評価結果

  • 中間評価
 
評価結果

事後評価 : 【FS】探索タイプ 平成25年2月公開 − アグリ・バイオ分野 評価結果一覧

※他分野の評価はこちらからご参照ください。 >> 事後評価 : 【FS】探索タイプ 平成25年2月公開
課題名称 研究責任者 コーディネーター 研究開発の概要 事後評価所見
長残光性蓄光材を用いた感染症媒介蚊誘引性ディバイスの開発 帯広畜産大学
相内大吾
帯広畜産大学
藤倉雄司
光エネルギーを吸収し、暗条件下で長時間発光できる蓄光材を用いた蚊類誘引ディバイスの開発を目的とし、蚊類に対する蓄光材の誘引力を評価した。特に従来の空間移動系による誘引力の評価に加え、自由飛翔系による蚊類の行動量をリアルタイムに定量することでより実相に即した誘引性能を検証することを目指した。空間移動系によるチョイステストでは、試験開始1時間後から蓄光材へ誘引されることが明らかとなった。しかし、自由飛翔系により誘引行動量を測定した結果、蓄光材単独では誘引性を示さなかった。一方、誘引処理を加えた条件下では、全体の行動量が増加し、暗期において蓄光材に対する誘引性を示した。今後より詳細な、例えば蚊類の電気生理学的な解析や蓄光材の発光波長の調節を通じて、より効率的な誘引が可能である可能性が示唆された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、技術移転につながる研究成果は得られたことに関しては評価できる。一方、今後の研究計画は的確に検討されているが、幅広い視点から改善点を探った方がより実用化の可能性が高まると思われる。産学連携に関して言えば、所望の蓄光材の作製には企業の協力が必要になると思われる。今回の結果だけでは、人間に勝る誘因性を示すことはできておらず、すぐに実用化段階へ行くことは難しいと判断される。今後は、蚊類の電気生理学的な解析や蓄光材の発光波長の調節等、さらなる改良によって有用性を高められることが期待される。
高度低温抵抗性系統を利用した北海道におけるイネ育種プログラムの確立 帯広畜産大学
大西一光
帯広畜産大学
藤倉雄司
本研究は幼芽期および穂ばらみ期において極めて高い低温抵抗性を持つ系統「上系04501」を用いて、 北海道における低温抵抗性育種に利用できる選抜用分子マーカーの開発を行った。分子マーカーを用いたマッピングおよび交雑による対立性検定から「上系04501」の持つ幼芽期低温抵抗性遺伝子が既に報告したqCTP11と同座であることを明らかとするとともに、簡便に利用可能な選抜用マーカーを開発することができた。また「上系04501」は幼芽期から幼苗期まで幅広い生育段階で抵抗性を示すことを明らかにした。穂ばらみ期耐冷性に関しては、「上系04501」の持つQTL(qCTB3-Silewah)について利用可能な選抜用マーカーの整備を行った。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、開発した分子マーカーは、表現型解析の補助手段として有効であるほか、低温抵抗性遺伝子の同定に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、抵抗性遺伝子を同定してそのものからマーカーを設計する課題も残されており、研究成果の応用展開が望まれる。分子マーカー解析や対立性検定から幼芽期低温抵抗性遺伝子に関して、選抜用マーカーを開発されているので、今後の技術移転が期待される。
画像解析による牛肉の『コザシ』に関するDNAマーカーの探索 北海道立総合研究機構
内藤学
北海道立総合研究機構
吉澤晃
画像解析データを基に、経済性が高いウシの脂肪交雑『コザシ』に関連する有効なDNAマーカーを検出することを目的とした。黒毛和種半きょうだい家系肥育牛251頭のDNAサンプルと枝肉成績・画像解析データを使用し、カスタム3Kチップによりジェノタイピングして1次解析したところ、複数の染色体でコザシ関連形質の遺伝領域(QTL)が検出された。それらの領域にマイクロサテライトマーカーを配置し、494頭のサンプルで2次解析を行った結果、コザシに直接関連する形質については有意なQTLが得られなかったが、脂肪交雑(BMS No)に関する有意なQTLが得られた。2つのマーカーによる遺伝子型別効果の検証の結果、DNAマーカーアシスト選抜への有効性が示唆された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、一部目標の達成については評価できる。一方、遺伝的要因と環境要因の関連性を明らかにしなければ、産学共同開発へのステップへと展開できないため、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、少なくとも肥育環境下での要因と遺伝的要因の関連性を精査されることが望まれる。
ペット共生型住宅のための木質系床材の開発 北海道立総合研究機構
松本久美子
北海道立総合研究機構
斎藤直人
ペット共生型住宅のための木質系床材として、ペットにとってはすべりづらく、人にとっては快適な接触感を有する床材の開発を試みた。浮造りや表層圧縮などにより、針葉樹材表面に木目に沿った凹凸をつけることで、すべりづらさや良好な接触感が発現するよう、開発に取り組んだ。当該研究で製造した床材の中で、浮造り材は市販のペット対応型フロア材と比較して同等かそれ以上のすべり抵抗係数C.S.R・D'を示し、表層圧縮材のそれは市販のものと同等であった。接触感については、浮造り材は市販のフロア材と比較して温かみやさらさら感などで優位であった。今後は、実用化に向けて塗装の影響や犬による実大の歩行試験等の検討を重ねる必要があるものと考える。  概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。データとしては一通り得られていることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、課題は明確であり今後のフォローアップとして挙げられている項目などでの実用化が望まれる。今後は、商品化に対して遅々として進んでいないような印象もあり、早期の技術移転と民間企業との共同開発が期待される。
微生物を塗布付着させたモデル食品の短時間過熱水蒸気処理による表面殺菌効率の検討 北海道立総合研究機構
阿部茂
北海道立総合研究機構
長島浩二
単一微生物の過熱水蒸気処理による殺菌効率について研究を行うためには、十分な菌数が付着したモデル食品が必要である。数種類の素材を検討した結果、カバーガラス及びアルミナボールに十分な菌数(106〜109cfu/個)を付着させたモデル食品を作成することができた。それらを用いて過熱水蒸気による殺菌試験を行ったところ、処理温度が高温であるほど微生物の殺菌効果が良く、また、コンベアタイプと比較してキルンタイプのほうが殺菌効率が良いことがわかった。一方、モデル食品と天然物の殺菌効率については大きな差が認められ、この現象については今後の検討課題とした。 当初目標とした成果が得られていない。中でも天然食材に関する過熱水蒸気の殺菌効果や乾熱・湿熱処理の点に関しては技術的検討や評価の実施が不十分であった。今後は、加熱メカニズムや食材の組織構造、水分含有量などの視点から検討を行い、本格的な研究に移行されることが望まれる。
海由来食品・原料のテラヘルツ分光計測手法の開発 地方独立行政法人北海道立総合研究機構
宮崎俊之
北海道立総合研究機構
田中大之
固体、液体、ゲルなど、様々な様態を持つ海由来食品・原料に対して、テラヘルツ領域での安定した計測手法を開発した。特に魚類にとって大きな品質評価対象となる魚油については、透過法の改良により高い繰り返し再現性を達成することができた。
開発した計測法を用い、液体5種類、固体4種類、ゲル状物質2種類の計11種類の海由来食品・原料についてテラヘルツ領域におけるスペクトルデータを蓄積、機器使用者が利用可能とした。
魚油については化学分析値と吸光度に大きな相関があることを見いだし、産業応用への展開も見越した水産物計測における有効性を見いだした。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標は、各課題ともほぼ達成されており、有用性、計測可能性が見出された測定技術があることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、今後の開発計画について具体的に検討されており、総合特区の認定もあることから、引き続き技術移転に向けた取組が行われると期待できる。今後は、時間は掛かると思われるが、計測機としての実用化が望まれる。
ホタテガイ外套膜由来ペプチドを活用した脂溶性成分の吸収促進機能の検証 地方独立行政法人北海道立総合研究機構
武田浩郁
北海道大学
城野理佳子
ホタテガイ外套膜より創出した脂質吸収促進機能を有するペプチドを用いて、脂溶性成分の吸収促進機能の検証を目的とした。本研究により、高い脂質吸収促進効果を有することを見いだしたことに加え、ペプチドをHPLCにより分画し、それらのアミノ酸配列を同定した。今後、食品素材化に向けた検討(継続投与による効果や、長期摂取による安全性など)が必要である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標が達成されつつあることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、他の栄養素との併用時の効果について、具体的な研究開発計画の作成が望まれる。今後は、使用する用量が多いにもかかわらず、対象品に比べ有効性が若干低いことを解明することが期待される。
糊化極易性を有する米の活用による食品の柔らかさ保持 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
梅本貴之
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
入来規雄
糊化極易性を有する米を用いた食品の柔らかさ保持性について、その実用化可能性の検証を実際の食品および食品モデルを作成して行った。また、糊化極易性を有する実用品種育成の基盤整備にも取り組んだ。その結果、当初の目標であった、米の成分特性、食品および食品モデルの柔らかさ保持の面において糊化極易系統の一般うるち米に対する優位性が明確となった。また、糊化極易系統がもつ新規変異遺伝子の染色体上位置を明らかにするためのDNAマーカー情報も得た。今後は、糊化極易性を持つ実用品種の早期育成を進めながら、実需者と連携して糊化極易系統を用いた食品の試作、評価を行う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、デンプン特性、製パン適性等で糊化極易系統の米および米粉の有用性が明確になったことは評価できる。一方、技術移転の観点からは製パン業者などと連携した試験を計画しており、産学共同開発ステップにつながることが期待される。
脱石油社会の実現に向けた成分解性を有する新規吸収性マテリアルの創成とその機能評価 苫小牧工業高等専門学校
甲野裕之
苫小牧工業高等専門学校
土田義之
カルボキシメチルセルロース(CMC)を分子骨格とする生分解性を示す高吸水性高分子について、既存の架橋ポリアクリル酸共重合体を凌駕する吸水性能を付与するための合成条件の検討とその性能評価を目的とした。様々な分子量、置換度を持つCMCを合成し、化学架橋法を行いその吸水量を求めた結果、原料CMCの最適置換度、平均重合度が明らかとなった。さらにpH、様々な塩を含む水溶液に対する吸水力を評価した結果、本CMC系吸水性高分子は酸性条件下、高濃度のイオン存在下においても安定した吸水力を示すことが明らかになった。よってCMC系SAPは土木、農業分野をはじめ既存品が使用困難であった条件下での応用が可能であり、新たな用途展開が期待できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にカルボキシメチルセルロースを分子骨格とする高吸水性高分子の合成技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、既存品が使用困難であった土木、農業分野をはじめとする広い分野での実用化が望まれる。今後は、出願特許の強化を図り、実用化からさらに進めて事業化、あるいは企業化されることが期待される。
イチゴにおけるウイルス・糸状菌のDNAアレイを用いた簡易検出法の開発 北海道大学
増田税
本研究では、イチゴの苗生産の過程で感染の可能性のあるSMoV, SMYEV, SVBV及びイチゴ炭疽病菌、葉枯れ炭疽病菌の簡易検出法を開発した。ウイルスの簡易検出については1) 感染組織からの効率的RNA抽出法、2) 病原ウイルスのmultiplex RT-PCR法、糸状菌の簡易検出については 1) 病原菌の簡易培養法、2) 菌糸からの簡易DNA抽出法、3) 病原菌のmultiplex PCR法についての技術を開発し、ともにDNAマクロアレイを用いた検出法と合わせて、簡便かつ高精度な検出法として確立した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の設定通りの目標が達成された点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、低コスト簡易検出技術の開発は、植物体の健康維持のために重要であるが、個々の植物、個々の病原ごとに特異検出法を確立することが望まれる。後は民間が開発できる状況まで来ており、今後は企業での実用化が期待される。
低コスト・高精度を実現する新規等温増幅法による結核菌迅速検出法の開発 北海道大学
中島千絵
科学技術振興機構
東陽介
本研究では我々が新たに開発した等温遺伝子増幅法の臨床現場における有用性の評価を行った。本法は簡易な恒温器があれば実施が可能であり、簡単な操作で1時間以内に病原体の存在を確認することができる。結核は検査時の菌培養に長期間を要するため迅速簡便な検査法が求められている感染症であるが、本法による喀痰からの結核菌検出成績を従来法である塗抹・PCR法、培養法、LAMP法と比較したところ、これらの方法に匹敵する結果が得られ、臨床応用の可能性が示された。本法は従来法より試薬費が掛からず安価な検査法であるため、結核の蔓延が問題となっている途上国での展開にも有益であると考える。将来的には、結核に限らず熱帯地域で問題となっている各種感染症への応用を目指したい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。結核菌での評価は当初の目標までは到達していないが、一部の使用に耐えうる成果に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、今後の研究計画は具体的ではあるが、的確ではなく、競合の少ないターゲットに対する開発が望まれる。発展途上国に頻発する原虫によって引き起こされる病態に対して、将来の技術移転が期待される。
卵巣特異リポ蛋白質受容体を標的とした物質輸送:光る魚の大量生産 北海道大学
平松尚志
北海道大学
小川晴也
本研究は蛍光性物質を親魚から卵・稚仔魚へ輸送する技術の開発を目指し、1)卵母細胞に特異的に発現する2種類の受容体を標的とする抗体の作製、および2)蛍光標識抗体の生体投与試験を行った。実施においては計画した全ての実験を完了した。結果においては、これら抗体によるゼブラフィッシュの卵母細胞や受精卵・孵化仔魚への蛍光物質の輸送は殆ど検出できなかった。一方、本研究と並行した実験により、受容体に対する抗体ではなくリガンドを輸送体に使用した場合、卵母細胞および受精卵・孵化仔魚への蛍光物質の輸送が確認された。以上の結果より、輸送体にはリガンドを使用するべきであり、またその場合、蛍光物質の輸送が技術的に可能であることが示された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に新規の蛍光物質輸送体として期待された抗LR13+1抗体の作製に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、すでに異種間で蛍光物質の輸送できることが明らかとなっているVtgの実用化研究に研究を集中することが望まれる。本研究で対象とした2種の抗体では期待された物質の卵への輸送は達成されなかったが、Vtgではその機能が発揮されることが判明しており実用化研究の進展が期待される。今後は、次の段階としてVtgに代わる高機能で効率の高い卵あるいは胚胎への輸送物質の開発が期待される。
イオン交換ミニカラムを用いた褐藻多糖類の迅速分別定量法の最適化 北海道大学
栗原秀幸
北海道大学
城野理佳子
本研究では、褐藻多糖類の迅速定量のため、(1)最適なイオン交換性カラムの検 討と(2)フコイダン比色定量法の再検討及びアルギン酸比色定量の妨害の原因 究明と対処法の確立を目的に検討を行い、(1)では供試した陰イオン交 換性カラム5種類のうち、最適なイオン交換性カラムを明らかにし、水と塩化ナトリウム水溶液濃度の設定により、多糖を効果的に分別することができた。(2)では、いくつかの海藻でアルギン酸の定量を妨害する成分が存在したが、その同定には至らなかった。そのため、 3種類の褐藻多糖類を迅速に比色定量できる方法の確立には至らなかった。今後この方法の確立を進める。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、解決すべき技術的課題は多いが、明確にはなっていることは評価できる。一方、産学共同開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。褐藻多糖類定量のための分離法は確立しているが、今後、さらに定量法の検討が望まれる。
海洋環境中からの抗ウイルス物質産生細菌の探索および水産分野における活用技術の開発 北海道大学
笠井久会
北海道大学
城野理佳子
海洋環境中からの抗ウイルス物質産生細菌の効率的なスクリーニング方法を確立し、カキ消化管より分離した細菌が高い抗カリシウイルス活性を有することを明らかにした。次いで、本菌が産生する抗カリシウイルス活性物質の精製法を確立し、物質の情報を明らかにした。水産分野における活用技術として、カキ体内に蓄積されるノロウイルス(カリシウイルスの一種)対策に用いるため、本菌のカキへの投与法を開発した。以上は培養可能なカリシウイルスを用いたモデル実験であり、実際のカキ体内での有効性、ノロウイルスに対する抗ウイルス活性を検討していく必要があり、企業と早い段階で連携し、実用化に向けた研究を進める必要がある。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、V. neptunis 菌株の産生する抗ウイルス物質が高い活性を示す最適培養条件を決定すると共に、抗FCV活性物質の抗ウィルス活性とそれ自身の毒性を評価し構造を解析済であることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、検出された量は少ないようであるが物質解析を行い、抗FCV活性物質の本体を遺伝子レベルで確定することにより、魚介類養殖業などでの実用化が望まれる。今後、遺伝子の特定、ノロウイルスへの有効性が確認できれば応用展開及び技術移転特許の取得等に結びつく可能性が大きい。また有効画分に検出された33kDa物質についても解析、検討が期待される。
新規な生体親和性化粧品素材ホスファチジル-パンテノールの機能開発 北海道大学
細川雅史
北海道大学
城野理佳子
本事業では、酵素的合成法にて高収率での調製が可能になったホスファチジル-パンテノールの優れた抗炎症作用を評価することを目標とした。ホスファチジル-パンテノールは、活性化したマクロファージに対して炎症性サイトカインであるIL-6やIL-1β、TNFα、炎症性酵素であるCOX-2やiNOSのmRNA発現やタンパク質産生を抑制した。その効果は従来のパンテノールと比較して4-10倍以上高い活性であり、少量で抗炎症作用を発揮する優位性をもった新規物質であることが明らかとなった。特に、ホスファチジルパンテノールの優れた抗炎症作用に関わる分子機構として、NF-κBやAP-1など複数の炎症誘導因子に対して制御機能を示すことを見出し、新規化粧品素材としての有効性を実証した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、パンテノールと比し10倍の活性を示し、抗炎症活性も認められたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、ヒトの皮膚試験からスキンケアを実証し、商品化へ向けた期待が高いと評価できる。抗炎症作用を有するホスファチジルパンテノールの効能が実証され、パンテノール単独使用の場合に比して10倍の効果があり、リポソームの補助を必要としない点で高い特色を持つことから、今後、技術移転につながることが期待される。
雪冷熱活用型低温貯蔵と伏せ込み技術の結合によるアスパラガス周年出荷の実現 北海道大学
荒木肇
北海道大学
畠隆
本研究ではアスパラガスの雪中貯蔵と伏せこみ栽培技術の結合により、周年供給を実現する技術開発を行った。根株を融雪水に触れさせないことで7-8月まで雪中貯蔵することが可能であった。盛夏でも地中熱交換空気を利用して栽培室を22℃に制御し、雪冷水の栽培床内循環により、アスパラガスの萌芽適温である18-20℃の地温に制御できた。暗黒環境で根株を伏せこむとで、圃場生産がない8月以降にホワイトアスパラが生産された。収穫直後のアスパラガス若茎の雪中貯蔵は冷蔵庫貯蔵の代替になり、機能性物質のルチンも5日間は収穫時の90%以上に保持され、出荷期の調整が可能になった。今後は厳寒期の熱源を研究し、自然エネルギーでの周年栽培を確立する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、実証試験について地元企業と協力し、地元の行政機関の協力もあり、次のステップへ進めるための課題が明確になった点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、今後の研究計画について具体的かつ的確に検討されることが望まれる。地元の建成産業の協力のもとに研究がなされており、成果も期待通りにあがっているため、今後、技術移転につながることが期待される。
牛乳腺感染症に関わる病原性微生物の高精度迅速検出方法の開発と被害低減への応用 酪農学園大学
樋口豪紀
科学技術振興機構
東陽介
酪農産業に関わる経済活動を阻害する最も大きな要因は、病原微生物の感染による乳腺感染症(乳房炎)である。本申請課題では、乳房炎原因微生物の効果的検出技術の開発を目的に研究を実施した。具体的な研究課題を【1】多検体処理技術の構築に関する研究、【2】網羅的Multiplex PCR技術を開発の二点に設定した。
その結果1)正常乳の前処理技術については微生物の検出を可能にし得る技術構築に成功したが、異常乳(乳房炎乳)では夾雑物の影響が大きく充分な成果が得られなかった。2)Multiplex PCRについて、野外サンプルでは本研究での標的微生物以外にも多くの菌種が存在することが認められた。
以上の結果から、生産現場に対応するためには、異常乳の処理にも耐えうる新たな試薬開発を行い、また対象菌種も広げる必要性が示唆された。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、Multiplex PCR技術には有効性が認められている点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本技術が移転されれば、乳房炎による経済的損失が軽減されると予想される。今後は、100検体の分析が可能となっているMultiplex PCRに関する実用化が期待される。
ニンニク皮由来抗菌性物質による植物炭疽病の防除減農薬栽培にむけて 弘前大学教育学部
北原晴男
本研究は、青森県で問題となっている産業廃棄物のニンニク皮から有機溶媒抽出して得られる抗植物炭疽病菌活性物質を利用して、イチゴ炭疽病の新防除体系を考案するものである。本抗菌性物質でのバイオトラスト水和剤(微生物農薬)に匹敵する炭疽病防除価達成を目指した。本試験研究の結果、ニンニク皮由来の抗植物炭疽病菌活性物質に、既存農薬とほぼ同等の効果が認められた。これにより、当初の目標とした、「現行のイチゴ炭疽病防除体系に、ニンニク由来の防除資材を組み込むことで、2〜3回の減農薬を可能とする」ことが可能との結論を得た。さらに、本試験研究中に、より活性の強い物質を得ることに成功した。その試験研究の結果、既存農薬を凌駕する可能性が得られ、今後の開発への展望を得た。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。ニンニク皮から植物炭疽防除に使用可能な新規抗菌性物質を単離したことは評価できる。今後は、ニンニク由来の抗菌性物質の大量、且つ安価な抽出法の開発に向け、実際の感染条件に近い接種条件での抗菌性の検定、既存農薬と比較した説得力ある効果と優位性の証明等、基礎的な研究成果の一層の積み上げが望まれる。
高活性ポリフェノール含有農産物の探索とその大量製造法の開発研究 弘前大学
加藤陽治
弘前大学
工藤重光
使用した試料8種類の抽出物とプロアントシアニジンとの抗酸化能を比較した場合、カシス搾汁残渣の活性が最も高かった。カシス抽出液から合成樹脂を使用して、一部夾雑物を除去するための調製方法を示した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、高活性ポリフェノール含有農産物を得ることができたことは評価できる。一方、抗酸化力のある農産物を見出したので、それを基に、産学共同等の研究開発ステップに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、経済性の優れた抗酸化素材となるように大量生産技術等の開発を進めていくことが望まれる。
りんご未熟果を利用した「りんご麹」の創出 青森県立保健大学
井澤弘美
青森県立保健大学
丞村宏
高品質のりんごを収穫するため、未熟果時には中心果を1つ残して4〜5個の側果を摘み取る。摘み取られた未熟果は莫大な量であるが、廃棄物としてそのまま園地に捨てられている。廃棄されるりんご未熟果にはでんぷんが多く含まれているので、利用容易な未利用バイオマスと位置付けることができる。
そこでりんご未熟果を有効利用するため、麹菌を接種・培養して「りんご麹」を作ることを提案する。米麹は様々な加工食品の原料になっているので、「りんご麹」も米麹同様に活用でき、なおかつりんごの機能性も付加できることが期待できる。
これまでりんご麹生産は前例が無いが、発酵によってでんぷんを糖化することなので理論上可能である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、設定した目標は、ほぼ達成されたことは評価できる。一方、問題解決の一助として、りんご成熟果実での麹菌作成等に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、りんご未熟果実の実体(デンプン含量、ペクチン含量など)を明らかにされることが望まれる。
胚乳タンパク質組成変異性を有する酒造好適米を活用した新規な香味特性をもつ清酒の開発 地方独立行政法人青森県産業技術センター
齋藤知明
(財)21あおもり産業総合支援センター
安保繁
胚乳タンパク質組成変異性を有する酒造好適米「黒酒2186」を利用し、原料に由来する製造的問題がなく、製造した清酒が官能的に新規な清酒として支持される風味を有することを目標に検討を行ったところ、ほぼ目標は達成できた。今後はより嗜好性を向上させる製造法の検討とともに商品戦略の策定を進めるとともに、企業等による実地試験を行った後、米の品種登録、実用化に向けて試験を継続していく予定である。
また、「黒酒2186」を他の米と混合し、醸造することによる酒質向上、コスト削減効果も期待できることから、混合使用した場合についても検討していく予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。目標がほぼ達成されていることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、実用化され新しい特徴ある日本酒が製造できれば、社会還元は可能となる。今後は、新規な特徴ある日本酒として、パネラーの評価に十分につながっていないので、さらに改善されることが期待される。
微生物学的リスク評価に基づく嫌気性消化液液肥の開発 八戸工業高等専門学校
矢口淳一
八戸工業高等専門学校
佐藤勝俊
PMA-PCR法の感度向上させるためのPMA特性実験では、無処理の活性のある大腸菌に熱処理した大腸菌を添加し、PMA-PCR法で活性のある大腸菌を定量し、PMA効果と光透過性、PMA濃度及び添加回数と検出感度の関係についてそれぞれ検討した。その結果、吸光度が0.2以下、大腸菌濃度が1.2×108個/mL以下の時にPMA処理が有効であり、PMAを2回繰り返し添加して最終的に100μMの濃度となるようにサンプルと混合するのが最も有効な添加方法と考えられた。メタン発酵液添加実験では、消化液中のSS濃度が2000mg/L以下の時にPMAが有効に働いていることが認められた。実施した八戸市東部終末処理場嫌気性消化プロセスの調査では、消化槽で培養可能な大腸菌は5〜6オーダー減少するのに対し、PMA-PCR法で計測した活性のある大腸菌は1オーダー程度しか減少せず、多数の大腸菌がVNC状態のままであることが分かった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初目標の一部達成については評価できる。一方、今後の研究開発計画の具体化に向けた技術的検討などが必要と思われる。現段階では基礎研究にとどまっており、今後さらなるデータの蓄積が望まれる。
エクスパンシンを利用した細胞壁分解の効率化 公益財団法人岩手生物工学研究センター
竹田匠
(財)岩手生物工学研究センター
横田紀雄
植物の細胞壁糖鎖を原料としたバイオエタノール製造において、細胞壁糖鎖をグルコースに変換する工程(糖化)の効率化は必須である。細胞壁糖鎖をグルコースに変換する手法としては、酸分解法や酵素分解法がある。酸分解法は硫酸およびその中和により生じる塩による水質への負荷が大きい。一方、酵素分解法は環境への負荷が小さいが酵素の製造コストが高いため、酵素化学的性質の改良および製造技術の開発によるコストの低下を実現させなければならない。エクスパンシンは植物の細胞壁糖鎖にゆるみを誘導するタンパク質であり、植物細胞の成長促進や細胞壁糖鎖の分解を促進することが認められている。そこで本研究課題では、細胞壁糖鎖の効率的な分解を実現するため、エクスパンシンをトリコデルマにおいて生産する技術を確立することを目的とした。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、トリコデルマでのエクスパンシン様タンパク質の発現は成功している点は評価できる。一方、得られた形質転換体が野生株より、1.5倍細胞壁糖鎖分解量が増加したということだけでは、技術移転に導かれるか評価ができないので、さらなる技術的検討やデータの積み上げが必要と思われる。今回のデータではエクスパンシン様タンパク質によって細胞壁糖鎖の分解促進が行われていないとも取れるので、今後はデーターの信頼性を示すことが望まれる。
食品産業界が望む国産タマネギの春まき8月どり作型を東北において新展開するための基盤研究 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
山崎篤
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
高梨祐明
多くの野菜と同様タマネギも加工・業務用需要が50%を超えており、食品産業界が求める国産タマネギを適切な時期に供給する必要があるが、現在、8月を中心とした夏期には供給量が低下し端境期となっている。これを解消するための新たな作型開発として、東北において、慣行の秋まき春どりでなく、春まき夏どりの栽培技術を開発しようとしている。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、目標がほぼ達成されていると思われることは評価できる。一方、端境期での新作型が開発されれば、業務・加工用途向けの国内産の安定供給に多大に寄与することから、引き続きデータの積み上げなどが必要と思われる。研究計画は着実に実施されており、実用化に至る課題が明らかであり、今後はこれらを解決されることが望まれる。
ソバの形質改良促進技術の開発 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
由比真美子
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
高梨祐明
ソバの形質改良手法を拡大するため、遺伝形質の早期固定を可能にする葯培養技術の開発を試みた。新品種「にじゆたか」を材料として、効率的なカルス誘導条件の解明と再分化個体獲得を目標に、様々な培養条件を試験した。植物ホルモンとして種々のオーキシンおよびサイトカイニンの組合せを検討し、同時にショ糖およびその他の有機物添加濃度の効果も検討した。カルス誘導率は0〜40%の範囲で様々であり、一部のカルスから発根が見られた。目標としていた再分化能の高いカルス誘導条件の確定には至らなかったため、今後さらに詳細な条件検討を行うとともにシュート誘導条件を解明し、半数体獲得をめざす。
当初目標とした成果が得られていない。ソバの形質改良促進技術として、新品種の葯培養による再分化個体獲得技術の開発に取り組み、最大で40%のカルス誘導率が得られたものの、最適な葯培養条件の確定には至らなかった。その点の技術的検討や評価が必要である。今後は、カルス誘導率が低くとも、安定的にカルスの得られる条件の探索も有意義と思われ、継続的で基礎的な試験研究が望まれる。
三陸産イカ軟骨を分解するための酵素利用技術の開発 一関工業高等専門学校
戸谷一英
一関工業高等専門学校
佐藤清忠
イカ軟骨を直接酵素分解してN-アセチルグルコサミンを製造するために必要な食品製造用のプロテアーゼ、キチナーゼ、キトビアーゼの諸性質(最適反応条件、安定性など)を明らかにした。プロテアーゼによるイカ軟骨の前処理は除タンパク法として有効であったが、キチン酵素分解の前処理としてはメカノケミカル粉砕法が優れていた。これら酵素の諸性質を明らかにすることで、より効率的なキチン分解の可能性が出てきた。メカノケミカル粉砕したイカ軟骨をプロテアーゼ処理後、キチナーゼとキトビアーゼ処理を行うことで、結晶化による簡単な工程で純度100%近くのN-アセチルグルコサミンが、イカ軟骨中のキチン含量(約25%)に比肩しうる高収率で得られた。三陸地域資源の高付加価値化による機能性素材創出のモデルケースとして展開して行く。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標が達成されており、次のステップへ進めるための課題設定に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性が高まると共に、応用展開された際に社会還元へ導かれることが期待できる。N−アセチルグルコサミンを製造するための、酵素の選択、酵素反応条件の設定を行うと共に、前処理方法と高収率、高純度で目的物を得る方法を確立しているので、今後は、実製造に伴う経済性の検討が望まれる。
メカノケミカル効果によって高抽出化した三陸産コラーゲンペプチド・加水分解コンキオリンのヒト皮膚線維芽細胞に与える影響 一関工業高等専門学校
渡邊崇
一関工業高等専門学校
佐藤清忠
本研究開発では、三陸産のサンマ鱗・アワビ貝殻を原料とし、報告者が開発した新規技術(メカノケミカル法)により抽出したコラーゲンペプチド・加水分解コンキオリンのヒト皮膚線維芽細胞に対する効果及びヒアルロニダーゼ阻害活性を調査した。その結果、"サンマ鱗由来のコラーゲンペプチドは検討した試料の中で唯一同細胞のヒアルロン酸産生を促進させる"、という興味深い知見を得ることができた。一方、メカノケミカル法により調製したアワビ貝殻由来加水分解コンキオリンのヒアルロニダーゼ阻害活性は、本酵素が逆に活性化されてしまい、期待される効果を認めることができなかった。しかし従来法で調製した同コンキオリンは、アコヤガイ貝殻から調製した加水分解コンキオリンより非常に強力な阻害活性(IC50=50μg/ml)を有し、魅力的な素材であることが判明した。今後、阻害活性を保持できる同コンキオリンの抽出法を新たに開発し、サンマ鱗由来のコラーゲンペプチドと合わせ、ヒアルロン酸に特化した三陸発の機能性化粧品の開発を推し進めていく予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、メカノケミカル粉砕を用いて実験を開始し、一部今後の進展につながる研究成果を得ていることは評価できる。一方
、ヒアルロニダーゼ阻害活性が高い加水分解コンキオリンの抽出・精製が必要と思われる。今後は、メカノケミカル法の技術的課題は残ったものの、従来法による加水分解コンキオリンの抽出による技術移転が望まれる。
三陸産イカ軟骨の有効活用のための水熱処理技術の開発 一関工業高等専門学校
長田光正
一関工業高等専門学校
佐藤清忠
イカ軟骨を水熱処理(反応温度300〜400℃、処理時間10秒〜20分)し、これらの酵素糖化実験を行った。その結果、水熱処理条件を最適化することで、酵素糖化率(未処理のイカ軟骨中のキチン量基準)が100%近くとなり、水熱処理をしない場合の0%よりも大幅に向上することを明らかにした。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、糖化率90%以上を達成することを目標として研究開発を行い、100%近い糖化率を達成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、産学共同の研究開発ステップにつながる可能性が高く、実用化が期待される。今後は、イカ軟骨由来β−キチンを水熱処理した後、キチナーゼを作用させる研究開発を行い、産学共同の開発ステップにつながることが望まれる。
植物水ポテンシャル簡易測定キットの開発 岩手大学
松嶋卯月
岩手大学
小川薫
蛍光試薬をプローブとして用いた簡易な方法で水ポテンシャルが推定できる。そこで、本研究では葉からリーフディスクを切り出さずに蛍光画像が得られる小型簡易測定キットを試作した。装置の小型化を図るために高輝度LED光源を用いた。その結果、蛍光プローブを吸収した植物試料から発せられる蛍光を一般に市販されているコンパクトデジタルカメラで撮影することが可能であった。葉に蛍光プローブを吸収させるための切開面は直径5mmのコルクボーラが適していた。本研究で開発された小型簡易測定キットは今後陸前高田市の被災農地における実証圃場で栽培されている作物の水ポテンシャル測定に用いられる。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、蛍光プローブのおおよその見当ができたことは評価できる。一方、測定点数が少なくても計測できる装置への変更に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、当該研究成果がどのように社会還元されるか検討されることが望まれる。
ウシの遺伝子妊娠診断技術の開発 岩手大学
橋爪一善
岩手大学
大島修三
牛の受胎の可否を出来るだけ早期に判定する技術を開発することを目標とし、人工授精牛(AI)および受精胚移植(ET)牛の末梢白血球中の遺伝子発現をマイクロアレイ並びに定量的RT-PCR法により検出、バイオインフォマテイック解析により特異遺伝子を比較検証した。 妊娠日令21日(ETではET後14日)におけるETとAIの比較では、両者に共通して高発現する遺伝子少なくとも22であり、AI時に妊娠診断の指標として抽出したISG15およびOAS1遺伝子を含んでいた。マイクロアレイで高発現を認めた遺伝子の多くは定量的RT-PCRにより、その発現動態が正しいことを確認できた。この結果は、両条件下における妊娠初期に共通して高発現する遺伝子が妊娠診断指標遺伝子として重要であることを示唆している。また、残る20遺伝子の精査は新しい診断指標を提供すると考えられる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、遺伝子の発現量の変化をとらえたことについては評価できる。一方、当初計画に対し、実施内容の達成度は低いと言わざるを得ない。いくつかの候補マーカー遺伝子は提示されたが、有効性が示されておらず、目標とする新規マーカーの特定、診断基準の作成、妊娠との関連性に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、当初計画の解析をまず十分に行うことが先決であり、超早期妊娠診断技術の確立が望まれる。
LED波長を利用した薬用植物の含有する生薬成分の効率的生産技術の開発 公益財団法人岩手生物工学研究センター
高橋秀行
(財)岩手生物工学研究センター
鈴木元
リンドウの根は、胃痛に効く生薬として古くから用いられている。ここで、リンドウはクローン培養が可能であり、遺伝子的に均一な根を半永久的に採取し続けることが可能である。しかし、培養物の増殖と薬効成分量が課題として残されている。そこで本研究では、発光ダイオード(LED)を使用し、増殖促進と薬効成分の増強を目指した。波長の異なる光をクローン培養物に照射した結果、赤色光で増殖が促進された。さらに、根部において、薬用成分であるゲンチオピクリンとスウェルチアマリンを増加させる波長が明らかとなった。これらの成果から、LEDを光源としたクローン培養が、新たな生薬生産に有効である可能性が示された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初目標がLED赤色光によって達せられたことは評価できる。一方、低コストでのLED照明の開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、増殖を促す培地条件を見出したことが技術の優位性をもたらし、知的財産として価値あるものになると思われるので、その権利化が望まれる。
幼苗における花色判別システムの開発 公益財団法人岩手生物工学研究センター
中塚貴司
(財)岩手生物工学研究センター
鈴木元
多年生植物の育種において早期選抜技術の利用は、促進と効率化にとって重要である。近年、有用形質に連鎖したDNAマーカーを利用した早期選抜技術が開発されているが、操作煩雑でコストもかかるため、実用的な育種への応用を妨げてきた。本申請ではリンドウ花色識別DNAマーカーを例に、作業工程を見直し、実生段階で容易に花色を予測できる技術を開発した。また、工程の簡易化(DNA抽出の省略、複数DNAマーカーの同時検出、対立遺伝子の把握)により、従来の方法と比較して、コストと作業日数を大幅に削減することが可能となった。本事成果により、DNAマーカー選抜技術の育種への適用を現実レベルに引き寄せたと考える。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、DNA抽出の省略、複数DNAマーカーの同時検出、対立遺伝子の把握により、従来法と比較して、コストと作業日数を大幅に削減することが可能となった点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、実用化にかなり近づいたと思われる。今後は、成果の公表状況も良好であり、本技術の早期の実用化が期待される。
TEMPO酸化法を用いたキノコ廃菌床の高度利用技術の開発 公益財団法人岩手生物工学研究センター
金野尚武
(財)岩手生物工学研究センター
鈴木元
近年、きのこ類の人工栽培において廃菌床の発生が問題視されている。本課題では、TEMPO酸化法を廃菌床に適応することで、未利用資源の高度利用化を目指す。さらに、このTEMPO酸化系にきのこ由来のラッカーゼを用いることで低環境負荷技術を確立することを目的とした。TEMPOに作用するラッカーゼを探索したところ、オツネンタケモドキ由来のラッカーゼ(PbLac1)が作用することが明らかとなった。そこで、PbLac1とTEMPOを用いて廃菌床を処理したところ、幅約2nmのナノファイバーを得ることができた。セルロースナノファイバーは新しい機能をもつ素材として、包装材、医療材料等の用途が推定されている。本課題においてその原料としてきのこ廃菌床を利活用できることを示すことができた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、所期目標は半分程度が達成され、より具体化されたことについては評価できる。一方、廃菌床の処理技術に対する社会的有用性は高く、興味を示す企業が現れている。今後は、研究課題に対して興味を示す企業も存在しており、こうした企業や大学との連携方法を具体的に詰めて行くことが望まれる。
黄ニラの緑化防止技術の確立 宮城大学
大久長範
遮光して栽培した黄ニラを弱い光の中に静置すると次第に緑色に変化し商品価値が下がる。黄ニラを紫外線殺菌灯(254nm)で60分間以上処理すると黄ニラの緑化を防止することができた。紫外線処理で黄ニラの緑化を防止すると、グルタミン酸やグルタミン等の遊離アミノ酸を2mmol/100gのレベルに維持するができた。黄ニラの緑化防止に用いた紫外線処理条件では突然変異を誘発しないことをエイムス試験により確認した。得られた成果は、従来の黄ニラ栽培技術に付加し黄ニラの貯蔵・流通分野で活用することができる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、紫外線照射により緑化防止技術が確立できたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、実際に企業において黄ニラの後処理技術として実施されており、技術移転につながったと評価される。今後、黄ニラの価値向上について、食材の多様性という面で成果が社会還元されることが期待される。
新規豆乳凝乳性酵母 Saccharomyces bayanus SCY003 を用いた新規大豆発酵食品の開発 宮城大学
金内誠
科学技術振興機構
山口一良
豆乳の凝固のメカニズム解明とその特性や実用化に向けての検討を行った。本酵母の生産する酵素は、菌体外だけでなく菌体内あるいは菌体表層部に存在するものであった。精製した酵素はタンパク質分解酵素活性を有しており、凝固活性はタンパク質分解によって起こっていると推察された。この酵素は、分解反応には金属イオンの存在が必要ではなかった。しかし、豆腐製造時に添加するマグネシウムイオンには阻害されていた。酵素の至適pHや至適温度は広範囲で、十分に実現しうる反応条件であった。さらに、凝固に伴いβ−コングリシニンのサブユニットが消失しており、制限的に分解されることで凝固を示していた。また、凝固のメカニズムは、部分的なサブユニットの消失によるとジスルフィド結合による凝集が考えられた。これまでの豆乳凝固とは異なり新規発酵食品として開発が可能であると考えられた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも酵母由来の新規な豆乳凝固酵素について、その酵素科学的特性を解明し、また得られる凝固物(ゲル)の物理特性やゲル化のメカニズムに関する新知見を得たことについては評価できる。一方、豆乳凝固の主体はグリシニンたんぱく質なので、本酵素とグリシニンの凝固との関係の解明に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、豆乳の調整法とゲル物性の関係解明の必要があり、本研究により解明された新しいゲル化メカニズムを活かした加工技術が開発されることが望まれる。
高圧熱水処理技術の食品加工への展開 東北大学
藤井智幸
生物素材に高圧熱水処理を施して、多糖やタンパク質を部分分解することによって乳酸菌などの微生物が資化できるようにする技術を確立することを目的として、部分分解挙動を解析した。デンプンの高圧熱水処理においては、高分子鎖を切る加水分解反応と、グルコース骨格を解裂させる糖骨格分解反応は常にランダムに起こっており同時進行する。部分分解反応を反応速度論的に解析した結果、高温条件と低温条件では反応機構が異なることが示された。タンパク質の部分分解反応においても、高温条件と低温条件では反応機構が異なった。触媒を用いず水のみで食品高分子を分解し、低分子物質を選択的に生成させる高圧熱水処理の最適化に必要な基礎データが取得できた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもモデル材料であるデンプンとゼラチンの処理条件と生成物特性の関係を明確にした点については評価できる。一方、装置的問題点をクリアするための具体的アイデアの提示に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。複雑系である肝心な豆乳でのデータが装置的障壁を突破できず得ることができなかったのは残念である。新規な保健機能を有する食品の開発が期待されていることを考慮すると、今後は懸濁物を含む豆乳に適用可能な装置の開発が望まれる。
マダイにおけるDNAマーカーを用いた親魚判別とBLUP法を用いた親魚の遺伝的能力評価 東北大学
中嶋正道
本課題はマダイにおいてDNAマーカーを用い親子判別を行い、得られた家系情報を用いた親魚の遺伝的能力評価と遺伝的能力に基づく選抜育種の可能性の検討を目的とした。マダイにおいて開発された10のDNAマーカーを用い、3168個体の種苗中、約93%に当たる2932個体の親魚を特定することができた。さらに家系情報を用いたBLUP法により親魚の育種価(遺伝的能力)を推定したところ、集団の平均値を10%程度上昇させうる親魚がいる一方で10%程度低下させうる個体もいることがわかった。また、両親の育種価と仔魚の体長との間には正の有意な相関があり、育種価を指標とした選抜が有効性である可能性が示された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初目標が達成されたことについては評価できる。一方、技術移転を目指したステップにつながる可能性に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。期待した成果は一部得られており、今後は技術移転にまで発展させるプロセスの再検討が望まれる。
海藻を原料とした化学原料化プロセスの開発 東北大学
相田卓
東北大学
高橋直之
【目標】
本研究の目標は有機酸の選択的回収に向けた最適条件の解明である。そこで有機酸の合計収率50%以上、特定有機酸の収率を20%以上の二つの数値目標を立て探索を行った。
【達成度】
有機酸の合計収率は最大46%、特定の有機酸として乳酸収率22%の生成に成功し、おおよそ数値目標を達成した。
【今後の展開】
さらなる収率の向上にはガス化の抑制、選択的分解反応の促進が必要である。今後、本課題に対し、固体触媒、部分酸化の適応を検討していきたい。本技術は海藻の化学原料化のみならず、藻類の脂質抽出後の残渣の有効利用技術としてきわめて高い汎用性を有する。今後、実サンプルを用いた技術開発が急務である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、有機酸の合計収率および特定有機酸(乳酸)収率とも概ね目標を達成している点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、収率のさらなる向上のためのガス化抑制と選択的分解の可能性を見出す必要がある。また、震災後の地域振興に寄与できる可能性が存在する。技術移転につながる可能性が高いが、研究開発でのコア技術が高温高圧水を利用している点のみであり、今後、他の触媒反応機構などに関する関係が解明されることを期待したい。
分子量分画膜を用いた迅速・簡便な新規核酸定量法の開発 東北大学
久保田健吾
東北大学
齋藤悠太
本研究では、分子量分画膜を用いた配列特異的新規RNA定量法を開発した。本手法では、標的核酸と交雑した蛍光標識プローブと交雑しなかった余剰プローブを分子量分画膜により分画し、交雑したプローブ由来の蛍光強度から定量を行う。使用する分子量分画膜、プローブ/RNA比、交雑時間、交雑温度などについて検討・最適化を行い、人工合成RNAの検出を試みたところ、標的RNAの配列特異的に検出できた。また、定量については既知量と高い相関を示し、検出下限値も1ng程度と高感度検出が可能であった。嫌気性汚泥中に存在する硫酸還元菌の定量を試みたところ、高い再現性で定量でき、実在する複合系に適用することに成功した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初目標としていたRNA検出限界を1 ng程度にまで高めることに、ほぼ成功している点については評価できる。一方、今後の研究開発計画は明確に示されており、また従来法に比べ簡便かつ迅速な定量法であることから、引き続き所定の計画を遂行することが必要と思われる。今後、検出感度において、微量定量化に向けた取組みを今暫く継続する必要があるが、技術移転に向けた次の開発ステップへの進捗が望まれる。
新奇カビ高密度液体培養技術による有用物質生産法の確立 東北大学
阿部敬悦
東北大学
渡邉君子
カビ(糸状菌)は、液体培養による産業用タンパク質の大規模工業生産に利用されている。カビの工業培養では、カビが糸状に連なり分裂生育し、菌体が絡み合ってボール状・パルプ状になって高密度培養が出来ず、タンパク質生産のコスト限定要因となっている。申請者は、カビ細胞壁関連遺伝子変異株 (細胞壁変異株)が従来株とは異なり、液体培養で菌体が均一分散し且つ菌体量が200〜300%に増加して高密度培養に適することを見出した。本申請では工業培養条件を再現できる培養装置を用い、従来株に対する細胞壁変異株の生育および組換えタンパク質生産性改善を評価する。本技術はタンパク質発酵生産の大幅なコスト改善を目指す技術である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、低分子及び蛋白質生産において、当初設定した目標は概ね達成できていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、汎用性が高い技術に成熟する可能性が高く、社会還元が見込まれる点は評価できる。個々の対象生産物での改良が必要とはいえ、開発に結び付く技術的要素は固まったと判断でき、今後の技術移転が期待される。
光合成細菌が分泌する新規糖類の工業原料化への利用研究 東北大学
魚住信之
東北大学
渡邉君子
太陽光をエネルギー源として、大気中のCO2を固定して増殖し続ける藻類に、NaClを添加することによって細胞外多糖の生産を誘導させることを申請者らは見いだしている。この多糖郵送生産系の分子レベルの制御の解析と多糖を主要成分とする炭素化合物の生産系の開発をすすめた。ラン藻が、増殖から細胞外に多糖を分泌生産するように誘導生産をつかさどる高塩濃度を感知するセンサーの候補遺伝子、多糖生産量を低下させる候補遺伝子および高生産を誘導する候補遺伝子を同定した。さらに、主要な炭素化合物資源である細胞外多糖成分の抽出と有用糖類の単離・精製を行い、炭素化合物の抽出の可能性を示した。これにより、藻類の多糖の効果的な培養生産と炭素化合物の工業原料としての利用にむけた技術開発研究基盤の構築に至った。 概ね期待されていた成果が得られ、技術移転につながる可能性は 一定程度高まった。中でも、ラン藻が炭素化合物を培地中へ分泌生産する培養条件を見いだしたことは評価できる。今後は、実用化までのストーリーを考慮し、企業ニーズを把握した上で、エネルギー収支の観点を常に持って研究開発を実施することが望まれる。
次世代型L-アラニン発酵生産を目指したL-アラニン排出輸送体の発現制御機構の解明 東北大学
米山裕
東北大学
渡邉君子
本研究はL-Alaの発酵生産の促進を目指し、大腸菌の新規なL-Ala排出輸送体YgaWの発現制御機構の詳細を解明することを目的としている。本研究においてygaW遺伝子上流域に存在すると考えられる制御領域を同定するためにβ-ガラクトシダーゼを利用したレポーターアッセイ系を構築し評価した結果、ygaW遺伝子の開始コドンより180 bp〜240 bp上流に制御因子の結合部位と考えられるシスエレメントが存在することが明らかとなった。さらに、大腸菌のグローバルレギュレーターに注目しygaW遺伝子の発現におよぼす影響を検討した結果、ygaW遺伝子の発現が一つの因子の欠損によって上昇したことから、ygaW遺伝子の発現はこの因子によって負の制御を受けることが明らかとなった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、新たな解決すべき基礎的な研究課題が見出されたことは評価できる。一方、将来、研究課題が達成されれば、社会的な需要は期待できる。今後は、さらなる基礎実験の継続が必要であると共に、技術移転に関する今後の方針や計画の立案が望まれる。
多機能性抗菌ペプチドの植物における大量生産系の確立と抗癌戦略 東北大学
磯貝恵美子
東北大学
高橋哲
カテリシジンファミリーのCAMP遺伝子およびBMAP遺伝子の塩基配列から人工遺伝子を作成し、発現ベクターに組み込んだ。それぞれの遺伝子については配列中の両端のプライマーに15塩基を付加した形でプライマーを作成した。これをPCRで増幅し、PCR産物をカラム精製した。発現ベクターpRI201-AN(10,432bp)は形質転換植物における外来遺伝子の高発現を目的としたベクターとして選択した。東日本大震災のためトマトの栽培が順調に進まなかった。癌細胞は種類によって感受性が異なっていた。抵抗性を示す大腸癌細胞をターゲットとしてペプチドの改変を行った。アナログペプチドにおいて大腸癌細胞に対して、はじめて増殖抑制およびアポトーシス誘導効果が示すことができた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも震災の影響を受けつつ当初の目的の一部を達成した点については評価できる。一方、今後の研究開発計画については述べられているが、現段階では技術移転に関する産学共同の可能性に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが引き続き必要と思われる。一部は成果が認められるが、まず計画段階で震災の影響を加味すべきであり、今後の研究開発計画についても、さらなる検討が望まれる。
メカノケミカル法による木質系バイオマスからのセルロースゲルの分離とグルコース化法の開発 東北大学
張其武
科学技術振興機構
木村恒夫
メカノケミカル処理により観察されたセルロースのゲル化結果に基づき、セルロースの加水分解によるグロコースの製造が可能と期待し、希硫酸使用と低温加熱などにより80%以上のグルコースへの変換率を目指した本申請であったが、申請書の条件でさまざま実験を行ったが、ゲル化されたセルロースの完全加水分解が確認できなくて、つまり当初設定した目標に達成できなかった。計画した実験条件をすこし変更し、追加実験に一定な評価できる結果が得られた。リン酸塩系固体酸触媒の代わりに、新たにバイオマスから100℃以下の低温で調製した硫酸担持炭素系触媒の使用により十数パーセントの変換率が得られた。また加熱条件について密閉かつ250℃以上に変更した条件で、セルロースが80%以上溶解する事を確認した。グルコースの変換率については現在分析中である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初の目標は達成できなかったが、別の手法で有用な技術が開発できたことについては評価できる。一方、現時点ですぐに応用展開は期待できないが、メカノケミカル処理によるセルロース分解には社会的ニーズは高い。本事業の研究目標の達成度は残念ながら低いと考えられるが、一方社会的ニーズの高い技術であり、今後、更なる基礎研究の蓄積をした後に技術移転されることが望まれる。
ナノ空孔材料とマイクロ流路を利用する食品関連機能性化学品製造に向けた酵素固定化マイクロリアクターシステムの開発 独立行政法人産業技術総合研究所
松浦俊一
流通式マイクロリアクター利用による機能性アミノ酸(テアニン)の高効率生産システムの構築を目標とし、まず、酵素の固定場となるメソポーラスシリカ粒子の合成と、遺伝子組換え技術および大腸菌発現系によるテアニン合成酵素(グルタミナーゼ)の大量発現と高純度酵素の精製を試みた。その結果、24 nmの細孔径を有するシリカ微粒子の合成および90%以上の純度の酵素の精製に成功した。次に、マイクロ流路内部に担持したシリカ微粒子に酵素を固定化し、テアニンの連続合成を実施した結果、当リアクターは48時間の連続稼働を実現し、また、マイクロ流路中の酵素反応部のみの局所加熱効果により、極めて高い反応収率を達成することができた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ほぼ当初の設定通りの目標達成に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、連続再生におけるさらなる安定性が確保できれば、非常に大きな展開が期待される。今後は、マイクロリアクターがどのような出口に向けて本技術を展開していくかのか、連続再生の安定確保をふくめた実際の展開に向けたさらなる検討が期待される。
トランスポゾン転移を利用して改変した麹菌の食品産業への実用性評価 秋田県総合食品研究センター
小笠原博信
秋田県総合食品研究センター
後藤彰
本研究では、「非組換え」型の遺伝子改変により多様な遺伝資源をもたらすと期待されるトランスポゾン変異を利用した新規麹菌の産業利用を目的に、清酒及び味噌用麹菌を基に取得した変異株群について現場の製造技術をシミュレートした実用性評価試験を実施した。開発した少量麹特性評価法により吟醸酒用の低褐変性株やアミノ酸度の低い選抜株が予想以上に高頻度(約30%)で得られることが判明した。麹蓋による製麹と清酒小仕込み試験から、作業工程を変えずに麹菌のグルコアミラーゼ等の優良特性を発揮できる醸造が可能であることが示された。技術移転を見据えた醸造メーカーでの予備的な製麹評価でも良好な結果が得られていることから、次期事業等により種麹、清酒、味噌メーカーでの現場実証試験を進め、新規麹菌による吟醸酒や味噌の商品化を目指したい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、トランスポゾン転移頻度を高めるストレス処理による変異株バンクの構築と、そのバンクの中から有用な菌株が取得できており、技術移転可能な研究成果や論文発表がなされていることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本研究開発で得られた成果により良質な清酒や味噌製造が可能となるため、研究開発成果の応用展開が望まれる。転移頻度が低いようであり、変異株が実際に転移によるものかどうか明確でない点は弱点であるが、遺伝子組換え技術によらない有用菌株造成法として有用と考えられる。今後、紫外線処理などの通常変異処理方法と、トランスポゾン転移のためのストレス処理の併用も考慮してほしい。
未利用資源のセルロース系バイオマスを原料に稲いもち病用農薬カスガマイシンを発酵生産する放線菌の育種と工業生産に向けての基盤研究 秋田県立大学
小嶋郁夫
稲わら粉、米ぬか、木粉などのセルロース系バイオマス(CB)を原料に、稲いもち病農薬カスガマイシン(KSM)を高生産可能な放線菌の育種をめざした。CB資化性放線菌C42株へのKSM生合成遺伝子群導入株は、高濃度の米ぬかを原料に目標を上回るKSMを生産し、本菌によるKSM発酵生産の実現に向けて前進した。一方、 C42株の2種のセルラーゼ遺伝子と他菌株由来のセロビオース資化遺伝子群との発現カセットを本来のKSM生産放線菌に導入したが、セルロース資化性は誘導されなかった。C42株には10種以上のセルラーゼ推定遺伝子群があり、これら遺伝子群の幾つかをさらに利用する必要が示唆され、CB資化誘導遺伝子発現カセットの構築に有益な知見を得た。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、カスガマイシン生産遺伝子発現カセットを導入し、米糠を炭素源として培養した場合には、達成目標以上のカスガマイシンが生産できたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、小形ファーメンターでの生産実験であるので、大型・大量生産に向けた具体的な対策の確立が望まれる。今後は、遺伝子発現カセットの導入により、抗生物質生産など二次代謝能の付与は比較的容易であるが、難分解性炭素源の利用能のような一次代謝に関する能力付与についても検討されることが期待される。
環境影響評価に対応した顕微鏡の開発 秋田県立大学
伊藤一志
秋田県立大学
石川直人
本研究は環境影響評価を行うシステムを負荷した顕微鏡の開発を目指した内容であり、特に排水に含まれる化学物質の毒性を評価するデバイスの開発を進めた内容である。今年度の研究成果として、申請者が考案したコンセプトおよびそれを反映したデバイスを用いることで上述の顕微鏡の開発が可能である知見を得ることが出来た。今後は開発したデバイスの改良と顕微鏡との設置方法の検討が必要となると考えられる。また、従来の環境影響評価方法のデータと比較しながら、毒性のデータを取得することも重要であると考えている。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。細胞培養培地を小型化する還流システムを開発し50mlまで減少させたことは評価できる。 顕微鏡装置の改良につながる研究であるが、廃水処理技術の向上に関わり社会的な期待は大きい。 今後、残されている課題を解決し、本研究が目指す「かん流システム」が他の方法に比べて優位な環境影響評価法となるための一層の努力が望まれる。
リポ酸の抗ストレス作用の応用によって鶏肉の食味品質を向上させる特殊飼料の開発 秋田県立大学
濱野美夫
秋田県立大学
渡邊雅生
本研究は、α-リポ酸からなる抗ストレス剤(特殊飼料)がもつ鶏肉の鮮度保持効果にもとづいて、鶏肉の美味しさに関与する臭気成分の低減効果を実証することを目標に掲げた。鶏肉の酸化を進行させるためブロイラーを暑熱に暴露し、得られた鶏肉について破砕加熱をさらに行った。その結果、抗ストレス剤の給与では暑熱暴露と破砕・加熱によって進行した臭気成分(特にアルデヒド類)の発生を顕著に半減させることに成功し、研究目標を達成した。また、暑熱暴露で生じた栄養代謝を常温飼育時の状態に緩和する抗ストレス効果も得られた。今後は、より強力な抗ストレス作用へと改良し、食味品質を多面的に改善できる特殊飼料の開発を図る。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ほぼ計画通り実験が遂行され、目標を達成している点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、応用展開された場合は、鶏肉の食味の低下防止および家畜の福祉にも十分に貢献できると考えられる。今後は、得られた成果の技術移転を実際化するために、産学官連携を具体的に推進して行くことが期待される。
米ぬかおよび米ぬか糖化液を発酵原料とした抗生物質生産技術の開発 秋田県立大学
春日和
秋田県立大学
渡邊雅生
本試験では、米ぬかを発酵原料とした抗生物質生産系の確立を目的とし、一般米や酒造米の米ぬかを添加した液体培地で抗生物質カスガマイシン(KSM)の生産菌を培養し、1 mg/ml生産量を目標としたKSM生産試験に取組んだ。結果、(1)KSM生産菌R6S1では目標値を達成できなかったが、KSM生産遺伝子群を導入した菌C42/pKSM109では目標値を超えるKSM生産を実現できた。(2)米ぬかを市販の酵素で前処理すると、KSM生産量の増加と時間の短縮が可能になった。(3)米ぬかへの油脂の添加によりKSM生産量が増加する可能性を示した。以上より、米ぬかが放線菌による抗生物質生産の発酵原料として有効利用できることを明らかにした。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当該物質の発酵生産についての数値目標は達成されたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、発酵効率を制御する因子は多種多様であり、実生産に向けて具体的な課題を設定して、一つづつクリアしていく必要がある。今後は、技術移転の確度を高めるために、実際の生産設備を意識した菌株の創出・発酵制御技術の開発が望まれる。
カーボンナノチューブ材を用いた培養機能を有する新規LDIプレートの開発 秋田県立大学
常盤野哲生
秋田県立大学
渡邊雅生
本研究は培養機能を有するLDI用分析プレート開発を目的とし、プレート材料にカーボンナノチューブ複合材を利用するための基礎データ取得を行なった。その結果、細胞培養可能なCNT濃度において、同複合材質上に吸着した各種化合物のLDI質量分析が可能であることを明らかにした。検出感度については通常のMALDI質量分析と同程度の化合物濃度でシグナルが検出され、かつイメージング分析も可能である。同複合材質は成形が容易であり、既存のMALDIプレート上もしくはイメージング用のフレームにそのまま組み込んで使用できる。CNT濃度範囲については濃度調整に課題が残されたが、概ね当初に予定していた基礎データを得る事ができた。今後はより均質な材質調製を検討するとともに、検出感度の向上や実際の生体分子イメージングに向けた実験手法の開発へ展開していく予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標がほぼ達成できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、培養による代謝産物が直接的にチェックできる可能性が出てきたため、事業化につながることが期待される。微生物培養と代謝産物のLDI分析を同一の場を利用するものでユニークな技術と言え、今後の技術移転が期待される。
ブラシノステロイド生合成阻害剤を利用したゴルフ場芝草生長制御技術の開発 秋田県立大学
王敬銘
秋田県立大学
渡邊雅生
本研究は、申請者らが知的財産権を有する新規ブラシノステロイド生合成阻害剤について、低薬量でゴルフ場芝草生長抑制作用を明らかにするとともに、低コストでゴルフ場芝草管理の省力化を図る技術の研究開発を目標とした。まず、新規ブラシノステロイド生合成阻害剤のペンクロス(ベントグリーン)成長抑制作用を既存剤であるプリモマックスと比較検討を行った。新規ブラシノステロイド生合成阻害剤は100 g a.i./haの薬量でペンクロスの成長を有効に抑制したことが示され、この薬量は既存剤プリモマックスと同程度であることが明らかとなった。研究目標に掲げた既存剤の三分の一にあたる30 g a.i./haの薬量では、望ましい芝草生長抑制作用が認められなかった。今後、実用化に向けて阻害剤の活性を向上させるための阻害剤開発を目指す。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、単子葉植物に適用可能な新規化合物研究という達成課題が明確化されたことは評価できる。一方、今後の研究開発計画については方向性の提示にとどまっているため、具体化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、農薬使用現場での効果検証と特許・管理技術の統合された知財パッケージが望まれる。
植物の育苗時に繁殖するカビ等の胞子類の繁殖抑制効果に関する低コスト紫外線遮蔽可視光増強材料の性能向上に関する検討 秋田大学
辻内裕
秋田大学
伊藤慎一
農産物の優良で減農薬に耐えうる苗の生産効率を高めるための育苗用光源からの光の波長変換に応用実用化に向けて、樹脂固体に分散させる紫外可視変換材料の性能改質の実証的検討を行うことを目的としている。当該期間に樹脂固体の試験的サンプルの作製に成功した。思わぬことにきわめて新規性の高い成果のため現在急遽特許出願準備を優先し、研究計画上1〜2ヶ月程度の遅れをとることとなったが、研究全体としては順調である。ネギの苗の試験準備を終えており、紫外可視変換材料を分散した樹脂塗料を用いた「付着するカビ胞子量の減少量」試験を4月期に実施する計画である。また引き続きトマトの苗を用いた試験を行う計画で準備を進めている。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、紫外可視変換材料については、新規物質群が得られたことは評価できる。一方、本樹脂やフィルムが現場に適用されれば、作物の病害防除に貢献することから、引き続き技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、栽培現場の病害防除の実証試験で有効な結果が得られることが望まれる。
クモ糸を大量生産するための宿主培養条件の最適化 慶應義塾大学
佐藤暖
クモ糸はタンパク質からできているため、大量生産には化学的な合成よりも宿主生物を用いた生物学的手法が適している。タンパク質は一般的に20種類のアミノ酸から構成されるが、クモ糸は一般的なタンパク量とは異なり、わずか4-5種類のアミノ酸で全体の80%強を占める。このように偏った組成のタンパク質を大量発現させた場合の宿主および培地の変化を調べたところ、ある成分が培地から早期に枯渇することが分かった、一方でほとんど使用されずに廃棄される成分も同定できた。さらにクモ糸発現に伴う菌体内の代謝物変化の一部も明らかにした。得られた情報は、培地成分の最適化および未使用成分を有効利用する宿主の開発、クモ糸生産の増大につながる宿主の改変に役立つと期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。特定の培地成分のクモ糸タンパク質生産律速の示唆や、培地成分や培養条件の検討、宿主や導入遺伝子の最適化などの技術に関しては評価できる。一方、生産性に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、産学協同に向けた研究開発を中断する予定とあるが、適切に対処されることが望まれる。
メタボローム解析を用いた鮮度保持フィルムの開発 慶應義塾大学
及川彰
本研究の目的は保存中の生鮮野菜に起こる変化をメタボローム解析によって化合物レベルから明らかにし、鮮度保持フィルムの開発に向けたデータを提供することである。生鮮野菜の中でも経時劣化の早いカットキャベツを用いて、保存中の代謝物の変動をメタボローム解析によって調べた。その結果、カットキャベツに含まれる171種の化合物の濃度変動が明らかになり、外観にほとんど変化の現れない保存2日後で既にアルギニンなどのアミノ酸が減少し、アグマチンなどが蓄積していることが分かった。特に穴の空いた包装で大きな代謝物量の変化が認められた。今後、より詳細な保存条件における実験により鮮度保持フィルの開発に必要な情報が蓄積できると考えられる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもメタボローム解析を鮮度劣化の指標として用いる技術に関しては評価できる。一方、鮮度保持フィルムに求められる条件の明確化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、特定企業の製品評価にとどまることなく、イノベーションを引き起こす要素研究につながる研究展開が望まれる。
真核生物の有用代謝経路遺伝子群を原核生物に移行する手法の開発 慶應義塾大学
柘植謙爾
科学技術振興機構
戸部昭広
真核生物である藻類ヘマトコッカスが生産するカロテノイド合成遺伝子群を原核生物である大腸菌に移植し大腸菌によるアスタキサンチン生産することで、真核生物の有用代謝経路遺伝子群を原核生物に移植する方法について検討した。ヘマトコッカスcDNAライブラリーから次世代シーケンサーによりアスタキサンチン合成遺伝子の塩基配列情報と、その発現量情報を同時に取得し、これに基づいてバクテリアで機能するようにオペロンを設計し、アスタキサンチンが生産可能か検証した。その結果、フィトエン不飽和化酵素の反応ステップのみ既存のバクテリア由来の酵素に頼らざるを得なかったが、他の5反応ステップについてはヘマトコッカス由来遺伝子により大腸菌でのアスタキサンチンの生産が可能となった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、次のステップへの技術課題(新たにプラストキノン合成系の導入)について考慮されていることは評価できる。一方、今後の研究開発計画はしっかり検討されているが、産学共同の研究開発ステップには至っていない。成果の社会還元に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。大腸菌でカロチノイドを生産させる系を確立する試みは新規性があり、今後が大いに期待されるが、想定された程の生産量をあげるまでに至っていないので、さらに検討されることが望まれる。
代謝制御機構解明のための網羅的酵素定量法 慶應義塾大学
増田豪
科学技術振興機構
戸部昭広
代謝制御機構の解明を目的とし、本課題では代謝酵素の絶対定量を網羅的に行うための標準試料を作製した。中心炭素代謝系に関連する32種類の酵素について絶対定量を行った。解糖系およびTCA回路における27経路の内、22経路に関与する酵素の絶対量を観察することが可能となった。また、一部の代謝酵素についてはリン酸化タンパク質の絶対量も明らかにした。一方、存在量の極めて少ない酵素でも絶対定量を可能にするため、高感度LC-MSシステムを構築した。高感度システムを用いることで、既存のシステムに比べて感度が約80倍上昇した。今後は定量値の正確性を検証すると共に、他の酵素についても絶対定量行う。また、各種試料についてメタボローム解析と併用し、試料特有の代謝機構を解明する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に微量酵素の定量のための超高感度化や、高効率消化法開発の技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、酵素の定量に関する情報が社会一般で広く使われるとは考えにくく、産業界でどのように活用できるかの検討が望まれる。今後は、コーディネーターの活動などによりテーラーメードの受注などが期待される。
慶應大学鶴岡藻類コレクションを用いた化粧品原料の開発 慶應義塾大学
伊藤卓朗
科学技術振興機構
戸部昭広
慶應大学鶴岡藻類コレクション(TKAC)として独自に維持している45株のオイル産生微細藻は、二酸化炭素を炭素源として容易に増殖し、数日の栄養欠乏に耐え、油滴を蓄積する。本研究では、TKAC全株の増殖特性と生物活性物質含有量を調査し、化粧品原料候補株の選定を目指した。そして、血球計算板を用いた細胞数測定から全株の比増殖速度の最大値を明らかにした。生物活性物質の分析は、1培養条件で計画していたが、過去の研究を参考に窒素栄養十分条件と窒素栄養欠乏条件に分けて実施した。これにともない、分析対象株を約半数に削減した。しかし、窒素栄養欠乏条件を加えた事で、窒素栄養十分条件とは異なる物質を高度に生産する株を見いだし、目標としていた2株を化粧品原料候補として選抜した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、本技術開発は藻類に限らず、有用物質生産微生物のスクリーニングの技術としても評価できる。一方、培養技術や、スクリーニング条件、サンプル数増に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は工業的な製法が未確立な物質とか、天然界に希少な有用物質など、産業上期待される生産株の取得が望まれる。
ツクネイモの高効率生産技術の確立 山形大学
片平光彦
山形大学
阿部誠
種芋移植機を用いた新型作業技術は、トラクタの前方に取り付けた肥料散布機による畝内施肥、定植、作畝、マルチ敷設の作業を同時に行う。その場合、肥料は畝内の中央部に58%、上部に61%が分布し、慣行と比較して硝酸態窒素量を畝内で同等、条間で少なくした。新型作業技術は、減肥率を50%程度まで高めても慣行と比較して商品収量と商品率が同等以上、施肥・定植の作業時間を1.8時間削減して2.4h/10aに削減できた。支柱立て作業については、支柱の運搬と下穴開けを同時作業できる支柱打ち込み作業機を試作した。作業機の利用は、慣行と比較して作業負担度を8%低下し、改善不要に該当する姿勢割合が23.1%増加した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標がほぼ達成されており、技術的課題が定量化されて明確となっていることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、施肥機を含めた新型作業技術の提案については、企業との改良機の製作と、機械の低コスト化についての検討が望まれる。今後は、定植精度については作業者が作業しやすい速度に設定し、さらに改善を図ることが期待される。
色の変化で示す肉・魚類を対象とした新規な鮮度センサーの開発 山形大学
木島龍朗
科学技術振興機構
山口一良
当該研究者が開発した固定化補酵素再生系を用いた染料分解系を応用した目視でもわかる高感度で安価な鮮度センサーの開発を行った。この装置系は肉・魚類の腐敗度の指標となるヒポキサンチンを検出し、その結果を色の変化で知らせるものであるが、その検出限界は20ppmという高感度であり、また実サンプルを用いた実証試験においても本装置系を用いた結果とHPLCによる定量法との間に高い相関性が確認され、実用性の高い装置系であることを明らかにした。また酵素を変えることでグルタミン酸の検出にも成功し、旨味センサーとしての可能性も示唆した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、いわゆる危険状況をお知らせする鮮度センサは確立出来たことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、イノシン酸脱水素酵素の大量発現であると記載されているが、大腸菌による活性型の発現が今後の課題である。センサに対する消費者の要望は強いことなどから、うまさと鮮度、腐敗度を簡便に測定できる方法の実用化が期待される。
銀ナノ微粒子が有する抗菌性の機構解明 山形大学
村山秀樹
科学技術振興機構
木村恒夫
抗菌性を有する銀ナノ微粒子をプラスチック製の容器にコーティングし、切り花のポストハーベスト試験を行った。その結果、銀ナノ微粒子コーティング処理は、生け水中の細菌の増殖を抑え、切り花の新鮮重や吸水量を高い値で維持し、花持ち日数などの切り花の品質を向上させることが判明した。次に、銀ナノ微粒子をコーティングしたプラスチック製の容器に蒸留水を加え、生け水中の銀の動態を調べた。その結果、生け水中に銀濃度は日数の経過とともに上昇した。ただし、溶出した銀濃度は、これまで鮮度保持剤として生け水中に添加されている銀の濃度と比較するときわめて低かった。このことは、銀のナノ微粒子が高い抗菌性をもつことを示している。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、概ね目標が達成され、将来の技術移転につながる研究成果を得たことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、銀ナノ微粒子は切り花流通での品質向上にとどまらず、広く応用展開が期待される。生け水中には銀が溶出していることを実験室レベルで明らかにしており、近い将来の実用化が期待される。
高分泌発現微生物ゲノムへの長鎖DNA高効率部位特異的導入法の開発 日本大学
平野展孝
日本大学
松岡義人
本研究開発では、ファージ由来部位特異的遺伝子組み換え酵素を用いて、高分泌発現細菌ゲノムを対象に、長鎖DNAの高効率な部位特異的導入法の開発を目標とした。しかし、本酵素によって効率的にゲノム上へ長鎖DNAを導入出来る株の作出には至らなかった。これまでの遺伝子導入試験から、本酵素の組み換え効率は、挿入標的部位のゲノム上の位置に大きく左右されることが示唆されている。そこで、標的部位の位置と組み換え効率の相関を解明するため、大腸菌ゲノムを対象に詳細な検討を行った。その結果、複製起点近傍に標的部位が挿入された場合にのみ高い組み換え効率が得られることが明らかとなった。今後は、高分泌発現細菌の複製起点近傍へ標的部位を挿入することにより、遺伝子導入法の開発を行ってゆく予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、列挙された問題点が次のステップへの技術的課題として明示されていることについては評価できる。一方、技術移転を目指した研究開発ステップにつながる可能性については、基礎段階での追加検討が必要と思われる。今後は、最終的に計画された目標がすべて達成され、種々の遺伝子群を含むDNA断片を目的とするゲノムに組み込むことが望まれる。
東北太平洋地域で水揚げされるタコ、イカ、ホタテ貝、ホッキ貝等の魚介類加工残渣より抽出・精製する高効率かつ低コストによる製造技術の開発 福島工業高等専門学校
青木寿博
福島工業高等専門学校
大隈信行
本研究は、イカ、ホタテ等魚介類に比較的豊富に含まれているセラミドシリアチンを抽出し、ホスホリパーゼC酵素を用いてホスホン酸を切断してセラミドを精製する製造法確立を目標としている。イカ粉末から目的物質であるセラミドおよびセラミドシリアチンの有機溶媒(エタノール、メタノール、n-ヘキサン、クロロホルム)による抽出・精製方法を検討した。同定はできていないが、目的物質を数段階の工程で濃縮できたと考えている。また、超臨界二酸化炭素抽出装置を作成し、分離溶媒として利用できることを定性的には確認できた。 当初目標とした成果が得られていない。中でも、セラミドの同定・定量法の確立のための技術的検討や評価が必要である。そのため、今後はセラミドの同定・定量法の検討など基礎的知見の確立が望まれる。
新規変異体を活用したトマトの日持ち性及び高糖度形質の改良技術の構築 筑波大学
江面浩
本研究開発は、1)筑波大学で開発したトマトTILLINGプラットフォームを使って選抜したSletr1-1およびSletr1-2変異体の果実日持ち性育種素材としての能力評価を行うこと、2)TILLINGプラットフォームの拡充を行うこと、3)TILLINGプラットフォームを活用して糖度改良用育種素材の選抜を行うことを目標とした。1)についてはSletr1-2が日持ち性改良の育種素材として有望であることを実証し、2)についてはDNAプールを5,000系統以上に拡充できたこと、3)については候補系統が選抜できたことから、目標を達成できたと判断する。今後、関連企業と連携し、得られた成果の実用化を進める。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、日持ち性改良育種素材のアリル変異型間で灰色かび病に対する感受性に大きな差があったことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、研究成果が関連企業専門家によって検証され、高く評価されている。今後は、プラットフォームのDNAプールを拡充し、糖度向上用育種素材の系統を選抜することが期待される。
過熱水蒸気を用いた輸出入青果物の駆虫・消毒等検疫処理に関する新技術開発 筑波大学
弦間洋
筑波大学
根本揚水
我が国における青果物輸出入時の植物検疫処理においては臭化メチルや青酸ガスなどの有毒薬剤を使用した燻蒸による検疫処理が一般に行われている。しかし、これらの薬剤使用は環境への影響、残留農薬の懸念、処理作業の安全性や対応処理施設の欠如など多くの課題を抱えている。それに対処するため、薬剤を全く使用しない無薬剤検疫処理技術の研究に取組み、過熱水蒸気の凝縮潜熱を利用した蒸熱処理による輸入バナナ果実の検疫処理技術を開発した。本研究では、青果物の多量処理を目的とした高精度温度制御を備えたコンベヤー式蒸熱処理装置を開発し、バナナ果実品質への影響がなく、実用可能性が十分あることを確認した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に過熱水蒸気と圧縮空気の最適混合割合に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、実用規模での装置の開発、青果物の品質への影響等、具体的で的確な計画が今後検討されており、食品、装置メーカーとの連携も図られている。有毒薬剤を使用しない検疫処理が実用化されれば、社会貢献度が高く、環境・生態系の保全、食品の安全面などでの実用化が望まれる。青果物の大量処理が可能な蒸熱処理装置の操作条件をほぼ確定しており、今後、実用規模での品質面の検討を加えれば、企業化されることが期待される。
国内の畑土壌において生分解性プラスチック農業用マルチの過分解を引き起こす原因の探索 独立行政法人農業環境技術研究所
北本宏子
独立行政法人農業環境技術研究所
藤井毅
生分解性プラスチック製農業用マルチ(生プラマルチ)フィルムは、ゴミ処理が不要で農家の評判が良い。しかし、普及に伴い、使用中の生プラマルチが異常な速度で分解が進み使えなくなる、原因不明な「過分解」の事例が報告され始めた。本研究では、国内各地の畑土壌の微生物学的・生化学的・理化学的な調査を行い、過分解土壌では生プラ分解菌の存在率と生プラ分解酵素活性が高いこと、火山灰の影響を強く受けた土壌では過分解が起こりにくいことを明らかにした。今後は、日本の耕作畑地の51.5%を占める火山灰土壌について、過分解現象との関わりを詳細に解析する予定であり、この解析で再現性の高い指標が得られれば、日本の畑地に適した資材として生プラを普及させる一方で、過分解が起きやすい畑土壌を事前に予測して、丈夫なマルチの使用など過分解を避ける技術も開発することができる。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、当初目標が十分に達成されており、生分解性プラスチックのマルチ過分解土壌の特徴解明に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、過分解土壌でのマルチフィルム使用法の提案などにより本研究開発の実用化が望まれる。今後は、企業化の実現に向けた取り組みを大いに期待したい。
損傷イチゴの物理的特性・分光特性・内部因子による物理的損傷耐性の解明 宇都宮大学
柏嵜勝
宇都宮大学
塘久夫
イチゴは、表皮破壊を伴わない物理的損傷の場合、発生後しばらくは目視による識別が不可能である が、その後表皮が著しく劣化する。また、同程度の熟度のイチゴでも個々によって物理的損傷の程度が 大きく異なる。 本申請研究は、イチゴ表面の物理的特性を測定するとともに分光特性を把握し、これらの特性と物理的 損傷との関連例を明らかにし、分光特性から物理的損傷推定する手法を開発する。さらに損傷部位の 内容成分の変化を把握し、物理的特性、分光特性、内容成分と物理的損傷との関係性を考察する。これらの成果を、イチゴの表面分光特性から物理的損傷の発生難易度や物理的損傷に耐える性質(損 傷耐性)の非破壊推定方法の開発へとつなげる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、イチゴ果実損傷部の変形強度特性と分光反射特性の相関を抽出したことは評価できる。一方、生食用高級青果物としてのイチゴの市場競争力を高めるための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、市場競争力を高める要素技術として貢献できる可能性があるので、市場・ユーザーの具体的ニーズや全体像からみた位置づけの明確化が望まれる。
分泌型高性能発光レポーターを用いる化学物質評価系の構築 前橋工科大学
善野修平
本研究は、分泌型ルシフェラーゼと哺乳類培養細胞を用いて有害物質の量を発光量として見積る評価系を作製することを目標にした。最初に、化学物質応答配列(金属応答配列MRE、生体異物応答配列XREあるいは抗酸化物応答配列ARE)を連結した発光レポーター発現系を構築した。これらについて一過性発現の評価を行なったところ、非分泌型ルシフェラーゼのレポーター系と同程度の発光強度・検出感度を見い出せた。さらなる物質検出の感度向上の目的で、MRE認識転写因子MTF-1、XRE認識転写因子AhR・Arnt、ARE認識転写因子Nrf2・Mafの発現系を構築した。これらの付加的な発現は発光強度・検出感度に殆ど影響しなかった。今後、この評価系の改善には化学物質応答配列の個数の増加が最も重要となろう。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、目標が達成されたとはいえないが、多数の発現系が構築されたことは評価できる。一方、特許マップなどの特許戦略を構築した上で、戦略的な技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。次のステップに向けた対応は明確ではなく、特許マップなどの特許戦略は重要であるが、今後の明確な計画作成が望まれる。
線虫を用いた環境ホルモンの迅速な生体評価系の開発 埼玉大学
安藤恵子
埼玉大学
永井忠男
我々はライフサイクルが短く培養の容易な線虫を用いて環境ホルモンの簡便な生体評価系を開発している。本研究課題では、環境ホルモンの女性ホルモン様作用を生体外から生きたまま検出・評価するアッセイ系を構築するため、蛍光蛋白質遺伝子を導入した線虫の有用株を用いてin vivoでの光学的評価系の開発を行った。その結果、線虫を利用した光学的測定法が環境ホルモンの新たな生体評価系として有用である可能性が示された。この研究開発を基に非侵襲的な光学測定法が完成すれば、高速・低コストの生体評価系として水質、土壌などの環境調査や医薬、食品などの産業界に寄与できると期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、雌特異的遺伝子発現の検出に関しては選択性のある検出手法が確立できていることは評価できる。一方、内分泌攪乱化学物質の検出に対する需要について、技術移転先の企業等に対するヒアリングが必要と思われる。今後は、内分泌攪乱化学物質全般への拡大展開が望まれる。
高齢者の咀嚼機能、嚥下機能に適合する美味しい大麦粉含有麺の開発 埼玉大学
川嶋かほる
埼玉大学
東海林義和
健康機能性に富むベータグルカン高含有の大麦粉を利用した麺で、咀嚼機能や嚥下機能の衰えた高齢者が食べても、誤飲や嚥下障害を起こさず、外観や食味が食欲をそそり満足感を与え、食べ飽きせず、高齢者の健康保持に資する食品を開発することを目標とした。大麦粉の粒径分布、生地の水分率、形状等が麺(うどん)の物性に与える影響を検討し、上記目標に到達できる麺の開発を目指して試作を繰り返した。その結果、微粉とした大麦粉を15%含有した麺がコシ、のど越し、モチモチ感が好ましかった。この配合割合で太、細、二種の形状の麺を高齢者による消費者型官能検査で評価したところ、高い評価を得た。実用化にはコスト等の課題克服が必要である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ある程度の目標達成はなされたことについては評価できる。今後、本研究が実用化された場合、一定レベルの社会還元が期待できるので、実用化を模索するステージに入り、真剣に実施化をする企業を見出されることが望まれる。
水産食品安全確保のためのフグ毒高磁場非破壊検査法の開発 東京海洋大学
長島裕二
東京海洋大学
伊東裕子
本研究開発の目標は、食品の安全を確保するため、食品中の有毒物質を非破壊的に検査する方法を開発することである。そのため、毎年食中毒を起こし、全食中毒死亡者の約半数を占めるフグを例に、フグ毒を非破壊的に検出し、魚体あるいは組織中のフグ毒の分布を三次元情報として表すことを行った。選択領域励起プロトン密度強調画像法による画像を取得し、オリジナルの画像処理プログラムにより肝臓での三次元検出が可能となった。しかし、検出精度および実用性については、今回の実験のみでは不十分であり、今後のさらなる検討が必要と思われる。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、当初の目標が達成しつつあることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、測定に要する経費(高磁場MRI)を低減することが望まれる。技術移転につながる可能性は高いと思われるが、産学共同等の次のステップでの研究開発を期待したい。
自然災害後の未利用高生産海域におけるテングサ群落の作出 東京海洋大学
荒川久幸
東京海洋大学
前田敦子
自然災害によって荒廃した海藻群落を回復させることを目的として、中層浮き海藻礁を発明した。この礁はその設置水深を変えられることから、海藻の成長に適した照度、濁り、栄養塩など環境の要因を考慮して設置することができるため、火山灰で荒廃の続く三宅島でのテングサ群落に適用することを目標とした。
従来使用していた混紡化学繊維生地と化学繊維ロープに栄養体付着性の相違がないことを確認したのち、海域で実証試験を行った。海藻礁には、天然のテングサ栄養体付着は非常に少なかった。また栄養体を基質に付着させた場合でも短期間で栄養体が消失した。しかしながら、中層浮き海藻礁は生育に適した光環境を海藻群落に容易に与えることができ、群落の形成に有効であると考えられた。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、中層浮き海藻礁は生育に適した光環境を海藻群落に与えることができ、群落の形成に有効であると考えられる成果が得られたことは評価できる。一方、効果の程度などから考えて災害海域での技術移転につながる可能性に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。火山灰で荒廃の続く三宅島テングサ群落に適用することを目標とし、海域で実証試験を行ったものであり、今後は、災害海域での技術移転につながる可能性をさらに検討されることが望まれる。
未利用資源(小型エビ類)の有効活用のための天然由来成分を用いた鮮度保持技術の開発 東京海洋大学
今田千秋
東京海洋大学
池田吉用
全国の底引網漁で混獲されるサルエビやオキアミのような小型エビ類をレジャー用の釣り餌として有効利用するために、冷凍エビの解凍後に黒変・軟化しないような天然由来成分の探索を行った。その結果、海洋由来糸状菌(H1-7株)の培養液を0.6%添加した溶液に、さらに卵白1.25%および小麦由来ペプチド2.5%を加えて解凍すると、6時間たってもこれらのエビは全く黒変しないのみならず、引っ張り強度の低下も見られなかった。今回試作された釣り餌の効果を調べるために、本年6月上旬〜7月中旬にかけて合計3回茨城県鹿島港においてアジ、サバを目的魚種とした1本針のウキ釣り仕掛けによる釣獲試験を実施した。その結果、試験区の方は対照区に比べて釣獲率が顕著に高く、また目的魚種の釣獲比率も高かった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、チロシナーゼインヒビターを産生する海産糸状菌の利用を検討したもので、独創性は評価でき、特許も出願されていることは評価できる。一方、本技術の効果が実用化には今一つ弱く、効果をもっと大きくしないと実用化は難しいため、さらに技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。海産糸状菌を利用して海産エビ類やアミ類の鮮度保持を目標としたところは評価できるが、今後、実用化に供されるためのハードルをクリアするためには、発想の転換が望まれる。
工業圏から供給される二酸化炭素ハイドレートの二酸化炭素と冷熱を利用した農工融合型施設園芸システムの有効性の評価 東京大学
松尾誠治
本課題では、工業圏排ガスから分離回収したCO2ハイドレートを農業圏の施設園芸で有効利用する農工融合型施設園芸システムの実現を目指すため、施設園芸に適合したハイドレート分解装置の設計、並びにハイドレート供給型作物育成装置によるハイドレート利用試験による有効性の検証をそれぞれ実施した。前者では、ハイドレート貯蔵槽内の熱交換率を高め、室内の空気と熱交換した冷媒温度がハイドレート分解に影響を及ぼさない装置設計を施すことで、作物の栽培方式とCO供給量の変化に対応できる装置設計・試作が行えた。後者では、小規模ではあるがCO2ハイドレートの利用により、光合成増加が見込まれる環境を維持した状態でCO2と冷熱を供給したトマト栽培が可能であった。これらの知見は、従来施設園芸において灯油の燃焼やヒートポンプにより供給していたものをCO2ハイドレートによる代替の可能性を示唆するものと考える。今後は、設計装置及び本栽培手法の実用化に向けたシステム設計、すなわち、設計装置スケールアップ、種々作物での栽培手法の確立、環境制御ソフトウェアの開発を行い、本研究の最終目的である農工融合による環境負荷低減型の施設園芸システムの構築を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、太陽光植物工場等への導入に向けた基礎的な有効性試算がなされたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、企業との共同開発、システム化に向けた検証が検討されていることが望まれる。今後は、COハイドレート採取・分解装置の低コスト化が担保されること、さらに実用規模での施設内エネルギーコストのシミュレーションが期待される。
麹菌タンパク分解酵素を用いたコラーゲン・ジペプチド製造法の開発 東京農工大学
山形洋平
東京農工大学
江口元
【目標】 本研究開発においては、コラーゲンを原料として、生理機能が存在する可能性が高いジペプチドを対原料タンパク質比で50% 以上となる生産方法の開発を目指した。
【成果】 麹菌の生産するエンド型プロテアーゼとエキソ型ペプチダーゼの特定の組み合わせで連続反応法によって同一バッチ内で約 50% の効率でジペプチドの生産が可能であることを示した。
【今後の方針】 今後は、酵素の供給体制の確立とペプチド生産のスケールアップ、最適化を行い、ジペプチドの収率を向上させ、更に高収率でジペプチドが回収可能な反応系を構築したい。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標であったジペプチド生産技術は確立できたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、ジペプチド生産技術については将来性があると考えられ、ジペプチドの生理活性が明らかになると社会還元が期待できる。今後は、工場レベルでの生産技術確立のために、企業との連携を模索するとともに、ジペプチドの生理活性を明らかにしていくことが期待される。
ヘパリチナーゼの耐熱化にもとづく簡便で実用的な分子設計法の確立 東京農工大学
殿塚隆史
東京農工大学
堀野康夫
本研究は、立体構造情報をもとにヘパリチナーゼの耐熱化を行うことを目的とする。立体構造情報をもとに、温度因子の値が高く電子密度マップが不明瞭な部位を特定し、耐熱化予測サーバを利用して分子設計を行った。本結果をもとに、6種類の改変酵素の発現系を構築し、このうち4種類について酵素を得ることができた。野生型酵素の熱による失活は、熱処理の初期に起こる急激な失活と、その後に起こるゆるやかな失活の2段階の過程より成っている。失活の1段階目については、いずれの改変酵素も野生型よりも耐熱化したと判断され、また、このうち2種類の改変酵素については、2段階目においても野生型より耐熱化したと判断された。また、改変酵素の比活性は野生型酵素と比べ60〜170%であり、酵素としての使用には問題がないレベルであった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、耐熱性の向上が期待される改変部位について一部検討されたことは評価できる。興味深い研究課題なので、一日でも早い成果の取得に向け技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、出来るだけ早く改変部位の組合せを行い、耐熱性酵素を創製するための基盤が整備されることが望まれる。
グルタチオンを用いた、窒素固定能力を向上させるバイオ肥料の開発 東京農工大学
大津直子
東京農工大学
木下麻美
ダイズ根粒菌blr7984遺伝子変異株が「単生時に増殖が速く、植物との共生時に窒素固定能力を長期維持できる」メカニズムを解析し、応用につなげる方法を探ることを目的とした。本研究により、変異株において細胞増殖期の菌体内グルタチオン濃度が、野生株よりも増加していることが分かり、細胞増殖とグルタチオンとの関連が強く示唆された。また変異株の表現型は、野生型株に外部からグルタチオンを添加するよりある程度再現できたものの、増殖速度を速めたり、窒素固定能力を高めたりするためには、根粒菌内部でグルタチオン生産を増加させる方が効率的であることが示唆された。遺伝子レベルでの解析のために、次世代シークエンサー用サンプルの再調整を行い、ライブラリー作成まで終了した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、細胞増殖や窒素固定維持における細胞内グルタチオンの役割は明らかにされている点については評価できる。一方、バイオ肥料開発に対する社会還元性は大きい。今後は、本研究成果から判断すると、現時点においては基礎検討段階として残された研究課題が未だ山積しており、これらが解明されることが望まれる。
オレンジ由来フラボン高含有の“骨粗鬆症予防飲料”の開発 東京農工大学
宮浦千里
東京農工大学
木下麻美
高齢化が進む今日、中高年齢者の健康には骨の健康維持が必須である。特に、骨粗鬆症により骨量が低下すると、骨折や寝たきりの原因となる。申請者は、新規のオレンジ由来フラボン画分(ODF)を精製し、ODFが破骨細胞の分化を抑制して骨の破壊を阻止すること、骨粗鬆症モデル動物に投与すると、骨粗鬆症を予防することを発見した。そこで、骨粗鬆症予防サプリメント剤の開発を目指し、本課題では、各種濃度のODF高含有飲料を試作して骨粗鬆症モデル動物における骨効能を評価する。さらに、ODFサプリメント製品として、高機能オレンジドリンク剤を想定し、ODF配合の溶解・分散・安定性試験を実施して配合条件を最適化する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標は達成されていることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、今後、ヒトでの試験をする必要がある。今後、ヒトでの有効性を証明するとともに毒性試験を実施した上で、社会還元されることが期待される。
レアメタル高蓄積大腸菌の作成 法政大学
山本兼由
法政大学
中江博之
大腸菌において、レアメタルであるマンガン、ニッケル、モリブデンは特異的に感知する転写制御因子により特異的取り込みポンプ遺伝子の発現調節でのみ恒常性を保つ。これらの遺伝的能力を強化し、レアメタルの高回収技術の開発を行った。マンガン、ニッケル、モリブデンの細胞輸送に唯一機能する特異的取り込みポンプおよび特異的結合タンパク質の恒常的発現プラスミドとアラビノース誘導発現プラスミドを構築した。マンガンに特異的な取り込みシステムと結合タンパク質を同時に高発現させた大腸菌は、細胞外マンガンへの抵抗性が2.5倍増加した。この結果は、作成した組み換え大腸菌がマンガン高回収に利用できる生物素材として有効と考えられる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、現時点では、作成された組換え体については評価できる。一方、得られた組換え体の解析に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。より高濃度のマンガンに対しての耐性が賦与されたことから、ある程度、マンガンの集積能が向上している可能性はあるので、今後は組換え体のより詳細な解析が望まれる。
バイオ燃料生産のための海藻育種技術の開発 横浜国立大学
中村達夫
横浜国立大学
西川羚二
本課題の目標は、バイオ燃料生産に適した大型海藻の効率的な育種法を開発することである。そこで、生産量が多く栽培技術が確立されている大型海藻の中から、マコンブをモデル系として選択し、バイオ燃料生産の原料となる脂質を多く含む突然変異株の作製技術の確立を目指した。種々の条件検討を行いつつ突然変異株のスクリーニングを行った結果、野生型株よりも脂質染色剤によく染色される突然変異株を複数単離することができた。今後は突然変異株スクリーニング系のさらなる改良を継続すると同時に、得られた突然変異株のより詳細な表現型解析を行い実用化の可能性を探る。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、実用化には、まだ越えなければならないハードルがあるが、当初目標の達成に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、十分な数の突然変異株が得られていないために、胞子体世代における脂質蓄積の確認が望まれる。今後は、興味深い可能性の高い研究課題であるので、出来るだけ早く、胞子体世代における突然変異株の取得がなされることが期待される。
新規遺伝子発現可視化技術を利用した次世代型植物活性化剤のハイスループット探索法の付加価値創造 横浜国立大学
小倉里江子
横浜国立大学
西川羚二
これまで構築してきた次世代型植物活性化剤のハイスループット探索法に新たな付加価値を創造することを目標に研究開発を行った。本探索法の有効性は既に病害防御機能を活性化する化合物を数種単離していることから明らかだが、本研究では、植物バイオマスを増加させる化合物探索への適用可能性を検証した。今後、追試を含むより詳細な条件検討を行う必要があるが、本探索法により取得した化合物が、バイオマス増産に効果がある可能性を示唆する結果となった。また、より多角的に化合物を評価できるように、探索法そのものの改良を行った。導入プロモーター及びターミネーターの改変等を行った結果、遺伝子モニタリングのレベルを向上させることができ、より高精度な系を確立することが出来た。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、基礎実験としては達成度は十分であることは評価できる。一方、病害発生の予知法の開発などの展開が、企業化へ向けた可能性を広げると考えられるので、それらに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。企業化に向けての進捗が足りなかったと判断されるので、今後は、実際の温室等で病害発生の予知に使用可能な技術の検討が望まれる。
コンピュータビジョンによる植物の水ストレス診断法の開発 桐蔭横浜大学
佐野元昭
桐蔭横浜大学
安藤恒雄
本研究は、CCDカメラ等で定期的に撮影した画像から植物を抽出し、その形状の変化(しおれ)から植物の水ストレス状態を診断する方法の開発を目標としており、これは、植物工場における最適灌水の実現を視野に入れたものである。当初の予定では、本研究期間において、植物の形状の推定を行い水ストレス診断の基礎データを得るはずであったが、植物の葉の計測と形状の定量化が完成していない状況にある。今後の展望としては、形状の定量化を早急に完成させ、水ストレスによる葉のしおれを検出したい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、葉の重なり、位置による光の反射量の問題、平均的なしおれ状態の把握の検討については評価できる。一方、研究成果の応用展開に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、植物体の一部、例えば葉を継続的に記録し、植物の被ストレス状況をさらに詳細に把握されることが望まれる。
独自のトランスジェニックマウス作製技術の効率改善と、組織特異的遺伝子発現系への応用 東海大学
大塚正人
申請者らが独自に開発したトランスジェニック(Tg)マウス作製技術(PITT法)の効率改善と、組織特異的遺伝子発現への応用を目指し、CreをmRNAで導入すること、及び組織特異的プロモーターを用いたTgマウス作製を行った。mRNAの導入に関しては、Cre mRNAの至適濃度の検討が今後必要であるものの、導入効率の大幅な改善が示唆される予備的な結果が得られた。組織特異的プロモーターについては、Thy-1、Nephrinプロモーターを用いた発現コンストラクトを2種類構築し、Tg作製を目指した顕微注入を行った。実施期間中には、時間的にTgマウスの誕生、解析まで至らなかったが、今後Tgマウスが得られた際には、その発現パターン解析を行う。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも独自に開発したトランスジェニックマウス作製技術の効率改善と組織特異的遺伝子発現への応用を試みた結果、遺伝子導入効率の大幅な改善を示唆する結果が得られた点については評価できる。一方、組織特異的遺伝子発現への応用に関する成果は少ない事、遺伝子導入効率の改善に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。技術移転を達成するには検討すべき課題は多いが実現のための課題は明確に示されており、今後の研究の進展次第では実用化の可能性が期待される。
環境微生物群の代謝機能評価システムの開発・実用化 独立行政法人理化学研究所
菊地淳
重金属を含む食品廃棄物の処理に使用される予定である微生物群の機能解析を行うことを事例として、この技術分野での微生物機能の計測・解析を可能とし、「微生物機能の総合解析システム」の確立を図り、このシステムを実用化・技術移転することを目標としました。特に、申請者がこれまで築き上げてきたバイオマス高分子や代謝物群のような有機物群のみならず、重金属を含めた無期元素群の代謝動態評価システムを追加させることに注力しました。FSステージとしては日本が世界第六位の海洋面積を有する水産大国であることに着目し、資源量の多い水産系廃棄物を特定の土壌微生物群集で前処理することにより、有害重金属を効率良く除去できることを見出しました。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、目標の一部達成については評価できる。一方、引き続き研究開発を実施し、産学共同研究に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。基礎研究に類する内容から判断して、今後さらに幅広く研究を実施されることが望まれる。
酵母の固定化・凝集化に有用な乳酸菌の酵母接着因子の解明と利用 日本大学
森永康
日本大学
渡辺麻裕
酵母に接着して複合バイオフィルムや凝集体を形成する乳酸菌LactobacillusplantarumML11-11(以下ML)の接着因子は、乳酸菌の表層タンパク質である可能性が高いことを確認し、当該タンパク質遺伝子の取得を目的として、MLへの遺伝子導入系を新たに開発し、トランスポゾン変異株ライブラリーを作製。また、酵母のマンナン合成欠損株のMLとの複合BF形成能や凝集能を比較検討した結果、接着にはマンナンの側鎖が不可欠なことを見出した。さらに、清酒酵母のAWA1タンパク質が接着妨害作用を有することを発見した。本研究でMLと酵母の接着機構が明らかになり、接着活性を高めたり、制御したりできる可能性が高まった。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、接着因子マンナンの最適構造は明らかにしたことについては評価できる。一方、本技術はアルコール発酵以外にも、バイオフィルム形成を利用した、想定外の技術展開に発展する可能性があり、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。このような知見は直接企業化につながるものではなくても、予想外の展開を生む可能性もあり、今後も本研究開発のように成果を積み重ねることが望まれる。
高速シーケンサーによる大規模遺伝子発現データからの低コスト・迅速・ハイスループットな遺伝子探索法の基盤技術開発 明治大学
矢野健太郎
明治大学
久永忠
革新的なDNA配列解析能力をもつ次世代高速シーケンサーの普及から、有用遺伝子の網羅的な探索が加速化すると期待される。しかし、従来法では、非現実的な計算機メモリーや計算時間を要するため、高速シーケンサーから得られる大規模な遺伝子発現情報を解析できない。そこで、本研究課題では、高速シーケンサーから得られた大規模遺伝子発現情報を低コスト・迅速・ハイスループットに解析し得る技術基盤を整備する。そのために、汎用的なワークステーションでも大規模遺伝子発現情報を数時間程度で処理し、遺伝子の発現パターンと機能アノテーションの両面から、有用遺伝子を迅速に同定し得るGUI解析ソフトウェア・プロトタイプを構築する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ほぼ目標が達成されたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、既に商品化も近いと思われるので、今後の機能強化を企業と共同で、あるいは、企業に任せるという方法が望ましいと思われる。特許も取得済みであり、論文発表もされているので、あとは機能をさらに向上させつつ、実用化を進めて欲しい。
植物の根への光照射による成長促進効果の検討 明治大学
玉置雅彦
明治大学
米満恵子
研究責任者は、培養液中の小松菜の根にLEDの赤色光または青色光を照射すると、非照射に比べて生育が促進されることを見出した。そこで、小松菜では赤色光や青色光以上の生育促進効果が得られる光源色が他に存在するか、ホウレンソウとレタスでは非照射に比べて10%以上の収量増となる光源色を見出すことを目標とした。その結果、小松菜では赤色光または青色光以上の生育促進効果を有する光源色は他に無いこと、ホウレンソウでは赤色光、レタスでは赤色光と黄色光で目標を達成できることを明らかにしたので、当初の目標を達成できた。今後は、これらのメカニズムの解明、さらに多くの植物種での検討を行うことで、実用化へ発展させる計画である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、小松菜における最適照射度を決めることができ、生育促進効果のメカニズムの一端も解明した点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、葉菜類の施設園芸に展開できる可能性が高く、生産コストを低減できる可能性がある。今後は、藻類発生対策、コストの低減などの装置的な問題が解決されれば、現段階の成果においても技術移転に結びつく可能性が大きいことが期待される。
発酵を応用した高ポリアミン食品の製造技術の開発 新潟県農業総合研究所
小林和也
発酵を応用した高ポリアミン(PA)食品の製造技術の開発するために、「製造工程における食品中のスペルミジン(Spd、ポリアミンの一種)量の挙動」と「PAの増加メカニズム」の把握を目標として試験を行った。納豆等の発酵食品の製造工程・発酵工程と納豆菌の液体培養におけるSpd、アミノ酸含量及び生菌数の測定を行い、発酵工程におけるSpd含量の挙動を把握し、前駆アミノ酸を推定した。また、納豆菌の液体培養によるSpd生成量の増加方法についても検討した。当初に設定した試験を全て行い、一定の知見を得たことから、達成度は非常に高い。今後はSpdを生産する発酵微生物について、Spd生産量の増加手法を探索して、高ポリアミン食品の開発を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、目標については、概ね達成されていることについては評価できる。一方、安定的なポリアミン生産を維持するための製造工程に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、特に納豆菌および麹菌の安定的なポリアミン生産条件の確立が望まれる。
澱粉改質による新規用途米粉の開発 新潟県農業総合研究所
野呂渉
新潟県農業総合研究所
吉井洋一
半糊化米粉は、既存の米粉と異なり結着性を有し粘性が低いため、めん類の加工に適している。しかし、半糊化した精白米は微粉末化が困難であり粒度が粗くなるため、実用化の障害となっている。そこで本研究では、精白米の酵素浸漬処理や複数の粉砕機を組合せることによって、200μm以下の半糊化米粉を製造できる製粉方法の検討を行った。
その結果、半糊化した精白米をピンミル式粉砕機またはハンマーミルで粗粉砕し、その後に気流粉砕することによって目標の粒度の半糊化米粉を製粉することができた。また、半糊化した精白米は生米と異なり、水分が高いほど製粉性が劣り、粒度が粗くなることを見出した。今後は、得られた成果を基にして技術移転を図ると共に、半糊化米粉の新規用途の開発を行う予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、半糊化米粉の微粉末化技術開発の基礎的知見が得られたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、開発されたときは「米」の消費拡大に繋がり、社会還元には大なるものである。今後は、様々な条件が影響する半糊化米粉の微粉末化に関し、一つ一つ障壁をクリアされることが期待される。
低温増殖性乳酸菌による新規乳酸発酵食品の開発 新潟県農業総合研究所
西脇俊和
新潟県農業総合研究所
中島正晴
雪室で速やかに増殖する乳酸菌について、1)分離株の特定、2)雑菌増殖抑制能の評価、3)異味異臭のない発酵漬物の再現を目標に研究開発を行った。分離株はいずれもLactobacillus sakeiであったが、糖類資化性などの生理的性質が同種の標準株と異なる3種の菌株を得た。この乳酸菌株を糠床に接種して4℃で保存した結果、いずれも速やかに増殖し腸内細菌科菌群等の雑菌の増殖を抑制した。また、この乳酸菌株を野沢菜漬けにスターターとして接種し4℃で保存した結果、接種した乳酸菌株が優勢に増殖し、良食味の発酵野沢菜漬けを再現することができた。今後はこの乳酸菌株を用いて加工野菜の保存性向上技術を確立し、乳酸菌の機能を活かした野菜加工食品の開発を目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初設定された目標は概ね達成されていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、低塩ということから、安全性(有害微生物)の面についてさらなるデータの蓄積が望まれる。今後は、特に様々な有害菌に対する抑制効果について、十分なデータ蓄積をされることが期待される。
新規オリゴ糖の実用的生産技術の開発とその機能性評価 新潟大学
中井博之
新潟大学
定塚哲夫
糖質関連酵素が触媒する糖質合成反応を駆使して、これまで72種の新規糖を含む109種のオリゴ糖の生産に成功してきた。中でも生体内糖質代謝に関与する加リン酸分解酵素(ホスホリラーゼ)によるオリゴ糖生産収率は極めて高く、産業上有用な酵素になり得ることを示した。本研究では、これまで得られた研究成果を応用段階に進めるべく、安価に入手可能な天然糖質からオリゴ糖生産に有用な当該ホスホリラーゼを活用することで新規オリゴ糖に高収率変換する技術開発を行った。さらに低コスト生産が可能になった新規オリゴ糖の機能性を評価し、高機能性食品素材としての利用を検討した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、目的の一部は達成されていることについては評価できる。一方、生物活性が明確になれば、社会還元に導かれる可能性が期待でき、それらの解明に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は調製してきたオリゴ糖の微生物学的及び免疫学的評価が望まれる。
抗肥満と抗認知症作用を持つ機能性食品としてのアミノ酸誘導体、ペプチドの探索・開発 新潟大学
武井延之
新潟大学
定塚哲夫
アミノ酸であるロイシンはmTOR活性化作用を持つ。脳内でmTORシグナルが活性化すると、摂食抑制や学習の亢進を促すことが示されている。本研究ではロイシンを長期間経口摂取させ、体重変化と脳内のmTORシグナル変化を調べ、機能性食品として用いるエビデンスを得ることを目標とする。さらにロイシン誘導体やロイシン含有ペプチドでより有効性の高いものを探索する。
ロイシン摂取により体重増加の抑制作用と、視床下部におけるmTORシグナルの亢進が確認された。また培養神経細胞を用い、ロイシンよりも作用の強い誘導体、ペプチドを見いだすことができた。これらの結果よりロイシン及び派生物をダイエット機能性食品とする第一歩が得られた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。技術移転の観点からは、ロイシン誘導体とロイシンを含む候補分子が見つかっており、研究開発ステップにつながる可能性は大いにあり、社会還元につながることも期待される。今後は、動物実験において、学習に関する効果をどのようにして検証するか、具体的な計画の検討が期待される。
新規物性を持つ米デンプンの利用に向けた特性解析 新潟大学
伊藤紀美子
新潟大学
定塚哲夫
ラピッドビスコアナライザーによる解析から低粘度・低老化性などのユニークな物性が予測されるコメデンプン、Wxaおよびae/Wxaの構造と物性を詳細に解析し、工業原料・食品素材としての利用適性を探索した。
ae/WxaはWxaに対し、真のアミロース含量が高く、短鎖画分の減少・長鎖画分の増大が観察された他、A型結晶構造の消失、糊化温度の上昇が観察された。またae/WxaおよびWxaどちらのデンプン湖液においても弾性は著しく低かった。この他、ゲル透光度、強度の測定条件の検討、測定を行った。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初の目的である米デンプンの利用に向けた特性解析についてある程度の進捗は認められることは評価できる。一方、工業材料や食品素材としての利用適性が十分に検討されておらず、技術移転には製造コスト低減以外の要素が大きいことから、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後、引き続き構造解析を進めることで、構造と物性との相関についても更なる解明が望まれる。
低炭素型社会に向けた酵母による糖からの化学工業原料前駆体の発酵生産 新潟薬科大学
高久洋暁
新潟大学
定塚哲夫
2-デオキシ-シロ-イノソース(DOI)は、芳香族化合物前駆体であり、医農薬、酸化抑制剤等の化学品合成の重要な中間原料である。これまでDOI合成酵素を組み込んだ大腸菌によりグルコースからDOIを合成することに成功したが、工業スケール生産を考慮すると、大腸菌よりも酵母は、コンタミ、スケール、培養法などの点から利用価値が高い。本研究では酵母によるDOI高生産システムの構築を目指した。何種類の酵母の中でもピキアパストリスを利用し、DOI発酵生産に成功し、さらにDOI合成酵素の発現を強化、DOI合成酵素基質のグルコース-6-リン酸を細胞内に蓄積する宿主酵母の開発によりDOIの生産性を向上させた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、多くのアプローチを行ったことにより、今後の技術的課題は明確にされてきていることは評価できる。一方、本研究に関して企業との共同研究を開始しており、迅速に技術移転するための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、研究者も述べているように複数のブレイクスルーが必要であり、これにより技術移転につながることが望まれる。
温室効果ガス排出抑制型の新規低コスト脱窒システムの開発 長岡技術科学大学
幡本将史
長岡技術科学大学
品田正人
本研究開発では、下水等の低窒素濃度廃水からの低コストかつ温室効果ガスの発生を低減させた次世代窒素除去プロセスの創成を目指し、嫌気性メタン脱窒細菌を用いた新規脱窒プロセスの開発を行った。またアンチセンス技術を用いて嫌気性メタン脱窒細菌の迅速な集積も試みた。実験の結果、アンチセンス技術を用いた目的微生物の集積は上手く機能しなかったが、新たに開発したスポンジ担体リアクターを用いて、嫌気性メタン脱窒リアクターを立ち上げた結果、メタン酸化脱窒の迅速な立ち上がりを確認できた。しかし、リアクター内では微量ながら亜酸化窒素の発生が確認されており、今後は適切な運転管条件を見つけ出す事が実用化に向けて必要である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、嫌気性メタン酸化細菌の性質の一部検討については評価できる。一方、脱窒速度も目標の1/3程度であり、また亜酸化窒素の発生も認められることから、基礎的な部分からの検討が望まれる。そのため、今後、実用化に向けて更なる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
ミミズの食性を利用したバイオ燃料生産 長岡工業高等専門学校
赤澤真一
本課題では1)バイオマス分解反応産物の同定と定量、2)効率の良い糖化を目指したシナジー効果の検討、3)ミミズ含有糖質加水分解酵素群の解明を主として行った。その結果、ミミズ粗酵素は小麦フスマをグルコースにまで分解できることを明らかにし、シナジー効果の検討では当初目標である10%を上回る16%の糖化活性上昇効果を有する添加物を見出した。さらに含有アミラーゼの諸性質の解明とこれまでの研究結果・報告より、ミミズ含有酵素は低温で高活性を有するという特徴的な性質が見えてきた。従って、ミミズ糖質加水分解酵素群は、低温でのバイオマス分解や洗剤への活用等様々な用途への展開が期待出来ることを見出した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ミミズ糖質加水分解酵素群が比較的低温(20〜40℃)で高活性を有すること見出したことは、学術的のみならず実用的にも意義深い結果である。ただ、現時点では、学術的段階であり、ミミズの養殖も含めて実用性検討に関して、より多くの時間と労力が必要である。更に、研究の更なる進展や内容の充実及び進展のスピードを考慮し、今後、広く大学や関連企業と活発な共同研究が行われることが期待される。
木質系バイオマスの安定供給に向けた樹木の成長制御の獲得 山口大学
柴田勝
山口大学
殿岡裕樹
セルロース由来のバイオエタノールの生産技術の開発と比較して原材料である木質系バイオマスの安定供給に対する研究開発は遅れている。持続的にバイオマス資源を得るための研究として多種多様な環境変化に適応可能な樹木の開発が行われてきたが、今なお成功していない。このため、UV,塩,強光・乾燥のストレス負荷により樹木特異的な環境応答性の変化について、各ストレスによる詳細な生理的応答を調べた。その結果、各ストレスによる色素応答が異なり、また、それらに伴う光利用効率や阻害指標となるexcessとの関係を示すことができた(目標の60%程度)。今後の展開として、樹木特異的応答による成長量の予測が可能かについての検証などを含めた定量的評価に基づいたストレス解析を行うことで、半乾燥地で生育可能な樹木の開発を行うことによりバイオマス資源の安定供給を目指す。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、一定の基礎的知見が得られたことについては評価できる。一方、研究成果の応用展開に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが引き続き必要と思われる。今後は、樹木に対して得られたデータが実際に成長の指標になり得るかについて、さらに検討されることが望まれる。
県産バイオマスを高充填したバイオマスプラスチックとその真空成形技術 富山県工業技術センター
水野渡
富山県工業技術センター
野尻智弘
富山県産バイオマス(もみ殻)を高充填したバイオマスプラスチックの開発と真空成形技術に関する基礎的な特性把握と、大型真空成形品の試作と製品化に関する検討を行った。工業技術センターものづくり研究開発センターに導入したセルロース混合可塑化装置を用いてもみ殻粉とポリプロピレンの配合割合を変えた材料を作製しその特性を評価した。その結果、もみ殻の配合率が80%(w/w)までの材料を作製することができ、配合率が60〜70%において弾性率等物性が向上した。もみ殻粉とポリプロピレン、古米粉とポリプロピレンの材料に関して大型真空成形を行うためのシート作成と真空成形を行った。古米粉とポリプロピレンについて成形条件の確認と大型真空成形品を試作することができたが、FRPによる補強が十分にできなかった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、もみ殻の配合率が80wt%までの材料では、配合率60〜70%において弾性率等物性が向上する点、古米粉とポリプロピレンからの材料に対する成形条件の確認、大型真空成形品の試作については評価できる。しかし、基礎的な材料の限られた物性評価の段階であり、さらにより以上の具体性や明確化が求められる。今後は、更に関連企業も巻き込んだ具体的な応用展開が期待される。
農業現場にミツバチを安定供給するための女王蜂新規飼育法の開発 富山県立大学
鎌倉昌樹
富山県立大学
福井敏
ミツバチはハチミツやローヤルゼリーなどの生産だけでなく野菜・果物の受粉などに幅広く用いられている。近年、ミツバチの減少が農業における問題となっており、ミツバチのコロニーを維持するため、女王蜂の安定供給法の実用化が求められている。本研究は、本申請者が初めて見出した女王蜂のin vitro飼育系と女王蜂分化誘導因子「ロイヤラクチン」を用いて、ミツバチの安定供給のための女王蜂新規飼育法を開発する。本研究の成果が、農業現場でのミツバチの安定供給を可能とし、ミツバチが突然失踪する蜂群崩壊症候群などによるミツバチの減少への抑止につながるものと期待できる。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初の目標は一定程度は達成されたことは評価できる。一方、養蜂家、日本養蜂はちみつ協会との緊密な連携による早期技術移転に向け、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。最近のミツバチ減少現象をふまえれば、養蜂産業の振興のために今後とも研究開発を継続されることが望まれる。
新規発光プローブ蛋白質を用いた化合物ライブラリーのスクリーニング 富山大学
石本哲也
富山大学
金田佳己
発光蛋白質を用いたCREB活性化検出プローブを用いて、約200種類の化合物、植物抽出液がCREB活性化に与える影響について調査した。プローブを発現した培養細胞に化合物等を投与し、継時的に発光を計測したところ、CREBプローブの発光を上昇させるものが8種類見つかり、そのうち3種類はウエスタンブロット法を用いた実験で、CREB活性化能があることが確認された。この結果はドラッグスクリーニングにおいて本技術が有用であることを示している。当初の計画の70%程度は達成された。一方で発光量がwellごとにばらつきがあるという欠点も見られ、改善中である。今後、さらに多種類の化合物を用いたスクリーニングを計画している。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標はほぼ達成されていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、今後の研究開発計画を進めると共に、技術移転を目指した産学共同研究を模索することが望まれる。今後は、更にスクリーニング対象を拡大し、より高親和性の化合物が発見されることを期待したい。
米の加工製品開発マニュアル化とそのおいしさ評価法の確立 富山短期大学
深井康子
科学技術振興機構
渡邉博佐
近年の米粉加工品は、まず原料の白米を製粉機で粉砕することが不可欠で製粉への手間やコスト高が伴う。しかも玄米の製粉は難しいと言われている。また市販米粉は、消費者が常に再現性のある製品作りに必要な原料米の詳細な情報が記されていないためおいしさに差が生じる。この背景を踏まえ本研究は、古代米玄米を水で浸漬させたペースト生地をもとに、小麦粉100%代替にグルコマンナン添加により食感が改善できると考え、その製造技術マニュアルの作成およびおいしさ評価法の確立を目標とした。その結果、グルコマンナン添加によりパンや麺類の食味改善に有効であることが明確になり目標を達成できた。今後は、この技術マニュアルが消費者や企業に公表されることにより低コストで手軽でおいしい米加工品ができ、さらに若年層における国民的課題である米離れや食料自給率の積極的な推進にも貢献できる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、種々の実験データを示していることは評価できる。一方、本研究開発では、調理法の提示ということで、食品製造業への情報提供に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。設定した目標を解決するには、まず、どのような問題点があるのかを、今後、明確にされることが望まれる。
新規ファイトアンティシピンを用いた安全で効果的な病害防除技術の開発 金沢大学
西内巧
金沢大学
渡辺奈津子
ムギ類等の穂に赤かび病菌が感染すると、減収に加えて本菌が産生するカビ毒が食品等に混入し、人畜に重篤な食中毒等の健康被害を及ぼすことから、世界的に深刻な問題となっている。申請者らは、赤かび病菌の分生子の発芽を顕著に阻害する植物由来の新規抗菌活性物質を用いて、圃場栽培オオムギで赤かび病を効果的に防除できる技術開発を目指した。シロイヌナズナから単離した抗菌活性物質では顕著な防除効果を示さなかったが、抵抗性オオムギ系統から新たに複数の抗菌活性物質を得ることができた。今後はこれらを用いて、ムギ類で実用的な防除技術の開発を目指したい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、新たにオオムギ由来の抗菌活性成分が得られていることは評価できる。一方、本課題は基礎的データの蓄積が必要と思われるが、赤カビ病害は難防除病害の一つであり、研究開発の進展に向け技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。これまでに研究責任者は関連企業との連携に取り組まれており、今後は技術移転に直結する研究の進展が望まれる。
石川県の戦略作物「能登大納言小豆」を用いた新規機能性飲料の開発 石川県工業試験場
武春美
小豆発酵液の不快臭低減処理物を用いたレトルト食品の試作を目的に、以下の検討を行った。1)パック包装による嫌気的条件が発酵臭に及ぼす影響の検討、シクロデキストリン及び糖アルコールによる不快臭低減の検討(目標:現状の1/10程度に不快臭低減)、2)GABA含有量の向上(目標:市販のGABA含有飲料の10倍程度)、3)不快臭低減飲料のレトルト食品を1つ以上試作。
その結果、1)小豆発酵液の主な不快臭成分を1/10以上に低減できた。2)試作飲料のGABA含有量を市販の飲料と同程度に高めることができた。3)レトルト食品としてパックタイプを1種類試作した。
今後は本研究の成果を基に、小豆発酵液の飲料や食品への商品化のため、引き続き企業の支援を行っていく。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。今後は、GABA生産の際に必要なグルタミン酸ナトリウム以外の種々のα―アミノ酸についても検討することが必要と思われる。本研究責任者は、石川県の戦略作物からの新規機能性食品の開拓というテーマの研究開発に長期にわたって携わっており、種々の観点からの研究成果が集積されていると思われる。一度振り返り、成果を整理・集約した上で次にステップを考慮することが望まれる。
微生物酵素とオキサゾリン誘導体を用いた糖鎖の効率的付加技術の開発と応用 石川県立大学
山本憲二
本研究者らは従来、糸状菌Mucor hiemalisのエンドグリコシダーゼ(Endo-M)が特異的に有する糖転移活性を活用してペプチドなどに糖鎖を付加することに成功している。しかし、本酵素は元来、加水分解酵素であり、糖転移活性によって生成した生産物も分解活性によって分解される。そこで、本研究では加水分解活性を抑制し、糖転移活性を促進する変異体酵素を取得するとともに反応中間体であるオキサゾリン誘導体を化学合成し、これを基質として効率的な糖転移反応を行うことにより糖鎖の付加を試みた。その結果、活性中心付近のアミノ酸を置換した変異酵素を用い、オキサゾリン誘導体糖鎖を基質として糖転移反応を行うことにより多量の糖転移生成物を得る技術を開発した。この技術を用いて生理活性糖ペプチドの多量合成に成功した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、糖供与体となるオキサゾリン誘導体も、酵素処理と有機合成反応で簡便に取得したことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本酵素による糖鎖修飾のリモデリングや新規付加で安定性や性能が格段に向上する実用的なタンパク質などでの実用化が望まれる。今後は、糖鎖付加・糖鎖リモデリングをすることで、これまでにないほど品質が向上する対象タンパク質を見つけることが期待される。
高糖含量ウリ科果実を生産するためのシュートヒーティングの最適条件の探索 石川県立大学
加納恭卓
石川県立大学
福岡和夫
スイカ・メロンのスクロース含量を早期により大きくするためのシュートヒーテイング(枝加温)の 1)最適処理温度、2)最適処理期間を明確にしようとした。処理期間は収穫期までの連続加温が最適であることが明らかになっているので、装着個数について検討した。メロンでは、27℃と32℃に設定したシュートヒータを着果枝に装着し加温したところ、開花49日目のスクロース含量は27℃区では無加温区の1.4倍増となった。次に、27℃のシュートヒータを着果枝だけに装着した区および着果枝と主枝の2カ所の区を設け加温したところ、開花49日目のスクロース含量は1個区で無加温区の1.4倍増の含量となった。スイカでは、32℃のシュートヒータを着果節位の直下の主枝に1カ所と直下と着果節位の直上の主枝の2カ所の区を設け加温したところ、開花35日目のスクロース含量は1個区では無加温区の2倍となった。シュートヒータの装着場所、それに伴う加温温度についてさらに調査する必要がある。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標であるシュート加熱の有効性と装置の実用性の確認に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、省エネタイプのシュート加温装置とその利用技術の開発を進め、実用化することが望まれる。今後は、装置の改良とシュート加温手順の最適化を一層進め、それに続く技術移転の計画にも注力することで、この技術の成果が植物工場へ応用されることを期待したい。
超ハイスループット遺伝子検出法の開発 北陸先端科学技術大学院大学
坂本隆
北陸先端科学技術大学院大学
山本外茂男
10種類以上の異種遺伝子をワンポットPCRでハイスループットに検出することを可能とするために、シグナル分離能の高いフッ素NMRに基づくPCR検出プローブの開発を目的とした。プローブDNAにフッ素化合物を組込むため、種々のフッ素化合物を含むホスホロアミダイトモノマーを新規に開発し、有機合成的にDNAに組込むことに成功した。また、得られたプローブが相補的なDNAと2重鎖形成した場合に19F NMRのケミカルシフトを変化させることを見出し、原理的にPCR産物の検出が可能であることを明らかにした。さらにフッ素含有DNAプローブをプライマーとして用いたPCR反応が可能であることも明らかとなったことから、今後、19F NMRによる検出能を評価し、開発を進める。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、目標の一部達成については評価できる。一方、10種類以上の異種遺伝子をワンポットPCRでハイスループットに検出することが可能になれば、社会還元は大きい。今後は、フッ素ラベル剤のバリエーション拡大、ケミカルシフト変化を引き起こす原理解明、検出感度の改善、などが望まれる。
低フロック化攪拌法によるマンガンペルオキシダーゼ大量生産法の開発 福井大学
藤原伸哉
福井大学
宮川才治
糸状菌によるマンガンペルオキシダーゼ生産をスケールアップする際には、菌体が大きな集塊(フロック)を形成して生産効率が低下するという問題点がある。本研究では、菌体の増殖形態の制御方法を確立するための基礎データを取得し、生産速度を従来の2倍にあたる4 U/(mL・d)にまで増加させることを目標とした。
菌体の増殖形態に着目した検討を行うことにより、集塊の形成メカニズムを明らかにした。また、その対処法を検討したところ、マンガンペルオキシダーゼ生産速度を4.1 U/(mL・d)に増加させることに成功した。
今後は、本研究成果を基に大型発酵槽での生産条件を検討することにより、マンガンペルオキシダーゼ大量生産技術の確立を目指す。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、生産速度に関しては目標を達成していることは評価できる。一方、ある程度の進歩は見られるが生産品用途探索もこれからであり、今後さらに産学協同研究に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
高付加価値化を目指した健康食品キチンオリゴ糖の発酵製造技術の開発 福井大学
藤井豊
福井大学
青山文夫
健康食品として知られるN-アセチルグルコサミンよりさらに健康食品としての価値の高いキチン6オリゴ糖の効率的生産方法の開発を目指した。土壌細菌由来のキチンキトサンの強分解菌、フクイネンシスおよび弱分解菌による発酵法、培養上清分解法およびリコンビナント酵素分解法を試験した。その結果、重粒子線照射による変異改変を行うことなく、その培養上清分解法とリコンビナント酵素分解法により、重合度1〜20残基ほどのキチンオリゴラダーの効率的生産法を確立し、モノマー比10%を超える57%の6オリゴ糖の生産を可能にした。この方法では、十数残基からなるオリゴ糖が効率よく生産できるため、より多彩な健康食品への応用やその他の利用が見込まれる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、培養上清分解法およびリコンビナント酵素分解法によって、目的としたキチンオリゴ糖の効率的生産に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、特許を早く出願し、本研究成果の技術移転に積極的な企業を早急に探す必要がある。今後は、機能性成分としてのキチンオリゴ糖への需要は高いので、技術移転に積極的な企業の探索が期待される。
蛋白質局在比較用の多重質量イメージング用質量プローブの創製と利用 福井大学
松川茂
福井大学
青山文夫
質量イメージング法は難イオン化の蛋白質では未開の分野であるが、微量のサンプルでイメージングできることから疾病の診断・治療において大きな意義がある。蛋白質と反応する特異抗体を質量が異なり、またイオン化能が高く解離性の標識質量プローブを用いて、蛋白質に集積させ標識した後、解離処理でプローブを抗体から遊離し、レーザー照射して動植物組織の標的とする蛋白質の検出を行う。この際、研究責任者が開発したプローブを用いることで最大18種の局在と濃度を一回の計測で検出できる技術を開発する。従来法に比較し、多重性が高く一度の計測で蛋白質の存在を高感度に表示できる手法を検証し、機能性蛋白質の組織局在分析への導入を実現する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。研究責任者が実験を担当できなくなるという不測の事態で、計画した実施目標の二つを行えなくなったが、モデル化合物の合成法の確立については評価できる。一方、当初目標とした項目について、実施できない項目もあったことから、引き続きこれらの項目を行い、データを積み上げることなどが必要と思われる。質量プローブ、および、ビオチンとシスタミンとプローブを結合させる合成法が確立しており、さらに社会還元できる成果とするために、今後は、モデル化合物の合成、レーザーイオン化による実証が望まれる。
軟X線透過画像による芯食い虫のモモ被害果検出システムの開発 山梨大学
小谷信司
山梨大学
還田隆
芯食い虫は、モモ、梨、リンゴの果実を加害する。ふ化直後の幼虫の食入孔は、極めて小さく(直径0.2mm程度)、溢出して乾個した果汁が脱落すると肉眼では確認できない。さらに、虫糞を果実外へ出さないことも特徴である。本申請課題では、空洞を作成したリンゴ果実において、軟X線装置を利用して撮影したリンゴの透過画像をデジタル画像処理して、空洞部の検出を高速に実現した。果実を高分解能に撮影するためのX-Y軸移動ロボットを作成、制御を実現した。種部分の影響を排除するための回転ステージの作成と制御を実現した。さらに桃果実において位置、形状、大きさの異なる空洞を作成し、定量的なデータを取得した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、画像処理アルゴリズムに関して知見が得られていることは評価できる。一方、現場で利用できる技術にまで高めるために技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。実際に現場で解決されるべき課題で興味深いが、まだ解決すべき課題があり継続的な研究が望まれる。
植物細胞を用いた高付加価値物質製造のための基盤技術開発 山梨大学
鈴木俊二
山梨大学
還田隆
本研究開発では、植物細胞を用いた高付加価値物質の製造技術基盤を確立する。本研究開発で扱う植物細胞「ブドウ培養細胞」は暗黒下でも高い増殖力と生存力を有する。本植物細胞を、例えば、医療用タンパク質生産のための宿主細胞として社会導入できれば、高付加価値物質の生産現場における低コスト化および省エネルギー化が達成され、温室効果ガスの排出削減にも貢献する。本研究開発では、本植物細胞に遺伝子導入した高付加価値タンパク質を培地中に分泌させるシステム作りを目指す。具体的には、本植物細胞を用いた免疫エフェクターの分泌生産評価を行い、本植物細胞を用いた高付加価値タンパク質分泌生産の条件設定・課題抽出を完了する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、技術的な課題そのものは明確になったことは評価できる。一方、産学共同等の研究開発ステップへつながる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、提案には含まれていないが、ブドウに含まれており最近注目されているレスベラトロールを高濃度・効率的に生産する技術を開発されることが望まれる。
木質バイオマスの発酵熱によるハウス内暖房と二酸化炭素施肥による成長促進技術の開発 信州大学
高橋伸英
廃棄物バイオマスの有効利用と化石燃料の代替として、木質バイオマスの発酵熱を利用したハウス内暖房と発酵に伴い生成するCO2による植物の成長促進の可能性を検討した。
実験室での小規模発酵実験により、木質バイオマスの発酵速度と温度や含水率の関係を把握した。得られた発酵速度は、実際に野外温室での実験により得られた発酵速度と近い値を示し、その信頼性が確認された。また、実際の温室の設計において、バイオマスの交換時期を推定することが可能となり、加えて、温室内外の所定の温度差を確保するために必要となるバイオマスの量を推定することが可能となった。さらに、その温度差を確保しつつ、植物への成長促進に必要な量のCO2の供給が可能であることを示した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。報告書記載事項は推定のみの結果であり、化学工学の視点で見直す必要がある。一方、このようなテーマは大学側だけの研究ではなく、企業での事業改良テーマとしての技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。本研究は化学工学的な課題であり、今後、その視点での考察が実施されることが望まれる。
ナノカプセルを用いた乳酸菌由来機能性DNAの経口デリバリーシステムの開発 信州大学
下里剛士
信州大学
福澤稔
本課題の目的は、機能性DNAの経口摂取によりその作用が維持されることを証明し、機能性DNAを新たな食品や飼料素材として提案することである。はじめに、ナノカプセルに包埋した乳酸菌由来免疫刺激性DNAカプセルを作成し、次に経口的にアレルギーモデルマウスへと70日間連続投与した。興味深いことに同DNAカプセルは、コントロールDNAカプセルと比較してアトピー性皮膚炎様のアレルギー症状を著しく悪化させたが、同DNAカプセルは体内へと安定的にデリバリーされることが明らかとなった。今後は、様々な疾病に応じて機能性DNAを選択し、カプセル化した上で、経口摂取することにより生体防御へと導くことができると考えられた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ナノカプセルによる体内へのデリバリーシステム構築の可能性を明らかにした点については評価できる。一方、ナノカプセル製造技術に関して、何をカプセルに封入するかについて、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。乳酸菌由来のDNA含有ナノカプセルの経口投与によってアレルギー症状の悪化をもたらしたことは、目標とは逆の結果となった。ナノカプセル製造技術は産学共同の研究開発ステップにつながると考えられるが、今後は、何をカプセルに封入するかについて検討されることが望まれる。
濃厚豆腐廃液から大豆イソフラボン組成物を製造する技術の開発 信州大学
中村浩蔵
信州大学
福澤稔
本技術開発では、大豆煮汁廃液の有効利用と廃水処理のためのモデル実験として、凍り豆腐製造過程で排出される濃厚豆腐廃液から大豆イソフラボン組成物を製造する技術を開発し、未利用物からの有用物質回収と廃水処理とを同時に可能にすることを目的とした。濃厚豆腐廃液を適宜処理することによって、大豆イソフラボンを豊富に含む組成物を得ることができた。得られた組成物は、無味無臭の乳白色粉末であり、食品素材や各種添加物として利用できると考えられた。また、組成物を除いた廃液のBODを目標通り削減することができた。これらの研究開発成果によって、濃厚豆腐廃液を産業的に有効利用できる可能性が示された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目的物の製造法に関する課題は明確になっていることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、特定保健用食品の開発が実現すれば、社会還元は可能となる。今後は、本組成物を血圧低下作用物質として利用する場合、既存の同物質に比べての優位性が不明であるので、さらなる検討が期待される。
鳥インフルエンザ特効薬の製造原料となるシキミ酸を糸状菌から製造する方法の妥当性の検証 信州大学
小嶋政信
信州大学
福澤稔
簡易型手動試料破砕機を用いてキノコ菌糸を破砕したのち、有機溶媒と水を用いて、菌糸が含有する一次代謝産物を抽出する最適方法を検討した結果、実験室レベルでの簡易抽出法が確立できた。さらに一般に普及しているHPLC分析システムを用いて、キノコ菌糸から抽出したシキミ酸の最適定量条件を確立することに成功した。本抽出・分析法を用いて、キノコ菌糸に与える光刺激条件を変えた際のシキミ酸蓄積量の増減を測定した結果、キノコ菌糸に光刺激を与えてシキミ酸生合成量を増加させる本技術は、トウシキミからの抽出法と比較して、シキミ酸の新規製造方法として妥当であるとの結論に達した。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、当初の目的は達成されて、国際特許を出願していることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、シキミ酸は国内外において鳥インフルエンザ特効薬であるタミフルの製造原料となることから、安価な大量製造法の開発が望まれる。今後は、大規模製造が可能な手法を開発し、早期に技術移転されることを期待したい。
赤ワインポリフェノールの簡便な合成と応用 信州大学
真壁秀文
信州大学
福澤稔
赤ワインに含まれるカテキンやエピカテキンのオリゴマーの合成を行った。銀をルイス酸に用いた縮合反応において4量体では収率は41%、5量体では50%であった。実用化までには80%の収率が必要であるので条件の最適化に課題が残った。ただ、カテキンの4, 5量体の合成は初めての例である。一方、エピカテキンの場合は4量体合成の前段階として3量体の合成を行った。ルイス酸としては希土類ルイス酸のYb(OTf)3を用いると収率57%で縮合物を得た。また4量体の合成では収率は30%であった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目的化合物の合成の達成に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、社会還元が期待されるため、本研究開発の実用化が望まれる。今後は、生成収率の改善に関する数値目標の達成を期待したい。
リファンピシン耐性およびRPOB遺伝子変異を指標にした抗菌物質高生産性乳酸菌の開発と新規抗菌物質の検索 信州大学
稲垣秀一郎
信州大学
福澤稔
食用微生物により産生される有用成分は、安全性が保証されていることから機能性食品素材として幅広く利用されている。しかし、生産性が低いことから安定的な供給はまだ達成されていない。今後このような状況を打開するには、微生物による二次代謝産物の生産能を向上させることが不可欠であるため、本研究では放線菌で見出された育種技術を乳酸菌に応用し、バクテリオシンを高生産する乳酸菌の開発を目指した。本研究期間までに、取得したリファンピシン耐性株(100株)の中から、抗菌活性を向上させた12株を選抜し、またそのうち、ナイシンA生産性の向上させた菌株2株を選抜した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、次のステップに進むための技術的課題は明確になっていることは評価できる。一方、その課題の解決に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。抗菌活性の高い菌株は取得されているので、今後は、抗菌物質の同定や、課題解決のための計画の明示が望まれる。
栗殻で作成した菌床でキノコを栽培する技術の開発 岐阜県森林研究所
久田善純
岐阜県森林研究所
水谷嘉宏
岐阜県東濃地域を中心に食品加工残渣として発生する栗殻を、キノコ菌床栽培の材料として有効利用するために、栽培技術の確立と、地域の農家等に示す栽培指針の作成に取り組んだ。結果、栗殻を排出時の状態のまま袋詰めして殺菌するだけの簡易な方法で作成した菌床が、ヒラタケ、シイタケ栽培に利用できることを確認し、ヒラタケについてはパイプハウス内にて秋季の自然温度を利用して発生管理・収穫ができることを実証した。また、菌床重量に対するキノコの収穫重量の比率を15%とする数値目標については、ヒラタケ栽培では下回ったが、シイタケ栽培では上回った。今後は、地域内の農業関係者等に、この技術を試行してもらい、実用化に向けた諸条件を探索していく。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、外部からも高い評価を得ていることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、企業向けのコスト計算等のデータを提示することが望まれる。栽培技術の数値目標についてシイタケ栽培で達成しているので、今後は、地域内の農業関係者等へ、技術移転及び実用化に向けた取り組みが期待される。
農場サイドで完結する家畜のクラミジア性流産診断法の開発 岐阜大学
大屋賢司
岐阜大学
安井秀夫
本課題では、家畜(羊・牛・豚)に流産を引き起こすクラミジアの診断法について、LAMP法の樹立を試みた。LAMP法は、これまで専ら行われているPCR法に比べ、1)反応が短時間で終了する、2)産物を目視できるため、モニタリング専用の機材や電気泳動を必要としない、等の利点があり、家畜生産の場で日常的に使用するのに適している。動物の流産などの疾病の原因となるクラミジアの中でも、一般的に最も病原性の強いとされるオウム病クラミジア特異的LAMP、およびこれらクラミジアを共通に検出するLAMPの2種類を樹立することができた。いずれの系も感度・特異性・反応時間ともに従来のPCR法よりも優れていた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、LAMP法を利用した診断法の樹立に向け、検出感度、特異性、反応性において十分な成果があげられたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、農業生産性を考慮すると、本手法の実用化は社会的還元性も大きいと評価される。家畜に対するクラミジア感染診断に向け、従来法に代わる簡便かつ正確な技術が開発されたものと評価でき、今後の技術移転が期待される。
病害と害虫あるいは線虫を同時に防除する新規な生物防除技術の確立 岐阜大学
百町満朗
岐阜大学
安井秀夫
本研究は病害と害虫あるいは線虫の両者に卓効を示す生物防除エージェントを用いた新規生物防除技術の確立を目指したものである。本研究の結果、昆虫病原菌として知られるB. thuringiensisの亜種の中に、植物の難防除病害として知られる青枯病を抑制するものがあることを見出した。また、同様に線虫病原菌として知られるB. thuringiensis CR371やStreptomyces avermitilisも青枯病を抑制することを見出した。さらに、殺虫用微生物農薬であるブリファード(Paecilomyces fumosoroseus)、ゴッツA(Paecilomyces tenuipes)、ボタニガードES(Beauveria bassiana)も青枯病に顕著な抑制効果を示した。病害と害虫あるいは線虫の両者に卓効を示す生物防除エージェントを用いた新規の生物防除技術は、生物防除の新たな展開を示唆している。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標は概ね達成されていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、圃場レベルでの処理方法、長期栽培での抑制効果、抑制効果の安定性を検証することが望まれる。今後、病害と害虫あるいは線虫を同時に防除する新規な生物防除技術の確立が期待される。
ダイズイソフラボン分解菌のO-DMA代謝系の解明 岐阜大学
鈴木徹
岐阜大学
馬場大輔
ダイズ中に含まれるイソフラボンは、主にGenisiteinとDaidazeinである。これらは更年期障害の緩和、骨粗鬆症 乳がんの予防効果等が期待されている。当研究室ではDaidzeinを基質にO-デスメチルアンゴレシン(O-DMA)に変換する微生物(SY8519株)をヒト糞便より単離し、ゲノム解析を終了している。本研究はDaidazeinの変換能に関わる遺伝子群を特定し、これらの生合成メカニズムを明らかにすることを目標としている。
O-DMA生産に関連する遺伝子の特定を行うため、O-DMA生産菌と非生産菌との比較ゲノム解析により数種類の候補遺伝子の選定を行った。
 現在、候補遺伝子をクローニングし、Daidazeinの代謝遺伝子であるか否かの判断をする方法を確立したところである。今後はこの方法に則して候補遺伝子を順次クローニングし、活性の有無を確認していく予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、基礎的研究は行われ、成果発表が3件ある点については評価できる。一方、今後の研究開発計画や将来の展開に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。将来への展開がやや不明確であり、知財を構築するに至っていないのはマイナス面であるので、今後はそれらを構築されることが望まれる。
牛丘疹性口炎の携帯型遺伝子診断キットの開発 岐阜大学
猪島康雄
岐阜大学
馬場大輔
牛丘疹性口炎の診断を、農場内だけで完結させるための携帯型遺伝子診断キットの開発を目的とし、【1】病変部組織から抽出した粗精製DNAからウイルス遺伝子を検出できるLAMP法用新規プライマーのデザインを試みた。【2】携帯型遺伝子診断キットの開発を試みた。
63〜65℃30分〜1時間の反応条件で牛丘疹性口炎ウイルスを検出できるプライマーを見いだすことに成功した。遺伝子増幅反応に用いる小型恒温維持装置を作製し、農場内に持ち運びできる携帯型遺伝子診断キットとして、必要な器具一式を1つのプラスチックケースにまとめた。遺伝子増幅用の「電源を必要としない」恒温維持装置の開発を試みたが、再現性のある結果が得られなかったため、今後の検討が必要である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、標的ウイルス検出のプライマーを見いだすことに成功したことは評価できる。一方、産学共同の研究開発ステップに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、本課題のコア技術が未解決で残されたままであり、これらの解明が望まれる。
廃棄タンパク質を有効活用した新規セルロバイオマス糖化技術の開発 沼津工業高等専門学校
蓮實文彦
静岡大学
伊藤悟
本研究は、廃棄物であるペーパースラッジ( PS )に含まれるバイオマス資源であるセルロースを酵素(セルラーゼ)にて糖化する反応に、現在は用途がなく廃棄されているタンパク質を添加することにより、酵素の活性を高め、その効果から酵素コストの低減を目指した。研究目標では、タンパク質添加により酵素活性を5倍に上げることを目指したものである。研究の結果、セルラーゼが低濃度の場合でタンパク質添加効果が大きく、セルラーゼ濃度 0.1(w/w) %とした場合では、ポテトプロテイン濃度1.0 g-protein/L の添加により糖化効率は 4.7 倍となった。また、同様の実験をホエータンパク質で行った場合でもセルラーゼ活性の増大が観測され、セルラーゼ濃度 0.1(w/w) %とした場合では、ホエー濃度0.4 g-protein/L の添加により糖化効率は 5.9 倍となった。得られた成果は、当初の目標をほぼ達成した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の2つの目標についてほぼ達成していることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、プラントメーカーと具体的に共同研究の実施が望まれる。今後は、具体的にメーカーとの共同研究へ進むための検討を実施して欲しい。
新規白色LED照明を用いた収穫後の青果物におけるビタミンC保持技術の開発 静岡大学
加藤雅也
ブロッコリーは、収穫後、急速にビタミンC含量が減少し、鮮度が損なわれる。これまで、青色LEDを用いた光照射により、収穫後のブロッコリーにおけるビタミンC含量が減少する、一方、赤色LEDを用いた光照射により、ビタミンC含量が保持されることが明らかとなっている。しかし、青色や赤色などの単色光は、青果物の外観の色や鮮度を見分けることが難しく、ショーケースや冷蔵庫の照明としては不向きである。本研究では、収穫後のブロッコリーに、青色光を低減した新規の白色LEDを用いた光照射により、ビタミンCが保持されるか調査を行った。また、ビタミンC保持のメカニズムを明らかにするために、関連遺伝子の発現を調査した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標は達成されていることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、基礎研究から応用研究への橋渡しとなる成果が得られている。今後は、企業と密接に連携して、研究成果の実用化を早期に実現されることが期待される。
家畜受胎率向上を目的とした「リラキシン関連因子」のカイコ発現系を用いた大量発現・精製方法の確立 静岡大学
朴龍洙
静岡大学
橋詰俊彦
欧米諸国を含め我が国の肉用牛と乳用牛の初回受胎率は年々低下し続け、乳肉及び加工食品の安全・安定供給を脅かす危機的な状況である。研究責任者らは精巣由来のリラキシン関連因子(RLF)が雄側の生殖機能向上に極めて有効であることを見出したことから、本研究において極微量しか存在しないRLFをカイコで大量生産することを目指した。本研究では、カイコに遺伝子を導入し、大量発現を行い、アフィニティ精製法と従来のイオン交換-ゲル濾過法を用い純度98%以上のRLFを得た。しかし、RLFの生物活性は、ヒトのRLFに比べcAMP産生刺激が弱いことが判明した。この原因として、RLFがカイコの脂肪体に貯まってしまい、タンパク質のミスフォールディングが起こり、生物活性が低下したと考えられる。今後の課題として、カイコの分泌システムの構築が挙げられる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、様々な精製方法を駆使し高純度の目標物質を得ることが出来たことは評価できる。一方、引き続き地道な研究開発が継続されれば、社会還元の可能性は高まるので、継続した技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、カイコ自体の分泌系の再検討も含む研究開発を継続されることが望まれる。
低電圧Short-stripろ紙電気泳動法によるヒスタミン簡易検出装置の開発 愛知学泉大学
小栗重行
(財)名古屋産業科学研究所
羽田野泰彦
食品中のヒスタミン(HA)を簡易検出するShort-stripろ紙電気泳動装置を考案し、開発を行った。ろ紙片(幅:2mm×長さ:4.1cm(有効長:1.1cm))の一端にHA検出用呈色試薬2,3-naphthalenedicarboxaldehyde(NDA) を塗布した電気泳動用支持体を用い、陽極電解槽にHAを含む酸緩衝液(pH 6)、陰極電解槽にHAを含まない緩衝液のみを用い、印加電圧24-100 Vで泳動を行った。その結果、10 ppm HA溶液が45-60分で目視にて確認できた。次に、マグロなど鮮魚を用いた実証試験で50 ppm HAが簡易検出できることが確認できたが、試料中に含まれるヒスチジン(数万ppm)の影響を完全に取り除くまでには至らなかった。最後に、ボタン電池でも駆動する手の平サイズのモバイル型装置を作製し、実証試験でも使用可能であることが確認できた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ろ紙とサイズの最適化、電圧−時間の検討、試薬塗布条件など有効性の検証がなされたことについては評価できる。一方、試作機が改良されていく段階における技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、食物に存在するヒスチジンにも反応する欠点があるので、両物質を区別する試薬の合成、半定量性の確立が望まれる。
乳酸菌を活用したオカラの再資源化技術の開発 あいち産業科学技術総合センター
日渡美世
あいち産業科学技術総合センター
齊藤秀夫
豆腐・豆乳製造時に副生するオカラは腐敗しやすいため、多くは産業廃棄物として処分されている。乾燥機を導入できない中小規模の豆腐製造企業では、毎日の回収コストが負担となっているため、低コストで導入可能な、保存性向上と有効利用を可能とする技術の開発が強く求められている。本研究では、乳酸発酵技術の導入について検討した。まず、オカラにおける増殖能と酸生成能に優れた、オカラ用乳酸菌スターターを二種類開発した。次に、中小企業で導入可能な簡便な発酵システムを確立し、屋外での長期保管を可能とした。更に、乳酸発酵オカラの微生物的な安全性、栄養価、機能性成分の評価を行うことにより、食品素材としての安全性と有用性を示した。今後、食品素材、飼料素材としての付加価値向上が期待できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に菌株の組み合わせで混合乳酸菌スターターを開発し、その発酵技術の開発をするとともに、開発された方法は飼料への利用の可能性を示し、低コストで実用性の高い手法であった点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、食品資源の有効利用と廃棄物の排出抑制などでの実用化が望まれる。今後は、多様な事業所に導入するための発酵試験とデータ等を蓄積することが期待される。
豆類加工廃液に含まれるタンパク質のリン酸カルシウムによる効率的回収技術の開発と回収タンパク質の活用 あいち産業科学技術総合センター
石原那美
あいち産業科学技術総合センター
齊藤秀夫
豆類の加工工程で排出される大量の浸漬水や煮汁は、豆類由来のタンパク質、糖類、有機酸などの有用成分が含まれているにも関わらず、大部分が廃液として処理されている。そこで本研究では、申請者らが開発したタンパク質高吸着性リン酸カルシウム(CAP)を用いて、豆類加工廃液(小豆煮汁)からタンパク質を効率的に吸着回収する技術を開発した。CAPの選択や吸着条件の最適化を図り、小豆煮汁から72.9%のタンパク質を吸着回収することに成功した。CAPからの回収物に、アンジオテンシン変換酵素阻害作用や抗酸化作用を持つ成分が含まれていることを明らかとした。今後、これらの機能性成分について詳細な検討を進めることで、小豆煮汁の新規食品素材開発が期待できる。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、タンパク質高吸着性リン酸カルシウムによる吸着が可能であることが確かめられていることは評価できる。一方、今後の展開としては、コスト計算に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。タンパク質の有用性は高いかもしれないが、実用化へつなげるためには、今後、脱着手法等についてのエンジニアリング研究の実施が望まれる。
高精白白糠を利用した麹液化仕込法による新規単発酵酒の開発 あいち産業科学技術総合センター
伊藤彰敏
あいち産業科学技術総合センター
齊藤秀夫
愛知県産酒米「夢山水」から産生する高精白白糠を原料とし、焼酎麹を利用した麹液化仕込法を導入した新規単発酵酒の開発を目標とした。高精白白糠は、50ミクロン以下の糠粒子が全体の71%を占める糖質リッチなでんぷん素材で、でんぷんの糊化割合が高いため、酵素反応を利用する液化仕込原料として適していることが分かった。麹液化仕込の仕込配合について、液化物のBrix、酸度及び呈味性の観点から精査し、汲水歩合、麹歩合及び糖化酵素添加量を決定した。高精白白糠の麹液化処理スキームを利用し、発酵試験を実施した結果、アルコール5%、酸度5mLで甘味と酸味のバランスのとれた新規単発酵酒を開発することができた。製成酒の機能性評価を加味し、製品化を今後の課題とする。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、高精白白糠を利用する目標は達成されていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、資源の有効利用商品として価値があり、実用化が望まれる。今後は、一層の品質向上を図り、また販売戦略なども考慮されて商品化されることが期待される。
新規な抗体産生動物の開発 愛知県水産試験場
能嶋光子
(財)名古屋産業科学研究所
羽田野泰彦
本提案課題では、水泡眼が今後有望な免疫動物となるかどうか、その可能性を確認することを目標とし、1)水疱内液中IgMの特定抗原に対する免疫獲得、2)水疱内液由来IgMによる蛋白質定量系の確立、3)水疱内液由来IgMを用いた抗体医薬の可能性について検討した。
その結果、水疱内液中に免疫を誘導するためには、水疱内に直接抗原を接種するのが最も効果的であること、作成された抗体を用いて抗原となる蛋白質の定量が行えることを明らかにした。また、水疱内液由来IgMを用いた抗体医薬については、腹腔内投与によりその効果を確認した。今後は、産生されるIgM量を増加させる、長期にわたってIgMを回収する技術の開発、投与する抗体の体内の取り込みについて検討を進めていきたい。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、所定の実験計画を完了し、目的の結果を得ていること、および、免疫には水疱中への抗原投与が最適であり、ウエスタンブロット特異性やELISA定量性など、検出試薬として哺乳類の抗体に劣らない品質の抗体が、個体差なく調製できることが明確になったことは評価できる。品種として純系であるためか個体差なく免疫できるのがよい。一方、技術移転の観点からは、抗原量・免疫スケジュール・アジュバントなどによる最適化は必然の展開である。15年生きるとされているが、その間の抗原生産の安定性など採取スケジュールの検討が望まれる。飼育施設も簡便で閉鎖系であるので、今後、検出試薬用抗体を提供する事業として広く展開されることが期待される。
半円形水槽を用いた大型藻類の高効率培養システムの実用化に関する研究 中部大学
行本正雄
中部大学
粟野洋司
本技術は、火力発電所等から大量に排出されるCO2を高効率に藻類の人工増殖に利用するため、最小のエネルギー消費で、藻類の増殖率を最大にする培養槽の設計と攪拌技術に関するものである。従来の培養槽は、複数の池を循環する多段方式、機械式攪拌を利用したレースウェイ方式が主であった。そのため、収率が悪く、多くのエネルギーを消費するという問題があった。半円弧型水槽の深さ方向の光透過度、藻類密度の測定技術を確立し、あわせてCO2ガスの水槽底部からの吹き込みと水槽内のpH監視システムを開発することにより藻類収率の向上を図った。今後は実用化を図るため、大型プラントの建設と大型藻類の燃料化技術開発に特化する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、藻類培養に必須の光透過特性、撹拌特性の把握に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、実証または実用化の計画の進捗が望まれる。今後は、エネルギー消費の少ない大型藻類培養装置の開発に有用な設計条件を、モデル物質等を用いた実験による取得が期待される。
「原因除去型」の糖尿病予防食品を目指した「ショウガ成分」の配糖体化技術の開発 中部大学
津田孝範
中部大学
山本良平
研究責任者は「ショウガ」から、糖尿病の予防・抑制に有効な成分を見出している。しかし、この化合物は水に難溶、酸化しやすい、強い辛味・刺激味を持つなどの問題がある。本研究開発は、これらの解決のため、食品用酵素を用いて当該成分の配糖体を合成する技術を開発し、実用的な素材を創出することを目標にした。研究開発の結果、食品用酵素と糖供与体、反応条件を組み合わせて合成技術を開発し、配糖体化物を得ることに成功した。さらに得られた配糖体化物の化学構造についても明らかにすることができた。今後は実用化に向けてスケールアップと収率の向上、配糖体化物の機能発現の確認を行う予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、配糖体化の最適条件を見つけ、特許出願を検討中であることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、6−ジンゲロール、6−ショウガオールの配糖体の収率を高める具体案の検討が望まれる。今後は、脂溶性の6−ジンゲロール、6−ショウガオールの配糖体化の高収率化の条件の確立や、配糖体の生理機能の検討が期待される。
国産イチゴ安定供給のための画期的な花芽分化検定法の開発 中部大学
山田邦夫
中部大学
杉山聰
本研究の目的は、イチゴの葉において花芽分化時に発現している遺伝子・タンパク質を特定することである。イチゴからFTとTFL1ホモログを単離し、mRNA発現パターンを調べた結果、FaFT1が長日条件の葉のみで発現しており、FaTFL1は長日条件、短日夜冷条件ともに処理期間通して発現していた。次に、イチゴにおける花芽分化に関わる遺伝子群の網羅的発現解析をおこなった結果、AP1の発現が短日夜冷35日目のクラウンで増加することが明らかとなった。また、ジベレリンを不活性化するGA2OXの発現がAP1の発現上昇と同じタイミングで上昇しており、ジベレリン代謝変化がイチゴの花芽分化に関わることが示唆された。今後は、AP1を花芽分化検定の指標にする具体的方法と、葉において発現している新たなマーカーの探索を並行して進めて行く必要がある。 当初目標とした成果が得られていない。中でも当初予想していたFT関係の遺伝子が、イチゴでは花芽形成とは関係していない点での技術的検討や評価が必要である。イチゴの花芽分化に関する遺伝子発現は複雑であり、今までのモデル植物での知見に一致しない面が多く、花芽分化検定キットへの応用に向け、今後、更に多くの研究者を取り込みながら幅広く研究されることが望まれる。
有機ハロゲン汚染土壌浄化のための新機能微生物の創成 豊橋技術科学大学
吉田奈央子
豊橋技術科学大学
田中恵
本課題は、有機ハロゲン汚染土壌浄化のための微生物浄化剤の開発を目指すものである。既存製品は、1)意図せず存在する未知微生物を含む混ざりもので、2)悪臭物質であるプロピオン酸などの低級脂肪酸や可燃性のメタンを発生する問題があった。本研究では、有機ハロゲンを還元的脱ハロゲン化する微生物を純粋培養物として分離・獲得したとともに、これらを混合・再構築することにより、土壌汚染対策法規制物質である塩素化エチレンおよび塩素化エタンを、エチレおよび二酸化炭素へと悪臭物質の産生なしに無毒化することが可能であることを示し、新たに特許出願を果たした。今後は、浄化剤の実用化を目指し民間企業との共同浄化試験を予定している。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、脱ハロゲン化酵素遺伝子の異種発現という世界中が挑戦している課題として期待できる。一方、技術移転の観点からは、十分な成果は得られており、企業との共同研究や他の公的ファンドへの申請が期待できる段階である。新機能の微生物は得られていないものの、新たな脱ハロゲン微生物やコンソシアを得ており、今後の応用研究が期待される。
微生物を触媒としたグラフェン流動性電極を用いたバイオマス電気生産 豊橋技術科学大学
吉田奈央子
豊橋技術科学大学
田中恵
本課題では、自然環境から選択的に酸化グラフェン還元微生物を集積培養することで、細胞外電子伝達細菌、つまりは電流生産菌を導電性物質であるグラフェン上に選択的に集積する技術を開発した。このグラフェン-酸化グラフェン還元微生物複合体(以下、G-GORB複合体)は自己凝集する電流生産の場且つ電極として作用するため省容積な微生物燃料電池として期待できる。本年度は、10mM酢酸ナトリウムを添加した場合で陰極に白金またはステンレスワイヤーを用いた場合で6mW/Lの出力を得た。今後、電子供給源をさらに高分子かつ高エネルギーな物質に置き換えることで、さらなる電力生産力の向上に取り組む。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、目標の達成、及び、今後の課題や目標も明確であることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、複数の企業とそれぞれ並行して共同研究する場合、困難なことが伴うかもしれないが、ぜひ実用化して欲しい。今後、産学連携によって研究開発が促進されて、企業化できる可能性は高いと考える。また、知的財産権については専門家にある程度任せることによって、研究開発がうまく進むと思われる。
RNAを利用した新奇衛生害虫防除法の開発と応用 名古屋大学
新美輝幸
(財)名古屋産業科学研究所
羽田野泰彦
害虫の生存必須遺伝子由来の二本鎖RNAを害虫に摂食させることにより、速効的な摂食停止と致死に至ることを発見した。本研究開発ではRNA農薬の実用化に向けたデータの取得を行った。広範な害虫種においてRNA農薬の有効性を証明するため、衛生害虫である3種のゴキブリから生存必須遺伝子をクローニングし、RNA農薬による防除効果を検討した。次に、各種害虫から得られた生存必須遺伝子の配列比較により、単一の標的害虫への特異性あるいは複数種に対する選択性は、自在に設計可能であることを示した。さらに、RNA農薬はナノ・グラムという極微量でも有効であることを明らかにした。今後は、本開発結果をもとに産学共同の研究開発を実施する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、衛生害虫であるゴキブリ3種において有効性のある殺虫効果に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、当初の予定のようにダニ類やシロアリにも展開する必要があることが明確となった。技術移転の具体的方策も検討されており、RNAサンプルを企業に提供してのパイロット試験が期待される段階であり、今後、投与方法に依存せず、低濃度で効果のあることが証明されたRNA農薬などでの実用化が望まれる。
脱塩素菌の芳香族一塩素化合物脱塩素活性の制御要因に関する研究 名古屋大学
鈴木大典
名古屋大学
安田匡一郎
嫌気条件下での脱塩素菌による芳香族一塩素化合物の内のモノクロロフェノール類に対する脱塩素活性の制御要因の解明および未知脱塩素菌の特定についての検討を行った。モノクロロフェノール類の内の3-クロロフェノール(3-CP)に対する脱塩素菌の電子供与体として水素、ギ酸塩または乳酸塩が最適であることを明らかにした。さらに、3-CPに対する脱塩素菌がDesulfomonile属の新種であることも明らかにした。今後、本研究で扱った培養物から脱塩素菌を分離し、分離菌株によるポリ塩化ビフェニル等に対する脱塩素活性を調べて微生物特許を取得し、実用的なバイオレメディエーション技術開発へ研究を展開させる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、モノクロロフェノールを脱塩素化する嫌気微生物群の集積培養物の取得と属レベルでの同定が行えている。また、それらの最適培養条件などに関する情報に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、脱塩素・分解速度の問題点を解決することが望まれる。援用技術としてPCBの脱塩素化技術への展開を提案しているが、競合する化学的処理技術との差別化が期待される。
DNAスポンジの資源・環境技術への応用 名古屋大学
村田静昭
名古屋大学
押谷克己
DNA―キトサン複合体をDNAスポンジとして、有害物質を沈澱除去する研究を実施した。このDNAスポンジは、量子ドット、カーボンナノチューブなど様々なナノ物質を水溶液中から高効率で除去できた。その結果、DNA-凝縮剤組み合わせは、「第1世代のDNAスポンジ」として多様な汚染物質の除去への実用化を目指したステップに進められることを確認した。DNAをゲル化すると、物質を吸着したDNAを水溶液から簡便に分離できた。DNAゲルは、「第2世代のDNAスポンジ」として貴金属やレアメタルなど有価物質のイオンを効率よく吸着することを見出した。今後、スポンジとしてする低いグレードのDNAの供給に関する研究および第2世代のDNAスポンジによる有価物質の回収に関する研究を進める。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に第1世代のDNAスポンジは、水溶液中ほとんどの汚染物質や有用資源を除去・回収するための基本材料となることが実証できたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、スポンジとして利用するために適当な純度や成分をもったDNAおよびキトサン等の資材を大量かつ安価に供給する手段を確立することが望まれる。第2世代のDNAスポンジに関しては、さらなる研究の継続が望ましい。今後は、第1世代の開発進展に向けて、適当な純度や成分をもったDNAおよびキトサン等の資材を大量かつ安価に供給するための共同研究が期待される。
人工塩基対形成を利用した高感度モレキュラービーコンの開発 名古屋大学
樫田啓
名古屋大学
渡邊真由美
本申請では、高感度な核酸検出をめざし、1)水溶液中でのS/B比(=標的核酸の有無での蛍光強度の変化)=100 2)検出下限濃度が1 nM を実現するモレキュラービーコンの開発を目指した。蛍光色素と消光色素を複数導入するマルチペア型を用いることによって、世界最高感度(S/B比 = 571)を達成した。更に検出下限濃度を検討したところ、目標以下の200 pMまで検出可能であることが分かった。また、消光色素を複数導入したマルチクエンチャー型についても検討を行った。その結果、消光色素を一分子のみ導入したモレキュラービーコンと比べ、S/B比が二倍以上向上することが明らかとなった。これらのことから、核酸検出の超高感度化という本申請の目標を達成することが出来た。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、検出限界1 nMよりも、大幅に高感度な200 pMの核酸検出に成功していることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、バイオテクノロジーのツールとして遺伝子解析や病原体の特定など幅広い用途での実用化が望まれる。今後は、細胞内核酸イメージング、検出感度の更なる向上、DNAマイクロアレイへの応用、細胞内イメージングへの展開が期待される。
時計タンパク質KaiBによる温度依存的な酵素活性の制御 名古屋大学
村上怜子
名古屋大学
渡邊真由美
時計タンパク質KaiBが、高温ではKaiCに高い親和性で結合し、低温では結合親和性が下がることを利用して、KaiBを目的タンパク質のサプレッサーに融合させ、温度依存的に目的タンパク質の活性を制御することが目標である。好熱性藍色細菌T. elongatusのタンパク質を用いることで、広い温度範囲で温度依存的にKaiB-KaiC複合体形成が行われることを示した。温度依存性を失った変異体KaiBの解析、KaiB-KaiC間の相互作用部位の探索を通して、温度依存的に結合親和性の変化をもたらす分子機構の手がかりを得た。今後、遺伝学的解析や構造学的解析により温度依存的な結合親和性の変化をもたらす分子機構を解明し、目的タンパク質の活性を温度依存的に制御する機構の確立を目指す。 当初目標とした成果が得られていない。中でも、時計タンパク質の複合体形成率が温度依存性であることを検証する点での技術的検討や評価が必要である。今後は、時計タンパク質の複合体の構造変化も特定する必要があることが分かったので、これらの解明が望まれる。
高等植物における油脂合成系制御遺伝子と時計遺伝子の操作による油脂生産性の相乗的な増強法の確立 名古屋大学
小内清
名古屋大学
渡邊真由美
近年バイオ燃料が注目されており、植物や藻類の油脂生産性の増大が重要課題となっている。本研究では、高等植物における油脂合成系制御遺伝子と生物時計遺伝子の双方を操作することで、油脂生産性の相乗的な増大を目的とした。モデル高等植物シロイヌナズナで油脂合成系を正に制御する遺伝子を過剰発現させ、さらに生物時計遺伝子に機能欠損変異を導入した二重操作株を作出した。その結果、二重操作株では、油脂合成系の律速因子の一つである指標遺伝子の発現が、野生型と比較して2.2倍に、油脂合成系制御遺伝子の過剰発現と比較しても1.2倍に上昇していた。現在、これらの結果が実際の油脂生産量に反映していることを確認している。今後、知財を確保し、緑藻類やナタネなどを用いた応用研究に発展させて実用化を目指したい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、目標の一部達成については評価できる。一方、今後の応用研究次第ではバイオ燃料の効率的生産という社会還元につながる成果が期待されることから、引き続き技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、技術の価値や技術移転の確度を高めるために、実際のバイオ燃料生産に使用される植物へ展開する技術のプラットフォーム性の付与が望まれる。
生物時計変異株の葉緑体を用いた有用物質の大量生産系の開発 名古屋大学
松尾拓哉
名古屋大学
渡邊真由美
本研究は緑藻の葉緑体を有用物質生産のプラットフォームとして利用するために、葉緑体の遺伝子発現の活性が恒常的に高くなっている概日リズム変異株を探索した。モデル生物として単細胞性の緑藻であるクラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)を用いた。葉緑体遺伝子のプロモーターの制御下でレポーター遺伝子であるルシフェラーゼを発現させ、概日リズムの変異株におけるレポーター活性を調査した結果、レポーター活性が恒常的に高くなっている変異株を発見した。これらの変異株は、緑藻の葉緑体における有用物質生産のプラットフォームとしての利用が期待される。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、遺伝子発現についての数値目標は達成されたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、特定の有用物質生産への展開を意識した研究開発を実施することが望まれる。今後は、他の緑藻への展開が可能な技術の構築や、高遺伝子発現株や発現制御技術の知財化が期待される。
脂肪蓄積阻害作用を持つキノコ由来の環状ペプチドの抗肥満効果の検証 名古屋大学
堀尾文彦
名古屋大学
鈴木孝征
【目標】環状ペプチドであるテルナチンおよびそのメチル化誘導体の、肥満モデル動物における抗肥満効果ならびに抗糖尿病効果を検証する。
【達成度】両化合物を浸透圧ポンプを用いてKK-Ayマウスに皮下投与して、動物個体に異常をきたすことなく両化合物の効果を評価する実験系が確立できた。第一に期待した両化合物の抗肥満効果については、本研究においては観察されなかった。しかし、両化合物ともに、マウスの血糖値上昇抑制効果を有することを見出した。そして、両化合物の作用臓器の一つが肝臓であることが見出された。
【今後の展開】テルナチンおよびそのメチル化誘導体の肝臓への作用について検討し、この効果の血糖値低下作用への寄与について明らかにしていく必要がある。一方で、本研究よりも高用量のテルナチンを投与した場合の抗肥満効果の検証も必要と考える。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初の抗肥満効果ならびに抗糖尿病効果を評価する2型糖尿病モデルマウスの実験系を確立したこと、および、次のステップへ進めるための技術的課題を明確にしていることは評価できる。一方、テルナチンの肝脂肪蓄積抑制効果を明らかにしており、脂肪肝改善物質としての有用性に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は技術移転の可能性を検討されることが望まれる。
核多角体病ウイルス罹病性カイコへの抵抗性賦与技術の検証 名古屋大学
柳沼利信
名古屋大学
鈴木孝征
これまでの研究から、核多角体病ウイルス耐性カイコの作出を目的として、核多角体病ウイルスの感染増殖に不可欠な遺伝子発現をknockdownした形質転換カイコの作出に至った。本課題では、これら組換え品種が野生型と比較し、核多角体病ウイルスに対して感染抵抗性を獲得し得たかどうかを評価することを目的とした。その結果、これらの技術はウイルス抵抗性賦与に効果的であると検証された。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標は達成されたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、産学共同等の研究開発ステップにつながる可能性は高まったと評価できる。今後は、組換え品種が野生型と比べ当該ウィルスに対する感染抵抗性を獲得することが確認されており、産学共同による研究開発等への展開に関する具体的な検討が期待される。
微生物共培養系による資源循環型有機溶剤含有排水処理技術の開発 名城大学
細田晃文
名城大学
関孝史
H23年度は研究計画のうち、X. autotrophicusによるジクロロメタン分解に要する日数が7〜10日間必要であることが分かった。しかし、当初目的のDCM濃度475 ppmは達成されておらず、引き続きBD-1の添加効果について、培養実験を行い運転条件の決定を行った。その結果、BD-1に加えて、酢酸を添加することにより、ジクロロメタンの分解に要する日数を7日から5日へ減じることができた。しかし、当初の研究計画である、共培養系の構築は酢酸濃度安定化ができず、十分な成果は得られなかった。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、培養テストを実施したことについては評価できる。一方、企業との連携の可能性はありそうだが、実現するための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。当初目標の培養日数短縮や分解能力達成には至っていないので、今後、さらに検討されることが望まれる。
有用菌株を株レベルで識別する簡便・迅速な微生物同定法の有用性に基づくデーターベースの開発 名城大学
田村廣人
名城大学
福田雄一
本研究は、細菌を16S rRNA遺伝子配列解析法と比較し、株レベルで簡便・迅速に識別するために必要な新たな手法とそのためのデータベース構築法を確立することを目的とし、その目的を達成した。つまり、細菌のS10-spc-alphaオペロンにコードされているリボソームタンパク質をバイオマーカーとするデータベースを構築することにより、産業的にニーズの高いLactobacillusおよびLactococcus属細菌では、Lactobacillus paracasei, L. caseiおよびLactococcus lactisの亜種の迅速識別が可能となった。さらに、環境から単離したSphingomonadaceaeでは、16S rRNAの塩基配列が1塩基のみ異なる細菌を、株レベルで識別できた。本手法をS10-GERMS法と命名し、今後は、本法の実用化を目指して展開する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に当初目標は達成したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、菌種同定のニーズは各方面にあり、コストの点や簡便化といった視点などでの実用化が望まれる。今後は、食品に広く分布する乳酸菌種を対象にした細菌同定法として、16S rRNAの限界を超えた手法として期待される。
異種酵母の混合培養法による清酒濃醇化技術の開発 三重県工業研究所
栗田修
三重県工業研究所
松田泰介
清酒酵母と混合培養する非清酒酵母の候補として、その共存下で最も早く死滅しやすい酵母クリベロミセス属ラクティス(Klyveromyces lactis)NBRC1903株を選別した。この株を親株として、プロテアーゼ活性の漏出変異株を2株分離し、純粋培養及び清酒酵母との混合培養を高糖濃度液体培地にて発酵試験を行った。その結果、混合培養条件下では総アミノ酸生成量は低くなる傾向にあり、その中でも特にアルギニンの含量が低かった。また、清酒酵母の生存率は、純粋培養に比べて非清酒酵母の混合培養条件下の方が高かった。清酒の小もろみ試験では、清酒酵母の単独で製造された清酒に比べて、混合培養の清酒は粕歩合が低く、アルコール生成量も高い傾向にあった。清酒の味指標となる酸度・アミノ酸度に有意差は認められなかったが、清酒中に含まれるアルギニンが低く、プロテアーゼ変異株P-2との混合で造られた清酒が官能的に最も良好であった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にアルコール生産量の増加や味の多様化に繋がる成果が得られており評価できる。今後、味や香りの差別化、効率的・安定的な製造法が実現すれば、清酒業界の活性化に繋がることが期待できる。
果樹の生育コントロール技術「樹上根給液栽培法」〜樹上根発生のための最適条件の確立〜 三重県農業研究所
三井友宏
NPO法人東海地域生物系先端技術研究会
前川哲男
ブドウ「巨峰」では、環状剥皮の有無にかかわらず取り木処理より75%以上発根し、目標の発根率50%を超えたが、ナシ「幸水」では発根促進剤処理にもかかわらず発根しなかった。ブドウの樹上根の生育について、伸長・分岐時期を把握し、給液に液肥を施用する方が水のみより樹上根を増加させることを明らかにした。また、測定室分離型の土壌水分センサーにより樹上根域水分量に基づき給液し、10月中旬から2ヶ月間の給液量を把握できた。
今後、樹上根の吸水特性等を調査し、水分ストレス・植物ホルモン・液肥施用等による樹体生育制御による増収・高品質化技術の可能性を模索する。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、発根容易なブドウでは50%以上の発根率が得られたことは評価できる。一方、樹上根量に対して地下根量の方が多いので、樹体生育にどれほど樹上根が影響するか不明である。幼木に用いたときに幼若期の短縮ができるかに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。なお、不定根発生の困難なナシについて本実験では発根しなかった。その原因について品種間差異や仕立て方を挙げているが、予備実験でなぜ違う品種を用いたのか不明瞭であり、今後検討されることが望まれる
カンキツ機能性強化果汁の開発と搾汁残渣の畜産的有効活用 三重県農業研究所
市ノ木山浩道
NPO法人東海地域生物系先端技術研究会
前川哲男
果皮に機能性成分が高含有であるカンキツ品種において搾汁条件(圧搾程度、果実の成熟度等)の違いが、果汁の機能性成分含量におよぼす影響について検討した。その結果、機能性成分高含有で、かつ嗜好性の高いカンキツの天然果汁商品開発のための搾汁方法を明らかにした。また、搾汁残渣を採卵鶏の餌に添加することで、搾汁残渣中の機能性成分が鶏卵へ移行することを明らかにし、カンキツの搾汁残渣の畜産的活用による機能性畜産製品開発の可能性を見いだした。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に圧力をかけて搾汁することにより、有効なフラボノイドが抽出できることが見いだされたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、この技術が容易なだけに日本全国に広まることが期待され、本技術を広く公開することを期待する。
育種から加工までのフードチェーンを意識した新しいヒジキブランドの構築 三重大学
倉島彰
ヒジキの養殖から加工までの品質基準を確立することを目的として、16地域のヒジキの遊離アミノ酸含量、ヒ素含量、タンパク質含量の測定、形態分析、官能試験などを行い比較した。その結果、タンパク質含量は夏のヒジキに多いこと、ヒジキの保存状態が悪いと遊離アミノ酸含量が低くなることなどが明らかとなった。また、水分含量や形態の複雑度は官能試験と負の相関が見られた。分析結果を検討し、品質評価項目として、産地、天然/養殖別、水分、複雑度、ヒ素含量、保存状態、遊離アミノ酸含量を挙げることができた。各項目を評価することで、ヒジキ藻体の品質だけでなく、製造工程の品質も評価対象としてブランド化しうると考えられる。今後は養殖研究と連携して研究を展開したい。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもヒジキを人工培養する技術が確立させている点は評価できる。今後は、全国のヒジキ製造業者の横の連携を構築し、ヒジキの品質の数値化(見える化)、高品質化に取り組んでいただきたい。
緑内障治療に有用なβ-1,3-グルカンの酵素合成 三重大学
磯野直人
株式会社三重ティーエルオー
齋木里文
微細藻類Ochromonas danica由来β-1,3-グルカンホスホリラーゼの組換え酵素を用いて、直鎖β-1,3-グルカンを合成した。合成条件の検討を行い、重合度10-110の範囲で酵素合成β-1,3-グルカンの鎖長をコントロールする方法を確立した。ラット高眼圧モデル(緑内障モデル)の眼球硝子体内に様々な鎖長の酵素合成β-1,3-グルカンを投与し、内網状層と網膜電図の形状変化を調べた。その結果、重合度70以上の酵素合成β-1,3-グルカンに緑内障モデルの網膜神経節細胞の保護効果があることを見いだした。このように、当初計画した本課題の目標は達成された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、重合度10−110のβ−1,3−グルカンの合成をコントロールする方法を確立している点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、合成されたDP 70以上の酵素合成グルカンは水にほとんど溶けない為に、何らかの改良が必要である。しかし、重合度の高いグルカン合成法が確立されたことの意義は大きい。今後は、合成した様々な鎖長のグルカンを用いた解析により、重合度70以上の酵素合成グルカンの緑内障モデル網膜神経節細胞の保護効果を検討することが期待される。
ヒマシ油系新規機能性食品化合物の開発研究 三重大学
八谷巌
三重大学
横森万
光学的に純粋なジガラクトシルジアシルグリセロール誘導体3種の合成を達成することはできなかったが、既に報告されている中間体の合成経路では糖供与体から11ステップを要していたところを、今回、糖供与体から4ステップ少ない7ステップで合成することができた。また、ステップ数を減らしただけではなく、既報の合成方法では、活性化剤に塩化スズ、酸化水銀や臭化水銀などの重金属を用いていたが、今回の合成経路ではそのような重金属を用いない合成経路を開発することができた。今後、最終段階の脱MPM化を行うことによって、目的の光学的に純粋なジガラクトシルジアシルグリセロール誘導体を得、残り2種の誘導体の合成も達成し、抗コレステロール活性を検証する予定である。 当初目標とした成果が得られていない。光学的に純粋なジガラクトシルジアシルグリセロール誘導体3種の一つは間もなく合成できる可能性が示されたものの、ほかの二つは目途が立っていない。機能性の検証にも着手できなかった。大量精製法については、収率等のデータを示し、従来法と比較されることが望まれる。
高バイオマス量サトウキビバガスの高付加価値カスケード利用体系の確立 三重大学
野中寛
三重大学
佐藤之彦
「高バイオマス量サトウキビ」は、単位面積当たりの糖収量が大きい注目の資源作物であるが、搾りかすのバガスが3倍以上に増加することから、燃焼、堆肥化に勝る余剰バガスの高付加価値活用法の提案が重要である。本事業では、このバガスについて成分分析、相分離系変換システムによる糖類と機能性リグニン系素材の同時誘導を行い、製糖用品種とほぼ同等の組成、同等の素材が得られることを明らかにした。またバガスの常温、105℃、170℃の多段階アルカリ処理によるカスケード利用を試み、ヘミセルロース系素材、リグニン系素材、セルロース素材を順に得ることに成功した。高バイオマス量サトウキビは、繊維の組成は変えず量の増加により自重増に対応することが明らかとなり、今後製糖用品種のバガス同様のリグノセルロース資源として期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、製糖用品種と高バイオマス量サトウキビ品種との比較実験により、成分上の同等の素材として活用できることを実証したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、通常バカスの代用に十分なりうるので、実用化に向けた可能性が大いにある。今後は、高収率を目指した品種改良や新しいリグノセルロース系やリグニン系素材の開発が期待される。
養殖漁業の高度化を支援し生産性向上に寄与する波浪計測器の開発 鳥羽商船高等専門学校
山下晃司
鈴鹿工業高等専門学校
澄野久生
本研究は、GPS衛星から放射される電波の海面反射を利用した波浪計測装置を開発することを目的としている。今年度は、提案原理に基づく波浪計測装置を実際に試作し、実海面での実験を行った。その結果、試作装置はGPS電波の直接波が混入する場合があり、この問題はパラボラアンテナ部の3方を金属網でシールドすることで解消できた。改良した条件下でシミュレーションを行った結果、提案原理に基づく波浪計測装置によって、波浪周期および波高は推定可能であることが確認できた。今年度は、計画していたのり養殖海域での波浪計測装置の有効性検証および波向推定までは至らなかった。しかし、海面反射したGPS電波の平均受信電界強度は同装置のアンテナ指向性に依存しないという新たな知見を得ることができた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、最重要課題であるプロトタイプの試作に成功しており、概ね目標は達成していることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、装置メーカーとの連携により、知財化、実用化される可能性が高まった。想定外のトラブルが生じたにも関わらずリカバリーし、プロトタイプ装置を完成させており、今後の技術移転につながることが期待される。
河川放流用アユに対する攻撃性を利用した種苗性判別手法の開発 滋賀県水産試験場
山本充孝
滋賀県水産試験場
澤田宣雄
1990年頃から河川に放流したアユが友釣りで釣れない状況が続いており、よく釣れる放流アユの飼育技術が求められている。本研究では、最近、アユ養殖場で問題となっている『アユの非感染性スレ症』がアユの攻撃行動によって起こることをヒントとして、釣れるアユを事前に判別する簡便な種苗性評価手法を開発した。この評価手法はアユの生産者が実施できる魚の死亡率を指標とするもので、野外での模擬放流実験における縄張り獲得状況と対比してその妥当性を検証した結果、なわばり形成率とスレ症による死亡率には高い相関があり、種苗性評価手法としてアユの攻撃性が利用できることが明らかとなった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもこのような検査方法だけでなく、アユの種苗が悪かった場合の対策に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、種苗を購入する漁協側に対しては研究結果が反映されるが、種苗業者に対しては、種苗の品質がよくなかった場合の対応策まで技術開発されることが望まれる。
養殖ビワマス全雌三倍体魚の安定作出技術の開発と飼育特性の解明 滋賀県水産試験場
桑村邦彦
滋賀県水産試験場
澤田宣雄
養殖ビワマスは成熟により肉質劣化やへい死が起きるため、大型魚の利用延長のためには不稔となる全雌三倍体魚の利用が養殖現場から求められている。三倍体魚の安定作出のため、第二極体放出阻止型の受精卵処理条件について検討したところ、有効とされた処理温度において、ニジマスの三倍体処理条件より処理開始時間を早め、受精卵にダメージを与えない範囲で処理継続時間を長くすることで、作出率を向上させる手法が示唆された。また全雌三倍体魚は、二倍体魚に見られる1年魚の早熟雄や、2年目の成熟などの影響を受けずに摂餌、成長する養殖特性を示した。三倍体魚は二倍体魚に比べ低酸素に反応しやすい傾向があったが、これら飼育特性から養殖利用にあたって特に問題ないことが明らかになった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、2つの研究目的の内、”養殖ビワマス飼育マニュアル作成”に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、養殖関係者から移転に関する積極的な要望が寄せられていて、失敗無く実施可能なビワマスの三倍体魚の大量安定作出技術の開発を待つ状態に達している。ビワマスの三倍体魚の大量安定作出技術の開発について、未だ若干の技術開発の必要が残っており、今後、継続的な技術開発により、それらの課題を解決することが期待される。
米品質向上を目指した無人ヘリを活用する水稲生育量(植生指数)の広域測定技術の開発 滋賀県農業技術振興センター
中橋富久
米の白未熟粒を軽減し、高品質米生産を目指すには、栽培中の水稲の籾数を推定し、適正籾数30,000粒/m^2に誘導する施肥量を施用する必要がある。本課題の目標は、籾数の推定に用いる幼穂形成期の植生指数を効率的に測定するため、無人ヘリを活用した植生指数測定技術を開発することである。本研究の結果、携帯式生育量測定器を取り付けた無人ヘリによる植生指数の測定は、従来の地上測定より効率的であり、その測定値は地上測定とほぼ同じ値であることを明らかにした。今後は、本技術を広域水田で用いて、植生指数から推定した籾数をもとに、適正籾数に誘導する施肥量を決定し、その結果を水稲生産者へ提供する施肥診断システムの確立が期待できる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、目標はほぼ達成されている点については評価できる。一方、無人へり空撮による植生指数、籾数、整粒歩合の広域推定の可能性や天候変化への対応に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、企業、農業者、または公的な技術普及組織等、誰が利用する技術なのかを明確にし、技術運用の仕組みを想定した技術開発が望まれる。
新規リコピン誘導体を含有する機能性食品素材の開発 立命館大学
西野輔翼
立命館大学
矢野均
新規リコピン誘導体を含有する複合カロテノイド素材を農産物「ガック」から安価に調整する技術を完成し、産官学連携による商品化へ向けての準備を開始するところまで進めることができた。「ガック」はベトナム特産品であることから、まずはベトナム・日本の国際連携商品化を目指すが、将来的には日本で栽培した「ガック」(例えば、沖縄での栽培、および植物工場での栽培などを検討中)を用いて事業を展開する予定である。また、学術的にはベトナム国立農林大学の研究グループとの共同研究を開始することが決定し、ベトナム側は農学の視点から高品質の「ガック」を選抜する役割を分担し、日本側は栄養学・医学の視点から機能性を評価する役割を分担する、ということで合意した。以上、当初の目標をはるかに超える成果を挙げることができており、今後の展開に関する具体的なプランも確定できているので、将来は明るい。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、新規リコピン誘導体を含有する機能性食品素材に関する当初目標は達成され、商品化への具体的展開が明らかになったことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、当該誘導体を含有する機能性食品素材を配合した健康食品の生産・販売などでの実用化が望まれる。今後は、ベトナムと日本との国際連携のもと、実際の商品としての生産が期待される。
淡水養殖場向け新規ミズカビ予防剤の開発 立命館大学
今村信孝
立命館大学
湯浅浩司
放線菌が生産する抗ミズカビ活性物質5成分を単離・構造決定し、アングサイクリン系の新規化合物であることを明らかにした。このうち2成分は数ng/mlと極めて低濃度でミズカビ胞子の発芽を抑制し、動物細胞を用いた毒性評価ではIC50値が5μg/mlと抗ミズカビ活性に比較して弱いものであった。また、市販品パイセスの弱点とされる環境中の動植物プランクトンへの毒性も弱いもので、選択的な抗ミズカビ物質といえる。本物質が自家蛍光を持つことから、魚卵、ミズカビ胞子、菌糸での局在性を検討し、魚卵とミズカビでは局在化する部位が異なることを明らかにした。また、魚卵への毒性も比較的低く、優れた抗ミズカビ感染予防薬としての実用化が期待出来る。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、最大の課題として挙げられていた未知成分の構造が確定し、従来化合物と比べた活性の強弱、作用機構の差異なども明らかにされたことに関しては評価できる。懸案であったサプロマイシン類の構造が確定し、ミズカビに対する活性についてオリダマイシンとの比較に関する知見が得られ、将来の応用に向けて前進した。一方、技術移転の観点からは、魚卵からの稚魚育成は、現在天然稚魚捕獲に依存している養殖漁法を根本的に改善する可能性がある。今後は、応用に向け、まず化合物の大量調製が期待される。
新規マーカー遺伝子の創製と革新的選択法の開発 京都工芸繊維大学
片岡孝夫
京都工芸繊維大学
行場吉成
ナトリウムポンプは、細胞膜上に存在するイオンポンプであり、細胞からナトリウムを排出しカリウムを取込む。動物細胞では、おもにナトリウム濃度勾配によって浸透圧が調節され、ナトリウムポンプを阻害することによって動物細胞は死に至る。本研究課題では、ナトリウムポンプを薬剤選択マーカーと検出用表面マーカーの性質を兼ね備えた「新規マーカー遺伝子」として開発することを目的とした。本研究課題では、改変型ナトリウムポンプを作製し、動物細胞における発現や機能を検討した。今後、改変型ナトリウムポンプが汎用性や有効性に優れた新規マーカー遺伝子である可能性を検証する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初計画の実施については評価できる。しかし、本研究開発はナトリウムポンプα1サブユニットを遺伝子導入による選択マーカとして開発しようとする試みであったが、得られた成果は遺伝子構築のみである。今後は、構築された遺伝子を細胞に導入し、次のステップへ進むとのことであり、設定されていた目標の達成と、応用展開に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが望まれる。
微生物酵素による味噌のコク味増強法の開発 京都工芸繊維大学
鈴木秀之
京都工芸繊維大学
行場吉成
耐塩性の枯草菌のγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)を味噌の醪に添加することにより、味噌のコク味を増強する方法を開発することを目標として研究を行った。味噌のような高食塩濃度下で仕込む食品では、発酵に用いる微生物由来の酵素の活性が強く阻害されている場合がある。研究責任者は、枯草菌のGGTが耐塩性であり、グルタミナーゼとしてうま味を増強することを見出し、すでに報告している。本研究では、半固体発酵である味噌の醪中にコク味成分であるγ-グルタミル化合物が生成してくること。この酵素を添加することにより、γ-グルタミル化合物の生成がその転移活性によって促進されることを明らかにした。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に当初の目標の達成に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、移転を目指した産学共同等の研究開発ステップなどでの実用化が望まれる。遺伝子組み換え産物の酵素を使っている点が実用化へのハードルとなるため、今後は、非遺伝子組み換え菌での大量発現を含め、酵素高生産株の育種に注力されることを期待したい。
細胞増殖制御能を持つ機能性絹糸開発に向けたカイコの分子育種 京都工芸繊維大学
小谷英治
京都工芸繊維大学
行場吉成
生体における細胞増殖調節能を有する機能性絹糸を開発するために、絹糸腺において細胞増殖因子を発現するカイコを形質転換技術により作ることを目指した。カイコ体内での細胞増殖因子の安定生産や増殖因子の放出性を確保するために、除法性担体としての性質を持つタンパク質微結晶に発現した細胞増殖因子をカイコ絹糸腺内で固定化した。得られた遺伝子組換えカイコの絹糸腺を用いて解析したところ、この組織内のタンパク質結晶には確かに活性のある細胞増殖因子が固定化されていることを認めた。こうした結果は、カイコ絹糸腺をもとにして細胞増殖因子を除法できる成形繊維を加工することも可能であることを示しており、新たなバイオマテリアルとしての事業化にも応用できると期待できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、得られた多核体や細胞増殖因子は繭糸の中には含まれていなかったが、後部絹糸腺から直接絹糸を取り出すテグス糸作製に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、細胞増殖因子を絹糸中に取り込むことが望まれる。今後は、直接絹糸を取り出すテグス糸作製技術によって、細胞増殖因子を絹糸中に取り込む計画の実施が期待される。
微生物発酵によるアクリル酸生産法の開発 京都工芸繊維大学
麻生祐司
京都工芸繊維大学
行場吉成
アクリル酸生産野生株Megasphaera elsdenii ATCC17752のゲノムシーケンスから、アクリル酸生産関連遺伝子(プロピオニル-CoA転移酵素遺伝子およびラクチル-CoA脱水酵素遺伝子)を同定した。同遺伝子を大腸菌発現ベクターにクローニング後、これを用いて乳酸生産大腸菌を形質転換した。得られた形質転換体をグルコース含有培地にて培養しアクリル酸生産関連遺伝子を発現させた。SDS-PAGE解析では同遺伝子のコードするタンパク質の発現は明確には確認できなかった。一方、培養液上清のHPLC分析を行ったところ、アクリル酸の生産を確認できた。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、アクリル酸生産関連遺伝子の配列解析とクローニングの実施については評価できる。アクリル酸の生産を石油原料に頼らず、バイオリファイナリーによって行うことの社会的意義は大きい。今後は、クローニングした遺伝子の宿主における発現が低いという課題の解決が望まれる。
細胞表層タンパク質の網羅的解析技術の開発 京都市産業技術研究所
山本佳宏
京都府立大学
市原謙一
近年盛んに行われる網羅的解析の中でもプロテオーム解析は対象とするタンパク質が生命の機能を直接的に担うため重要である。一方で細胞表層タンパク質の網羅的解析は細胞の未知表現型や現象の原因因子が本画分に存在するにも関わらず、正確な分画が困難であるためあまり行われていない。そこで、申請者は細胞表層タンパク質を特異的に抽出し、申請者保有技術の二次元電気泳動法と融合することによって新規な細胞表層タンパク質の網羅的解析技術の開発を試みた。結果、微生物由来サンプルにおいて良好なタンパク質抽出と再現性の高い分離結果を得た。種々の研究分野で重要なツールとして活躍する可能性を有する本技術は、今後多くの興味深い原因因子の特定などに役立つことが期待できる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。網羅的研究を如何に簡便に行うかに一つの道を開いている。この手法で、微生物以外の細胞表層タンパク質が採取できれば、医療、創薬などに大きく寄与できる可能性を秘めている。
目標を設定し、それに特化して表層タンパク質を産官学共同で採取するところへ発展させ、社会的貢献がなされることが期待される。
キラル医薬品合成に有用な光学活性スルフォキシドの大量生産法の開発 京都大学
日比慎
京都大学
井内浤二
本課題ではL-イソロイシンジオキシゲナーゼ(IDO)を大量発現させた大腸菌の菌体を生体触媒として利用する事で、L-メチオニン(L-Met)からL-メチオニン-(S)-スルフォキシド(L-Met-S-SO)を生成することを可能にした。この反応におけるモル収率は94%、光学純度99%以上という非常に優れた結果を得ることができた。L-Met-S-SOは光学活性スルフォキシドを構造内に持つ医薬品のキラル原料としての利用が期待でき、この結果によりL-Met-S-SOを産業化レベルで生産できるプロセス開発が可能となった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標達成が認められる点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、スルフォキシド基の光学異性特異的に、L−MetをL−Met−S−SOへ変換するステップを含む化学品合成があれば、実用化の可能性が考えられる。L−イソロイシンジオキシゲナーゼを発現する大腸菌菌体を触媒とし、当初目的とした高レベル変換収率が達成されており、今後の技術移転が期待される。
開放系ヘルムホルツ共鳴装置を用いた遊泳中の生魚の体積・品質計測 京都大学
近藤直
京都大学
吉川信久
生育環境等を正確に計測し、養魚に関わる最小の投資で最高の収量および品質が得られる「精密養魚」のコンセプトを視野に入れ、遊泳中の魚の体積、色、形状等を正確に計測することを目的として、実験を行った。これまで行ってきた閉鎖系ヘルムホルツ共鳴装置での計測方法に基づき、開放系共鳴装置を設計・試作して魚の体積計測を行った。供試した魚は淡水魚のブルーギルとし、共鳴装置に付着する気泡等の影響の補償、計測精度を高めるためのキャリブレーションモデルを作成した。その結果、開放系共鳴装置においても、非常に正確に魚の体積を推定することが可能であった。さらに、PLフィルタを用いた高品質のカラー画像および紫外画像から品質に関わる特徴量を抽出したところ、紫外画像ではカラー画像で検出できない欠陥も発見できることが示唆された。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、遊泳中漁体の体積計測方法の開発に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、開発技術のユーザーが特定され、ニーズ対応の技術開発計画を明示されていること、また養魚場における無駄のない給餌法の開発が予定されている。本課題は、給餌コスト削減、漁体品質向上、過剰給餌の回避による水質環境負荷低減等を目的として実用化が望まれることから、今後、精度向上と漁体品質評価はユーザーニーズに合わせて解決されることを期待したい。
亜鉛欠乏予防効果のある食品の創成に向けた因子の探索と同定 京都大学
神戸大朋
京都大学
藤森賢也
亜鉛の不足はQOLを著しく損なうことが知られる。我が国高齢者には亜鉛不足の傾向が強いことが認められるため、超高齢化社会を前にその予防法を確立することは、極めて重要な課題となる。本研究では、小腸上皮細胞において食事由来の亜鉛の吸収過程に機能する亜鉛輸送体ZIP4の発現を促進する活性を有する食材から、ZIP4の発現促進因子を単離、活性因子を特定することを試みた。
その結果、高いZIP4発現促進活性を示した大豆抽出物に関して、活性成分を単一化合物まで精製し、さらにその構造決定に成功した。また、新たな食材についても探索を行い、複数の食材にZIP4発現促進活性が含有されることを見出した。こちらについても、現在、精製を進めている。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、高い発現促進活性を示した大豆抽出物から化合物を精製し構造決定に成功した点については評価できる。一方、新規物質の探索とin vivo研究の必要性に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。発現促進活性の高い画分から特定の物質を生成しその構造決定を行っているが、当該物質が実際の発現促進に効果があるかどうかは示されていない。今後、in vivoでの効果が確認されれば、両因子とも亜鉛吸収促進食品として実用化されることが期待される。
植物の免疫機構を活性化する新規病害防除剤の開発 京都大学
宮下正弘
京都大学
藤森賢也
植物の免疫を活性化するPIP-1は六残基からなるペプチドである。生理活性ペプチドの構造をもとにして非ペプチド性低分子化合物を設計するには、構造自由度の高いペプチドを固定化して得られる立体構造と活性に関する情報が必要である。そこで本研究では、活性発現に最適な立体構造に固定化されたPIP-1類縁体を見いだすことを目的として、構造を固定化する効果のある環状化あるいは非天然型アミノ酸を導入した類縁体を合成し、その活性を評価した。その結果、活性の低下は見られたものの、構造を固定化されたPIP-1類縁体を見いだすことができた。本研究ではさらに、植物細胞によるペプチドの分解を防ぐための構造変換を試み、高活性かつ植物細胞中でも安定な類縁体の開発にも成功した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、植物防御応答活性を持つ新規ペプチドを見いだすことに成功したことは評価できる。一方、企業化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、リード化合物として活性発現に必要な構造を持つ環状類縁体について、さらなる活性調査が望まれる。
低アレルゲン化小麦実用品種の開発 京都大学
遠藤隆
京都大学
藤森賢也
コムギ製品の摂取でも食物依存性運動誘発アナフィラキシー(いわゆる小麦アレルギー)は起こり、小麦アレルギーは、摂取後の運動や非ステロイド系抗炎症剤等の要因により誘発される、I型アレルギーの特殊病型である。小麦アレルギー患者の約8割においてコムギω-5グリアジンが主要抗原であることが明らかになっている。このω-5グリアジンの遺伝子は1B染色体の末端近くに座乗しており、その遺伝子領域を欠失した実験系統は存在する。本課題は、この欠失1B染色体を日本の実用品種に導入した場合、収量や品質にどのような影響があるかを調査し、低アレルゲン化コムギ品種の実用化の可能性を探ることを目的とする。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、原品種ホクシンと同等あるいはそれを凌駕する系統も得られたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、今回育成された系統だけでなく、当該染色体の導入そのものが低アレルゲン化に有効であることが望まれる。食物アレルギーは大きな社会問題の一つであり、アレルギー患者だけでなく食品業界など社会に与えるインパクトは大きいことから、今後の実用化が期待される。
重金属及び放射性セシウム吸着能をもつ海藻炭の製造法の検討 京都大学
豊原治彦
京都大学
藤森賢也
炭焼き施設の海藻炭製造のための低温焼成炉としての利用可能性を検証した。打ち上げ海藻と芯ワカメを原料とし、200℃と300℃で焼成した海藻炭を製造した。これらの炭を用いて、市販セメントのブリージング水中の六価クロムの吸着試験を行った結果、目標通り、いずれの海藻炭も環境基準(0.05mg/L)以下に低減することができた。放射性セシウム汚染土壌の洗浄水(8944Bg/kg)について、吸着試験を行ったところ、当初の目標であった300Bg/kgを大きく下回る値にまで低減することができた。また、貝殻炭と橄欖岩を加えて固化することにより、これら有害物質の完全な不溶化を確認した。本研究の結果、海藻炭の実用化が可能となった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、本材料開発に関しては次なるステージへの成果も得られ、技術移転等への発展性は高いことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、今後のキャラクタリゼーションによる技術開発を見極めながら、実証的検討段階への展開が望まれる。今後は、バイオマス原料の安定的確保等を念頭に置いた基本ビジネスモデルのもと、実証的検討段階への進展が期待される。
受精阻害機構を利用したほ乳動物の産み分け技術の開発 京都大学
南直治郎
京都大学
藤森賢也
ほ乳類においては産仔の性を決定するのは精子である。精子に含まれる性染色体がXであれば雌、Yであれば雄が生まれる。雌雄の産み分けは家畜に応用できれば非常に大きな効果が期待できるが、ほ乳類においては完全な産み分け技術は確立していない。そこで本課題では雌雄を産み分けるためにXあるいはY染色体に受精を阻害する遺伝子を導入して、組換え遺伝子を持った精子が受精できない仕組みを開発する。また、遺伝子産物が細胞間架橋を通過して隣接した細胞に移動しない仕組みの開発も必要である。この2つの仕組みを組み合わせた遺伝子を性染色体に組み込むことによってこの技術は完成する。さらには、遺伝子導入した性染色体を持つ精子は受精できないことから、生まれてくる個体は遺伝子組換え個体ではないという大きなメリットもある。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初の目標の一部は達成されたことは評価できる。一方、企業化に向けては、まだまだ基礎的研究を積み重ねるための技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。受精阻害関連遺伝子組み換えマウスの産仔を顕微授精で得ようとしているが、染色体への挿入位置を調べるだけであれば他の方法でも可能であるので、今後、さらに検討されることが望まれる。
特異的な遺伝子の活性化を可能にするSAHA誘導体の開発 京都大学
板東俊和
京都大学
藤森賢也
本新技術は、研究責任者がピロール (P)-イミダゾール (I) ポリアミドの有するDNA塩基配列特異性を活かし、HDAC阻害
能をもつSAHAと連結させた特定遺伝子を活性化するSAHA試薬を開発しようとするものである。本SAHA試薬によって
MEF細胞の初期化に関わる遺伝子 (Oct4, Nanog) に対応する特異的な活性化を実現することで、iPS細胞の誘導や分
化にも応用できると考える。これまでにRT-PCRやヒストンの特異的メチル化を確認することによって、細胞内の
Oct4やNanog遺伝子の発現を特異的に活性化した基礎実験データを報告している。将来的には大学・研究所に
汎用性の高いSAHA試薬を提供する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、基本的な当初目的はクリアーされていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、企業との共同研究の段階ではないが、社会的還元へのステップアップが期待される。SAHA誘導体の構築に関する基礎的データは確立されているので、今後、さらなる特異的遺伝子の活性評価や遺伝子発現分析が期待される。
LC/MSを用いた細胞膜局在活性酸素産生酵素NOX1バイオ計測系の確立と分子診断法創出への基盤技術整備 京都府立医科大学
松本みさき
京都府立医科大学
羽室淳爾
NADPH oxidase 1(NOX1)は、高血圧、敗血症、肝線維化への関与が指摘されている細胞膜局在活性酸素産生酵素である。生体内においてNOX1は極めて低発現量で機能を示し、その検出は難しい。本研究では、LC/MS技術を用いた新たなアプローチにより高感度検出法を確立することを目標とした。研究期間内において測定系の確立には至らなかったが、試料調整方法に関する以下の重要な知見を得た。
1. グリコシダーゼ感受性により、NOX1がN型糖鎖修飾を受けていることが明らかとなった。
2. NOX1に結合するレクチンに関する情報が得られた。
3. n-Dodecyl-D-maltoside (DDM) による生体試料の可溶化により、抗体によるNOX1検出に成功した。
以上の結果より、DDMによる試料の可溶化およびレクチンカラムや抗体による部分精製によって、より高感度のNOX1検出に繋がると期待される。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、抗体法によって生体試料から初めてNOX1を検出できたことは評価される。生体試料からの高感度なNOX1検出法に関して、技術移転や特許出願に繋がる可能性がある。大腸組織以外の諸器官からの試料で検出できるようになれば、医療関連で大きな寄与ができるであろう。
今後、試料の量産化について具体的な研究戦略を立てる必要がある。
「箸」センシングに基づく食事情報取得技術の研究 同志社大学
金田重郎
同志社大学
奥平有三
本研究の目的は、「お箸」に抵抗センサを装着し、1) いつ食事をしたか、2)どの程度の量を食べているか、を推定する技術の確立にある。具体的には、手と箸、あるいは、口と箸の間にできる閉ループ抵抗値から、「食物を掴んだタイミング」と「食物を口に咥えたタイミング」を検出する。検討の結果、単一抵抗値から2種類のタイミングを検出する手法の着想を得た。プロトタイプによる実験の結果、90%を越える検出精度を確認した。更に、複数人でこの箸を用いることによって、「食事には参加しているが話題に参加できていないメンバー」を特定できることも確認した。今後の課題は、箸からのデータ採取をワイヤレス化することにある。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、食事情報を現実の動作解析に近い手法により取得することに成功した。また、取得したデータから単なる個人の食事動作だけでなく食事するヒトの集団における協調状態を推定できる可能性をも明らかにしたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、次段階の研究への発展可能性についても具体的に述べられており、ワイヤレス化することなどでの実用化が望まれる。優れたセンシング技法を考案、新しい着想に基づき、論文・特許ともに成果として実現しており、今後は、集団での食事における共通話題への参加の状況を推定する手がかりとなることが期待される。
養殖や生鮮輸送に応用できる魚類における睡眠導入法の開発 公益財団法人大阪バイオサイエンス研究所
高田陽子
(財)大阪市都市型産業振興センター
長谷川新
養殖魚の出荷作業や移送作業時に魚類の睡眠を利用することで、作業の安全化と高品質な養殖魚の安定した供給を最終目標に、本研究開発課題では、魚類の脳波測定用電極の選定と装着法確立、有線による魚類の脳波測定システムの開発、魚類のポリグラフデータの収集、魚類の睡眠判定法の確立を目標とした。期間中に開発した脳波測定システムで脳波と考えられるマダイの生体信号の収集に成功し、魚類においても脳波から睡眠状態を判定できる可能性を確認したが、睡眠判定法を確立するには課題が残った。今後は無線による脳波測定システムを開発して自由遊泳下で脳波を測定し、魚類の睡眠判定システムを確立する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標は達成されており、今後の発展も十分に望め、水産関係者にとっては、大変な朗報だと言える。一方、技術移転の観点からは、本開発成果が企業にとって、どのように「養殖魚運搬等における有効手法の評価システム開発」として展開されていくのか念頭に置いた上での展開を期待したい。今後は、さらなる特許出願、論文発表を早く行うことが望まれる。
レーザー光照射アルブミン膜上での高精細多細胞種複合パターニング手法の開発 大阪市立大学
田辺利住
大阪市立大学
渡邉敏郎
細胞非接着性アルブミンフィルムにレーザー照射を行い、細胞サイズの解像度のパターニングと複数種細胞のパターニングを行うことを目的とした。本研究期間中にドット状、ライン状のパターニングができること、複数種細胞パターニングに必要な培地を通してのレーザー照射により細胞接着領域を作製できることを明らかにした。しかし、細胞接着性へ変換できるレーザーエネルギーには至適値が存在することが示唆され、細胞サイズレベルの加工を行うためには更なる基礎検討とレーザー照射装置上の改良が必要とわかった。複数種細胞パターニングは、培地を通してのレーザー加工ができることがわかったので、レーザー照射時の温度管理を厳重に行うことで達成が可能である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、レーザー照射には至適エネルギーがあるらしいことなど、技術的課題は明確になった点については評価できる。一方、複数細胞パターン培養を可能にする方法に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、レーザー照射によって細胞非接着性アルブミン膜が接着性に変わるのかという基本的な要因の検討が望まれる。
新たな作用機序に基づく抗真菌および抗カビ剤の開発 大阪市立大学
荻田亮
大阪市立大学
渡邉敏郎
本研究では新たな作用機序に基づく抗真菌・抗カビ剤の開発をめざし、真菌の液胞を新規ターゲットとする致死作用のメカニズムの解明と、実用化への技術移転の可能性について検証を行った。その結果、1)「液胞」という細胞小器官が抗真菌作用の選択的なターゲットになり得ること、2)酵母やカビなどに対して一定の致死作用を示したこと、3)エルゴステロールの局在が活性発現に必要であること、4)ヒトの細胞に対する毒性が僅少であること、を明らかにした。また、相乗的な抗真菌作用を示す数種の新規因子を天然物および既存抗生物質から見いだした。これらの成果は、新たな作用機序に基づく抗真菌剤の実用化おいて有用となる知見を示すものである。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、達成度に問題は無く、権利化にも着手している点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、市場ニーズと技術の関連を明確にすることなどでの実用化が望まれる。今後は、目標は概ね達せられており、具体的な権利化も検討されているので、是非、実用化にまで、結びつけることが期待される。
線虫を用いたハイスループットな長寿効果評価法の開発 大阪市立大学
西川禎一
大阪市立大学
渡邉敏郎
動物倫理への配慮と生存分析のハイスループット化を図りつつ長寿効果を有する物質の探索を可能にするため、Caenorhabditis elegans(線虫)を用いた評価系の完成を目指す。線虫は分子生物学領域で多用されるモデル動物だが、任意の被験物質を定量的に投与する方法が無く応用範囲を狭めていた。申請者は被験物の親水性・疎水性に応じた線虫への経口投与法を独自開発し、複数の被験物質について長寿効果を実証してきた。本研究では、異なる物性の化合物が混在する粗精製の被験物に対しても適用できる経口投与法の確立と、線虫の飼育条件を標準化するための人工飼料の作製を試み、評価系の高精度・高効率化を図る。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標が概ね達成され、本法の優位性が一層明らかにされている点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、スクリーニング系としての安定性を確立する為に人工飼料の安定化、標準化などでの実用化が望まれる。今後は、新たな寿命延長物質の評価、抗酸化活性等の評価への応用など、評価システムとしての確立が期待される。
種選択的昆虫防除法の開発 大阪市立大学
品田哲郎
大阪市立大学
渡邉敏郎
我々が見出した、カメムシ目昆虫由来の新規幼若ホルモン(JHSB3)をリードとするカメムシ目昆虫に特異的な成長制御剤の開発研究の基礎となる構造活性相関研究に取り組んだ。JHSB3に備わっている、官能基群をそれぞれ改変したアナログを合成し、活性を評価した。その結果、成長制御に必須の官能基群を特定できた。それをもとに、JHSB3の1/10程度の活性を持つ構造単純化誘導体を見出すところまで成功している。JHSB3の活性を上回る化合物の探索に向けてのファーストステップを踏み出すことができたと考えている。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、官能基が特定できたことについては評価できる。一方、カメムシ類に特異な幼若ホルモンを、その防除に利用すると言う発想の具体化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、新しい幼若ホルモン探索の可能性や天然ホルモン昆虫生理学的な意義をより深く探り、まず基礎的な問題を解決されることが望まれる。
新規食素材を用いた食糧生産 −フスマとオカラの食資源化− 大阪女子短期大学
中野長久
大阪女子短期大学
久米真人
日本の食飼料の自給率は先進諸国中で最低のレベルである一方で、多くの食資源の加工途上で副生する素材の多くを廃棄している。本研究ではその代表株であるオカラ、フスマの可溶化物を作製し、評価を行なった。その結果、フスマ、オカラ可溶化物添加餌で飼育したマウスにおいて血中中性脂肪、コレステロール低下作用が確認され、また高脂肪食摂取に起因する腸内細菌叢の改善効果も明らかとなった。さらにフスマ可溶化物添加食で飼育したマウスにおいては、水浸拘束ストレスによる胃潰瘍の抑制効果も確認された。以上の結果から、オカラ、フスマおよびその可溶化物は多様な高機能を含み、食味性も優れることからヒトの食資源として大いに活用が期待される。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、ほぼ目標を達成し意匠登録を予定しており、次のステップへ進めるための技術的課題を明確にしていることは評価できる。一方、技術移転を目指して、産学共同等の研究開発ステップへつながる技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。オカラおよびフスマに生活習慣病(ストレス)の抑制効果の成果を得ており、今後、具体的な新商品が開発が望まれる。
寄生雑草選択的な除草剤開発のためのスクリーニング系の構築 大阪大学
岡澤敦司
大阪大学
樋口堅太
飢餓人工が 10 億人と言われる中、ハマウツボ科の寄生雑草はアフリカを中心に 3 億人の食糧生産に影響を与えている。従って、その防除法の確立は世界規模の急務の課題である。申請者は寄生雑草の特異な生活環に着目し、寄生雑草に選択的な防除剤の標的を探索してきた。寄生雑草の特異な発芽過程で変動する代謝物をメタボローム解析により検索したところ、寄生雑草に特徴的な三糖が代謝されていることを見出した。また、その代謝を阻害することで寄生雑草選択的に発芽を抑制出来ることが明らかになった。本申請課題では、これらの知見を活かしてより実用性の高い寄生雑草選択的な除草剤開発のためのスクリーニング系の構築を試みた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、基礎科学の観点から将来性が期待できる成果が含まれていることは評価できる。一方、特徴的な三糖および特異的代謝酵素が同定され、新規性が確認されれば、それをターゲットとした新規除草剤開発に発展する可能性は認められるが、残念ながら寄生雑草に特徴的な三糖の同定も、代謝酵素および遺伝子も特定するには至っておらず、酵素もCBB染色で検出されていないレベルであるので、今後は、これらの研究の進展が望まれる。
微細藻類ユーグレナにおけるバイオ燃料合成増強因子の探索 大阪府立大学
中澤昌美
大阪府立大学
阿部敏郎
微細藻類ユーグレナは、嫌気状態下で、貯蔵多糖パラミロンを原料として、脂肪酸−脂肪 アルコールエステル(ワックスエステル)を産生する。その量は乾燥重量当たり約 30%にも上る が、カーボンニュートラルな「バイオ燃料生産工場」として実用化するには、さらなる生産向上が 必要である。本研究では代謝改変ターゲットを効果的に得るために、RNAi 法を用いたノックダウン によって、貯蔵多糖およびワックスエステルの量や組成を変動させる因子を探索した。現在までに、細胞の生育には影響しないが、パラミロン蓄積を著しく減少させる因子や、パラミロン蓄積は変化 しないが嫌気状態でのワックスエステル産生を低下させる因子などを獲得することに成功した。今 後は、各因子ノックダウン時の代謝物の変動について解析する予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、高CO下でも活発に光合成を行い、貯蔵多糖からワックスエステルを産生することを見出されたことは評価できる。一方、企業ニーズを把握し、そのニーズに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、バイオ燃料ではなく、付加価値の高い生産物にも変換できないか検討されることが望まれる。
低コスト有機栽培実現のための緑肥活性型微生物の製剤化 大阪府立大学
東條元昭
大阪府立大学
下田忠久
有機野菜の栽培の産業化を妨げている連作障害を防ぐための新規技術として、緑肥分解活性が高い菌寄生菌ピシウム・ナンの製剤化法を開発した。ピシウム・ナンの3つの菌株の製剤を調整し、製剤から菌を再分離したところ、内1菌株のみが再分離された。また、同じ3菌株を緑肥作物とともに市販の園芸培土に混合して90日間静置し、菌の増加率を調べた。その結果、製剤から再分離された1菌株のみが200倍前後にまで密度を増加させた。他の2株では増加はほとんど見られなかった。これらの結果から、ピシウム・ナンの製剤化が可能であること、また、菌株によって増加の程度が著しく異なることがわかった。今後、増加しやすい菌株を用い、製剤化後も活性が安定することと、圃場レベルでの連作障害抑制作用を検証する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初設定した3つの目標のうち、2つを達成した点については評価できる。一方、研究開発を継続することにしており、現段階で具体的な技術移転が可能となるかは判断できないと思われる。今後は、ピシウム・ナンの3つの菌株での緑肥種の選定と製剤化についての実験が行われているが、得られた結果について十分な検討が望まれる。
食品未利用資源の高度化利用の為の新規マセレーション酵素の開発 大阪府立大学
阪本龍司
大阪府立大学
下田忠久
小麦フスマを新規マセレーション酵素で処理して得られる加工物の利用を目的に、本研究では加工物中の栄養成分の同定と動物実験による機能性評価、マセレーション条件の最適化、酵素生産条件の検討を行った。まず栄養成分の同定後に動物実験を実施し、本加工物特有の機能性を見出した。主要マセレーション酵素については異種大量発現による組換え酵素を用いてマセレーション条件を最適化した。続いて野生株による酵素高生産条件を決定し、本酵素を用いて小麦フスマのほぼ全部分を可溶化して加工物を回収することに成功した。今後は本成果をパイロットスケールで実証化し、低コスト、低エネルギーで容易に実施可能な技術の確立を目指す。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、プロトプラストの栄養生理学的解明など目標は全て達成されたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、酵素生産技術の実用化を目指した共同研究の可能性が高く、植物食料資源の利用拡大に多大な貢献をする技術開発であることから、実用化が望まれる。この成果は小麦フスマだけでなく全ての植物組織に適用可能であり、実験室レベルからスケールアップすることにより、今後、廃棄物の少ない植物資源の利用技術の開発が期待される。
下水道資源(下水汚泥)を活用した廃グリセリンの資源・エネルギー化 大阪府立大学
徳本勇人
大阪府立大学
亀井政之
下水汚泥を種菌とし、グリセリンを発酵槽内濃度2.52 g/L以下で嫌気発酵槽へ投入すると、メタン、各種有機酸が生成した。次に、グリセリンの投入量を発酵槽内濃度25.2 g/Lとなるまで増加させると、水素が得られた。このとき、発酵液中には化成原料の1,3-プロパンジオールが生成した。廃グリセリンを原料として投入した場合は、発酵槽内濃度10.1g/L以下となるように投入したとき、グリセリンの分解に伴う水素、及び1,3-PDOの生成が見られた。その後、残存物質は有機酸、メタンとなり、共発酵開始より、全12日間の培養で、下水汚泥中の固形分は最終的に、約60%近くも減容化された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、回分式発酵実験によって、必要な基礎的データは得られていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、廃棄物からの有用物質の生成、利用という点で実用化が望まれる。廃棄物を総合的に有効に利用する技術は必須の技術であり、今後、実用化に向けた研究の進展が期待される。
食品中トランス酸の分析に必須となるガスクロマトグラフィー用標準品の調製 大阪府立大学
山本公平
大阪府立大学
金澤廣継
硬化油に由来するトランス酸摂取低減化に向けて、食品中のトランス酸含有量の規制、食品表示義務化などの対策が世界各国でとられている。我が国では平成23年2月消費者庁より「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針について」が発表された。食品中トランス酸量の表示に向けて、その分析法はガスクロマトグラフィーを用いて行うことになっている。本申請ではガスクロマトグラフィーによる食品中のトランス酸定量に必要となる標準品の調製を行なう。標準品とはトランス酸含有量が1.0, 5.0%となるよう植物油硬化油と植物油を混合した混合油脂、それから調製した脂肪酸メチルさらに分画したトランス酸メチルをいう。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、トランスジエン酸が十分調製できなかったものの、調製方法、分析実験など全体的にほぼ達成されたことは評価できる。一方、震災等の影響で、今後の研究展開に支障をきたしているようであり、さらにデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、トランスジエン酸を確保することに検討を加えれば、目標の標準品作成は可能であり、企業との提携あるいは技術移転を検討されることが望まれる。
イヌES細胞・iPS細胞から血液系細胞への分化誘導サイトカインの作製技術の確立 大阪府立大学
稲葉俊夫
大阪府立大学
西村紀之
輸血はドナー確保の難しさやウイルス感染の危険性を含むことから、その改善が求められている。本課題では、犬の胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)から赤血球や血小板に誘導するのに必要となる犬トロンボポエチン(TPO)およびエリスロポエチン(EPO)の作製技術の開発に取り組んだ。その結果、当初予定していた哺乳類細胞から機能的タンパク質を発現できうるイヌTPO遺伝子およびEPO遺伝子の作製を達成できた。今後、両サイトカインを使うことによって、犬ES細胞やiPS細胞から効率的に血液系細胞に分化誘導する系を構築する。また、作製した遺伝子を生体内へ導入する遺伝子治療法の開発にもつなげる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、イヌTPO遺伝子およびEPO遺伝子の作成技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、イヌES細胞やiPS細胞から効率的に血液系細胞に分化誘導するサイトカインへの供給などでの実用化が望まれる。今後は、今回得られたデータをベースに新規性、進歩性を十分評価したうえで、技術課題の研究開発の進展と特許出願が期待される。
卵内接種ワクチン用リポソームキャリアーの開発 大阪府立大学
渡来仁
大阪府立大学
西村紀之
本申請では、鶏胚へのワクチネーションを可能にするリポソームキャリアー(卵内接種リポソームワクチン)の確立を目指すために、1)羊膜腔液内で80%以上安定な形態を維持できるリポソームの脂質組成を明らかにすること、2)卵内接種後、高い免疫誘導能を示す最適なリポソーム粒径について明らかにすることを目標に研究を行った。その結果、いずれの目標も達成することができた。今後は、今回の研究成果を基に、リポソームの粒径の違いによる免疫誘導能について解析し、より高い免疫応答を誘導できる最適なリポソーム粒径ならびに卵内接種リポソームワクチンの最適なアジュバントについて検討し、特許出願を行う。その後、実用化に向けて企業へのアプローチを進める。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、羊膜腔液内で80%以上安定な形態を維持できるリポソームの脂質組成を明らかにし、卵内接種後高い免疫誘導能を示す最適なリポソーム粒径について明らかにするという二つの目標の達成に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、高い免疫応答を誘導するための最適粒径や、アジュバントの種類、抗原との量比などの詳細な検討が必要であるが、最適粒径の決定、アジュバントの検討などの具体的な計画が示されており、的確な内容である。リポソームを用いた卵内接種は、ワクチン投与法としては優れたアイデアであり、リポソームの低廉調製法、保存法などの技術開発が進めば実用化が期待されることから、今後も研究開発の継続が望まれる。
ポリフェノール・タンニンと塩基性繰り返しペプチドの親和性を利用する高選択的識別表示 大阪府立大学
笠井尚哉
大阪府立大学
西村紀之
総括: 高選択的タンニン識別化試薬の合成を検討し、赤色色素化試薬ダブシル化ペプチドを合成、分離精製した。本試薬は縮合型タンニンに親和性が認められ、この結果を利用し、定量化が可能であることを確認した。またこの沈殿は、再可溶化させることで、本試薬-タンニンの可溶化物として分析も可能であった。さらに、本試薬は植物組織の選択的なタンニン染色剤としても明瞭に染め上げることができ、利用可能なことを確認した。適当な合成試薬により、蛍光化試薬も調製可能であった。担体化させるなどしたキット化まではできなかったが、実際的に充分使用可能なことと原理的なことを確認できた。今後、これらの成果を基に 実際的試薬として紹介や展開を行いたいと考えている。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、縮合型タンニンの定量可能性に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、最終製品形態についての検討などでの実用化が望まれる。今後は、品質管理に使用できる可能性が示唆されることにより、さらに大きな市場への展開が期待される。
ゴボウの根の高度利用のための新しいフルクトオリゴ糖高含有化貯蔵法の開発 大阪府立大学
今堀義洋
大阪府立大学
野村幸弘
これまでにゴボウの根に含まれるフルクトオリゴ糖が低温貯蔵により増加することが明らかとなったが、本研究開発は貯蔵および処理条件を詳細に検討し、今までに実施した貯蔵方法よりもより多くのフルクトオリゴ糖含有量が得られる貯蔵および処理条件を探索することを目指した。その結果、ゴボウを有孔ポリエチレン袋 (700×900mm、厚さ0.03mm、孔数32個)で包装し、1℃下で貯蔵することでゴボウに含まれるフルクトオリゴ糖をより多く得られることがわかった。今回得られた方法は、安価で、作業が簡単であるので、企業等への技術移転は容易である。しかし、より経済性を考慮した場合、実用化に向けてゴボウに含まれるフルクトオリゴ糖をさらに増やしていくことが求められる。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、フルクトオリゴ糖の含有量を増やすことは出来たことは評価できる。一方、低温貯蔵技術がコスト的に合うのかどうかに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。フルクトオリゴ糖が低温処理により増加する目的は或る程度達成されたが、今後は、それによる風味、味の変化はどうか、またどの程度まで含有量を高めたら良いのか検討されることが望まれる。
セルロース系バイオマス分解酵素の大量生産に向けた糸状菌の分子育種 大阪府立大学
谷修治
大阪府立大学
野村幸弘
本研究は、糖質加水分解酵素遺伝子の転写抑制因子遺伝子を破壊した株(ΔcreA株)において、当研究室で同定した新奇転写因子(cellobiose response regulator, clbR)を高発現(clbRox)させることにより (ΔcreA:clbRox株)、エンドグルカナーゼ, キシラナーゼ, β-グルコシダーゼ生産量をそれぞれ10倍向上させることを目的とした。ΔcreA:clbRox株を小麦ふすまを炭素源として培養した際の各種酵素生産量は、コントロール株と比較してそれぞれ5.5倍, 9.1倍, 5倍増加した。キシラナーゼ以外は目標の生産量に達しなかったが、ΔcreA:clbRox株では各酵素生産速度が速くなるとともに、コントロール株ではバラバラであった最大酵素量のピークを揃えることが可能になり、各酵素成分の最大量を含む酵素製剤の安定生産に寄与する技術開発に成功した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初の目的の計画遂行については評価できる。一方、社会還元の可能性に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、糸状菌の特定転写因子を高発現させることで、セルロース系バイオマスの分解に適した3種の酵素の生産量について、目標を達成されることが望まれる。
高収量ウコン栽培に向けたアーバスキュラー菌根菌の利用に関する研究 −アーバスキュラー菌根菌の同定と有望菌株の探索− 大阪府立大学
松村篤
大阪府立大学
野村幸弘
ウコンは健康食品として注目されており、この先も需要拡大が見込まれている作物である。一方で、本作物を栽培する上では、大量の肥料や水が必要とされる。沖縄県の土壌は一般的に地力が低く、また有機質肥料を主に使用して栽培されているため、旺盛な生育をするウコンの養分要求量を十分に満たすことができていないのが現状である。その解決の方策として、宿主植物の養水分吸収を高める効果があるアーバスキュラー菌根(AM)菌の利用を検証する。本研究では第一ステップとして現地で栽培されているウコンの根に感染しているAM菌の単離・同定を行い、AM菌群集を把握するとともに、ウコンの生育促進効果が高いAM菌の選抜に取り組んだ。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、有望な菌の分離の開発を継続する意義については評価できる。一方、基礎研究の段階であり実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。多くのGlomus属 が分離されたが、これらの株がウコンの生育および収量の増加に有効であるとの結果が得られていないので、今後も有望株の選抜を継続されることが望まれる。
病原遺伝子を改変したウイルスの人工的設計によるメロンえそ斑点ウイルスのワクチン開発 大阪府立大学
望月知史
大阪府立大学
野村幸弘
本研究課題は、アミノ酸変異を伴わない同義置換によりウイルス毒性遺伝子を改変し、弱毒株を作出する技術を開発することを目的としている。メロンえそ斑点ウイルス(MNSV)の毒性因子である複製酵素遺伝子を部分的に非植物型に脱最適化した6種の変異MNSVを人工合成し、メロンへの感染性と毒性を確かめたが、強い感染性を保ち毒性のみを喪失した弱毒株を得ることはでなかった。複製酵素遺伝子の脱最適化はウイルスの毒性より感染性に影響しやすいと考えられた。一方、毒性を示さなかった二つの変異株については、感染性が非常に低下しているが喪失していない可能性があるため、今後さらなる脱最適化の標的部位の絞り込みを行う。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、次のステップへ進めるための技術的課題は明確となったことは評価できる。一方、研究成果が応用展開された場合に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。弱毒化となる系統の選抜を目指した研究ではあるが、今後は、感染性と毒性が相関しないという実験データの追加が望まれる。
猫の腹水貯留性疾患を鑑別診断するための迅速かつ簡便な方法の開発 大阪府立大学
田島朋子
大阪府立大学
野村幸弘
猫伝染性腹膜炎(FIP)罹患猫腹水中に含まれるFIP特異的蛋白検出の簡便な方法を開発することを目的とした。まず、FIP特異的蛋白に対する抗体を得るため、FIP罹患猫腹水を酢酸と反応させて得た沈殿を抗原とし、ウサギでポリクローナル抗体を、マウスでモノクローナル抗体を作製し、サンドイッチELISAの系の作出を試みた。10種類の組合せを試みたが、感度が悪いものや非特異反応の強い組合せがあり、満足できる結果が得られていない。今後も、抗体の種類を増やす、システム自体を変えるなどの検討を行う。
一方、酢酸で得られた沈殿中の蛋白に関して、これまでは蛋白の組成について全く不明であったが、今回その蛋白を質量分析して、あらたに3種類の成分を同定した。急性期蛋白が主であるが、今後、これらの蛋白がFIP罹患猫に特異的な蛋白のマーカーになりうるかも含めその意義についても検討を行なう。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標をほぼ達成したことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、産学共同研究開発に繋がる可能性はあるが、確実な成果をまず得る必要がある。今後は、抗原検出系の精度を上げることが望まれる。
新規高感度蛍光イメージングのための細胞培養プラズモニックチップの創製 独立行政法人産業技術総合研究所
田和圭子
独立行政法人産業技術総合研究所
堀野裕治
提案者はこれまで、カバーガラスの代わりにプラズモニックチップを用い、タンパク質アレイや細胞の蛍光顕微鏡観察で、10倍〜100倍明るい蛍光像を示してきた。しかし、銀で成膜されたプラズモニックチップは耐久性に問題があったため、本研究では、1)オンチップで細胞培養ができるような耐久性をもち、2)100倍の対物レンズで高S/Nで蛍光観察できる細胞培養ディッシュに代わるプラズモニックチップを作製することを課題とした。研究の成果として、チップの成膜プロセスの改善などにより、10日間の細胞培養が可能となった。また、培養した神経細胞で、空間分解能が2倍以上で、10倍以上明るい蛍光像を取得することができた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標であるチップの構造安定性と100倍対物レンズでの蛍光像のS/N比向上を達成している点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本技術のこれまでの研究基盤はしっかりしていることから、高分解能化や、高蛍光強度化などが望まれる。100倍対物レンズ下でも10倍以上明るい蛍光像を取得するという目標は達成されており、今後は、産学共同等の次の研究開発ステップへの展開が期待される。
蛋白質構造解析のための新規結晶化剤を用いた効率的な蛋白質結晶化法の開発 関西学院大学
山口宏
関西学院大学
吉田京子
蛋白質の結晶構造解析のための高品質結晶を効率よく供給する簡便な手法を確立するための方法論開発を目指した。数種のモデル蛋白質を用いて試験し、効率的な試薬の組み合わせを探索した。その結果として、アミノ酸等の添加剤が非特異的な凝集を押さえる効果を用いて、蛋白質試料の沈澱剤として用いる塩やポリエチレングリコールなどが高濃度になるように設定した過飽和度の高い溶液条件で、凝集抑制能を持つ結晶化剤存在下で条件検索を行う事が効率的な結晶化条件検索法になり得るという可能性を得た。しかしながら、これらの新規結晶化法の作用機序の物理化学的な解明には至らず、今後引き続き研究を続け、最終的な条件決定へ繋げて行く必要が残された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、達成されていない課題もあるが、成果は得られ特許出願されていることは評価できる。一方、残された課題を今後実施し、タンパク質結晶化の効率的な手法として確立して、どのような形で市場に出すかに向けた技術的検討やデータの積み上げなどを行うことが必要と思われる。ある程度の期待通りの成果は得られているが、今後残された課題を実施し、データの蓄積により技術移転への展開へ進むことが望まれる。
セルロース/水酸化ナトリウム水溶液から精密構造制御されて得たナノ食品 神戸女子大学
山根千弘
本研究課題の目標は、再生セルロースの構造制御技術(主に低結晶化沈殿技術)の基盤を確立することである。本研究課題では、構造制御の基本的考え方(初期構造である分子シートの形成を抑制すること)を確立し、多糖を添加すること、または有機溶剤を凝固系に用いることなどにより目標値(現在の再生セルロースの結晶化度の1/2程度)をほぼ達成した。そしてナノ食品として十分満足行く食感を確保することができた。低結晶化は本研究課題の本質的課題だったので、これが解決されたことで、民間企業との共同研究を開始することができた。民間企業では、製造要素技術を開発するとともに、カロリーゼロの、油脂代替クリームとして、ナノ食品の展開を図る。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、再生セルロースの製造技術・非結晶化技術は、当初の目標どおり確立できた点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、ノンカロリークリームや可食フィルムなどでの実用化が望まれる。今後は、再生セルロースの製造技術を確立しただけでなく、アミロースを添加することで当初目的としたセルロースの非結晶化技術も完全に確立されることが期待される。
植物工場におけるクラゲを利用したアイスプラント水耕栽培システムの確立 神戸大学
福士惠一
神戸大学
西原圭志
アイスプラント栽培におけるクラゲ上澄み液の有効性を明らかにするために、クラゲ上澄み液を栽培用溶液に添加し、白、赤、青、紫と異なる色の光を照射し、アイスプラントを栽培した。収穫したアイスプラント中の金属イオン、有機酸及びアミノ酸を定量した結果、クラゲ上澄み液を使用すると、光の色の違いにかかわらず、アイスプラント中のMg2+含有量が増加する傾向が見られた。その他の金属イオン、有機酸、アミノ酸含有量については、クラゲ上澄み液の有無、光の色の影響は見られなかった。クラゲ上澄み液の有効性を明らかにはできなかったが、少なくともアイスプラント栽培に有効利用できることがわかった。現在、照射時間をこれまでの24時間から12時間に短縮し、栽培中であり、収穫後、同様の分析を行う予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、一部の目標達成については評価できる。一方、社会還元に導かれることは期待できるので、さらなる研究成果の蓄積に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、真空加熱による濃縮操作など、コスト面での検討が望まれる。
野菜に存在する活性酸素吸収能力の非破壊測定法開発 神戸大学
白石斉聖
神戸大学
大内権一郎
本研究は野菜に含まれる抗酸化物質を相関係数0.9以上の精度で非破壊測定可能な濃度算出計算式作成を目標として行った。近赤外線分光装置を用いてスペクトルデータを取得、測定試料から従来法による実測値を測定し、多変量解析による濃度算出計算式を作成した。還元型アスコルビン酸計算式から得られた推定値と実測値の相関係数は0.971(計算式データ)、0.819(評価用データ)、トータルORACでは0.758(計算式データ)、0.502(評価用データ)となった。温度変化の小さいと考えられる同一期日測定データのみでORAC値計算式作成を行い0.995(計算式データ)、0.792(評価用データ)の計算式が得られた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、アスコルビン酸については、ある程度目標が達成されたことについては評価できる。一方、葉物野菜以外の野菜や果実類を対象として考えていることは実用化の面で不可欠であるが、多くの測定データを取ることや測定温度を考慮することで精度を上げる点が必要と思われる。今後は、アスコルビン酸の成果も他品目で達成できるかどうか汎用性を確認し、測定温度等の次の技術的課題が明らかとなり、多品目で精度の高い結果が得られることが望まれる。
脂質過酸化率の測定による青果物の低温障害の非破壊診断技術開発 神戸大学
黒木信一郎
神戸大学
大内権一郎
低温感受性果実である収穫後のキュウリ果実を対象に、可視近赤外分光分析法とケモメトリックス解析を用いた、脂質過酸化率の非破壊計測技術を開発することを目標とした。低温障害の進行に伴って、イオン漏出割合、イオン漏出速度定数、および脂質過酸化率が有意に増大し、生体膜の機能が劣化することを示した。キュウリ果実の可視近赤外透過スペクトルを説明変量としたPLS回帰分析により、目標とした±0.05%以下の良好な精度で、脂質過酸化率を推定可能なモデルを開発した。また、低温障害の進行に伴い特異的に変化する波長帯を明らかにした。今後は、実用機開発と器官毎の膜機能劣化のより精緻な評価が必要であると考えられる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、可視近赤外分光法を用いて脂質過酸化率を推定できていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、植物毎の低温障害要素が明確になれば、障害のない流通技術の構築が期待できる。今後は、技術移転につながる機器開発を実際に検討されることが望まれる。
麹菌由来ペプチドをリード化合物とした構造科学に基づく新規薬剤候補物質の開発 神戸大学
鶴田宏樹
神戸大学
柘原岳人
麹菌Aspergillus oryzaeはエラスターゼ活性を阻害するペプチド(A.oryzae Elastase Inhibitor、AOEI)を産生する。AOEIは新規阻害剤として将来的に産業利用できる可能性を有するものの、その阻害様式などは不明である。そこで生化学的・構造生物学的アプローチによって、AOEIの阻害特性を解明することを計画した。AOEIの生体内発現量は少ないため、組換えAOEIの取得が研究の律速となっている。本研究では、特性解析に必要な量のAOEIを取得するための、大腸菌を用いた発現系を確立した。今後、この組換えAOEIを用いた構造ベースでの新規阻害剤開発を行う予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。企業との連携体制も構築されており、大腸菌を用いた組換えAOE1の発現系の確立と精製にメドがついた段階である。一方、当初の目標には、更なる研究開発が必要と判断される。まず、当該物質の有用性を明確にするためにも、麹菌の発現改良、大腸菌からの活性チェックなど残された課題の解決が望まれる。今後、生化学的・構造科学的手法を活用した有用な阻害剤の開発など着実な展開が期待される。
インスリン抵抗性を改善する機能性脂質の開発に関する基礎研究 神戸大学
芦田均
神戸大学
鶴田宏樹
本研究開発では、アラキドン酸の筋肉細胞におけるインスリン抵抗性抑制作用機構の解明を目的として実施した。アラキドン酸は、既に有効性が報告されているオレイン酸と比べて1/75の濃度で同等の効果を示した。その効果は、アラキドン酸のnPKC活性化の抑制により、パルミチン酸が惹起するインスリン受容体発現量の減少やインスリン伝達におけるシグナル伝達阻害が改善されることに起因することを明らかにした。また、食用油脂をマウスに13週間与えて糖負荷試験を実施したところ不飽和脂肪酸であるリノール酸を多く含むコーン油は、パルミチン酸を多く含むラードやパーム油よりインスリン抵抗性を発症させにくいことが示唆された。今後は、リノール酸より効果が強いアラキドン酸などの多価不飽和脂肪酸を富化させた機能性食用油脂開発の基礎となる研究を展開する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、アラキドン酸がリノール酸よりもインスリン抵抗性を生じにくい機構の解明に繋がる成果に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、アラキドン酸をリッチに含むように改変した中性脂肪の細胞への安全性についての検証を行うことが望まれる。今後は、アラキドン酸などの多価不飽和脂肪酸を富化させた機能性食用油脂を開発し、その研究開発成果に基づき新規特許を出願することを期待したい。
食品ハイドロコロイドのナノ構造制御による新規大豆食品の開発 兵庫県立大学
中川究也
兵庫県立大学
上田澄廣
本研究開発は、加熱凝固する大豆タンパクを原料として、加熱により融解するような仕組み(まるでプロセスチーズのようにとろける)を有する新規食品を製造することを目標とした。一定濃度の豆乳に適切な融点を有する食油を加え乳化し、これを最適な条件にてゲル化させることによって、目標となる性質を有する食品の試作に成功した。様々な作製条件(豆乳濃度、乳化条件、油脂濃度、ゲル化条件、ゲル化剤濃度等)を検討した結果、目的の特性を試料に付与するためにはゲル化操作条件が最も重要な因子であることを見出した。今後、これを工業的に実施(スケールアップを含めて)するための手法が必要となるため、今後の課題として検討を続けていく予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも結果が出て課題が明確になったことについては評価できる。一方、本技術が確立された場合、その社会的インパクトも非常に大きいものであるので、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、ゲル化条件を含めた設定、溶融性の指標についての検討や、また、加熱等の物理的操作により、その最初のエマルジョン相は破壊されないのか等、さらなる検討が望まれる。
味覚センサーを利用した清酒酵母のデータベース化と酒質の解析 奈良県工業技術センター
松澤一幸
(財)奈良県中小企業支援センター
山田裕士
清酒の代謝産生物をGC-MS等の分析機器や味覚センサーで分析し、清酒に使用されている酵母の代謝産生物に関するデータベースを構築し、そのデータベースを用いて酵母のスクリーニング法を開発することが最終目標である。今回、その基礎的データの蓄積のために、味覚データと種々の分析機器で得られた代謝産生物の含有量データをデータベース化することができた。また、得られたデータを網羅的に統計解析することにより、優れた清酒とそれ以外の清酒の差の一部を明確化できた。今後、さらなる代謝産生物を測定し、清酒酵母の発酵液中の代謝産生物と比較して、優れた清酒をつくることができる酵母のスクリーニング法の開発につなげていきたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。初期の研究段階であり、今後、発酵中の酵母のデータ化が進めば、優良酵母の選別が可能となり、県内醸造企業との産官学連携による新製品開発へと発展する。消費者には客観的な清酒の評価ができ、利便性が上がるであろう。
銅運搬菌に抵抗力を持つ銅系木材防腐剤の開発 奈良県森林技術センター
酒井温子
銅は多くの微生物に対して抗菌力を持ち、かつ人に対する安全性が比較的高いことから、木材用防腐剤の主成分として利用されるが、木材腐朽菌の中には、木材に含浸させた銅を、木材内部から外部へと運搬する性質を持つ銅運搬菌が存在する。そこで、本研究では、銅運搬菌に抵抗力があり、運び出されない銅化合物を見つけることを目的とし、それを主成分とする木材防腐剤の開発という最終目標に向けて、足がかりを得ることを目指した。15種類の銅化合物を用いて処理木材を調製し、4種類の銅運搬菌による培養試験を実施した。その結果、銅化合物によって運ばれやすさに差があることが明らかになった。また運ばれやすさの傾向は、4種類の菌に共通していた。今後は、銅運搬菌に運ばれなかった銅化合物やその類似の化合物に注目し、新規な銅系木材防腐剤の開発を検討する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、培養実験を実施し、銅化合物の種類のちがいにより、運ばれやすさに差があることを明らかにしたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、過酷な環境における木材の利用可能性の向上が望まれる。今後は、実用化で問題となる臭気のない化合物を探すことを期待したい。
カキ紅葉のクラフト分野応用のための耐光性・耐乾性向上技術の確立 奈良県農業総合センター
木村桐
(財)奈良県中小企業支援センター
山田裕士
美しく紅葉した柿の葉をクラフト分野で活用するためには、日常環境において一定の期間、葉の色や質感、強度が保たれなければならない。質感、強度については、これまでに、グリセリン処理により乾燥が抑制され、柔軟性が保たれる事を検証してきたが、同時に葉色を保つことが困難であった。そこでグリセリン処理に併せて退色抑制剤を検証したところ、数種にカキ紅葉に対する効果が見受けられた。今後、処理条件をさらに精査し、クラフト素材として商品化を進める。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、概ね当初の目標は達成されたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、今後の応用展開に向けて、より産学官共同・連携を計るべく、工芸デザイン関連分野の業界の方等もプロジェクトのメンバーに招くことが望まれる。今後は、葉色を保てる化合物を明らかにするなど、技術移転につながる可能性が高まっており、実用化、商品化へ向けての検討が加速されることが期待される。
腸溶性を付与した柿タンニンを活用した健康機能性食品素材の開発 奈良県農業総合センター
濱崎貞弘
(財)奈良県中小企業支援センター
山田裕士
柿タンニンはin vitroで糖の吸収阻害活性を示すが、in vivoでは効果が現れない。これは、柿タンニンが小腸に達するまでに失活しているためと推測される。そこで本実験では、柿タンニンを包摂剤で処理して腸溶性を付与する場合と、柿タンニンの奈良式抽出法脱渋により得られる不溶化した柿タンニンを内包するタンニン細胞を、一種の柿タンニンカプセルとして活用する方法について検討した。その結果、柿タンニンの包摂処理により、柿タンニンが活性を保ったまま小腸に到達したと示唆されること、および、タンニン細胞からのタンニン溶出量が脱渋方法により異なることが明らかとなった。しかしながら、その効果にはまだ不十分な点があり、更に条件を精査してより効果の高い腸溶性柿タンニンを開発していく必要がある。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。一部の達成度については評価できる。一方、今後の計画は的を絞って進めるべきであり、産学共同開発に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、糖の吸収抑制試験は実施されているが、脂質の吸収抑制試験は未検討であり、これから実施されることが望まれる。
緑化資材用エゾスナゴケの清浄化と高品質化技術の開発 近畿大学
秋田求
近畿大学
根津俊一
緑化用に供給するスナゴケ種苗を清浄化し液体培地を用いて効率的に増殖し、かつ、カビによる病害を受けにくくすることを目的とした。目標である藻類発生の完全防止法は見出せなかったが、培養装置と条件を工夫することによって、液体培地で藻類の発生をみることなくコケを増殖できた。好適な液体培地が存在することも証明された。コケを培地により繰り返し洗浄した結果、容器内環境ではあるが、対照区(未処理区)と比較して多数の新芽が誘導された。カビ病害防止技術については、抗カビ性菌を予め含む培地で培養することで、順化時に病原性のカビを接種してもカビの増殖が著しく抑制される茎葉体を得ることができた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、藻類の発生を抑制しつつコケを培養可能な方法が見出されたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、省エネルギーに寄与する緑化対策としてのコケの大量培養は需要が多いと考えられる。室内実験に留まっている等課題はまだ残されているので、今後は実証実験への展開が期待される。
損傷発生を抑制した効率的なヒロメ超音波洗浄技術開発 和歌山県農林水産総合技術センター水産試験場
諏訪剛
和歌山県農林水産総合技術センター水産試験場
木村創
本研究では、ヒロメ洗浄に超音波を利用する際に問題となる、藻体の損傷発生を抑制する技術開発を目的とする。23年度は、ヒロメの汚染主体の一つであるヨコエビ類が、超音波刺激により数秒で藻体から離れることを明らかにした他、7種類の海藻に超音波を送波した時の損傷を比較し、ヒロメとワカメは他の藻類より損傷を受けやすいことなどを確認した。24年度は、洗浄の規模を拡大した試験として、500リットル水槽を組み合わせた超音波洗浄装置を準備し、ワカメ(ヒロメの代用)を使って実験した。その結果、本装置では300〜600gの海藻が、藻体に損傷を発生させずに洗浄可能と考えられた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標に従って地道な実証研究を試行錯誤しながら遂行したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、実証研究が続くと思われるが、並行して産学共同等へのフォローアップ体制の構築が望まれる。今後は、産業現場への負担軽減や廃棄減といった環境負荷の低減に繋がることが期待される。
微圧炭酸ガス処理による調味梅干し加工技術の開発 和歌山工業高等専門学校
楠部真崇
和歌山大学
鈴木義彦
近年、減塩化された調味梅干しが野生酵母で汚染される問題が起こっている。本技術は非加熱かつ日持ち剤無添加の商品を製造するために開発されたものである。大阪および和歌山で実施した展示会での試食ではモニターの反応も良く、販売を期待する声が多かった。今回の研究で、処理に必要な最低圧力が0.8 MPaであることが示された。処理温度と処理時間には依存するが、今後他種食品で本技術を展開していく際には非常に意味のある数値であるといえる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に梅干し加工現場より酵母5種を分離し、微圧炭酸ガス処理により、雑菌汚染のリスクを軽減できる可能性を示したことは評価できる。既に民間企業からの共同研究の検討も行っており、今後の開発課題の解決により、実際の製造工程での有効性が確かめられることで、食品の安全性と、品質保証に有効な手段となる可能があるものと判断される。
オートムギの機能性成分アベナンスラミドの効率的利用を志向した新規化合物の探索および代謝制御技術の開発 鳥取大学
石原亨
オートムギ種子に含まれるアベナンスラミド類は複数の有用な生理活性を有する。より強い活性をもつ化合物を得るために、種子から新規アベナンスラミドの単離・精製を行い、新たに4種の化合物の構造を決定した。また、アベナンスラミド類の新たな合成法の確立にも成功した。得られたアベナンスラミド類の抗酸化活性を調べたところ、既知の化合物と比較してより強い活性をもつものが見いだされた。一方で、吸水種子中の個々のアベナンスラミド類の蓄積量を調べた。いずれのアベナンスラミド類も増加傾向を示した。また、エリシターとして作用しアベナンスラミド蓄積量を増加させる可能性がある多糖類を投与したところ、アベナンスラミド類の蓄積量を増加させる作用を有するものを見いだすことができた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標は十分に達成されたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、ヒト、動物介入試験を実施し、次の展開へ発展させることが望まれる。今後は、成果を技術移転につなげるために広範な物質特許や特許の進歩性が充足される用途特許の権利化が必要である。
改良型人工染色体ベクターを用いた創薬探索モデルマウスの作成 鳥取大学
大林徹也
鳥取大学
山岸大輔
創薬研究ががすすむにつれて、新たな創薬ターゲット探索には、個々の遺伝子を個別に機能解析するだけでは不十分であり、関連する複数の遺伝子産物のコンビネーションに注目する必要が生じてきている。また疾患・病態との関連を解明するためには、培養細胞だけでなく遺伝子を導入したモデル動物を効率よく作成することが重要になってきている。 
 申請者は、鳥取大学で開発してきた人工染色体ベクター技術に改良を加えて、複数の遺伝子を効率よく導入できる人工染色体ベクターの開発に成功し、2011年に論文発表した。この技術をさらに洗練化して、複数の遺伝子を導入した創薬探索モデルマウスを作製する。
期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に遺伝子改変マウスを作る技術に関しては当初目標値を上回る数値を達しており、成果が顕著である。一方、技術移転の観点からは、設立された大学発バイオベンチャー”(梶jジーピーシー研究所”などでの実用化が期待される。今後は、本技術を応用し、事例を増やし良い成果を出していけば、本技術の魅力を社会に訴えることが可能となり、重要度があがっていく技術になることが期待される。
複数コピー数の遺伝子を簡便に導入するための染色体ベクターの開発 鳥取大学
中山祐二
鳥取大学
山岸大輔
本研究開発では簡便に複数コピーで遺伝子を搭載できるプラットフォームをもつ人工染色体を構築した。このプラットフォーム内には、ファージの持つインテグレースの認識配列(attP)を34個並列させた。構築した人工染色体はホスト細胞の中で安定に保持され、attB配列を持つ外来遺伝子を、プラットフォームのattPサイトに外来遺伝子を挿入できることが確認できた。今後、より多くの遺伝子を高効率に導入することが課題となったが、タンパク質高生産系への応用に向け、今後の開発に有用な知見が得られた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもattP配列を並列に34個保持するプラットフォームをもつ人工染色体の作成からそのプラットフォームへ遺伝子を挿入するところまでの技術に関しては評価できる。一方、複数の遺伝子を挿入に関しては、新たなアイディアもあるようであり、改良に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、それらの課題を解決し、バイオ、創薬などタンパク質生産が期待される分野へ展開されることが望まれる。
慢性閉塞性肺疾患の治療・予防薬候補タンパク質産生系の開発 鳥取大学
西田直史
鳥取大学
山岸大輔
本研究は、タンパク質産生型人工染色体ベクターを用いて、安定して大量のバイオ医薬候補タンパク質を産生する細胞を作製するためのプラットフォームを構築することが目標である。第一段階として、簡便かつ迅速に目的遺伝子を導入した産生細胞を樹立できることを明らかにした。また高産生させるためのパラメータの最適化に知見を得た。また、第二段階として設定した、中規模培養条件化でタンパク質大量産生を達成するための細胞を樹立することに成功した。今後、当該細胞を用いた医薬候補タンパク質高産生細胞を樹立し、タンパク質大量産生系確立の達成と疾患治療への応用を見据えたタンパク質の機能評価を実施する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。目標値を到達することは出来なかったが、今後研究を推進するための基礎的データ収集、次ステップの研究うに繋がるノウハウの蓄積は出来ている。特にタンパク質産生型人工染色体ベクターを用いて安定したバイオ医薬候補タンパク質を作成するための技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、産業応用するために大学発ベンチャーが企業され、この企業において実用化が望まれる。今後は、当初に設定された目標値の到達に向け、更に、開発研究が遂行され、医薬品産生に寄与していくことが期待される。
メタボリック症候群の原因となる複数の症状に対して同時にかつ効果的に作用する乳酸発酵食品の開発 島根県産業技術センター
渡部忍
島根県産業技術センター
塩村隆信
メタボリック症候群の効率的な対策として研究責任者らが島根県松江地域の特産品である「津田かぶ」から分離したGABAを生産し且つコレステロール低下効果を示す乳酸菌(L.brevis 119-2)を用い両方の効果が同時に期待できる機能性食品製造の可能性を検討した。その結果、蛋白質分解酵素活性が高くGABA生成に必要な遊離グルタミン酸を産出する菌株の選抜、また津田かぶ由来乳酸菌のGABA生産に関与するgad遺伝子高発現の培養条件を見出した。さらに、発酵乳試作品を投与したラットのコレステロール低下効果を確認し、両方の機能性を発揮する製品開発のための基礎条件を確定した。しかし、蛋白質分解菌株とGABA生産乳酸菌による複合発酵条件の設定までには最終的に至らなかった。今後、今回得られた条件について企業の協力を得ながら製造現場での実証試験を行い、製品化に向けた検討を進める予定にしている。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、動物性食品由来の乳酸菌と麹のプロテアーゼとの併用でグルタミン酸を目的のレベルまで生産することに関する技術は評価できる。一方、技術移転の観点からは、乳酸菌発酵食品のコレステロール蓄積抑制効果や血圧降下作用があるといわれるGABAなどでの実用化が望まれる。今後は、初期の目標である複合培養条件の見直しが必要であるが、その際、培養条件をあまり複雑にしないで検討実施していただきたい。
竹資源抽出物を利用した病害防除技術の開発 島根大学
上野誠
島根大学
丹生晃隆
本課題では、これまでに明らかにしてきた竹資源抽出物に含まれている2,6-dimethoxy-1,4-benzoquinone(DMBQ)の植物病原菌に対する抑制効果の特性を生かし、水耕栽培において防除が困難な病害の防除をめざした防除システムの開発を最終的な目的としてセルリー病害の防除をモデルとしたDMBQの効果を調査した。その結果、水耕栽培の培養液へのDMBQの添加はセルリーの病害であるPythium dissotocumの発病を著しく抑制することが確認された。今後、他の水耕栽培植物と病原菌での効果を確認することにより幅広い病害に対応できる水耕栽培用の病害防除システムを開発できると考えられる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、DMBQの特性を明らかにしDMBQがセルリーの生育に影響を与えることなく、病害の感染抑制をすることを検証できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、他の水耕栽培植物と病原菌での効果を確認することによりDMBQの有効活用を進めることが望まれる。DMBQの化学的および生物学的特性が明らかになり、加えて問題点も明確になっているので、今後は実用化を見据えて問題をクリアーしていくことが期待される。
放射性セシウムを吸収しない安全な野菜や作物の開発を目指したセシウム輸送体の単離 島根大学
秋廣高志
島根大学
丹生晃隆
本研究の目標は、原発事故により放出された放射性セシウムの輸送体(膜輸送タンパク質)をイネから単離することである。独自に開発したイネの膜輸送体を網羅的に発現する酵母タンパク質発現ライブラリーを用い、セシウム輸送体遺伝子のスクリーニングを行った結果、セシウム輸送体候補遺伝子を17個単離することに成功した。酵母におけるセシウム輸送活性を測定したところ、単離した遺伝子の多くが高い輸送活性を持つことが明らかとなった。今後、単離した輸送体を介してセシウムが植物中に取り込まれていることが明らかとなれば、セシウムを吸収しない安全な野菜や作物の作出に応用することが可能となる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、「セシウムトランスポータおよびセシウム低吸収性イネ」として、特許出願していることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、レアアースやレアメタル等、セシウム以外の金属にこの方法を適応することにより、日本の産業全体に大きなインパクトを与える可能性がある。今後は、単離した遺伝子の中にセシウム輸送体が含まれている可能性があり、それを明らかにすれば、セシウムの吸収能が低下したイネやセシウム吸収能を持つ植物の開発が期待される。
汚水浄化機能強化土壌ブロック製造技術の開発 島根大学
増永二之
島根大学
丹生晃隆
土壌粒子を繊維と混合して構造化することにより、圧密に対する復元力を有する透排水性の高い土壌構造に改善できる。本研究では、土壌粒子を構造化そしてブロック化して、汚水浄化機能を向上させた土壌ブロックを作成する技術の開発を進めた。土壌粒子と繊維の混合方法、バインダー(接着剤)の種類および配合比を検討し、砂質のマサ土から団粒構造の発達した土壌を用いて、自然土壌では発現しない、土壌孔隙を高く維持した状態で耐圧性および圧密に対する構造復元性を発現させる事ができた。この技術により作成した土壌ブロックは、汚水流入時にも構造が安定し長期間高い透水性を維持でき、これにより長期間安定した浄化能を持つことが期待される。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、次なるステージに向けて検討すべき課題は整理されたことは評価できる。一方、今後の技術開発を見極めながら、実証的検討段階への早期展開に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、土壌ブロック製造技術で想定される基本ビジネスモデルから、技術移転に視点を置いた検討が望まれる。
低カリウムメロン生産のための培養液量的管理技術の開発 島根大学
浅尾俊樹
島根大学
丹生晃隆
低カリウムメロン生産の安定化のために培養液中カリウムの量的管理技術の開発を行った。今までの実験によって得られた培養液および植物体サンプルを分析することにより、メロンの生育ステージおよび季節毎のカリウム吸収量を出し、低カリウムメロン生産に必要なカリウム供給量を明らかにした。その結果、「低カリウムメロン」の安定生産に繋がる可能性が高まった。今後は秋作についても実証するとともに、実用化に向けて企業等での生産と、附属病院等での低カリウムメロン利用について検討していきたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、収量と品質に問題のない低カリウム果実を作出できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、医療関係者を含めた食味テストでも肯定的な評価を得ているので、腎臓病患者等への食品としての利用が望まれる。今後は、秋作に関する試験結果でも同様な結果が得られることを期待したい。
紫黒米に含まれる色素成分の熱分解産物をターゲットとした機能性食品の開発のための基礎研究 徳島文理大学
近藤美樹
岡山県立大学
小林東夫
紫黒米に含まれる色素成分のシアニジン3−グルコシド(C3G)は抗酸化性等の機能を有し、生活習慣病予防の観点から注目されているが、熱安定性や生体吸収率が低いことが課題である。申請者は、紫黒米の調理過程でC3Gはプロトカテキュ酸(PCA)に分解されるが、PCAはC3Gよりも熱安定性や抗酸化性が高いことを見出している。従って、C3G由来の抗酸化性は食品を実際に摂取する調理形態で効率的に利用できることが示唆される。本研究では、C3Gの熱分解産物であるPCAの生体における機能性の評価を目的に、PCAを実験動物に経口投与した際の血中動態と抗酸化性について、C3Gとの相違を明らかにした。さらに、高コレステロール血症モデル動物を用いて、加熱済み紫黒米およびPCA添加食による高コレステロール血症発症抑制効果を検討した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、基礎的データは着実に蓄積されていることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、調理方法によってデータが異なると予想されるので、実際の食品開発となると新たな問題が発生する懸念がある。社会還元性が期待されるので、今後は、基礎的データの蓄積と併せて調理法など、実際の応用に対する技術も開発されることが期待される。
CO2透過性アクアポリンの機能利用による高効率CO2固定能をもつ作物の作出 岡山大学
且原真木
岡山大学
梶谷浩一
低炭素社会の実現と食糧/バイオエネルギー増産とに貢献する技術の創出を最終目標として、植物の細胞膜でのCO2透過性を担う膜タンパク質・アクアポリン分子を活用して植物CO2固定能力を高効率化することを本課題で目指す。具体的にはCO2透過性を有することが明らかにされたアクアポリン分子種において、そのタンパク構造中でCO2透過特性を決定している部位とアミノ酸の種類を特定することをめざして特定することができた。今後該当アミノ酸を置換してCO2透過性を向上させた改変アクアポリンを選抜して、そのようなアクアポリンとその機能を利用することで、高効率CO2固定能をもつ作物の作出と植物生産性向上への展望が拓かれる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標1は達成されたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、目標2について、細胞の小さい酵母で実施し評価不能の結果となったが、今後、植物(藻類等)を候補として実施することが望まれる。本技術は波及効果の大きなテーマであり、目標達成時には地球温暖化の防止に大きく貢献されることが期待される。
酸化物質と抗酸化物質による生物微弱発光を個体レベルで分光学的に観察できるシステム構築に関する基礎的研究 岡山大学
根岸友惠
岡山大学
齋藤みの里
酸化ストレスの程度および抗酸化物質の効果を個体レベルで非破壊的に測定できるシステムの構築を目的として、ショウジョウバ幼虫のバイオフォトン(生物微弱発光)測定法の確立をめざした。酸化ストレスとして過酸化水素や次亜塩素酸投与の影響を調べたところ、用量依存的に発光の増加が見られた。さらにそれらが生体内で同じ反応を示すかを、分光スペクトルの解析を行ったところ、両者の処理による発光スペクトルが異なることが示唆された。過酸化水素による発光はアスコルビン酸の前投与で抑制されることも確認でき、本測定法の有用性が示された。その他の抗酸化物質を前投与して影響を調べた結果、必ずしも発光抑制を示す物質ばかりではなく、生体における反応の複雑さが示された。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標の達成に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、現状の体制では難しいので、装置メーカーとの共同開発が望まれる。ショウジョウバエの幼虫を用いて、バイオフォトンをきちんと測定できたことは評価に値するものであり、今後の展開が期待される。
マッシュルーム石づきの有効利用と口腔ケアへの展開 岡山大学
高柴正悟
特定非営利活動法人メディカルテクノおかやま
奥野健次
本研究では、岡山県の特産品で安価に原料供給を受けることが出来るマッシュルームの石づき(廃棄部分)を原材料として、細菌バイオフィルムを抑制するレクチンの応用に関して、1)安価で安定した大量抽出技術を確立し、2)抽出物がStreptococcus mutans(S. mutans)以外のう蝕原因菌等の口腔細菌のバイオフィルム形成に対する抑制効果を検討して、本製法で得たレクチンを用いた口腔ケア剤がコスト的にも有効性においても実用的であることを検証する。本年度の研究では、マッシュルーム石づきからレクチン含有エキス製造法の確立を目標として開発研究を進めてきた。評価方法としては、赤血球凝集測定によって抽出物のレクチン活性を評価した。現段階では目標値にほぼ達する行程を確立することができており、今後バイオフィルム抑制効果および他菌種への検討へと移行する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標が達成され、次のステップへ進めるための技術的課題が明確になっていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、コスト面や品質管理の観点などでの実用化検討が望まれる。目標値達成について詳細な説明が無いため、収量とコストの関係が不明確であるので、今後はその点を更にクリアーにされることが望まれる。
交流磁界環境を用いたカイワレダイコンの成長促進装置の開発 川崎医療福祉大学
茅野功
岡山大学
梶谷浩一
本研究は、申請者等のこれまでの知見である交流磁界環境による植物の成長促進作用を利用した、カイワレダイコンの成長促進装置(システム)を開発することを目標とした。本研究期間では、より成長が促進されやすい磁束密度及び曝露期間を発見した。これを利用して成長促進装置を試作し栽培実験を行った結果、日常環境での栽培に比べ播種後168時間で全長を平均で約29%促進することに成功した。また、この磁界環境で栽培したカイワレダイコンの成分分析を行った結果、無機成分量は日常環境で栽培したものと有意な差は見られなかった一方、細胞内で植物成長ホルモンと思われる成分の分泌に偏りが見られることが示唆され、成長促進作用の機序解明の手掛かりを掴んだ。今後は、成長ホルモンに焦点を当てた機序の解明と、装置の耐久性向上や商用栽培に向けた装置の大型化を図り、実用化に向けた検討を行う予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、計画とおりの研究を実施し有意性のあるデータが得られており、必要とされる規模の大きい実証実験に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、成長促進の効果は確認できているので、装置のコストしだいでは実用化の可能性はある。計画段階で想定していた成果が得られ、実用化につながる可能性が高まっているので、今後規模の大きい実証実験を行い育成促進の効果と装置のコストを算出されることが期待される。
ヒトに不快感を与えることなく利用可能な害虫防除用LED照明技術の開発 広島県立総合技術研究所
石倉聡
わが国のキク生産では夜蛾類による甚大な被害への対策が急務である。これまでに申請者らは「防蛾効果あり」及び「キクに開花遅延なし」の二つを同時に満たすLEDを用いた照明技術に見通しを得ているが、実用化にはヒトに不快感を与えない改善が必須となる。
そこで、「ヒトに不快感なし」の観点から、独自の解析手法により、これら三つを同時に満たす条件を検討した。その結果、ヒトへの刺激が小さく、夜蛾類の飛翔行動抑制にも効果的で、なおかつ、キクに開花遅延させない照明条件が明らかとなった。
今後は、開発技術の完成度をさらに高めるとともに、「化学合成農薬のみに頼らない環境配慮型害虫管理技術」としてキク以外の農作物へも適用の拡大を目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に当初の目標の達成に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、環境負荷が少ない害虫防除の手法として確立できれば、社会的還元は大である。今後は、フィールドでの実地効果の検証が必要であるが、それには、最適条件での黄色LED照射環境を安定的に実施するための検討や、普及のために堅固で安価な機器の開発を含めたコストパーフォーマンスの向上が望まれる。
微生物燃料電池を用いた排水処理による高効率な水素生産技術の開発 広島県立総合技術研究所
松下修司
本研究は、有機性排水から微生物燃料電池MECを用いて、水素を回収しながら排水処理を行う技術を開発する。主目標は、グルコース1molから、水素4mol以上の水素生産と、CODcr90%以上の排水浄化である。
ボトル型の試験装置を用いた実験を繰り返し行い、装置を構成する部材を詳細に検討した。その結果、実用化に必要となる低コストで高性能な部材を選定した。具体的には、アノードに炭素系電極及び炭素系電極補助剤、カソードにステンレス電極、イオン交換体に耐久性のある陰イオン膜の組み合わせが良好であった。この組み合せで、水素生産量において目標の40%、排水浄化能力において目標の70%を達成した。今後は、装置形状の変更によって性能向上を進め、早期の実用化を目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、有機廃棄物の水素発酵と微生物燃料電池システムの実用化に向けた技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、社会的ニーズが高いことから実用化が望まれる。本課題は水素収率の高いシステムの実用化を目標とするもので、今後、水素収率のさらなる向上が期待される。
漁獲された外傷海産魚の延命技術の開発 広島県立総合技術研究所
御堂岡あにせ
広島県立総合技術研究所
安江浩
漁獲された海産魚は網擦れ等の外傷により死にやすいため、活魚より鮮魚での流通が一般的で、出荷調整が難しいことが知られている。漁獲魚の延命技術が確立できれば、市場価格の変動に応じた計画的な出荷や規格を揃えた出荷が可能になるため、魚価を高く維持できる。この課題を解決するため、当センターでは低塩分海水を用いた漁獲魚の延命方法について検討し、すでに数種の外傷魚を用いて低塩分海水の飼育により延命効果が得られることを明らかにしている。本研究では瀬戸内海で漁獲される地付き魚の代表種であるメバル、カサゴ、オニオコゼの他に広域に回遊するマダイについても最適な低塩分海水の飼育条件を明確化し、本技術の実用性と汎用性を高める。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、漁獲された天然海産魚の延命技術の開発という当初の目標が達成されたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本技術では魚種によって効果に差が認められるほか、延命期間中の飼育環境の課題など実用化に向けた技術課題が明確に示された。多くの魚種の漁獲量が減少する中、漁獲された魚の付加価値を高めるための取り組みは重要であり、今後、当成果が応用展開されることが期待される。
魚類に対する新規なワクチン処理による免疫力の増強技術の開発 広島県立総合技術研究所
永井崇裕
広島県立総合技術研究所
岡崎尚
魚類養殖では、疾病対策としてワクチンによる予防免疫が積極的に取り入れられている。魚をワクチン液に浸漬する方法では、大量処理が可能な反面、効力が弱いことが課題である。本研究では、アユやヒラメを酵素溶液で処理してから、ワクチン液に浸漬させることで、従来の方法よりもワクチンの有効性を高められることを明らかにした。これは、酵素の作用により体表粘液が一時的に除去され、ワクチン成分が体内に入りやすくなったためと推定される。淡水魚であるアユと海水魚であるヒラメで効果が確認されたことから、本技術には汎用性があると考えられる。今後はこの技術の特許化を目指すとともに、ワクチン効果を高める方法として実用化を目指す。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、実験室レベルでアユ、ヒラメとも十分な成果が得られており、目標は達成されていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、ワクチンは水産業において不可欠であり、簡易にできることから広く展開が期待できる。淡水魚、海水魚とも本研究の成果で十分な効果が得られており、今後、条件等をつめることで他魚種への応用が期待される。
地上部への塩の施用による、新しい「大玉・高糖度・塩土壌集積ゼロ」トマト生産技術の開発 広島県立総合技術研究所
山本真之
広島県立総合技術研究所
上藤満宏
既存の高糖度トマト栽培は潅水制限や塩の土壌散布によって根の吸水を制限し、果実内の糖を濃縮させる。しかし、果実の小玉化と土壌への塩類集積がデメリットとなる。
そこで、根の吸水を維持し小玉化を回避しつつ、地上部への塩施用によって、果実への光合成産物の移動と果実内での糖合成を活性化させる、新しい糖度向上技術の開発可能性を検討した。
様々な濃度のNaCl溶液を葉面散布または不定根に施用したところ、夏秋栽培かつ根からの吸水が制限されない条件において、地上部へのNaCl施用による糖度向上効果は認められなかった。また、同一株の根あるいは不定根のいずれかにNaCl溶液を、他方に養液を施用したところ、養液の吸収が優先され、そのために糖度が向上しないことが明らかになった。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、大玉・高糖度トマト生産技術の試験検討については評価できる。一方、今後の解決型研究の具体的なビジョンに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、NaClの感知が糖度の上昇を引き起こすとすることの科学的な再検証が望まれる。
アミノ酸肥料による低硝酸・高糖度野菜の生産技術の開発 広島県立総合技術研究所
蔵尾公紀
広島県立総合技術研究所
上藤満宏

培養液に添加したアミノ酸が腐敗しないように処理して、窒素源としてアミノ酸を使用した栽培試験を行い、生育に有効なアミノ酸が植物ごとに違うことを明らかにし、通常の硝酸態窒素肥料より、生育が促進するアミノ酸があることを明らかにできた。また、アミノ酸の腐敗を回避する栽培方法を確立した。今後は栽培方法の最適化を図り、アミノ酸を窒素源として使用するより簡易な栽培方法を確立する。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、窒素源として有効な単独アミノ酸の選定に成功したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、ターゲットを硝酸態低減だけでなく、特殊成分生産性向上や、栽培困難な希少薬草等の栽培への展開が望まれる。本技術を実用化するには、滅菌に手間がかかること、生育期間が長い作物の継続栽培が可能かなどの確認すべき点があり、今後は、アミノ酸の利用率把握や、コスト計算も確認して欲しい。
土壌汚染を引き起こさないアグロバクテリア有用株の開発 広島大学
守口和基
2種のプラスミドpSRKSGFPterBtRNAstb, pSRKSGFPterBincAstbを作成し、アグロバクテリアにおいて安定的に維持させる事により、リアルタイムに増殖をモニターする事が可能になった。しかし、植物との共存培養下で栄養要求性となる新規株の作成においては、ターゲットとしたaroB, ubiG, atpFの何れの遺伝子についてもノックアウト株を作成する事ができなかった。この結果よりこれらの遺伝子は、大腸菌とは異なりアグロバクテリアでは富栄養条件においても必須遺伝子であることが強く示唆された。アグロバクテリア独自の変異株リソースの拡充が今後の本テーマの達成には必要と思われる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、GFP蛍光遺伝子の導入したアグロバクテリウムを創生したことについては評価できる。一方、モニターできるアグロバクテリウム株を創生すること、及び、遺伝子破壊株を作成し栄養要求性を作成する試みは興味深いが、ノックアウト株の創生ができなかった。新規アグロバクテリア栄養要求株の作出にはまだ成功しておらず、その後に予定されていたその変異体の特性評価には至っていない。課題をブレークスルーする方策は検討しているので、今後はさらに掘り下げた研究開発が望まれる。
安全かつ簡便な新規電子顕微鏡用ウイルス染色剤の開発 広島大学
定金正洋
新型インフルエンザなどウイルスが原因となる感染症対策においてウイルスの姿を早急に明らかにすることが必要である。ウイルス観察には染色後に電子顕微鏡を用いる方法が最も一般的である。ただし、既存の染色剤として使われる酢酸ウランは、核兵器への転用が可能なことから取扱いが厳しく制限されており、代替材料の開発が急務となっている。
研究責任者は、安全なタングステン化合物を用いて、安全かつ簡便な新規電子顕微鏡用ウイルス染色剤群の開発することを目標にした。研究期間中にこれまでの染色剤を超える能力をもった染色剤を見出した。今後は、様々なウイルスの染色を行い、多様な観察対象に対する優れた事例を数多く示し、できるだけ早く研究現場(研究機関や医薬品メーカー)のニーズを満たす商品の開発につなげたい。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、新規染色剤として目標の8種類の内、5種類が純度よく単離され、市販染色剤よりも優れた染色能を持つ化合物群を見出したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、他のウイルスへの展開、染色剤の合成法の最適化が望まれる。今後は、電荷の異なる5種の染色剤が開発されており、ウィルス微細構造の分解能向上が期待される。
堆肥化過程の改善による難溶性リン資源の有効活用 広島大学
河野憲治
広島大学
山岡秀明
本研究は、土壌に蓄積した難分解性有機態リンや難溶性無機態リンおよび低品位リン鉱石などの未利用リン資源を有効活用させる方法の確立を目標として、難溶性無機リンを溶解できるリン溶解菌や難分解性有機態リンの分解に関わる酵素活性が高い微生物群集を選抜し、それらを増殖・安定化させる条件を把握し、それら微生物群集を有機物資材の堆肥化過程を通じて増殖・強化させ、難溶性リンや低品位リン鉱石を作物に利用可能なリン形態へ変換するシステムを構築することを目的とした。リン溶解能力の高い細菌・糸状菌の検索・同定や糸状菌の増殖・安定化はほぼ目標を達成し植物によるリン鉱石の利用性への微生物添加効果を確認した。ただ、有機物資材による堆肥化過程の利用には至らず今後の課題を残した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初の目標はある程度達成されていることについては評価できる。一方、リン資材の枯渇が懸念されている現状であり、意欲的かつ継続的な検討に向けたデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、予定されていた実験計画をすべて完了されることが望まれる。
受容体発現変動に基づいた工業化学物質の新規毒性評価系開発 広島大学
古武弥一郎
広島大学
山岡秀明
哺乳動物における毒性の中でも神経毒性は評価が難しく、従来の神経毒性試験に供する化学物質の数は限られているため、神経毒性を簡便に検出できる試験系の開発が不可欠である。本研究では、従来の神経毒性評価系になかった「神経細胞脆弱性を規定するグルタミン酸受容体 GluR2 の発言減少」を唯一の指標とし、神経毒性を有する工業化学物質を見出す効率的な評価系を構築する。動物個体レベルの神経毒性を調べる前段階として、細胞レベルの簡便な系で GluR2 発現減少を評価することの妥当性が本研究課題により検証されつつある。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、一部目標達成については評価できる。一方、グルタミン酸受容体GluR2の発現減少が神経毒性の新規評価系として認められるためには、技術的検討やデータの積み上げなど、様々な検証が必要と思われる。
富栄養化防止のための塩分含有アンモニア排水のアナモックス処理技術開発 広島大学
金田一智規
広島大学
山口祐介
瀬戸内海などの閉鎖性水域において富栄養化が深刻な問題となっており、原因物質であるアンモニアなどの栄養塩の除去が求められている。アナモックス処理は従来の窒素除去法と比べて高効率であるために実用化が期待されている。アナモックス処理には前処理となる亜硝酸型硝化が不可欠であるが、亜硝酸型硝化は低濃度アンモニアや塩分を含有する排水に対しては、これまでのところ安定的に処理することが困難である。本課題では低濃度アンモニア・塩分含有排水の亜硝酸型硝化の安定化のために、新規微生物の高濃度保持と気体透過膜による適切な酸素供給による亜硝酸型硝化の技術開発を行い、省エネルギー型の水質汚濁防止技術を確立する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初の目標は一部達成されたことは評価できる。しかし、アナモックス細菌と亜硝酸酸化細菌の亜硝酸競合を利用した、亜硝酸酸化細菌の増殖抑制が有効であるのか判断できない。技術移転を目指した産学共同等の可能性から考えると、本研究開発方法を再考することが必要であると思われる。その上で今後は、低濃度アンモニア・塩分含有排水の亜硝酸型硝化の安定化のために、新規微生物の高濃度保持と気体透過膜による適切な酸素供給による亜硝酸型硝化の技術開発が望まれる。
微生物によるレアメタル吸着マンガン酸化物の高速生成 広島大学
大橋晶良
広島大学
山口祐介
微生物が作り出すマンガン酸化物(バイオMnO2)はNi,Coなどのレアメタルやレアアースの吸着性に優れており、このバイオMnO2を高速に生成することができれば、排水等からの希金属の回収に期待が持てる。マンガン酸化細菌をアンモニア酸化細菌と共存させることで培養することに成功し、DHSリアクターを用いることで、マンガン酸化細菌を高濃度に保持することができた。アンモニアを含んだ排水を循環させることで、マンガン酸化細菌の集積を向上させることができ、バイオMnO2の生成速度が上昇した。今後は、排水の供給方法を検討することで、マンガン酸化細菌存在量をこれまでの10倍にし、マンガン酸化速度1kg Mn/m3・dを目標に処理運転方法の確立を目指す。

当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、目標の1/4程度のマンガン酸化速度に到達したことは評価できる。一方、廃水処理技術としては実用技術の援用であることから、現場対応に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、マンガン酸化細菌のリアクター内での均一化をさらに達成されることが望まれる。
家畜受精卵移植での高い繁殖成績が得られる胚移植用注入液の開発 広島大学
島田昌之
広島大学
松井亨景
本研究課題では、受精卵移植の成功率を向上させるために、移植胚の着床がスムーズに行われる子宮環境を創出する技術開発を試みた。特に、交配による着床・妊娠と受精卵移植によるそれらの違いを解明するために、精液の液状成分に着目し、それが子宮環境に及ぼす影響を以下のように明らかとした。
1.精漿中には、様々なサイトカインやケモカイン類が含まれている。
2.それらのうち、少なくとも血管新生を促進する因子がある。
3.精漿中の血管新生因子を子宮内に注入することで、人為的に子宮環境を変化させることができる。
これらの研究成果は、精漿と子宮環境に着目した数少ない知見となり、今後の受精卵移植液の開発につながるものである。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ブタ精漿中に存在するサイトカイン及びケモカインを同定し、それらが血管新生促進作用をもつ可能性を示し、子宮環境の人為的制御や新しい受精卵移植液の開発につながる成果に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、ウシやブタなどの家畜を用いた実証試験が不可欠であり、家畜繁殖分野における実用化が望まれる。血管新生因子の存在が推測されたのは成果であるが、その因子が実際に受精卵の着床に作用しているか否かについては検証されておらず、さらに検証を進めて行くことが必要である。今後、血管新生因子の有効性を確認できれば、凍結精液および受精卵移植への応用が期待される。
ポリフェノールを主成分とした魚類飼育水の消毒用添加剤の開発 広島大学
冲中泰
広島大学
榧木高男
9種ポリフェノールを供試し、飼育水中のウイルスを減少させかつ魚への毒性の少ない(セーフティーマージンの大きい)ものを選抜することを目標とした。抗ウイルス効果は、飼育水中に添加したウイルスの減少率で評価した。その結果、最もセーフティーマージンの大きいポリフェノールはgallic acid(没食子酸)で、メダカへの害の無い0.001%処理濃度においてもウイルス力価をコントロールの1/260にまで低下させた。Gallic acidのセーフティーマージン指数SM-2>1であり、当初の目標を達成することができた。今後は、gallic acidがメダカ以外の養殖魚にも低毒性かを確認すると同時に、実際の養殖現場でウイルス病をどの程度軽減させられるかのパイロット実験が期待される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、9種の候補ポリフェノールから目標が1種見出され、コスト面でも可能性が高いことが示された点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、今回実用化候補として認められたポリフェノールがその他のウイルスにも効果を示すのか検討が必要である。また実際の養殖魚での実験や海水での効果など検討課題は多く残されている。これらが解決されれば社会還元につながる。今後は、魚毒性や抗ウイルス効果などについて実際の養殖現場を模した実験が組まれ、実用的規模での効果を検証することで、実用化への筋道が示されることが期待される。
シリカ表面上でのタンパク質リフォールディングによる機能性バイオ融合マテリアルのワンステップ作製法 広島大学
池田丈
広島大学
榧木高男
我々はこれまでに、シリカ・ガラス表面上に非常に強く結合するタンパク質「Si-tag」を発見し、タンパク質固定化のための接着分子として利用する手法を開発してきた。本研究課題では、Si-tagが変性剤存在下でもシリカに結合できることを利用して、封入体として発現した組換えタンパク質を変性剤で可溶化した後、シリカ表面上で効率的にリフォールディングする技術の開発を試みた。目標としていたワンステップでのリフォールディングは達成できなかったが、封入体として発現したタンパク質をリフォールディングしてシリカ粒子上に機能的に呈示することに成功した。また、得られた粒子が免疫測定法に利用できることを確認した。今後はタンパク質呈示粒子の産業利用に向けた研究開発を進める予定である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、水溶液中ではリフオールディングしたことについては評価できる。一方、Si−tag以外のペプチド領域でもシリカと相互作用し、自由な運動ができなくなる可能性改善に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、直接Si−tagを連結して生産するだけではなく、例えばAvidin−biotinのような結合を利用することとし、Si−tagged avidinをシリカに固定化しておくような利用法も検討されることが望まれる。
実用レベルでの利用を指向した可溶性の高い亜リン酸デヒドロゲナーゼの取得 広島大学
廣田隆一
広島大学
榧木高男
NAD(P)H再生酵素は、NAD(P)Hを補酵素として要求するバイオプロセスの効率化と反応システムのコスト削減を可能にする。本研究課題では、既存のNAD(P)H再生酵素の中で、最も効率が優れている亜リン酸デヒドロゲナーゼ(PtxD)を実用化させるため、欠点である可溶性の低さを克服したPtxDの取得を試みた。その結果、大腸菌において組換えタンパク質として発現させた場合に、90%以上の可溶性を示すPtxDR4506を取得することに成功した。また、PtxDR4506は既知のPtxDの6倍以上の触媒活性を示した。従って、PtxDR4506を使ったNAD(P)H再生反応の共役により、バイオプロセスの実用化や効率化あるいはコスト削減に貢献できると考えられる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標に対してはほぼ完全に達成されており、次へつながる成果も得られていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、新機能を持つ酵素タンパク質取得に成功しているが、今後の展開に関しては具体的なところまで踏み込めていない。今後、有用物質生産プロセスへの展開が期待されるが、具体的な内容をさらに精緻にしていくことが望まれる。
酵母の長寿変異株の探索 広島大学
水沼正樹
広島大学
榧木高男
老化・寿命研究は基礎学問領域のみならず、健康寿命の延長を実現する上で極めて重要な分野の一つである。我々は酵母を用いた研究からCa2+シグナルによる増殖制御を発見し、この研究過程で、寿命という問題へ到達した。我々が取得した顕著に寿命が短い変異株を利用して、その増殖復活化を指標にして、新規長寿遺伝子を探索した。増殖が良好となった変異株を取得し、代表株についてその寿命を測定したところ、野生株と比較して寿命が延長していたことから、目的の長寿変異株のスクリーニングに成功した。それら変異株を精密に解析すれば、老年病の疾患原因の究明や健康社会の実現を目指した予防医学研究など多岐にわたる重要な研究分野の推進に寄与することが予想される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、全体的には当初の目標は十分達成されており評価できる。遺伝学的解析を駆使して、老化と寿命の課題に挑戦した極めてユニークな取り組みであるので、今後は、S−アデノシルメチオニンが関与する寿命制御を新規に発見し、その効果を明らかにすることが期待される。
共鳴振動を用いた青果物の非破壊熟度判定技術と装置の開発 広島大学
櫻井直樹
広島大学
榧木高男
研究の目的は、非破壊で青果物の硬度を測り熟度を推定する技術と小型装置を開発することである。熟度を推定するための基礎となる硬度を計算するためには、青果物の第2共鳴周波数を正確に測定する必要がある。この第2共鳴周波数を高い再現性および精度で測る技術と装置を開発することを目標とした。これまで振幅から共鳴周波数を同定していたが、果実の熟度が進み硬度が減少すると、共鳴ピークが不明瞭になる欠点があった。そこでより感度の高い位相から共鳴周波数を見つけるアルゴリズムに切り替えた。また、青果物を振動台に載せ、片手で上から受振器を載せるタイプの装置を完成した。これにより、メロン、アボカドの、硬度を正確に短時間で測定することができた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標が達成されており、技術移転につながる青果物の共鳴周波数の測定に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、装置の小型化に向けたデータ蓄積等、今後の研究計画の具体的な検討が望まれる。今後は、新規・独創性が高い硬度測定法による、小型非破壊熟度測定装置の開発による実用化が期待される。
イオンモーターへのスイッチの導入とリポソームのイオン濃度の制御 宇部工業高等専門学校
三留規誉
宇部工業高等専門学校
黒木良明
ATP合成酵素は生体膜上に存在し、ATPの化学エネルギーにより中心軸を回転させてイオンを輸送する回転分子モーターである。本研究では、この膜に組み込まれた分子モーターの回転を制御して、リポソーム内のイオン濃度を制御することを目的とする。この研究で、1)酸化処理による架橋の形成で中心軸の回転を制御したATP合成酵素を作製、2)ATP合成酵素の回転制御によるリポソーム内の水素イオン濃度の制御を実施した。こうして、酸化還元処理によって、リポソーム内の水素イオン濃度を制御することが可能となった。今後は、細胞レベルでイオン濃度を制御したリポソームを使用した場合の有効性を実証し、実用化に向けての開発を展開していく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標を達成し、性能向上について具体的な課題が示されていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、要素技術開発であり、実用化まではまだ時間を必要とするが、社会への貢献は大きい。今後は、かなりの研究開発が必要となろうが、更に研究開発を高度に展開する価値があると考えられる。
球根の休眠打破促進と暖地の気象条件を活用したジャパンブランドユリのエリート球根生産技術の開発 山口県農林総合技術センター
光永拓司
山口大学
殿岡裕樹
ジャパンブランドユリ(山口県育成)'プチソレイユ'のエリート球根生産技術の開発に向け、暖地の温暖な秋季に生育できるりん片子球の休眠打破条件について検討した。
5月に収穫した母球を活用し、子球形成の23℃処理を6週間以上、子球の休眠打破のための5℃処理を6週間以上とすることで、りん片子球は休眠打破され出葉した。このりん片子球は9月に定植することで、光合成可能期間を2ヵ月以上確保でき、2月時点の球根増殖倍率(球重)は、未出葉の慣行と比べ約3倍多くなった。以上の結果、山口県の秋の気候下で出葉させることにより球根の肥大を促進できることが明らかになった。今後、本成果を山口県内のユリ球根生産者へ普及を進めていく予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、本試験では球根を5−6月に掘り取り、リン片繁殖後、秋期に栽培して、一定の球根増殖と球根肥大を達成したことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、栽培法が確立するかどうかは、繰り返し試験を必要とする。今後は、一定の球根増殖と球根肥大を達成していることから、さらなる技術移転につながる可能性が期待される。
エタノール生産コスト削減のための耐熱性α‐アミラーゼ遺伝子の開発と耐熱性酵母での生産 山口大学
星田尚司
山口大学
森健太郎
エタノール生産への利用が期待できる耐熱性酵母Kluyveromyces marxianus にα-アミラーゼを大量に生産することを目的とした。発酵に用いる酵母で糖化酵素を大量生産できると多糖からのエタノール生産のコスト削減が可能となる。K. marxianus に酵母での発現に適した耐熱性α-アミラーゼAmyLN5C を導入し発現させたところ、最も適した条件では本研究の目標値の2 倍の生産量を達成した。今後、さらに発現量を増加させ実用レベルにまで生産量を高めることが望まれる。また、モデル系として分泌性ルシフェラーゼを用いたシグナル配列の解析により、Gluc の分泌生産を40 倍に高めることができた。分泌生産にシグナル配列の最適化が重要であることがわかった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標を達成した耐熱性α-アミラーゼ遺伝子及び耐熱性酵母の技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、さらに発現量を増加させする技術を開発し、実用化されることが望まれる。今後は、エタノールだけではなく、有用たんぱく質の生産系としても可能性があり、新たな展開が期待される。
抗菌物質資源としてのネギ生ごみの利用 山口大学
伊藤真一
山口大学
殿岡裕樹
ネギ生ゴミ(根)中に含まれる抗菌物質の実用化(園芸資材および農薬)を念頭におき、当該抗菌物質の効果的な抽出・回収方法、当該抗菌物質を投与した植物の反応、および実際の圃場での防除効果について検討し、以下の成果を得た。
1)従来の抽出法に比べて、簡便かつ低コストで、従来法に匹敵する収量および抗菌スペクトルを有する抗菌物質(ネギ根サポニン)を得ることが可能な簡易抽出法を開発した(目的達成度:100%)。
2)ネギ根サポニンは、高濃度(1000ppm)でも植物の生育に悪影響がないことを明らかにした。しかしながら当初期待した根サポニンの植物生育促進効果については明確な結果を得ることができなかった(目的達成度:70%)。
3)秋冬季のトマトハウス栽培で問題となっている、うどんこ病、灰色かび病、すすかび病に対するネギ根サポニンの防除効果を検討した。その結果、ネギ根サポニンは、うどんこ病および灰色かび病に対して防除効果を示した。とくに、灰色かび病に対する防除効果が顕著であった(目的達成度:90%)。
本研究により、ネギ根に含まれる抗菌物質の実用化技術が大きく進展した。本研究の成果は、製品開発を目指している企業に技術移転される予定である。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、抗菌物資の回収方法の確立、抗菌物質を投与した植物の反応、圃場での防除効果の3つの目標に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、ネギからの抗菌物質の効果は明らかであるため、共同研究ステップ実施などでの実用化が望まれる。今後は、新たに見出した植物生育促進効果のある物質の化学構造の決定をはじめ、諸性質を明らかにすれば、より大きな社会還元が期待される。
新規化合物である4-ケトペントースと4-ケトペント酸の酸化発酵による生産系の確立 山口大学
足立収生
山口大学
殿岡裕樹
4位にケトンを持つ新規な糖質、4-ケトペントースと4-ケトペント酸の発見を端緒として、その製造法の確立と工業化を見据えた反応系の解析及び当該物質生産に有効な酢酸菌株の探索を行った。グルコースからのみならず、アラビノースやリボースなど五炭糖からの直接生産系について、製造法の最適化、関連する酵素の特徴付け、未試験の基質との反応性の検討と生成物質の特定を行った。とくに、2-デオキシ-4-ケト-D-リボン酸生産系の確立と、新規なリボヌクレアーゼ及び2'-デオキシリボヌクレアーゼの酢酸菌での発見は、新規な技術開発に繋がる点で特筆される。D-リボースと2-デオキシ-D-リボースは核酸の構成糖として重要であり、新規なヌクレオシダーゼとともに、広い応用面が提供される。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標の達成に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本研究成果で得られたケト化合物の産業的有用性の技術移転を目指した産学共同研究開発が望まれる。今後は、2−デオキシ−D−リボースの酸化、2−デオキシ−4−ケト−D−リボース及び2−デオキシ−4−ケト−D−リボースの実用的生産系の確立が期待される。
水産物の脂肪含量の簡易測定キットの開発 独立行政法人水産大学校
田中竜介
独立行政法人水産大学校
川崎潤二
簡易的な水産物の脂質含量の測定法としてTBA(チオバルビツール酸)反応を利用した測定法について開発を行い、さらに汎用性を高めるために、分析試料の採取方法、反応試薬、測定機器を検討し、実用化を目的とした。分析試料の採取方法として市販のあぶらとり紙を使用することにより簡易性が向上した。また、反応試薬を検討したところ、pH 3.5に調整するための試薬として食品添加物として使用されている試薬での調整が可能となった。定量に必要な測定機器は他の用途で利用されている簡易型の機器による測定が可能となった。以上の結果から、本方法の汎用性が向上したことから今後はキット化(商品化)への対応を行う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標は概ね達成できたことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、現場のニーズと商品化に必要な条件の早急な調査が望まれる。技術的な課題も殆ど解決されており、今後は、商品化に必要な条件の調査が期待される。
微生物を視覚的に検出する受託事業の実証実験 阿南工業高等専門学校
川上周司
阿南工業高等専門学校
西岡守
本研究では、任意の微生物を可視化するFISH法の実験を代行する受託事業の企業化に向けた実証実験を行った。これまでに本研究のような事業はなく、課題の抽出や解決方法の検討が必要であった。本研究により、サンプルの受け渡しから、実験の代行までの一連のスキームが作成された。また、3件の事案を対処することで実際に実験を行い、サンプルを返却するまでの手順を確認できた。今後、再現実験のためのアフターフォローや実験初心者と思われる委託側へのFISH法の技術のフィードバックなどが充実することにより実用性の高い事業となると思われる。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、設定した目標が十分達成されていることは評価できる。一方、技術移転の観点からも、研究課題ならびに研究計画自体が企業化に向けた具体的なものであり評価できる。研究開発内容は極めて具体的でその達成度も高いので、今後の成果展開が期待される。
バイオリソースを利用した耐熱性酵素遺伝子ライブラリーの構築 徳島大学
佐藤高則
徳島大学
嵯峨山和美
本申請は好熱性細菌を遺伝子資源として捉え、好熱性細菌由来の耐熱性酵素遺伝子ライブラリーの構築および耐熱性酵素生産システムを構築することを目標としている。研究の結果、7種のGeobacillus属細菌よりピリミジンヌクレオチド合成系酵素7種および抗酸化酵素遺伝子を近縁種のゲノム情報を元にクローニングし、最終的に58種の酵素遺伝子ライブラリーを構築した。さらに大腸菌での発現系を検討したところ、NDK, UK, ThyA, CMPK, Prx(計22種)については大量発現が見られ、生産システムの構築が可能となった。一方、TK,TMPK,UMPK(計13種)については発現量の増加が今後の課題となった。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも研究は明らかな進展を見せていることについては評価できる。一方、技術移転を目指した計画に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。耐熱性タンパク質を産業に応用しようとする提案で、学術的にも一定の成果をあげつつある。しかし、特に技術移転を見据えた研究ベクトルや具体的な計画が示されておらず、具体的に、機能的なタンパク質複合体の形成を目指すのか、個々のリコンビナントタンパク質が応用できるのか等、産業化を目指した明確な目標を設定して、それに沿った研究を推進されることが望まれる。
ゲノムの進化を利用した新規タンパク質発現システムの構築 徳島大学
間世田英明
徳島大学
大井文香
本研究課題は、遺伝子そのものをin vivoで意図的に特異的に改変し、目的遺伝子の発現をコントロールするシステムを構築するといった、新しい遺伝子発現系を構築するものである。特に生体材料の高発現時に問題となる毒性タンパク質の高発現の実現に一石を投ずる技術であり、また、そのようなタンパク質を発現する細胞を長期間安定に維持することも理論的には可能とする技術である。必要時に特異的に意図したタンパク質を発現させるように遺伝子をin vivo で改変することに成功した。現在その改変した遺伝子を発現する細胞だけを濃縮する技術の構築と実際に人工的に毒性タンパク質を創成し、その実証に努めている。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。最も重要であるDNA欠失の機構が明らかにされていないが、当初目的の一部の達成については評価できる。一方、DNAスプライシング機構を明らかにするとともに、タンパク質発現システムの実用化に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、DNAレベルでのスプライシング現象の詳細な機構については不明な点もあり、更なる研究の進展が望まれる。
紫外線/OHラジカルジェット殺菌と可視光LED光触媒酸化還元作用による果実の鮮度保持テクノロジー開発 徳島大学
川上烈生
徳島大学
大塩誠二
紫外線/OHラジカルジェット殺菌と可視光LED光触媒酸化還元効果を融合した最先端エレクトロニクスを導入し、従来の課題であったUVダメージの抑制と高次炭化物系腐臭性ガス(C2H6O2、 C4H8O2)を分解し、果実の鮮度保持が有効であることを明らかにした。特に、可視光LED波長が青色でHe/Water バブリングジェットの組合せのとき、鮮度保持効果が顕著であることを見出した。今後の課題は、 (1) 更なる最適なLED波長の探索、(2) 低温においても萎縮等の鮮度劣化を起こさず可能であるのかどうか、(3) 紫外線/OHラジカルジェットの照射面の大面積化である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも食品の鮮度維持に関して多方面から外的環境との因果関係を調べ、鮮度維持の方向を探る進め方については評価できる。一方、LED波長の最適化が残っているので、次ステップに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。研究開発計画は具体的かつ的確に検討されているが、検討課題の解決には困難が予想されるので、今後、鮮度維持技術を是非完成されることを望みたい。
海藻養殖技術イノベーションを指向した藻類生長因子の実用的供給法の開発 徳島文理大学
山本博文
(財)四国産業・技術振興センター
堤一彦
報告者は大型藻類の付着・共生バクテリアから単離・構造決定された藻類生長促進因子サルーシンを活用した海藻の通年養殖技術の開発を目的に、光学活性なサルーシンの不斉全合成を試みた。今回は1)95% ee以上の光学活性体の合成(サルーシン供給法の確立)と、2)その合成手法を活用した10gスケールの合成(サンプル確保)を具体的な目標として設定し、本研究に取り組んだ。そして、LBA型不斉タンデム環化反応と酵素分割を組み合わせた独自の合成ルートを確立することで、1)2)の目標を共に達成した。今後は合成したサルーシンを人工海水に添加することで、海藻(ボウアオノリやアサクサノリなど)の養殖を展開する。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。当初の目標を達成したことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、藻類の通年培養技術の確立などでの実用化が望まれる。研究計画で立案した目標(95%ee以上の光学活性体の合成及び、10g以上のサンプルの確保)を達成しており、(+)−サルーシンの初の不斉合成が達成された。研究成果発表後、県内の海洋産業に関連する企業、研究者との共同研究が期待される。
ICTを用いた農作業情報の管理・共有システムの開発 香川高等専門学校
村上幸一
香川高等専門学校
関丈夫
本研究では、ICTを用いた農作業情報の管理・共有システムを試作した。現在、農業従事者の多くが紙の記録簿による栽培・生産管理を行っているが、過去データとの対比が困難で、農作物の原価管理も把握しにくいといった問題点があった。本システムはこれら問題点を解決するために、農作業情報をデータベースで管理して農業経営をサポートする。パソコンでの操作はもちろん、農作業のデータ記録を農地で行えるようにスマートフォンと連携した。研究期間内でデータベースのシステム性能評価とスマートフォン端末機能のユーザビリティ評価を行った。今後の展開として、連携農家での実データ入力と試運用や、ITベンダーと共同での製品版の開発を行う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、システム性能、ユーザビリティ評価は実施されており、目標は概ね達成されている点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、農業関係へのICTの導入については、立ち後れている状況にあり、本課題のような産学共同の研究開発が望まれる。今後は、農業従事者にとってはソフトウェアの使いやすさが重要なファクターであるので、その改良を行い、その他の機能向上をすれば、技術移転に繋がると期待される。
菌床を使用しない食用キノコの新規省資源型栽培技術の開発 香川大学
麻田恭彦
香川大学
永冨太一
現在ほとんどの食用キノコは大規模な菌床栽培(オガ粉に米糠などの栄養剤 および水を混合した菌床を用いて栽培する方法)によって生産されており、オガ粉の供給不足や廃菌床(キノコ収穫後の使用済み菌床)の処理が深刻な問題となっている。本研究では、これらの問題点の解消を目指し、菌床を使用しない、あるいは、菌床の使用量を削減する食用キノコの新規栽培技術の開発を目的とした。その結果、菌床を用いない、新規な培養方法を用いて、栽培が可能であることなどを明らかとした。本研究において開発した新規キノコ栽培方法が、産業レベルでの実用化へと展開する可能性が強く示唆された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。
特に、投与目標は達成されており評価できる。一方、技術移転の観点 からは、廃棄物処理の観点から大きな社会還元が期待できる。菌床を用いないキノコの栽培技術として、技術移転につながる可能性が高まったと判断でき、子実体形成物質のみでの栽培が期待される。
1-メチルシクロプロペン徐放包括ナノファイバーの創製 香川大学
吉井英文
香川大学
倉増敬三郎
植物ホルモンの一つであるエチレンがエチレン受容体に結合すると果実の成熟が促進されるが、エチレンは老化も促進するため果実が適熟状態となった後は品質低下を招く。1-メチルシクロプロペン(1-MCP)ガスは高いエチレン阻害作用を持ち、果実の成熟遅延効果剤として注目されている。この1-MCPをα-シクロデキストリン(CD)に包接安定化させたサブマイクロサイズの結晶を作製した後、エレクトロスピニング法を用いて1-MCP包接CD結晶を包括したポリエチレンナノファイバーを作製した。果樹包装紙内の湿度に応答してエチレン作用阻害剤1-MCPを徐放する環境湿度応答型ナノファイバーを作製しその特質を明らかにし、1-MCPの徐放挙動を推算する手法を提案した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標とした直径を持ち、1−MCPの含有量および徐放量も目標値を上回る1−MCP包接α−CD結晶含有ナノファイバー作製に成功したことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本技術を使った包装紙を開発し、輸出果実や花卉の鮮度維持を図るための産学連携計画が立てられている点は高く評価できる。今後は、梨やカーネーションに対する実用化試験が期待される。
自己集合するタンパク質を利用したタンパク質精製キットの開発及びクラスター効果を利用した物質生産方法の研究開発 香川大学
田中直孝
香川大学
倉増敬三郎
分裂酵母の細胞内で自己集結するタンパク質の性質を利用して、卓上遠心分離器による簡便な濃縮精製のプロトコルを作製した。任意の酵素を本自己集結するタンパク質の下流につなぎ、酵素クラスターとして活性を評価するまでには至らなかったが、ベクターの改善や自己集結するタンパク質の集結過程の人為的な制御によりユニークなタンパク質の簡易精製や酵素の機能評価に繋がることが期待された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標はかなり達成されていること、技術移転に繋がる研究成果の基礎は得られていること、クリアすべき問題点は提示されていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、リコンビナント酵素の精製は常用されるテクニックであり、提案されている簡便な方法は利用が見込めると考えられる。研究期間が短いため、今後幾つかの解決すべき問題点も提示されており、更なる研究展開が期待される。
化学的手法を用いた希少糖アルドヘキソースの合成法 香川大学
中北愼一
香川大学
倉増敬三郎
希少糖は自然界にほとんど存在しない単糖の総称である。近年、希少糖の中でもフルクトースを含むケトヘキソースに対する生産方法が確立され、安価で市販されるようになってきた。その結果、それらの生理作用が明らかとなり、新たな産業として注目されている。しかしながら、アルドヘキソースに対しては、効率的な方法論が確立していない。本研究では、市販化されたケトヘキソースを材料にして、ロブリー転位をおこない、2種類のアルドヘキソースを生産する方法を確立した。この方法を用いることで、4種類のケトヘキソースから、8種類のアルドヘキソースを生産することができた。また、転位反応から試薬の除去まで1ポットバイアルで行うことはでき、生産時のロスを最小にした。今後、産業化を鑑みたスケールアップ化を目指し、開発をおこなう予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目的は達成されている点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、大量生産のための企業の誘致も準備しており、その後の社会還元も十分期待できる。今後は、アルドヘキソースの収率とConversion Rateの効率化が望まれる。
食品増粘素材多糖キサンタンガムの美白作用 香川大学
岡崎勝一郎
香川大学
渡辺利光
キサンタンガムは、細菌から生産される多糖で、少量の添加で低温でも高い粘性を発揮するのでドレッシングなどの食品や化粧品に粘度を付与する目的で多用されているが、増粘作用以外の機能は知られていない。本探索研究開発では、マウスB-16メラノーマ培養細胞を用いてキサンタンガムの新規の機能性としてメラニン合成抑制作用を明らかにでき、キサンタンガムの美白化粧品素材として新たな展開が開けた。したがって、目標はほぼ達成されたが、その作用機序を関しては、チロシナーゼの酵素活性やチロシナーゼとその転写因子の転写レベルでの抑制ではなく、細胞内でのチロシナーゼタンパク質が量的に抑制されていた。今後、さらに詳細に作用機序を追求する必要性が残された。
 
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、培養細胞を用いてキサンタンガムのメラニン合成抑制作用が確認できたことから、当初目標は達成されたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、キサンタンガムの美白作用は示されたものの、今後の開発計画が具体的に示されてはいない。作用機序が必ずしも明確にされていないので、キサンタンガムのような高分子を表皮に塗った場合に基底膜上に作用するか疑問であり、今後、技術移転する上では、積層細胞での評価が望まれる。
匂いセンシングによる植物健康診断技術の確立 愛媛大学
高山弘太郎
愛媛大学
吉田則彦
植物が発する匂い成分のモニタリングによる植物診断技術は、太陽光利用型植物工場内での栽培管理に利用可能な技術である。本研究では、携帯型匂い成分分析装置(zNose(R))を用いて、植物工場内で生育しているトマトを対象とした水ストレスの早期検知を試みた。茎および葉の表面をブラシで優しくブラッシングすることで放出された匂い成分を計測したところ、テルペン類の放出強度(匂いの強さ)とモノテルペン類とセスキテルペン類の放出比(匂いの質)の変化が確認され、水ストレス個体の判別が可能であることが分かった。また、エアブロワを用いて植物体を振動させることで植物体に触れることなく匂い成分の放出を促進できること、さらに、安価な半導体センサを用いてこれらの匂い成分を計測できることを示した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、安価な半導体センサを用いた匂い成分計測法を提示し、植物健康診断の可能性を示唆したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、半導体センサ改良を含めた経時変化の測定が可能な、植物診断システムの開発が望まれる。今後は、匂いの意味する生理反応や植物の健康状態との因果関係の特定が期待される。
飲料・食品のための簡便・短時間で計測可能な抗酸化力評価法の開発 愛媛大学
小原敬士
愛媛大学
吉田則彦
本課題では、飲料・食品製品の抗酸化力の簡便迅速な標準評価手法を新たに開発し提案することを目標として、評価キットの試作と高感度・短時間計測のための技術開発を実施した。検討の結果、飲料をサンプリングし前処理を加えずに直接評価キットを加えて計測を行うだけの簡単な操作で、10分程度の所要時間で誰でも容易に信頼性・再現性の高い1O2消去パラメーターを決定できる手法の開発に成功し、飲料の抗酸化能を定量的に明示できることを実証した。本法の物理的バックグラウンドの信頼性・評価の簡単さ・迅速さ・再現性の高さは、ORACなどの従来評価技術を大きく凌駕しており、製品機能の定量的評価技術として産業界での応用が期待できる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、溶媒組成や薬剤濃度の最適化、試料測定を可能にするための前処理方法については評価できる。一方、構築できた前処理方法や試料作成における最適条件は、多方面で有用であり有効性は高いと思われるが、その汎用性の確立に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。一重項酸素発光強度を測定する場合は高額な測定装置が必要であり、汎用性は低く、代替装置も見つかっていないため、今後は、発光検出装置の開発が課題である。また、時間短縮についての課題を達成されることが望まれる。
カヤツリグサ科マツバイによる放射性セシウム汚染された水田土壌のファイトレメディエーションに関する研究 愛媛大学
榊原正幸
愛媛大学
亀岡啓
本研究では、1)マツバイの水耕栽培実験および2)マツバイのフィールド栽培実験を行った。1)では、カヤツリグサ科ハリイ属マツバイのCsの最大蓄積量および生物濃縮係数を解明するため、KおよびCsイオンを含む水溶液におけるマツバイの水耕栽培実験を行った。2)は、福島県郡山市の放射性Csに汚染された水田土壌で行った。これらの実験の結果、カヤツリグサ科ハリイ属マツバイは、放射性Csに汚染された土壌の除染(ファイトレメディーション)に最も適した植物であることが明らかにされた。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初目標が十分に達成されており、特許申請もなされていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、マツバイのファイトレメディエーションの能力が高いこと見出されており、実用化が期待される。今後の方針も明確化されているので、福島県農業総合センターとの現地試験などを計画・実施されることが望まれる。
熱ストレス処理の最適化による青果物貯蔵法の実用化研究 愛媛大学
森本哲夫
愛媛大学
亀岡啓
本研究は、貯蔵青果物の鮮度保持、高品質化、病虫害防除を達成するための最適な熱ストレス処理法を見出し、その技術を実用化することである。上記の目的のため、2回の熱ストレス処理(40〜50℃の高温下に2回置く処理で、1)温水浸漬、2)温風にさらす処理)について研究した。1)温水浸漬では青果物の洗浄効果だけでなく、水損失の低減、表皮細胞の頑丈化、病害の抑制等の傾向が確かめられた。また、ニューラルネットワークと遺伝的アルゴリズムを組み合わせた知能的最適化手法を適用することにより、青果物の水損失を最小にする、病害を最小にする最適な温度操作列{T1, T2, T3, T4}={43, 15, 45, 5℃}が求められた。今後は、この技術を西条市が進めている農商工連携のプロジェクトに適用し、野菜の鮮度および品質保持に役立てたい。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の研究目標は充分達成され、実施すべき技術上の課題も明確になっていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、個別の野菜・果実についてのデータを踏まえて包括的な技術特許が成立するか、速やかに検討することが望まれる。今後は、新たに克服すべき課題も明らかになってきたので、技術移転の可能性を追求されることが期待される。
ヒエを用いた活性型ビタミンB6の簡易定量キットの開発 愛媛大学
渡部保夫
愛媛大学
亀岡啓
グルタミン酸脱炭酸酵素(GDC)のグルタミン酸からγアミノ酪酸(ギャバ)への変換反応を基本として、この反応の必須因子である活性型ビタミンB6(ピリドキサールリン酸)の量を定量する技術の開発を目標とした。ヒエ粒を酵素源とした反応系を用いてギャバ生産量とPLP量の間で検量線を作成できた。測定感度に関する数値目標もほぼ達成できた。このPLPの検量線を用いてハカダ麦ヌカに含まれるPLP量を計測できた。ヒエ粒GDCの熱安定性について試験し、反応温度を50℃に高め、短時間測定について検討した。現在、測定は主としてギャバ量についてアミノ酸分析装置で行っているが、より簡便なギャバーゼを用いた酵素法による分析について検討した。
概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、ヒエ粒内のグルタミン酸脱炭酸酵素を利用して、ピリドキサールリン酸(PLP)の簡便な測定系を開発したことは評価できる。一方、技術移転の観点からは、γアミノ酪酸富化に関して、今後の企業化に向けた進捗が望まれる。ヒエを用いたPLP測定は新規性が高く、特許出願もされており、今後の技術移転を期待したい。
無細胞タンパク質工学による高機能型魚類I型インターフェロン(IFN)の開発 愛媛大学
戸澤譲
愛媛大学
入野和朗
本研究では、高級養殖魚の品質管理の鍵を握る魚病防除に効果が期待されるインターフェロン(IFN)に着目し、独自の基盤システムである無細胞タンパク質工学技術を利用したIFN機能改変を進めた。対象としては地元の愛媛県が将来的に高級養殖魚として栽培規模拡大を予定しているマハタのIFNタンパク質を材料として試験を行った。1年間の実施期間中には、ほぼ当初の計画に沿った形で、構築したシステムの妥当性を確認した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特許化については準備中とのことであるが、現段階での特許化も可能と思われる。今後、魚体への投与により、目標とする機能水準に達しているか否かの評価を行い、目標とする機能水準に到れば、養殖魚類への利用が可能であり、漁業への貢献が期待できる。
糖類からのヒドロキシメチルフルフラールの効率的生成プロセスの開発 愛媛大学
川嶋文人
愛媛大学
入野和朗
本研究開発はバイオリファイナリーの主要原料の一つとして期待されているヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を糖類から効率的に生成する方法に関するものである。本法はグルコースなどの糖類を酸触媒と金属塩の存在下で脱水反応を行い、HMFをワンステップで高収率に、かつ環境にやさしく低コストなプロセスで生成することを目指すものである。本研究開発では反応収率の向上とプロセス温度の低下を目標として検討を行った。その結果、本研究開発において70%を超える反応収率、ならびに反応温度の低減が可能となり、実用プロセスとしての可能性が見えてきたところである。今後はより実用プロセスに近い流通式反応系でさらなる反応の効率化を図っていく予定である。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に生成収率、反応温度の低温化とも、本研究の数値目標を達成した。また、国内優先権による本成果の知財化も行ったことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、本研究開発で得られた実証データをもとにした企業へのマーケティング活動他、事業化に向けた活動についても、研究者責任者と担当コーディネータが連携して推進していることなどでの実用化が望まれる。糖類からの効率的生成プロセスの実用化に向けた実証的エビデンスが得られ、確実な進捗が認められたので、今後、実用化に向けた流通プロセス化が期待される。
マルソウダガツオの高鮮度保持流通システムの確立を目指した検証 高知工科大学
松本泰典
本事業では高知県が全国で最も水揚げしているマルソウダガツオを生食可能な状態(刺身)で流通するシステムの構築を目的に、スラリーアイス等の保冷氷を用いたときの鮮度の経時変化を調べた。その結果、漁獲直後から塩分濃度を調整したスラリーアイスにて冷却保存を行うことで、24時間以降でも刺身として食する鮮度であることが定量的に確認できた。これにより、鮮度劣化が速いため暗黙知的にこれまで水揚げされた地域のみでしか食することが出来ないと言われていたマルソウダガツオを、全国流通可能な生鮮魚として展開できる。今後も高知県中土佐町を中心にした産官学連携を図り、本流通システムの具現化に向けた取り組みを行う。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。賞味劣化は速いが鮮度の高いマルソウダガツオの旨味を考慮すると食材としての価値は高く、あえてリスクがある食材をブランド化しようとするチャレンジは高く評価できる。一方、冬季(2〜3月)の大型魚に関するデータの蓄積、および漁獲直後の冷却温度域の設定に向けた詳細なデータの積み上げが必要と思われる。今後は、漁獲直後に血抜きをせずに冷却すれば、目的鮮度が保持できるかどうかの検討も望まれる。
温室や野菜工場に適した緑藻を原料とするアミノ酸含有液肥の製造と評価 高知工科大学
大濱武
高知工科大学
和田仁
カイワレダイコンとチンゲンサイの繻子を発芽させ、幼本の生長に与えるクラミドモナスの細胞破砕液の影響を、1%寒天の培床に様々な濃度のクラミドモナス細胞破砕液を混合させて調べた。その結果、発芽から3-4日までの期間に関して根および茎の伸長に対して、クラミドモナスの細胞破砕液は顕著な効果を見せ、それらの伸長速度は水のみの場合に較べて、3-5倍であった。また、クラミドモナス細胞内のオーキシン、サイトカイニン、ジベレリン、ジャスモン酸、サリシリン酸の量を定量分析により明らかにした。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、小規模な水耕栽培プラントでの試験に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、ハウス栽培農家との連携を計画しており、産学共同ステップの可能性が高いことなどでの実用化が望まれる。今後は、クラミドモナス破砕液の植物成長促進作用が明確に確認されたことから、本研究は技術移転に弾みがついたといえ、新たな作物育苗技術として活用が期待される。
マイクロバブル発生機構を用いたマイクロエマルションの微細化及び安定性に関する研究 高知工業高等専門学校
秦隆志
香川高等専門学校
関丈夫
申請者は平成22年度の本助成において、マイクロバブル発生機構の1つである旋回方式を応用した水と油の液-液2相混流からマイクロエマルションの生成を確認し、その成果から特許申請をおこなった。本研究開発では、本技術の実用化移行を目的とし、前年度の課題点であるマイクロエマルションの微細化と安定性について最適な混流方式を検討した。結果、約10μm以下に集約される微細化と、高い分散安定性を示す発生機構を確立し、現在、実用化に向けた発生ノズルの試作段階に進んでいる。また、生成には界面活性剤等の乳化剤を必要としないことから、実用化においては高い安全性が得られるなどの高付加価値を提供する。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特に、マイクロバブルの発生ノズルの改良などにより、水の旋回による分散相(オレイン酸)のせん断効果を上昇させ、大きなマイクロマルジョン(>10μm)の生成を抑制することに成功した。また、作製されたマイクロエマルジョンが半年程度の長期分散安定性を持つことも確認され、当初の目標以上のデータも得られており、本研究の成果は顕著である。一方、技術移転の観点からは、食品分野で乳化剤を使用しないO/Wエマルジョンのなどの実用化が期待される。今後は、大手企業と具体的事項に関して実施許諾を含んだ共同研究に進展することが期待される。
膜ミクロドメイン会合分子同定のためのEMARS反応標識試薬の開発 高知大学
本家孝一
株式会社テクノネットワーク四国
安田崇
細胞膜には、増殖や分化を促す刺激に応じて機能タンパク質が会合する膜ミクロドメインが存在する。申請者は、活性化された膜ミクロドメインにどのような分子が会合するかを知る方法原理を開発した。これには、アリールアジド基を西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)でラジカル化するEMARS反応が中心的役割をはたす。従来のEMARS反応標識試薬には細胞内の内在性酵素で活性化される欠点があった。そこで、細胞膜を通過せず、外来性のHRPによって特異的に活性化される新たな標識試薬を開発した。しかし、この標識試薬を用いるとEMARS反応活性が弱くなるので、今後、HRPを改良して標識タンパク質を質量分析で同定できるようにする。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、EMARS反応試薬の改良について一定の成果が得られた点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、すでに標識試薬アリールアジド−フルオレセインを商品化しており、企業と技術移転を目指した産学共同体制が構築されている。市場に良い試薬と確認されれば、広く研究に利用でき社会に還元できる。さらに、標識効率の改善をめざすという技術的課題は明確になっており、検出感度を上げるなど今後の開発計画の具体化が望まれる。
ハダニを利用した土着天敵クロヒョウタンカスミカメ増殖キットの改良 高知大学
伊藤桂
高知大学
吉用武史
日本に広く分布する捕食性カメムシのクロヒョウタンカスミカメは、環境への負荷が少ない土着天敵昆虫として注目されており、施設栽培での害虫管理での利用が期待されている。本種の普及のため、限られたスペースで省力的に増殖させるシステムの開発を検討した。本課題では、従来のキットの産卵基質・水分源である多肉植物(カランコエ)に、クロヒョウタンカスミカメの餌として好適なハダニを寄生させることにより、省力的で高い増殖効率を実現することを目指した。カランコエに対して約30系統のハダニの定着を試みたが、定着が可能だったものは1割程度にとどまり、それらも2世代以内の定着だった。したがって、期間内にキットの開発までは到達できなかった。しかし、ハダニが寄生するハーブであるバジルがハダニの定着に有効であることが明らかになったため、 当初目標とした成果が得られていない。中でも、期間内にキットの開発までは到達できず、目標の達成はほとんど出来ていない点について、その原因の技術的検討や再評価が必要である。当初計画では約30系統のハダニ定着を試みたものの、定着が可能だったものは1割程度であり、今後、研究開発計画の見直しが望まれる。
菌床シイタケの品質に影響する糖類の含量を増大させる生産法の開発 高知大学
大谷慶人
高知大学
石塚悟史
高知の高温な気候下でも特段の温度調節をせずに栽培の可能なシイタケ菌を開発し、培地成分の変更で高品質の子実体を生産することを目的とした。菌床シイタケは原木シイタケに比べ、糖分含有量が少なく、本来の風味に欠け、品質の面で劣るとされている。そこで、子実体の糖類の含有量を高める菌床栽培法の検討も行った。当研究室で開発したシイタケ菌を市販の菌と比較した結果、品質および収量の点ではほぼ同等であった。更に、菌床に数種の糖を所定の濃度で添加すると、加える糖の種類により、シイタケの主要糖であるトレハロース、マンニトール、アラビトールの含有量がコントロール(水のみ添加)に比べて多いもので2倍以上を示した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、「糖組成の確認」に関し、子実体での3種の糖類の含有率の増加が確認されたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、収穫量や発生時期に問題がなく、低コストでシイタケの糖類含有量や食味を向上させる技術を開発することが望まれる。今後は、「生長及び収量の調査」ではデータの解析が不十分であり、これらの部分を完成させた上で、実用化技術に発展させることが期待される。
光センシングを利用した食品偽装防止技術に関する研究 高知大学
河野俊夫
高知大学
石塚悟史
工業製品の管理で用いられる IC タグやバーコードは食品に対しては異物であり利用ができない。そこで食 用物質を利用した新しい食品管理特殊コードに関する試験研究を行った。光技術の応用によってコード識別 を行うもので、輸入冷凍食品を始めとする各種の高付加価値食品を流通段階で精密管理する手法の開発を 目標とする。本年度の試験研究では、管理特殊コードに用いる食用物質の候補について、その光特性を測 定し、管理特殊コードを正確に読み取るための固有特性範囲を分析した。その結果、食用物質を用いた管理 特殊コード作成のための基本固有波数を明らかにすることができた。今後、管理特殊コードを実用化するた めの、暗号化方法および解読方法に関する基本技術を開発する。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、技術的課題は明確に示されていることは評価できる。一方、今後の課題は明確であるが、その課題の解決のための手法開発に向けて技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。なお、当初目標が識別率90%以上の技術を開発することであったが、識別率については記載されておらず判断できないので、詳細データを検討されることが望まれる。
飛翔性微小昆虫を捕食する土着天敵メスグロハナレメイエバエの大量増殖法の開発 高知大学
荒川良
高知大学
石塚悟史
本課題の目標は飛翔性昆虫捕食性メスグロハナレメイエバエを、施設園芸の害虫防除資材として実用化するために、幼虫の簡易飼育法の確立と雌雄の交尾を成立させる環境条件を明らかにし、大量増殖法の確立を行うことである。本研究の結果、熱帯魚の餌用として市販されているブラインシュリンプ耐久卵から孵化した直後の幼生がメスグロハナレメイエバエ幼虫の餌として有用であることを世界で初めて明らかにし、また昆虫飼育用ケージ内に成虫の静止場所を提供することで交尾が可能であることが明らかとなった。幼虫は他の捕食性昆虫類と同様、共食いを行うので、その率を軽減させる飼育方法を考案することで今後の大量増殖につながると予想された。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、交尾・産卵、発育が人工的にできるようになったことで、累代飼育が可能となったことは評価できる。一方、製品化に向けての問題は多いが、特に大量増殖に向けた問題点の改善に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、実際に放飼した場合も想定し、大量増殖する際の問題点にも注視した研究が望まれる。
遊離ヘムを検出する蛍光発光型センサーの開発 九州工業大学
坂本寛
ヘムは生体にとって必須な色素である一方、活性酸素を発生する有害物質でもあり、病気の診断や治療法の開発につながる可能性がある。これまで我々は、蛍光ラベル化ヘムオキシゲナーゼ(HO)を利用した高感度ヘムセンサーを開発してきたが、消光型のため応用範囲が限られていた。そこで今回、ヘムと結合したHOに特異的に結合する蛋白質を利用し、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によってヘム濃度を測定する発光型センサーを開発することとした。本研究を通してヘム結合型HOと当該蛋白質との特異的結合をFRETによって観測できる検出系を構築した。このセンサーは発光型であるため、生体試料から抽出したヘムを測定できるだけでなく、将来的には細胞内に導入して蛍光イメージング技術と組み合わせることにより、細胞内のヘムの動態観測に応用できる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、蛍光スペクトル計測によるホロ型HO−1とCPRの結合確認や、当該蛍光ラベルの成功と、FRET効果の確認がなされたことは評価できる。一方、蓄積された技術・経験が社会還元に導かれるために、継続的な研究開発を続けることが必要と思われる。今後は、開発の方向性が正しいかなどを見極め、困難のあるところを克服していくことが望まれる。
乾燥ストレス耐性ペプチドの共発現によるタンパク質高効率発現技術の開発 九州工業大学
池野慎也
(財)北九州産業学術推進機構
北井三正
目的タンパク質発現時に乾燥ストレス耐性タンパク質由来のペプチド(LEAペプチド)を共発現させると、目的タンパク質の発現が増大することを見出した。本研究では、発現が難しい膜タンパク質を中心に、LEAペプチドによる発現量増大効果を検証し、実用化のための基礎データの収集を行った。本技術は、遺伝子導入のみで目的タンパク質の発現が倍増するため、費用対効果が大きく、事業化の可能性が大いに期待できる。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、問題点は明確になったことについては評価できる。一方、タンパク質の効率発現を促進するという目標に対して、膜タンパク質等の実験データは2〜3割程度の向上であり、さらなる検討が望まれる。今後は、更なる研究の進展に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。
農業用ビニールハウスのカバーシートの開閉における損傷機構(メカニズム)の解明と対策指針の研究 九州工業大学
野田尚昭
九州工業大学
田中洋征
本研究の実施に当たって、3つの内容に分けて、併行的に進めた。損傷メカニズムが、これまでの研究から、パイプ間に介在するシートへのパイプの接触応力とそのくり返しによって生じることが分ってきたので、接触圧力の軽減化を検討し、特にパイプ材の軽量化により50%以上低減することが分った。また、夏期のパイプ温度上昇が70℃に達することが分ったので、その冷却法を考案し、20℃以上の低下が期待できることを示した。これらの成果は、課題提案元の総合農業試験場にて、実用化に向けた試験を行う予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標は一定程度達成されたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、実証テストの実行が望まれる。今後は、提案先の総合農業試験場との連携により試験を行うこととしているが、特許等の取得は行われておらず、知的財産権の確保が期待される。
衝撃波を用いたマイクロカプセル内細胞培養システムの開発 九州工業大学
玉川雅章
(財)北九州産業学術推進機構
米倉英彦
本課題では、マイクロカプセルの中に気泡および細胞を封入し、(1)弱い衝撃波による細胞への刺激と(2)強い衝撃波によるカプセル破壊による細胞放出とを組み合わせたシステム開発するため、カプセル構造と圧力制御の最適化を行う。具体的には、(1)カプセル破壊のしきい値に及ぼす封入気泡量や圧力波形の影響の定量化、(2)計算から圧力の伝播量を推定し、細胞への力学的刺激量を予測すること、を目標とする。その結果、カプセル破壊するガスの量や作成されたカプセル径、膜厚と、圧力波形(MI値:メカニカルインデックス)の影響を示す図を実験から得たことと、数値シミュレーションによって、膜での刺激の時間空間的分布が示された。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもカプセルや気泡の状況を直接、よく捕らえて結果が出ていることについては評価できる。一方、もう少し基礎段階をつめて、企業が興味を持てるようなデータや提案に向けた技術的検討や積み上げなどが必要と思われる。今後は、細胞間の相互作用による影響の把握及び数値シミュレーションの計算精度の検証を含め、細かな観察を要する実験を行い、細胞増殖率の向上などを目的とする成果を出されることが望まれる。
生理活性糖鎖を利用した病原体の捕捉材料の開発 九州大学
三浦佳子
生理活性糖鎖を側鎖に持つ糖鎖高分子をグラフトした多孔質材料を調製し、糖鎖と結合するタンパク質や病原体を特異的に除去する材料の開発、解析を行った。糖鎖高分子のグラフトについてはシランカップリング剤を利用して、高分子の修飾、または表面開始重合によって調製し、高密度な基材修飾体を得た。糖鎖としてはマンノース、シアリルラクトースを側鎖に提示させ、基材としてはシリカ系多孔質素材を用いた。基材の標的結合性は多価結合によって、増強されていることを水晶発振子によって解析した。更に、標的タンパク質除去について、破過曲線を測定し、糖と反応するタンパク質のみを特異的に除去することを明らかにした。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、糖鎖高分子によるアフィニティ分離に関する技術に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、基本原理が確認され、実用可能性のあるレベルの分離性能が望まれる。今後は、ウイルス本体を用いた検討ができなかった点があり不活化ウイルスを用いるなどの方法で、検討が行われることが期待される。
低比重未利用木材の用途拡大を目的とした低コスト圧密木材の開発 九州大学
阪上宏樹
九州大学
坪内寛
本研究ではスギを代表とする低比重未利用材の利活用を目的に、従来の圧縮木材と比べ、木材の質感を維持したまま簡便かつ低コスト、大量生産可能な簡易圧密処理法を開発した。最適処理法によって作製した圧密材はブリネル硬さおよび密度分布測定行い性能評価を行った。その結果、厚さ30mmの板材心材、辺材を33%圧縮するのに最適処理条件は、含水率を約10%に調整した材で、熱板温度は心材で100℃、辺材では100℃から140℃であり、この最適条件で処理した圧密材両面の表面を心材で計1.7mm、辺材で計1.5mmのカンナ仕上げを行えば性能を十分に維持しながら装飾的にも十分な圧密材が得られることが分かった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、当初の目標はかなり達成されている点は評価できる。一方、技術移転の観点からは、総合的に企業化への課題はその端緒についた段階と判断され、今後の実用化が望まれる。製品化のための実大レベルの評価が必要であり、「未利用木材」の費用対効果、吸湿による弾性回復にかかる商品として発生するであろうクレーム解決法や商業ベースに乗るかどうかの検討が望まれる。
繁殖牛の高精度発情検知のための血流量センサーパッケージの開発 九州大学
澤田廉士
九州大学
平田徳宏
畜産業従事者の収益性を向上させるための方法の一つは、子牛の繁殖効率の向上である。子牛の繁殖は人工授精により行われているが、発情期における授精タイミングの的確な検知が困難であるため約70%にとどまっており、次の発情までの飼育コスト増が収益低下の原因となっている。本申請課題では、繁殖牛の発情周期を高精度血流量センサーによって検知し、取得情報を携帯端末でモニタリングすることで人工授精適期を的確にとらえる高精度発情検知システムを開発する。具体的には、1)発情状態の検知精度を向上させる血流センサーパッケージの開発、2)低侵襲センサーパッケージの検討、3)飼育環境に対応したセンサーパッケージの検討を行う。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、概ね当初目標は達成されており、実証研究の結果を踏まえると実用化の可能性は大きいことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からはセンサ改良等の開発内容、計画も明確であり、現場での実証研究も積み上げれば社会還元も期待できる。今後は、測定モックの改善と並行して、早い段階での企業とのより一層の連携を密にし、実用化を目指すことを期待したい。
脂肪酸合成マスター調節因子を利用した高油脂含有ダイズの分子育種法の開発 九州大学
湯淺高志
九州大学
槐島慎
ダイズ子実の油脂含量増大を目指してマスター調節遺伝子WRI1ホモログに着目した。ゲノム中の6個のWRI1候補のうち子実肥大初期に顕著に発現するGmWRI1-3を同定した。ダイズに2つのWRI1サブグループが存在し、シロイヌナズナやトウモロコシのWRI1とは別のサブグループがダイズ子実の油脂合成に関与することが推測された。 またWRI1が認識するcisエレメント「AW-box」を脂肪酸合成酵素のGmKAS1とGmBCCP2のプロモーター領域に特定した。今後はGmWRI1遺伝子特許を取得し、GmWRI1-3過剰発現ダイズを作成して油脂含量の評価を進める。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、器官特異的発現の検討から1候補を選定したことは評価できる。一方、企業の関心をひきつける努力はされているので、研究開発の進展に応じた企業への提携への試みに向けて、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、今回の計画を継続して有用な遺伝子の同定とそれを利用したダイズ植物体の育成が望まれる。
熱帯性食用ナマコの産卵誘発ホルモンの解明と種苗生産技術の開発 九州大学
吉国通庸
九州大学
槐島慎
本課題は、熱帯性食用ナマコの代表種であるハネジナマコの産卵を誘発するホルモン活性を解明し、同ナマコの人為産卵誘発技術の開発をめざす。ハネジナマコ周口神経を含む口器組織抽出液中に、培養下の卵巣組織から成熟卵の排卵を誘発する活性を検出した。同活性は酢酸酸性下で口器組織より効率よく抽出され、熱安定性が高い分子量数千〜10,000程度の成分であった。液体クロマトグラフィーにより2つの活性画分に分離され、それぞれの構成成分が数成分程度になるまでの精製を完了した。今後、それら全成分の構造決定、化学合成と合成化合物の活性検定を経て、二つのホルモン活性成分の本体の解明が可能であると思われる。また、卵巣組織の周年顕微鏡観察により、天然の産卵期を8-9月と特定した。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、目標とする熱帯ナマコの産卵誘発ホルモンの精製段階まで研究が進展していることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、現場に最も近い研究機関との共同研究として実施されていることなどから、将来の実用化が期待される。今後は、目的ホルモンの人工生産という目標を達成して、その実用化につなげることが望まれる。
2-アラキドノイルグリセロールを利用した食習慣改善法の開発 福岡大学
入江圭一
福岡大学
芳賀慶一郎
本課題は様々な臓器に存在する脂質メディエーター、2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)を利用した食習慣を改善する方法を探索するために行った。本研究開発実施期間には、高脂肪食を摂食し、脂肪を好んで食べるマウスの末梢臓器中2-AG量を測定した。その結果、高脂肪食の摂食は末梢臓器中2-AG量を変化させた。また、その増減は臓器ごとに異なっており、研究責任者らが既に得ている脳の2-AG量増減と異なる動態が含まれていた。この結果は2-AG量制御による食習慣改善に向けた重要な知見となった。また、食習慣を切替えたマウスの解析結果と併せて、今後、高脂肪食摂食後の2-AG制御の詳細を解明し、補助的に利用できる食品や薬品の探索を行う。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、動物実験については評価できる。一方、動物実験の成果をどのように、研究開発につなげるのか、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、動物実験による基礎研究であり、このままでは技術移転につながる可能性は低く、ヒトにおける新たな食習慣改善法の開発につなげることが望まれる。
未利用レンコンに含まれるポリフェノールの吸収性に関する研究 佐賀県工業技術センター
鶴田裕美
財団法人佐賀県地域産業支援センター
安田誠二
レンコンのポリフェノールは、ガロカテキン及びカテキンを構成成分としたプロアントシアニジン(PA)であり、肥満モデルマウスの脂肪肝を改善する。本研究では、レンコンPAの体内吸収性について検討した。ラットにレンコンPA(単量体〜12量体)を投与し、血中に吸収されるポリフェノールの検出を行なった。その結果、インタクトなPAは検出されず、(エピ)カテキン及び(エピ)ガロカテキンのグルクロン酸抱合体とそれらのメチル化体の4種類の代謝物が検出された。また、これまで、逆相HPLCで分析が困難であったガロカテキンとカテキンのホモポリマー及びヘテロポリマーを4量体程度まで分別して分析可能なHPLC分離方法も確立した。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、有効成分の体内への吸収については評価できる。一方、本研究は基礎研究としては意義あるものであるが、ポリフェノールの体内動態に関する研究は近年盛んに行われており、その中で本成果をどのように応用展開するかに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。本研究の成果としてレンコンポリフェノールの分析系を確立することができ、体内への吸収を確認することができたことは評価できるが、今後はその吸収量を明らかにされることが望まれる。
最も簡単な部位特異的変異導入法の開発 佐賀大学
永野幸生
佐賀大学
佐藤三郎
部位特異的変異導入法は改変タンパク質を作成するための重要な研究手法であり、バイオテクノロジーの基盤技術の一つである。しかし、これまで開発されてきた部位特異的変異導入法は実験操作が煩雑であり、また、変異導入効率が高いとは必ずしも言え言えなかった。そこで、私は「最も簡単な部位特異的変異導入法の開発」を行った。その結果、開発した方法は、PCR反応を行った後に、細胞にPCR産物を導入するだけの極めて単純な方法であった。また、その変異導入効率も100%に近い、極めて高いものであった。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、研究成果に繋げるための試験検討については評価できる。一方、クリアすべき問題点はあるが、この成果が応用展開されれば使用される可能性はあるので、引き続き技術的検討が必要と思われる。急遽変更された研究計画での実施になっているが、従来法に多少の改善を加えたものに留まっているので、今後、さらなる検討が望まれる。
ムキタケの脂肪肝予防効果及び機能性食品としての開発 佐賀大学
柳田晃良
財団法人佐賀県地域産業支援センター
大久保惇
ムキタケの熱水抽出物についてIKKβの活性を抑制しNFκBシグナルを阻害することをin vitroで測定し抑制することを示したが、細胞レベルにおいてもTNF-αの誘導するNFκBシグナルを抑制することを検証することが出来た。さらに、この熱水抽出物を固相抽出カラムによって0%、20%、40%、60%、80%、100%エタノール含有水に分画し、それぞれについてTNF-α誘導NFκBシグナルの抑制を検討することで、20%エタノール含有水の分画にNFκBシグナル抑制の機能を有する成分が含まれることを見出した。
今後、この20%エタノール分画に含まれる成分について解析を行い、NFκBシグナル抑制成分の同定や単離の方法について検討する予定である。
当初目標とした成果が得られていない。中でも原料不足のため、ほとんどの実験が未達である点に関しては準備が不十分であった。今後、本来の脂肪肝予防効果について、研究計画を進めて機能性を検証することが望まれる。
九州地方の焼酎粕からの新規機能性食品・保湿材創生のための技術開発 佐賀大学
北垣浩志
財団法人佐賀県地域産業支援センター
大久保惇
焼酎かすに保湿効果のある成分であるスフィンゴ脂質が高濃度で含まれていることを初めて明らかにし、原著論文として報告した。焼酎かすに含まれているスフィンゴ脂質は、米や麦などの穀物でなく、焼酎麹菌によって作られるものが主体であることを明らかにした。また焼酎かすに含まれているスフィンゴ脂質のHPLCによる精製にも成功し、その分子構造を明らかにした。焼酎かすに含まれているスフィンゴ脂質の、クロロホルム・メタノールなどの人体に有害な有機溶媒を使わない、食品や保湿剤、化粧品に転用可能な効率的な抽出方法も確立した。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも焼酎粕からスフィンゴ脂質を単離同定できたことは評価できる。スフィンゴの多量抽出、精製および機能を考える段階に入る。今後、機能性と安全性試験をできるだけ早く実施し、実用化へ向けた研究展開などが望まれる。
黒酵母Aureobasidium pullulansが生産するβ1-3,1-6グルカンの精製法の確立 佐賀大学
林信行
財団法人佐賀県地域産業支援センター
大久保惇
20年以上にわたり精製粉末の製造ができなかった黒酵母β1-3、1-6グルカンを、水熱処理法をキーテクノロジーとして適用することにより、世界に先駆けて完全に水溶性の白色パウダーとして製造する工程を確立した。研究開発にあたっては、発酵培地に凝集剤を加える前処理工程の検討、連続水熱処理装置の開発、水熱処理条件(温度および加熱時間)の検討、乾燥方法等に対する検討を行った。その結果、前処理工程に工夫をほどこしたうえでの170℃・5分の加熱処理により、褐変による着色を抑えた白色の粉末が得られた。 期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。特にグルカンの多量精製に成功したことが、成果として顕著である。一方、強い免疫賦活作用などの特性が知られており、先行商品との差別化や、医薬品、健康食品として事業化する場合には、有効性、安全性評価など、越えなければならない課題も多い。今後は、グルカンの優れた機能性を評価し、商品化へつながることが期待される。
水環境浄化型植物「ヒシ」の高機能性素材としての利用に関する研究 西九州大学
安田みどり
財団法人佐賀県地域産業支援センター
安田誠二
水草の一種であるヒシは、水質汚濁に役立つ水環境浄化型の植物である。また、ヒシは地元(佐賀県神埼市)の特産品で、古くから食経験があり、安全・安心な素材である。ヒシの実の部分は焼酎などの原料に使われているが、ヒシの外皮は廃棄されている。本研究により、ヒシの外皮にはポリフェノールが多く含まれ、高い抗酸化作用が認められた。また、ヒシの外皮の抽出物は、アミラーゼ、アンジオテンシン変換酵素(ACE)、リパーゼなどの酵素を阻害することが明らかになった。以上の結果より、ヒシは糖尿病、肥満、高血圧症などの生活習慣病を予防することが期待され、地域産業の活性化を担う高付加価値の素材であることを明らかにした。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にヒシ外皮に抗酸化や血糖値上昇抑制等、種々の有用な機能性を明らかにして特許出願につなげている。また、関連する企業との間で技術移転の構想も進んでいることに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、実用化に向けて量産化技術の開発が求められるが、今後の計画に織り込み済みである。その点が解決されれば、移転につながる可能性が高いことなどでの実用化が望まれる。今後は、実用化に向けて量産化技術の開発が求められるが、それらも計画の内に入っているとみなされるので、その進展が期待される。
高オレイン酸含有大豆を原料とした機能性食品の開発と有用性の検討 西九州大学
安武健一郎
財団法人佐賀県地域産業支援センター
大久保惇
近年、遺伝子組み換え技術を使用せず、オレイン酸含有量を増加させた新規大豆品種 (以下、高オレイン酸大豆) が開発された。高オレイン酸大豆を広く普及するためには、文化的かつ嗜好的に広く受け入れられる加工食品を開発することが必要である。本研究では、地域の豆腐専門店である株式会社梅の花神埼工場と共同して、高オレイン酸大豆を原材料とした豆腐の作成を試みた。高オレイン酸大豆のオレイン酸含有量は、外皮に最も多いことが確認されているため、大豆を粉末化し外皮まで利用した。その結果、高オレイン酸大豆のオレイン酸、栄養成分および生理活性成分を極力残存させただけでなく、食品廃棄物であるおからが出ない高オレイン酸豆腐の作成に成功した。豆腐の味は、ヒト官能評価および味認識装置TS-5000Zで、甘味、旨味、コクの評価が高く、通常の豆腐と比較しても遜色なかった。今後、高オレイン酸豆腐の健康増進機能について研究する必要がある。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、目標とする試験等は確実にこなし、データを出していることは評価できる。一方、開発企業との共同研究でのさらなる実用化研究に向けて、技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、味覚的な方面からの成果は得られたが、一番の目的としていた保健機能(血糖値上昇抑制効果)は認められたとは言えないので、共同研究企業と協議の上、どのような方針をとるのかを検討されることが望まれる。
メタロ-β-ラクタマーゼ産生菌のリアルタイム検出・診断法の開発 熊本大学
黒崎博雅
熊本大学
荒木寛幸
NDM-1 (New Delhi Metallo-β-lactamase)と呼ばれる新型のメタロ−β−ラクタマーゼ(MBL)産生菌が2009年にインドから帰国したスウェーデン人からはじめて分離され、これまでのMBLはその殆どが緑膿菌から産生されていた。一方、NDM-1は大腸菌や肺炎桿菌から分離され、今や英国をはじめ世界的な問題となっている。本研究では、MBL産生菌と非産生菌を蛍光で判別する方法を確立した。本法はMBL蛍光検出剤がグラム陰性菌の外膜を通過しペリプラズム間隙に到達してMBLに特異的に結合すると蛍光強度が増大するという分光特性を利用して、MBL産生菌を蛍光検出するものである。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、2つの目標の内、1番目は目標が達成され、2番目は完全には達成はできなかったが、問題点を指摘することができた点については評価できる。一方、今回の目標は、まだ研究の初期段階であり、次のステップに向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、まずは論文発表等を行ない、一歩ずつ検討を進めていくことが望まれる。
ステビア農業資材の塩害水田に対する土壌修復効果とそのメカニズムの探索 別府大学
岡本啓湖
別府大学
江崎一子
本研究の目標は、ステビア熱水抽出液発酵液に高濃度(1.30±0.20%)で含まれるKに着目した脱塩効果の解明である。その方法としてステビア熱水抽出液発酵液からのKを含む物質(K包含物質)の分子量を推定した。その結果98.16±5.74%のK物質Tが14,000dalton以下で、更にこのK物質Tの27.43%は500〜14,000dalto(K物質U)、57.47%が500dalton以下(K物質V)の分子量を示した。しかしステビア熱水抽出液発酵にK濃度と同濃度のNaClを添加するとK物質Uが更に6.26%にまで減少し、且つK物質Vが101.1%にまで上昇した。またこのK物質Uは活性炭素カラムにより全量回収され(CF1))、CF1)のK濃度の1,1.5,2.0倍と添加NaClの濃度を増加すると、500dalton以下のK物質が直線的に増加することが確認された。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、期間が短いために目標が相対的に低いが、妥当な結論が得られていることは評価できる。一方、技術移転の観点からは、ステビア草は塩田へ使用される可能性が高いので、何故効くのかと言う基本的な機構解明が望まれる。ステビア草の熱水抽出液にあるカリウムイオンキャリア物質を調べ、そのナトリウムイオン濃度の変化から、ナトリウムイオンの高いところへのカリウムイオンの放出が起きると結論されているが、今後も研究開発を進め、塩害水田でのステビア草の使用に関する妥当性を証明して欲しい。
高鮮度魚肉の鮮度判別方法の開発 宮崎大学
村田壽
宮崎大学
坂東島直人
魚類の鮮度判定に、チアミン関連物質の量的変化を利用できることをこれまでに報告した。しかし、HPLC法により新鮮カンパチ肉のチアミン関連物質を分析すると、高い頻度で未同定物質が検出される。そこで、本研究ではこの不明物質の同定を試み、不明物質量を反映したT値(%)を再検討した。その結果、不明物質のピークはチアミン三リン酸であると同定された。このことに基づき、チアミン三リン酸を考慮した新たなT値の算出法を考案した。養殖カンパチ肉の保存試験において、この新たなT値を用いると、特に即殺後から保存3日間程度までの高鮮度期の鮮度判定法として有用性が高いと結論した。今後、T値による鮮度判定が適用できる魚種やその部位の選抜および基準値策定が課題である。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、当初目標である不明物質を明らかにし、新T値への適用を試行した点については評価できる。一方、魚種、部位を変えた測定についてはカンパチ以外にヒラアジのみであり、多様な魚種、部位についての分析体制、T値の分析機器の開発体制の構築が必要と思われる。今後、魚肉の鮮度判定の精度が高まることにより、水産業への展開が期待できる。また、分析装置開発が具体化することで、産学共同事業への発展が望まれる。
血中抗ミューラー管ホルモンによる家畜の適正な卵巣機能評価法の開発 宮崎大学
北原豪
宮崎大学
坂東島直人
本課題は、抗ミューラー管ホルモン(AMH)をバイオマーカーとする家畜の適正な卵巣機能の評価法を確立し、畜産現場への普及に繋げることを目標とする。牛の顆粒膜細胞腫(n=8)の血中AMH濃度は、正常な発情周期を営む経産牛より有意に高く、診断への有用性が示唆された。過剰排卵処置および胚回収(n=26)を行い、過剰排卵処置後人工授精(AI)時の血中AMH濃度は処置開始直前および胚回収時より有意に高く、大変強い有意な正の相関関係がみられたが、胚回収時の黄体数や回収した胚の総数との間に有意な相関関係がみられなかった。本課題の結果からAMHが卵巣機能評価法におけるバイオマーカーとしての可能性を示唆したことから、今後さらに追試を行い汎用性について精査する。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にこれまで病理組織検査が唯一の確定診断であった顆粒膜細胞腫の診断に、抗ミューラー管ホルモンが有用な指標となることを明らかにした点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、過剰排卵処理において卵胞波の調節などを組み合わせることにより、過剰排卵処理成績とAMH濃度との間に相関を見いだすことで、過剰排卵処理における卵巣反応の予測などでの実用化が望まれる。今後は、他の卵巣機能への応用が期待される。
ウシ生体におけるシコリ発生防止手段の開発 宮崎大学
石田孝史
宮崎大学
坂東島直人
牛枝肉のシコリ発生の原因を特定するために、屠畜後ではなく生体の黒毛和種肥育牛を対象として遺伝要因および環境要因の双方から検討を行い、さらにシコリ部位の基礎的な情報を得るためにシコリおよび正常と格付された僧帽筋サンプルを用い組成解析を行った。その結果、超音波診断によって僧帽筋に発生したシコリをある程度、生体で判定できる手法が確立できたが、その明確な発生原因は判明しておらず種々の環境要因や遺伝要因に起因する可能性が確認できるにとどまった。しかしながら、生体でシコリ発生を診断できることで、今後より多くの供試牛を対象に試験を継続していくことで、その発生要因を精査していくことが可能になると考えられる。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に僧帽筋シコリの超音波診断法の確立、一部の血中酵素の高活性、ミオスタチン遺伝子の399番多型等、次のステップへ進むための技術的課題が明らかになったことに関しては評価できる。技術移転の観点からは、僧帽筋シコリのバイオマーカー開発による簡易診断などでの実用化が望まれる。今後は、シコリ発生の原因遺伝子を解明し、予防策が開発されること、および肉用牛肥育農家における生産効率の向上が期待される。
プロテオミクスを基盤とした革新的ブランド豚肉偽装鑑定システム開発 宮崎大学
榊原陽一
宮崎大学
坂東島直人
本研究はプロテオミクスを基盤とした革新的ブランド豚肉偽装鑑定システム開発を目指した物で、従来の遺伝子解析では評価できない特殊な飼料や飼育環境によって高付加価値化したブランド豚肉に関してプロテオーム解析を基盤に評価する技術を開発する。本研究において、二次元電気泳動による豚肉解析のための試料調製条件などの最適化を行った。また、得られたタンパク質発現プロファイルの比較結果からブランド豚肉の評価に有効なバイオマーカータンパク質6種を見いだすことができた。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、豚肉鑑定・評価に使うことができる6種類のバイオマーカータンパク質を見いだしており、豚肉を客観的に評価する技術に関しては評価できる。一方、バイオマーカーと組み合わせた抗原抗体反応などを利用した測定法の確立に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、偽装鑑定に限定するのではなく、プロテオミクスを基盤とした広く豚の飼育管理技術として応用されることがされることが望まれる。
牛流行性神経疾患の生前診断法の確立 宮崎大学
佐藤裕之
宮崎大学
坂東島直人
本研究の目標は、牛の中枢神経疾患におけるCT検査および脳脊髄液検査の有用性を評価し、病原体の検出および新規バイオマーカーの確立を目指すものであった。CT検査によって水頭症などの器質的病変(構造変化を伴う病変)については高精度に診断可能であった。脳脊髄液検査を利用した感染性疾患の診断では、ウイルス検出には至らなかったが、マイコプラズマ感染症の検出には有用性を見いだした。新規バイオマーカーの確立については、既存の測定装置の故障があり、本研究で導入した検出装置単独では使用が出来ず、十分な結果を残せなかった。今後は症例数の集積と、測定装置の変更による研究継続により、新規バイオマーカーの探索を進める。 当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でもCT診断で器質的変化を示した7症例について脳脊髄液の検査を実施できたこと等、CT検査および脳脊髄液検査の有用性評価の技術に関しては評価できる。一方、マイコプラズマの結果は、脳脊髄液活用の有効性を示唆するが、例数が1例のみと少なく、データの積み上げなどが必要と思われる。今後は、脳脊髄液からのウイルスRNA検出技術および新規バイオマーカーの開発に向けて研究を継続されることが望まれる。
焼酎粕を利用した油糧微生物の培養とバイオ燃料および機能性脂質生産に関する研究 宮崎大学
田岡洋介
宮崎大学
坂東島直人
本研究開発では産業廃棄物である焼酎粕を用いて油糧微生物である海洋性真核微生物ラビリンチュラを培養し、未利用資源である焼酎粕からバイオ燃料の原料である脂肪酸生産を行うことを目的とした。セルラーゼ活性および焼酎粕分解性を指標として、Schizochytrium sp. SEK345株を候補株として採用した。既存の培地と比較して50%の焼酎粕を含んだ培地では、培養144時間で約2.3倍の脂肪酸収量を示した。今後の展開としてはジャーファーメンターを用いた高密度培養試験を行い、更なる生産性の向上を図る予定である。ジャーファーメンター試験の結果を受けて、実用化に向けラビリンチュラ培養基としての焼酎粕の有効性を評価する予定である。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。しかし、当初、具体的な数値を挙げて、3つの大きな目標を設定しているが、示されているデータからは、目標が達成できたかどうかの記載が全くなく、いずれも目標を達成できていないと判断される。産業廃棄物である焼酎粕を原料にして、ラビリンチュラに脂肪酸を生産させることが大前提であるが、脂肪酸の生産量を焼酎粕由来のものと菌体由来の混合物として評価することは問題である。本研究開発の進展のためには、純粋に微生物由来の脂肪酸やバイオマスを評価すべきであり、まずはこれらの点を改善しない限りは、将来的にも技術移転される可能性が低いと思われる。焼酎粕は未利用の産業廃棄物であり、これを原料として微生物による脂肪酸が高い生産性で生産されるようになれば、成果が社会に十分還元されると期待されるので、今後目標設定を明確にした上で、研究開発計画を立てることで、応用研究にまで進展されることが望まれる。
革新的な超スモールスケールホールアニマル食品機能評価法開発 宮崎大学
水光正仁
宮崎大学
坂東島直人
本研究は、ゼブラフィッシュをモデルに革新的な超スモールスケールホールアニマル食品機能評価法を開発し、生体に酸化ストレスを与えた条件におけるタンパク質の酸化傷害の程度から食品の抗酸化ストレス活性を評価する試験法を開発する。ゼブラフィッシュ稚魚に過酸化水素処理による酸化ストレスを与えると、形態変化を伴って死に至ることが判明した。1尾の稚魚から二次元電気泳動によるプロテオーム解析に必要十分なタンパク質量が回収でき、蛍光ディファレンシャル解析可能なことを確認した。過酸化水素処理以外の酸化ストレスとして、6-ヒドロキシドーパミン処理が適すことが明らかとなった。今後、さらに検討をすすめて食品の抗酸化ストレス作用を評価していく。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、次へ進めるための技術的課題が明確になったことについては評価できる。一方、更なる基礎技術の確保を踏まえた上で今後の展開に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。問題点は明確になっていることから、再度課題解決をしたのちに技術移転へと展開されることが望まれる。
ブロイラーにおける焼酎粕濃縮液による脂質代謝調節機構の応用 宮崎大学
高橋俊浩
宮崎大学
坂東島直人
飼料自給率向上のためにエコフィード利用拡大は急務であるが、高脂肪および高水分エコフィードの利用が進んでいない。そこで本研究では高エネルギー飼料が利用可能な成長期ブロイラーに対して、脂肪蓄積抑制の可能性がある焼酎粕濃縮液添加飼料を給与し、高脂肪なエコフィードとの組み合わせによる飼料給与システムの開発を目指した。焼酎粕濃縮液の保存性と嗜好性などに問題が無いことを確認したが、保存に伴って脂肪蓄積抑制作用についてはその効果が低下する可能性が見られた。そこで焼酎粕濃縮液の配合割合と飼料設計について検討を加え、配合飼料と混合利用可能な実用的添加濃度での脂肪蓄積抑制作用実用化に向けて利用可能性の検討と利用上の注意点についての検討を行った。今後は排出に季節性のある焼酎粕濃縮液について機能性飼料としての実用的利用法の開発を進める。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、実験を繰り返し行い、焼酎粕濃縮液の飼料への添加効果を検討したことは評価できる。しかし、焼酎粕濃縮液の有効性成分の同定に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが今後必要と思われる。技術移転された場合は一定の成果が考えられるので、引き続き多くの課題を解決していくことが望まれる。
免疫疾患を標的としたテーラーメイドヨーグルトの開発 九州保健福祉大学
黒川昌彦
我々はプロバイオティクス乳酸菌の保健機能に着目し、様々な疾患に有用な乳酸菌株を選抜し、個々の顧客に合ったテーラーメイドヨーグルトの開発を目指している。本事業においては、我々が過去に選抜したモンゴル伝統的乳製品由来プロバイオティクス乳酸菌株の中から、腸管免疫を介した免疫調整能に注目し、I型アレルギー抑制に有効な菌株の探索を検討した。その結果、3つのアレルギー誘導動物実験系において、症状の緩和に有効なLactobacillus plantarum 06CC2株を見出すことができた。本菌株は動物実験においてインフルエンザ感染抑制作用も確認していることから、今後、多機能性乳酸菌として展開可能と考えている。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、抗アレルギー作用を示す乳酸菌の作用機序解析を行うという課題が明確となったことは評価できる。一方、免疫疾患をターゲットとしている乳酸菌飲料の開発に向け、引き続き技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。高齢化社会において機能性乳酸菌飲料の開発は重要であり、今後は次に進めるための作用機序解析を行うことが望まれる。
各種焼酎粕を用いたきのこ生産技術の開発と廃培地の再利用に関する研究 鹿児島工業高等専門学校
山内正仁
鹿児島工業高等専門学校
中原義毅
本研究では、まず麦焼酎粕乾燥固形物を用いてヒラタケ栽培試験を試み、甘藷焼酎粕乾燥固形物と同様、付加価値の高いきのこを生産可能か検討した。その結果、麦焼酎粕培地でヒラタケを栽培すると、標準培地、甘藷焼酎粕培地で栽培したものより高タンパク質で遊離アミノ酸を多く含む高付加価値きのこを栽培できることがわかった。つぎに麦焼酎粕廃培地を培地基材に100%置換し、ヒラタケ栽培試験を再度試みた。収量、成分特性は本培地においても同等であり、また、廃培地中のADF、リグニン量は廃培地を再利用することでそれぞれ26.3%、18.5%減少した。このことから、廃培地の再利用は原材料費の軽減に資し、生産コストの削減に繋がると同時に、廃培地の家畜飼料への利用を高めることがわかった。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に、麦焼酎粕にしぼり、甘藷焼酎粕と同等以上に、キノコとしてヒラタケ栽培の有効性を示したことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、黒糖焼酎粕への適用性、培地の利用などでの実用化が望まれる。実用化されている甘藷焼酎粕よりも栽培効果があること、培地は嵩あげすることで再利用可能なことを示しており、今後、地域産業界との連携が期待される。
大豆食品廃棄物のビフィズス菌増殖促進効果の検証 鹿児島大学
藤田清貴
鹿児島大学
遠矢良太郎
本課題では、大豆種皮を用いたβ-アラビノオリゴ糖鎖含量測定及びビフィズス菌増殖促進効果の検証を目標とした。黄大豆種皮中のβ-アラビノオリゴ糖鎖の含有量は0.7%であり、黒大豆種皮も同等であった。また、大腸に常在するビフィズス菌であるBifidobacterium longumが、黄大豆皮を炭素源とした培地で増殖促進効果を示すことが確認された。さらに、黄大豆皮から調製したβ-アラビノオリゴ糖鎖を有する糖タンパク質(エクステンシン)にもB. longumの増殖促進効果を確認することが出来た。以上のように、ビフィズス菌増殖促進効果を有する食品として大豆種皮が利用できることを明らかにすることが出来た。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に大豆種皮にビフィズス菌増殖促進効果を見いだした点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、エクステンション抽出法を確立し、プレバイオティクス効果をアピールすることで、栄養補助食品や化粧品などでの実用化が望まれる。今後は、更なる機能性の検証を行い、企業との共同研究を展開されることが期待される。
多様な酒質開拓のための新規な酵母育種法の開発 鹿児島大学
玉置尚徳
鹿児島大学
遠矢良太郎
現在、鹿児島で焼酎製造に用いられている2倍体の焼酎酵母について、ゲノム配列をより詳細に解析し、実験室酵母や清酒酵母との違いを調べ、焼酎酵母に特異的な遺伝子の存在を明らかにすることができた。また、2つある対立遺伝子を効率良く破壊する破壊カセットを構築し、これを用いた遺伝子破壊の基盤技術を確立した。対立遺伝子間の組み換え現象であるLOH(Loss of Heterozygosity)の頻度を紫外線照射や熱ショックなどにより上昇させることに成功し、最終的に遺伝子破壊株の取得効率を80%まで上昇させることができた。今後、本法を用いて焼酎酵母の育種、変異株ライブラリーの構築などを進めていく。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に遺伝子破壊株の取得効率を80%にまで高めた技術に関しては評価できる。技術移転の観点からは、焼酎酵母のゲノム情報と育種技術を用いた新しい酒質を持つ焼酎として実用化が望まれる。今後は、企業との共同研究として新たな焼酎の開発、製造につながることが期待される。
焼酎粕の堆肥化と新規機能性物質の探索−ミミズによる分解処理法の解析方法− 鹿児島大学
横川由起子
鹿児島大学
中武貞文
焼酎粕をシマミミズによって分解し、堆肥化を試みた(以下、ミミズ堆肥とする)。堆肥化産物を使って、サツマイモを栽培し、収穫したサツマイモを使って、焼酎を製造した。また、堆肥化の途中で試料を採取し、窒素、リン、カリウム、炭素の含有量の測定、およびアミノ酸、有機酸、核酸の高速液体クロマトグラフィーによる分析を行った。ミミズ堆肥の効果を検討するため、比較として牛糞堆肥を用い、サツマイモの栽培を行なった。サツマイモの収穫に関しては、遜色ない重量、形状のサツマイモを収穫することができた。収穫したサツマイモを使って、焼酎の製造を行なった。焼酎製造時の発酵は、ミミズ堆肥で収穫したサツマイモで、若干低かったものの、大差はなく、焼酎製造には問題なかった。焼酎粕→堆肥化→サツマイモ栽培→焼酎製造→焼酎粕のサイクルモデルが達成できた。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特にミミズによる焼酎粕の堆肥化は産業廃棄物のリサイクルにつながる技術であり、具体的な実験手法が詳細に検討されている点に関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、新規化合物の同定を中心に研究を進め、堆肥化システムの実用化が望まれる。今後は、特許化を行い、大規模スケールで応用展開できれば大きく社会還元されることが期待される。
新しいカイコ品種を用いた新規無細胞タンパク質合成系の開発 沖縄工業高等専門学校
伊東昌章
琉球大学
宮里大八
本研究では、新しいカイコ品種の幼虫より調製した抽出液を用いて、新規の無細胞タンパク質合成系を構築した。本研究の当初の達成目標値を「1μg/ml以上のタンパク質合成量」としたが、結果として得られた合成量は「0.21ng/ml」であり、現時点では目標値には届かなかった。しかしながら、抽出液作製に用いる器官を容易に摘出することが可能とすることができ、その摘出器官より調製した抽出液を用いて新規な無細胞タンパク質合成系を構築できたことは高い意義がある。今後は、抽出液作製方法や合成反応条件などさまざまな条件検討、最適化を行っていくことで、当初の目標値を達成することで技術移転可能なレベルとし、実用化を目指す。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。特に無細胞蛋白質合成系が構築できたことに関しては評価できる。一方、技術移転の観点からは、無細胞蛋白質を応用した実用化が望まれる。今後は、産学共同の強力な推進により、合成の効率化の達成が期待される。
泡盛黒麹菌の比較ゲノム解析による泡盛粕成分予測システムの開発 琉球大学
渡邉泰祐
琉球大学
宮里大八
黒麹菌株の違いによる泡盛粕成分への影響を解析することで、泡盛粕を応用した食品開発の学術的な基盤情報を得ることを目的として検討した。Aspergillus awamoriまたはA. saitoiを用いた小仕込み試験による泡盛粕の成分分析を実施し、各菌株に特徴的な成分を、アミノ酸について6種類、香気成分を14種類見出した。上記成分は、安定した品質の泡盛粕成分を供給する上で重要な指標と成り得る。次世代シーケンサによるA. awamoriおよびA. saitoiの比較ゲノム解析を実施した結果、ORFを完全に欠損している遺伝子はそれぞれ51個、189個あることが明らかとなった。このうち一部の遺伝子は上記のアミノ酸生合成に関与しており、泡盛粕成分との相関関係が示されたとともに、比較ゲノム解析によって泡盛粕成分が予測できる可能性が示された。
当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。中でも、菌株と粕品質の関係に関する詳細なデータが蓄積されたことは評価できる。一方、泡盛粕を使った独特の風味の食品の創出に向けた技術的検討やデータの積み上げなどが必要と思われる。今後は、ある程度のモデル食品を想定したうえで、粕の品質特性の評価解析が望まれる。

このページの先頭へ
独立行政法人 科学技術振興機構