータをメッシュ構造にすることで高出力化に成功した。また、特許出願を行い、浜松医科大との連携も強化し、実用化に向けた体制も整えることができた。トルクをほとんど必要としない用途(たとえばミラー部品を回すだけのような用途)であれば、既に実用可能レベルである。一方でカテーテルの先端を駆動させるための実用的トルクを得るにはまだ課題が残り、研究の継続が必要である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、1mm立方体サイズのメッシュ構造ステータの超音波モータの開発に成功している点は評価できる。一方、目標とするトルク10μNmと比較してその発生トルクは16.8nNmと10の3乗も乖離がある。他研究者により研究されているモータと同レベルであり、この低トルク性能をどのように解決するのか明確に示す必要がある。当初の目標であるMRIコンパチビリティの実現、トルク10μNmの実現、並列駆動による高出力化とカテーテルデバイスの試作についての技術的検討とデータの積み重ねも必要である。今後、カテーテル以外の適用も検討することで、本技術の早期技術移転が望まれる。
加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)軽減に向けたオートファジー経路観察系の確立 豊橋技術科学大学
佐久間邦弘
豊橋技術科学大学
田中恵
日本では超高齢化社会を迎え、サルコペニア(加齢性筋肉減弱症)が社会問題となりつつある。これまでサルコペニアに対する効果的なサプリメントの評価は、代表的な筋萎縮経路であるユビキチンープロテアソームの変化により判断されてきた。しかしながら加齢期の骨格筋萎縮は、この経路の影響を受けないことが最近の知見で明らかである。本研究は、加齢期の骨格筋萎縮により関係すると思われるオー
トファジー経路の変化に着目した評価系を確立することで、サルコペニアに対するアミノ酸(ロイシン)、栄養補助食品、新規薬品の正当な評価を行うことを目指すものである。
当初目標とした成果が得られていない。サルコペニアの軽減にむけて、ロイシンを添加した餌によるマウスを飼育し、オートファジーのマーカーを検討した研究である。既にロイシンを含む複数のアミノ酸がリソソームでのタンパク質分解を抑制することが示されており、研究責任者はそれがオートファジーの減少によると仮説を立て、実験を行った。しかしながら、オートファジーのマーカーには変化が認められなかった。今後、さらに上流の情報伝達機構についての検討を予定しているが、そもそも、加齢によるサルコペニアがオートファジーの減少に由来するという仮説そのものを再検討されることが望まれる。
連結したスライドばねによるハンドリハビリテーション装置の開発 名古屋工業大学
荒田純平
名古屋工業大学
岩間紀男
リハビリテーション支援のためロボット工学を応用した機器はこれまでに提案されているが、装置が大 型・高価であり、一般的な普及には至っていない。本研究では、まず最も日常生活に影響を与えるであ ろう手指のリハビリテーションに着目し、小型・軽量・安価なリハビリテーション支援ロボット機器を提供することを目的に、患者の手に装着可能であり、ばね要素を複合的に組み合わせ、スライドさせることで柔 軟な指の動作を実現する従来にないロボット機構を提案した。本研究により、機構解析と試験実装、お よび評価実験により、提案機構の有用性が明らかになった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。計画に沿って研究を実施しており、目標は達成できていると言える。特許出願も行われており、技術移転につながる成果と言える。さらに寸法や大出力化など実用化へ向けた課題も明示しており、今後の技術的課題が明らかになっている。しかし、実用化にはABS樹脂の耐久性等の検討がまだ行われておらず、リハビリテーションが必要な患者と筋電位の出力の安定性の検討も行われていない。技術移転の観点からは、今後の計画が、やや具体性に欠けるとも思われるが、企業との調整も始まっているようで、期待が持てる。また、機構が小型・軽量化でき、モータも一つですむので、コストの面でも比較的優位になる可能性が示唆される。医師との共同研究も行っており、臨床的な面における検討も行われているものと推測される。報告書を見る限り、実際の患者に装着して、従来の方法等とリハビリの効果を比較した検討がなされているかどうかは判断できないが、今後の動向が注目される。その結果次第では、社会的にも大きな注目を浴びる可能性もあり、さらに実用化へ向けた検討が期待される。
血管内皮機能指標としての皮膚ガス一酸化窒素濃度測定システムの開発 名古屋工業大学
伊藤宏
名古屋工業大学
山本豊
生活習慣病等に関係する生体情報を無侵襲・低侵襲でモニタリングできるセンサとデバイスの開発のひとつとして、ヒトの皮膚ガス一酸化炭素(NO)濃度の簡易的測定システムを作り上げることを目標とした。その結果、指先、手などの非常に限られた部位から試作した皮膚ガス採集デバイスによって皮膚ガスサンプルを採集し、再現性の高いNO濃度測定に成功した。また、本研究では、皮膚ガスNO濃度が加齢に伴って上昇すること、加齢に伴う血圧や脈波談判速度(PWV)の上昇と相関関係が認められたことから、皮膚ガスNO濃度が血管内での循環調節機能や動脈硬化に関する生体情報をモニタリングできる可能性が示唆された。今後の実用化に向けてサンプル数を増やしてさらに検討していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に皮膚ガスの測定システムの技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許の取得を図り、医工連携の後、産学連携に繋げることが望まれる。今後は、疾患の診断マーカーとしての展開が期待される。
組織工学用細胞組み込み型フレキシブル材料の開発 名古屋工業大学
小幡亜希子
名古屋工業大学
山本豊
本研究課題の目的は、組織工学での応用を見据えた繊維状スキャホールド材料の開発である。シリコンとカルシウムイオンによる細胞の活性化効果に着目し、シリコン導入型炭酸カルシウムをフィラーとして複合化させたポリ乳酸ベースの材料を作製した。また、エレクトロスピニング法を独自に改良することで、立体型不織布材料の作製に成功した。得られた材料は、ポリ乳酸単体とほぼ同等の圧縮・回復率を示し、操作性に優れた材料であった。また、交互浸漬法によってアパタイトコーティングにも成功した。細胞培養試験の結果、細胞が材料内部にまで進入し増殖することがわかった。凍結処理後においても、多くの生細胞が確認できたことから、目的とする材料としての可能性を見いだせた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。目標は概ね達成されている。ただ、繊維状Scaffoldへの細胞の侵入は確認されているが、従来素材との差別化(優位性)は確認されていない。メインの開発課題であるポリ乳酸繊維表面へのアパタイト被覆技術の開発とその有用性(細胞付着、増殖能の向上)が確認されておらず、課題を残している。ポリ乳酸繊維の不織布を用いた硬組織Scaffoldへの本研究開発の応用は期待されるが、技術移転に結び付く技術開発が達成されるか、今後の研究開発をまたなければならない。また、ここで行われているエレクトロスピンニング法で作ったPLAは非結晶性であるがゆえ安定性に問題がある。データのバラつき等は表面における不均一性と関係があるようである。今後熱処理等により改善は可能であり、骨欠損の補てん材料として再生組織工学としての期待は感じられる。なお、この分野は多くの特許が出ており、抵触しないかどうかを確認する必要がある。
感覚運動統合機能の定量的評価のための装置開発 名古屋工業大学
森田良文
名古屋工業大学
山本豊

脳血管障害などで感覚運動統合機能が阻害されると、日常生活で多く見られる把持・運搬複合動作に支障をきたし生活が不便となる。本研究では、手指の感覚運動統合機能の評価装置を開発し、療法士との協議から定量的評価法を確立した。開発した評価装置の測定データの再現性1%以下の目標を達成し、さらに3つの評価装置も開発し、個体差1%以下の目標を達成した。策定した評価プロトコールの有効性は、健常者による比較実験と療法士による臨床試験から検証した。さらに、療法士によるアンケート調査と協議から定量的評価法を確立した。本研究の達成により患者の症状に適した訓練メニュー設計に寄与できることから、本シーズ候補の実用化可能性は高いと判断する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に感覚運動統合機能の定量的評価法確立による訓練メニューが求められている中で、把持・運搬複合動作のための評価装置を開発し、定量的評価法を確立する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、ほぼ実施計画通りの研究開発を行われているようであるが、「県内2カ所の医療・福祉施設の患者を対象に」した臨床試験の記述がなく、評価プロトコールの策定にこれらの結果がどのように反映されているのかが不明である。また、関連医療機関・企業との連携は十分行われていると考えられ、リハビリテーションの現場での必要性も高いと考えられ、一定の社会的還元は期待できる。
可視光励起可能な発蛍光型タンパク質標識プローブの開発 名古屋市立大学
梅澤直樹
(財)名古屋産業科学研究所
羽田野泰彦
本研究の目的は、実用的「発蛍光型ヒスタグ標識プローブ」の開発である。筆者が開発した蛍光プローブを可視光励起型に改変すると同時に、機能向上を行ない、実用的な試薬を開発する。達成目標として、1) ヒスタグの位置に左右されずに標識できる、2) 細胞イメージングに適した可視光で励起できる、3) ヒスタグとの結合に伴い、20倍以上の蛍光強度変化が起きる、の3点を掲げ、新規蛍光プローブの開発を進めた。その結果、目標1)及び2)を達成することができたが、目標3)の達成には至らなかった。過去に筆者が開発した蛍光プローブ群は全て、ヒスタグの位置により標識効率が大きく異なるという制限をもっていた。今回、目標1)の達成に成功したことは大きな進展といえる。また、目標3)の達成には至らなかったものの、その達成に向けた基盤となる結果を得た。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ヒスタグの位置に左右されずに標識できる事、可視光で励起できることの二課題はほぼ目的達成できている点は評価できる。一方、20倍以上蛍光強度変化を目的としたが、実際は数倍程度の達成となっているので、技術移転のための判断基準を明確にすることが望まれる。今後、実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
脳機能に必須なタンパク質リーリンの「活性型」だけを迅速かつ大量に測定する方法の開発 名古屋市立大学
服部光治
(財)名古屋産業科学研究所
羽田野泰彦
リーリンは多くの精神神経疾患に関与するタンパク質であるが、巨大なことおよび特異的分解をうけることが原因で、定量が困難である。分解を受けていない「活性型」を定量するアッセイ系の樹立とリーリン分解阻害剤開発を目指し、特異的分解部位をまたぐ認識部位をもつ抗体を作成した。本研究では、この抗体を用いた迅速定量法の完成に向けて、サンドイッチELISA用の抗体の作成、サンプル前処理法の検討、リーリン分解酵素の大量調整を目指した。サンドイッチELISAに用いる抗体の作成には至らなかったが、前処理法の検討は終えた。また、リーリン分解酵素の同定にほぼ近づいた。今後は、アッセイ系の確立と、阻害剤スクリーニングにつなげていきたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、精神神経疾患に関与するタンパク質リーリンの臨床的重要性を深めた点は評価できる。一方、技術移転の観点から、そのアッセイ系に必須な第二の抗体の作成が完了できなかったので、さらなる検討が必要である。本課題の申請時に開発が完了していた第一の抗体については、特許申請が成されており研究試薬としては利用可能である。今後は、阻害剤の開発に向けた研究における実績は十分ではないので、構造活性相関研究、インフォマティクス利用など多方面からのアプローチを考慮することが望まれる。
消化管癌に対する糖鎖連結クロリンを用いた癌細胞超選択的光線力学的治療法の開発 名古屋市立大学
片岡洋望
(財)名古屋産業科学研究所
吉田勝
糖鎖連結クロリンを用いた光線力学的治療法 (PDT)は、in vitro, in vivoの検討おいて、現行薬のレザフィリンに比べて非常に強力な殺細胞効果を示し、臨床応用が期待される薬剤であると考えられた。また、PDTのみならずPDDの臨床応用の可能性を示唆する知見も得られたことから、今後は、詳細な体内動態、毒性試験などの前臨床試験が望まれる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、糖鎖連結クロリンを用いた光線力学的療法が現行薬(レザフィリン)以上の殺癌細胞効果を有することを証明し、光線力学的診断法の可能性を示した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、用いた癌細胞株が大腸および直腸癌由来のものだけであったので、胃癌や肺癌など他の癌細胞に関しても検討することで、臨床応用における治療標的を明確にすることが望まれる。今後、癌診療における低浸襲性・高安全性・低医療費の点で、糖鎖連結クロリンを用いた光線力学的療法の応用展開が社会還元につながると期待される。
癌細胞のヒストンアセチル化パターンによる治療効果予測システムの開発 名古屋市立大学
佐藤慎哉
名古屋市立大学
上釜奈緒子
前立腺癌におけるヒストン修飾パターンをヒト前立腺癌組織、細胞株を使用して検索した。その結果、癌組織では組織学的悪性度の高い前立腺癌細胞でヒストンH3リジン9番のアセチル化が有意に低下していること、癌細胞株ではヒストンH3リジン9番のアセチル化、ヒストンH3リジン4番のトリメチル化が種類によって異なることを示した。さらに前立腺癌細胞株が薬剤感受性を有する複数のHDAC阻害剤を暴露した際、ホルモン治療感受性・抵抗性前立腺癌細胞株ともに大きく変化する遺伝子として、アンドロゲン受容体、アンギオテンシン、ErbB2 等が存在した。以上より、ヒストン修飾パターンおよびアレイから得られた遺伝子情報を利用して、前立腺癌の薬剤感受性を予測できる可能性が示唆された。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。本研究開発結果は、マイクロアレイによる遺伝子発現ファイリングに終始し、これを基に、薬剤耐性との関係が比較できるという結論に終わっている。しかし、薬剤耐性と強い相関を示すがんのヒストン修飾パターンや遺伝子は得られておらず、癌のヒストン修飾パターンが培養細胞と実際の臨床サンプルで異なっていることが明らかになり、ヒストン修飾パターンと薬剤感受性との関係を詰めていくデータを証明するまでに至っていない。今後は、本研究で得られたマイクロアレイデータを基に、薬剤耐性株と感受性株、薬剤耐性症例サンプルと感受性サンプルを用いて、真に有用な遺伝子を絞り込む必要がある。絞り込んでも、実際の臨床研究では、様々な要因が影響を与えるため、多くの研究が困難に遭遇するのは、これ以降の過程であり、しっかりと検討する必要がある。
全自動1細胞単離解析装置を用いる抗体高産生ハイブリドーマの選抜および育種技術の確立 名古屋大学
良元伸男
本研究では、分泌量依存的に細胞そのものを光らせる技術の確立を目標とした。結果、分泌物質依存的に1細胞単位で目的細胞を蛍光検出する系(1細胞表層FIA法)の構築が達成された。また、全自動1細胞単離解析装置を用いて細胞解析と単離を自動化することにより、目的細胞スクリーニングのハイスループット化も付加価値的に達成された。このことは、目的分泌物質を最も盛んに産生する分泌細胞を容易に単離育種可能であることを意味する。本研究は、有用分泌物質を高産生する動物細胞全般に適用可能と考えられ、抗体医薬産業をはじめ多くのバイオ産業へと展開できると期待される。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、分泌物質依存的に1細胞単位で目的細胞を蛍光検出する系の構築が達成されており、全自動1細胞単離解析装置を用いて細胞解析と単離を自動化することにより、目的細胞スクリーニングのハイスループット化も付加価値的に達成されている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、脂質標識抗体を表層提示した細胞はやや基板への吸着性が増し、同一細胞サンプルのピックアップに複数(3〜5)回のリトライが必要など課題は見えているので、更なる検討が望まれる。今後、実用化されれば、医学、薬学他、多方面の研究に応用されることが期待される。
自己免疫性皮膚疾患の自己抗原同定のための検査用キットの開発 名古屋大学
平子善章
(財)名古屋産業科学研究所
羽田野泰彦
ヘミデスモソームは、主に表皮などの上皮組織を基底膜に結び付ける働きをしている。一方、ヘミデスモソームを構成するタンパク質は、複数種のヒト自己免疫性皮膚疾患の自己抗原でもある。私は、ヒト表皮培養細胞からヘミデスモソームを豊富に含む画分(以下、ヘミデスモソーム画分と呼ぶ)を調製する方法を確立した。本研究課題は、ヘミデスモソーム画分の自己免疫性皮膚疾患診断への応用の可能性を探索する事を目的としておこなった。その結果、従来法では抗原決定が不可能、もしくは著しく困難であった複数の自己抗原タンパク質が容易に同定されることが明らかとなった。今後は、今回の成果の外部発表を精力的におこなうとともに、製品化への道を探りたい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ヘミデスモソーム画分が自己免疫性皮膚疾患の抗原同定に有効であることを示す当初り目標を達成した点は評価できる。一方、製品としての形状の決定と保存方法の確立、使用有効期間の確定、Lonza社の培養液と同様の効果をもつものの開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、診断キットが完成されば社会還元されることが望まれる。
国際的手術技術評価指標を導入した血管内手術シミュレータを用いた手術技術の教授学習支援のための定量評価システムに関する研究 名古屋大学
TERCERO VILLAGRAN Carlos Rafael
名古屋大学
押谷克己
本研究ではその血管モデルを用いて「体内組織の尊重、 手術時間と術中動作、 計測器ハンドリング/技術、 手術手順、 手順の流れ、 両手の器用さ」を定量評価し、 GRITSを導入した評価システムを開発するのが目的である。その為に、 血管モデル用ヒューマン・インタフェースとビジョンシステムの開発および統合を行った。 続いて評価システムのユーザ調査を行って、手術技術の未熟者と熟練者の定量測定を出来ました。さらに、血管内手術のデバイスの定量的な評価を出来ました。本研究の成果を用いて血管内手術及び他の分野のために新しいシミュレータを開発するのは可能に成った。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。 特に、血管モデル用ヒューマン・インタフェースとビジョンシステムの開発および統合を行い、 続いて評価システムのユーザ調査を行って、手術技術の未熟者と熟練者の定量測定を行った当初の目的を達成している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、研究開発期間中ファイン・バイオメディカル有限会社がこの研究成果を評価したが、実用化には至っていないので問題点の改良が必要と思われる。今後、技術課題は明確になっているのでさらなる研究の推進が望まれる。
血液の凝固付着を抑制する冷却電気メスチップの最適設計・加工法の探索 名古屋大学
梅原徳次
名古屋大学
押谷克己
血液凝固付着を抑制した電気メスチップとしてペルチェ素子で先端を65℃以下に保持する方法を提案、試作し、チップ表面への血液の凝固付着を観察し、その有効性を確認した。具体的には、冷却が無い場合は、60秒後に先端温度が120℃になる条件において、冷却により60℃以下に保つことが実証された。これにより表面温度が高精度で制御可能であり、かつ水冷パイプが不必要な新しい電気メスチップの可能性が示された。また、プレス加工による電気メスチップ製作の可能性も示されており、これらの基礎研究の結果に基づき今後企業との共同研究により実用化を目指すことが有効と考えられる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、血液凝固付着を抑制できる電気メスチップとして、ペルチェ素子で先端を冷却する方法を提案・試作し、模擬実験でその有効性を確認し、冷却が無い場合に高温になる条件において、冷却により60℃以下に保つことを実証している点は評価できる。一方、模擬実験における発熱量・冷却量と実際の電気メスチップにおける発熱量・冷却量との間の定量的関係が明確でなく、本研究で得られた条件によって、表面温度を高精度に制御できるかは不明であり、実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、課題の焦点を絞り込むことが望まれる。
単一細胞の付着力計測用ナノデバイスの開発 名古屋大学
福田敏男
名古屋大学
押谷克己
細胞のサイズはミクロンスケールの微小なものであり,細胞の構成要素であるタンパク質などはナノスケールサイズである.したがって,単一細胞を低侵襲かつ構成要素レベルで評価するためには,ナノスケールの細胞解析技術が必要である. 本プロジェクトでは,細胞の活性と関係する細胞の付着力を定量的に計測するための新たなナノパター型ナノツールを作製した.実際に,環境制御型電顕内ナノマニピュレータへ装着し,単一細胞の付着力を計測することに成功した.
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、自己検知型カンチレバーを用いた細胞の付着力計測が実証されており、カンチレバーや力計測のためのブリッジ回路などは汎用技術であることから、技術移転へのハードルは低いと思われる。さらに細胞へのダメージを抑えるためのカンチレバー先端部の形状のなど、細胞を扱う上で顕在化する技術課題にも留意され検討されている。一方、技術移転の観点からは、細胞解析時間の短縮化による細胞ダメ−ジ低減と低コスト化・高速化による実用化が望まれる。今後は、細胞の付着力の計測をベースに、細胞の特性、活性状態の評価など幅広い研究機関との連携ステップへとつながることが期待される。
頚部筋電位制御ユニットを用いた音声障碍者用発声補助デバイスの開発 第一工業大学
大惠克俊
名古屋大学
押谷克己
本研究開発は、発声障碍者のQOL向上を目指した発声補助用デバイスの実現を目的とする。これまでに、形状記憶合金を用いた小型スピーチバルブ開閉機構用アクチュエータの試作と動作試験、小型発声補助用ポンプシステムに用いる小型圧電ポンプの入手、気流導入部の流路抵抗低減型カニューレの試作および、ポンプシステム用流路の設計、試作を行った。さらに有限要素シミュレーションソフトを導入し、流路やスピーチバルブ本体の設計最適化の方針について検討した。また、制御パラメータを容易に変更可能な制御ユニットを試作した。研究開発目標の現状での達成度はおよそ60%であると考えられ、今後はそれぞれの機構の最適化を進める必要がある。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。研究責任者の職場の異動の影響で、積み残し課題も多く、有限要素シミュレーション関係作業が遅れているが、形状記憶合金を用いたバルブ開閉機構の小型化、最適流路設計、カニューレ試作、制御ユニットの開発等は実現されており、ある程度目標は達成できている。また、学会における実機の展示等、技術移転につながる研究成果は得られているが、残念ながら特許出願は予定されていない。一方、技術移転の観点からは、積み残しの課題も多いが、スピーチバルブ、ポンプユニット、制御ユニットに関する具体的検討課題や、筋電位制御プラットフォーム化に関する長期的展望も示されており、実用化へ向けて的確に検討されているものと考えられる。喉頭癌や神経機能系疾患だけではなく、手術後や高齢化に伴う嚥下障害等の患者等への適用も考えられ、社会還元の期待は大きい。企業も興味を示しているようであるので、今後は、頸部筋電位制御ユニットを用いた音声障碍者用発声補助デバイスの構成要素に関する具体的研究開発項目や、筋電位制御プラットフォーム化に関する長期的展望についても検討を行い、技術移転につながることが期待される。
高齢者の排尿ケアマニュアル:診断と対処のためのiPad用ソフトの開発 名古屋大学
後藤百万
名古屋大学
石山慎一
病院、老人施設、在宅において、排尿障害を有する高齢者に対して、介護・看護者のレベルで排尿障害タイプを診断し、診断に合致した適切な対処法を選択することができる「高齢者排尿ケアマニュアル」をiPad上で展開できるソフトとして開発した。特に、排尿障害診断ツール(排尿チェック票)は13項目の排尿状態を観察し、その有無をチェックするのみで自動的に排尿障害タイプを診断できるもので、これをiPad上でタッチ入力することにより自動診断できるシステムを作成した。また、排尿日誌をiPad上で記録し、データをグラフ表示できる有用なシステムも開発した。本ソフトにより介護・看護の現場で簡便に使用できるツールとして、従来に例のないインターフェースを提供できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目的である排泄ケアマニュアルをiPad上で動作するソフトウェアを開発し、ベッドサイドで利用できる携行型ツールとして開発することができた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、iPad用ソフトによる排尿障害診断ツ−ルの有用性(感度、特異性など)の検討が必要である。排泄ケア用のソフトウェアは、ソフトウェアの開発販売会社に技術移転できると考えられる。本ツールをどのような方法で周知し、販売、活用を図り市場を確保できるかが今後の課題と思われる。
可溶性シグレック-7 によるナチュラルキラー活性化と転移抑制の2面的癌治療法の開発 名古屋大学
古川鋼一
名古屋大学
石山慎一
シグレック7認識糖鎖構造に特異的に結合し、Siglec-7を介する抑制性シグナルをブロック可能な可溶性シグレック7を、まずIgG Fcとの融合タンパク質として発現させた後、プロテアーゼ3Cにより切断し、不必要なFc部分をプロテインAカラムにて除去した。その結果、概ね2mgの活性タンパク質が得られた。一方、RT-CESシステムを用いて、大腸癌細胞株DLDに対する簡便なNK活性測定法を樹立して、前述の可溶性シグレック7の添加の効果を観察した。その結果、シアル化タンパク質発現DLDに対してはNK活性の低下が認められたのに比して、この系に可溶性シグレック7を加えると、NK活性が元のレベルに回復することが判明した。現在、実験腫瘍に対するin vivo 効果を観察するための系を構築中である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標のシグレック−7の大量調製にほぼ成功しており、次の目標の生物活性の評価のうち、NK細胞の回復効果までは検討している点は評価できる。一方、技術移転の観点から、ガン細胞の転移阻害効果の検証には至っていないので、実験系の再構築など基礎研究によるその効果の実証が必要と思われる。今後は、がん転移抑制効果の検証も含め、基礎研究による効果の検証を継続した後に、シグレック−7を使った新しいガン免疫治療の提案を期待したい。
安全・快適な“摘便(てきべん)バッグ”の開発と使用効果の検証 名古屋大学
前川厚子
名古屋大学
石山慎一
"摘便"という排泄援助法は、自力で大便の排出が困難な患者に対して医師の指示の下に看護師等が 実施する医療処置であり、訪問看護や高齢者介護施設の業務の中で日常茶飯事的に行われている。排泄ケアは、羞恥心の問題とともに、肛門出血の危険性や心身の負担が大きいという問題を伴うが、生命維持のためには必要不可欠な援助であり、下部消化管通過障害や麻痺のために自力で排便できない患者の場合は摘便が必須である。 従来の摘便方法は、手袋をはめて肛門から指を挿入し、結腸に溜まった便塊をほぐして掻き出し、その便を紙おむつにぬぐいつけるという方法であり、臭気と感染対策が不可欠と考えられた。そこで、"摘便バッグ"の開発に至った。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。当初の目標は安全、快適な「摘便バッグ」の使用法を明らかにするとともに、安全性と有用性を評価することであったが、企業との連携もできており研究開発ステップにつながる可能性はある。今後は、摘便バッグのコストをどれだけ下げられるかに向けた技術的検討も必要と思われる。
閉鎖系培養法による脂肪由来間葉系幹細胞の新たな培養技術開発 名古屋大学
尾崎武徳
名古屋大学
石山慎一
我々は強力な免疫調整能・成長因子分泌能を有するLASCの培養方法を確立している。さらにこのLASCを用いた臨床検討を計画中である。臨床検討を行うにあたり、無菌的に効率よく細胞を増殖させることが求められる。我々は現在ファイブロネクチンコーティングした培養dishを用いて培養を行っているが、より効率性、安全性を高めるために閉鎖系培養の開発を目指している。そこで本実験においてビーズを用いた3次元培養を試みた。また、3次元で培養した際に細胞の性質変化が起こっていないことを確認するために、LASCの評価項目についても新たな定義の確立を目指し、ELISA、FACSを用いて新たなLASCマーカーの検討を行った。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。本課題は意義あるものと考えられるが、当初の目標が数値化されておらずはっきりしないため、その達成度を判断しにくい。3次元培養における細胞性質の変化についてFACS解析で判定できる結果が得られたものの、ビーズを用いた3次元培養が成功せず、当初の目標が達成されなかった。ただ、技術移転に向けて、表面構造が異なるビーズを複数種類用いて3次元培養を行い、ビーズへの細胞の接着性、増殖性、トリプシン処理によるビーズの融解性を確認するなどの研究課題が明確になった。今後の研究開発計画は、3次元培養LASCの安全性、有用性を検討し、新たな細胞療法を確立するなど的確に検討されているが、定量的データを出し得る具体的アプローチを探る必要はある。脂肪由来間葉系幹細胞は再生医療への応用の可能性が高く、もし、LASCの閉鎖系培養法に関する正確な知見をまとめられれば、臨床応用され、社会還元に導かれることが期待できる可能性はある。
脂肪由来幹細胞の凍結保存システムの開発 名古屋大学
安田香
名古屋大学
石山慎一
近年、再生医療研究が世界中で進められ、その革新的な技術には次世代を担う治療法として期待が大きいが、現時点では臨床治療での適応は限られている。我々は、採取時の侵襲が少ない脂肪から間葉系幹細胞(MSC;Mesenchymal stromal cell)を得、細胞増殖速度、再生促進能、免疫調整能に非常に優れた低血清培養システムを開発した(低血清培養法:特願2004-201615, 国際公開第2006/006692)。この研究の目的は低血清培養による脂肪由来間葉系幹細胞の凍結保存システムを新たに開発することにより、治療の適応を自家移植に加え他家移植、慢性期に加え急性期疾患へと広く拡大することである。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に細胞治療の適応を自家移植に加え他家移植、慢性期に加え急性期疾患へと広く拡大するための凍結保存システム関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、研究成果は概ね着実に得られており、細胞を利用する再生医療への適用が期待される。一方、無血清化を実現することは、不確定な要素を除外できるとともに、同時に技術の安定化につながることから、その取り組みは重要と考えられる。
転倒予防のための膝関節屈曲アシストサポータの開発 名古屋大学
太田進
名古屋大学
石山慎一
本研究の全体目的は、先行研究で変形性膝関節症症例と脳卒中片麻痺症例において歩行改善した膝関節屈曲アシスト装具を一般高齢者の転倒予防用に再開発し、実際に応用してその効果を検証することである.まず、本期間においては、3種類のサポータとは1)編み込みにより膝屈曲をアシストするサポータ、2)ゴムチューブを用いたもの、3)形状記憶合金を用いたものの開発であり、開発は完成した.その後、健常成人7名を対象に装具を付けない状態と1-3の状況で、歩行解析を行った.個々の特徴があり、膝屈曲はサポータ1、フットクリアランスはサポータ2、足関節の蹴り出しに関しては、サポータ3が効果的であった.装着感に関しては、サポータ3が最も良い結果であった.研究目的は、ほぼ達成され今後は実際の高齢者へ応用が必要となる. 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも先行研究の膝関節装具をベースに、転倒予防として一般高齢者に応用可能な簡易で膝関節屈曲アシスト性能が良いサポータを開発する技術に関しては評価できる。一方、試作は予定通り行われているが、被験者は本来の対象の高齢者ではなく、健常者で、結果についても統計的有意性など客観的尺度からの記述が見られず、目標に対して十分な成果を達成できたと言いがたい。高齢社会の進行にともない重要な支援テーマの一つであり、社会的な潜在ニーズは高いものと思われる。今後の応用展開が期待される。新たな発想を得た点は評価できるが、高齢者での検討と定量的評価をまず行うべきと考える。本格的な技術移転の可能性を高めるには更なる検討が必要と考えられる。
Bio-nanocapsuleを応用した血管炎症部位への積極的ドラッグデリバリーシステムの開発 名古屋大学
坪井直毅
名古屋大学
石山慎一
本研究は、炎症局所細胞や、遊走白血球上の表面分子に対するモノクローナル抗体と薬剤封入バイオナノカプセル(BNC)を結合した抗体結合BNC(BNC-αIgG)を用いて、炎症部位特異的なドラッグデリバリーシステムを構築することを最終目標とする。本期間では、目標に向けた初段階として、血管内皮細胞特異的抗E-selectinあるいは白血球特異的抗CD11b抗体結合BNC(Cy3標識)の炎症部位への効率的到達をマウス腎虚血再還流モデルで検討し、BNCの炎症部位特異的到達を示唆する結果が得られた。また薬剤非封入BNC-αIgG自体は疾患活動性に影響を及ぼさないことが証明された。今後投与BNCの炎症組織における局在について、免疫組織学的にさらに詳細な検討を予定している。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に治療薬剤を封入した細胞膜親和性の高いbio-nancapsule(BNC)と、炎症血管あるいは細胞分子に対する特異的抗体とを結合させることで、炎症血管への積極的、特異的なdrug delivery systemに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、BNCを用いるDDS技術は実用的な技術であるが、残念ながらこの研究期間中には所期の目標が達成されてないなどで研究内容の見直しが望まれる。潜在性が高い技術であり可能性を具現化する研究が期待される。
不凍液処理の不要な蛋白質結晶の急速凍結装置 名古屋大学
渡邉信久
名古屋大学
野崎彰子
近年の蛋白質結晶構造解析では、創薬ターゲット等結晶化が困難な微小結晶に放射光X線を照射する.高輝度X線は結晶に損傷を与えるため、液体窒素温度で測定する.通常は不凍液処理が必要であるが、処理条件の確立には困難な試行錯誤を伴う場合が多い.本開発研究では申請者が保有するダイヤモンドアンビルセルによる蛋白質結晶加圧技術を活かし、比較的安価かつ安全で、不凍液処理が不要な蛋白質結晶凍結技術を開発し、大手創薬企業等の研究を補助する実用ツールとすることを目的とした.蛋白質結晶を試作装置内にマウントした後高圧状態に保持し、そのまま液体窒素中に浸漬して急冷することで結晶にダメージを与えずに凍結可能なことを確認した. 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にダイヤモンドアンビルセルによる結晶加圧技術を活かし、比較的安価かつ安全で、不凍液処理が不要な蛋白質結晶凍結の技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、試作した装置(DAC)は、高圧下で凍結剤無しにタンパク質結晶をアモルファス氷に埋め込むことができたが、凍結状態のまま装置からタンパク質結晶を取り出すことができていないが、装置のデザインの改良点が明らかになっている.実用化されれば、開発中の装置+周辺機器のセットとして、商品化できる可能性は高い。
次世代モノクローナル抗体作製法を用いたレプトスピラ症高感度診断法の確立 三重大学
冨田昌弘
株式会社三重ティーエルオー
齋木里文
高性能モノクローナル抗体に基づくレプトスピラ菌高感度検出法を確立し、培養法と比べ、検出時間を数週間から数時間の1/100に短縮することを目標とした。研究開発可能期間と三重県下の浸潤状況を鑑みてL.Hebdomadis (秋やみB)の1血清型に絞って研究を行った。ホルマリン固定したレプトスピラ菌体(秋やみB)を用いてマウスを免疫化後、眼窩静脈叢から得られた抗血清を利用してレプトスピラ生菌との顕微鏡下凝集反応(MAT法)に基づき検証したところ、抗体価の上昇が認められた。そこで、次世代モノクローナル抗体作製法を用いて融合実験を行った。その結果、目的の抗体産生ハイブリドーマの作製が示唆された。今後は、その効率をさらに高め、抗原抗体反応に基づく高感度診断法の確立に展開したい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。高感度診断法の確立に至らず、その原因としては次世代モノクローナル抗体作製法の一番重要な融合実験が不調に終わっていることが推察される。一方、B細胞とミエローマの融合手法は再検証が必要であり、その再検証課題も提示されているが、界面活性剤の可溶化が原因となると検証ポイント(抗原の精製からマウスへの免疫効率検証および融合実験の再検証まで)は非常に広範であると思われる。今後、本方法の最大の特徴は、従来通りのモノクローナル抗体単離スクリーニング手法を簡便にする目的と推察できるので、根本的な手法を再検討することが望まれる。
ハイスループットin vivo有毛細胞イメージングを用いた難聴治療薬の探索 三重大学
西村有平
三重大学
伊藤幸生
難聴は最も頻度の高い身体機能障害であり、その治療法を開発することは極めて重要な社会的意義を有する。難聴には様々な原因があるが、有毛細胞の障害は、老人性難聴や薬剤性難聴における重要な原因であり、その機能を保護することは有効な難聴治療法のひとつとして期待されている。本研究では、我々が独自に開発した有毛細胞イメージング剤と、ヒト疾患モデル動物としての地位が確立しつつあるゼブラフィッシュ、さらにイメージング剤で染色されたゼブラフィッシュの有毛細胞を高速かつ自動で撮影する顕微鏡装置を組み合わせたスクリーニングシステムを構築し、有毛細胞保護作用を有する薬物を同定した。今後、この薬物の有毛細胞保護作用の分子機構を解析し、その薬理作用を解明することにより、さらに優れた難聴治療薬の開発へと展開する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に有毛細胞染色イメージング剤と、ゼブラフィッシュを生きた状態で自動に撮影できる顕微鏡装置を組み合わせることにより、有毛細胞保護作用を有する薬物を簡便、高速かつ高精度に同定する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、ゲンタマイシン、ネオマイシンの評価に有効な染色剤を各々見出し、ゲンタマイシンの有毛細胞障害を保護する2つの薬物を発見した。またネオマイシンの有毛細胞障害に対して既報のタクリンが保護作用をもつことを確認している。ただ、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用をもつ医薬品10種の細胞障害保護作用に関する研究結果が報告されていない。
新しい腫瘍血管新生阻害薬ターゲットの開発研究 三重大学
田中利男
三重大学
伊藤幸生
我々が独自に見出した新しい腫瘍血管新生阻害薬ターゲットについて、モデル動物ゼブラフィッシュ血管内皮細胞に加えヒト血管内皮細胞においても重要な役割を果たしていることを明らかにし、ヒト病態への外挿性を確立することを試みた。すなわち種差を超えた相同遺伝子の類似した機能を、証明した。
具体的には、新規腫瘍血管新生ターゲット候補であるTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の培養ヒト血管内皮細胞での発現レベルの定量と、ヒト血管内皮細胞における遺伝子機能を解析した。すなわちモデル動物だけではなく、ヒト臨床でも機能していることを検討し、ヒト臨床応用への可能性をさらに明らかにすることにより技術移転力を強化した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に現在の抗腫瘍血管新生治療は、腫瘍血管の新生を促進する血管内皮細胞増殖因子などの活性に対する拮抗作用に主な焦点を当、新しい腫瘍血管新生阻害薬ターゲットとして2種類の遺伝子の有用性の確認を行う技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、TRIB2とZMYND8発現の抑制とそれに伴う管腔形成の抑制を確認し、ヒト血管内皮細胞への外挿性の確立は達成。また、ゼブラフィッシュの生理的血管新生と腫瘍血管新生に対するTRIB2とZMYND8のアンチセンスオリゴを用いた検討で、病態選択的な血管新生抑制の可能性を確認しており、技術移転につながる可能性が期待される。次ステップとして製薬企業との連携でさらなるターゲットバリデーションや低分子化合物探索を行うことが望まれる。
3次元乳房超音波画像を対象とする腫瘤病変検出支援システムの構築 三重大学
中山良平
三重大学
加藤貴也
本研究の目的は、3次元乳房超音波画像をコンピュータで解析することにより腫瘤病変の可能性のある箇所を自動的に検出し、その位置を医師に提示する検出支援システムを構築することである。本研究では、円形・線状パターン検出のための2次元フィルタバンクを3次元に拡張し、選択的に腫瘤病変のような塊状構造を強調することを可能にした。また、左右乳房の差分による非対称組織(腫瘤病変)の強調アルゴリズムも追加し、2次元フィルタバンクを用いた従来法より約20%検出精度を向上させることに成功した。目標とした検出率85%以上(偽陽性数1.5個以下/画像)にわずかに到達できなかったが、検出率82.6%(偽陽性数1.87個/画像)を得た。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、円形・線状パターン検出のための2次元フィルタバンクを3次元に拡張し、選択的に腫瘤病変のような塊状構造を強調することを可能とし、左右乳房の差分による非対称組織(腫瘤病変)の強調アルゴリズムを追加することにより、2次元フィルタバンクを用いた従来法より約20%検出精度を向上させた点は評価できる。一方、腫瘤病変の検出率85%以上(偽陽性数1.5個以下/画像)の目標を達成するため、今後の検討として、新たに乳腺の歪などから等エコーを呈する腫瘤病変を強調するアルゴリズムを追加する必要があると思われる。今後、実用化されれば社会還元する可能性は高いと期待される。
外科術中診断のための腎腫瘍の可視化イメージング技術の開発 三重大学
寺西克倫
三重大学
松井純
腎細胞癌の摘出手術において微小な癌組織を抽出する診断技術の開発を目的とする。本支援プログラムでは、人為的にラット腎臓に腎上皮細胞腫瘍を発症させ、新規近赤外蛍光化合物の静脈投与および腎組織の近赤外蛍光可視化イメージングを実施し、腎腫瘍のイメージングによる抽出技術を開発することを目標とした。結果として、静脈投与後に選択的および速やかに腎移行する研究責任者が開発した近赤外蛍光化合物を用い、腎細胞癌の前ステージである前腫瘍および腫瘍を1mm以下の解像度で可視化イメージングできることを見出した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。人為的にラット腎臓に腎上皮細胞腫瘍を発症させ、新規近赤外蛍光化合物の静脈投与および腎組織の近赤外蛍光可視化イメージングを実施し、腎腫瘍のイメージングによる抽出技術を開発する目標に対して、腫瘍と正常組織を1mm以下の解像度で同定すると言う数値目標には届いていないが、腫瘍部位のイメージング可能性は示した。また、固定染色法を含めて開発済みの近赤外蛍光物質の応用可能性は示された。しかし、腫瘍モデルラットの作成に手間取り、評価実験に至っていない状態であり、引き続き残された研究目標を達成するための評価実験を継続している段階である。今後の展開について、完了報告書には具体的な記載はなかったが、腫瘍可視化に関するいくつかの手法との競争になると考えられる。
生体計測技術を基盤とした起立訓練ロボット用制御手法の開発 鈴鹿工業高等専門学校
打田正樹
鈴鹿工業高等専門学校
澄野久生
片麻痺患者の自主起立訓練において、患者は健側を主に利用し起立してしまうため、麻痺側の訓練にならないことが多い。その結果、健足への負担が大きくなり、日常生活に大きな障害になる。よって、麻痺側の回復が可能な起立訓練ロボット実現を目指し、本申請では生体計測装置によって起立訓練時のデータ計測を行うことで、起立訓練の手法を定量的に解明し、訓練ロボットに必要な構造と制御手法を明らかにする。本申請によって、生体計測装置を製作し、計測を行うことで、起立訓練ロボットに必要な構造(機能)、制御の基本アルゴリズムを明らかにすることができ、起立訓練ロボットを製作するための有用な知見を得ることができた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。片麻痺患者の規律訓練を目指す訓練ロボットの実現するため、設計上必要なデータ取得を行った。特に、最初に作業療法士の訓練時の特徴を明らかにしたことは評価に値する。その上で、生体計測装置を製作し、有用なデータを取得していることから、当初の目標はほぼ達成できたと判断できる。試作した装置で得た知見は、起立訓練ロボットの設計に有用である。一方、技術移転の観点からは、特許申請の準備も進め、実用化するための課題(患者と装置の固定法など)が具体的に指摘されており、足固定位置の調整が重要であることを装置の設計に加えるなど、今後の方針は明らかになっている。
F-DOPAを用いた19F MRIによるパーキンソン病の画像診断法の開発 滋賀医科大学
柳沢大治郎
滋賀医科大学
岡崎誠
本研究では、7テスラ高磁場MR装置を用い非放射性フッ素(19F)を標識したDOPA(19F-DOPA)を標的としたフッ素核磁気共鳴画像法(19F-MRI)によるパーキンソン病の画像診断法の開発を行った。片側のドパミン神経が傷害されている半側性パーキンソン病モデルラットにbenserazideを前処置後に19F-DOPAを投与して19F-MRIによる画像化測定を行った。その結果、5-10時間の測定を行うことにより、正常側において19Fの信号が認められた。本研究の結果は、高磁場MR装置を用いたパーキンソン病の画像診断法開発の重要な基礎データを提供している。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、19F−DOPAの取り込み量の差を利用して、ドパミン神経傷害を19F MRIによる画像で評価することに成功している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、臨床応用に関して更なる高感度化が不可欠であり、パーキンソン病の画像診断などでの実用化が望まれる。新たな装置や測定方法の改良を含め、今後の研究の展開が期待される。
姿勢矯正による膀胱頚部の挙上技術の開発 滋賀医科大学
岡山久代
滋賀医科大学
岡崎誠
分娩や加齢により女性の骨盤底筋群は弛緩し、骨盤内臓器下垂や腹圧性尿失禁の原因となる。我々は下着を用いた予防・改善効果について研究を進めてきたが、本課題では、これまでの下半身用に加え上半身用の下着も応用し、姿勢矯正による膀胱頚部の挙上効果について検討した。24〜57歳の女性50名を対象に上半身用、下半身用、上下の下着着用時での膀胱頚部位置および内子宮口位置をMRIにて撮像し比較した。結果として、上下の下着着用時において膀胱頚部位置及び子宮口の位置に有意な拳上を認めた。今後は、今回の研究成果を踏まえて、骨盤内臓器下垂や腹圧性尿失禁の予防・改善に特化した下着の新規開発を予定している。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、膀胱頸部の挙上に有効な姿勢矯正力・方向・部位の探索については成果が得られている。一方、技術移転の観点からは、被験者不足で検証できなかった姿勢と骨盤内臓器下垂の関連および膀胱頸部位置の関連の評価、また、姿勢矯正下着による効果を得ているが、どの程度位置が改善すればよいのか定量的な議論がないので、開発する下着の性能を明確にすることが必要と思われる。今後、製品が市場にでれば社会還元に導かれることが期待される。
癌再発・転移モデルラットを用いる免疫抑制T細胞選択吸着カラムの抗腫瘍効果の確認 滋賀医科大学
小笠原一誠
滋賀医科大学
江田和生
癌治療に使える体外循環カラムが目標であるが、臨床に近い動物モデルで検証した。今回は新たに開発した皮下に接種した癌細胞が肺転移する担癌モデルラットを用いて、免疫抑制T細胞選択吸着カラムの抗腫瘍効果を確認した。本カラムで治療しなかったラット群に比べ、生存日数が2倍以上に延長したラットが70%に上り、完全治癒したラットも40%認められた。一方、本吸着材の原材料のポリエステル繊維のみを充填したカラムを用いた場合は逆に生存期間が短縮したことから本カラムの有用性が確認できた。
この吸着材をin vitroでヒト末梢血を用いて、免疫抑制T細胞選択吸着性を評価したところ、ラットの血液と変わらない選択吸着性を示した。今後、関心のある企業との共同研究等を検討する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に血液中の免疫抑制T細胞の一種、TGF−β発現T細胞を選択除去する吸着材を見出したので、これを癌の治療に応用展開することを目指す技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許申請の価値を高めるための方策として、ヒトへの応用を視野にいれたカニクイザルでの安全確認と関連企業との共同での研究応募などが視野に入れられている。興味を示す企業との共同研究申請や学会発表や論文投稿により技術の喧伝を試みるなど、産学共同研究開発の具体性が高まっている。肺転移をきたした再発がんや進行癌への新しい治療法の提案であり、進行技術の社会還元は極めて意義が大きいものと期待される。
高感度迅速なエンドトキシン測定法を用いた透析液の新しい品質管理手法 滋賀医科大学
小幡徹
滋賀医科大学
江田和生
高感度迅速なエンドトキシン測定・ESP法を開発した。従来法の測定限界は1EU/Lであるが、ESP法は0.005EU/Lまで90分前後で検出する。 オンライン透析など高い清浄度を必要とする透析の品質検査への適応を検討した。とりわけ現場で測れることを目標に試料の採取方など、従来法と比較しながら行った。一方現状では施設の汚染を検査する培養法は、結果を得るのに1週間掛かり、直接の患者利益につながらない。ESP法との比較を行い、培養法検査の結果と比較しながら現場で結果の出せるESP法の有用性について実証することを目指した。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に培養法とESP法の比較を行うことで、即時的な結果の得られるESP法が、培養法の代わりになりうるということを検証することによる透析液の新しい品質管理手法についての成果が顕著である。技術移転の観点からは、当初の目標はほぼ達成されており、企業との共同開発も期待される。全国に20万人いると言われる透析患者の透析液の安全管理は国民的関心事であり、重要である。透析液は透析施設で確保している現状であり、従来のエンドトキシン測定法に替わる新技術として期待される。
FCS測定を応用した超高感度蛍光1分子サイズ判定法の開発 滋賀県東北部工業技術センター
白井伸明
滋賀県工業技術総合センター
川崎雅生
微量のサンプル中の蛍光分子を超高感度に検出する蛍光相関分光(FCS)測定装置を応用した1分子検出技術の展開として、オリゴマー核酸程度を対象とした分子サイズの違いを判定するための研究開発を実施した。これまでに、FCS測定装置の共焦点光学系および測定条件を検討し10−10M以下の低濃度で蛍光分子がμmサイズの微小観察空間を通過する時系列情報を測定し、ノイズを極限にまで低減した計測条件を確立した。次に蛍光ラベルした異なるサイズのオリゴマー核酸を調製し、1分子蛍光測定の改良、新しいデータ解析手法と独自のプログラムを開発したことで10ピコMレベルでも分子サイズ判定が可能となった。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に蛍光相関分光(FCS)測定装置を用いて、少量のサンプル中の分子からの蛍光情報からサイズ判定を可能とする技術の完成という当初の目標は達成されている点に関しては評価できる。また、本研究開発課題は、既にあるFCS装置に対して分子サイズ判定に対する新しいアルゴリズムの開発し付加することが主であり、実証後の技術移転は比較的容易と考えられる。一方、技術移転の観点からは、今後の研究開発計画について、具体的な測定対象や、研究を遂行するに必要な企業との連携、研究ファンドについても言及されており、産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性は極めて高いと考えられる。ただし、既に数多くの検体検査手法がある中で、本計測法の特性を真に発揮させるための検査対象を特定することや実用的課題を着実にこなすことが必要である。今後は、臨床応用に発展させるために、さらに精度を高める必要があると共に、混合物サンプルの中から特定の物質の有無を確実に判定できるデータを示すことを期待する。
メッシュ状金属薄膜を利用した細菌毒素検出技術の有用性の検証 長浜バイオ大学
長谷川慎
表面修飾を施したメッシュ状金属薄膜を用い、その赤外透過特性の変化を計測することで、表面の重量変化を定量的に測定する技術を確立し、新しいバイオセンサーデバイスを創出することを目標とする。本研究では細菌毒素を検出対象としてフィージビリティー研究を行った。センサー基板となる金属薄膜表面に機能を持つ自己組織化膜で被覆し、そこに細菌毒素を含む複合物質を吸着させることで、標的タンパク質に起因するシグナルを得ることができた。今後、センサー表面や測定条件の改良によりバイオセンシングデバイスとしての実用性を向上させる。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、毒素受容体を担持させたナノ微粒子を用いて、イオン交換能を有するセンサー基盤にコレラ毒素を濃縮させることにより赤外線透過性の変化が確認されている点は評価できる。細菌毒素を検出対象とした新規なバイオセンシングのためのデバイス開発につながる基本的な要素技術が検証されたものと判断される。一方、技術移転の観点からは、産学官共同の研究開発体制が構築されつつあるようなので、次のステップへ進めるための技術的課題を具体的に示すことが望まれる。今後、当該センシングデバイスの研究開発が加速することが期待される。
高感度・迅速で高分解能な抗体マイクロアレイスキャナーの開発 長浜バイオ大学
長谷川慎
抗体マイクロアレイとは、ガラス表面に多種類の抗体を固定し、抗原抗体反応の並列検出を可能とする分析技術である。そのスキャナー装置を試作するにあたり、本課題では検出原理としてごく微小領域の蛍光を検出できる共焦点光学系を利用し、XY軸精密モーターでガラス基板を微細移動させ、その表面の蛍光強度をスキャンするメカニズムを検証する。ガラス表面の微小領域を測定し、蛍光強度ゆらぎの自己相関解析により抗原抗体複合体のシグナルのみを分離できることから、抗体マイクロアレイの高度な集積化と迅速化を可能とする。マイクロアレイ法の特長である多検体処理や迅速性の優位性により、従来のELISA法などとの置き換えを狙う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。本課題は、既に確立されているガラス表面にマイクロアレイを作製する技術を用いて、抗原−抗体反応を蛍光検出する装置の開発のために、スキャナーの試作とモデル実験を検討したものである。当初の目的は、抗原抗体反応の並列検出技術の確立であり、その目標は達成されている。技術移転の観点からは、今後この手法を技術移転するに当たっての具体的なターゲットが示されてないので、技術的課題が明確にならなかったと考えられるが、一方で、企業との共同研究による部分も多いので、技術移転についてはスムーズに運ぶことを期待したい。今後、開発された装置がどのような方面で利用されると性能が十分発揮されるのかを明らかにして、製品化へ進まれると、技術移転につながると思われる。
操作性に優れた静脈穿刺用超音波探触子の開発 立命館大学
田中克彦
立命館大学
近藤光行
操作性の良い小型の静脈穿刺用超音波探触子の実現を目指して、本研究ステージでは基本素子の試作、評価を目標にしている。医療現場の要求仕様をもとに、中央に穿刺用貫通孔を有するリニアアレイ型探触子を設計・試作した。寒天、血管ファントム、鶏肉を用いた穿刺実験で、針先端位置と穿刺対象物の両方を同一画面上で表示できることを確認した。またヒトの頸静脈のBモード画像を得た。ブタの頸静脈に対して行った穿刺実験では、探触子の操作性は良いが、脂肪分が多くて鮮明な画像が得られなかった。以上のように、当初の目標である設計、試作、基本機能の評価の各項目を実行した。アレイ数の増加と診断画像の高精細化が今後の課題である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。膵臓穿刺探触子を血管穿刺探触子に改良展開しようとするもので、細長く、円形断面で刺入が難しい血管にも穿刺でき、その観察も容易なシステムの開発と実用化を目指す研究である。提案された構造の探触子の試作が行われ、曲面部分でも操作しやすく、血管ファントムでは針の先端が観察できることが確認されている。しかし、脂肪成分の多い組織では鮮明な画像が得られていない。分解能の向上のためには、アレイ数の増加、専用画像処理装置の開発が必要であるとされているが、専用画像処理装置については特に説明はない。探触子メーカとは既に連携が行われているが、さらに探触子の性能を向上させ、医療機器メーカとの共同研究を目指している。システムとしてはもともと無理のない目標で開発に成功したと報告されているが、円柱形状で針逃げの強い血管を対象にしているため、臨床で誰でもが実際にうまく機能させるにはさらなる工夫が求められるものと思われる。膵臓や肝臓など臓器ではなく、静脈穿刺であり、針先の逃げや針先の血管内位置制御などがうまく機能するよう工夫と精度向上が図れれば、実用化される可能性が期待される。
リアルタイム遺伝子発現イメージングシステムの開発 京都工芸繊維大学
村上章
京都工芸繊維大学
行場吉成
生命現象がRNAの多彩な機能によって制御されていることに着目し、生細胞内で機能しているRNAの「時空間的」かつ「量的」な変化をリアルタイムにイメージングするシステムの開発を目標とした。イメージングには、RNAと結合した時にのみ蛍光を発するRNA選択的蛍光性プローブを用いた。作製したプローブを用い、(1)FRETを利用したRNA検出系の構築、(2)白血病細胞中のc-fos-mRNAのin situ イメージング、(3)細胞の外部刺激に対応する遺伝子発現プロファイリング、を行った。その結果、生細胞内の対象RNAの空間的分布ならびに外部刺激に対応した産生プロファイルのイメージングに成功した。このシステムを用い、RNAを手がかりとするRNA診断法を開発する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。生細胞内のmRNA分布の2次元、3次元像解析用システムのプロトタイプを構築したことは評価できる。一塩基の違いも区別できるRNA検出プロ−ブを用いたイメージングが開発できれば、基礎研究領域では有用であると考えられる。当初目標と異なった結果が得られ、その意味で技術的課題は明確となったが、基礎的研究を積み重ねる必要がある。産学共同へ展開するのに時間を要する。応用分野をある程度絞れば、技術移転のための共同研究も考えられる。
分子プローブ型高感度Gd-MRI造影剤による腫瘍組織特異的イメージング 京都大学
木村祐
関西ティー・エル・オー株式会社
橋本和彦
これまでに、研究責任者らのグループで合成に成功した、臨床用MRI造影剤より一桁高いT1短縮能を有する高感度Gd-MRI造影剤について、腫瘍組織特異的イメージングへ向けた抗体分子導入を容易にするため、マレイミド基を導入したものの大量合成が可能かどうか検討を行った。その結果、臨床投与量 (0.1mmol/kg) 換算でマウス25匹分の投与が可能な造影剤を合成することができた。合成した造影剤のマレイミド基を介して抗原結合ペプチド(Affibody(R))を導入した新規MRI造影剤について、MRI像を撮像したところ、臨床用造影剤に比較して、同濃度でより明るい画像が取得できることが分かった。しかしながら、投与を行った坦癌マウスは体内の特定組織での蓄積は観察される前に投与2時間で死亡した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。T1短縮効果に優れたGd系造影剤をMRI画像診断における腫瘍マーカとして供するための意欲的な研究である。しかし、新規造影剤を大量合成できる可能性が示されたものの、生体適合性に問題があり、腫瘍組織集積度やコントラスト評価に関する目標が達成されていない。生体適合性の問題がクリアされない限り、次のステップへ進めない。死因特定につながる材料が不足しているため、in−vitro実験によるデータの蓄積が不可欠である。今後は、HER2抗原に対して腫瘍特異なペプチドを新たに探索する必要があるものの、その具体的な計画は不明である。
超音波振動切削理論を用いた新規歯科口腔外科用切削器具の開発 京都大学
藤村和磨
関西ティー・エル・オー株式会社
橋本和彦
高切削効率で清潔手術に使用できる歯科用切削器具を開発する目的で、超音波振動を付与した切削器具・装置を検討した。しかし歯科用切削器具は小さく、その内部に振動発生装置を付与することは難しく、機械的振動が加わるように切削装置内部に設計を行ったが、与えた振動は途中で吸収され、先端部まで到達することが出来なかった。今後、振動付与の方法を再検討し、切削器具の試作機を作製、適切な振動が加えられているかを確認した後、切削効率を比較検討する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。研究開発の実施結果については、音波振動を付与した切削器具の試作には至らず、当初の目標には達成していない。技術的な課題は具体的に述べられているが、それらをどのように克服するかについては言及が弱い。まずは企業との共同研究に頼らないオリジナリティーが必要である。目標を達成すべく努力をしたことは認めるが、結果は伴っていない。歯科用切削器具では小さ過ぎて音波振動を付与することが困難であることは当初から想定内であった筈である。結果的には構想のみで、実用化に結び付く結果は得られておらず、今後同様の研究を継続するに当たっては大幅な発想の転換が必要と考える。いきなり歯科用切削器具を対象とするのではなく、大型の工業切削器具としての試作を目的とすべきであったのではないか。今後の研究展開についても、企業と共同研究の開始を検討すると記述されているのみで、自らはどのように研究展開をしていくのか、その構想にオリジナリティーを感じ取ることができない。
食道扁平上皮癌における血中FGFRL1エクトドメインを指標とした早期発見・診断法の開発 京都大学
土屋創健
京都大学
越前谷美智子
本研究開発は、FGFRL1が食道扁平上皮癌のバイオマーカーとなりうる可能性を探索するとともに、その定量法の確立を目標として解析を行った。その結果、食道扁平上皮癌においてFGFRL1の細胞外領域(エクトドメイン)が切り出されて細胞外に分泌されること、さらにはそれらが糖鎖修飾されていることを初めて見いだした。しかしながら、Western blot法や免疫沈降法、ELISA法を用いた遊離FGFRL1エクトドメイン定量法の確立、さらにはそのためにFGFRL1のエクトドメインに対するマウスモノクローナル抗体の作成を行ったが、十分な定量性及び測定範囲を有する手法は確立されず、今後の課題となった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、食道扁平上皮癌細胞株を用いた検討で、FGFRL1の糖鎖修飾を明らかにしている点は評価できる。一方、FGFRL1エクトドメインの定量及び糖鎖構造から、食道扁平上皮癌の診断可能性を見出す手法を確立するために、技術的検討やデ−タの積み上げなどが必要と思われる。今後は、抗体の作製時のスクリ−ニング法などの工夫が望まれる。
高機能・長期生存マイクロカプセル化自己再生型膵島 京都大学
金宗潤
京都大学
越前谷美智子
成体膵から分離培養した膵幹細胞、血管内皮細胞、間質系細胞等のサポート細胞を膵島と同時にマイクロカプセル化することによって、インスリン産生機能と生存期間において従来のカプセル化膵島よりも優れた組織複合体の作成を目指した。そのプロセスで、特定の間質系細胞を純化培養する方法と、これを用いて膵幹細胞を含む上皮系細胞を増殖培養する方法を新規に考案した。また、上皮系細胞を増殖させた後、更に特定の外胚葉系細胞と共培養して組織複合体を作成することで、前者の生存率を向上させる方法を考案した。今後これらの新しい方法を特許出願し、マイクロカプセル化膵島に応用できる、さらに優れた組織培養法を開発していく予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。しかし、当初の目標は達成されていない。当初予定していた実験計画が上手く行かなかったため、新たな細胞を用いて目標達成を試みたが未達成である。マイクロカプセル化する前段の研究でとどまっており、膵前駆細胞の分化についても目標が達成されていないが、その技術的問題点を明確にしていない。企業との共同研究開発を目指し、実際にアプローチしているが、基本技術の確立のための検討が具体的且つ的確に行われているとは言えない。増え続ける糖尿病患者に対する治療法として膵島移植は有望であり、その細胞ソースが限られていることから、本研究成果によりブタ幹・前駆細胞から膵島を作り出すことができ、マイクロカプセル化により免疫拒絶を回避することができれば、その社会的意義は高く、事業化が期待できる。しかしながら、本研究の到達目標は多くの項目で達成されていず、既存特許の実施例通りにならず、方法を変更する必要が出てくるなど、インスリン分泌能を上げると云う本来の目的からズレが生じている。そのためか、問題点の把握もその解決方法についても十分に検討されていない。今後は、当初挙げられている数値目標を達成するためにどのような問題点があるのか、明らかにすることが必要である。
刺激応答性ハイドロゲル微粒子を用いた新規神経幹細胞培養法の創製 京都大学
山本雅哉
京都大学
越前谷美智子
本研究では、神経幹細胞の高効率、高収率での培養技術として、細胞毒性のない物質を添加することにより培養基材であるハイドロゲル微粒子を除去して、細胞を簡便に回収できる新しい培養技術を開発する。このため、細胞毒性の低い糖を添加することにより約6時間で除去可能であり、かつ培養に適切である直径約100μmの微粒子を開発することを目標としている。研究期間を通じて、膨潤時の直径が約55μmのハイドロゲル微粒子の作製に成功し、また、モデル幹細胞として、間葉系幹細胞を用いた細胞凝集体を作製したところ、細胞毒性のない濃度のソルビトールを添加することにより、約6時間以内に細胞集合体内部からハイドロゲル微粒子を除去できることがわかった。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。神経幹細胞の培養技術として、培養基材を除去して、細胞を簡便に回収する技術に関するものである。ハイドロゲル微粒子を作製し間葉系幹細胞を用いた細胞凝集体をソルビトール添加でハイドロゲル微粒子の除去に成功している。但し、現状では特殊な系のみであるが、除去メカニズム(ゼラチン特殊ゲルの糖添加溶解)の基本原理の解明が重要と思われる。また、ゼラチンの分子量などの条件検討や神経幹細胞の培養とその評価など2つの研究開発課題が明確になった。今後、除去メカニズム(ゼラチン特殊ゲルの糖添加溶解)の基本原理の解明を図り、この技術が多くの系(神経幹細胞等)に適用できることを確認し、明確になった問題点の検討を行うことにより、神経幹細胞の新しい培養方法としての展開されることが期待される。
皮下細胞移植部位作製に特化したポリビニルアルコールマクロカプセル化間葉系幹細胞の開発研究 京都大学
角昭一郎
京都大学
藤井永治
ラット骨髄から培養した間葉系幹細胞(MSC)を用いて、マウス用のPVAマクロカプセル化MSC(PVA-MEMSC)を作成した。in vitroの培養下でHGFおよびVEGFの放出を検討したが、有意な放出は認めず、マウス皮下移植でもカプセル化MSCによる血管新生誘導効果は認めなかった。また、糖尿病マウスへのPVA-MEMSC皮下移植後にこれと交換するかたちでPVAマクロカプセル化ラット膵島を移植したが、明らかな効果は認めなかった。ただし、PVAシートの埋め込みによって、細胞やカプセル化細胞の移植に有用な皮下スペースを容易に作成できることは確認され、各種細胞療法の移植部位として今後の展開が期待される。 当初目標とした成果が得られていない。中でも骨髄間葉系幹細胞から分泌されている血管誘導物質がカプセル化されると培養液中に放出されない点が最も重要な結果であるが、その点に関して如何なる方針も立てられていないの点での技術的検討や評価が必要である。今後は、本研究の目標が達成され移植膵島を着脱可能な皮下に埋入する技術が開発されて臨床応用されると、増え続ける糖尿病患者の新たな治療法に繋がることから本技術の開発は重要な社会的課題の一つである。しかしながら、本研究ではまったく成果があがらず、次のステップに繋がる技術的な課題等も明確にされていない。骨髄由来間葉系幹細胞が血管誘導細胞として機能しないのか、それともカプセル化技術に問題があるのか明らかにされることが望まれる。
加工性が高くナノポア径制御可能なキチン・キトサン膜の生医学材料への適用性評価 京都大学
寺本好邦
京都大学
増田亜由美
本研究では、アシルキチン/ポリカプロラクトン(PCL)ブレンドと部分分解により調製されるナノポーラス膜のプロセッシング性調査、膜の基本的なキャラクタリゼーション、および生医学材料としての適用性評価を目的とした。膜の力学特性は、成分間の相溶性とブレンド組成により幅広く制御できた。膜中のPCL成分の等温結晶化挙動の解析によって、膜内でのアシルキチン非晶、PCL非晶部、ならびにPCL結晶部の混在様式を明らかにした。これにより、部分分解プロセスと膜の微細構造との関係が明確化できるようになった。以上のように膜自体の評価についてはほぼ予定通りの成果が得られたが、生医学材料への応用について再現性のあるデータを得るためには、更なる検討が必要である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、膜の力学特性などについては、成分間の相溶性とブレンド組成などが検討・評価されてほぼ初期の目的は達成できた点は評価できる。一方、生医学材料への応用につなげるためのスキャホールド、塞栓材料、および人工透析膜への適用についての基礎的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、研究成果が応用展開された場合は 医療分野において充分に社会還元が期待できる。
筋ジストロフィー患者由来iPS細胞を用いた創薬システムの開発 京都大学
櫻井英俊
本研究開発は、筋ジストロフィー患者由来iPS細胞を用いて試験管内で病態再現を実現することで、薬剤の開発システムへと発展させることが目標である。
病態再現に向け、筋ジストロフィー患者及び健常人由来のヒトiPS細胞から、80〜90%程度の効率で骨格筋細胞を誘導する方法の開発に成功した。また電気刺激により誘導骨格筋を収縮させる事にも成功し、イメージングによる細胞内Ca2+の流入の可視化にも成功した。筋ジストロフィーにおいて細胞内Ca2+濃度の上昇は病態の第一歩であるため、Ca2+をモニターすることで創薬スクリーニングが可能になると考える。
今後はスクリーニングシステムの開発を行い、企業との共同研究を目指す。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、骨格筋細胞誘導効率を80〜90%に上げることに成功し、細胞内カルシウムイオン流入の可視化にも成功している点は評価できる。iPS細胞よりの骨格筋分化誘導システムは特許出願されている。一方、技術移転の観点からは、創薬スクリ−ニングに向けに、分化誘導された骨格筋細胞に対する薬物のスクリーニングシステムの開発が課題である。今後、正常および患者由来の細胞における細胞内機構をより詳細に評価することにより、早期に筋ジストロフィーの病因が明らかにされることが期待される。
間葉系幹細胞の薬物的機能賦活を利用した難治性血液悪性疾患に対する臍帯血細胞移植技術の改良 京都大学
三浦康生
京都大学
藤井永治
少子高齢化社会を迎えた我が国では成人における臍帯血移植の需要は増大の一途を辿っている。一方、臍帯血移植では細胞数が少ないことに起因する生着不全が臨床上の大きな問題であり、その改良は医学的・社会的なニーズである。我々は間葉系幹細胞研究の技術的蓄積を生かし、従来の方法より効率的に臍帯血から間葉系幹細胞を分離する技術を確立した。そして間葉系幹細胞の持つ造血支持能力は「培養増幅」(=細胞数を増やす)の後に、「薬物刺激」(=機能を向上する)を加えることで増幅されることをin vitro、in vivoの実験系で明らかにした。本研究開発は1)臍帯血、2)間葉系幹細胞、3)医薬品(間葉系幹細胞を刺激する薬剤)という既存の医療資源を新しいコンセプトで組み合わせることで臍帯血移植技術の改良を目指したものであるが、コンセプトの妥当性が明らかとなり技術移転(臨床応用)の可能性が見出されたと考えられる。安全で有効な臨床応用に向けて本格的な研究開発を継続する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、臍帯血からの間葉系幹細胞を効率的に得る新規な分離・培養方法を見出し、エリスロポエチンや副甲状腺ホルモンの添加によって間葉系幹細胞による造血支持能力が亢進することを明らかにした点は評価できる。一方、免疫不全マウスを用いた臍帯血細胞と間葉系幹細胞の同時移植による検討は未実施であり、臨床応用への可能性を明確にすることが必要と思われる。今後、本技術によって臍帯血移植の成功角度を高めることができれば、社会への還元が期待される。
頭頸部がん・食道がん高危険群判別用の生体ガス分析法の開発 京都大学
武藤学
京都大学
藤井永治
本開発の目的は、難治がんである頭頸部癌や食道癌の高危険群を呼気を用いて簡便に判別し、早期発見につなげることである。エタノールの代謝産物であるアセトアルデヒドは明らかな発がん物質とされるが、吸着性が高く微量の呼気中アセトアルデヒドを安定に測定することは困難であったが、本開発を通して、終末呼気を安定かつ効率的に回収するバックの開発と小型高感度半導体ガスセンサにて迅速に微量な呼気中アセトアルデヒドを測定できることを可能にした。本研究成果が、学校教育や検診事業に取り入れられれば、血圧や採血情報と同じように各個人が難治性がん発生のリスクを自覚し、がんの予防および生活習慣の改善をすることを啓蒙でき、国民健康の維持に大きく貢献すると期待できる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。呼気採取用バッグの開発に成功しているが、具体的な性能が不明である。また、予定されていた皮膚・結膜から排出されるアセトアルデヒドの検出が行われておらず、がん患者への適用についても実施されていない。今後、頭頸部癌と食道癌の高危険群を簡易判別する体外診断法として開発を予定しているが、技術的課題については触れられておらず、今後の研究開発計画に具体性が認められない。簡便な非侵襲遺伝子判別法として期待はされる。
心不全の新規診断薬としてのproBNP測定系の確立と臨床応用 京都大学
錦見俊雄
京都大学
藤井永治
BNPの測定は現在心不全を中心とする循環器疾患の臨床上で必須のバイオマーカーになっているが、最近の 我々の報告を含めて、現在のBNP測定系は前駆体であるproBNPも交叉して測定している事が明らかとなっている。proBNPの増加する機序はいまだ不明である。現在のBNP測定系は有用だが、問題点もあり、その1つの理由としてproBNPの交叉が上げられる 。これを克服するためにはproBNPを抽出しないで測る測定系の構築が必須である。我々はproBNPを2つのモノクローナル抗体でサンドイッチして測定する系の構築に成功した。健常者でproBNPと従来のtotal BNPを比べたところ、健常者ではtotal BNP 中、proBNPの比率が60〜70%を占めていることが判明した。今後proBNPが高い心疾患はどのような特徴を有するのかなどを検討していく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に新しいバイオマーカーとしてのproBNP の簡便かつ迅速で精度の高い測定系を確立し、臨床病態との関係を解析し、臨床応用に結びつけることを目指し達成できた点に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、産学連携での共同研究が進行している点で実用化が望まれる。今後は、特許出願と臨床的有用性を示すことが必須である。また、コスト戦略についても吟味されることが期待される。
脳脊髄液の核磁気共鳴(NMR)計測値を用いた「急性脳症および熱性痙攣の早期鑑別診断法」の開発 京都大学
小池薫
京都大学
藤井永治
「髄液をNMR計測し、パターン認識によるデータ解析を行う」検査法が、新たな臨床診断技術となるかどうかを確認するため、本研究では「急性脳症」「熱性痙攣(複雑型)」「脳症類似の臨床症状を示す疾患群」の識別を試みた。まず、カルテを詳細に調べて「急性脳症」と「熱性痙攣(複雑型)」の臨床診断を再検討し、その後あらためてNMRデータを解析すると、両者の鑑別精度は向上した。また、「脳症類似の臨床症状を示す疾患群」は両者と異なるクラスに分類された。本法を「臨床検査法」として確立するために、検査手順(検体の取り扱い、NMR計測手順、データ解析手順、解析結果の統計学的検証)を文書化することも可能であった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に研究責任者らが開発したNMRアナライザーを小児の急性脳症と熱性痙攣などの鑑別のための臨床応用へと特化させ、その実用化のためのブラッシュアップとバリデーションを目的としており、これについてはほぼ実現ができた点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本技術は医学領域以外の医薬品開発、食品検査、植物の育種、高分子化学などへの展開などでの実用化が望まれる。今後は、更に、今回の研究成果に加えて、本技術の「脳脊髄液の質量分析計測値のパターン認識」への応用の可能性が示され、新たな研究展開されることが期待される
ヒト神経幹細胞の神経細胞サブタイプ特異的分化誘導法の開発 京都大学
武井義則
京都大学
藤井永治
幹細胞を利用した神経組織の再生医療や病態モデル開発、薬剤スクリーニングシステム開発は、先端医療あるいは新産業分野として注目されている。その実現のために、多様な神経細胞の中から特定の神経細胞サブタイプを分化誘導できる系が必要である。本研究では脳内神経細胞のほとんどを占めるグルタミン酸作動性神経細胞、GABA 作動性神経細胞を、それぞれ選択的に誘導する新たなシステムを、ヒト神経幹細胞を用いて開発した。当初の目的とした、それぞれの系で各神経細胞サブタイプが分化した神経細胞の70%を超す事に成功している。今後、特許の取得、論文発表などを通して知見を公開し、さらに研究開発を進める予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にマウス胚性幹細胞から両神経細胞サブタイプを選択的に誘導する手法をヒト神経幹細胞に利用し、ヒトの正常グルタミン酸作動性神経細胞、GABA作動性神経細胞を選択的に誘導するシステム技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、セルソーターを使わない細胞濃縮方法の開発が望まれる。特に、ヒトの場合、細胞数の確保が大きな課題となっていることから、濃縮と収率を両立する技術開発が望まれる。今後は臨床応用を想定したスケールアップによる再現性についての検討が期待される。
実践的前向調査による糖尿病性腎症のリスクマーカーの実用化 京都府立医科大学
福井道明
京都府立医科大学
羽室淳爾
モデル動物実験及びその血液検体を用いたプロテオーム解析によるバイオマーカー探索を経て、発見した幾つかの糖尿病性腎症発症リスクマーカー候補について、平成21年度JSTシーズ発掘型試験にて、糖尿病性腎症第1期〜3期各10例での断面調査を行った。その結果2種のシステイニル化タンパク質(Cys化タンパク質)が病期で有意に変動していることを確認した。
今回、Cys化タンパク質と酸化ストレスの関連に着目し、新たに4つの酸化ストレスと関連するバイオマーカーを追加測定した結果、そのうちの一つがCys化タンパク質と高い相関を示した。また、前向き調査により、今回測定したマーカーの一つが有用な糖尿病性腎症発症・進展のリスクマーカーである可能性が示唆された。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、Cys化タンパク質について病期や他のマーカーとの相関検討が行われ、腎症病期とは相関がなく他の酸化ストレスマーカーとの弱い相関が認められた点は評価できる。但し、サンプル数が各群12前後と少なく有用性を論じることは難しい。一方、他の酸化ストレスマーカーや腎症関連検査マーカーと比べ、本研究で検討したマーカーが特に有用な新たなマーカーになりうるという証拠は得られておらず、有効性を示すデ−タの積み上げが必要と思われる。今後は、技術移転を目指しさらに検証を進めることが望まれる。
宿主体内で作製する自家結合組織小口径代用血管の開発 京都府立医科大学
渡辺太治
京都府立医科大学
羽室淳爾
これまで冠動脈バイパス術や膝以下の動脈再建に用いることの出来る口径5mm以下の代用血管が開発されてきたが、実用に耐えるものは完成されなかった。我々は生体のもつ自己修復力に注目し、宿主体内で形成される自家結合組織代用血管を開発してきた。生体血管同様の物理特性を持つことがわかってきた。通常の再生医療とは異なり、細胞培養施設などを必要としないため、地域・発展途上国を含めた広い応用が期待できる。動物への自家移植モデルを作製し、本代用血管の治癒過程・安全性についての検証を行い、将来的な臨床応用を目指す。今後、動物種差・個体差などを克服するクオリティーコントロールを確立していく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、バイオチューブの自家移植実験だけでなく、他家移植実験まで行い、宿主動脈との完全一体化など予想よりも高い高価を確認している点と、イヌでの冠動脈バイパス術の施行も実施している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、より長期の実験、冠動脈バイパス術への適用を計画し、医師主導の臨床試験の実施も検討すべき時期と思われる。今後、非常に要望の多い冠動脈バイパスに適用できれば、社会貢献は非常に大きいと期待される。
リプログラミング技術を用いたテーラーメイド分子免疫療法 京都府立医科大学
松田修
京都府立医科大学
羽室淳爾
抗腫瘍免疫を賦活化するサイトカインの遺伝子を、患者由来の細胞に導入後、細胞製剤として癌患者に移植することによって、そのサイトカインの患者体内での持続的産生が得られるならば、安全で効果的な免疫療法を提供する可能性がある。本研究では、体細胞を直接、移植に適した細胞にリプログラムし、その途上でサイトカインの遺伝子を導入して移植用の細胞製剤を作成するための基礎技術を開発することを目標とした。その結果、実際に細胞製剤を高効率かつ迅速に作成し、動物に移植して生体内発現を達成する等の成果を得、我々の特許の技術を補強することができた。本研究の成果は、新しい癌治療用の細胞製剤として事業化が期待できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、マウス体細胞をリプログラミング技術により軟骨細胞へ分化させる技術については、進展が見られる点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、ヒト体細胞への応用や移植後の細胞の機能性、癌化の問題などまだ解決すべき課題は多いと思われる。今後、ヒト細胞のリプログラミング条件が見出せば技術移転の可能性も高まることが期待される。
エクソゾームの膜脂質組成を応用した癌特異的な新規DDSの開発による分子標的がん治療基盤技術の開発 京都府立医科大学
芦原英司
京都府立医科大学
羽室淳爾
本研究はがん細胞、および正常細胞のexosome膜由来の新規DDSを開発し、がん細胞特異的に導入できる新規DDS開発のための基盤技術開発を行うものである。通常のexosomeの抽出方法では大量に安定して採取できなかった。現在新たな処理法の導入にて再度検討を続けている。また、exosome中の脂質解析においては、質量分析による定量法の確立をめざし検討を行い、蛍光誘導体化とナノフロー分析を組み合わせたより高感度な脂質分析法開発を目指し、粗画分抽出物の誘導体化法の検討を進めている。in vivoにおける検討においては、造血器腫瘍の正所性モデルマウスを作製し、in vivoイメージング系でDDSの効果を検討できるシステム確立へのブラッシュアップを行っている。現在、exosome分離、脂質組成解析、等の系も確立しつつあり、引き続き検討しており、特許出願・技術移転をめざし継続中である。 当初目標とした成果が得られていない。研究責任者の異動も関連し、研究期間が限られていたため、今後の展開をみることができない。研究計画はよく練られているので、当初目標の達成に傾注することが必須である。研究成果が応用展開されれば、社会貢献は十分に期待できると考えられる。
落屑緑内障の発症機序解明と分子診断を目指したゲノム医科学研究のための生体試料の収集と臨床情報のデータベース化 京都府立医科大学
中野正和
京都府立医科大学
羽室淳爾
本研究開発では、落屑緑内障の発症機序解明と分子診断に必須な研究基盤を構築するため、臨床研究倫理を遵守しながら「生体試料の収集」と「臨床情報のデータベース化」を実施した。目標検体数(疾患群・100検体、対照群・200例)に対して、疾患群・103検体(達成率・103%)、対照群・207検体(同・104%)を収集し、全検体について末梢血・ゲノムDNA・EBウイルス感染による細胞株を確保した。加えて、検体に付随する緑内障専門医による精密診断情報、問診票情報および血液生化学検査値をデータベース化した。本研究開発により落屑緑内障の確固たる研究基盤が確立できたので、参天製薬株式会社とシーズ顕在化ステップに共同申請した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に当初提案の目標は、概ね(検体数の点で)達成された点に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、具体的に連携先があり、進展が期待され、落屑緑内障の診断などでの実用化が望まれる。今後は、多数の落屑緑内障症例が収集され、次の実用化研究のための基盤が整備されたと言える。この段階で、特許性はないが、この基盤を用いて得られるゲノム診断、創薬は、大いに特許、知財、社会還元に繋がることが期待される。
空間重なり変調による2光子励起光音響イメージングシステムの高感度化 京都府立医科大学
山岡禎久
京都府立医科大学
羽室淳爾
本研究の目的は2光子励起光音響イメージングの高感度化のために、光・音響スプリッタの開発、集音トランスデューサを利用した光音響イメージングの高感度化、光変調を利用した光音響波発生に関する原理の検証、および、それらを利用した光音響イメージングシステムの開発を行うことにある。全研究期間が終了し、光・音響スプリッタによる反射測定系による画像取得、集音トランスデューサによる光音響波検出感度約8倍の向上、光変調を用いた光音響イメージングの理論的、実験的実証、および、イメージングシステムの構築に成功した。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に2光子励起音響イメージングを医療分野へ活用するための光・音響スプリッタの開発と集音トランスデューサ技術に関しての成果が顕著である。特に、生体へのダメージを少なくするため励起光強度を小さくし、光音響波の検出感度を向上させることを目指し、近赤外フェムト秒パルスレーザーを用いた2光子励起光音響イメージング装置を試作しており実験的に変調周波数の2倍の周波数成分を用いたとき、深さ分解能が向上することを明らかにしている。
メタボリック・シンドロームの制御を目指した分子探索ツールの作成 京都府立医科大学
岸田綱郎
京都府立医科大学
羽室淳爾
褐色脂肪細胞は、食物由来のエネルギーを熱として消費する細胞である。ヒトの褐色脂肪細胞の数と機能は、肥満、糖尿病、高脂血症の患者では極度に低下している。褐色脂肪細胞の分化に関与する転写因子PRDM16を、筋細胞や白色脂肪細胞に発現させると、褐色脂肪細胞様の機能を付与できる。
我々は最近、ヒトiPS細胞から褐色脂肪細胞を分化させることに成功した。そこで本研究では、この系を用いて、PRDM16遺伝子のプロモーター領域を解析し、白色脂肪細胞等にPRDM16を誘導する化合物をスクリーニングする系を樹立する。
本研究の成果は、肥満と糖脂質代謝異常の病態を制御・予防する新しい薬剤や食品の開発に繋がるであろう。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にPRDM16遺伝子のプロモーター領域を解析し、白色脂肪細胞等にPRDM16を誘導する化合物をスクリーニングする系を樹立する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、iPS細胞から褐色細胞誘導の系からPRDM16遺伝子プロモーター等を解析し、白色細胞等を褐色細胞に転換する化合物のスクリーニング系を確立する予定であったが、期待したような系を確立できなかった。しかし線維芽細胞に3つの遺伝子を導入し褐色細胞を誘導する系を確立し、その誘導方法は特許出願が行われたなどl今後の実用化が望まれる。今後は、3つの遺伝子導入を不要にするような化合物を探索するとしているが、相当困難な過程が予想される。産学共同等の研究開発ステップにつながることが期待される。
患者の術前・術後ペア血液中遊離microRNAを用いた斬新な消化器癌診断バイオマーカーの開発 京都府立医科大学
市川大輔
京都府立医科大学
羽室淳爾
食道癌患者の術前・術後のペア血漿中の遊離microRNAを用いたmicroarray解析によって、食道癌関連microRNA(miR)の候補を選定し、validation studyによって最終候補として選択したmiR-Xについて更に検討を加えた結果、食道癌の診断スクリーニング法として極めて有用である可能性が示唆された。また、胃癌については、腫瘍動態を反映するmiRを検索する目的で、術前・術後ペア血漿に再発時血漿も加えた血漿microarray解析を行い、候補として選択したmiR-Yが非腹膜再発において高感度診断マーカーになりうる可能性が示唆された。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも消化器癌の早期診断に用いる低侵襲で鋭敏な新たな診断バイオマーカーを開発し、癌の早期発見による消化器癌治療の成績向上を図る技術に関しては評価できる。一方、 スクリーニング解析に用いた食道癌症例が3例と少ない。miRの具体的な名前が伏せられているためとか、CEAやCA19−9などの既存のバイオマーカーとの比較がないため、技術移転の可能性に関しては評価が困難であが、 既に企業との連携が実施されており、一応方向性が示されている。消化器癌は罹患率・死亡率ともに高く、診断に有用なバイオマーカーが開発されれば国民に与える影響は非常に大きいため、社会還元が期待できる。
宿主体内で簡便に作製できる自家組織心臓代用弁「バイオステントバルブ」の創出と経カテーテル大動脈弁移植への適用 独立行政法人国立循環器病研究センター 
山南将志
独立行政法人国立循環器病研究センター
大屋知子
本研究開発期間の後半(平成24年4月1日〜平成24年7月31日)でTAVI用自家結合組織心臓代用弁「バイオステントバルブ」の設計、開発を行った。3Dプリンターを用いてアクリル製の鋳型を設計、既存のステントと組み合わせることで鋳型を作製した。これをビーグル犬の皮下に埋入し約4週後に摘出し鋳型を抜去すると、自家結合組織で形成された3枚の弁葉がステント内部に形成され、結合組織はステントと強固に結合していた。今後、拍動型循環回路での耐久性評価などを行い、実験動物への心臓弁位への移植を行う予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に生体内組織形成技術を応用し、自家細胞とマトリックス成分を用いて、患者体内において自家移植臓器を設計・誘導・再生する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、知財化はまだ行われていないが、イヌ皮下に埋入した人工弁が形成され、イヌ肺動脈弁位への移植実験も行っており、技術移転に繋がる研究成果が得られている。本技術に関心を持つ企業が出現し共同研究が始まっていることから、臨床応用に向けてステップアップしていると思われる。
改変型電気穿孔法を用いた成体神経幹細胞への遺伝子導入法の確立 京都府立医科大学
野村真
京都府立医科大学
島田かおり
本研究では、成体哺乳類の側脳室下帯に存在する神経幹細胞に対して簡便かつ高率で外来遺伝子を導入できる新規遺伝子穿孔法の開発を目指した。研究期間内に、特に以下の目標を達成することに成功した。1)従来の8分の1の低電圧での電気穿孔法を確立した。2)従来の8倍の効率で神経幹細胞を含むアストロサイトへの遺伝子導入を達成できた。3)アストロサイト特異的プロモーターを組み込んだ神経幹細胞長期標識ベクターの開発に成功した。現在、こうした条件ならびに実験ツールを用いて、神経幹細胞とその系譜細胞が実際に長期標識されるかを確かめる最終実験を行っている。本研究開発によって得られた成果は、将来の技術移転とプロダクトの実用化に充分結びつくものと期待している。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、神経幹細胞への効率的遺伝子導入の最終確認はされていないが、ほぼ100%のアストロサイトへの遺伝子導入を可能とし、神経幹細胞長期標識用のベクターを開発した点は評価できる。本課題の動物実験の場合、半年の研究期間では評価が難しいと思われる。一方、技術移転の観点からは、遺伝子導入用の微小針電極など技術移転の可能性はあり、産学共同の研究開発ステップにつながり得る。今後、生体組織への遺伝子導入は応用性が高く、さまざまな分野における可能性に期待が高まると期待される。
新規蛍光プローブの創出 京都府立大学
椿一典
(財)京都高度技術研究所
伊藤哲雄
汎用蛍光色素であるフルオレセインにベンゼン環を1または2ユニット伸長したナフトフルオレセイン類を網羅的に合成し、近赤外蛍光色素としての可能性を探索した。目指すは蛍光量子収率が2%以上、発光波長が750-850nm、ClogPが適切な値にあることの三要件を同時に満たす化合物の創出である。このうち、蛍光量子収率の部分がやや未達となったが、研究を通じて見出した構造活性相関を用いて合理的な変換によって向上が可能と考えられ、目標達成に大きく近づいた。さらに官能基変換性に富む鍵中間体の合成法を確立し(特許準備中)、この鍵中間体を経由した誘導体合成を行い、さまざまな用途に適用可能な機能を持つ化合物を合理的かつ効率的に合成し、企業への技術移転を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、網羅的に化合物を合成し、深部の診断用に近赤外領域用蛍光プローブとして適するものを開発したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、目標値の1/10にとどまる蛍光量子効率をどのように改善していくかが課題であるが、着実に進めていく研究方法での解決が期待される。標的物質に選択的な結合をすることで光強度を変える指示試薬の開発も視野にあり、期待される。
大規模ランダム配列組込み技術による新規ファンクショナルスクリーニングシステムの確立と抗腫瘍作用をもつオリゴ核酸の探索 京都薬科大学
土谷博之
京都薬科大学
内田逸郎
研究責任者は、ランダム配列化されたDNAをプラスミドに効率よく組込み、大規模なオリゴ核酸ライブラリーを構築する技術を開発した。本研究課題ではこの技術により、ランダム配列化されたアプタマー遺伝子を発現するレンチウィルスライブラリーを構築し、新規ファンクショナルスクリーニングシステムを確立することを目標とした。
複数回のPCR反応を経てランダム配列化アプタマー遺伝子発現カセットを増幅し、本技術の応用によりプラスミドへ組み込んだところ、効率よくプラスミドへ組み込むことができた。得られたクローンを無作為に選びランダム部分の配列をシークエンシング解析により確認したところ重複は認められず、100万種類以上のランダム配列化アプタマー遺伝子ライブラリーの構築に成功した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、1,000万種以上のランダムアプタマーを発現させるためのレンチウイルスライブラリーを調製した点での進展があった点は評価できる。一方、企業との連携、医薬メーカーへの導出技術を目指すためには、本技術の特質である多様性をもつアプタマーライブラリーの高効率発現を生かすことを維持しつつも、応用すべき標的分子を再考されることが必須である。今後の展開に期待したい。
ポリユビキチン化蛋白質を検出する病態検査・臨床診断用キットの開発 京都薬科大学
藤室雅弘
京都薬科大学
内田逸郎
蛋白質の翻訳後修飾の一つポリユビキチン化(ポリUb化)とは、蛋白質に多数のユビキチン(Ub)分子が鎖状に重合しポリUb鎖を形成する蛋白質修飾である。一方で、パーキンソン病や、肝がん、リンパ腫等の一部の腫瘍において、ポリUb分子の異常な蓄積が検出されることから、ポリUb分子を病態マーカーとして利用する臨床検査の開発が期待されている。我々は、ポリUb分子を認識するモノクローナル抗体の作成に成功している。本研究において、作製した抗体のエピトープ解析と臨床的使用の検討を行い、生体サンプルのポリUb分子のモニタリング法の開発と臨床応用への検討を行った。今後は、本技術を用いて各種疾患の病態検査法への展開を目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。当初の目標はほぼ達成された。すなわち、9種類のポリユビキチン抗体のエビトープが決定され、いくつかの病理組織についてポリユビキチンを異なる抗体で検出できることを示し、さらにELISAシステムが開発された。ただし、ELISAの測定システムの開発に成功したが、新規特許出願には至らなかった。今後は、抗体の特徴付けをさらに進めて基盤となる知見を蓄積するとともに、蛍光抗体法により更にキットの検出方法の感度を上げる計画が検討されている。一方、既に企業からライセンス契約の打診もあり、産学共同の研究開発ステップに繋がる可能性が高まった。ELISA測定システムを臨床応用に展開する方策も検討されており、それらを経ることで研究成果の社会還元が大いに期待される。
微弱電流を駆使した核酸医薬封入人工ウイルスMENDの非侵襲的な毛包内送達による皮膚・毛髪関連疾患治療法の確立 京都薬科大学
小暮健太朗
京都薬科大学
内田逸郎
本研究は、疾患関連遺伝子wiseに対するsiRNAを封入したR8-MENDをイオントフォレシス(IP)と組合わせることで毛包内に送達し、幹細胞に導入することによって標的疾患関連遺伝子wiseのmRNA量を50%以上低下させ、ヘアレス(毛髪欠損)マウスの毛髪成長を促すことを目標としたものである。平成23年度に、siRNA封入R8-MENDは硬く柔軟性に乏しいため、IP投与による毛包内移行がリポソームほどスムーズではなく送達深度が浅いことが見出された。この点を克服するため、細胞間隙開裂を狙ってカチオン性リポソームと組み合わせてR8-MENDをIP投与を行った結果、R8-MEND単独よりもより深部に送達することに成功した。この結果に基づき、wise遺伝子に対するsiRNAのRNAi効果を検討中である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に皮膚疾患および毛髪関連疾患の治療法開発のため、疾患関連遺伝子に対する核酸医薬(siRNA)を毛包内幹細胞に送達することで標的疾患関連遺伝子の発現を特異的に抑制する治療技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、siRNAの設計と得られる活性が次のステップへ進めるための技術的課題と考えられる。今後は、核酸医薬の皮膚透過は極めて困難であり、この技術の確立のみでも重要な基盤技術であり、疾患治療・美容の両方から意義深く、今後のsiRNA導入によって技術移転を含めた更なる展開が期待される。
ナノ粒子間の蛍光共鳴エネルギー移動を利用した新規バイオプローブの創成 同志社大学
橋本雅彦
同志社大学
松井健一
本研究では、目的の生体成分が存在したときや特定の生化学的事象が誘起されたときにのみシグナルが増幅する特性を具えたナノ粒子-ナノ粒子FRETプローブの創成に取り組んだ。オリゴDNA鎖の両末端に量子ドットと金ナノ粒子をそれぞれ標識することにより、両ナノ粒子間でのエネルギー移動が誘起され、量子ドットの発光を約90%消光させることに成功した。また、本研究において作成したDNA/RNAキメラプローブは、一塩基多型や一塩基変異検出のセンサーとして十分に機能することを確認した。したがって、本キメラプローブの両末端に量子ドットと金ナノ粒子を標識することにより、より高感度かつ汎用性の高いバイオプローブへと発展していくことが期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、QDによるFRET法について90%消光を達成し、ハイスル−プット解析システムを構築する基盤技術を進展させた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、さらなる消光率の改善が技術的課題であり、当初の目標であった微粒子マイクロアレイの作成、FRETアッセイプラットフォ−ムの実現に向け更なる実用化研究が望まれる。今後、利用関係にあるQD(Quantum Dot)特許は、現在インビトロジェンの特許となっており、QD特許をどのように扱うかの留意が必要である。
眼表面ムチン誘導による新規ドライアイ治療法の開発 同志社大学
上田真由美
同志社大学
尾崎安彦
本研究開発では、申請者が見出したIL-13によるムチンMUC5ACの誘導について、その至適条件を検討し、評価系を確立した。ムチンMUC5ACの誘導のための至適条件は、IL-13の濃度を10ng/mlとし、ヒト培養結膜上皮を5%FBS、0.4mMカルシウムを添加したdk-SFM培地をもちいて、コラーゲンIコート培養ディッシュへ7日間培養するというものであった。この評価系をもちいて、10ng/ml IL-13と市販されているドライアイ治療薬ジクアホソルナトリウムによるムチンMUC5ACの誘導能を検討したところ、ジクアホソルナトリウムによるムチンMUC5ACの誘導能がIL-13によるものよりやや勝っていることが明らかとなった。 当初目標とした成果が得られていない。中でも、ヒト培養結膜上皮細胞のムチンMUC5A誘導能評価系の確立を達成した点は評価できる。一方、本研究で得られたIL−13のムチン誘導能は既に市販されているジクアホソルナトリウムと比較して弱いものであったのでさらなる検討が必要である。今後、次のステップへ進めるための技術的課題が明確でないので、新たな標的分子を探索することが望まれる。
O157集団感染の初期制圧を目指したShiga toxin迅速高感度検出法の開発 同志社大学
高橋美帆
同志社大学
尾崎安彦
本研究では、腸管出血性大腸菌汚染食材から、Shiga toxin(Stx)を高特異性、高感度かつ迅速に検出できる新規手法の確立を目標とする。まず、個々のStxファミリーに対する新規プローブとして、様々なエピトープを有する一連の抗Stxモノクローナル抗体、ならびに特異的ペプチドプローブを確立し、高感度検出のための抗体-抗体、抗体-ペプチドの組み合わせを最適化した(達成度80%)。さらに本ペプチドプローブを用いて、Stx B-サブユニットとの相互作用を化学発光により特異的かつ高感度に検出する、本研究の根幹となる系を確立した(達成度60%)。今後、ファミリーならびにバリアント特異的Stx検出系として確立し、汚染食材への応用(達成度10%)を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、Stx2B−サブユニットと特異的ペプチド性化合物の組み合わせを用いて、 Stx高感度検出系の基本原理を確立した点は評価できる。一方技術移転の観点からは、実際の食材からのStx 検出系の確立は未だなされていないので、食材サンプルからの菌の抽出方法や、測定を阻害する因子をどのように除外するか、現場でのサンプルの簡易採取方法などの検討が重要なポイントと思われる。今後、応用展開された成果が社会還元に導かれることを期待する。
中赤外レーザーを用いた無侵襲血糖値測定技術の開発 独立行政法人日本原子力研究開発機構
山川考一
先端固体レーザーと光パラメトリック発振技術を融合することにより、実用的な中赤外レーザー光源を実現し、無侵襲血糖値測定技術を確立します。本研究開発では中赤外レーザー光源の波長可変領域の拡大、中赤外レーザー光のグルコースによる吸収変化の再現性向上およびグルコース濃度の絶対値校正法を確立します。これにより、今日まで約30年来研究開発が続けられながら未だ実用化されていない無侵襲血糖値測定装置の実現を目標にし、高血糖患者が採血のたびに伴う苦痛を取り除き、現在780万人(2010年厚労省)以上の高血糖患者の日常的な負担を軽減することにより人に優しい医療の実現を目指します。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に中赤外レーザー光のグルコースによる吸収変化の再現性向上およびグルコース濃度の絶対値校正法を確立し、先端固体レーザーと光パラメトリック発振技術を融合することにより、実用的な中赤外レーザー光源を実現し、無侵襲血糖値測定する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、中赤外レーザー光源における波長可変領域の拡大に関して一定の成果が認められるが、今後、励起光源の安定性や小型化についての実現性が不可欠である。また、計測精度については臨床適応に未だ不十分であり、検出器と生体との位置関係の再現性を確保する方法を考案することが望まれる。
注意欠陥・多動性障害の病態評価を眼球運動で行う新しい診断法の開発 関西医科大学
渡邊雅之
関西医科大学
三島健
本研究では注意欠陥・多動性障害(Attention Deficit/Hyperactivity Disorder:ADHD)という、多くの学齢期児童(3-7%)に見られる発達障害を誰でも簡単に行える新しい診断法を開発することを目標とした。高速な視線の移動であるサッカード眼球運動をバイオマーカーとして解析し、ADHDのサッカードの特徴を明らかにした。さらに、周辺視野に向かう、振幅の大きなサッカード(マクロサッカード)と同時に、注視領域で生じる振幅の非常に小さなサッカード(マイクロサッカード)の特徴を成人被験者で解析し、そのADHD診断への応用可能性について検討した。マクロサッカード、マイクロサッカードを同時に記録、解析する本研究での手法は、将来的にサッカードに基づくADHDの診断を短時間でより正確に行うことに貢献するはずである。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。本研究は5分以内に95%の精度で幼少児のADHD患者同定を可能にする診断法の開発を目指したが、研究としては準備段階に終わっている。一方、当初予定の幼少児を対象としたマクロサッカードの解析では、健常者とADHD患者間にいくつかの相違点が見られているので、幼少児への適用に向けた診断法に有効なデータの取得と分析などが必要と思われる。今後、 短時間・高精度のADHD患者診断法が確立され応用展開ができれば、社会還元は期待できる。
小型ワイヤレス骨伝導音声伝達機器を用いた認知症の確定診断とサポート 関西医科大学
田近亜蘭
関西医科大学
三島健
従来からある骨伝導音声伝達機器を改良して小型のワイヤレス機器を開発し、高齢者医療の現場で使用できるようにすることが今回の目標であった。ブルートゥース機能を用いてワイヤレス化することで、治療者と患者がある程度の距離をとることが可能になり、実際の臨床場面で使用しやすくなった。しかし、この研究期間中には、治療者側が持つマイク部分の改良までは至らなかった。治療者が使いやすく両手をフリーにすることができるマイクの開発が望まれる。今後、診察の場面だけではなく、高齢者施設などの介護現場で、介護者と被介護者とのコミュニケーションへの影響について研究を行い、この機器の有用性を検証する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、聴力と認知機能とのデータ収集に対して、より容易にかつさまざまな評価結果が得られている点は評価できる。一方、当初の目標である骨伝導機器を装着した場合と非装着の場合の比較における効果の裏づけや、難聴患者数を増やしての効果の検証のための技術的検討やデ−タの積み重ねなどが必要と思われる。今後、認知症患者だけでなく聞こえとコミュニケーションは重要な課題なので、応用展開された時は社会ニーズに応えるものになることが期待される。
骨置換多孔質体を自発的に構築するエマルション骨ペーストの開発 関西大学
岩崎泰彦
関西大学
中本博幸
本研究はマイクロ微粒子の界面吸着現象を利用し、新たな骨ペーストを創製することを目的とした。
まず、界面活性剤などの刺激性の高い添加物を一切用いることなく、リン酸カルシウム微粒子、植物油、水から構成さ れる安定なエマルションを調製した。続いて、このエマルションを形成する微粒子が媒体の水と反応(硬化反応)することによって、骨置換材料として機能する水酸アパタイト多孔質体を得た。研究期間では、技術移転後、 速やかに実用化への検討に移行できるよう、医療用材料として実績のある素材を選択し、エマルションの硬化時間や硬化後に得られる多孔質体の力学物性および内部構造の制御に重点を置きながら開発を進めた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、エマルジョンのエキスパ−トの協力を得て、かなり進展があった点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、エマルション形成時の油についての最適化の検討が不十分であり、硬化時間の短縮手段や連通孔の形成についての検討も必要である。今後、境界領域の研究なので、幅広い研究分野の研究者の協力により研究が加速されることが望まれる。
非接触バイタルサイン計測技術の開発 関西大学
鈴木哲
関西大学
中本博幸
本申請では、マイクロ波レーダーを用いて心拍・呼吸などのバイタルサインを被験者が意識することなく非接触・無拘束で安定して測定できるセンシング・解析技術の開発に取り組む。さらに、開発したセンサーユニットは椅子に取り付け可能とし、医療の場で簡便な即時性のある心機能や呼吸機能の評価を可能とする。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。本課題は、マイクロ波レーダーを用いた非接触による心拍・呼吸などのバイタルサインの計測技術の確立を目指したものであり、ほぼ実現への見通しが付けられた。なお、当初に計画されていた病院等での臨床使用は実現せず、実験室レベルでの検証となったが、当初の目標がほぼ達成されたと認められ、概ね期待通りの成果が得られていると考えられる。現在、呼吸データの計測結果しか示されていないが、今後の信号処理方法開発の進展により、心拍データも計測可能となることが期待される。技術移転の観点からは、今後の技術的課題もある程度明確にされており、未解決課題の明確化、今後の実用化を目指した特許出願の計画、連携体制の構築などが検討され、電子機器メーカー、地域医療を担う病院、在宅看護・介護サービスを提供する企業などとの連携が交渉されている。本課題で提案されるマイクロ波レーダーによる非接触式バイタルサインの計測技術が確立すれば、大きな市場規模の開拓が期待され、その波及効果も大きいと思われる。
眼球運動特性を用いたスクリーニング用視野検査装置の高精度化 関西大学
小谷賢太郎
関西大学
中本博幸
本提案では、眼球運動特性を用いたスクリーニング用視野検査装置の高精度化をめざした周辺視データ計測のためのマルチディスプレイ導入によるプロトタイプの拡張およびその検証と、神経節細胞を緑内障の影響によるK細胞系を選択的に検査するような指標が提示できるシステムに改良し、実際の計測時のユーザビリティを高めたプロトタイプ制作をおこなうことをその目標としている。本研究の提案に先駆けて、これまで研究代表者が開発した手法を応用したターゲット発見時の跳躍眼球運動の反応時間と眼球運動軌跡を計測し、これらの特性から視野領域を求める手法が、従来の視野検査装置と比べて、被験者にかかるストレスと検査時間を低減するために有効な手法であることを検証してきた。本提案では以下に示す通り、このシステムの有効性をさらに広げるための2つの拡張とその検証実験を行い、プロトタイプを構築することである。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。視野検査においてユーザビリティを高めたプロトタイプの製作と、従来法と比較して良好な相関を得るという当初の目標は達成されている。装置構成において市販ディスプレイ等の活用が図られており、企業としてもコスト面、技術面でのハードルは低い。また今後の向上に向けての課題(固視不良による相関の低下)も把握されている。一方、技術移転の観点からは、今後の研究開発計画について具体的なスケジュール等は記載されていないが、臨床評価機関及び機器メーカとも連携が図られており、継続的にステップを上げられる土台は出来上がっていると思われる。また従来の手法に比べて被験者の負担が著しく減じられる方法のため、臨床評価終了後は、社会還元に導かれる可能性は高いと判断される。
医療用X線防御材料の軽量化 近畿大学
村上卓道
近畿大学
松本守
本研究では、X線防御衣に利用する金属混合樹脂に関して、その防御能力を測定するための基礎段階として素材による防御能力のスクリーニングを行った。第1段階として、数種の金属粉末をシリコン樹脂に分散させることの可否やその技術について検討を行いながら金属混合樹脂を形成し、そのX線防御能力を評価した。
また、第1段階の結果、新規発明性が予見できたため、評価した金属混合樹脂についての先行特許調査を行い、今後の展開について検討した。
第2段階として、メインとなる素材以外に補助的にX線防護衣を構成する素材の検討を行い、スクリーニング用の形成を行った。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、材料の作成を行った点は一定の評価はできるが目標の達成には至っていない。一方、特許出願前なので公開できるデ−タが少ないのか、これまでの問題点を具体的にどのようにクリアしたのかが不明である。今後、実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
皮膚マーカーナビゲーションを用いた骨軟部腫瘍切除法の確立 大阪市立大学
星学
大阪市立大学
植村康一
骨軟部腫瘍は様々な部位に発生するという特徴がある。皮膚マーカーを用いたコンピューターナビゲーションシステムを用いることにより、手術中にリアルタイムにコンピューター画面で手術操作部位を確認することができる。本研究では研究期間中、手術中にレントゲン撮影やレントゲン透過装置で骨占拠部位が確認できない10例の骨腫瘍および骨に浸潤する軟部腫瘍(悪性腫瘍2例、良性腫瘍8例)に対して本法を用いて腫瘍切除術を施行した。実際の操作部位とコンピューター画面上での距離の誤差を示すRegistration Errorは1.4±0.3mm(平均±標準偏差)と、非常に精度の高い腫瘍切除を実現することができた。また、手術中に、予想外の出血などの有害事象は認められなかった。  概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、皮膚マーカーを用いたレジストレーションを開発し、その精度を高め、骨腫瘍切除手術に応用する目標において、予定していた10症例を達成した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、四肢末梢の骨腫瘍では、その他の部位と比べてやや精度が低下したため、ギプスや副木を当てて術前のコントロールのCTを撮影し、コンピュータ−のレジストレーションが終了するまでは固定を継続するなど、再現性の向上を目指した技術的改良が必要である。悪性腫瘍症例について、申請者らは、年間約40例程度の腫瘍広範切除を行っているが、骨への浸潤の見られる悪性軟部腫瘍症例は少なく、今回対象を“手術中に腫瘍の骨占拠部位がレントゲンやレントゲン透過装置(いわゆるイメージ)で確認できない腫瘍”と厳密な適応を定めたため、症例数は非常に限られた。適応を広げられるかが今後の課題である。
全く新しい概念の後方椎体間固定システムの開発 ―固定性、安全性、低侵襲性の達成― 大阪市立大学
姜良勲
大阪市立大学
中島宏
我々は固定力を維持したまま、低侵襲で且つ安全性の高い全く新しい概念の後方椎体間固定システム(Unilateral Pedicle and Spinous process System:UPSS)を考案した。本法は片側進入による固定術で、棘突起フックロッドシステムと片側椎弓根スクリューを併用しその間にクロスリンクをかけるというものである。既にクロスリンクをかけない簡易型の手法では、その性能を示し臨床応用に至っている。本研究においてはUPSS 専用クロスリンクの開発に成功し、バイオメカニカルデーターを計測した。その結果、専用クロスリンクをかけることでより強固に固定できることが実証された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。新しい概念の、脊椎固定器具の考案であり、生体外での脊椎模型を用いたバイオメカニカルな解析により、特に、UPSS 専用クロスリンク装着モデルのバイオメカニカルな優れた固定性が検証された点、および、研究成果を積極的に学会発表し、連携企業を見つけ製品化に向けての研究を進めている点に関しては評価できる。一方、生体外での模型による検証のみであり、今後、前臨床試験としての大型動物による実証実験が必要である。また、新規特許の出願は行われておらず、特許の取得、製品化に向けた企業との連携強化が急務であると考えられる。技術移転につながるには長期間を要し、短期での技術移転の可能性は低いが、着実に進められることを期待する。
糖負荷後の血中ベータ・アミロイド変動パターンを用いたアルツハイマー病の診断法の開発 大阪大学
里直行
高齢化の進む現代日本において、アルツハイマー病はその解決の待たれている疾患である。アルツハイマー病の低侵襲かつ簡便な診断補助法の開発を本研究の目的とした。我々はヒト臨床研究において糖負荷後の血中ベータ・アミロイド測定がアルツハイマー病補助診断法としての可能性を有していることを示した。さらにその機序に関してアルツハイマー病モデルマウスを用いて基礎的な実験を進め、有意義な結果を得た。今後はこの結果に基づき、さらに本法を最適化し、アルツハイマー病の診断補助法として育成していく。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。糖負荷後のアルツハイマ−患者血中ベ−タ・アミロイドの増加が、ADモデルマウスほど顕著でない機構を明らかにし、糖負荷後の血中ベ−タ・アミロイド測定によるアルツハイマ−病診断法の開発を目的としていた。なぜヒトではマウスほど顕著でないのかその機構を明らかにしていない。一方、糖負荷後の血中ベータ・アミロイド増加のメカニズムの解明については、当初の計画通りマウス脳内におけるベータアミロイド濃度や代謝酵素の変化、インスリン濃度の計測などを実施されることが望まれる。今後、低侵襲のアルツハイマー病診断法への期待は大きいので、研究を続けて社会還元することを期待する。
癌特異的アミノ酸輸送体を分子標的とする新規PET診断用プローブの創製 大阪大学
金井好克
ポジトロン断層撮影法(PET)は、癌の画像診断技術として汎用されている一方で、癌以外の病変にも取り込まれることによる偽陽性が問題となり、診断用プローブの改良が求められている。本研究開発は、既存の癌PET診断用プローブを改良することで腫瘍選択性に優れ偽陽性率が低く、より適用範囲の広い新規癌診断用プローブの創製をめざした。本研究は、癌細胞型アミノ酸輸送体を標的としたすでに臨床研究の蓄積のあるシーズ化合物を改変し、さらに選択性・特異性が高いPETプローブを創製した。シーズ化合物に比較し、18F 標識の汎用性が高く、癌細胞への特異性が著しく上昇しており、PETプローブとしての優位性が立証された。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。癌PET診断の腫瘍診断制に優れた新しいプローブの創成をめざし、既存化合物をリード化合物として新規化合物を創製し、LAT1への特異的親和性および18F標識の容易な汎用性に富む新規PETプローブを創製していることは高く評価できる。企業との共同研究もさらに強化する計画であり、癌治療薬としての臨床研究も推進されており、創薬・診断両面共用化合物として期待されるので、着実な推進が望まれる。今後の技術移転展開が大いに期待される。
高血圧に対するDNAワクチンの開発 大阪大学
中神啓徳
大阪大学
金允政
生活習慣病に対するワクチン治療の確立を目指し、まずは精力的に研究が進んでいる高血圧のワクチン治療においてDNAワクチンの基盤技術を確立することを目的とする。高血圧モデル動物にアンジオテンシンIIを標的としたDNAワクチン治療を行い、アンジオテンシンIIに対する抗体価上昇と血圧の有意な低下を6か月間持続させることに成功した。そのときの血中アンジオテンシンIIは有意に低下していた。また、DNAワクチン治療後の高血圧モデル動物において、アンジオテンシンII自体が細胞障害性T細胞を活性化せず重篤な臓器障害も生じないことを確認した。本研究成果から、将来的なDNAワクチンの臨床応用の可能性が示された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。本課題は、基礎評価の段階であるが、その将来性が期待される成果を上げており、今後の広がりを期待させるものであるといえる。実用化に当たっての障壁は決して低くないが、安全性の評価など着実な計画が進められており、企業などの共同研究者の協力を求めるなど今後の技術移転に向けた展開が期待される。
脊髄機能イメージング高度化のための新規な磁場源解析アルゴリズムの研究 大阪大学
鈴木貴
大阪大学
中村邦夫
申請者は神経活動などの体内の電気的活動を電流双極子群で表現し、体表面で検出される生体磁場から電流双極子を推定する逆源探索法の数理的研究を行い、その成果として平行最適化理論に基づいた新しい電流双極子分布法を開発した。一方、金沢工業大学では超伝導を利用した高感度磁場センサで脊髄の神経活動に伴う生体磁場を検出し、その磁場データを解析して、脊髄の機能を非侵襲的に可視化する脊髄機能イメージングと呼ばれる新しい画像診断技術を開発している。本研究では、この2つの基盤技術に加えて新逆源探索研究を画像診断に適用し、高性能な脊髄機能イメージング装置を開発する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、脊髄機能イメージングを目標とした磁場源開発アルゴリズムの開発において、ファントム模型による検証とアルゴリズムの改良は十分なされている点は評価できる。一方、脊髄磁場実データによる検証と、アルゴリズムの改良についての技術的検討やデ−タの積み上げなどが必要と思われる。今後は、医療関係者が理解できるレベルの解析方法や解析結果を示すことが望まれる。
人間の筋シナジーの抽出により機械的剛性を最適化する運動能力向上装具の開発 大阪大学
植村充典
大阪大学
有馬健次
本研究開発では、人間の運動能力向上を目的とした装具を開発した。本装具の特徴は、機械的弾性要素を利用することで、省エネルギーで人間の運動を補助できる点にある。また、本装具の関節剛性は可変であるため、人間の運動様式や運動速度に合わせて最もエネルギー効率が高くなるように剛性を最適化出来る。今回開発した膝関節用装具は最大42[Nm]のトルクを出力できるにも関わらず、重量は450[g]と軽量である。本装具を装着して歩行実験を行ったところ、装具なしの通常歩行に比べて筋電位信号が大幅に小さくなっており、本装具の運動能力向上効果が確認された。今後は、階段昇降時や股関節・足関節運動での本装具の有効性を調べる予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、補助歩行中の積分筋電位(IEMG)が有意に低下するとともに、感覚的にも疲労感が少ないという結果と補助歩行中の積分筋電位(IEMG)が有意に低下するとともに、感覚的にも疲労感が少ないという結果を得ている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許出願による知財の強化と企業との具体的な共同研究を明確化にし実用化されることが望まれる。今後、 可変剛性要素を用いたものは簡便で軽量な装具であり、応用展開された場合には社会還元に導かれるものと期待される。
電気触覚提示装置を用いた道具操作支援システムの試作 大阪大学
黒田嘉宏
大阪大学
有馬健次
本課題では、技術移転の可能性を見出すため、基盤技術である電気触覚提示装置を用いた道具操作支援システムを試作し、道具操作への有効性を示すことを目標とした。研究開発期間においては、有限要素解析に基づいた装置の最適設計を行ったうえで、柔軟物を押しのけた状態で道具を維持する牽引手技の支援システムを試作した。結果、最適な電極サイズは70mm2程度であることが分かった。また、提案システムにより10%以下の誤差で柔軟物を押しのけたまま維持できることが確認された。最後に、脳神経外科医から意見をいただいた結果、実際の手術を想定したシステム使用形態やデバイス製作の留意点など、応用システム構築にかかる有益な意見が多数得られた。以上より、基盤システムの構築が達成され、技術移転の可能性を見出すことができた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、有限要素法により最適な電極接触面積70平方ミリメートルが得られ、実験によっても妥当性が確かめられた点は評価できる。又、指輪電極の薄型化と滅菌対策の必要性が確認された。一方、技術移転の観点からは、3次元人体データを画像から取得する具体的な方法についての検討や、装置小型化などの検討を行い実用化されることが望まれる。今後、本研究の応用展開がなされれば難度の高い脳外科手術サポートシステムが実現することが期待される。
細胞動態解析シミュレータおよびシステムの開発 大阪大学
木原隆典
大阪大学
有馬健次
本研究は、細胞の運動・増殖・細胞間接着・細胞接触増殖阻害といった、細胞動態に関する情報を解析するためのシミュレータ及びシステムを開発し、その有用性を検証することを目的とした。そのため、シミュレータおよびシステム開発のみならず、様々な細胞種における細胞動態の特性を調べ、そのシミュレーションの実行、本システムでの細胞特性解析を行った。作成したシミュレータはグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を採用し、実時間7日間の細胞動態を3秒でシミュレートすることに成功した。また、4種類の正常・癌細胞の動態を実験的に明らかにし、それに対して作成したシミュレーションで自動解析を行った結果、特に細胞接着効果に対して本アプローチの有用性を検証することができた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。計画通りに研究開発が的確に遂行され、期待された研究開発成果が得られている。ただ、細胞シミュレータとしてはややprimitiveなものであり、その点では技術移転には遠い印象がある。今後については、これからの研究実施内容が明確に記載されており、他とのコラボへの依存性が高い点も認識されている。恐らく、細胞シミュレータ作成に必要な技術を持つことは、本研究開発内容から明らかなので、興味を示す研究者もいると思える。将来的に、このようなアプローチは必須であり、このプロトタイプから大きく変貌していく可能性もあり、その場合には、社会財産となるであろう。但し、この分野は、海外企業の実力が圧倒的に高いことは、認識する必要がある。この分野では中々日本発の成果が出てこないが、多くの様々な分野の研究者と交流を深めることで、企業化につながるような細胞シミュレータが生まれることを期待する。
テロメラーゼ阻害によるがん細胞選択的放射線増感効果 大阪府立大学
児玉靖司
大阪府立大学
伊達晴行
ヒト線維芽肉腫由来HT1080細胞を用いて、テロメラーゼ阻害剤MST-312(0.5μM)処理による放射線増感効果を調べた。HT1080細胞を、MST-312(0.5μM)存在下で約30回分裂させた後、1)MST-312が存在しない培地でコロニー形成、2)MST-312(0.5μM)存在下でコロニー形成の2通りの方法でX線感受性を調べた。その結果、MST-312処理は、2Gyでは全く放射線増感効果が見られないが、4Gy, 6Gyと線量が増加するにつれて増感効果が大きくなり、しかも、MST-312処理時間が長い方が効果が大きくなることが分かった。本研究の成果は、放射線とテロメラーゼ阻害剤MST-312の併用処理が、放射線致死効果を増大させる可能性を示している。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、テロメラーゼ阻害剤の濃度により、正常細胞とがん細胞とで細胞の生存率は大きく異なることは確認できた点は評価できる。一方、テロメラーゼ阻害剤とテロメア短縮の定量的測定に向けた技術的検討やデータの積み上げ、及び検証が必要と思われる。今後、テロメア短縮の具体的測定に成功すれば、研究成果の応用展開への道が開かれる可能性がある。
DNA探針を用いた遺伝子一分子検出・解析技術の開発 大阪府立大学
西野智昭
大阪府立大学
井上隆
近年、ゲノム情報に基づく高度な医療の実現に向け、簡便かつ迅速なDNA解析技術が強く望まれている。本課題ではこれまで申請者らが開発した分子探針を用いた走査型トンネル顕微鏡に基づき、DNA単一分子を簡便・迅速に検出できる新規技術を開発する。即ち、プローブDNAを固定した探針と検体DNAのハイブリダイゼーションに伴うトンネル電流の増加を指標として検出する。本手法は、単一DNAのミスマッチやメチル化をも検出できると考えられることから、高次な遺伝子解析が可能となる。開発終了後の技術移転により、超高感度、簡便・迅速な遺伝子検査デバイスの創製が期待される。DNA配列の網羅的解析等への応用も期待できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、単一DNAの検出、および単一DNAのミスマッチ・メチル化塩基の検出は周到な実験と筋道の通った解釈から達成され、STMによるDNAの検出に関する重要な基礎的知見だけでなくこれを基にした技術移転につながる研究成果も得られており、特許も出願されている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、検体DNAに対する化学的処理を必要としないサンドイッチ型DNAプローブによる検出様式や、微小な間隙を隔てた一対微小電極(ナノギャップ電極)を用いたプロトタイプデバイスの開発などでの実用化が望まれる。今後、長期的にはナノギャップ電極を多数配列したナノギャップ電極アレイの実用化が期待される。
非常に効果的で安全な癌免疫治療を可能にする遺伝子導入剤の開発 大阪府立大学
杉浦喜久弥
大阪府立大学
金澤廣継
樹状細胞(DC)を用いた癌免疫治療は、副作用のない安全な治療法である。本研究では、このDC治療の効果をより高めるため、生体内の癌細胞に遺伝子導入できる治療薬の開発を試みた。遺伝子導入剤として、細胞膜との膜融合により、細胞質内への遺伝子を導入するプラス荷電リン脂質で遺伝子を内包したLipoplexに細胞質内へ効率的に遺伝子を送り込むことができるカルボキシル化ポリグリシドールと癌細胞への親和性を高めるtransferrinを結合させたliposomeを付加した人工ベクターを作製した。>20%の導入・発現率を目標として、ベクターの構成成分を変化させ、導入実験を行ったところ、in vitroではほぼ目標を達成できたが、in vivoでは、あまり高い導入・発現率を得られなかった。今後は導入剤の量を増やして検討していく。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、interferon−gamma遺伝子の in vitro の導入効率がよい点は評価できる。一方、in vivo の効率は極めて低く目的の達成率は低いので、実際に治療応用するまでには、大きなステップをブレイクスルーする必要性がある。 今後、技術的課題は一定程度明らかになっているので、 研究が進めば社会還元(治療応用)に導かれることが期待される。
再生医療を目指したネコ多能性幹細胞の培養技術の開発 大阪府立大学
鳩谷晋吾
大阪府立大学
金澤廣継
本研究では、ネコES細胞およびiPS細胞の培養条件の検討を行った。ネコ胎子線維芽細胞に、マウスOCT3/4、SOX2、KLF4、c-MYCの4遺伝子を導入し FBS含有ヒトES細胞培地を用いて培養したところ、1つのネコiPS様細胞株が樹立された。さらにネコLIFの作製を大腸菌で行い、大腸菌破砕物および精製物のSDS-PAGEによって、目的タンパク質の予想分子量である70kDa付近にバンドが確認された。また、樹立されたネコiPS様細胞は、現在44代まで継代できており、形態的特徴もヒトiPS細胞に類似していた。さらに、これらの細胞は、アルカリフォスファターゼ染色に陽性であり、ガラス化法による凍結保存が可能であった。今後は、作製したネコLIFを精製し培地に加えることで、ネコES・iPS細胞の培養効率をさらに高める予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ネコES・iPS様細胞の誘導には成功し、効率は良くないが1例は株化に成功している点は評価できる。一方、継代可能な細胞株を効率的に確立する為にはネコLIFが必要と考え、その精製を手がけた為に、計画通りの成果を達成するための時間が不足してしまった感は否めない。むしろ、ネコLIFで無くてもiPS細胞様株の確立ができた理由を追究すべきだったと思われる。次のステップに進めるためには、LIFも重要な検討因子であるが、それ以外の技術的課題の探索も行い実用化に向けた技術的検討やデ−タ゜の積み重ねが必要と思われる。今後、この技術が確立され、その普遍性が実証されれば、再生医療への貢献は大きいことが期待される。
リアルタイムPCR装置を利用した蛋白質ポリマー化反応測定システムの開発 大阪府立大学
恩田真紀
大阪府立大学
金澤廣継
アルツハイマー病などの蛋白質がポリマー化して起こる疾患群の研究は世界中で実施されており、蛋白質のポリマー化反応を簡便に測定できるシステムのニーズは極めて高い。本研究では、市販のリアルタイムPCR装置を利用し、少量の蛋白質で迅速にポリマー化反応を測定するシステムを開発した。本システムを利用することにより、わずか0.2mgの病原蛋白質で96通りの測定が同時に実施でき、90分の測定時間で5種類のポリマー化抑止剤を見出すことができた。また、本システムで得られたポリマー化速度は、既存法で得たものと遜色なかった(誤差0.5%以内)。今後は、システム実用化に向けて汎用性を高めるための研究開発を行う。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、代替品(ProteoStat)はハイスループット・スクリーニングの相対評価は可とし、少量試料で、ポリマー化抑止剤を短時間で見出せるデータを得ている点は評価できる。一方、多くの種類の病原蛋白質に対応するには、他の複数個の色素を見出す必要があり、新規特許出願ができない場合、キットの実用化には既存品を含み先願特許との絡みで困難さが横たわることが予想される。今後、学術的成果に止まらず、新視点で創薬に寄与できる成果が望まれる。
癌転移に呼応して作用する新規DDS材料の転移抑制効果の検証 大阪府立大学
児島千恵
大阪府立大学
金澤廣継
癌は日本の死因の第一位である。その治療技術の向上において癌転移の抑制は非常に重要である。我々は、癌転移を抑制する新規DDS材料として抗癌剤結合高分子包埋コラーゲンゲルの作製を行った。そして、このDDS材料は、ヒト乳癌のモデル系では、転移性の高い腫瘍細胞に対して選択的な薬理活性を示すことを明らかにした。しかし、その転移抑制効果はまだ明らかになっていない。本研究では、抗癌剤に対する感受性が高く、かつ、短期間で転移するマウス大腸癌細胞を用いて、そのin vitroにおける抗腫瘍効果及び転移抑制効果について検討した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも癌転移を抑制する新規DDS材料として抗癌剤結合高分子包埋コラーゲンゲルの作製によりDDS材料を作成し、in vitroにおける抗腫瘍効果及び転移抑制効果については評価できる。一方、抗癌剤結合高分子を包埋したコラーゲンゲルは一部の癌に対する新規DDS材料として有用性を確認した程度であり、更なる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
拍動収縮リズムの変動予兆を感知できる培養心筋システムの開発----心筋に作用する新薬開発のin vitro評価システムの創出 大阪府立大学
小川和重
大阪府立大学
柴野裕次
第一の目標は、P19CL6-A1に蛍光蛋白標識Connexin43(FP-Cx43)を導入して安定発現株を作製し、親株の分化法を適用してFP-Cx43発現心筋を作製することである。Cx43遺伝子挿入pEGFP-N1を親株に導入し12種のG418耐性クローンを作製した。9クローンはギャップ結合構成蛋白としてFP-Cx43が発現し、分化材料の作製に成功した。至適クローンを絞り込み、親株で確立した分化法と開発中のコロニー分化法を適用して分化条件を検討した結果、FP-Cx43発現心筋の作出に成功した。分化率が非常に低いため、現在、条件を再検討している。従って、第二の目標である「FP-Cx43発現心筋細胞の協調拍動センサー機能の評価」は行っていない。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。FP−Cx43を発現する心筋細胞をつくることで、心筋細胞のギャップ結合をモニターし、また、その局在変化と、協調拍動リズム解析システムによる拍動リズム解析を連動させることが目標である。FP−Cx43を発現するP19CL6−A1細胞を作製したが、心筋細胞への分化効率が非常に低く、FP−Cx43発現心筋細胞の協調拍動センサー機能の評価(第二目標)は至っていない。第一目標の達成(FP−Cx43を発現する心筋細胞の分化効率が極めて低い)が不十分なために、第二目標の実験を行えなかったようである。心筋分化誘導条件の検討など、第一目標をクリアーするための条件検討が必要である。FP−Cx43プラスミドではなく、別の遺伝子導入法(コンストラクト)を工夫する必要があるのではないか。今後の研究開発計画については、心筋分化効率の向上などが挙げられているが、現在の分化誘導条件でどれぐらいの細胞が心筋細胞になるのか、さらに種々の応用を考えたときに、これらの細胞をさらにソートする必要はないのかなど、他にも改善すべき点があると考えられる。
シガテラ食中毒原因毒素微量検出法の開発 大阪府立大学
円谷健
大阪府立大学
西村紀之
本研究課題では、4種類ある主要な太平洋型シガトキシンのなかで最も毒魚中に普遍的に含まれていると考えられているシガトキシンCTX1Bを効率よく検出することができるサンドイッチELISAシステムを構築した。シガトキシンCTX1Bの左端構造を認識するモノクローナル抗体3G8と酵素標識化した8H4とを組み合わせたサンドイッチELISA法により、CTX3Cを高感度で検出することに成功した。また、本サンドイッチELISA法は海中に存在する構造が類似した他のポリエーテル系海洋毒素(ブレべトキシンやオカダ酸など)とは高い濃度(10μg/mL程度)でも全くシグナルを与えない高い特異性を示した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、シガトキシンCTX1BをPureな系で感度よく検出するサンドイッチELISAシステムの構築に成功している点は評価できる。反応の特異性についても良好な特異性を報告しており、実用化へのステップを1歩進めた研究である。一方、技術移転の観点からは、検体の祖抽出標品でも検出可能かを問題として挙げているので検討が必要である。今後、中毒発生のリスクを持つ地域の政府との研究連携が必要であり、公的資金での研究が中心となることから、今回の研究成果を基に当該政府機関と連携交渉が重要と思われる。
立体構造規制ペプチドライブラリー法による抗癌ペプチド医薬の創出 大阪府立大学
藤井郁雄
大阪府立大学
西村紀之
抗体医薬の問題点は、抗体の大きく複雑な基本構造に起因する。そこで、イムノグロブリン構造を利用せず、標的タンパク質に特異的に結合する抗体様分子標的ペプチド(このようなペプチドを"マイクロ抗体"と呼ぶ)の開発を行った。立体構造規制ペプチド(ヘリックス-ループ-ヘリックス構造)のファージ・ライブラリーから血管内皮細胞増殖因子(VEGF)結合性ペプチドを獲得した。このペプチドは、低分子量であるにもかかわらず抗体に匹敵する高い結合活性をもち、VEGFによる細胞増殖に対する抑制効果を示した。さらに、強固な立体構造をもつため酵素分解に対しても抵抗性を示すことから、抗体に代わる次世代分子標的医薬としての利用が期待できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、血管内皮細胞の増殖抑制濃度(IC50)が目標(100ng/ml)に達したかどうか不明であるが、50nMで、先行抗体医薬品の約60分の1程度の阻害活性があった点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、さらに高活性なペプチドの創製と安全性(抗原性)の確認、薬理学的効果はどこまで上がるのか、本ペプチドのVEGF以外の蛋白質との相互作用の有無の解明などの検討を行い実用化が望まれる。現在、抗体医薬が広く治療薬として使用されつつあるが、大きな問題として価格がある。本ペプチドはこの問題を解決できる可能性があり、成功した暁には大きな社会還元になることが期待される。
焦点調整が不要で多点観察可能なマルチウェルプレートの開発 大阪府立大学
杉本憲治
大阪府立大学
西村紀之
細胞を生きたまま観察するのにマルチウェルグラスボトム(多穴グラス底)プレートが広く使われる。しかし、底面のグラス表面は全くの平面ではなく、多点観察する際、パーフェクトフォーカス等の高価な機器 を用いてウェル毎にZ軸を調整し、それぞれの観察面で焦点を合わせる必要がある。本研究は、焦点調整が不要の歪みのない底面を持つマルチウェルグラスボトムプレートを作成する事を目的とする。これ により、既存の蛍光顕微鏡に普及型の電動式XYステージを取り付けるだけで、容易に高倍率(x40)で ピントがあったまま、長時間多点観察する事が可能となる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。現在普及しているグラスボトムプレートや電動式XYステージの問題点を解析・抽出することで、焦点調整が不要な多点観察可能なマルチウェルプレートを開発する点は興味が持てる。次へのステップにおける技術的課題も明確に示されている。企業との連携も進んでおり、技術移転も期待できる。本研究の成果により継続的な細胞のライブイメージングを可能とするマルチウェルプレートの開発が実現できれば、細胞生物学分野における貢献が期待できるが、独自技術に関するアピールポイントや学術的意義を強調する必要がある。
神経系スフェロイド創出のための新規機能性多凹型ハイドロゲルの開発 大阪府立大学
森英樹
大阪府立大学
西村紀之
本研究は神経幹細胞の細胞凝集塊形成を促すための新規ハイドロゲルを作製することを目的としている。研究実施計画の前半にあたる材料開発は概ね計画通りにハイドロゲル上に凹構造を作製できたが、神経幹細胞はガンマ線照射コラーゲンゲル表面に接着し分化、伸展した。そこで、材料をポリビニルアルコール(PVA)に変更し、放射線架橋PVA多凹型ゲルの作製およびゲルの収縮させることができた。神経幹細胞の顕微鏡観察と免疫組織化学的な解析により、細胞は集塊形成し、神経幹細胞の状態を維持しながら増殖していることを確認した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にガンマ線架橋したコラーゲンゲルの収縮作用を利用して、神経幹細胞の安定した増殖、大きさの均一なスフェロイド形成に適した形状と分化誘導を促す培養面を兼ね備えた培養器材に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、当初予定していたコラーゲンゲルの問題により、神経細胞のスフェロイドを効率よく作成する培養基材の開発という意味では目標は達成されていないが、PVAゲルに切り替えて開発を開始し、現時点で有望な結果を得ている。今後さまざまな培養幹細胞の供給は基礎・応用の両面で非常に需要が増すことが期待される。
発生異常や発がんの原因となるエピミュータジェンを探索するためのアッセイキットの開発 大阪府立大学
八木孝司
大阪府立大学
西村紀之
エピジェネティクスは突然変異によらない後天的形質発現変化として発生や発癌に関わる。ヒトの06−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ(MGMT)遺伝子はそのプロモーターのGpC部位のメチル化によって発現が制御されている。MGMT遺伝子の発現を指標にして、CpG部位の脱メチル化を起こす化学物質(エピミュータジェン)を緑色蛍光によって探索できるバイオアッセイ法を考案した。今回、代表的な物質である5-アザシチジンを処理すると細胞の緑色蛍光が5倍以上増すことが確認できた。そこで、このアッセイ法の安定化と最適化を行ってアッセイシステムを確立し、他の化学物質のエピミュータジェン活性をスクリーニングする。これによって発生異常や発がんを起こす可能性のある、新たなタイプの化学物質が探索可能となる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に代表的なエピミュータジェン物質であるアザシチジンを用いたアッセイ法の安定化と最適化を行い、他の化学物質のエピミュータジェン活性をスクリーニングする技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、当初の目標が充分得られたとは言えず、AzaCの至適濃度・処理時間の検討は当初の目標に比して不十分である。今後、安定した系の構築に向けた検討計画、また技術移転を目指した企業等との研究開発も期待される。
超音波速度変化イメージングによる血管プラークの無侵襲診断装置の開発 大阪府立大学
堀中博道
大阪府立大学
野村幸弘
血管内のプラークが何らかの原因で剥がれると、血管が詰まり心筋梗塞や脳梗塞などに至ることがある。プラークの剥がれやすさを判定するためには、形状だけでなくその成分(脂質性)を検出することが必要である。本研究では、超音波速度の温度変化が水中と脂肪中で符号まで異なることに注目して、超音波速度変化から脂質領域を2次元的に検出する無侵襲血管プラークの診断法を提案した。超音波速度変化画像装置を作製し、血管ファントムに適用した。超音波速度変化画像は血管ファントム内部の脂質分布領域を明確に示した。 血流による血管径の周期的な変化の影響を抑制するための信号処理法を検討し、実験によってその効果を確認した。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、超音波加温装置の作成と特性の測定、血液ファントムの作成、血液ファントムの組織性状の超音波変化イメージの構築、心電同期システムの検討のほとんどが達成されている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、本方法で血管プラークが無侵襲で観察できる可能性が示されたが、実際の血管プラークを観察できた訳ではないので、血管内壁プラークの無侵襲計測技術移転までどの程度の距離があるのか判断可能なデータを取ることが望まれる。今後、簡便に血管内壁プラークの無侵襲計測ができるようになれば社会還元が期待できる。
人工細胞外基質よりなる機能化神経誘導管による末梢神経再生 独立行政法人国立循環器病研究センター
柿木佐知朗
独立行政法人国立循環器病研究センター
大屋知子
本研究課題は、ラミニン-エラスチン複合型人工細胞外基質(AG73−(VPGIG)30)の末梢神経再生誘導管への展開を目標とする。具体的には、大量発現系の確立(100mg/1Lカルチャー)と、その高効率な精製法を検討する。その後、得られたAG73−(VPGIG)30を基材としたナノファイバーの作製検討と、神経誘導管の成型を目指すものである。研究期間が8カ月程度であったこともあり、当初の計画を達成することはできなかったが、全ての根幹となるAG73−(VPGIG)30の大量発現系の最適化(300mg/1Lカルチャー以上)を達成し、ナノファイバーの作製条件の検討まで行うことができた。今後は、当初予定していたAG73−(VPGIG)30を基材とした神経誘導管の作製と、それを用いた動物実験へと展開したい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、神経再生機能を有する人工基質AG73−(VPGIG)30を大量に生産し、ポリ乳酸ナノファイバー製の神経誘導管に吸着させることに成功し、作成した神経誘導管をラットの座骨神経欠損部に移植する手技を確立した点は評価できる。一方、動物実験により本人工基質が神経再生を促進するために何が必要か、その技術的課題を明確にし、当初の目標に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、本技術が臨床応用されると末梢神経損傷により四肢等に麻痺が残る患者の社会復帰に大いに寄与することが期待できる。
高い弾性率と細胞接着性を有するポリペプチドハイドロゲルから成る自己組織再生型小口径人工血管の開発 独立行政法人国立循環器病研究センター
馬原淳
独立行政法人国立循環器病研究センター
大屋知子
本研究では、ポリペプチドハイドロゲルを内腔にもつ自己組織再生型人工血管の開発を目指した。内径が4mm 以下の小口径人工血管は実用化へ向けて数多く報告されているが、未だ血栓形成や狭窄といった問題がある。そこで、自己血管組織の再生を積極的に誘導する新たな小口径血管としてチューブ構造のポリペプチドハイドロゲルを作製し、ラットを用いたin vivo での組織再生と血管の開存性について評価した。内径1mm の移植グラフトを1 ヶ月間ラットの腹部下行大動脈へ移植した結果、グラフト内腔に血管組織と同様の内皮細胞と平滑筋層からなる組織が再生した。さらに、再生した組織は自家血管と完全に結合していた。以上の結果より、ポリペプチドハイドロゲルを内腔にもつ小口径人工血管は、自家組織の再生を効率良く誘導することで、血管の開存性を維持できることが明らかとなった。今後、長さ30cm、内径1mm の小口径血管を作製しバイパスグラフトとしての有効性を検討することで開発した小口径人工血管の実用化を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、Elastin−RGD 配列のポリペプチドからなる人工血管は、1ヵ月の動物実験で有効な開存性・血液量が得られ、細胞の浸潤も確認されたことから一定の成果が得られた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、実用化に向けて従来の非コーティング材料との比較が必要で、長い人工血管の工業的な作製も課題である。また、20〜30cmの小口径血管へのコーティング方法が開発できれば企業化も可能であろう。開発技術をもつ企業の積極的な探索とマッチングが重要と思われる。今後は、他の製品との比較による有意性の検証と、実際に人工血管として使用可能な長い材料開発が望まれる。
抗体医薬高発現系のニワトリ培養始原生殖細胞株への導入と生殖系列分化の試み 独立行政法人産業技術総合研究所
大石勲
独立行政法人産業技術総合研究所
堀野裕治
遺伝子組換え技術を用いて鶏卵中に抗体医薬など有用蛋白質を安価に生産する技術開発を目指し、ニワトリ始原生殖細胞株を用いた組換え生殖系列キメラニワトリの樹立を試みた。目標として1)抗体医薬高発現系(3種類)を導入した始原生殖細胞株の樹立、2)生殖巣キメラヒヨコ3種類3系統以上の樹立、3)遺伝子組換え細胞の生殖系列分化の達成 の3項目を設定した。一連の研究の結果、1)抗体医薬高発現系を安定的に導入した4種類22クローンの始原生殖細胞株を樹立し、2)生殖巣キメラヒヨコ4種類12系統を樹立し、3)うち7系統の精液中に移植細胞由来のゲノムDNAの存在を認められた。設定した目標は達成され、始原生殖細胞を用いてニワトリ卵をバイオリアクターとする技術の開発に向け大きく進展した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ニワトリ始原生殖細胞株を用いることで組換え生殖系列キメラニワトリの樹立に成功している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、遺伝子組換えニワトリの作製などの周辺技術開発が不可欠であるので、今後の研究によって達成されることが望まれる。本研究の成果は、鶏卵バイオテクノロジーという社会ニーズの高い分野での応用が期待できることから、今後幅広い領域での社会貢献も期待できる。
リハビリ機能と生活支援機能を備えた空気圧シリンダによる上肢支援システムの開発 関西学院大学
嵯峨宣彦
関西学院大学
山本泰
本研究は、随意性が残存している不全片麻痺患者や加齢や事故により筋力低下した患者を対象としたコンパクトでシンプルな上肢機能支援システムを目指している。操作パネル、PLC、ミニコンプレッサを内蔵し可搬性・操作性に優れた制御BOXを開発、モチベーション維持に向け、回復度合いのSDメモリへの記録とグラフによる可視化を可能にした。生活支援モード拡大やリハビリテーション機能拡大のため、各種センサによる計測を通じて、動作支援に必要な力の推定や対象となる生活動作を探った。さらに、付加するセンサを含めた機器とのバランスを考慮し、空気圧シリンダで実施可能な食事介助支援機構を設計、可能性を確認した。今後、実用的な制御手法の開発や医療現場における評価を行っていく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、食事支援動作において、既設のガススプリングや前腕の屈曲動作における残存筋力などを考慮した制御系設計などいくつかの積み残し課題が生じたものの、概ね達成できている点と、携帯性、操作性に優れた制御BOXが実際に開発され、生活支援モードの拡大が図られるなど企業が実用化を検討するにあたり理解しやすい成果が得られている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、食事支援動作において、既設のガススプリングや前腕の屈曲動作における残存筋力などを考慮した制御系設計など、いくつかの積み残し課題を解決する必要がある。今後、病院関係者や患者、さらに協力企業との連携など現在行われている協力体制をさらに発展させる検討もなされているので、技術移転を目指したステップにつながる可能性が高まったと考えられる。
セメント製法に対するボロネーゼ製法によるコンフォートパンプスの開発 神戸女子大学
大森正子
神戸女子大学
大島寛(野角寛)
履き心地、歩き心地の良い靴について、人間工学的に検討した結果、ボロネーゼは、歩行による足底圧への左右差バランスが崩れにくい、「ボロネーゼ・柔らかい」条件では、ある特定の部位に集中して圧力がかかるのではなく、前足部全体へ圧力がかかることが分かった。つまり、これにより足が靴内で前へ滑るのを防いでいることを確かめることができた。しかし、前足部全体への圧力が、履き心地、歩き心地の評価を低くする一因である「圧迫感」、「拘束感」につながることも明らかとなった。また、ボロネーゼパンプスによる歩行は、COP軌跡より内側型から中央型へ矯正する可能性が示唆される結果を得ることができ、踵の摩耗状況と3次元姿勢計測により、踵削れ3mmより姿勢変化が起こることを明らかにすることができた。以上より、拘束感」、「圧迫感」を解消することができれば、ボロネーゼ製法、柔らかい条件のパンプスは、人間工学的に足に優しい良い靴であることがわかった。今後は踵素材、表皮素材について、皮革企業、染色企業と検討にはいる予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、靴の歩き心地の評価法として人間工学的なアプローチで従来のセメント法と効果の期待できるボロネーゼ製法の比較実験を行い、後者の方が歩行後の姿勢変化が小さく、長期歩行実験でもかかとの摩耗が小さく、製法による差を明確に示す研究手法を明示した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、被験者が少なく唯差が得られておらず、被験者を増やしての追試が必要と思われる。企業との共同研究の下に試作靴が作られ、今後、企業の協力のもとに研究成果を踏まえた靴の製造法が採用される可能性は高い。研究が進めば社会還元が期待される。
あらゆる型のインフルエンザウイルスと結合できる糖鎖修飾核酸の開発 神戸大学
江原靖人
神戸大学
大内権一郎
インフルエンザウイルスがどのように変異しても結合能を有する新規化合物の探索を目的とし、シアリルラクトース修飾核酸の設計および合成を行った。DNAの配列を最適化することにより、シアリルラクトース残基がインフルエンザウイルス上のヘマグルチニン(HA)のシアリルラクトース結合部位に多点で効率よく結合するように設計を行い、DNAポリメラーゼとシアリルラクトース修飾ヌクレオチドを用いてシアリルラクトース修飾核酸を合成した。赤血球凝集阻害実験より、インフルエンザウイルスHAに対するシアリルラクトース修飾DNAの結合定数が10 8M-1オーダーであることが示され た。このシアリルラクトース修飾核酸は、抗体のように変性することはなく、またウイルスが変異し てもHAのシアリルラクトース認識能は維持されることから、あらゆる型のインフルエンザウイルスと 結合できる可能性が確認された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、研究のコンセプトに沿った分子設計がなされ、目標値とした結合定数の化合物の取得に成功している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、コスト面のみならず、量産化の点などの課題が残されており、この克服が今後の展開上大きなポイントと思われる。今後、特許出願については、用途特許も含め早急に出願されることが望ましい。
新規がん抑制遺伝子TFLのモノクローナル抗体を用いた悪性リンパ腫の診断と予後予測 神戸大学
皆川健太郎
神戸大学支援合同会社
石井昭三
悪性リンパ腫の新しい診断法の確立と予後予測を行うべく、我々が近年同定した悪性リンパ腫関連がん抑制遺伝子TFLの免疫染色を用いて、TFLのリンパ腫での発現強度を検討し、臨床データベースと照合しながら、TFLがリンパ腫における予後予測マーカーとなりうるかの検証を行った。我々は最終的に254例のリンパ腫症例を対象にTFLの免疫染色を行い、TFLの発現強度を検討した。その結果びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫においてTFLの発現欠失が高い結果となった。次に他の組織マーカーとの関連を調べた結果、悪性度の高いリンパ腫にTFLの欠失は相関していた。TFLの発現欠失により悪性リンパ腫の悪性度が高まる可能性があり、TFLの機能解析も含めた今後の展開が注目される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、 TFLの免疫染色による発現様式と臨床像との対比を行ったが、当初の目標に比べて症例数が集まらず解析が必ずしも十分とは言えないが、独自性のある分子である点は評価できる。一方、TFLが臨床マーカーとして従来の診断法を上回る能力があることを示す技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。研究成果が応用展開された際には、臨床の場で悪性リンパ腫の診断・治療に新たな選択肢を提供できる可能性はある。今後は、これまでの結果をさらに発展させ、悪性リンパ腫の生命予後、悪性度が予測可能な新規マーカーを開発することが期待される。
放射性薬剤を安価に製造する方法の開発 独立行政法人理化学研究所
長谷川功紀
独立行政法人理化学研究所
井門孝治
申請者の目的は、我々の開発した固相上で放射性薬剤を安価に合成する方法において起こる副反応を抑制することである。副生成物のアシルイソウレア体の生成機構から考え、1回の反応時間が長くなることで副生成物が生じると考えた。そこで、固相担体上での1回の反応時間を短くするために種々の反応条件を検討した。その結果、固相担体の性質を親水性に変更することで、反応時間を短くでき、また未反応物を減少するために反応を繰り返し行うことで、30%程度起こる副反応を5%以下にまで抑制し、目的物を収率良く合成できる条件を見出すことに成功した。今後、他の多くの放射性薬剤合成にもこの技術を適用し、効率良い薬剤合成法を展開する予定である。 当初目標とした成果が得られていない。当初計画の反応試薬、数量の変更などでは、当初目標を達成できなかったが、樹脂の変更、反応回数を変更することにより、収率は先行法同程度であるが、副生物の生成割合を5%に低下させる目標には達した。しかし、従来品のコストが下落したことから開発された方法のメリットなく、且つ新規特許出願はされていない。DOTA以外のキレータの可能性を探索するなどの可能性があり、今回の樹脂の利用方法の展開可能性を計画している。しかし、テーマ模索の状態である。64Cuでの企業との連携の可能性を示唆するようなことが記載されているが、具体的な展開は定まっておらず、共同研究や技術移転への可能性は低いと考えざるを得ない。
血清中のユビキチン化の高感度検出法の開発 姫路獨協大学
宮本和英
生体内には生命維持の為にタンパク質の品質管理機能があり、これはユビキチン化により行われている。ユビキチン化は、様々な疾患との関係も深く、ユビキチン化の度合いを高感度に検出できれば将来的に疾患の診断・病態把握が可能である。本研究では、ユビキチン化に関わる酵素であるユビキチンリガーゼ(E3)を人工的に作製し、さらに生理活性反応測定装置(AMIS-101)を活用することで、人工的なE3のユビキチン化の度合いを高感度に検出測定することに成功した。今後、血清中でのユビキチン化の度合いを検出・測定が可能となれば技術移転が可能である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。目標に掲げたユビキチン化の定量に用いるE3酵素の調製およびその機能検証はなされたが、マウスまたはヒト血清を用いる技術検討には至っていない。一方、研究成果は、基本酵素の調製と初期の機能評価に留まっている。疾病の診断に興味をもつ企業への技術移転の可能性については、ヒト血清を用いた測定系の実証検討が必要と思われる。関連特許は2009年に出願されているが、本研究開発の成果としての特許は出願されていない。特許出願が少ないため、企業は本腰を入れることに逡巡するのではないか。培養細胞での結果だけでは、事業化は出来ないので、今後は、色々な資金を得て、研究開発を進めることを期待する。
単一分子配向計測を用いたマイクロマシン動作試験装置の開発 兵庫県立大学
吉木啓介
兵庫県立大学
八束充保
目標
偏光モード変換器を用いた立体配向顕微鏡に最高ナノ秒オーダーの時間分解能を付与する。また、そのシステムを用いてMEMSデバイスに散布した単一分子標識の位置、角度の追跡によって、変形解析を行う。目標とする時間分解能は5ns、位置分解能は奥行き方向5μm、面内方向に500nm、角度ブナ機能は奥行き方向に10度、面内方向に0.2度とする。
達成度
時間分解能を向上させた結果、受光光量が減少し、単一分子の観測が困難となった。そのため、凝集体の計測にとどまったため、配向の計測には至らなかった。しかし、時間分解能はMEMSデバイスの動作速度を上回る分解能を示し、実用には十分であった。本計測機の性能をさらに引き出すためには、MEMSデバイスの更なる小型化による高速化が必要となり、将来の微小機械へのポテンシャルも確かめられた。
今後の展開
感度の向上、最適な分子の選定により、単一分子標識の観測を行うことによって、当初の目的であった角度分解計測を実現する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、時間分可能5nsを達成している点は評価できる。一方、光学顕微鏡の分解能や標識分子の蛍光強度、及びバックグラウンド蛍光の影響について、実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。「単一分子配向計測を用いたマイクロマシン動作試験装置」は、企業化の可能性も高く有望な開発であると考える。今後、高性能を目指すだけでなく、現状の仕様で十分なMEMS対象の開発品は早く製品化し、高性能品は高級製品として検討を進めることが期待される。
等電点二次元電気泳動による膜タンパク質の高精細分離システム 兵庫県立大学
菓子野康浩
兵庫県立大学
八束充保
疎水性の非常に高い膜タンパク質を分離することが可能な等電点二次元電気泳動法の開発を目指した。そのために、ハイスループットな分析が可能になるよう、IPG(固定化pHゲル)のように簡易なシステム化の検討に注力した。その結果、乾燥したタンパク質分離用ゲルを支持基板に再現性良く固定化することが可能となった。この系を用い、乾燥前のゲルで等電点電気泳動を行うと、膜タンパク質が等電点に従って分離可能であった。しかし、ゲルをいったん乾燥してからサンプルを含む液で膨潤させたあとに等電点電気泳動を行うと、タンパク質の分離が良好ではなかった。今後、ゲルに含ませる膜タンパク質の可溶化剤を各種検討し、実用化を行う。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。基盤としての耐水性サンドペーパーの有用性、5%グリセロールの添加による乾燥ゲルの作製に成果をあげているが、二次元目の泳動に課題が残るなど、必ずしも当初の目標が達成されているとは言えない。疎水性の高い膜蛋白質の分離に必要とされる課題は明らかにされつつある。二次元目の泳動に課題があることははっきりしてきているが、それに対する今後の具体的な実験計画が示されていない。広範囲の分子量をもつ膜蛋白質の二次元泳動には幾つかの進展は見られるが、特許出願は見られない。新規な研究、技術開発には当初予想していた通りに進むとは限らないし、計画通りの時間軸に沿って達成されないことも往々遭遇する。しかしながら、一次元泳動後、ゲルを乾燥すると二次元目の泳動が必ずしもうまくいかないと言ったことは原因が何であれ、ある程度考慮しておく必要があったであろう。細胞や生体材料のプロテオーム解析において二次元電気泳動は簡便な手法として重用されている。膜蛋白質の泳動には品質の均質な、安定した泳動基盤の調製が必要と思われるが、引き続き目標達成に向けて研究を進展されることを期待する。本課題で提案されている膜蛋白質を高精度に分離する手法が完成すれば、膜蛋白質の二次元泳動データベース作成など利用されるようになるであろう。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の呼吸波形解析を活用した呼吸困難評価法の開発 奈良県立医科大学
藤田幸男
関西ティー・エル・オー株式会社
山本裕子
COPD患者の主な自覚症状の一つは体動時呼吸困難であり、呼吸困難が強いと日常生活が著しく制限されるだけでなく、生命予後を悪いことが知られている。しかしながら、呼吸困難の発生機序および客観的な評価法は確立されていない。本研究では、不規則呼吸と呼吸困難感が関連すると仮想し、COPD患者における安静時の呼吸波形と呼吸困難の関連を検討した。その結果、MRCスケール、およびBorg scaleで評価した呼吸困難は呼吸機能(1秒率、1秒量、対標準1秒量)、および安静時の動脈血酸素分圧とは関連を示さなかったが、呼吸不規則性と関連を認めた。安静時の呼吸不規則性がCOPD患者の呼吸困難感の客観的指標となる可能性が示唆された。
 
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、臨床的に診断されたCOPD患者16名の安静時呼吸データが収集され、RIPモニターで測定した安静時呼吸波形がCOPD患者の呼吸困難感の指標になり得ることを示した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、呼吸困難の出現との関連についての検討が望まれる。本測定法の臨床的意義が確立され次第、企業との連携を行っていく予定とされており、具体的な企業名やアプローチの方策も検討されている。今後、本研究成果が応用展開された際には、COPD患者の日常診療に非常に有用なものとなることが予想され、日常診療にもたらす貢献度は大きいと予想される。
腟内pH値及び緩衝能測定による早産の早期予知法の開発 奈良県立医科大学
野口武俊
関西ティー・エル・オー株式会社
山本裕子
本邦における早産率は近年増加傾向にあり、医療費削減のためにも早産予防が喫緊の課題である。妊娠22週から37週までに分娩に至ることを早産という。ベビーの予後は妊娠週数の大きい方が生存率が高く、身体的・精神的発達予後も良好である。そのため早産しそうな妊婦(切迫早産妊婦)を早期に予知することができれば早期に治療を開始し、早産のリスクを回避できる可能性がある。本研究では妊娠女性の腟内pH値を測定し、新たに膣分泌物の緩衝能という概念を取り入れ、正常妊婦と切迫早産妊婦では膣分泌物のpH緩衝能の差があることを証明し、これにより早産を予知する。またこの膣分泌物のpH緩衝能の差より早産予知キットの開発も可能と考える。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。結果として、腟内pH測定からでは早産予測が不可能であることが分かり、緩衝能からも早産にならない可能性はある程度言えるが、早産になることを予知するのは現状では困難であることが示された。一方、技術移転の観点からは、緩衝能の有用性を確立するための新たな基礎研究成果によるブレークスルーが必要であることが明確になった。少子化時代においてますます重要な切迫早産の予知という課題への挑戦であり、また、独創的発想に基づく研究であるので、まず基礎研究を十分に深める必要がある。これら成果を基にして、将来において企業化、社会還元につなげることが期待される。
3次元画像による顎顔面領域外科手術シミュレート技術の開発 奈良県立医科大学
今井裕一郎
関西ティー・エル・オー株式会社
山本裕子
本研究の目標はRapid prototyping 技術とバーチャルリアリティーの応用により、現在の下顎骨腫瘍患者における顎骨再建術の問題点を克服するとともに、この技術による新たな手術手技、術後補綴、術後機能評価法および教育の確立を目指すことであった。その結果としては、術前に作成した三次元CADを用いて、シミュレーションを行い、下顎骨離断および辺縁切除用surgical guideを作製し、さらに腓骨分割用template作製が可能となり、実際の手術で使用することができた。今後の展開としては、術前シミュレーションの自動化を図るためのコンピュータープログラミングを進めることで、シミュレーション時間短縮、正確性および術後QOLの向上を目指した低侵襲、安全性および精密性を兼ねそろえた医療を提供したい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、その結果として術前に作成した三次元CADを用いてシミュレーションを行い、手術ガイドを作成し実際の手術に使用できた点は評価できる。一方技術移転観点からは、術前シミュレーションの自動化を可能とするコンピュータプログラミングを進め、シミュレーション時間短縮、正確性および術後QOLの向上を目指した医療の実現化が望まれる。この自動化ソフトは企業への技術移転が可能と思われる。今後、この技術で術後QOLの向上を目指した低侵襲、安全性および精密性をもつ医療を提供することが期待される。
赤外線遺伝子導入装置の開発 奈良女子大学
松田覚
奈良女子大学
藤野千代
遺伝子と試薬の混和溶液を霧状にして噴霧し、同時に強力な赤外線照射を行うことで、培養細胞に遺伝子導入できる装置を開発することが目標である。遺伝子導入効率は高いほど良い。この条件が満たされれば、種々の動物種でのフィールド応用も可能と考えられるため、現在、基礎的なデータの集積を行っている。これまでに、GFP遺伝子や遺伝子導入試薬を大量に精製しトランスフェクションに使用可能な状態で保存している。また実際に可視光線や赤外線を用いた噴霧状でのトランスフェクションをヒト培養細胞で行い、遺伝子導入効果を確認した。今後は遺伝子導入効率の向上を目指した条件検討に努める。
当初目標とした成果が得られていない。研究責任者は、当初目標に掲げた赤外線に特化した遺伝子導入効率の最適化ではなく、温度によって導入効率の違うことを見出した。また、マウスNIH3T3細胞やミツバチ初代培養細胞では赤外線には細胞毒性があるため導入効率が低かったと結論しているが、その場合、汎用性のある手法として再考を要すると考えられる。今後、遺伝子導入効率を制御する主要な因子が、光線の波長や強度なのか、単に熱であるかを明確にした上で、本課題の目標であった効率を高くする赤外線波長の検討や温度による影響を加味した最適な条件の検討をすべきである。
ポリアセチレン誘導体を活用した温度応答性遺伝子キャリアの開発 奈良先端科学技術大学院大学
寺田佳世
奈良先端科学技術大学院大学
戸所義博
本課題は、らせん高分子として知られるポリアセチレン誘導体を温度応答性材料として用いて、熱刺激によってDNA-ポリマー(キャリア分子)複合体の安定化を図り、遺伝子キャリア性能の向上を目指すものである。ポリアセチレン誘導体にキャリア分子としての性能を付与するために、DNAとの複合体形成能とプロトンスポンジ効果を示すアミノ基を有する、種々のポリアセチレン誘導体を合成した。DNA-ポリマー複合体形成能の制御を可能とする温度応答性のキャリア分子として、らせん-ランダムコイル転移を示すカルボキシベタイン基含有ポリプロパルギルアミドが有望であることが分かった。今後は、カルボキシベタイン基の導入率により転移温度を制御し、DNA-ポリマー複合体の形成能の評価を行う予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもポリアセチレン誘導体にDNAとの複合体形成能とプロトンスポンジ効果を持つアミノ基を導入し、DNAと複合体を形成し、体温付近の温度では二次構造変化によりDNAを保護して細胞内に取込まれる、ポリアセチレン主鎖の二次構造変化を活用した温度応答性遺伝子キャリアの技術に関しては評価できる。一方、ポリプロパギルアミド誘導体で構造転移が認められたものの、ほとんど目標は達成されていない、ポリプロパギルアミド誘導体が有用であることはわかったが、更なる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
母体生体信号計測による胎児心電図測定法の開発 近畿大学
吉田久
近畿大学
根津俊一
本研究開発では、母体腹壁生体電位計測によって得られた信号から、心電図におけるQRS群の識別可能な胎児心電図測定を目標とし、分離精度を重視したアルゴリズムを検討と、母体腹壁生体電位計測の方法に関する研究も行った。その結果、母体腹壁生体電位信号から、胎児心電位を抽出するためのアルゴリズムとして、各電極に独立に混入する雑音を考慮した独立成分分析法を適用することによって、胎児心電位のR波の抽出だけでなく、QRS群の識別が可能となることが示された。さらに、標準的な脳波計よりも高性能な生体計測アンプを使用することで、P波やT波なども確認できる場合があることが示された。今後、専用の生体信号計測装置の開発を推進することで、無侵襲胎児心電図測定が現実のものとなることが期待できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、医工連携による技術移転につながる研究成果が得られている。一方、技術移転の観点からは、胎児心電図の有用性をはっきりすることで高年齢出産グループへの支援機器への開発につながると思われる。近年の高年齢出産を例にとっても危険率をよりすくなくするために、胎児の心電図情報収集の重要性を認識させた方がよいと考える。今後、少子高齢化と高年齢出産による乳幼児の出生の危険性・安全性について、医側のコンセンサスを得ることが重要と思われる。
人中・鼻部を構成する曲線(面)の分析とそれを用いた形成外科手術支援システムの開発 和歌山大学
原田利宣
関西ティー・エル・オー株式会社
山本裕子
顔面各部位におけるプロポーション、角度計測の研究は、形成再建手術の進歩に貢献してきた。しかし、顔面は曲線・曲面から構成され、比率や角度からだけでは形状を定義できない。そこで本研究では、人の人中・鼻部に存在する曲線(キーライン)に着目し、それらの計測・分析・形態的特徴の同定・体系化を行った。次に、その結果を用いてテンプレートとそれを作成するための形状創成支援システムを開発し、人中・鼻部の再建手術を行う際の指針を与え、形状創成の支援を行うことを目的とした。
その結果、人中の曲線は4タイプ、鼻部の曲線は5タイプに分類された。また、それぞれの形状創成支援システムを開発し、テンプレートを製作した。鼻部に関しては、実際に形成外科手術にそのテンプレートを適用し、その有用性を確認した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、18〜24歳と限られた年齢層が対象となるが、外鼻形状の分類とテンプレート作成、形成外科手術への適用が実施され、当初の目標は達成された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、適用範囲を広げるために多民族、多国籍の被験者に対して分類を行うことや、人中のシステムを手術に適用することが課題として記載されているので、詳細な計画を立て検討されることが望まれる。今後、形成外科手術における形状の指標となるため、社会還元が大いに期待される。
新規がん抑制遺伝子を標的分子としたがん早期診断法の開発 鳥取大学
久郷裕之
鳥取大学
山岸大輔
申請者らが新規のがん抑制遺伝子として同定したPITX1の発現動態および機能解析を通して、「PITX1―テロメラーゼ抑制経路」をとりまく制御ネットワークを明らかにし、その情報を元にがんの予防・診断・治療へ応用するがんトランスレーショナル・リサーチの推進およびその実用化を目指す。本研究期間において、1)PITX1 抑制マイクロRNAの同定とその抑制効果の確認および2)特定がんにおけるPITX1の発現低下が悪性度と相関し、悪性度マーカーとなる可能性を見出した。一方、PITX1による増殖抑制効果を検討するための資材の作製までに至らなかった。したがって、総合的に達成度は70%と評価した。今後は、本研究期間中の成果をさらに伸ばし、がんトランスレーショナル・リサーチの実用化を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも新規マーカーとしてPITXIが細胞増殖を負に制御するという技術に関しては評価できる。一方、種々の癌に対して利用できる腫瘍マーカーの開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、多くの癌に対する積上げたデータを活用し、PITXI−テロメラーゼ抑制経路を取り巻く制御ネットワークを明確にし、今後、展開されることが望まれる。
生体接着剤を用いた難治性半月板損傷の治療 島根大学
内尾祐司
島根大学
中村守彦
本研究では酒石酸のカルボキシル基に活性エステル基を導入したジスクシンイミジルタータレート(DST)を硬化成分とし、ヒト血清アルブミン(HSA)を接着成分とした接着剤(DST+HSA)を用いた難治性半月板損傷に対する治療法の開発を企図し、その有効性と安全性を検討した。その結果、DSTとHSAの至適組み合わせ濃度による本剤はフィブリン系接着剤の約2倍の接着強度を有し、本剤を組み込んだ縫合糸による接着強度は従来の縫合法の約1.3〜1.5倍に増加することが判明した。さらにウサギを用いた実験では生体内では接着が6か月に亘り維持され、炎症細胞浸潤や組織障害などの有害事象は観察されなかった。以上から、本生体接着剤は難治性半月板損傷に対する有効かつ生物学的安全性の高い生体接着剤であるといえ、臨床実用化が期待できる方法であると考える。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、酒石酸架橋剤とヒト血清アルブミンを組み合わせた接着剤、および本剤を組み込んだ縫合糸では接着強度の増加が認められ、ウサギの実験でも本剤による接着が長期間維持された点は評価できる。一方、ヒト半月板を用いた接着強度の評価は、臨床実用化に向けての技術的課題として検討する必要がある。今後は、動物やヒトの半月板を用いる縫合実験が必要であるが、研究成果が臨床応用されれば、強力な生体接着剤を提供することが可能となり、難治性半月板損傷の治療に貢献することが期待される。
透析廃液再利用のための新規吸着材および吸着器の開発 岡山大学
城崎由紀
申請者らが開発したキトサン-ケイ酸多孔質複合体粒子表面に酸化チタンを修飾し、透析廃液用新規吸着材を作製する。さらにその吸着材、既存の無機化合物、およびイオン交換樹脂の透析廃液に対する吸着特性を明らかにし、それらを組み合わせたカートリッジ型新規吸着器を開発するための指針を得る。コーティングの基板となる多孔質複合体粒子の比表面積を増大させるために、孔径を制御した。また、粒子の圧縮強度を架橋密度により増大させた。ゾル-ゲル法を用い粒子表面に酸化チタンをコーティングした。各種無機材料のタンパク質吸着特性は、ゼオライトが最も有利な吸着量を示し、一方、陰イオン交換樹脂は、透析液中のグルコースをほぼ完全に吸着した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。透析廃液再利用のためにキトサン酸多孔質複合体表面に酸化チタンを修飾した新規吸着剤の開発が目標であったが、キトサン−ケイ酸多孔質複合体粒子の作製を行い、孔径の異なる多孔質体の生成には成功したものの、多孔質粒子を基盤とし表面に酸化チタン粒子を被覆する試みは点在のみで全面を覆うには程遠い結果であった。また、透析液廃液中の尿素の廃液が50%までしか除去できず、今回の成果では目標は達成されていない。今後の開発目標についても、新規吸着剤の開発が必要と表現されているが、具体的開発計画は示されておらず、現時点での技術移転の可能性は低いといえる。
先天性心奇形由来のヒトiPS細胞を用いた次世代再生医療法の開発 岡山大学
王英正
岡山大学
桐田泰三
近年報告された特定諸因子群による線維芽細胞の人工多能性幹(iPS)細胞及び人工心筋(iCM)細胞への直接再プログラム化の研究成果から、未分化な幹細胞からさらに細胞分化系統を制御した成熟心血管細胞の移植法や複数遺伝子群の導入による心筋再生医療が可能となった。一方、下等動物の心臓は単心室を示し、心室切除後に自己再生することが知られていることから、本研究では、ヒト単心室症由来iPS及びiCM細胞を用いた心臓自己再生プログラムを解明し、次世代の心筋再生医療法として、新たに同定された心臓自己再生誘導因子群を用いた治療法へ応用展開させる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、心筋細胞分化を誘導する因子候補としての7因子を選別し、ヒト心筋細胞の心筋への分化を確認し、心筋細胞への分化誘導が確認された技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、誘導した心筋細胞の機能評価、因子の絞り込みなどさらなる検討が必要である。今後は、どのような事業展開を想定しているのかを明確にして研究を進められることが望まれる。
難治性感染症治療薬としてのクオラムセンシング阻害剤のin vivoリアルタイムイメージングによる評価と新規治療法の開発 岡山大学
狩山玲子
岡山大学
桐田泰三
本研究は、緑膿菌クオラムセンシング(細胞密度依存的)機構の阻害剤として見出された化合物(QS阻害剤)について、先進的なリアルタイムイメージング手法を応用したマウス大腿部感染モデルを用い、難治性感染症治療薬としての位置づけを各種抗菌薬との併用効果を中心に評価することが目的であった。QS阻害剤(4化合物)と各種抗菌薬との併用療法に関して至適投与方法を探索した結果、顕著な併用効果を示す数種類の抗菌薬との組み合わせを見出した。低用量で各種抗菌薬との併用効果が得られる臨床応用可能なQS阻害剤の開発が今後の課題である。高度化・複雑化した今日の医療現場には、緑膿菌やアシネトバクター等の多剤耐性菌が致死的となる患者は少なくなく、弱毒耐性菌に対する新規治療法の開発の意義は大きい。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。クオラムセンシング阻害剤(QSIs)の難治性感染症治療薬としての評価に関する課題である。QSIsが他の抗菌薬との併用により抗菌作用を増強することをマウスを用いた急性感染のin vivo実験で示している。一部未実施の項目があるが、概ね目標は達成されている。特に、QSIsと顕著な併用効果を示す数種類の抗菌薬を見いだし、QSIsと各種抗菌薬との併用効果についての基礎的データが得られており、ある程度技術移転につながる研究成果が得られていると判断される点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、研究成果に基づく新規特許出願等はなされておらず、その予定もない点は残念であるが、民間企業との連携の上で研究を進めていく点は評価できる。今後、未実施項目を実施し、技術移転への基礎データを強化するとともに、実際に治療の応用可能であるかどうかの見極めが必要であろう。現時点では、研究責任者自身がQSIsをリード化合物と位置づけていること、単剤では効果がないことなどから、実際に薬剤として上梓できるかどうかは不明である。しかし、民間企業との連携で研究を進めていることから、基盤となる薬剤の発見から生体内での有効性や副作用などの様々な問題点をクリアーして、薬剤として上梓された場合には、有効な治療薬として社会への還元が期待できる。今後の展開が期待できる。
ハイスループット解析に適用可能なマスト細胞モデルの開発 岡山大学
田中智之
岡山大学
秋田直宏
マスト細胞は、即時型アレルギーや接触性皮膚炎の発症、増悪に関与することから、生体内の成熟マスト細胞の性質を反映した培養モデルの開発が望まれている。研究責任者は、マウス骨髄由来培養マスト細胞を幹細胞因子存在下、線維芽細胞と共培養することにより、再現性の高い皮膚型マスト細胞モデルを確立した。本研究開発では、線維芽細胞のヒアルロン酸産生をRNAiの手法で抑制することにより、成熟マスト細胞の収量を3-4倍に増大させ、かつ培養操作を簡便にすることに成功した。この結果、1000のオーダーの低分子化合物のスクリーニングを一回の培養操作で得た成熟マスト細胞で実施することが可能となり、動物実験を一部代替する評価系を確立した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ヒアルロン酸に着目というブレークスルーを経て、順調に培養操作簡便化、収量増大という成果につなげた点は評価できる。一方、96ウェル小スケールでの細胞の顆粒放出レスポンスの活性が、通常スケールと同等である事が、クリアーカットには証明されていない点の対策が必要と思われるし、即時型アレルギ−反応の確認試験法の確立のため、肥満細胞の培養系、さらにマクロファ−ジからのクロスト−クの確立が望まれる。今後、操作簡便化、収量増大が完成したので技術移転を考えて良い段階と考える。
OMIC小型加速器を用いた高純度ガンマ線放出核種製造技術の確立と新規分子プローブ標識法の開発 岡山大学
榎本秀一
岡山大学
秋田直宏
岡山メディカルイノベーションセンター(OMIC)における放射性核種の製造及び反応条件の検討のために、今回、研究責任者らは、理化学研究所仁科加速器研究センターの大型加速器施設を利用し、トランスアクチノイド元素群の高効率で迅速な製造方法の開発を行った。このトランスアクチノイド元素群には、ハロゲン化物イオンによる陰イオン錯体形成を対象に、Rfと同族元素のジルコニウム(Zr)やハフニウム(Hf)が含まれる。核医学用に応用するため、これらの化学分離方法並びに化学形態について調べた。今回、検討した各種放射性核種の製造方法、化学分離方法の結果を転用し、今後はOMIC所有の小型サイクロトロンを用いて89Zrなどのトランスアクチノイド元素の放射性核種の製造に着手する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。今回の結果は、大型加速器を用いた研究成果であるが、小型加速器にそのまま適用できるか疑問であるが、一つの結果として評価できる。一方、技術移転の観点からは、小型加速器でも可能性が出てくるのであれば、汎用性も高くなり、価値ある結果となる。小型加速器による研究を進め、小動物を用いた実験による新規分子プローブの実証を進めれば、今後の展開に結び付くと期待する。
変異能力を有したB細胞株を用いた動物細胞ディスプレーによる単鎖抗体の親和性成熟システムの開発 岡山大学
金山直樹
岡山大学
秋田直宏
単鎖抗体を抗体重鎖定常部Fcとの融合タンパク質としてDT40細胞表面に発現させ、DT40の変異能力により効率よく高機能の変異体を得るための技術開発を行った。scFv抗体としての発現例のある上市されている抗EGFR抗体のscFv遺伝子をDT40に組み込んだが、Fc融合タンパク質として発現には至らなかった。抗体によってはそのままではDT40での発現に適さない例があることが明らかになった。蛍光タンパク質のFc融合タンパクを発現するDT40を用いた検討では、導入した蛍光タンパク質遺伝子に変異が導入され、改変した蛍光タンパク質の単離に成功した。今後、発現可能なscFv抗体遺伝子をDT40に導入することによって、変異と選択により親和性の向上したクローンを単離できると考えられる。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。研究目標としてあげていた、抗体医薬として上市されているモノクローナル抗体でscFvとしても報告例のある抗EFGR抗体をFc融合型単鎖抗体としてDT40細胞表面に安定に発現させることに成功しておらず、DT40の変異機能による抗体遺伝子への変異導入、変異体ライブラリーからの高親和性抗体の単離に至っていない。抗体によって発現が困難な場合があることが判明したが、その解決策が見出されておらず、試行錯誤的な方法しかないのが残念である。抗EGFR抗体の抗代替計画として現在進められている抗ヒトCD20 抗体のscFvの改変の実現に期待したいが、産学共同研究等の研究開発ステップへの道のりは遠いように思われる。変異導入とライブラリー構築に関しては、すでに発現に成功している蛍光タンパク質−Fc融合型短鎖抗体の系で蛍光特性が変化した変異体が得られており、動物細胞ディスプレーによる単鎖抗体の親和性成熟システムとして実現の可能性は多少なりとも示されたと考えられる。動物細胞ディスプレーによる単鎖抗体の親和性成熟システムが開発されれば、抗体医薬のみならず臨床検査や基礎研究の分野に大きな波及効果が期待できるので、ぜひとも研究を進展させて欲しい。
高磁場環境(MRI)で160度視覚刺激呈示装置の試作と臨床確認実験 岡山大学
呉景龍
岡山大学
薦田哲男
近年、認知症患者は急増しているが、早期診断方法はまだ確立されていない。申請者らは、認知症患者を対象に認知脳科学研究を進め、世界で初めてMRI環境で使用できる120度の広視野視覚刺激呈示装置を開発し、視覚皮質の脳内マッピングを行った。しかし、全視覚皮質の機能領域を特定するためには、全視野(160度)への視覚刺激の呈示と、更なる高精度の呈示装置が求められる。本申請は、MRI環境で使用できる160度視覚刺激呈示装置を試作し、検証実験を実施する。本課題終了後には、認知症患者の視覚皮質の脳内マッピングモデルを提案し、早期診断への応用を図る。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。しかし、本研究開発を実施することで、MRI装置内での広視野の視覚刺激呈示装置の試作には成功したが、認知症患者についての評価はできていない。装置の試作に関しても、当初予想できなかった技術課題に対して、代替技術提案することができているが、所期目標とした解像度ならびに全視野視覚刺激呈示は達成されなかった。計画趣旨から、少なくとも両眼刺激呈示とすべきであった。今後の展開に関しても、今回試作された装置を、認知症の早期診断にどう生かすか、という点が、明確ではない。あくまでも大型なMRI装置を用いて多くの老人の健康診断を行うことをめざすのか、それともより小型の使いやすいシステムの開発を目指すのかどうか、についての方針は必須であるが、明確にされていない。ただし、MRI装置内での広視野の視覚刺激呈示装置の汎用化を目指す、というのなら、産学協同で技術移転が進むと考えられる。
がん細胞特異的結合ペプチドのインビボスクリーニング 岡山大学
宍戸昌彦
岡山大学
齋藤晃一
新規蛍光法を用いたインビトロスクリーニングにより、乳がん細胞MCF7への結合量が他のがん細胞と比べて8倍程度に達するペプチドを見出すことができた。それらのペプチドを、A431およびMCF7の2種類のがん細胞を左右腹部に移植した担がんマウスを用いて、インビボスクリーニングした結果、A431あるいはMCF7特異的結合ペプチドが見出された。このペプチドを64Cu-DOTAで放射標識し、それを2種類のがん細胞を移植した担がんマウスに静注した。OMICのPET装置を用いてイメージングを行った結果A431がん細胞が特異的に放射標識され、イメージングができることが確認された。以上により、本新規ペプチドスクリーニング法の有用性を明らかにし、スクリーニングされたペプチドはPETイメージングに使用できることがマウスで確認された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、スクリニーングされたペプチドがPETイメージングに使用できることを見出したことは、高く評価できる。一方、技術移転の観点からは、1種類のペプチドだけでなく、多く存在すると言われるヒトがん細胞(1500種類以上)にまで適用できるPETイメージングの実用化が時間はかかるかもしれないが望まれる。今後、研究すべきことは多いが、医療への実用化にとっては優れた方法になると考えられ、この方向への展開が期待される。
異所性石灰化を的確に診断するためのPET画像診断技術の開発 岡山大学
荒木元朗
(財)岡山医学振興会
大村祐章
申請者らは、動脈硬化部位の位置およびサイズを把握できる、近赤外蛍光標識抗体を用いた非侵襲的なin vivoイメージング法を開発してきた。本研究では、おかやまメディカルイノベーションセンター(OMIC)のサイクロトロンで製造した64Cuを我々が開発した動脈硬化病巣・異所性石灰化の認識抗体に標識し、動脈硬化モデルマウスに投与、陽電子断層撮影法(PET)により動脈硬化病巣への集積性および体内動態を解析する。また、これまでの取得抗体は、全て胸腺非依存的抗原(TI抗原)に対するIgM分子種であり、より診断・治療に適した高親和性・高特異性のIgG抗体取得のため、胸腺依存的抗原(TD抗原)を模倣する人工免疫原を用いたリンパ節技法を試行する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、異所性石灰化病巣抗体の64Cu標識作成の技術に関しては評価できる。一方、これらの64Cuは胸腔内の動脈に強い集積を認めても肝臓にトラップされることが課題となった。これを解決できるかどうか、解決に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、これらの課題を解決し、この分野の治療へ応用していくことが望まれる。
血管新生を標的とするプラスミンによる限定分解タンパク質の実用化研究 岡山大学
松浦栄次
(財)岡山医学振興会
大村祐章
血管新生は動脈硬化やがんの進展と深く関わっている。β2-グリコプロテインI(β2GPI)は、血液内を循環しコファクターであるホスファチジルセリン(PS)と結合し、血液凝固を抑制的に制御している。β2GPIは線溶系因子であるplasminによって第5ドメイン(D5)に限定分解を受ける(nickedβ2GPI)とPSと結合しなくなる一方、血管新生を制御するようになる。すなわち、低濃度のnickedβ2GPIのD5が血管新生制御タンパク質であるアンギオスタチン(plasminの代謝物)へ特異的に結合し、アンギオスタチンによる血管新生抑制作用を更に抑制的に制御することが申請者らの過去の研究で明らかになっている(Blood,2009)。その一方、高濃度では(nicked)β2GPIのD1がVEGF受容体に結合し、VEGFの作用を競合的に阻害する。本研究では、nicked β2GPIのこれら血管新生制御分子への標的性を利用し、また、光線力学薬剤および治療薬(抗がん剤、抗血管新生剤)を被覆・含有するマイクロキャリアを作製し、病原性の血管新生(がん、動脈硬化)の画像診断と同時に治療ができるTheranosticsの技術開発の予備研究を実施する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも64Cu調製、標識に関する技術やマイクロカプセルの抗腫瘍活性に関しては評価できる。一方新規PETブローブの開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、これらの課題を解決し、原発がん、転移がん、動脈硬化の進展を早期診断する方向に展開されることが望まれる。
緩和時間と導電率を任意に設定できる磁気共鳴診断装置用の模擬人体 岡山大学
加藤博和
特定非営利活動法人メディカルテクノおかやま
奥野健次
1.5Tおよび3.0TMRI診断装置用として、 T1緩和時間、 T2緩和時間、 および導電率を任意に設定できるファントムを開発した。 実験結果から実験式を確立し、 この実験式に人体組織の導電率、 T1値、 そしてT2値を代入することにより、 その特性を有する自立性のあるゲルファントムを作製できた。 このファントムは、 MRI装置の開発、 性能評価、 管理・維持、 研究、 取扱者の教育のために有用である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも導電率を人体のどの組織にも合わせることのできるユニバーサルなファントムに関しては評価できる。一方、人体の種々の臓器・組織に対する等価ファントム成分が得られており、ファントム内の気泡の除去に問題点が残っているが、大体積ファントムやマルチファントムの均質性への影響は少ないものと思われる。今後は、実際の生体MR画像との相関性に関するデータ収集によるファントム組成の正当性の検討が望まれる。
リポタンパク質分画の酸化脂質解析による新規脂質代謝異常症診断法の実用化研究 岡山大学
佐々木崇了
岡山大学
桐田泰三
本研究の目標はMALDI-TOF-MSと抗体アレイを駆使した新規脂質代謝診断法の開発にあたった。最終的な技術移転先には、血液検体を用いた脂質代謝異常の体外診断薬の実用化開発を期待している。動脈硬化モデルマウスなどのさまざまな脂質代謝異常モデルマウスの血中より特殊なHPLCを用いて分析・分取を行い、各リポタンパク質画分における粒子径による亜分画を分取することに成功した。またMALDI-TOF-MSを用い、動脈硬化の進行に関連する酸化脂質の検出に成功した。今後、固相化したリポタンパク質に特異的抗体(マイクロアレイ)を用いて酸化脂質を含む種々のリポタンパク質を単離し、それらに対しMALDI-TOF-MSにより定性・定量解析を行い、含有する酸化脂質と脂質代謝異常との関連について解析を行う予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。質量分析と抗体アレイを組み合わせた診断法の開発として、基礎となる研究は的確になされている。申請書にある目的は、ほぼ達成されたようではある。まだ特許などには繋がっていないが、技術移転につながる基礎的な成果が得られている。また、研究開発の過程で、新たな技術的な問題が出てきたようでもあり、今後の課題も明確になった。一方、技術移転の観点からは、本課題の内容は企業にとって負担の大きいものなので、企業化に向けて積極的に動いているとは言い難い。技術移転には、企業の側の負担を減らす研究が必要かもしれない。この内容で、直ちに引き受けてくれる企業があるとは考えにくいが、少なくとも、この研究目的が社会的ニーズの高いものであることは間違いない。今後は、技術移転を進める上で障害となる事項についての検討が必要だが、少なくとも申請の通りに研究を行い、成果を上げていることから、良く内容を理解した企業との出会いさえあれば、社会還元の可能性は低くはないように考えられる。
パーキンソン病治療に向けた新規細胞内導入型PINK1タンパク質製剤の開発 岡山大学
村田等
特定非営利活動法人メディカルテクノおかやま
奥野健次
現在、パーキンソン病の根本的な治療法は確立されていない。しかしウィルスベクターを利用した遺伝子治療でパーキンソン病原因遺伝子PINK1の発現を誘導し、病気の改善が可能であることが示されている。本研究では最終的にウィルスを利用しない、より安全なPINK1タンパク質を用いたパーキンソン病治療薬の開発を目指す。H23年度はPINK1タンパク質の調製とin vitroでの細胞死抑制効果を検証した。ジスルフィド結合を利用したカチオン化によって、PINK1は細胞内に取り込まれ内在性のPINK1と同様に翻訳後修飾をうけた。カチオン化PINK1タンパク質の導入によって、ミトコンドリア障害によって誘発される細胞死が抑制され、その効果はウィルスベクターによる遺伝子導入と同程度のものであった。H24年度はカチオン化PINK1タンパク質の脳内投与を行った。カチオン化によってタンパク質は脳実質内に効率よく導入された。現在PINK1タンパク質のパーキンソン病モデルマウスへの投与実験を行っており、実用化に向けて残された課題を解決したいと考えている。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にポリエチレンイミン(PEI)カチオン化法を利用してPINK1タンパク質を直接神経細胞内に導入する技術を開発し、ウィルスベクターよりも安全かつ効果的なパーキンソン病治療薬の開発技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、細胞内に効率よく蛋白質を導入する化学的修飾法の開発、培養細胞に対して化学的修飾した蛋白質を導入して細胞死抑制効果を明らかにした点などは評価できるが、神経細胞死抑制効果を調べる動物試験は間に合わなかった。化学的に修飾した蛋白質の効率的細胞導入法の開発や細胞レベルでの薬理効果の発見など、技術移転の可能性が期待される。今後、動物試験において化学的修飾蛋白質を組織に安定して導入できること、また、細胞死抑制効果を明らかにすることが望まれる。
可視光硬化型ゼラチンを用いた新規歯周病治療用接着材の開発 吉備国際大学短期大学部
中村真理子
本研究は光照射により表面硬化膜を生じ、生体硬組織ならびに軟組織に接着する可視光硬化型ゼラチンを歯周疾患治療に応用することにより歯周疾患治療の成績向上を目指すものである。ラットに歯周病モデルを作製し可視光硬化型ゼラチンを添加した結果、8週間経過時点で一部骨様組織の形成が認められた。さらに軟骨細胞を生きたまま封入できることならびにウサギの軟骨欠損部に成長因子や細胞を添加して埋入したところ軟骨再生が可能であることが確認された。以上のように可視光硬化型ゼラチンは患部に塗布し光硬化することにより、その場で密着固定し、かつ柔軟性があり成長因子、細胞等を内包させることが可能である材料であることが示唆された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも歯周病により失われた歯槽骨を再生させることのできる治療法に向け、可視光硬化型ゼラチンを主成分とした、軟組織・硬組織接着材に関しては評価できる。一方、可視光硬化型ゼラチン内部において歯肉上皮細胞の増殖が可能であること、および埋入試験による可視光硬化型ゼラチンの生体安全性の確認に加え、さらに詳細で具体的な検証が望まれる。今後、可視光硬化型ゼラチンの歯周病治療への応用に関する具体的検証が進められることにより新規の軟骨治療用材料としての可能性が期待される。
リン酸化蛋白質を網羅的解析するための電気泳動ゲル用蛍光染色剤の開発 広島大学
木下英司
本研究では、ナノモル濃度のリン酸化生体分子を選択的に捕捉できる蛍光発色団を有するオリジナルな分子(蛍光性フォスタグ)を用いた高精度な電気泳動用ゲル染色剤の開発を目指し、1)新規蛍光性フォスタグの合成を実施し、次いで、2)電気泳動ゲル中のリン酸化蛋白質の網羅的染色法の開発を試みた。その結果、ゲル染色剤のプロトタイプとなる有能な誘導体の合成に成功し、精製標品のリン酸化蛋白質であるカゼイン、卵白アルブミン、ペプシンのリン酸化フォームを検出することに成功した。また、細胞抽出液の試料においては、広範な等電点領域のリン酸化蛋白質を検出した。今後は、癌や神経変性疾患等の治療薬や診断法の開発に貢献する新しい蛍光イメージング法として事業展開を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、新規蛍光性フォスタグの開発およびそれを用いたリン酸化タンパク質の検出に成功しており、当初の目標を達成している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、長いスペーサー分子を導入した誘導体の合成による高感度検出が実現すれば、高感度なリン酸化タンパク質の検出システムとしての汎用性は極めて高いと思われる。今後、リン酸化タンパク質の検出は、基礎生物科学のみならず、創薬や育種などの応用科学にも使われる技術なので、本研究の技術応用は社会に資することが大いに期待される。
亜鉛フォスタグ電気泳動用中性プレキャストゲルの開発 広島大学
木下恵美子
本課題では、長期保存が可能な、リン酸基親和性電気泳動用 Phos-tag SDS-PAGE 中性プレキャストゲルの創出を行なう。中性 pH のゲル緩衝液と泳動用緩衝液の組み合わせを検討し、その候補をいくつか決定した。ビストリス-塩酸ゲル緩衝液とトリス-モップス泳動用緩衝液の組み合わせで、10-200kDa の分子量範囲においてリン酸化タンパク質に対する高い分離・分解能を示した。一方、200kDa 以上の分子量のタンパク質の解析ではトリス-酢酸ゲル緩衝液とトリス-トリシン泳動用緩衝液の組み合わせで良好な結果を得た。さらに、分子量によってゲル緩衝液を使い分ける必要のないゲルを開発中である。良好な分解性能が見られたものについて、ゲルの経時的耐久性試験を行なう。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にゲルの中性緩衝液と泳動緩衝液の条件検討によって、分子量の大小によっては分離できる条件を、また、長期保存できる条件を見出したことなどの成果に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、広範囲の分子量のリン酸化蛋白質を分離できるゲルの作製、泳動条件の確立、そして長期保存に耐えるプレキャストゲルの製品化などでの実用化が望まれる。今後は、リン酸基親和性ポリアクリルアミドゲル電気泳動法について、既に特許出願されているが、今回、これに追加する成果には到っていないと判断される。広範囲の分子量のリン酸化蛋白質を分離できる条件を見出すために目処をつける必要があることを改善されることが期待される。
間葉系幹細胞の品質検査のためのバイオチップ 広島大学
加藤功一
広島大学
山岡秀明
間葉系幹細胞を用いた再生医療が、多くの疾患の治療に対して有効であることが報告されている。中でも、歯槽骨や顎骨の再建にように歯科領域における応用は現実性の高いターゲットである。しかしながら、このような治療法が安全な医療として定着するには、移植用細胞の品質検査法が確立されなければならない。そこで本研究では、表面マーカーの発現パターンを簡便に調べることができるバイオチップの開発を目的とした。多種類の表面マーカーに対する抗体を配列固定したバイオチップを作製し、チップ上の各抗体と間葉系幹細胞の反応性を一挙に調べる方法の確立に取り組んだ。このチップ分析法を細胞集団の品質を特徴付ける検査法の一つとして提案するとともに、技術移転の可能性を探索した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、間葉系幹細胞(MSC)品質検査のためのバイオチッププロトタイプの完成はほぼ達成され、選択抗体の反応性や使用条件の検証、バイオチップの改良も十分に行われている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、MSCを用いた再生医療のニーズに即したバイオチップ改良、マウスMSCとヒトMSCは特徴が異なることから新たな抗体選定も含めた再検討、チップには25スポットが配列されているので、更なる細胞表面マーカーに対する抗体の検討が必要と思われる。今後、より多くの抗体を載せた広範・詳細なタイピングにも応用可能であることが期待される。
骨系統疾患の新規治療薬開発 広島大学
齋藤敦
広島大学
山岡秀明
本研究ではこれまで焦点があてられていなかった骨軟骨代謝のダイナミクスをタンパク質品質管理機構の観点から解析し、骨・軟骨の発生、分化、成長、傷害、再生を分子レベルで解明することを目的とした。小胞体ストレスセンサーOASISおよびBBF2H7の活性化および分解機構と、BBF2H7の軟骨組織における新たな機能を明らかにしたことで、当初の予定であった生理的小胞体ストレス応答のシグナル解明の一端を解明することに成功した。しかしながら今回の研究では小胞体ストレス応答シグナルの人為的な制御を可能にする薬剤の開発を達成することはできなかった。今後は今回達成に至らなかった小胞体ストレス応答シグナルの人為的な制御を可能にする薬剤の開発を、ハイスループットスクリーニング法などによって成功させることを目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、本軟骨形成におけるBBF2H7の詳細な機能解析を行っている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、本研究は骨・軟骨の発生、形成に関する基礎的研究であるが、予定されていた小胞体分子シャペロン誘導剤BIXに関する検討を行い、研究成果が骨粗鬆症や変形性関節症の予防または治療につながる可能性を示すことが必要と思われる。今後、研究の目的を「生理的小胞体ストレス応答の人為的な制御を可能にする薬剤の開発」としているが、具体的にどのように制御できる化合物であれば治療薬としての可能性が期待できるのか明確にすることが望まれる。
マイクロサテライト不安定性マウスモデルを利用した大腸癌発癌抑制物質(薬剤、食品)のスクリーニング法の開発 広島大学
檜井孝夫
広島大学
山岡秀明
本研究では、私共がこれまでに開発したマイクロサテライト不安定性Cre誘導型マウスを利用して、マイクロサテライトを安定化し、これらによって惹起される発癌物質に対して抑制効果をもつ薬剤や食品の開発法を実用化することをめざして、そのアッセイ系について検討をおこなった。今回の調査では、これらを観察し数量化することで客観的に判断が可能であるようなシステムの構築をめざした。マウス腸管を発色後、実体顕微鏡で拡大した映像を撮影し、青色の部分の面積などで定量化してきたが、より広範囲での評価を可能とするため、腸管全体をスキャンして解析する方法などを検討中である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、マウスモデルの選定・マイクロサテライト不安定性の至適条件が設定させた点については評価できる。一方、大腸幹細胞における本実験系を確立し、応用展開に発展させるための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、技術移転に向けた具体的な方向性を示すことが望まれる。
高付加型ポリリン酸含有義歯洗浄剤の開発 広島大学
赤川安正
広島大学
山岡秀明
真菌であるCandia albicans(カンジダ菌)の義歯への付着は、義歯性口内炎や最悪の場合には肺炎を惹起させる。申請者は、高い抗真菌性と安全性・操作性を有する高付加型ポリリン酸(高分子ポリリン酸ナトリウム)に着目し、カンジダ菌とカンジダ菌が形成するバイオフィルムに対する高付加型ポリリン酸の抗真菌効果を評価し、高付加型ポリリン酸を義歯洗浄剤の成分として応用できるか否かを明らかにすることを目指した。
高付加型ポリリン酸は鎖長(リン酸重合度)の大きさによって抗真菌効果が異なると予測されたことから、鎖長15,150,300の3種類のポリリン酸を3つの異なる濃度で用意し、生理食塩水(PBS)をコントロール、抗真菌薬のファンギソンをポジティブコントロールとして、コロニー形成の観察・測定と、PBSに対する残存真菌率などを指標にカンジダ菌に対する抗真菌効果を検討した。その結果、カンジダ菌に対して鎖長300のポリリン酸が他の鎖長と比べ、いずれの濃度においても残存真菌率がほぼ0%と極めて優れた抗真菌効果を示し、これは抗真菌薬であるファンギソンと同等であった。
また、カンジダ菌は口腔内で浮遊しているのではなくバイオフィルムを形成して義歯に強固に付着していることから、カンジダ菌が形成するバイオフィルムに対する抗真菌効果も新たに計画して検討した。その結果、ファンギソンにはやや劣るものの、鎖長150のポリリン酸が最も優れた抗真菌効果を示した。これらの成果は鎖長300あるいは150のポリリン酸を用いる義歯洗浄剤の開発に明確な根拠を与える。
ポリリン酸は各種抗菌性物質の抗菌効果を高める作用があることから、今後は抗菌薬ではない様々な抗菌物質と組み合わせることで、カンジダ菌バイオフィルムに対してもさらに高い抗真菌効果を発揮できると期待される。このポリリン酸は抗真菌薬ではないため、菌交代現象などを引き起こさず、安全で生体に優しく、高い抗真菌効果を有する画期的な義歯洗浄剤を開発できる可能性を秘めている。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、カンジタ菌に対しては、コロニー形成の観察では鎖長300のポリリン酸はコロニー形成を抑制しており、カンジダ菌バイオフィルムに対する抗真菌効果も認められ、当初の目標が達成された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、義歯洗浄剤は各種市販されているので、本技術の開発目標が市販品とどのように差別化されるのかを明確にした上での実用化が望まれる。今後、本技術に成果で国民の健康保持増進が期待される。
緊急被ばくに即時対応できる幹細胞バンクを利用した医療システムの開発 広島大学
東幸仁
広島大学
山岡秀明
緊急被ばくに即時対応できる幹細胞バンクを利用した医療システムの開発を目的とし、三次被ばく医療機関である広島大学主導で、「被ばく対応幹細胞バンク」「事前採取自家造血幹細胞移植」「緊急被ばく対応医療従事者養成」を主要措置項目として研究開発を行った。本研究では、「被ばく対応幹細胞バンク」の内部体制を構築し、緊急被ばく対応医療従事者養成プログラムの提案を行った。今後、緊急被ばく医療のために必要な、機器整備、人員配置を引き続き実施する。また、細治療システムの構築のために、細胞管理システムを導入し、稼働を開始する。本事業に必要な人材教育・育成を実施するとともに、国内外のネットワーク構築の準備をさらに行う。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、「被ばく対応細胞バンク」の内部体制の構築」や「緊急被ばく対応医療従事者養成プログラムの策定」は評価できる。報告書に記載されている「緊急被ばく対応システムモデル実験の実施は、時間的な制約があったようだが、研究を継続し、実現させてほしい。
バイオマーカーによる歯周病診断応用への検討 広島大学
北川雅恵
広島大学
山岡秀明
歯周組織においてセメント芽細胞に特異的に発現するF-spondin (SPON1) の炎症時における機能を明らかにするために、歯周靭帯細胞(HPL)、SPON1を過剰発現させたHPL (HPL-spondin)およびヒトセメント芽細胞を用いて歯周病原性菌由来のLPS刺激に対する炎症性サイトカインの発現および培養上清中のPGE2の産生量を検討したところ、IL-6 mRNA発現およびPGE2産生量はSPON1発現により抑制された。また、siSPON1によりSPON1の発現がノックダウンされると軽度ではあるがIL-6の増加も認められた。本研究結果より、SPON1の発現とIL-6およびPGE2の産生が関連を持っていることを明らかにしたことより、本年度の目標を達成した。今後は、歯周炎が生じた際の宿主側の因子として、SPON1が新しいバイオマーカーとなる可能性が考えられるため、SPON1の発現を歯周組織中から測定する方法を検討していく予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。F−spondinがIL−6を介して炎症を抑制することを明らかにしたが、そのタンパクの定量化は達成できなかったため、歯周病の進行度を予測するバイオマーカーの基準値を算定することはできなかった。F−spondinの定量化および臨床的な基準値の算定が本研究の目標であるが、それを達成する具体的な計画が示されていないので、これを改善しなければ技術移転は困難であり、今後の大きな課題である。F−spondinタンパクの定量化の目途が立たない限り、次の研究開発ステップにつながることは難しい。
感染性角膜疾患に対する光線力学的療法の確立 広島大学
近間泰一郎
広島大学
山岡秀明
視機能に重大な影響を及ぼす角膜感染症の新しい治療法として光感受性物質(TONS504)と660nm単波長LEDを用いた光線力学的抗微生物化学療法(photodynamic antimicrobial chemotherapy: PACT)の開発を目指している。黄色ブドウ球菌およびMRSAに対する効果が確認でき、抗生物質に対する耐性のいかんにかかわらず光線力学的抗微生物化学療法(PACT)は有効であった。また、グラム陰性菌である緑膿菌および単純ヘルペスウイルスに対してもPACTの有効性は確認された。また、正常なヒト培養角膜実質細胞に対する細胞障害性は検出されなかった。現時点で検討された病原体に対しては、その種類にかかわらず光線力学的抗微生物化学療法(PACT)の有効性が確認されており、今後、真菌、アカントアメーバおよびヘルペスウイルス耐性株に対しての有効性を引き続き確認した後に、実験動物を用いたPACTの有効性確認を行っていく予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。in vitroの実験に時間を取られすぎ、in vivoでの微生物殺傷効果(PACT)の検討を期間内に実施出来なかった。in vitroの実験でも、予定の8種のうち、肺炎球菌など4種類の微生物の検討が未達成である。元の計画内容が多すぎた感がある。また、微生物を殺傷する条件で培養角膜細胞を傷つけないとあるが、照射時間や培養液成分が同一となっているか記述が無く確認できない。安全性の確認が最も重要なはずである。今後の研究開発計画については、予定している全ての病原体に対するPACTの有効性を確認するとしており、今回未達成であった計画事項を今後の予定としている。しかし、産学共同等の研究開発ステップにつなげるためには、本治療の安全性が証明される必要がある。in vivo実験で、副作用が出ない条件で、治療効果を出すことはもちろん必須であり、まだ道のりは遠いが、この研究成果が応用された場合、抗生物質以外の抗菌治療が眼科で可能になるため、角膜細胞には作用しにくく微生物に作用し易い理論構築(抗生物質の作用機序は明白)と今後の検討に期待したい。
IgE受容体α鎖を利用した食物アレルギーの検査法 広島大学
松尾裕彰
広島大学
山岡秀明
本研究では、IgE受容体α鎖を利用した、精度の高い食物アレルギー検査技術を新たに開発し、臨床診断における有用性を明らかにすることを目的とする。はじめに、検査技術の構築に必要な組み換えヒトIgE受容体α鎖の作製を行った。大腸菌においてシャペロンタンパク質と共発現させることで可溶化発現させることが出来た。しかしながら、単一タンパク質として精製することが困難であった。次に、バキュロウイルス発現系を用いた組み換えタンパク質の作製を試みた。その結果、可溶性タンパク質として分泌発現させることに成功した。今後、組み換えタンパク質を精製し、AlphaScreen assayを利用したIgE抗体の検出系を構築する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。シャペロンタンパク質を用いた大腸菌発現系、あるいはバキュロウイルス発現系によってヒトIgE受容体alpha鎖細胞外ドメインの可溶化に成功した。しかし、抗原との結合については、前者では認められず、後者については確認できていない。このため、IgE検出系は構築できていない。タンパク精製量の増大と正常な構造維持が技術的課題となった。IgE検出系の構築が今後の研究計画であるが、抗原との結合が認められない場合の計画が不明瞭である。このため、技術移転の可能性が高まったとは言えず、社会還元の期待についても留まったままである。
医薬品開発候補物質の輸送スクリーニングのための汎トランスポーター阻害剤の開発 広島大学
高野幹久
広島大学
山田一徳
本研究では、トランスポート実験に用いる氷冷した反応停止・洗浄液(以下、氷冷バッファー)に適切な阻害剤を加えない場合、正しい結果が得られないトランスポーター群(低温忍容性を示すトランスポーター群)があることから、全てのトランスポーター機能を阻害しうる汎トランスポーター阻害剤の開発を目標とした。各種タンパク質修飾剤・変性剤を候補阻害剤とし、低温忍容性を示すヒト赤血球膜のグルコーストランスポーターおよびヌクレオシドトランスポーターを対象に検討した。その結果、尿素とホルムアルデヒドの混合液が有用であることを見出し、所期の目標はほぼ達成できたと考える。今後、培養細胞系等を用い、その汎用性についてさらに検証を進める予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ENT1及びGLUT1に対する単独の阻害剤では達成できなかったが、ヒトの赤血球系において5M尿素及び15%HCHOで目標の保持率80%を達成した点は評価できる。一方、見出された阻害剤濃度はそれらの溶解度の上限に近く、化合物を評価する実験系として技術移転の観点からは不十分であると判断される。今後は、培養細胞系、動物種差、他のトランスポータなどの検討も必要である。
骨及び歯牙由来高度リン酸化タンパク質の硬組織再生への応用 広島大学
鈴木茂樹
広島大学
山田一徳
本研究は硬組織特異的に発現し、細胞外基質及び細胞刺激因子としての作用を持つと推定されているDentin sialophosphoprotein (DSPP)タンパクの哺乳類細胞由来組み換えタンパクを作製・精製し、その硬組織再生への応用を検討する事を目的とした。DSPPタンパク及びその開裂産物であるDentin phosphoprotein (DPP) タンパクはその高いりん酸化及び酸性度から哺乳類細胞での精製は困難とされてきた。本研究では、in vitro, in vivo双方で、その機能や効果の解析を行える質と量を得るための方法を確立した。しかし、当初の予定よりもこの精製方法の樹立に時間を要し、期間内にin vivoにおける効果の検討までには至らなかった。今後、これら組み換えタンパク質の硬組織再生への効果の検討をin vitro, in vivo双方で深める予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、遺伝子組み換えDSPPタンパクの作製および精製した遺伝子組み換えタンパクの活性の検討を実施した点は評価できる。一方、タンパクの収量および純度が低いので更なる高収率高純度化の検討、及びラット実験的歯周炎骨欠損モデルへの遺伝子組み換えDSPPタンパクの導入の検討など実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、当初の目的の成果が得られれば社会還元に導かれることが期待される。
口腔癌細胞の浸潤に関わるmicroRNAの同定と悪性度診断への応用 広島大学
工藤保誠
広島大学
山田一徳
本研究では、ヒト約900種のmiRNAを網羅的に検索するアレイを用いて、miR-200a, miR-200b, miR-200c, miR-141, miR-203を浸潤性の高い口腔癌で発現が低下するmicroRNAとして同定した。これらmicroRNAは、癌の悪性度や浸潤・転移に深く関わることが知られている上皮間葉移行(Epithelial mesenchymal transition)に関与することを明らかにした。今後は、これらmicroRNAの癌の悪性度診断への応用を検討するために、microRNAの発現と癌の浸潤動態や転移の有無を含めた臨床病理学的データとの関連を調べ、臨床で簡易に発現を調べるようなキットの開発も試みたいと考えている。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、口腔癌浸潤に重要なmiRNAの特定、癌浸潤における重要性評価についてはの目標達成、miRNAの標的mRNAの同定とそのmRNAと結合する標的も確認されている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、これらmiRNAが癌患者の洗口液、唾液、血液中において、その変異と発現量が転移や予後の臨床病理学的データや癌浸潤程度と相関するかを調べることが必要と思われる。今後、研究成果が応用展開され、口腔癌の悪性度や浸潤度の診断法の確立や測定キットの開発などにつながり、社会的貢献度は大きいことが期待される。
むし歯・歯周病・誤嚥性肺炎予防タブレット錠剤の開発 広島大学
二川浩樹
広島大学
山田一徳
本研究の計画目標は、タブレット(食品)を作成するために最も適した培養条件の検討であり、食品用の培地および凍結乾燥の技術を持つA社から提供された培地も含めて数種類の培地を用いてL8020菌の凍結乾燥に適した培地の検討を行った。
その結果、B社の8020ヨーグルトドリンクタイプ(24年4月発売予定)と同様に調整したL8020 用脱脂乳培地で最も抗菌性が高かった。その結果に基づいて試作したタブレットについても、抗菌性の検討を行い、非常に高い抗菌性を得ることができた。
現在、C社とD社と製品化についての方向性を検討中である。
また、研究成果に基づき、特願2011-027882の優先権およびPCT出願を行った(PCT/JP2012/053020 発明の名称 :「ラクトバチルス・ラムノーサス由来のバクテリオシン」出願人 国立大学法人広島大学 出願日 平成24年2月9日)。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、培養上清の抗菌実験や耐熱性試験、市販乳酸菌飲料との抗菌活性の比較などから、ドリンクタイプのL8020 用脱脂乳培地で最も抗菌性が高く、その結果に基づいて試作したタブレットについても抗菌性の検討を行い非常に高い抗菌性を得ることができた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、すでにPCT出願も終了しており、製薬企業の提携交渉も進めているので技術移転の期待が持てる。今後、研究成果が応用展開された場合、 歯科医療・食品分野において充分に社会還元が期待される。
むし歯治療のための新しい技術 −アメロゲニンを用いたエナメル質再生法− 広島大学
谷本幸太郎
広島大学
山田一徳
歯の最表層のエナメル質には、皮膚の傷が治るような自己修復機能が備わっていないため、むし歯で損傷すると人工材料で補修するしか方法がなかった。本研究は、生体でエナメル質を形成する蛋白であるアメロゲニンを用いた、エナメル質の再生修復法の確立を目標とした。本研究課題の研究期間内に、人工的にむし歯の状態としたエナメル質表層において、アメロゲニン蛋白を用いた修復措置を行った結果、処置後のエナメル質の表面荒さ(Ra)が処置前に比較して有意に改善された。本法による歯の修復方法が示唆され、今回の研究目標は、ほぼ達成された。今後の展開として、より確実かつ短時間に治療効果を得られるための改良を検討している。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目的の第1とされていた動物実験による生体内でのアメロゲニンを応用したエナメル質表面の粗さの改善が達成された点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、動物実験によるアメロゲニン処理によるエナメル質の表面粗さの改善、およびヒト口腔内でのトレーを用いた薬液保持性能の確認、口腔内温度変化および体動の影響についての具体的検証などの検討が必要と思われる。アメロゲニン大量生産に目途がつけば産学共同等の研究開発ステップへの可能性が高まる。今後、新規のう蝕治療法としての可能性が期待される。
PET画像を用いた動脈採血に依らない脳機能の定量解析手法の開発 広島大学
檜垣徹
広島大学
山田一徳
本研究では、11C-FlumazenilPET画像を利用して難治性てんかんの原因部位(てんかん焦点)を検出する手法を開発した。てんかん焦点においては神経細胞が脱落しているという仮説のもと、脳の神経細胞と特異的に結合する特性を持つFlumazenilを利用して、薬剤の集積低下部位をてんかん焦点として検出した。FlumazenilのDynamic画像をもとに、非侵襲的解析法の一つであるSimplified Reference Tissue Model(SRTM)を利用し解析を行うことで、定量的な神経細胞結合能(Binding Potential)を得た。解析した画像から、ノーマルデータベースを用いて統計処理することで有意病変を自動的に検出した。開発した手法と従来から用いられている手法との間で、てんかん焦点の検出能を比較した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、従来の動脈採血に依存しないで、脳機能の定量解析手法として、脳の神経細胞と特異的に結合する特性を活用する技術に関しては評価できる。段階を踏んで、研究を実施しており、成果を得ていることも良い。一方、技術移転の観点からは、十分に検出性能があり、臨床に有用と判断された場合には、画用画像解析ワークステーションメーカーと提携し、臨床現場に適用し、実用化が望まれる。今後は、脳機能の定量解析に応用されていくことが期待される。
ヒトiPS細胞の樹立と未分化能および多分化能を維持可能なフィーダー細胞を必要としない無血清培地の開発 広島大学
岡本哲治
広島大学
山田一徳
ヒトiPS細胞やES細胞は、フィーダー細胞上で血清添加培地を用いて培養されている。しかし、血清やフィーダー細胞はロットによる不安定性や異種抗原や感染性因子の混入等の問題があり、培養条件に不定要素が多く、増殖・分化機構を正確に検討することは困難であり、医療へ応用の際、問題となる。そこで、安定した条件で高品質なヒトiPS細胞の供給を目指し、血清およびフィーダー細胞を用いず、全組成の明らかな、ヒトiPS細胞の誘導および維持を可能とする無血清培地の開発を行い、完全無血清培養系にて健常者および遺伝子疾患患者より採取した組織からヒトiPS細胞を誘導することに成功した。今後は同細胞を用いて、疾患の発症機序解明やメカニズム解明を行いたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に無血清培地におけるヒトiPS細胞の樹立及び継代維持可能な条件の確立や完全無血清培地でのヒトiPS細胞の樹立及び継代・維持に関しては評価できる。技術移転の観点からも、実用化が期待出来る。今後は、倫理的に課題があると言われるES細胞よりiPS細胞が実用的な検討が主流なっている再生医療研究に無血清培地が適用されれば、この分野の発展に大いに寄与するものと期待される。
歯科医療用チタンメッシュシート・バンドの高精度プレス成形システムの開発 広島大学
吉田総仁
広島大学
松井亨景
本研究は、歯科医療で使用するメッシュシート・バンドをプレス金型において高精度に成形できるようにすることを目標とし、そのための最適金型形状を成形シミュレーションによって決定するシステムを確立することを目指す。患者の臨床データから顎部の形状測定を行い、湾曲した患部に適応するメッシュバンドの目標形状(湾曲部の曲率半径とそれに連なる直線部長さ)を決定した。また、成形シミュレーションによって、メッシュバンドのプレス時のスプリングバックを成形シミュレーションにより予測し、それを考慮したプレス金型および、実験プレス装置の設計・製作を行った。メッシュバンドについて実際にプレス実験を行い、目標どおりの寸法・形状になることを確かめた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。各症例で必要なチタンプレートの形状寸法、成形シミュレーションによる金型制作と成形実験の目標は達成している。成型シミュレーションは有限要素法により解析しているが、あくまでシミュレーションであるため、これを実際との臨床例とどう整合性を持たせるかの記載がなく、臨床との整合性を見極める必要がある。また、研究開発成果を成型メーカーとの連携によって技術移転することは可能となるが、知的財産としての価値は不明であり、現時点では特許の申請は記載されていない。今後についても、次のステップはメッシュバンドのプレス成型で、技術的課題は明確である一方、複数の企業による実用化の可能性を検討しているとしているが、その内容は明確でない。その点をクリアにして、もし、CT画像から得られた計測結果が、容易に成型データとなり、加工につながれば、顎のがんなどでの損傷した患者さんへの寄与は大きいと考えられる。
カルシウム情報伝達分子を制御する生理活性物質探索系の開発 広島大学
平田大
広島大学
榧木高男
本申請課題研究の最終目標は、「カルシウム情報伝達分子(カルシニューリン・CN)の活性を制御(抑制と促進)する生理活性物質探索系の開発」である。そのために、3つの目標(目標1,CN活性検出システムの構築; 目標2,薬剤探索系に最適な酵母変異体の選抜; 目標3,薬剤探索系の検出感度の検証と最適化)を設定し、最終目標の達成を目指した。その結果、目標1については、CN活性が検出可能なシステムを構築した。目標2については、CN活性制御への関与が示唆される、複数の変異体を選抜した。目標3については、ある種の選抜変異体を使用し、薬剤検出が可能であることを確認した。今後、CN活性制御の実証および探索系の最適化などが課題である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、カルシニューリン・CN活性が検出可能なシステムを構築し、複数の変異体を選抜したことと、選抜変異体を使用し薬剤検出が可能であることを確認した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、レポーター遺伝子の発現をシステマチックに検出する医薬探索系に組み込むことが計画されており、成果が得られれば技術移転につながる可能性は高まると思われる。今後、研究成果が免疫抑制剤などの開発につながり社会還元されることが期待される。
スギ花粉症の診断と治療を格段に効率化するエピトープライブラリの構築 広島大学
秋庸裕
広島大学
榧木高男
スギ花粉症に対する唯一の根治療法である免疫治療を効果的に実施するためには、患者が感作したアレルゲン分子種の特定診断とそれに対応したワクチンの処方が必要となる。しかし、多数のアレルゲンを網羅するのは技術的、コスト的に困難であるため、本研究では、アレルゲン分子表面の抗体結合部位であるエピトープのライブラリー化をめざした。ファージディスプレイ法を用いて患者血清IgE抗体結合性ペプチドの探索を試みた結果、幾つかの候補配列情報を取得し、さらにIgE結合に必須のアミノ酸残基を特定しうる可能性を見いだした。エピトープペプチドをシーズとした次世代の花粉症治療法の確立に向けて有用な成果が得られた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、得られたIgE反応性ペプチドの多くが、Cryj1のエピトープの一つと似た共通モチーフを有しており、その重要性が示唆された。一方、他のアレルゲンエピトープ、特に当初の中心的目標の立体構造依存性エピトープの網羅的情報収集には至っておらず、技術移転を目指した産学協同の研究開発ステップに至るには、特異性の問題も含めもう一段の進展が必要であると思われる。今後、本研究の成果が当初の期待通り進展すれば、社会還元も期待できる。
光刺激の点滅を意識したときに生じる閉眼脳波の変化を用いて人の意思を計測するシステムの開発 山口大学
西藤聖二
山口大学
森健太郎
本研究では、周期閃光刺激に対する意識の制御により、閉眼状態の脳波(SSVEP)を用いて意思を表現するシステムの開発を目的とした。研究期間内では以下の目標を立て、特に[1]を重点に研究を行った。
[1]意思推定における(a) 検出精度の向上(90%以上)と(b) 検出時間の短縮(5秒以下)
[2]意思表示システムの試作と有効性の検証
この結果、[1]では(a)刺激強度とセンサ位置の最適化により、被験者26名中25名で意識集中による意思の検出が可能であることを見出した。また、(b)については、用いる脳波のデータ長を5 sまで短縮できた。一方、[2]については、システムのソフトウェア部分に課題が残された。従って、達成度は全体として70%程度([1]が90〜95%、[2]が40〜45%程度)である。今後は特に2)の課題の解決を図る。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、刺激条件やセンサ位置、発光位置の検討から測定条件の最適化の目処をつけ、検出精度は条件毎にバラツキがあるが90%程度が得られている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、個人間で意識集中に対するシグナル挙動が異なる点の原理的解釈、あるいは計測・解析による回避方法の目処立てが最優先で、なお一段の研究を要する。視線検出によるヒューマンインターフェイスも進歩著しいので、レスポンス向上にも注力を望みたい。今後、当面の市場規模は小さいと考えられるが、重篤障害をサポートする技術として期待される。
Cys-タグ付抗体を利用した次世代型高感度抗体チップの開発と応用 山口大学
古元礼子
山口大学
殿岡裕樹
マレイミド基導入基板(マレイミド基板)にタグ付蛋白を結合させる技術を利用し、抗体チップを開発する。核となる技術は免疫グロブリンG(IgG)重鎖のC末端部にタグを付加したモノクローナル抗体を作製することである。この技術の確立のため、本研究期間内に遺伝子組み換え技術を用いてIgG重鎖のC末端部にタグを導入した抗体を培養細胞発現系で作製し、マレイミド基板に固定した。今後、タグ付モノクローナル抗体大量生産システムの確立を行う。次にタグ付抗体の固定条件の検討を行い、抗体チップのプロトタイプを作製し、実用化・技術移転を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、抗体分子のC−末端にタグを入れることには成功している点は評価できる。一方、遺伝子導入による抗体の大量生産、高感度抗体チップの開発という当初目標は達成できていないので、当初の目標通り抗体チップの感度の優位性の検証などに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。トランスフェクトーマ、大腸菌でのsFv産生など、免疫細胞学・免疫分子生物学に精通した研究者との共同を目指すことが望まれる。今後、抗体チップの高感度化が実現された場合、どのような社会還元が得られるかのビジョンも必要と思われる。
局所脳冷却を用いた術中脳機能マッピング装置の開発 山口大学
藤井正美
山口大学
殿岡裕樹
脳の切除手術に際して、手術の合併症を回避するため機能局在を詳細に明らかにする必要がある(脳機能マッピング)。この術中脳機能マッピングは現在痙攣などの危険性がある電気刺激により行っているが、我々は合併症の少ない局所脳冷却により行うための脳冷却プローブを考案した。そして実際に術中の脳機能マッピングに使用し、7℃の冷却により脳機能抑制効果があることを見出した(冷却による発話機能の抑制)。さらにこのエビデンスをもとにペルチェ素子を用いた冷却プローブの改良を行っている。現存する装置を改良し、冷却水灌流システムの小型化、脳表の迅速な冷却・復温の達成を目的としたPID制御システムの確立により装置の実用化を目指している。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。しかし、一定の成果があったと思われるが、完了報告書では個々の目標に沿った達成状況の記載が不足している。装置の小型化は達成したと思われるが、従来技術と比べてどの程度の小型化を達成したのかは不明であり、脳表の迅速な温度コントロールにしても具体的な数値データが未記載、脳波モニタリングは行えた模様である。臨床実験における効果の定量的解析があるとよかった。技術移転の観点からは、具体的な今後の改良のフォーカスが絞れていないため、計画がやや漠然としている。特許は審査請求を行っており、産学連携の進展、成果の社会還元が期待できるポテンシャルはあるものの、今回の結果から次のステップへの課題が具体化されたとは言えない。今後は、ロードマップを作り、症例数を増やし、さらにフォーカスを絞って、詳細な検討を重ねる必要があると考える。その上で、試作物の従来技術に対する優位性を示すデータを明らかにし、臨床実験における結果の定量的解析を進めていただきたい。
たが構造を持つ生分解性ポリマーステントの微小平面ラチェット機構の開発 山口大学
南和幸
山口大学
櫻井俊秀
再狭窄の防止などが可能な生分解性ステントの実現のため、本申請者はポリ乳酸フィルムを用いて、リング構造=たが構造を持ち、拡張方向にだけ拡径するための独創的な微小平面ラチェット機構を持ったステントの開発を進めている。これまで金属製ステントと同等程度の拡張力を備えていることが実験的に証明されて有用性を確認できたが、ラチェット機構の動作不良が観察された。これらの問題を解決するため、新ラチェット機構の設計・改良を行うとともに、前記機構を製作できる微細加工技術を検討する。これによりラチェット機構の動作・強度の信頼性を向上させ、本ステント構造が動物実験などに使用可能な実用性を備えていることを確認する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ラチェット機構の動作不良を解決するための研究開発が行われ、従来の金属製ステントに代わる生分解性ステントを実現する見通しが付けられた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、未解決課題の明確化、民間企業との連携体制の構築、今後の実用化を目指した臨床試験などが検討されており、民間のベンチャー企業等との連携についても検討されているので、早期実用化が望まれる。今後、臨床使用による性能評価が示されれば、イノベーション創出と技術移転への応用展開が期待される。
発育鶏卵モデルを用いた放射線防護剤のin vivo評価系の構築 徳島大学
宇都義浩
株式会社テクノネットワーク四国
塩崎紀子
簡便な実験動物である発育鶏卵を用いて、放射線による急性毒性・変異原性・血管障害・臓器障害に対する放射線防護物質の防護活性を評価できる代替動物モデルを構築することが本課題の目標である。得られた成果として、沖縄県産植物Aの葉抽出物が放射線による鶏胎児の致死(急性毒性)、遺伝子損傷のマーカーである8-OH-dGの生成(変異原性)、漿尿膜血管の損傷(血管障害)、臓器障害のマーカーであるビリルビン、AST(肝機能)、クレアチニン(腎機能)の生成を抑制したことから、発育鶏卵が放射線防護剤を評価できる代替動物モデルであることが証明でき、その達成度は90%とした。今後の展開として、本評価系を用いて新規放射線防護物質の探索を行い、ヒトに応用可能な放射線防護剤の開発を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に発育鶏卵を用いて、放射線照射前後に放射線防護物質を投与し、放射線による急性毒性・変異原性・血管障害・臓器障害に対する防護効果を評価できる代替動物モデルを構築する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、鶏胎児の発育状況や日数が異なると放射線感受性(耐線量)が定まらないことについては、受精後2日という短期評価が特徴であることを考え併せて条件見直しによる実用化が期待される。
時分割眼鏡式3Dディスプレイ観察時の眼の調節応答測定用ビュアーの開発 徳島大学
山本裕紹
徳島大学
兼平重和
時分割式ステレオ3Dディスプレイを観察中の眼の調節応答の測定を目標として、両眼開放型検眼器を用いて時分割式ステレオ表示を観察するための後付けビュアーを開発した。両眼開放型検眼器では、眼にリング状パターンを投射、網膜像を測定するため、通常の液晶シャッター眼鏡を装着すると網膜像を取得できない問題がある。そこで、リング状パターン光の照射と検出の妨げにならない特殊な位置に液晶シャッター素子を設置するアダプターを製作した。実際に液晶シャッター素子を介した観察中において眼の瞳径と調節状態の測定の測定に成功した。実験の過程で本研究では対象としていなかった一般のシャッター眼鏡向けアダプターの可能性が得られたため、今後は汎用アダプターの開発を進める。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。時分割式ステレオ3Dディスプレイを観察中の眼の調整応答の測定を行うビューアの開発を目的としており、概ねその目標を達成している。具体的に3パターンのプロトタイプシステムを開発し適切な評価が試みられている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、メガネを必要とする方式は一般的に受け入れされるかの検討が必要と思われる。共同開発先の目途も立っており、頻繁な情報交換も行われていることから技術移転、および共同開発実現の可能性が高いと思われる。3Dテレビなど一般家庭に普及し始めており、今後、提案装置は社会的にも普及されることが期待される。
糖尿病患者のQOLの向上を目指した超低侵襲パッチ型グルコースセンサの開発 徳島大学
安澤幹人
徳島大学
兼平重和
糖尿病患者の健康維持には、血糖コントロールが最も重要であり、血糖値を簡便に把握できる皮下組織に留置する持続血糖モニタリングシステム(CGMS)の有用性が注目されている。しかし市販されているCGMSのセンサ針サイズは大きく、また挿入長さも1cm以上と長いことから、本研究では、先端径0.3mm以下のテーパー針の先端内部を測定部位とする微細で、かつ体内への挿入長さも1mm以下のパッチ型グルコースセンサを試作し、実験動物を用いたインビボ測定評価を行った。パッチ型センサを実験動物の皮膚に貼り付けて測定したところ、タイムラグは生じたが血糖値の上昇に伴う、センサ応答の上昇が見られ、貼り付ける感覚でセンサセッティングが可能な低侵襲センサ開発の可能性が見出された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、センサ針を含めたパッチ型グルコースセンサを開発し、皮膚モデル実験装置を用いたセンサ評価では従来型針状センサとの相関が得られている点は評価できる。一方、in vivoで低血糖・高血糖との相関を示すデータは得られなかったので、実用化に向けた技術的検討やデ−タの積み上げなどが必要と思われる。今後、本研究課題が達成されたならばその技術の社会的需要は大きいと考えられ、今後の検討が待たれる。
骨格筋特異的RNAiを用いた骨格筋量制御法の開発 徳島大学
木内奈央
徳島大学
嵯峨山和美
申請者はこれまでに、骨格筋形成抑制遺伝子マイオスタチンに対するRNAiが筋芽細胞の増殖・分化を促進させ、さらには個体レベルにおいて局所の骨格筋量の調節に有用であることを明らかにしてきた。本課題では、筋特異的miRNAを筋ジストロフィーモデルマウスの前脛骨筋に導入し、RNAi効果が骨格筋量に及ぼす影響を検討した。その結果、対照側に比べmiRNA導入側の前径骨筋重量および筋分化関連遺伝子の発現レベルに差は認められなかったが、対照側では壊死筋線維および壊死部位に再生した幼若な筋線維群が多く認められたのに対しmiRNA導入側ではほとんど認められなかった。以上のことから、筋特異的miRNAの導入により筋分化を調節しうる可能性が示唆された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、LidNAについて種々の改良が加えられ、既存のLNAや2’−O−MeRNAと比較し期待した結果が得られている点は評価できる。一方、in vitroとin vivoでの実験結果に不一致な点も見受けられるので、実験計画に従った技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、まだ基礎研究段階であるが、企業への技術移転が可能な魅力的な成果が望まれる。
睡眠時ブラキシズムの可視化診断システムの開発 徳島大学
重本修伺
徳島大学
大井文香
本研究では睡眠時ブラキシズムの可視化診断システムの開発を目的に睡眠測定に用いる口腔内センサ方式6自由度顎運動測定器試作器の改良と咬合可視化技術の確立を目指した。顎運動測定器については、評価実験を行うまで研究を進めることができなかったが、新たな高感度の3軸センサコイルの製作に目処がたっている。また最適な装着位置決定法が確立でき当初計画の60%は達成できた。一方咬合可視化技術の簡便な上下歯列の3次元形状測定法および簡便な重ね合わせ技術(上下歯列および顎運動の重ね合わせ)については技術的にほぼ完成でき当初計画の90%以上は達成できた。今後は顎運動測定器を完成させ可視化診断システムとしての実用化に向けた評価実験を継続する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、三軸コイル装着部位を決定する方法を確立するとともに、咬合可視化に関する処理の高速化を実現している点は評価できる。 一方、技術移転の観点からは、本研究期間で実現できなかった口腔内用三軸コイルの完成や実用性の検討などについても、ある程度明確にされているので、さらなる検討が必要である。 これまでも企業と連携して顎運動測定機を利用した可視化システムを開発しており、咬合可視化技術に関しても特許申請後連携を予定するなど、産学協同研究につながる可能性は高まっている。今後、 終夜睡眠中の咬合解析が可能となることから、歯科領域に貢献することが期待される。
マスク換気の質を向上させる圧センサーシステムの画像化臨床判定システムの開発 徳島県立中央病院
木下倫子
前回の研究(H22年度FS探索タイプ採択課題)にて、顔面マスク間圧センサーはマスク換気の評価に有用であることが示された。しかし、システムボリュームが大きいこと、ソフトウェアの操作が煩雑であること、データの解析が困難であることが問題で、実用性に欠けていた。本研究では、これらの問題を解決し、より使いやすいデバイスにすることを目標とした。コンパクトで持ち運び可能な大きさにし、ソフトウェアの操作も簡便化した。また、ソフトウェアの機能に、データ解析の機能も組み込んだ。新しく改良したシステムは、以前のものと比較して使いやすいものとなった。今後は、本デバイスを用いて、さらにデータを収集し、外部発表を行い、実用化への基盤とする予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、研究責任者らが考案した顔面マスク間圧センサーを広く実用化するために、操作性を向上させ簡便に使用が可能な圧分布画像化臨床システムを開発した点は評価できる。一方、臨床試験がまだ実施中であり、次のステップの技術的課題を明確に示す必要がある。早期の企業化に向け、1つ1つの成果を公表しながら臨床現場に問い、それをフィ−ドバックさせて改良し優れた商品化に繋げることが望まれる。
より安全なマスク保持方法に適した新たな麻酔用マスクの開発 徳島大学
田中克哉
徳島大学
大井文香
これまで我々は独自に開発した全身麻酔時のマスク保持方法(GL)の有用性を報告し、GL法で持ちやすい独創的なマスクの試作を行ってきたが、顔面と接触する部分をカフ状構造にすることができなかった。本研究の目的は、カフ状構造でGL法に特化したマスクを試作し、それによる換気が従来のマスクでの換気より有効であることを示すことであった。研究の結果、カフ状構造のGL法に特化したマスクは作成できた。臨床試験の結果は、呼気炭酸ガス分圧波形から評価すると換気が困難な症例で我々のマスクによる換気方法が優れていた。圧分布を比較する試験は今後行う予定である。今後の展開として、協力企業とともに量産化に向けた研究を予定している。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に全身麻酔時のマスク保持方法(GL法)において使いやすいカフ状構造のマスクを開発技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、70歳以上の患者52名の結果を得ているが、圧センサーシートによる試験は行われていないなどでの追加評価が望まれる。量産化に向けて金型等作成など量産化に向けたステップに進んでいることから、技術移転につながる可能性が高まったと評価できる。
患者の重症度を目視で評価する「ATP 発色診断法」の開発 徳島大学
千田淳司
徳島大学
大井文香
現在、ICU管理患者の重症度診断法としてAPACHE IIが広範に用いられているが、検査項目が多く、その診断に24時間もの時間を要している。申請者らは、これに代わる新規の重症度診断法(A-LES)を開発し、本法がAPACHE IIよりも簡便・迅速(1時間以内)かつ正確であることを実証してきた。しかしA-LESによる診断の実施にはルミノメーターが不可欠であり、装置不要を望む現場からの声も多かった。そこで申請者らは本研究で、医師が患者の重症度を(装置不要かつ)目視で評価する「ATP発色診断法」の開発に取り組んだ。その結果、患者の採血から30分以内の簡易的診断は実現したが、定量的診断については今後の技術的改善が望まれた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に現在、ICU管理患者の重症度評価法としてAPACHE 2が広範に用いられているが、検査項目が多く、重症度評価に最低でも24時間の時間を要するため、目視で評価可能な簡易法である「ATP発色診断法」の提案については評価できる。一方、技術移転の観点からは、新規技術によるATP値は現行技術によるものよりも低値であり、両者の相関係数も0.78とやや低いため、定量的診断法の確立に向けて具体的検討が望まれる。定量的診断法がキット化されれば、ICU管理患者の重症度を1時間以内で診断でき、有用性は高い。
患者血中の抗ポリエチレングリコール(PEG)抗体測定キットの開発 徳島大学
石田竜弘
徳島大学
平岡功
当該研究期間において、直接競合ELISAによるヒト抗PEG-IgGおよび抗PEG-IgM測定系を確立することができた。本定量系は当初目標としていた感度(レンジとして1〜1000μg/mL)を越える高感度(500ng/mL〜500μg/mL)で測定が可能であり、また一般のプレートリーダー型1波長吸光度計で測定できることから、測定が容易な測定系と言える。モデル系として、PEGを抗原としてマウス血中に抗PEG-IgMを誘導し、免疫に使用したPEG抗原量を反映した形で抗PEG-IgMおよび抗PEG-IgGの分泌誘導が生じている事を評価できており、当初目的とした抗PEG抗体測定キットのプロトタイプが構築できている事を確認する事ができた。今後、患者サンプルに対して血中抗PEG-IgG, 抗PEG-IgM濃度を測定していくと共に、臨床検査キットとして事業化する上での調査(市場規模、製造コスト、販路など)を継続していく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に抗PEG-IgGモノクローナル抗体およびマウス抗PEG-IgMモノクローナル抗体を用い、直接競合ELISAによるヒト抗PEG-IgGおよび抗PEG-IgM定量系の確立を行い、PEG-interferon治療群と未治療群患者から得た血清中の抗PEG-IgG, 抗PEG-IgM濃度を測定する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、高純度に抗PEG-IgMモノクローナル抗体や抗PEG-IgMを獲得する方法を確立しており、また、抗PEG-IgMおよび抗PEG-IgGの検出限界を当初目標の2倍以上としているが、患者血清中から抗PEG-IgM、抗PEG-IgGを検出することはできていない。
変形性顎関節症治療への新しい技術開発―低出力超音波を用いた関節軟骨修復法― 徳島大学
田中栄二
徳島大学
平岡功
本研究は従来、四肢の骨折の治療補助器として実用化されている低出力超音波を応用し、変形性顎関節症により損傷した関節軟骨を修復する全く新しい治療技術の開発を最終目的とする。本課題の研究成果として、培養下顎頭軟骨細胞に対してIL-1βを添加するとCOX-2遺伝子の過剰発現とPGE2産生亢進、MMP遺伝子発現誘導が見られた。この炎症状態下の軟骨細胞に低出力超音波を照射するとCOX-2遺伝子発現が抑制された。この抑制メカニズムにはERK1/2のリン酸化とインテグリンβ1β3が関与していた。さらに、過剰開口によって作成した変形性顎関節症モデルラットを用いた実験により、低出力超音波が下顎頭軟骨における抗炎症作用を有することが明らかとなった。本研究課題における達成度はほぼ100%であり、今後は変形性顎関節症に対する臨床研究を開始する予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、四肢の骨折の治療補助器として実用化されている低出力超音波を応用し、変形性顎関節症により損傷した関節軟骨を修復する新しい治療技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、変形性顎関節症に対する臨床研究へのステップが期待できる。今後、変形性顎関節症以外の疾患への応用も可能であり、成果の社会還元の観点からも期待が大きい。
移植・再生医療に用いる非拡散性拒絶反応抑制剤の開発 香川大学
西望
株式会社テクノネットワーク四国
塩崎紀子
本研究の目的は、移植・再生医療に用いる非拡散性拒絶反応抑制剤(新規融合蛋白質)を作製し、その基本的な性質を調べることである。研究目標として、a) 組換え蛋白質の収量、b) 溶液状態での拒絶反応抑制活性、c)生体適合性材料に対する結合活性、d) 生体適合性材料に結合した状態での活性の検出、を設定して研究を進めた。その結果、目標(a-c)を越える性質を持つ、新規融合蛋白質を創出することができた。しかし、d) については、本研究で使用した結合ドメインが市販の生体適合性材料には結合せず、検討できなかった。今回作製した新規融合蛋白質は、非拡散性免疫抑制剤に必要とされる基本的な性質を備えていることから、今後、収量や活性の改善を目指した改良を行うとともに、皮膚移植モデルなどを利用して、動物レベルでの有用性を確認する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、作製した融合蛋白質は、非拡散性拒絶反応抑制剤として優れた性質を持つことを明らかにしている点は評価できる一方、技術移転の観点からは、最も重要な開発物の機能判定実施には至っていないのでさらなる検討が必要である。 活性のある担体の開発が必要であるので、ぜひ企業との連携も進めてほしい。今後、本研究の 融合蛋白質は、非拡散性拒絶反応抑制剤を開発する上で優れた出発材料になるので、拒絶反応抑制剤として市場性・QOLの観点から社会貢献が期待される。
結像型2 次元フーリエ分光法を応用した、老化細胞の同定技術の開発 香川大学
西山成
香川大学
倉増敬三郎
本研究の最終的な目的は、我々が進めてきた「細胞老化に関する研究」に対し、香川大学工学部で開発が進んでいる「結像型2次元フーリエ分光法」を融合させることによって、生きている細胞や生体で老化の分光特性を同定することにより、新しい測定法を生み出し、検査機器として技術移転をすることである。これに対して本年度の8ヶ月間において、老化した内皮細胞の培養条件設定などの問題を解決した。またこれに並行し、老化細胞ではないがマラリアに感染した赤血球の分光特性を検出する事に世界で始めて成功し、細胞に異常が生じた場合に本測定法で検出が可能であることを見出した。この結果をもとに、老化細胞についても経時的な形態観察、老化細胞特異的な遺伝子およびタンパクの解析、老化細胞の培養液中の成分解析等により、老化細胞の性質や機能の検討をすすめていき、老化のバイオマーカー・検査機器の開発を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。当初目的である老化内皮や血管における特異的な分光特性を見出すことはできなかったが、並行して実施された実験によりマラリアに感染した異常赤血球の分光特性を検出することに成功したことは評価できる。まだ目標の初期段階であり、今後は、技術的検討やデータの積み上げなどを行い問題を抽出することが必要と思われる。
真珠層を用いた金属材料への生体活性化付与技術 愛媛大学
小林千悟
愛媛大学
吉田則彦
EPD法(電気泳動堆積法)にて真珠粉末をTi合金上へ被覆する際、真珠粉末懸濁液中の酢酸添加量を変化させることにより、真珠粉末皮膜中の炭酸カルシウム含有量を変化させることができる。また、皮膜厚さはEPD処理時間等により調整できる。それにより、真珠粉末皮膜の機械的特性を制御可能である。また、真珠粉末皮膜中の炭酸カルシウム含有量を変化させても、擬似体液浸時のハイドロキシアパタイト生成能は良好なままである。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも生体活性化被覆材として真珠貝の真珠層に着目し、その金属材料上への被覆処理技術を確立する技術に関しては評価できる。一方、実験結果から、エタノール30mlに1.5ml以上の酢酸を添加することにより所期の皮膜が形成され、擬似体液浸漬により、その表面にハイドロキシアパタイトが良好に生成することが確認されているが、既存の製品より密着強度が低いことから、当初の目標は達成されていないと判断される。また熱処理による技術の改良については今後期待される。
疾患感受性遺伝子のプロテオーム解析による新規バイオマーカー開発と疫学的意義付け 愛媛大学
田原康玄
愛媛大学
入野和朗
高血圧感受性遺伝子(ATP2B1、FGF5、CYP17A1、CSK、CASZ1)から無細胞系でタンパク質を合成し、それを標品として末梢血中の当該タンパク質量を質量分析で定量した。その結果、CASZ1のみが血中に検出された。高血圧/正常血圧者(各50例)を対象に、末梢血中の既知のタンパク質の濃度比を質量分析で網羅的に測定した。高血圧群で有意な量的変化を示すものは同定されなかった。
 ヒト生体試料中の感受性遺伝子産物の量的変化を観察する系を確立した。主たる高血圧感受性遺伝子産物は検出されなかったが、確立した測定系は、遺伝子情報を手がかりとしたバイオマーカー開発や発症メカニズムの解明において新たなアプローチとなる。
当初目標とした成果が得られていない。中でも、CASZ1に特異的なペプチドを血中より二種類検出することには成功が、網羅的な検索とこれまでわかっているATP2B1の検討を行った結果、ATP2B1の検出が質量分析法ではできなかったため、高血圧に関連した関連遺伝子群の同定には至らなかった。今後は、その結果から得られる関連タンパク質の同定をされることが望まれる。
高感度質量分析法による炎症プロテオーム動態の絶対定量解析基盤の確立と診断応用 愛媛大学
東山繁樹
愛媛大学
大野一仁
慢性炎症病態では、各種の免疫担当細胞が活性化され、炎症組織はもちろんの事、血液、尿等におけるタンパク質動態が変化する事が知られている。この炎症によって引き起こされるタンパク質のプロファイル(Proteome:プロテオーム)変動を、絶対定量解析によりモニタリングするシステムを構築することを目指し、炎症関連タンパク質の安定同位体標識リコンビナントタンパク質(ケモカインおよびその受容体10種、造血因子およびその受容体8種、細胞傷害因子およびその受容体9種、細胞増殖因子およびその受容体10種、メタロプロテアーゼ9種、オーファン受容体も含む各種GPCR7種、計53種)を作成し、絶対定量に向けた質量分析情報を取得、データーベース化した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、安定同位体標識リコンビナントタンパク質を計53種類作成し、炎症によって引き起こされるタンパク質のプロファイル変動の絶対定量解析に向けた質量分析情報を取得し、それらをデーターベース化したことは評価できる。技術移転の観点からは、本研究を基にした炎症病態における分子レベルでの分析・診断技術が、できるだけ早期に実用化されることが望まれる。今後は、よりきめ細やかな分析・診断の技術確立を進めるとともに、大手民間医療診断メーカーとの共同研究契約締結などを含めて、本研究が推進・展開されることが期待される。
欠損文字の認知力に基づく認知症早期予防に関する研究 高知工科大学
姜銀来
高知工科大学
和田仁
本研究では、欠損文字の認知力による認知障害の予測および予防の可能性を検討することを目的とし、ヒューマンフレンドリーな欠損文字認知力の計測システムを開発した。このシステムを30歳〜79歳の健常者1,108名の被験者に適用し、欠損文字の認知力と認知症の兆候となる脳の無症候性病変との関連を定量的に調べた。その結果、欠損文字の認知力と無症候性白質病変とに関連性が認められた。欠損文字認知力による認知障害の予測および予防の可能性が実証され、本研究の目標を達成することができた。この関連性に基づいて、認知症の危険性を予測するアルゴリズムを提案した。今後は、脳認知機能との関連性の高い欠損文字を生成する方法を開発し、実用化に向けて提案アルゴリズムの有用性を検討する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、利便性の高い検査ツールを開発して、1000名を越える多くの被験者からデータを収集し、目的とする認知症の危険予測アルゴリズムを開発した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、無症候性脳病変との相関だけではなく、欠損文字の認知能力と他の認知症に関連する要因との関連も検討する必要がある。今後の課題として、理論背景を固めることと、類似のシステムに対する優位性をアピールし、企業パートナーを探すことがあげられる。今後、認知症の危険予測に結びつくので社会還元を導く可能性が高いと思われる。
瞬間的生体内反応を可視化する新規イメ−ジング剤の開発 高知大学
津田正史
動的核偏極(DNP)は、磁気共鳴の感度を大幅に改善する技術として近年注目されている。本課題では、より多くの生体内物質のDNP-MR実験の実施し、シグナル観測時間の延長から、DNP-MR測定法を用いて瞬間的な生体内反応を可視化する物質の評価を行った。その結果、これまで報告されている偏極イメージング剤より遥かにシグナル観測時間が長い生体内分子を合成するすることに成功した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、重水素化二重標識イメージング剤を開発して、DNP−MR法による瞬間的な生体反応を可視化する技術を開発する目標に対しては概ね達成されている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、企業との共同研究が検討されているので、一部の限定された技術については技術移転につながる可能性は高まったと思われる。生体反応(代謝)の可視化は有用なテ−マなので、今後の応用展開が期待される。
新規尿中バイオマーカーを用いた慢性腎臓病患者での急性腎障害の早期診断法の開発 高知大学
寺田典生
高知大学
石塚悟史
現在人工透析療法に至っている患者数は、全国で30万人を越えている。現在慢性腎臓病1330万人の患者が、急性腎障害を併発する症例が著増しており、全入院患者の5-10%, ICU入院患者の20%で急性腎障害が発症する。急性腎障害の診断マーカーについては申請者の研究室からの報告等があるが、臨床応用へは至っておらず早期診断のためのバイオマーカーの確立と実用化は社会的に考えても急務である。申請者は、今までの蓄積した基礎研究を基にバイオマーカーの測定系(ELISA, Western Blots法)を確立しその診断精度を高めつつある、特に慢性腎臓病患者に発症する急性腎障害の新規早期診断法の開発とその技術移転を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。被験者尿を用いた急性腎障害の迅速診断マーカーの検討と診断キットの開発を目標においた研究開発である。IL18やKIMなどが、急性腎障害診断の新しい迅速診断マーカーとして浮かび上がった点は評価できる。新しい診断マーカーの発見に関してはユニークであり、これまでのマーカーに比べてより早期の診断が可能となる点は、さらに技術移転の実現性を高めると考えられる。しかし、これまでの50症例に加えて、当初の検体数300を目標としたが、10例追加(合計60症例)にとどまったことで、症例数においては当該研究での目標は達成されていない。当該研究終了時において、申請時に課した症例数の1/30にとどまった点は評価できない。担当者の補充などで配慮すべきだった。研究遂行において実務者との連携が怠慢だったと言わざるをえない。データの表示においても、すべてのケースでSD範囲内に入っているのか定かでなく、さらに詳細な解析が必須であろう。技術的には特に問題はないと思われる。データの詳細な解析で信頼性をさらに担保すべきと考える。技術移転の観点からは、新しいマーカーを使ったELISA法でさらにデータ数を増やし、企業と連携すべきであろう。マーカーと疾患との関連がしっかりと確立されれば技術移転に繋がる可能性は高く、迅速診断法として社会に役立つと思われる。
新規開発ベクターシステムによる未知のがん融合遺伝子の探索 久留米大学
水野晋一
久留米大学
井上薫
悪性腫瘍における未知の融合遺伝子の探索を、高精度かつ経済的に行うことを可能とする新規システムを開発した。本法はメイトペア法を基本としているが、従来法では、複数DNA分子の環状化という不可避のノイズ混入のため、その解析精度は低く、実験過程や解析は煩雑困難であり、高額の解析費用を必要としていた。本研究では、この問題を抜本的に解決し、シンプルなベクターシステムにより正確なメイトペア配列のみを選択する方法の新規開発に成功し、その有効性を実証した。本法により、悪性腫瘍の融合遺伝子の系統的探索が高精度かつ経済的に可能となっており、今後は幅広く悪性腫瘍の原因融合遺伝子の発見に展開してゆく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の計画に加えて、制限酵素サイトの挿入により工夫を加えたこと点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、新規融合遺伝子の発見につながるノイズ除去の精度検証や、臨床検体での解析を行う必要があると思われる。今後は、農業や畜産の領域でこの融合遺伝子の検出がどのような意義を持つのか明確化にすることで、農業や畜産の分野にも大きなインパクトを与えることが期待される。
球体駆動式全方向移動装置の普及促進のための廉価版の開発 九州工業大学
宮本弘之
九州工業大学
荻原康幸
従来の全方向移動装置の試作機は、200kg以上の耐荷重を目指したもので、重量50kg程度、コストは150万円程度であった。本研究開発では、耐荷重を100Kg程度、重量は30kg未満、コストは50万円未満に目標設定した。昨年度は、まずCAD設計・樹脂加工技術習得と樹脂加工部品・MDF板等の材料に十分強度があることを確認した。本年度では、全方向移動装置の台車部分の詳細設計、切削加工、組立を行った。耐荷重100kg程度、重量22kg程度、台車単体の材料費を35万円程度と、当初の目標を達成できた。特に重量とコストでは、目標を大きく上回ることができた。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。当初の目標はほぼ達成されていると考えられる。数値として目標を掲げたコスト達成を材料費のみ(加工人件費等を無視)で評価している点は疑問であるが、“廉価”という方向性は達成できたものと考えられる。耐荷重など、強度面での基本的な性能については成果を得ているが、応用分野として想定している電動車いすとしての性能試験結果は示されておらず、実際の適合性は不明であり、この点は残念である。一方、既にいくつかの企業からのアプローチがある旨の報告があるが、具体的な計画はこれからであると考えられる。また、コストや耐久性などの点でさらなる検討、および、車椅子は、屋内限定での使用であっても多少の段差乗り越えなどの能力が必須であり、こうした課題をさらに詳細に検討していく必要があると思われる。
ウイルス性パンデミック防止のための高感度RNAの電気化学的検出法の開発 九州工業大学
竹中繁織
(財)北九州産業学術推進機構
藤本潔
ウイルス性パンデミックを防ぐための高感度RNA検出法を開発した。逆転写酵素反応と均一溶液中で使用可能な二本鎖DNAの電気化学的検出試薬FND2とを組み合わせることによって一段階の操作で電気化学的に目的RNAを検出できる手法を開発した。FND2は本研究開発で見出したものである。具体的な操作は、ターゲットとなるウイルスRNAをDNAプライマーと逆転写酵素AMVを用いて二本鎖のcDNAへ逆転写反応と得られた二本鎖cDNAのFND2による電気化学的情報へ変換と検出よりなる。本開発手法はPCRを行うことなく目的ウイルスの迅速高感度検出を実現できるため従来に比べ大幅な測定時間の短縮が可能となった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、電流増加の検知により目標とする感度でのRNAの検出は達成されている点は評価できる。一方、技術移転を目指すには、目標である分析時間の短縮化や遺伝子検出システムの構築、最適化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、企業との協力関係が築かれつつあるので、さらに加速して進展を図ることが望まれる。
チタンの水熱アパタイトコーティング 九州大学
石川邦夫
九州大学
山内恒
組織親和性や骨伝導性向上を目的としたチタンのアパタイトコーティングは一般的にプラズマスプレーによって行われているが、超高温に暴露されるため熱分解が不可避であり長期的な剥離が問題となっていた。本研究は水熱処理によってチタン基板をアパタイトでコーティングする手法の有用性を検討したものである。まず、水熱処理条件をカルシウム塩等の種類、濃度、処理温度、処理時間等から検討し、最適化を行った。その結果、接着強さが約36MPa(プラズマスプレーでは10MPa)と著しく高いアパタイトコーティング手法を確立した。さらに骨髄細胞を用いて、細胞親和性や初期接着、増殖、分化等を検討したところ、アパタイトコーティングチタン基板はチタン基板に対していずれも優位に高い値を示すことがわかった。さらに実験動物を用いて病理組織学的に検索した結果、アパタイトコーティングチタン基板は為害性を全く示さず、優れた組織親和性と骨伝導性を示すことも明らかになった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、水熱処理条件をカルシウム塩等の種類、濃度、処理温度、処理時間等から検討し、最適化を行った結果、接着強さが約36MPaと著しく高いアパタイトコーティング手法を確立した点と、実験動物を用いて病理組織学的に検索した結果、アパタイトコーティングチタン基板は為害性を全く示さず、優れた組織親和性と骨伝導性を示すことを明らかにした点は評価できる。一方、実用化のためには、目標としていた課題の更なる技術的検討やデータの積み上げが必要と思われるれ、将来的には、比較的大きな実験動物を用いたより長期間の病理組織学的探索も必要と思われる。今後、本技術内容は、歯科分野に限らず整形分野にも展開可能であり、実用化できればインパクトは大きいと予想される。
ポルフィリンマンガン自己集積体を用いた腫瘍特異的MRI造影剤の開発研究 九州大学
古賀登
九州大学
山内恒
水溶性側鎖としてポリエチレングリコール(PEG)を複数個導入したポルフィリンマンガン錯体(TPPMn)誘導体を水中で自己集合化させ、得られた50-200nmのTPPMn有機ナノ微粒子をMRI造影剤として用いた。In vivo MRI測定において、PEG鎖の数が異なる2種類のTPPMn有機ナノ微粒子は十分な造影効果示した。しかしながら、DLS測定における両者の粒子サイズに大差がないにもかかわらず生体内での滞留時間に大きな差が観測された。また、長時間滞留性を示したTPPMn有機ナノ微粒子において腫瘍組織と正常組織での輝度に差が観測された。その輝度の相対的強度比(腫瘍部位/筋肉部位)は、1.5倍程度であった。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にTPPMn有機ナノ微粒子の体内動態に影響を与える因子をin vitro及びin vivoの研究で解明することにより、更に高い腫瘍特異性を示すMRI造影剤に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、安全性の確保と更なる生体内緩和能向上の課題が存在している。現時点では動物実験用の分子イメージング用造影剤としての可能性が期待される。今後、光過敏症などの種々の症状を発現するポルフィリン症への対応を図ることが望まれる。
創傷治療への応用を指向したbFGF徐放性キトサン凍結−融解ゲルの開発 九州大学
武井孝行
九州大学
坪内寛
本課題では、既存の創傷被覆材よりも2.0倍以上速く傷を治癒させることができる新たなヒドロゲル創傷被覆材の開発を目的とした。そのために、申請者がこれまでに開発しているキトサン凍結−融解ゲルの水分保持力の改善ならびにbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)の添加効果を検証した。キトサン誘導体と同様に凍結−融解処理によってゲル化するポリビニルアルコールを従来のキトサンゲルに加えることでゲルの水分保持力を大幅に改善できた。ラットを使用した実験において、このゲルは医療用創傷被覆材よりも2.1倍速く傷を治癒させる効果があることを証明した。つまり、当初の目標をほぼ達成できた。今後は、より大型の動物を用いてゲルの治療効果の検証を行う必要がある。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、キトサン誘導体と同様に凍結−融解処理によってゲル化するポリビニルアルコール(PVA)を従来のキトサンゲルに加えることでゲルの水分保持力を大幅に改善できた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、従来のPVAゲル(ビューゲル)との相対的な優位性を検証しての実用化が望まれる。今後、複数社が本技術に興味を持っているが、商品化のためにはより低コストなゲル作製法などの検討が必要と思われる。
誘電泳動インピーダンス計測と抗原抗体反応を用いたウイルス検出法 九州大学
中野道彦
九州大学
坪内寛
本研究では、誘電泳動インピーダンス計測法(DEPIM法)を用いてウイルスを行うことを目標とした。これまでDEPIM法は細菌検出に用いられており、それをウイルス検出に応用する。DEPIM法は誘電泳動力による検出対象物の微小電極間への捕集と、それに伴う微小電極間のインピーダンス変化を計測して、溶液中の検出対象物の量を検出する。この誘電泳動力は対象物の大きさに大きく依存するため、ウイルスのようにその大きさが非常に小さいものでは、結果として誘電泳動力も小さくなる。ここでは、ノロウイルスの組換えキャプシドを用いて、これをDEPIM検出できるか試み、流速等の条件を最適化することで、2.5ng/mlの組換えキャプシドを5分で検出することに成功した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ウイルス検出時間は目標を達成できた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、最も重要な感度が目標には遙かに及ばず、技術移転につながる研究成果は得られていない。今後の研究開発計画を的確には検討して、目標とした感度達成での実用化が望まれる。基礎的なところは抑えているので、今後の研究開発に期待したい。
骨再生治療のための層構造を有する多孔質複合材料の開発 九州大学
東藤貢
九州大学
坪内寛
大規模な骨欠損に対する再生培養骨移植法において利用する、幹細胞培養のための新規足場材料として、骨再生能と力学特性に優れる強化型複合系多孔質材料の開発を行った。構造としては、多孔質連通構造と層状構造を採用し、原料としては、生体有機・無機成分と同種の材料、生分解性合成高分子材料を複合化して使用した。試作した材料について、力学特性試験、細胞培養実験を行い、各種力学特性、細胞増殖・分化能、骨組織再生能等について評価した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標の弾性率100MPa、圧縮強度5MPaを大幅に超える最大弾性率280MPaを有する強化型多孔質材料の開発に成功し、細胞親和性を従来より向上させた複合型バイオセラミックスを開発した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、生分解性合成樹脂、生体高分子であるコラーゲン、生体活性バイオセラミックスの3種類の異なる材料を複合化させて、力学特性と細胞親和性の両方の機能を有する材料の開発には成功していないので、次の開発研究ステップに繋がる成果を挙げることが望まれる。今後、組織親和性の高い骨再生用足場が開発されると骨欠損治療に応用が期待でき、社会的還元が大いに期待される。
蛍光・ニトロキシルプローブを用いた生体内酸化ストレスの評価 九州大学
大和真由実
九州大学
平田徳宏
本研究は、ニトロキシルラジカルのラジカル反応性と蛍光検出を利用して、脳虚血再灌流ラットにおける酸化ストレスをより高感度に評価することを目的とした。蛍光・ニトロキシルプローブは、すでに脂質ラジカルとの反応性を報告しているDansyl-TEMPOを用いた。ラットの脳梗塞半球にてdansyl-TEMPOの蛍光強度の増加が認められたが、十分な強度は得られなかった。そこで、さらなる高感度化を目的として、いくつかのプローブを合成し、培養細胞系での脂質ラジカル検出を試みたところ、側鎖によって蛍光強度に違いが認められた。今後は、これらの新規プローブを疾患モデル動物に適応し有用性を示し、これまでにない酸化ストレスプローブ開発を行っていきたいと考えている。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、蛍光分子とニトロキシルラジカルに結合するアルキル側鎖の両者を変更することにより、脂質ラジカルの検出に優れた分子の条件について知見を得た点は評価できる。一方、細胞試験にとどまらず、in vivo試験において虚血部の脂質ラジカル検出が可能か、血液中のラジカル検出が可能であるかなど、従来法より優れているか否か定量的な確認に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。脂質ラジカルイメージングの開発は、成功すれば大きな成果が期待できるので、今後更に応用可能な分野の探索が望まれる。
細胞内クロライドアニオンを可視化する蛍光プローブの開発 九州大学
王子田彰夫
九州大学
平田徳宏
本研究では、細胞内クロライドイオンを蛍光可視化する実用性に優れた蛍光プローブ分子の開発を目指してルシゲニン型分子の設計と機能評価、および二波長レシオ検出が可能なプローブ分子の合成検討を行った。ルシゲニン型蛍光プローブについては、アクリジン環上に複数のメトキシ基を導入することで、蛍光波長の長波長化と光安定性を獲得することに成功した。しかしながら、現時点の改善度合いは当初の目標レベルに達しておらず、今後継続して検討を進めていく必要がある。一方、二波長レシオ型の蛍光プローブについては、現在、デザインした分子の合成検討を進めている段階にある。今後、合成が達成され次第、機能評価を行う予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。第一段階で目標とする優れた特性を持つ蛍光化合物は得られておらず、第二段階としたレシオ検出型蛍光プローブは合成の途上である。このため、現時点では、技術的課題が明確になったかどうかは、このような研究では合成してみないとわからないところがあり判断できない。一方、現在合成途上のものが良い性能を持つ可能性はあるが、今後より効率よい検討法の改良が望まれる。
多次元メタボロミクスイメージングによる次世代型食品機能性評価システムの開発 九州大学
藤村由紀
九州大学
平田徳宏
本研究では、申請者が独自に開発してきた生体局所メタボロームに時間的空間的(多次元)情報を付与できる質量分析イメージング技術を応用・最適化し、生体局所の食品因子応答性代謝動態の可視化法を開発することを目的とし、1) 種々の代謝物ピークを検出できるマトリックス(イオン化助剤)の創出ならびに2) 食品因子応答性脳内代謝物の二次元可視化がほぼ当初の予定通りに可能となった。今後、本成果を学会や論文にて公表すると共に、多様な食品の機能性評価へ適用することで、技術的検証(汎用性評価)だけでなく、更なる技術的高精度化(特に、標的代謝物に対するマトリックスの最適化)への展開をはかり、より質の高い評価技術へと昇華させる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、MALDI−TOF−MASを用いたメタボロミクス解析をするためのマトリクス最適化を創出し、100種類上の代謝物を検出可能にし、脳内代謝産物の質量イメージングにより食品因子摂取の有無による違いも可能にしている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、食品因子を対象にした研究をさらに発展させ、生薬や有用物質までも包括できる測定技術の開発にも取り組むことで実用化が望まれる。今後は、実際ヒトについての知見を得るまでの展開が期待される。
生体内酸素濃度測定用ビーズの開発 九州大学
伊藤慎治
九州大学
平田徳宏
Oxo63の電子スピン共鳴(ESR)スペクトルが酸素濃度に依存して変化することを利用して、ESR法やオーバーハウザー効果MRI(OMRI)法で酸素濃度の分布を画像化できる。しかし、局所的な生体組織の酸素濃度マッピングを行う場合、薬剤が標的組織外へ分散してしまうために、高精度なマッピングを行うことが困難であった。Oxo63を標的組織に局在させて投与できるように、アルギン酸ビーズにOxo63を封入したものを試作しているが、Oxo63がビーズから溶出してしまう問題がある。本研究ではビーズ表面にリン脂質被膜を形成し、酸素応答機能を保ちながらOxo63が溶出しないビーズの作製を課題とする。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。本来の研究目的である溶出を完全に防ぐことのできるリン脂質膜形成に関しては、溶出を遅らせるリン脂質膜の開発に留まっている。徐放性のリン脂質膜形成は、薬剤の徐放性ビーズの開発など、新たな技術展開が可能であり、プローブ徐放性製剤の開発が視野に入ったと考えられる点については評価できる。一方、具体的な研究応用は未提示であるが、多くの企業が注目している領域であり、組織障害性の高い化学療法薬などの効果的で副作用の少ない治療法への開発などへの展開が、研究の発展により可能となるものと考えられ、大きな社会的還元も可能と期待される。
生体試料中の酸化・還元物質の影響を受けにくい超微量高感度検出法の開発 九州大学
外園栄作
九州大学
平田徳宏
臨床検査における生体試料分析には、多くの酸化酵素が用いられ、生成した過酸化水素、4-Aminoantipyrine、トリンダー試薬をペルオキシダーゼにより酸化縮合させた生成物の呈色度合いを用いて検出する。そのため試料中の酸化・還元物質の影響を強く受けるなどの問題がある。そこで、本研究では、直接、過酸化水素を定量することにより、これら問題を回避し、かつ、現行法よりもさらに高感度に分析可能な新しい検出系の開発を試み、その技術応用の可能性について探索を行った。結果、今回の検討でいくつかの色素・金属の組み合わせにおいて過酸化水素を高感度に検出できる可能性を見出した。しかし、実際に酵素反応系を組み過酸化水素を発生・呈色定量を試みたところ酵素種によっては、用いた酵素自身が検出系に影響を与える場合があること、また、界面活性剤と酵素が結合し沈殿を起こす場合があるなどいくつかの解決すべき問題点も新たに露呈した。しかし、これら問題を回避する手段を見出し、本研究では従来とは違った方法で高感度に過酸化水素を検出できる可能性を見出した。今後は、より高感度化を目指すことで本研究の技術が他分野へ広く応用可能になると考える。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。臨床検査における酸化酵素の定量法として、生成した過酸化水素を定量する方法が一般的であるが、酸化・還元物質の影響を強く受ける。その解決のため、本課題では過酸化水素自身を直接定量する10〜1000倍高感度な測定法の開発を目指した。その結果、モデル実験は目標を達成したが、実際にコリンオキシダーゼを用いて検証したところ、酵素自身が発色を妨害し、感度は約3.8倍の上昇に留まっている。現時点よりさらに高感度にする具体方策は示されていない。しかしながら、過酸化水素の検出技術の向上は、幅広い応用が期待される分野であり、今後、問題点を克服し、さらには技術移転がなされることが望まれる。
生体内で産生する脂質ラジカルの蛍光検出手法開発 九州大学
山田健一
九州大学
平田徳宏
脂質過酸化物の最終代謝産物とタンパク質との複合体が、がんや炎症時の血管新生に密接に関与していることが報告された。従って、代謝産物の反応開始点である脂質ラジカルの検出手法の開発は、疾患のメカニズム解明のためにも重要である。我々はこれまで、有機スピン化合物が脂質ラジカルと鋭敏に反応することを報告してきた。そこで本研究では、蛍光団を用いて、脂溶性環境下で脂質ラジカルと結合すると蛍光がONになる分子の開発を行った。開発した蛍光分子は、培養細胞レベルで実際に利用できる可能性を示した。今後さらに本研究を発展させることで、酸化ストレス疾患発症のメカニズム解明やその治療薬の開発に向けた技術移転の可能性を探索したいと考えている。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に蛍光団を用いて、脂溶性環境下で脂質ラジカルと結合すると蛍光がONになる分子の開発技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、物質合成から細胞・動物実験による評価までを目標に掲げており、目標は達成されている。特に、物質合成の段階で蛍光団をDansyl基からNBD基に変更することにより、感度が向上したことは評価できる。製品化に向けたデータ取得、および細胞内オルガネラへのターゲッティングを課題としており、実用化に向けたフェーズが明確である。今後の研究開発の方向性として、ラジカル産生を抑制する分子開発を目指すのか、蛍光プローブの実用化を目指すのかを明確にする必要があるものと考えられる。
多能性幹細胞に由来する肝組織幹細胞の取得技術の開発 九州大学
鈴木淳史
九州大学
槐島慎
肝細胞移植や人工肝臓、肝機能を指標にした薬剤反応性試験では、共通の細胞材料として肝細胞が必要不可欠である。しかしながら、現時点では、機能を保持させたまま培養下で肝細胞を増殖させ、維持することはできない。これは、肝細胞の供給源として現在もっとも期待されている胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)から分化させた肝細胞においても同様であり、肝細胞を用いた新技術の開発の妨げになっている。そこで本研究では、ES/iPS細胞から肝臓の組織幹細胞(肝幹細胞)を分化させ、それらを均一な細胞集団として維持・保存する技術を開発し、ES/iPS細胞由来の肝幹細胞を肝細胞の供給源として利用するための基盤技術を構築する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。ES/iPS細胞から肝幹細胞を均一な細胞集団として維持保存する技術の開発を目指しているが、中でも、ALB/ESで内胚葉化した細胞に反応する細胞表面モノクロ−ナル抗体を見い出した点は評価できる。一方、肝細胞、肝幹細胞に反応するモノクローナル抗体の選別に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、分離・回収のための基盤技術の確立まではかなりの道のりがあると考えられる。
ヒトiPS 細胞培養用遺伝子導入フィーダー細胞株の開発 九州大学
井藤彰
九州大学
槐島慎
本研究は、ヒトiPS細胞を安定的に維持培養することが可能な未分化維持因子遺伝子導入フィーダー細胞を構築することを目的とした。フィーダー細胞として、無限増殖可能な株化細胞であるSTO細胞をターゲットとし、目的遺伝子として、E-カドヘリン、bFGFおよびIGF-I遺伝子を用いた検討を行った。遺伝子導入効率の低いSTO細胞に対して遺伝子導入法を検討することで、遺伝子導入フィーダー細胞の取得に成功した。また、Tetシステムを搭載することで、効率的に細胞の増殖と機能性を切り替えることが可能な遺伝子発現調節系を構築した。これらの未分化維持因子の遺伝子発現システムを導入したフィーダー細胞株は、ヒトiPS細胞の培養に有用であると考えられる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、STO/EFフィーダー細胞の樹立に成功していないのは残念であるが、レトロウィルスベクターの利用などを通して遺伝子導入に関する一定の成果は得られている点は評価できる。一方、bFGFに代わるSTO/EIの樹立は成功しているので、その株を使った詳細な検討やデータの積み上げが必要であり、樹立株で効果があれば、その使用法に関する特許出願は可能と思われる。現在樹立されているSTO/EI細胞でiPS細胞未分化培養に効果が得られれば技術移転の期待が高まる。今後、樹立したSTO/EI細胞の効果の検証が重要であり、bFGFのスプライシング機能の解明が可能になれば社会的インパクトは大きいと思われる。
癌の温熱療法における絶縁体を用いた深部加温領域の最適化 産業医科大学
大栗隆行
産業医科大学
橋本正浩
癌に対して42.5℃以上の加温が得られれば、高い抗腫瘍効果が得られることが基礎研究において証明されている。しかしながら、温熱療法が普及に至らない理由は、現状の温熱療法装置は、大部分の癌が存在する深部領域への加温集中性が不良で、温度上昇が十分に得られなかったことが最大の要因である。本研究開発で、加温電極と体表面の間に加工した絶縁体を挿入し移動させる技術は詳細が具体化され、今まで不可能であった深部領域への加温集中性を実現し、周囲正常臓器の過熱を大幅に軽減できることが、ファントム実験により確認された。今後は、今回開発された加温法の普及に向けた製品化、および臨床試験でその有効性を確認する。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、加温電極と体表面の間に絶縁体を挿入し移動させる技術の具案化に対する検証が行われ、従来不可能であった深部領域への加温集中性をおおむね実現している点は評価できる。本加温法は現行の加温装置に、大幅な改良を加えることなく絶縁体を挿入し移動させることができるメリットを有する。一方、技術移転の観点からは、本加温法に関して臨床試験を開始し成果としての実用化が望まれる。今後、比較的製品化は比較的容易と思われ応用展開が期待される。
遅発育性病原菌を対象とした迅速な薬剤感受性試験法の開発 福岡県工業技術センター
塚谷忠之
結核菌に代表される遅発育性病原菌を対象とした薬剤感受性試験では検査に1〜2週間の日数を要することが問題となっている。本研究では微生物代謝活性測定法と吸 光マイクロプレートリーダを利用することで遅発育性病原菌の迅速検出法を開発し、 さらに3日で測定可能な薬剤感受性試験法を確立した。M. kansasii及びM. aviumの臨床分離株に対する薬剤感受性試験を本法(3日)と従来法(目視判定、10〜14日)で実施したところ、両法による結果は良好に一致した。本研究成果は迅速な薬剤感受性試験を可能としたものであり、医療機関における臨床検査や製薬企業における創薬のスピードアップに貢献できるものと考えられる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に水溶性テトラゾリウム塩及び電子メディエータを組み合わせて「反応性と安定性を兼ね備えた検出試薬」を開発し、本検出試薬を様々な遅発育性病原菌へ適用する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、実際に使用する各種抗菌薬単独での発色反応に及ぼす影響や、臨床分離後間のない臨床株を使用してデータを比較することを踏まえた後、実用化が期待される。今後は対象菌株数の増加やreference株でなく新鮮な臨床分離株を使用しての評価が望まれる。また、遅発育性病原菌(評価できるのは抗酸菌)の同定と薬剤感受性試験が数日で評価できる方法が開発され医療現場(臨床検査)で実用化できれば社会への貢献は大きい。
超音波化学療法による新しい癌治療 福岡大学
内田俊毅
福岡大学
大田修明
今回、癌細胞に選択的に結合する腫瘍親和性光感受性物質を、低周波、低強度の超音波で励起して癌細胞を殺細胞する、今までにない新しい癌治療実験装置を開発した。また水流による冷却化によって、超音波照射面、及び超音波発振器の温度上昇を抑えることに成功し、超音波装置の3時間以上の長時間の連続使用にも照射強度、周波数を安定化させることができた。さらに、水槽内超音波発振面、及び受振面のキャビテーション発生による気泡付着を水流化することによって抑えられ、性能低下や不安定化を防ぐことも同時に達成できた。また相対的な超音波強度(音圧)のマッピングを行ったことで、動物実験時の効果的な照射位置が確認できた。照射面は23cm x18cmで、まだ拡大の余地もあり、動物実験を行いながら、今後、さらに改善を加えて臨床応用実験へ進展させていく予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標とする温度上昇のない装置の作製し、照射音圧分布のマッピングまで行われたのは評価できる。一方、技術移転の観点から、次ステップの課題として、ヒトへの適用で照射の均一性が挙げられる。その部分を具体的にどのように評価するか、骨などへの超音波照射による影響など具体的な安全性や有効性に関する技術的課題をもっと具体的に計画する必要がある。今後、治療に応用展開されれば社会還元は期待される。
フルオラス誘導体化LC-MS法を基盤とする糖鎖性腫瘍マーカーの高精度計測 福岡大学
吉田秀幸
福岡大学
大田修明
これまでに開発したフルオラス誘導体化を伴うシアロ糖鎖のLC-MS/MS計測法を改良することで、糖鎖性腫瘍マーカーであるシアリルルイスaとシアリルルイスxを対象とした新規分析法の開発を行った。標準品を用いて分析条件を最適化した後、標準品添加の健常人由来生体試料(ヒト血漿及び尿)を対象とした前処理法の確立を行い、更に分析法を十分にバリデートした。被検物質同士の相互分離・単独での定量は完遂できなかったが、従来法よりも高精度、高感度かつ高選択的な糖鎖性腫瘍マーカーの包括的分析が可能となった。今後、分離・検出条件の更なる最適化並びに実試料計測への適用実験を通して、本法の実用性を検証していく必要があると思われる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に「フルオラス誘導体化LC-MS/MS」の導入によるシアリルルイスa及びXの高精度、高感度かつ高選択的な計測技術技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、糖鎖性腫瘍マーカー計測による新規腫瘍検査・診断法に関する技術移転が期待される。論文や学会での発表も多く、計画通りの成果が得られている。
低出力超音波を用いた非侵襲的がん超音波力学療法に用いる新規超音波感受性製剤の開発 福岡大学
芝口浩智
福岡大学
芳賀慶一郎
非侵襲的ながん治療法として期待されるものに超音波力学療法(SDT)があるが、SDTに用いる超音波感受性物質のがん組織への特異的集積性を向上させるために、腫瘍関連抗原に対する抗体と結合させ、あるいはEPR(Enhanced Permeation Retention)効果による腫瘍血管からの漏出・滞留を期待してナノ粒子化による腫瘍標的化を試みた。蛍光物質で標識した製剤で検討したところ、どちらの場合も投与後約24時間後における腫瘍内薬物濃度が最大となり、当初期待した通りこれらの方法による腫瘍集積化が有効であることが示唆された。また、これらの結果から、改良型製剤を用いた組合せSDTでは、超音波照射を行う望ましいタイミングは薬物投与後24時間後であることが示唆された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ナノ粒子を用いることでがん組織への集積性の向上させ、抗CEA抗体への薬物コンジュゲートによってもがん組織への薬物送達効率を向上させうることを確認し、超音波力学療法を行うタイミングが投与後24時間がよいということも提案している点は評価できる。一方、技術移転の観点から、超音波力学療法を行う上で重要なポイントは、超音波感受性物質のがん組織への集積をいかに行うかであるので、超音波照射したときの治療効果の検討が必要だと思われる。今後、本研究は低侵襲的がん治療の開発につながるので、応用展開後は社会に対し大きな利益がもたらされることが期待される。
酸化チタンと超音波を併用した新しい口腔癌治療法の開発 福岡大学
高橋宏昌
福岡大学
芳賀慶一郎
本課題の目標は、酸化チタンと超音波エネルギーを併用することにより、生体内での抗腫瘍効果を確認し、医薬品としての可能性を検討することである。これまでに、扁平上皮癌細胞株に対して酸化チタン水溶液と超音波を併用した結果、in vitroでの殺細胞効果を認めた。また、酸化チタンの濃度、超音波エネルギーの強度、超音波照射時間に依存して殺細胞効果が増強されることが判明した。In vivoの基礎的な動物実験でも、腫瘍に酸化チタン水溶液を直接注射することで、酸化チタンが腫瘍内の細胞に取り込まれ、超音波照射により、癌細胞に大きなダメージを与えることが確認できた。今後の展開として、ヌードマウスを用いた動物実験で、酸化チタンと超音波を併用した治療の抗腫瘍効果をより詳しく検討する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。新しい口腔癌治療法に関する研究であり、酸化チタンと超音波の併用による効果、超音波の強度に対する依存性などが調べられている。真面目に実験が行われており、目標である酸化チタン・超音波併用療法による殺細胞効果は確認されている。しかし、超音波による酸化チタンの腫瘍内細胞への移動のメカニズムの解明も目標の一つであったが、今後の課題になっており不十分である。in vivoの実験では癌組織に直接薬剤を注入しているが、静脈注射による癌組織への薬剤の堆積量、超音波の効果の確認が必要と思われる。また、体内に残留した酸化チタンの毒性なども調べられていない。技術移転の観点からは、今後の研究開発計画について検討されており、技術的課題(in vivoでの毒性試験)は明確であり、産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性が高まったが、医薬品メーカとの連携のためにはメカニズムの解明、安全性の検討が必要である。以上のとおり、治療法として承認されるために明らかにすべき課題は沢山残っているが、新しい口腔癌治療法となるため、実用化された場合の社会への還元は非常に大きいと思われる。
完全深屈曲可能な人工膝関節の実用化に向けたシミュレータ試験 佐賀大学
廣川俊二
現用人工膝関節の最大屈曲角は約100°であり、正座などの和式動作が不可能であった。そこで、現用人工膝関節のポスト・カム部を球面軸受け構造とし、完全深屈曲が可能な人工膝関節、CFK(Complete Flexion Knee)を考案した。次に、コンピュータシミュレーションにより、キネマテックスと強度の観点から、当該人工膝関節の1st, 2nd モデルのポスト・カム部の球面形状をS状に変更したCFK3rdモデルを開発した。本申請研究の目的は、この3rdモデルの光造形レプリカを作製し、機械的シミュレータ実験でキネマテックスや抗脱臼性をチェックしつつ、サイズや曲面曲率などの最適化を図ることである。しかる後、協力企業に実機製作を委託し、臨床試験や耐久性試験を経て、当該人工膝関節を実用化する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、一部計画変更があったが、それに対して適切に対応されている点は評価できる。一方、当初の計画であった下肢筋の代用ワイヤーをモータで牽引して、膝運動を再現するシミュレータの製作、およびX線動画像を利用したキネマテックス評価が十分行えておらず、さらなる検討が必要である。今後、日本人向けの人工膝関節が実用化されれば、従来の人工関節には望めない広可動域(屈折)が実現されるため、患者のADL向上が期待される。
安全性と快適性を兼ね備えた温泉水等の衛生保持技術の開発 長崎県環境部
田栗利紹
安全性と快適性を兼ね備えたお風呂の環境づくりを目指して、温泉利用浴場業界向けの抗菌剤を開発した。最も強く安定的な殺菌力を示したカフェイン銀複合体の耐塩素性を精査した結果、その活性は泉質や塩素の存在に影響されなかった。さらに、その活性中心であるカフェイン銀錯体はレジオネラ菌のみならず営業施設のろ過材から分離されたバイオフィルム形成菌に対しても有効に作用したことに加えて、併用により低濃度塩素の効果を増強することがわかった。造粒試材により、7日間隔で換水したお湯の衛生状態を1ヶ月間以上清潔に保つことができた。本試材にはバイオフィルム形成抑制効果が認められ、入浴施設の衛生管理向上に大きく貢献できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。在郷軍人病は温泉・24時間風呂などでの感染が知られている。また老健施設などでは易感染者が多く感染防止の観点から対策が望まれるところである。当初の目的を達成し、予想されたように本方法の実用性が確認できた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、実用化に向けた剤計・使用法などを具体化することと思われる。非定型抗酸菌による患者発生も年間6000名と多く、今後、この手法で感染経路の一つが防止できるようになれば、本方法による感染予防の重要性が高まることが期待される。
物質のアンチエイジング効果を測定可能な生体センサー技術の基礎と応用 長崎大学
千葉卓哉
生体センサーマウスが、CRに反応して血中へのレポータータンパクの分泌を増加させることが実証された。CR模倣効果が示唆された機能性食品成分を投与することによっても、レポーターが活性化されたが、高脂血症、高血圧の治療薬(CR模倣薬剤の候補)投与によってはレポーターの活性化は見られなかった。そのため新たな候補薬のスクリーニングを行い、いくつかの候補を同定した。一方で、レポーターの活性化と酸化ストレス耐性との間に正の相関が見られることを明らかにし、CR模倣効果を持つアンチエイジング物質の探索に、開発した評価系が有用であることが実証された。今後はin vivoおよびin vitroでの試験を外部より受託し、企業がもつシーズの評価等を行い、事業化を目指す。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、生体センサーマウスに関しては、カロリー制限や代謝改善効果をもつ薬剤レスベラトールの投与に応答して血中にレポータータンパク質が分泌されることを実証したほか、in vitro実験により新たなカロリー制限模倣薬のスクリーニングを行った結果、新たな候補物質を同定している点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、遺伝子発現解析や代謝に関連する生化学的解析を達成し、生体センサーを3倍以上活性化する代謝改善物質を見つけることが先決と思われる。今後、新規な抗老化薬剤の開発につながることが期待される。
最適なリハビリプログラムのための下肢運動機能評価スーツの開発 長崎大学
鶴崎俊哉
長崎大学
竹下哲史
膝関節および足関節の屈筋群・伸筋群から筋電信号を導出し、各関節の屈曲/伸展モーメントを算出後、これらの合力から関節モーメント(筋力)を推定する下肢機能評価装置を開発した。下肢機能評価装置から得られたデータの妥当性は、歩行動作を三次元動作解析装置とフォースプレートを用いた動作解析システムから得られる関節モーメントによって検証を行った。下肢機能評価装置は市販のEMGロガーを使用し、キャリブレーションのための機器を含めてハード面では完成に至った。モーメントの推定アルゴリズムは、関節を固定した等尺性収縮時では十分な精度を得られたが、関節運動を伴う場合のアルゴリズムはさらに精度を上げる必要がある。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも筋電図から関節モーメントを算出する発想は興味深い。一方、技術移転の観点からは、対象者の個体差や歩行の要素などに影響されない精度を保証するアルゴリズムの確立が望まれる。
全静脈麻酔における薬物血中濃度を指標とした TCI システムの構築 長崎大学
和田光弘
長崎大学
藤原雄介
申請者らは全静脈麻酔 (TIVA) に おける薬物血中濃度を指標とした目標制御注入 (Target-controlled intravenous, TCI) システムの構築を目的とし、静脈麻酔薬の超迅速定量装置の開発とその結果を基に薬物の注入を行うシリンジポンプシステムの開発を行うことを計画した。本申請はその取り掛かりとして、マイクロダイアリシス法を用いた静脈麻酔薬の超迅速定量法の構築を検討した。LC-MS/MSシステムの適用が難しかったことから HPLC-UVシステムによる検討を行っているがその達成にはさらなる検討を必要とする。今後も引き続き検討を行う予定である。 当初目標とした成果が得られていない。中でも、静脈麻酔薬(プロポフォールとレミフェンタニル)を液体クロマトグラフィー(LC−MS)システムを用いて迅速計測するためのマイクロダイアリシス法プローブの検討、LC−MSの測定条件の最適化などの点での技術的検討や評価が必要である。今後、麻酔薬血中濃度実時間測定のニ−ズはあるので、具体的な解決策を計画し実施されることが望まれる。
携帯型測定装置による薬毒物のオンサイト化学発光分析法の開発 長崎大学
岸川直哉
長崎大学
藤原雄介
本研究では中毒事故現場での迅速な薬毒物の判別や重症度判定を目的として、携帯型測定装置を用いる薬毒物の化学発光測定法の開発を行った。本研究で開発した測定法は、薬毒物溶液と化学発光分析試薬とを混合し、生じる発光を測定するという極めて簡便な方法である。本法では、パラコートやシアン化カリウムといった薬毒物を5分以内という短い時間でng - μg/mLレベルの感度で測定可能であった。さらに本法は、清涼飲料水や唾液中に存在するパラコートを単純な前処理操作のみで良好に検出することができた。小型で軽量な携帯型装置を用いる本測定法を、事故現場での飲み残しや中毒患者の口中から採取した試料へと応用することで、薬毒物の特定や服用量の推定を迅速に行うことが可能であり、効果的な救命措置へとつながることが期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。5種類の薬毒物の検出を目標としたが、中でもパラコートとシアン化カリウムのみ到達できた点は評価できる。一方、唾液中の分析はパラコートのみであり、目標の薬毒物の内、他の3種の測定については大幅な計画変更が必要であり、実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、中毒事故現場での原因薬毒物の判定を目指すものである以上、少なくとも多種類の薬毒物の測定が現場で測定できることが望まれる。
脳血管性疾患創薬を支援するin vitro血液脳関門モデルの開発 長崎大学
巽理恵
長崎大学
藤原雄介
血液脳関門(Blood-brain barrier;BBB)は様々な物質の脳内移行性を制限するバリアー機構である。本研究では、脳血管性疾患における治療薬候補の脳内移行性を早期段階で予見可能とするin vitro ヒトBBBモデルの構築を目標とし、研究を行った。BBB構成細胞をヒト人工多能性幹細胞(ヒトiPS細胞)から分化誘導し、ヒトBBBモデルの構築を行った。脳血管のバリアー機能の構築に必須であるタイトジャンクションの形成を誘導することに成功し、ヒトBBBモデル化の可能性を見出した。現在、構築されたヒトBBBモデルの機能評価を進めている。今後はさらなる性能および機能の強化を行い、製品実用化を目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ヒトiPS細胞由来内皮細胞への分化ができ、ラット初代培養細胞との共培養を行い一定の成果が得られた点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、アストログリア細胞への分化は、外胚葉系に分化しやすいヒトiPS細胞株の利用も考慮されることが望まれる。今後、ヒトBBBのin vitroモデルができれば、ある程度の市場価値があり社会還元されることが期待される。
Coded Excitationを応用した超音波軟組織内における微細石灰化検出法の確立 熊本大学
田邉将之
本研究の目標は、生体内の結石や石灰化が超音波カラードプラ計測に対して特異的にエンハンスを示すTwinkling Signと呼ばれる現象のメカニズムを解明し、高SNR手法であるCoded Excitation法(本研究で採用したGE社スキャン手法B-Flowが該当)を適用することで、初期乳がんのサインである微細石灰化(直径200μm)を検出する手法を開発することである。本研究により、微細石灰化表面に横波が発生することによりエコーとして尾引き信号が発生し、その尾引き信号がTwinkling Signを引き起こす原因であることが強く示唆された。今後も研究を進め、Twinkling Signの発生メカニズムの完全解明を目指す。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。直径1cmを越える石灰化組織や腎石などが超音波のフロー計測画像上で特異なTwincle Sign(以後TS)と呼ばれる粒子分布様のパターンを示す現象の、シミュレーションによる解明と直径200ミクロンの石灰化領域を検出可能なアルゴリズム開発を目的とするが、いずれの結果もTSに関係すると思われる波の発生を見た段階に止まるものと考えられる。そもそもTSが本当に発生したと言えるのか確証がなく、メカニズムが解明されたとは思えない。また、解析方法が不適切とは思わないが、モデルや解析、および解析結果の解釈の点で他に解釈も可能であり、検討不十分と考えられる。採択時に目標として掲げた項目、内容を真に達成することが今後、最大の課題と考えられる。
ファージ表面提示法を駆使した尿毒素捕獲型アルブミンの開発と革新的血液透析療法への応用 熊本大学
渡邊博志
本研究の到達目標の第一段階として、尿毒症物質に対して高い親和力を有するHSA変異体の設計と効率的な作製に加え、作製したHSA変異体と尿毒症物質との結合性の定量的評価が挙げられる。これまでの期間において、CMPF-HSA複合体のX線結晶構造に基づき、CMPF結合サイトを構成する4残基に対してランダム変異を導入し、HSAドメインIIディスプレイファージライブラリーを作成した。その中からCMPFに結合したファージをスクリーニングし、CMPFに高親和性を有するクローンを得た。さらに、ランダムに複数のクローンを選択し、これらを大腸菌にて発現させた後、この変異体を精製し、限外濾過法によりCMPFに対する結合性を評価したところ、親和性の増大が観察された。In vitro 透析装置(閉鎖系回路)を用いた検討からも変異体によるCMPFの引き抜き効果を確認したことから、概ね目標を達成していると考えられる。今後は、最終到達目標に向け研究開発を進めていく予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、尿毒症物質に対して優れた結合能を有するHSA変異体を作製すると共に、アルブミン透析への応用を試みる革新的血液浄化技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、CMPFに高い結合能のあるHAS変異体変異体のCMPF引き抜き効果を確認しており、今後、透析除去効果についての定量的評価や、In vitroの透析除去効果の定量的評価とin vivo透析効果の検証が課題と思われる。
MAPキナーゼTNNI3Kを用いた新しい心疾患診断薬の展開研究と開発 熊本大学
頼仲方一
熊本大学
荒木寛幸
TNNI3Kは心筋特異的に発現するMAPキナーゼである。最近我々はTNNI3K遺伝子を高発現する心筋前駆細胞をマウスの梗塞心筋局所へ移植し、その心筋細胞再生の促進、梗塞面積の減少、左心室リモデリングの改善を示した。さらに、TNNI3Kポリクローナル抗体を用いて、健常者と急性心筋梗塞(AMI)患者のTNNI3K血中レベルを測定したが、AMI患者の血中TNNI3K濃度は健常者より十倍以上高いことが分った。今回は、これらの成果を進展させ、特異性が高い心疾患診断薬開発を目的とする。具体的には1)ヒトTNNI3K蛋白に対するモノクローナル抗体の作製;2)迅速なELISA測定系の確立;3)200例以上血液サンプルの検証;4)心疾患発症と血中TNNI3K濃度の経時的相関性;5)既存のcTnIマーカーとの比較を行う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、急性心筋梗塞の検査試薬として、本バイオマ−カ−の交代は有効であると考えられる。一方、技術移転の観点からは、当初目標のTNNI3Kモノクロナル抗体の調製およびトロポニン検査との比較は終了していないので、さらなる検討が必要である。現行のポリクロナル抗体による検査系でも、急性心筋梗塞の診断応用には期待がもてる。今後は、早めに検査薬企業と協力することで、救急治療室でも使用できる迅速検査用の簡易な検査キットの実用化が期待される。
H5N1新型インフルエンザに対する高感度迅速診断法の開発 熊本大学
桑原一彦
熊本大学
荒木寛幸
研究責任者らはGANPTGマウスの作成によりこれまで検出困難であった修飾抗原や立体構造エピトープに対する特異的なモノクローナル抗体を産生することを可能とし、国際的にトップレベルの高親和性抗体産生技術を開発した。これまで主として癌領域で成功した先行実績を応用し、喫緊の課題であるH5N1新型インフルエンザウィルスの感染を効率よく検出するための基盤構築を行い、これまでに複数のウィルス株に反応する6種類のモノクローナル抗体の樹立に成功した。本研究開発における最終目標はこれらを用いたイムノクロマトグラフィー法簡易キットの構築であり、H5N1インフルエンザの高感度迅速診断を可能にすることである。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、樹立した6種の抗体がcladeの異なるウイルス株のHAにも強く反応したことは、高病原性H5N1インフルエンザウイルスの診断薬に使用出来る抗体である可能性を示したと考えられる点については評価できる。一方、抗体のエピトープを決定出来ず、抗体の特性が不明な点が多いため、技術移転のステップまでには解決すべき問題点が多いと思われる。技術移転までは、まだ、多くのステップがあると思われる。従って、実用化を目指すならば、より詳細な研究計画を検討すべきである。本研究開発の成果が応用展開されたならば、高病原性H5N1インフルエンザがパンデミックとなった場合、社会的還元は十分あると思われるので、技術開発に繋がるような詳細な検討を行うべきである。今後は、樹立した6種の抗体の特性の検討がまだ不十分であり、抗体の特性を更に検討されることが望まれる。
早期乳癌診断用乳癌特異的微量ガス検出技術の開発 熊本大学
西山勝彦
熊本大学
松本泰彦
皮膚微量ガス簡易測定法の基盤技術の確立を目的とし、乳癌検出感度に関わるガス回収法の予備検討を行った。数名の健常者と乳癌患者の皮膚ガスを比較検討し、乳癌特異的皮膚ガスの分析を行った。特異ガス吸着物質としてはPDMSを用いて、乳房近傍、乳首周辺、の数カ所の検討を行った結果、予想通り、乳首周辺からのガスの発生量が多いことが示された。吸着物質であるPDMSは基本的に大きな面積の方が多くのガスを吸着できるのだが、加熱脱離装置のサイズの都合上、17 x 5 mm程度が最大であった。また、乳癌患部近くの皮膚(乳頭)から発生する微量ガスを回収する貼付剤として数種類の市販の添付剤を比較検討した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。しかし、乳がん特異的VOCsの検出特定にはまだ至っていないので、目標達成途上と考えられる。特異的ガス成分の決定もまだ途上で、期間中の特許出願はない。本当にうまくいくと期待の高い成果を得ることができ、特許出願も可能である。早く少なくとも数十サンプルで評価実験することを望まれる。着想は面白いが、研究開発の進展が遅く、まだ基礎研究段階の研究テーマである。患者サンプル数の確保から研究計画を再構築する必要がある。
生体になじむ椎体間スペーサーの開発 熊本大学
中西義孝
熊本大学
松本泰彦
脊柱固定術に適用される椎体間スペーサーを開発することを目的した。日本白色家兎を用いたin vivo試験により、骨形成を誘導する親水性多孔質プラスチック(PVF)を導入することで、自家骨の採取・移植を不要にできることを確認した。生体適合性材料としてX線透過性が高い熱可塑性樹脂(PEEK)を用いることで、インプラントの破損や骨へsinkingを抑制するデザイン、ならびに骨癒合を促進させるために適切な力学的刺激(骨へのひずみ)を与えるメカニズムを付与する新しい構造体のロッドを提案し、その有効性をFEM解析と圧縮試験により証明した。これらの結果をもとに、SWOT分析をおこなった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。脊柱固定術に適用される椎体間スペーサーを開発するため、in vivo試験により、骨形成を誘導する親水性多孔質プラスチック(PVF)を導入し、更に熱可塑性樹脂(PEEK)を用いることで、新しい構造体のロッドを提案し、その有効性を証明した。材料の組み合わせの発見であり、特許性には乏しい。しかし、この分野は材料に何を用いるかというノウハウが重要であり、その蓄積はできたと思われる。問題として、材料は何れも外国製であり、この点が企業化(上市化)の段階で問題となろう。材料そのものの国産化が望まれるところである。
内視鏡的腫瘍切除を安全で容易に行うための新しい粘膜下注入材の開発 大分大学
草野徹
大分大学
江隈一郎
食道・胃・大腸がんなどの消化管の早期がんに対して、技術の発達により内視鏡的腫瘍切除で多くの症例が根治できるようになってきた。しかし、内視鏡的腫瘍切除には時間を要し、出血や穿孔などの合併症が問題点としてあり(1〜4%程度)、新しい粘膜下注入材の開発が期待されている。我々の研究チームでは、新しい粘膜下注入材になりうる物質の一つとして、摂氏20度から60度まではゲルとして、20度以下では液体として存在するという特性をもつ温度感受性物質に着目し開発してきた。結果として、ブタ切除胃において従来の粘膜下注入材と比較し、隆起高と隆起保持能に有意差を認めた。早期がん直下の粘膜下層に当製剤を注入しゲル化させることにより、腫瘍の消化管からの剥離・切除を安全で効率的に行える可能性があり、研究を続けている。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもプルロニックF127は摂氏20度から60度まではゲルとして、20度以下では液体として存在する特性を利用し、内視鏡的腫瘍切除を容易で安全に行うための注入材に関しては評価できる。一方、少なくとも当初想定したゲル化による安定した粘膜下注入剤としての効果は得られていないようであり、科学的な分析と正確な結果記載、評価が必要と考えられる。
電磁現象を利用した経鼻胃管の誤挿入防止のための管先端位置モニタリング法の開発 大分大学
後藤雄治
大分大学
江隈一郎
脳卒中患者の約10%に嚥下障害が後遺し、経鼻胃管での栄養注入が必要となる。鼻から胃まで管を挿入する際、正しく胃に入らず咽頭でとぐろを巻くケースや、肺に入る等の誤挿入が多々ある。誤挿入のまま栄養を注入すると致命的な事態となる。誤挿入を判定する方法としては、管挿入過程を咽頭近辺と胃の中の2回に分けてX線撮影を実施する方法が提唱されている。しかしこれは非常に労力がかかり、また患者は食事の度に経鼻胃管を挿入するため、その度ごとにX線撮影を行うと被爆の問題もある。そこで本研究では管先端部に微小検出コイルを設置し、体外の印加電磁界から管先端部が非接触でモニターできる検査器の開発を目的としている。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、管先端部に微小検出コイルを設置し、体外の印加電磁界から管先端部が非接触でモニターできる検査器の技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、管先端位置モニタリングシステムの人体モデルを用いた検証実験に成功しているが、電磁波の人体影響や装置の小型化、安全性の担保など医療認可、製品化に向けての検討課題は多い。今後、協力を希望する企業とともに商品化に向けて研究を予定しており、製品化を目指しているが医療認可については更なるパートナー探しが必要と思われる。
レクチンアレイプロファイリングによるATL病型早期診断技術の構築 大分大学
伊波英克
大分大学
溝口義行
国内に約110万人のキャリアを抱えるヒトTリンパ球嗜好性ウイルス(HTLV-1)が原因で発症する成人T細胞白血病(ATL)細胞の糖鎖発現の量的変動を指標にした全く新しい血液腫瘍の病型診断法を開発すべく、45種類のレクチン結合性を同時に定量化するレクチンアレイシステムによる解析を行った。健常人のリンパ球、ATL細胞や他の血液腫瘍細胞では糖鎖の発現様式に明確な相違があり、レクチン結合性はそれぞれ最大300倍および40倍の結合性上昇または低下を観察した。さらに臨床検体を用いた症例別の結合性に於いても、慢性・急性・リンパ腫各型はクラスターを形成した。今後検体数を増やし、精度のさらなる向上を目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。T細胞サブセット、ならびに、ATL細胞表面糖鎖プロファイルライブラリーの構築に関して一定の研究開発成果が認められる。ただし、HTLV−1感染リンパ球の単離濃縮技術に関する研究開発成果が完了報告書に記載されていなかった。血液腫瘍の病型診断につながる有効な知見が認められ、適切な特許申請が行われている。検査診断法への適用を視野に入れることが出来、今後、検体数を増やすことで、次のステップへ進めることができるであろう。一方、技術移転の観点からは、基本技術は産総研や企業が持っているので、応用としての技術になるが、社会還元には繋がると考えられる。ただ、複数の関連機関との協議が予定されているが、具体的な開発内容や役割分担については言及されていない。臨床研究を続けることが出来るだけの研究開発資金が他のプロジェクトで得られているようであるので、今後が期待できる。しかし、日本の現行の保健医療制度の元では早期診断技術が保険適用されるのか、また、患者数が限られているため、大手の製薬会社、検査会社は参入しにくいものとなるため、事業化は簡単でないと思われる。
新規ビタミンE誘導体“リポイルビタミンE”を用いた透析膜の開発 大分大学
萩原聡
大分大学
野村裕之
現在までに、メディカルデバイスに関する市場において、ビタミンEをコートした透析膜等が上市されているが、従来品との効果の点で十分に差があるとは言い難い。この理由の一つに、ビタミンEの効果が不十分である可能性が指摘される。今回、我々は、ビタミンEの抗酸化力・抗炎症効果を際立出せるために、同じ生体内で必須な物質の一つであるαリポ酸と結合させたLipoyl-VEの開発に成功し、本薬剤をコートした世界で初めての血液透析カラムの基礎研究を実施した。本研究の結果Lipoyl-VEを新たにコートした膜は、従来の製品に比較してLPS誘発全身性炎症反応モデルにおいて生存率の向上等の効果を見出すことに成功した。これらの事実は、Lipoyl-VEを用いた新たな血液浄化膜の開発が急性腎機能不全時のあらたな膜素材として有効である可能性が示されたと考える。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもビタミンEの抗酸化力・抗炎症効果を増強する目的でαリポ酸と結合させた Lipoyl-VEを開発し、その薬剤をコートした血液透析カラムの基礎研究を実施、抗炎症効果のメカニズムを解析して臨床応用への可能性を示したという点で評価される。一方、有効性のメカニズム解明及び濃度の決定に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、モデル動物での実施例が補強されること、及び権利化することが望まれる。
核酸系旨味物質の新規生理機能の探索ー耐糖能改善作用ー 別府大学
木村靖浩
別府大学
江崎一子
本研究の目標は、核酸系旨味物質(アデノシン一リン酸(AMP)及びイノシン酸(IMP))を糖尿病マウスに8週間投与し、経口糖負荷試験を実施して耐糖能が改善されるかを検討することであった。AMP及びIMPともに投与4週目より糖負荷後の血糖値の上昇を抑制する作用が認められた。IMPの作用が顕著であったことから、次にIMPを糖尿病マウスに8週間投与し、糖負荷試験を実施、各採血ポイントで血糖値、血漿インスリン及び消化管ホルモンのインクレチン濃度を測定した。IMPは糖負荷後の15〜60分の血糖値、血漿インスリン及びglucose-dependent insulinotropic polypeptide濃度を低下させた。このようにIMPは糖尿病マウスの耐糖能を改善し、インスリン節約作用を有することを示した。今後、詳細な作用メカニズムの解明が課題である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、空腹時血糖値に対するAMPおよびIMPの効果は確認できなかったが、糖負荷後の血糖上昇は抑制することを明ら かにした点は評価できる。一方、その作用機作について消化管ホルモンへの影響を想定していたが違っており、ヒト実験を想定しているが、その前にIMPなどによる血糖値抑制機構を動物実験で明らかにする技術的検討や データの積み上げなどが必要と思われる。今後は、AMPとIMPの相乗効果を含めた開発・知財化により、少なくともヒト細胞を用いた試験での社会還元が期待される。
ナノ粒子複合体を利用した涙液用糖センサーの開発研究 鹿児島大学
若尾雅広
鹿児島大学
中武貞文
体液中の糖成分は、生体リズムや疾患等で変化するため、糖成分のモニタリングは病理診断や予後診断に利用できる。糖尿病患者おいて血糖値のモニタリングは、生活維持において必要不可欠であり、安全かつ簡便に血糖値を計測できる糖センサーの開発が世界的な課題となっており、オンデマンドで非侵襲的かつ非観血に採取できる涙液が注目されている。本研究では、実用化が達成されていない涙液を対象とした血糖値計測を可能とする糖センサーの開発を行うため、独自に開発した糖鎖固定化ナノ粒子からなるナノ粒子複合体を利用して、糖成分の濃度計測法について検討し、その結果、低濃度のグルコース溶液においても定量できる実験法を見出すことができた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標とする濃度のグルコースを定量的に測定できることを明らかにした点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、光学的定量法の再現性の確認、及び比色解析が可能な系を構築する為の検討などオンサイトで実施しやすい比色定量法の確立について更に検討を要する。比色定量法についての基本的な技術の確立が終れば産学協同の研究開発ステップへの移行も可能と思われる。今後、現在用いられている侵襲的ポータブルの自己測定器に対して、提案の測定装置が、価格と利便性で競争力を持つものであることを期待したい。
片麻痺上肢リハビリにおける高速運動可能な上肢自重能動免荷装置の開発 鹿児島大学
余永
鹿児島大学
中武貞文
片麻痺上肢の挙上能力回復が十分でなくて訓練を行うと、上肢を支えている肩に負担がかかり、肩に痛みが生じ訓練の支障になる。そこで、上肢の免荷を行いその自重を軽減することが必要である。本課題は、上肢をワイヤによって吊るして上肢の運動に合わせてワイヤの巻き取りと送り出しにより、高速かつ能動的に上肢自重免荷装置を開発することを目的とする。まず、上肢の上下・左右・前後の運動に合わせたコンパクトな運動・駆動機構と、駆動機構に組み込んで上肢の自重と上下変位情報を力情報に変換し瞬間的に獲得できる高感度上肢自重・上下変位センシング機構を試作した。力情報から仮想コンプライアンス制御法により対応な運動速度を生成して上肢自重を免荷する方法を確立し、試験と評価を行い有効性を検証した。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、本装置の開発に当たっては、変位センサ開発、運動特性・力学特性の検証、上肢自重の免荷制御法、総合評価を進め、当初目標を十分に達成した点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、本成果の技術移転を目的に産学共同研究が進んでおり、今後の研究で本装置の製品化が望まれる。今後、本装置は片麻痺上肢リハビリに効果的に導入されるものであり、社会還元にも大いに寄与することが期待される。

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独立行政法人 科学技術振興機構