評価結果
 
評価結果

事後評価 : 【FS】探索タイプ 平成24年1月公開 - 装置・デバイス分野 評価結果一覧

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課題名称 所属機関 研究責任者 研究開発の概要 事後評価所見
エネルギー環境対応型植物工場の研究開発千歳科学技術大学吉田淳一植物工場用LEDは、1個あたりでは極低消費電力であるが、赤と青の二種類を用いており、必要な光量を得るために膨大な数が必要なことから、総消費電力及び発熱量の観点からは課題が多い。そこで、一つのLEDチップで赤と青の発光が得られる赤・青同時発光型LEDを用いて、光量分布と放熱構造を最適化することによって総消費電力を低減し、省電力・省エネルギー効果を実証した。また、エネルギー源として太陽光などの自然エネルギーを導入した環境対応システムを目指し、冬でも積雪の心配が無く大きな発電量が得られる両面受光型太陽光パネルの利用を想定して、その可能性を検討した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。植物工場において植物の成長過程で波長ごとに光環境を制御する必要があることについて、赤・青同時発光型LEDチップを用いて、目標とする消費電力 の削減を達成できた。電力を太陽電池ですべて賄うことを検討し、実現のための新たな課題を明らかにした。地域の農業・園芸技術の向上と経済活性化に繋がる技術移転としてさらなる研究の発展が期待される。
家畜排せつ物由来の温室効果ガス発生抑制技術の開発帯広畜産大学宮竹史仁本課題は家畜ふんの堆肥製造過程で使用される電力使用量を低減させるとともに一酸化二窒素(N2O)やメタン(CH4)といった温室効果ガスの排出を抑制させるための技術を実証レベルで開発することである。そこで本研究では、以前から当研究室で開発してきた温室効果ガス抑制技術(通気量自動制御システム)を実証用に改良ならびにその制御設定方法を開発し、約40m3の実規模堆肥舎にて消費電力量および温室効果ガス排出の削減効果を検証した。その結果、堆肥製造中に消費電力量を大幅に削減され、N2O、CH4の温室効果ガスの排出にも抑制効果が確認された。今後は、実証規模の堆肥舎にて実用化試験を重ねて、製品化を図る予定である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。家畜排泄物の堆肥化の工程において、通気量を制御することにより温室効果ガス(N2O)の削減、電力コストおよびCO2排出量の削減およびCH4排出量の削減をすることを目的に実証規模で試験をおこない、全ての項目において目標値を上回る結果が得られた。今後は、企業との共同研究を通じての実用化開発、堆肥化以外への他分野への応用が期待される。
パッシブ型水素貯蔵システムをエネルギー緩衝媒体として用いた自然エネルギー利用独立電源システムの実証化試験地方独立行政法人北海道立総合研究機構白土博康水素吸蔵合金を用いたパッシブ型水素貯蔵システムを作製し、その水素吸放出特性を確認するともに、それをエネルギー緩衝媒体として用いた自然エネルギー利用独立電源システムを設計・試作した。その結果、システムの自動運転が正常に行われていることを確認するとともに供給エネルギーの利用率向上の観点で、既存の独立電源と比較して優性性があることを明らかにする等、十分な成果を挙げている。今後は事業化に向け、システムの低コスト化を図る。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。災害時の緊急電源用に、自然エネルギーを鉛電池で蓄電し、余剰電力を水素吸蔵合金を用いた、パッシブ型水素貯蔵システムを試作検証した結果、独立電源システムとして有効であることが確認できた。また水素の吸放出特性から、高い水素放出特性が得られることを確認した。今後は、エネルギー有効効率の改善、耐久性の確認、低コスト化等の課題をクリアし、技術移転につながることが期待される。
5軸制御主軸傾斜高速加工技術の開発函館工業高等専門学校山田誠本研究では、5軸制御工作機械を用いて、加工性の良い工具姿勢を選択することにより高品質・高速加工を実現できることを検証することを目的とした。昨年度導入した5軸制御高速マシニングセンタを用いて、高速回転・高速送りにおいて、ボールエンドミルにより円筒面加工を行い、その加工状況、加工面観察による検証を行った。その結果、仕上げ加工において、有効な工具姿勢を用いた3+2軸制御加工による高品質・高速加工を確認することができた。また、切り込み量の少ない仕上げ加工において、同一工具姿勢を維持しながら加工を行う、同時5軸制御加工の有効性も確認することができた。今後、有効な工具姿勢の決定方法を確立し、複雑形状物への対応が課題となる。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。5軸制御NC加工機において、各加工条件に対して、工具の加工位置(工具角度)の最適化が必要であることが確認できた。しかし、当初予定した高精度カメラによる切削挙動観察が実施できていない。また、複雑形状を高品質、高速で自動加工するための、加工モデル作成技術を統合するという目標に対して有効な提案ができなかった。
非線形光リソグラフィによる無反射ナノ構造を有するレンズモールドの開発北海道大学西山宏昭本課題では、非線形リソグラフィを用いた独自開発の立体的表面加工法の低いスループットを改善するため、シーズ技術で、光波長以下オーダの構造周期からなる無反射ナノ構造を備えたレンズ成形用立体ナノモールドを作製することを目的とした。非油浸対物レンズを用いたフェムトレーザリソグラフィ用光学系を構築し、化学増幅型ポジレジストにおいて加工分解能300 nmを達成した。これは回折限界の半分以下に相当する。フェムト秒レーザ露光部において、特異的にレジストの熱重合が直接に生じることを見出した。このときの屈折率変化量は10-3~10-2オーダであり、光閉じ込め効果による露光分解能を劣化させ得ることを理論的に示した。現状、非平面基板に対応したレーザ描画プログラムを開発し、ガラスレンズモールド上にサブ波長構造を作製することに成功しているが、本手法の原理的に高い加工ポテンシャルを更に活用するためには、今後、露光焦点位置の精密制御に関する検討が必要となる。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。光波長以下の構造周期をもつ無反射ナノ構造を備えたレンズ成形用の立体ナノモールドを作製することを目的とした。非油浸対物レンズを用いたフェムトレーザリソグラフィ用光学系を構築し、化学増幅型ポジレジストにおいて加工分解能300 nmを達成した。さらに、非平面基板に対応したレーザ描画プログラムを開発し、ガラスレンズモールド上にサブ波長構造を作製することに成功している。この技術をさらに改良するためには、露光焦点位置の精密制御法の検討が望まれる。実用的な立体ナノ構造光学素子の大量生産技術としての展開が期待される。
フレキシブル有機EL照明一体型有機薄膜トランジスタの試作開発岩手大学小川智近年、有機TFT(有機薄膜トランジスタ)を用いたフレキシブルな表示デバイスの実現の可能性が近づいた。しかしながら、自発光型照明として期待されている有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子と有機TFTとを一体駆動するには、双方ともにフレキシビリティーを付与しなければならないという課題がある。そこで、将来の車載も考慮した、照明用EL素子を駆動するためのフレキシブルな有機TFTを開発する。具体的には、これまでの申請者の研究成果を組み合わせ、さらに素子の安定性を付与することにより、フレキシブル有機EL照明一体型の高性能、高耐久性有機TFTを開発し、有機EL素子と組合せ、自発光照明の安定動作が可能な試作品を開発する。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。フレキシブル基板に、照明用EL素子を駆動するための有機TFTの開発を目的としている。シアノエチルプルラン絶縁膜を合成し、試作を行い、動作を確認した。目標は達成されているが、従来との特性比較等があれば理解しやすい。設定目標が盛り沢山であると思われる。目標を明確にし、個々の素子の評価と課題を明確にすることが望まれる。
8の字形3次元振動を利用したねじ形部品成形用金型の高能率鏡面仕上げ岩手大学水野雅裕厚さ8mm程度のステンレス系金型材料に形彫り放電加工によって開けられた谷径6mm程度のねじ形キャビティ内面全面(初期面粗さ3μmRz程度)を、研磨開始後、無人で10時間以内に表面粗さ0.2μmRz以下の鏡面に仕上げることを目標として研磨実験を行った。金型キャビティから型取りして作成した樹脂製工具に8の字形3次元振動を与え、ダイヤモンドペーストを手作業で定期的に供給しながら研磨を行った。その結果、約100時間の研磨で0.184μmRzの表面粗さが得られた。今後はダイヤモンドペーストの供給を自動化し、ダイヤモンドペーストを連続的に、または短い時間間隔で供給することで研磨効率の改善を図りたい。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。平面ではない溝形状(ねじ形部品成型用金型)の研磨において、8の字形3次元振動を付与することにより、目標とした高品位の研磨面(0.184μmRz)を得ることに成功した。しかし、目標としたダイアモンドペーストの自動供給は、達成されなかった。この件は、技術移転に向けて克服するべき必須の条件と思われるので、研磨ペーストの供給方法や供給条件の早期の確立が望まれる。
電気防錆加工法の開発─加工水再生浄化と排水の評価・改良─岩手大学西川尚宏従来、機械加工の現場では油剤・極圧添加剤・防錆剤・乳化剤等が含まれる加工液が使用されるが、廃液処理の際、焼却によるCO2発生など多大な環境負荷と処理費を強いられており、温室効果ガス25%削減等の環境規制圧力が高まる中、廃液を出さない・減少した機械加工法の開発が切望されている。本研究では加工液に水のみを使用し廃液処理を削減する電気防錆加工法システムを開発している。本申請研究では加工水再生循環時に再生量の増加と再生水・排水の汚染除去評価を実施した。当初目標の毎分5L以上の加工水再生量を実現し通常機械加工における必要量を達成した。今後、実用化に向け実際の工作機に導入した試験開発を検討している。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。機械加工において、工作物を陰極として微弱電流を流すことによって、油分や極圧添加剤等を用いることなく水のみで、鉄系工作物や機械本体の錆を抑制する技術の実用化に向けての検討を行った。具体的には、再生水の循環を考慮した水量の確保、再生水、排水の浄化度の品質確認をおこない、目標値を達成した。今後は、高精度加工への対応、低コスト化、耐久性等確認等の実用化に向けての課題解決が望まれる。
光ファイバー型原子磁気センサーの開発岩手大学大坊真洋微弱な磁場を光で計測する原子磁力計について、レーザー、原子セル(容積1.3 cm^3)、検出回路の間を光ファイバーで結合した光ファイバー型原子磁力センサーを開発した。レーザー光源からの直線偏光を偏波面保存ファイバーに導入する部分の結合効率は21%、セルからシングルモードファイバーへは9.3%であり、全体で1.96%であった。さらに、半導体レーザーによる原子セルの加熱と赤外線放射温度検出による低磁気ノイズ温度制御系を構築した。これらにより、全てを光で制御・計測する全光型原子磁力計を実現した。ファイバー化により非直線状のフレキシブルな光路が可能となり、pTレベルの磁場を長距離から遠隔計測をする技術に目処がついた。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。微弱な磁場を光で計測する原子磁力計について、レーザー、原子セル(容積1.3 cm3)、検出回路の間を光ファイバーで結合した光ファイバー型原子磁力センサーを開発する。全てを光で制御・計測する全光型原子磁力計を実現したが、偏光測定などの重要事項にについては記載されておらず、測定機器としての評価が十分にできなかった。産学連携につながる具体的な取り組みが望まれる。
光応答性有機結晶多形制御法を用いた高透明性有機・無機交互積層厚膜の開発岩手大学土岐規仁これまで結晶多形の構造と、光特性についての統一的な検討は少なく、光の波長差を用いての多形制御に関する報告がなされているだけである。本研究では、この光応答性結晶多形制御法を、今まで開発してきた、高透明性有機・無機自発的交互積層厚膜「光-電変換デバイス」の製造プロセスに応用できる操作指針の確立を目指した。具体的には、多形の発現が容易な水素結合できるドナーとアクセプターが分子内に存在する有機化合物を用い、無機ナノ粒子との界面制御を行い、その際の有機結晶多形構造を、光応答により制御する指針を確立することが出来た。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。高透明性の光電変換デバイスの作製を、溶液プロセスで可能とする研究である。隣接層間の電子・ホール移動の最適化により、試作した光電素子の低電圧動作と、発光輝度の増大とが実現されており、当初予定を超える成果が得られた。 基礎技術の改善とともに、応用展開、特許出願を含め実用化のための構想を、企業との協力体制のもとで展開していくことが望まれる。
毛細管現象を用いた酸化物高温超伝導体における超伝導トンネル接合の開発宮城教育大学内山哲治本研究課題における目標は、酸化物高温超伝導体であるBi2Sr2CaCu2O8+x(Bi-2212)の結晶構造に由来する固有ジョセフソン接合(IJJ)のより容易な作製方法の確立である。この方法の最大のポイントである基板加工は加工技術のある理研で行ったが、非常に歩留まりが悪く、最終的に設計通りの加工基板は実現できなかった。急遽外部業者を選定し、試行錯誤の結果、目的の基板加工に目処が付いた。しかし、大震災の発生により加工基板の到着が期間修了間際になったため、成膜装置の復旧後、早急に成膜を行う予定である。今回、最終段階を見なかったが、加工業者および加工技術の確定は今後のために非常に大きな進展であった。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。酸化物高温超伝導体であるBi2Sr2CaCu2O8+x(Bi-2212)により、固有ジョセフソン接合(IJJ)をより容易に作製する方法の確立である。ポイントは、IJJ作製のための貫通穴を作製する基板加工である。大変難しく、多大な時間を要したが、何とか解決できた。震災の影響もあり、素子の作製には至らなかったが、今後も研究を継続し、素子の作製と評価が望まれる。
自然エネルギーによる海水の淡水化及び汚水の清浄化装置の開発仙台高等専門学校羽賀浩一本研究では太陽熱と風力のみの自然エネルギーで高効率に海水の淡水化および汚水の清浄化を実現する装置を開発する。また、苛酷な環境で使用することを想定して、わずかな知識でメンテナンスが可能な単蒸留法を基本とし、商用電源の無い地域で生命を維持する飲料水を確保する安価な可搬型の装置開発を最終目的とする。 進捗状況は、開発期間内のフィールドテストを目指してプロトタイプの試作を進めたが、完成時期が冬期にかかり屋外での実施には至らなかった。装置設計の研究課題として提案していた装置内部の熱ひずみの低減、海水を微細化するための拡散板の最適化、水蒸気の自然冷却システムの実現と軽量化等は達成し、海水の淡水化、汚水の清浄化はパックテスト法により水質が確認出来た。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。太陽光と風力の自然エネルギーのみで、海水から淡水を得るという目標について研究が行われた。装置内部の熱ひずみの低減、海水の微細化のための拡散板の最適化、水蒸気の自然冷却システムの実現と軽量化を達成し、プロトタイプの試作品を完成した。また、装置による海水の淡水化や広瀬川(汚水)の清浄化は、パックテスト法でその水質を確認した。
赤外波長帯生体医療光学における高エネルギー光伝送装置の製作法仙台高等専門学校岩井克全Er:YAGレーザなどの赤外レーザを用いる治療装置は、生体に対する適合性もよく、その需要は益々増加している。その中で高エネルギー赤外光伝送に適した中空ファイバを医療用レーザ装置に搭載することにより、数多くの診療科目に適用可能な新たなレーザ医療装置が実現できる。中空ファイバの製作は、1銀鏡反応による銀膜の形成、2環状オレフィンポリマー(COP)の成膜、からなる。2でのCOP膜の成膜が本質的な課題であり、実験室レベルの成果を実用化レベルへ持っていくための課題としてCOP溶液の粘度特性に着目し、COP溶液の調合期間の大幅な短縮など、COP膜の実用的な成膜法の開発を試み、成功した。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。赤外レーザ治療装置に使用する中空ファイバ用環状オレフィンポリマー(COP)を実用的なレベルで生膜する技術の開発に成功した。COP溶液の濃度に対する粘度特性、COP溶液の保管日数に対する粘度特性を検討し高効率で製膜できる最適条件を見いだした。また、作成されたCOP膜は、目標特性を満足することを確認した。今後は、社会ニーズを確認しながら、実用化を目指した研究に発展することが期待される。
独立駆動輪を有する電動車の駆動方法の確立仙台高等専門学校大泉哲哉本研究は電気自動車に、従来の加速度指令ではなく速度指令方式を提案し、速度0まで回生できるシステムの実現、また、速度指令方式を左右独立駆動輪電気自動車の各駆動輪に適用し、左右独立駆動輪を有する電気自動車の安定走行と操舵性向上、一充電走行距離を伸長することを実現した。これらのシステムを統合して、かつ、駆動・回生電流容量の向上と高速走行のための高電圧化をはかって、車重量300kgwの実用電気自動車に導入して、提案する駆動システムの確立を目指した。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。電気自動車の運転駆動システムとして、速度0まで回生できる速度指令駆動システム、独立駆動輪速度差、トルク差制御電子デフシステム、双方向昇降圧チョッパ回路利用回生システムを統合した駆動システムを100Kgw電動車走行試験にて行い基礎データが集積した。バッテリーへの負荷軽減によるエネルギーの効率的な利用(25%の省エネ)が可能となった。予定した車重300kgwの走行試験は完了できず、今後のニーズ調査とともに進展することが望まれる。
水素吸蔵発熱反応を利用した高選択性新型水素ガスセンサの開発研究東北学院大学木村光照1個のSOI層からなる薄膜ヒータを搭載したカンチレバの先端付近に、更に検出部(Pd薄膜あり)と参照部(Pd薄膜なし)の2つに枝分かれしたカンチレバを形成し、更に、これらのカンチレバに、SOI層とSiO2膜を介して形成したNiCr薄膜とで構成する薄膜熱電対を形成して、水素ガスセンサを構成した。低水素濃度(5%以下)では、加熱リフレッシュ後の冷却過程で水素のPdの吸蔵発熱作用の温度上昇分を計測し、ほぼ100ppmまでの計測、更に高水素濃度(5%以上)では、水素の高熱伝導性を利用し、参照部カンチレバでだけで100%までの計測を実証した。空気中の水素(H2)の検出の応答速度が10秒以内の小型でメタン、プロパンとブタンガスの可燃性ガスに応答がない水素センサを開発した。事業化を目指し、更に、A-Stepに申請した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。水素吸蔵発熱反応を利用した水素ガスセンサの開発に成功した。本センサは、0.1%~100%の極めて広範囲の水素濃度を検出でき、メタンやプロパンなどの他のガスとの応答が無いこと、劣化が小さいことなどの利点を有し、国際特許化の準備がされている。課題として、水蒸気による影響があることが明らかとなったが、改善策も提案されており、今後の実用化が期待される。
GRIN レンズを用いたマイクロイメージングプローブの開発東北大学小山内実神経回路における情報処理様式及びその動特性を解明するためには、ニューロン活動を多細胞から同時にイメージング法で計測する必要がある。そこで本課題では、マイクロイメージングプローブの研究開発・評価を行った。このイメージングプローブを実用化させるためには、脳内刺入部の侵襲度を低く抑えつつ、高解像度な画像が得られる必要がある。そこで、細径の GRIN レンズとイメージファイバを組み合わせ、従来報告されているものと比べ格段に侵襲度の低い、マイクロイメージングプローブの試作品を完成させた。試作品を既存の顕微鏡と結合させ、その性能を評価したところ、蛍光像取得には問題があったが、反射光は充分に取得することができた。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ニューロン活動を多細胞から同時にイメージング法で計測する目的で、GRINレンズとイメージファイバーを組み合せた細径のイメージングプローブを試作した。低侵襲を目的とし、先端径は250μm以下とし、光計測法により蛍光を確認できた。しかし、in vivo標本での確認と性能評価にはいたらなかった。今回明らかになった課題をクリアし、脳機能計測に向けて研究が発展することが期待される。
低電力・長期データ保持:書換性能を有する「新規Ge1Cu2Te3相変化メモリ」の開発東北大学須藤祐司本研究では、新規Ge1Cu2Te3(GCT)化合物を用いた相変化メモリの開発を行った。GCT薄膜は、約500℃程度の融点を持つ一方、そのアモルファス相は、250℃程度の高い結晶化温度を有する。GCT薄膜を用いた単純なメモリデバイスを作製し、その電気特性を評価した結果、相変化メモリに典型的なスイッチング挙動を示し、また、高抵抗アモルファス状態(リセット)←→低抵抗結晶状態(セット)の可逆的な相変化が得られる事が分かった。更に、GCTは、既存Ge2Sb2Te5に比し、リセット化に必要な消費電力を低減できる事が分かった。GCTアモルファス膜は、高い結晶化温度および低い融点を併せ持つため新規相変化メモリへの適用が大いに期待される。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。次世代のメモリとして有望な相変化メモリ(PCM)の研究を行った。新規にGe1Cu2Te3(GCT)化合物に注目し、素子構造、電極材料、電極間距離について条件を代えて評価を行った。その結果、相変化メモリに典型的なスイッチング挙動、可逆的な相変化、リセット化の消費電力を低減できることが分かり、GCTがPCMメモリ材料として有望なことが確認できた。特許出願を含めた今後の研究計画が明確であり、実用化に大きな期待が持たれる。
極低温マイクロ・ナノソリッドを用いたスーパードライ型半導体洗浄東北大学石本淳過冷却液体窒素と極低温ヘリウムガス(寒剤)の高速衝突により連続生成される微細固体窒素粒子から成るマイクロ・ナノスラッシュ噴霧流の有する超高熱流束冷却特性とそれに伴うレジスト熱収縮効果を有効活用した新型半導体洗浄法に関する検討を行う。マイクロスラッシュ噴霧を高温加熱ウエハー面上のレジストに高速衝突させ、粒子の慣性力と噴霧の熱流体力学的効果、超高熱流束急冷によるレジスト熱収縮効果の相互作用により、アッシングプロセスを経ずにレジストをウエハー面上からはく離・除去、洗浄するという、レジスト除去・洗浄同時プロセス機構から成るドライ型アッシングレス洗浄システムを開発する。その結果、マイクロ・ナノスラッシュジェットの衝突による物理的レジストはく離と超高熱流束急冷による熱収縮の相乗効果を利用し、フォトレジストの一部をはく離することに成功した。加熱無しの場合、レジストはく離には至らないことから、レジストはく離に及ぼす熱収縮効果の影響はかなり大きいことを明らかにした。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。過冷却液体窒素と極低温ヘリウムガス(寒剤)の高速衝突でできる微細固体窒素粒子を使い、新規のドライ型レジスト除去と洗浄システムの開発を行った。その結果、80%の剥離性能を得るに至った。企業との実用化の検討も進んでいるので、剥離率の向上等の改良を進め、社会還元されることが期待される。
Er:YAGレーザを用いたレーザ誘起液体ジェットの開発東北大学渡邊智紀レーザ誘起液体ジェットは、血管や神経などの脈管を傷めずに組織切除が行える、低出血性の治療法である。この液体ジェット発生用レーザ光源として、新たに波長2.94 μmのEr:YAGレーザを提案し、従来のHo:YAGレーザと比較して5倍のジェット速度を実現することを目的とし開発を進めた。光源変更に伴い、中空光ファイバの使用とその先端に取り付けるキャップ型光学素子を提案し、またキャップ形状を工夫することにより、従来の光源と比較しジェット速度を3倍にすることに成功した。今後さらに、伝送路やノズル形状の検討、またビームプロファイルの制御などにより最適設計を進める予定である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。パルスレーザにより駆動するレーザ誘起液体ジェットは、少量の水を高圧でノズルより噴出する装置で、手術用ジェットメス等に使用されてきた。Er:YAGレーザを提案し、従来のHo:YAGレーザと比較して5倍のジェット速度を実現することを目的とし、中空光ファイバの使用とその先端に取り付けるキャップ型光学素子の検討により、ジェット速度を3倍にすることに成功した。今後は、基礎データの蓄積と医療関係との連携による実用化の両面からの発展が望まれる。
社会基盤構造物の健全性評価に関する簡易診断技術の開発東北大学鈴木基行小型起振機を用いた振動試験方法を提示し、老朽化した橋梁の健全性評価を目的とした簡易診断技術の開発に取り組む。重さ26kg、加振力500Nの小型起振機によって3つの道路橋の現場試験を行った。その結果、スパン30m以下であれば1次の共振周波数が測定可能であり、上部工の平均曲げ剛性に着目して健全性が評価できる。さらに、スパン15m以下であれば、この振動試験によって反共振周波数の測定が可能となり、構造物や部材の中での最劣化箇所を特定できる可能性が示唆された。今後は、様々な経年劣化を模擬した供試体実験によって簡易診断技術の高度化を図り、多様な橋梁の現場試験を行うことによって実用化への課題を整理する。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。比較的小スパンのコンクリート製橋梁の健全性を振動法で評価できることを確認した。FEM解析、亀裂を付与した実験供試体で、損傷位置を特定できることを確認した。その結果を実際の橋梁で確認し、30m以下のスパンの橋梁に対して健全性の評価が可能であることがわかった。今後は、今回実施できなかた多様な損傷形態に対する評価、橋梁以外の種々な構造物への適用などが今後の課題である。
磁性フォトニック結晶を用いた短波長・空間光変調素子の開発秋田県産業技術総合研究センター山根治起本研究課題では、磁性フォトニック結晶を用いることで、可視光領域の短波長光をナノ秒程度の超高速で制御することが可能な空間光変調素子の開発を目的として研究開発を実施する。これによって、既存の空間光変調素子の動作速度を約1000倍に向上することが可能となり、将来の大容量光ディスクとして実用化が期待されているホログラム方式の光情報記録装置、あるいは、飛躍的な演算処理能力の向上が期待できる光情報処理システム等の大幅な性能向上が実現可能となる。特に、本研究課題では、短波長磁気光学材料および周期積層構造に関するこれまでの研究成果を基に、実用化の観点から偏光角:±10度以上の磁気光学性能を目標として研究開発を行う。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。磁性フォトニック結晶を用いることで、可視光領域の短波長光をナノ秒程度の超高速で制御することが可能な空間光変調素子の開発を目的としている。偏光角±10°という当初の数値目標を達成したほか、CoPt積層膜に関して新たな磁気光学効果の増大を見い出すなど、新たな展開につながる成果を得ている。今後の進捗により、2次元フォトニック構造の適用による性能向上が期待される。さらに、将来の光情報記録装置、あるいは、光情報処理システム等の性能向上が期待される。
加熱幅、出力および熱分布を自由に制御できるアーク新熱源の開発秋田県立大学杉本尚哉アークに交流磁場を作用させて振動させることにより出力と加熱幅が制御可能な広幅熱源の、内部のエネルギー分布の制御が目標である。熱流分布実験では、熱源幅Lが最大で約40mmで、Pmax、Pminともに約1kW程度まで可変な局所加熱を確認した。いずれも、目標とした数値には到達していないが、研究で得られた知見を基に交流磁場用コイルを改良することにより、出力波形の歪みが少ない低電流電源の利用が可能となることが予想され、今後目標が達成できる見通しが立った。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。複雑形状や局所的な熱処理をを可能にするアーク熱源の開発を、アークに交流磁場を与えることにより、加熱幅、出力制御を用いて行う。目標とした性能は得られなかったものの、実際の熱処理(焼入れ)において、部分加熱が可能なことを硬さ変化で確認した。また、励磁交流波形の違いによる熱流量分布の理論的数値計算を行い、測定結果と一致することを確認した。今後は,装置の改良による能力の向上が期待される。
液晶光学デバイスを用いた全焦点位置画像処理システムの開発秋田大学河村希典本研究は機械的駆動部を必要とせず、電圧のみにより焦点距離を可変することができる“液晶光学デバイス”を用いて、3次元形状の測定対象物に対して連続的に全焦点位置画像を得るための光学システムを開発することである。本提案する“焦点可変機能を有する液晶光学デバイスを用いた全焦点位置画像処理システム”を構成する上で、液晶光学デバイスの焦点距離制御の高速駆動化、リアルタイムでの立体構造の全焦点位置画像解析システムの確立を目標としている。液晶光学デバイス光学系を用いることにより、取得画像の拡大縮小を生じず、焦点距離を約3mm可変でき、全焦点位置画像を構築することが達成できた。今後、焦点可変範囲の拡大と解像度を2倍程度向上させる予定である。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。3次元形状の測定対象物に対して連続的に全焦点位置画像を得るための光学システムを開発した。液晶光学デバイス光学系を用いることにより、取得画像の拡大縮小することなく、焦点距離を約3mm可変でき、全焦点位置画像を構築することができた。報告書だけでは現状の判断が難しいが、各ユニットやシステム全体に多くの課題があるように思われる。仕様を明確にして、研究を継続することで実用化の可能性が高まることが期待される。
周期構造を組み込んだ新規広帯域分散遅延デバイスの開発秋田大学萱野良樹近年、周期構造による後進波特性や負の群遅延時間などの特異な電磁応答が注目され、新しいマイクロ波回路や信号処理デバイスへの応用が期待されている。本研究では、小型・低損失で設計が容易なF-SIRの周期構造のよる広帯域分散遅延デバイスを構成することを提案する。最初に、プリント基板上にプレーナ実装によるF-SIRを作製し、実験および電磁界解析によって、一部の周波数帯域において左手系線路の条件である伝搬定数が負となることを確認した。また、その帯域において後進波特性および負の群遅延時間も得られた。次に、4.8mm角ICチップ内にF-SIRを試作し、50GHzまでの測定により左手系線路の特性を示すことを確認した。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。誘電率と透磁率が共に負となる左手系メタマテリアルによる広帯域分散遅延デバイスを開発することを目的とし、左手系特性並びに負の群遅延特性が共振周波数以下で発現するを確認できた。負の群遅延が得られたが、目標は50ns以上であり大幅な改良が必要である。また、挿入損失が大きいことが問題であり、今後、明確な改善の道筋を示せるかどうかが課題である。
微小コイルを用いた磁気マイクロアクチュエータの開発秋田大学左近拓男ナノメートル単位の微小変位機構をもつマイクロアクチュエータの開発を目的とした。(1)1.8 mm内径の微小コイルを用いたターフェノル-D超磁歪アクチュエータを作製し、交流パルス磁場での動作を確認した。(2)微小変位のための、定常磁場用の永久磁石と、超磁歪材料の磁歪変位用の交流磁場コイルを組み合わせた小型磁気回路を製作し、それにターフェノル-D超磁歪材料を組み込むことで高応力のアクチュエータを作成し、ナノメートルから数μmまでの変位を得ることが出来た。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。磁性金属の磁歪を利用したマイクロアクチュエータの開発を行った。目標の内径ほど小さくはできなかったが、医療用アクチュエータの試作に成功した。マイクロスイッチ、マイクロ振動子としての利用に関しても、連続動作時は熱発生の問題があるが、パルス的な利用は可能であることを検証した。今後は、ニーズの絞り込みとともに、それに応じた熱対策等の課題克服の研究への発展が期待される。
交通弱者に対する低騒音車の安全技術の実用化秋田大学水戸部一孝バーチャルリアリティ技術とモーションキャプチャ技術を組み合わせて構築した屋内で安全に危険な車道横断を体験できる「車道横断体験用シミュレータ(歩行環境シミュレータ)」を用いて、可聴音以外の外部刺激を手がかりとした歩行者のための警報システムの妥当性を検討した。本研究では、可聴音以外の伝搬現象を活用した車載式の警報システムの有効性を調べ、実用化に不可欠な車載を想定した最適条件を調べ、必要となる実装技術を検討した。車道横断条件として、交差点の左側の横断歩道を渡る条件を設定し、建物により視界が妨げられ死角となった後方から左折して接近する車両に対する交通事故発生率におよぼす各種手がかりの効果を評価した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。交通弱者に対する無騒音車の認知を、無騒音と認知を両立させるべく、超低周波、超音波、振動、衝撃、光を用いた警報について、シミュレータを用いて検証し、それぞれの可能性を明らかにした。有効と考えられた超低周波について、認識可能な警報技術を考案し、車両実装技術を検討した。今後は、自動車メーカ等との共同研究を通じての実用化研究が望まれる。
回転円すいの外表面を上昇する液膜流を用いた浮体ミスト式水質浄化装置の開発秋田大学足立高弘回転円すい体の外表面に沿って液体が上昇し微粒化する現象を利用して、閉鎖水系での自然浄化作用を高める水質浄化装置の開発を行った。回転円すいの外表面に液膜流が形成される現象はこれまでに報告例がなく、そのメカニズムは明らかではない。そこで、そのメカニズム解明の一助として、円すいの回転数と液膜流の流量および浸水半径との関係を調べた。さらに、円すいが生成するミスト流を大気中の酸素と混合させることによる水系内の溶存酸素の移動促進量を、水系内の循環流のみの場合と比較を行い、ミストの生成が溶存酸素の移動促進に効率的であることを示した。今後は、さらにミストの径と溶存酸素移動量との関係等を明かにする必要がある。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。回転円すい体の外表面に沿って液体が上昇し微粒化する現象を利用する水質浄化装置の開発を行った。円すいの回転数と液膜流の流量および浸水半径との関係を調べた。溶存酸素の移動促進量を測定し、ミストの生成が溶存酸素の移動促進に有効であることを確認した。今後は技術移転に向けて、エネルギー面・コスト面・操作面等の検証が継続されることが期待される。
グラフェンを用いたフレキシブル電極の開発山形大学沖本治哉近年、印刷技術によるデバイス開発は、非常に重要になってきている。近年では、非常に導電性の高い有機半導体材料・カーボンナノチューブが新たに開発・応用されている。一方、電極材料は、金、銀、銅、ITOインクが一般的であり、多様性は低い。本研究では、それら金属電極代わる新たな代替材料として、非常に導電性の高く柔軟なナノ炭素材料であるグラフェンを電極材料として応用することを目的とし、柔軟な電極の開発を目指した。今回、数層からなるグラフェン分散液の作製とグラフェン電極を作製した。金・銀・ITOに代わる新規材料として有望であるが、今後は、より高品質なグラフェン作製法を確立し、透明導電膜へも応用していく。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。金属電極に替わる新たなフレキシブル電極材料として、炭素材料の一つであるグラフェンを用いた電極材を検討した。グラフェンをフレキシブル電極の材料として用いるために、グラフェン分散液の調整法や製膜法をほぼ確立した。しかし、導電膜の抵抗値は目標値が得られなかった。プロセス技術の改良等今後の検討課題も多いが、フレキシブル電極は応用範囲が広く、技術移転につながる今後の研究の発展が期待される。
磁気共振子型高感度ワイヤレスガスセンサ山形大学石井修ガス吸収膜を被覆した磁性リボンを機械的に共振させ、その共振挙動をピックアップコイルの誘導起電力で検出する原理のワイヤレスガスセンサを検討し、以下の結果を得た。 1 磁性リボンを放電加工法で成形後、熱処理を施すことで共振挙動の再現性が向上した。 2 磁性リボンの曲率の増加に伴い共振周波数が大幅に増加することを明らかにした。 3 ガス吸収に伴う体積変化が大きい材料を被覆した場合、磁性リボンがガス濃度と共に湾曲しガス検出感度が向上した。具体的には、PdNi膜を用いて水素を、高分子膜を用いてアセトン、水、アンモニアを高感度検出した。今後、企業と協力してセンサ材料、センサ素子の実用化を進める。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。ガス吸収膜を被覆した磁性リボン(PdNi)を機械的に共振させ、共振周波数の変化でガス(水素)を検出するワイヤレスガスセンサの研究である。計画に沿って、試作と特性評価を行った。その結果、感度等の各特性を明らかにし期待通りの結果が得られた。被覆膜を代えることで多様なセンサに応用展開できるため、実用化と産業、医用等の多くの展開が期待される。
近赤外分光法による食品生地内異物検出鶴岡工業高等専門学校神田和也近赤外波長域において、食品生地および代表的異物である毛髪の分光スペクトルを取得し、差別化できる特徴点を見つけ出す。SLD光源とスペクトロメータを組み合わせてセンサユニットを構成し、毛髪を埋め込んだ食品生地内を2次元ステージ上で移動させ、センサユニットより得られるデータを分析し、異物である毛髪の検出が可能か否かを判断することを目標とする。具体的に異物である毛髪を埋め込んだ厚さ10[mm]のチーズを対象にピーク波長950[nm]、830[nm]の2種類のSLD光源を用い、スペクトルを取得した。限られた波長域であること、SLDの直進性、などから参照データと比較し、異なる結果となった。今後は原因を追究し、強度、ビーム径を調整し、検出法の確立に努めたい。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。重要度の高い光学系装置の開発ならびに振動対策に関しては、大きな成果が得られており、提案技術の有用性は十分に確認されている。今後の研究開発計画に関しては、産業用途を視野に入れた企業との共同研究を検討している。産学連携を進め、技術移転に結び付けていくことを期待したい。
未較正少数カメラによる自由視点テレビの開発会津大学岡嶐一次世代の3次元テレビとしてその実現が期待されているものに、自由視点テレビがある。自由視点テレビとは、視聴者が自由な視点で3次元の映像シーンを選択できるテレビである。この実現が本研究の目的である。現在、われわれは世界的に先導する方式を開発し、その実現を試みている。 本開発で達成された機能は、われわれの手持ちのPC上において、テレビの解像度が256x256程度、速度がビデオレーの1/3程度である10 フレーム、であるものとなった。また実用化に必須の1つである前景による後景の遮蔽問題の解決は現在不十分である。今後は、解像度を512x512 以上、速度はビデオレートである30フレーム/秒、3台以上の複数カメラによる3次元空間復元での遮蔽問題(オクルージョン)の解決が今後の課題である。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。次世代の3次元テレビとして期待されている自由視点テレビの研究を行った。計算時間を1/25、必要メモリ容量を1/2にできた。研究成果が応用展開された際に、特殊な用途で社会還元に導かれることが予想できるが、実用化にはアルゴリズムの改善等の課題の解決が望まれる。
イオン液体の二酸化炭素吸収特性及び輸送特性の解明日本大学児玉大輔本研究課題では、広く知られているイミダゾール系イオン液体と比較し、安価で化学的安定性に優れるカチオンとアニオンを考慮したイオン液体を新たに合成し、ガス吸収特性について検討した。また、高圧下における輸送物性を精密に測定することでガス吸収特性との関連性も検討した。本研究課題の推進により、優れたガス吸収性能を有する吸収液を新たに開発することができ、知見が不足しているイオン液体のガス溶解メカニズムの解明、吸収液のさらなる高性能化に対する指針を示すことができた。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。フッ素系アニオンとホスホニウムカチオンからなるイオン液体を合成し、高圧下におけるイオン性液体の基礎的な物性データの測定と、理論値との対比評価を実施した。しかし、二酸化炭素吸収特性は評価できておらず、有効性は実証できなかった。今後は、耐久性や環境負荷低減効果、コストの検証などのデータの取得が望まれる。
自動車へ救命機能を搭載したレスキューカー試作車の開発日本大学西本哲也交通事故時の救命を目的として、中古自動車へ予測生存率とバイタルサイン(呼吸・心拍)を収集する機能を搭載した「レスキューカー」を試作した。このレスキューカーは予測生存率を計算するために非接触式でドップラーモジュールにより心拍・呼吸を測定できる。また、カメラを車室内外へ搭載し事故状況、乗員挙動を記録する。これらの車載測定装置により人体のバイタルサインに基づく生理学的指標と加速度に基づく解剖学的指標を予測し、重篤な負傷者をいち早く救済する救命システムを構築した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。交通事故による負傷者の生存率を向上させることを目的とするレスキューカーを試作した。非接触式でドップラーモジュールにより心拍・呼吸を測定できる機能と、カメラを車室内外へ搭載し事故状況、乗員挙動を記録する機能を有する。大学病院の救急担当者を対象とした、アンケート調査による社会実験を実施し、本システムの有効性を確認した。企業との連携による製品開発の段階まで達していると思われるので、今後の研究の発展が期待される。
磁気発振を利用した正弦波出力インバータの出力電力特性改善福島大学岡沼信一本研究では、磁気発振を利用した正弦波出力インバータの出力電力拡大を目指してシミュレーションと試作器による実証試験を行った。数値目標としては出力電力6 kWとした。その結果、出力拡大を妨げているのは電圧ブリッジ回路に使用したMOSFETの内蔵ダイオード逆回復時間に起因するアーム短絡であり、高速ダイオードを外付けして内蔵ダイオードをキャンセル及び置き換えることが、出力拡大に有効であることをシミュレーションにより明らかにした。しかし、シミュレーションでは目標とする出力電力を達成したが、試作器による実証試験では最大出力3.2 kWと数値目標を下回った。今後は、シミュレーション結果と試作器性能の違いの理由を検討し、試作器を再構成して当初数値目標の達成を目指す。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。磁気発振を利用した正弦波出力インバータの出力電力拡大を目指して、シミュレーションと試作器による実証試験を行った。電圧ブリッジ回路内の改善によりが、出力の拡大に有効であることを、シミュレーションにより明らかにした。試作器による実証試験では数値目標を下回った。今後は、シミュレーション結果と試作器性能の違いを検討し、当初目標の達成が期待される。
シリコン系赤外センサの開発茨城大学鵜殿治彦本研究は、水銀、鉛、ヒ素、アンチモンなどの有害性の高い重金属やインジウムなどの稀少金属を構成元素に含まないシリサイド系半導体を用いて、資源・環境リスク対応型のシリコン系赤外センサを開発することを目標に行った。その結果、有害性の高い重金属や稀少金属を構成元素に含まないシリサイド半導体でショットキー接合ダイオードの形成に成功し、赤外域に受光感度を持つ赤外センサを開発した。今後、デバイス構造の最適化など更なる高感度化に向けた研究課題は残るがシリコンプロセスでの微細加工により赤外センサアレイなどへの応用展開も期待される。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。シリコン系赤外センサを開発することを目標としている。シリサイド半導体でショットキー接合ダイオードの作製に成功し、赤外域に受光感度を持つ赤外センサを開発した。今後の課題として、より精密なキャリア濃度制御、結晶の大型化、赤外感度の測定、プロセス改善があるが、研究の継続により技術移転への進展が望まれる。
工業用中性子線源の簡易型キャリブレータの開発独立行政法人産業技術総合研究所原野英樹中性子線源は、道路工事に利用する水分計や鉄鋼の非破壊検査など多くの工業分野で品質管理に利用される。中性子線源は現場における作業者に対する安全確保やコンプライアンスの観点から管理される必要がある。しかし、線源の主たる特性である中性子放出率を知るためには、輸送して校正機関に依頼するか、大掛かりな装置や高度な放射線計測技術が必要となる。そこで、本研究課題では中性子放出率を簡易的に校正するための、ポリエチレン減速材と3He比例計数管で構成される装置を提案し、開発した。装置は持ち運びが可能であり、さまざまな環境下で簡単に中性子放出率測定が可能なことを実証した。本研究開発によって、現場での安全対策や品質保証の向上が見込まれる。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。多くの工業分野でにおいて品質管理に利用される中性子線源の安全確保のため、中性子放出率を簡易的に校正可能な装置を開発した。装置は、ポリエチレン減速材と3He比例計数管で構成され、優れた較正精度と大きなダイナミックス・レンジと直線性を実現した。今後は、民間企業等を含めた技術開発努力により、小型軽量化した実用機の開発が望まれる。
ソフトマターの固体NMR測定を可能にする真空密閉型試料管独立行政法人物質・材料研究機構清水禎本研究により、直径4mmのMAS試料管において、秒速2万回転の高速回転に耐え、24時間以上の長時間に亘って安定に動作する、液状物質を試料として用いて液漏れしない試料管を開発することができた。これにより、本研究開発の目標であった、液状試料の固体高分解能NMR測定が可能になる固体NMR用試料管(MAS試料管)の基本技術を確立することができた。開発した試料管は、高粘度樹脂試料ばかりでなく吸湿性が大きく取扱いが困難であったイオン液体におけるBr核の測定等にも応用され、これらの試料でMAS測定が有効なことが実証された。これにより、ソフトマターをはじめとする、液状試料のMASによるNMR測定が可能となった。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。固体NMRにおいて、新しい試料管の開発により、これまで測定できなかった液状物質やソフトマターの測定可能にした。開発した試料管は、高粘度樹脂試料ばかりでなく吸湿性が大きく取扱いが困難であったイオン液体におけるBr核の測定等にも応用され、これらの試料でMAS測定が有効なことが実証された。さらに実用化のため、試験管の破損を防止するため、強度等も考慮して展開することがを望まれる。
耐振動性・高精度・広ダイナミックレンジを持つ非接触表面形状測定装置の試作宇都宮大学茨田大輔光干渉法は、非接触で対象物体の表面形状を数ナノメートルの精度で計測することができる。一般に、光干渉を用いた表面形状計測方法は外乱振動に弱いという欠点があるが、本課題では外乱振動に強い方法(ドップラー位相シフトディジタルホログラフィ)を用い、例えば工場の生産ラインにおいても適用可能であることを実証した。その方法の光学系は、光学除振台ではなく、耐振動環境ではない場所に設置し、振動環境下においても適用可能であることを確認した。さらに、通常の光干渉法では測定できない規模の表面段差を有する物体も測定可能とするため、二波長同時照射によって段差測定のダイナミックレンジを広げることを検討した。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。光干渉法を用いて、非接触で対象物体の表面形状を数ナノメートルの精度で計測する手法において、外乱振動に強い方法(ドップラー位相シフトディジタルホログラフィ)を用いて、その有効性を実証した。た。しかし、振動性能の実証データとしては十分な結果が得られなかった。今後の技術移転に向けては、計測高速化の可能性の検証等も重要と考えられる。
超伝導テラヘルツ波検出器の開発のそのイメージング応用宇都宮大学入江晃亘本研究課題は、高温超伝導体の高速光応答特性に着目し、液体窒素温度(77ケルビン)で動作可能な高温超伝導素子を用いた超高感度検出器を開発するとともに、それを用いた産業用イメージングシステムの開発を目的として実施した。高温超伝導検出素子の開発に関しては、臨界電流の最適化を行うことにより77ケルビンにおけるテラヘルツ応答を確認した。また、構築した自動2次元イメージングシステムの動作を確認し、概ね研究目標を達成することができた。今後、実用化へ向け更なる性能向上を目指して改良を進める予定である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。高温超伝導テラヘルツ波検出器およびイメージングシステムを開発し評価を行った。液体窒素温度で高速で動作し、空間分解能が低いものの二次元イメージングを確認しており、一応の目標が達成されている。テラヘルツ波源の変更の必要性、空間分解能の向上等の技術的課題を明確にし、さらにはこれらの解決策も提案していることから、技術移転の可能性が出てきたと考える。
環境中の磁場分布を地図とした自律移動体の走行ナビゲーションシステムの開発宇都宮大学尾崎功一本研究では、環境中に存在する磁場の変化を可視化し、それを自律移動体のナビゲーションに応用することをねらいとしている。ここでは、(1)磁場分布を地図化、(2)繰り返し位置決め精度の事前見積もり、(3)磁場分布に基づくナビゲーション、(4)自動車等の移動する磁性体への対応法の開発、以上を目標とした。特に本研究では、磁場分布を地図化するために、走行経路上の地磁を測定する装置を開発した。その結果、位置認識や修正を効果的に行うことできる領域を事前に把握することができ、移動ロボットのナビゲーション性能を向上させることができた。本研究では、周回経路1周ごとの位置決め精度を調べ、本装置の有用性および磁気に基づくナビゲーション法への応用を明確にした。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。環境中に存在する磁場の変化を可視化し、それを自律移動体のナビゲーションロボットに応用することをねらいとしている。定まった磁場分布の環境におけるナビゲーションにおいては、ほぼ期待通りに動作した。実用化にはまだ課題があり、研究の継続による改善が望まれる。
X線CTスキャナによる多段深絞り品の形状評価技術群馬県立産業技術センター高橋勇一本研究では、現有のX線CTスキャン装置からのCTデータを計測に利用する上で特に問題となりうる1試料の不均一性に起因するノイズ、2等値面の設定方法、3装置のメカ的な問題から生じる位置決めの精度について検討を行った。1については、専用ステージにより著しい板厚の変化が生じないような配置方法を検討した。2については専用校正治具により校正治具のCTデータ上の寸法が既知の寸法になるよう輝度閾値を定めた。3については接触式3次元測定機からの最小限の校正データによりスケーリングを行うことにより、プレス加工に対して現状最大5%程度と見積もられる寸法誤差を~1%に軽減することが出来た。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。現有のX線CTスキャン装置からのCTデータを計測に利用することを目的としている。X線CTスキャナと3次元測定機の欠点をお互いに補完し、計画時の目的を達成している。共同研究の相手企業も決まっており、技術移転につながる展開が見込まれる。また、問題点(課題)も明確に認識しており、その解決に向けて具体的な方法を提案し実施している。研究成果が本研究分野の進展に寄与し、知的財産権の取得および学会発表等を経て、標準化されていくことも期待される。
発光色変化型低酸素用センサーチップの開発と応用群馬大学吉原利忠本研究では、光を用いて湖沼底、海中、土壌中、食品包装内などの酸素濃度(分圧)を簡便に測定するための低酸素用酸素センサーチップの開発を目標とした。センサーチップからの信号の定量的な解析により、気体中において酸素分圧が0.05atm以下を±0.001atmの精度、水中において酸素濃度が0.15mM以下を±0.005mMの精度で測定できることを示した。今後、発光プローブ分子やポリマーの改良を行うことにより、低酸素領域をより高精度で測定することのできる酸素センサーチップの開発に取り組む。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。発光色変化型低酸素用センサーチップの発光プローブ分子の開発およびポリマーの開発に取り組まれ、計画した内容を概ね適切に解析を実施し、りん光強度に課題は残るものの、概ね目標を達成された。今後は課題の解決と、実用化に向けた基本仕様を明確にする検討が望まれる。
高速パルス駆動MCS放電方式による高反応性大気圧プラズマ源の開発埼玉大学前山光明MCS放電方式プラズマ源の中心電極である第3電極にインパルス高電圧を印加する方法を適用し、安定に放電可能な放電条件(圧力範囲、印加電圧範囲、ガス種)の拡大と、これをガス処理に適用して、処理効率および処理速度の向上を目的とする。 放電条件拡大の目標として、乾燥空気(または純粋な窒素雰囲気)、1気圧、円筒半径10mm において、 印加可能な第3電極の電圧範囲(Vmin, Vmax) が、 Vmax-Vmin> 0.5 Vmin程度の広い条件範囲とする。なお、従来のプラズマ源では、1気圧下でVmax-Vmin> 0.25 Vminであった。 また、ガスの処理効率向上として、オゾン生成において、50kJ/gを目標とする。これは、従来の円筒形状MCS放電において得られた効率130kJ/g の約2倍の効率であり、パルス放電によるオゾン生成に関与しないエネルギーを減じることと、換算電界E/nを大きくすることで達成可能であると考えている。 以上と平行してより、より大容積なプラズマ源を可能とするためにMHCD電極およびバラスト抵抗の作成方法の検討を行う。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。MCS放電方式プラズマ源の中心電極である第3電極に、インパルス高電圧を印加する方法を適用し、安定に放電可能な放電条件の拡大と、ガス処理の能力向上を目指している。大気圧下で第3電極のパルス電圧駆動によるプラズマの生成が0。5気圧、第3電極10kV以上で並列MCS放電が可能であることが実証された。また、バラスト抵抗の材質の検討を行い、従来の抵抗素子と同様の結果得られた。さらに繰り返し高電圧パルスとMHCDを組み合わせたプラズマ源が実現可能であることが確かめられたことから、大容積のプラズマ源の実現が期待される。
電源回路に特化した設計ツールの開発とその高周波数電源開発への応用千葉大学関屋大雄本研究では, 高周波数・大振幅電流用の磁性素子を自動的に最適化設計するアルゴリズムを開発した. さらに, そのアルゴリズムを電源回路の設計ツールの中に組み込み, 回路の所望の電力変換効率を保証したうえで, 設計仕様を満足させる最適設計ソフトウェアを開発した. ソフトウェアの実機実証例として高周波数電源をターゲットにした回路構成を提案し, 3.5MHz, 50W出力の回路を設計, 試作し評価を行った結果, 94%の電力変換効率を達成した. 当初目標にあった, 13.56MHz, 100W出力での設計・実験は現在継続中であるが, 予備実験の結果から従来の電力変換効率を大幅に改善できる増幅器を開発できると考えている.概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。高周波数・大振幅電流用の磁性素子を自動的に最適化設計するアルゴリズムを開発した. さらに, そのアルゴリズムを電源回路の設計ツールの中に組込んだ 最適設計ソフトウェアを開発した. ソフトウェアの実機実証例として 3.5MHz, 50W出力の回路で 94%の電力変換効率を達成した. 当初目標にあった, 13.56MHz, 100W出力での設計・実験は現在継続中である。開発期間や開発コストの削減のため、より高速で精度の高い解析・設計ツールが望まれ製品化の可能性が多いに期待される。
時間分解スピンイメージング顕微鏡の開発千葉大学三野弘文フェムト秒レーザー(100fs,76MHz)によるポンプ・プローブ計測をベースとした時間分解スピンイメージング顕微鏡の開発を行った。室温において1μmの空間分解能、走査範囲2mm四方の二次元イメージング計測、液体ヘリウム温度においては各々2μm、100μm四方を目標値とした。更に、ヘテロダイン検波システムによる低励起密度(~10W/cm2)での高S/N比Kerr信号計測の実現を目指した。ピエゾ素子による空間位置決め機能の搭載、高分解能顕微レンズの使用、低温測定用顕微レンズ付きサンプルフォルダーの導入によって室温、低温において上記の目標値を概ね達成した。ヘテロダイン検波システムでは、信号とトリガーの位相揺らぎが顕在化しており、光学・検出系の改善(光軸調整によるレンズ収差の低減や、BPフィルターの導入によるノイズの低減等)が必要との見解に至った。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。スピンイメージング顕微鏡の開発において、これまで問題となっていたコマ収差、非点収差の影響を10%以下に抑制できた点と、課題を着実に実施している点は評価できる。目標が達せられなかった点については、検討と改良が進められており、技術移転を目指した研究開発にもつながる可能性がある。スピンイメージング顕微鏡の確立は、評価装置として重要であり、今後の展開が期待される。
周波数変調連続波型レーダにおけるドップラ測定高度化千葉大学鷹野敏明我々が発明した 95GHz ミリ波 FMCW型レーダFALCON-Iシステムを、広い周波数範囲で FMCW 型レーダに応用するために、ドップラ速度測定範囲を飛躍的に拡大する開発と位相検出精度を上げてドップラ速度検出精度を向上させる開発を行った。その結果、目標であった速度範囲と精度が達成できた。これにより、このタイプの FMCW型レーダの弱点の一つであった、ドップラ速度測定範囲の制限がなくなり、様々な用途に応用できる道筋が開かれた。今後は、この成果を応用することで、FMCW型レーダの長所である低出力、高分解能、安価、保守の容易さと耐久性、などを生かして、多方面の応用を具体化する。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。周波数 95GHz(波長 3.2mm) の電波で、高分解能のレーダを航空機運航管理(鳥と虫との識別)に応用するための性能向上を目的とした。ドップラ速度測定範囲を飛躍的に拡大できる新たなシステムの開発と、位相検出精度の向上を検討し、ほぼ当初の目標を達成できた。今後は、企業との共同研究により、具体的なニーズを踏まえた研究開発に移行することが期待される。
レール状態診断システムの実用化日本大学綱島均本研究の目的は、可搬型プローブ装置を用いて、地方鉄道のレールの保守管理を実際に行って、レール診断システムとしての実用化を行うことにある。レール診断装置を実用化するために、関東地方A路線、東北地方B路線、関東地方C路線の3つの路線において、可搬型プローブ装置を常時設置して、定期的なデータ収集と分析によるレール診断を実施した。その結果、設定した整備基準に対して、現時点で顕在化した問題はないが今後問題が発生するリスクが高い区間(要注意区間)、現時点でリスクが高く早期の保守が必要な区間(要対応区間)を抽出し、保守を実施することにより、レール状態の管理が有効に行えるようになった。さらに、日本の地方鉄道のレール状態診断を一元管理できることを実証した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。鉄道車両の客室内に設置し、車両振動からレールの変位、室内騒音から波状摩耗の検出をおこないレール保守状態を診断する可変プローブ装置の開発に成功した。国内数カ所の鉄道路線で実証的レール診断試験を行い、要注意区間を判断する管理基準を設定できた。速度の影響、現行の管理基準との対応他、残された課題をクリアすることにより、早期の実用化が期待される。
高周波誘導加熱技術を利用した金属・絶縁体複合廃棄物の分離・資源化工学院大学小林潤高周波誘導加熱により機械的強度を低下させた金属・絶縁体接合面の機械的分離手法の確立を目標とし、模擬試料を作成し高周波誘導加熱状態における引っ張り試験により、試験条件が接合面の剪断特性に及ぼす影響を実験的に明らかにした。その結果、導電性に優れる銅材に対しても高周波電流の増加に伴う剪断応力の低下という相関関係が得られた。また、銅・樹脂薄板に対して高周波加熱を行った結果、銅薄膜と樹脂膜が手作業ではあるが容易に分離できるようになることが確認された。この結果を踏まえ、特に薄膜製品に対する回転ローラー等による摩擦分離の可能性が示唆され、以後当該機器の開発を進める予定である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。金属・絶縁体複合廃棄物から、高周波誘導加熱を用いて、軟化・溶融もしくは熱応力破壊し、金属および絶縁体を分離回収することを目的とする。、ポリイミド樹脂フィルムと金属材料の加熱せん断引張り試験をおこない、低応力で分離可能なことを確認した。加熱と剥離操作を流動層にて同時に行うとの想定であったが、計画変更し機械的な方法を検討中である。今後は、企業等との共同研究を通じて、具体的な分離方法の設計、実証に展開することが望まれる。
高密度プラズマによる酸素ラディカル制御芝浦工業大学相澤龍彦本研究では、DLCコーテッド工具・金型の高速脱膜・高品位脱膜を目指し、高密度プラズマアッシング技術を、酸素ラディカル制御という側面から高度化をはかることを目的した。高速脱膜に関しては、1時間で通常のDLCコーテッド工具を脱膜できること、表面性状保持が必須なDLCコーテッド超精密金型も1時間以内で、基材表面品質を保持しつつ、完全脱膜できることがわかった。さらに分光装置を用いたプラズマ診断を併用することで、実時間で酸素プラズマ状態を測定し、原子状酸素・活性化酸素および酸素分子イオンからなる制御酸素雰囲気が、高速プラズマ脱膜・高品位プラズマ脱膜に有効であることを示した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。DLCコートした工具・金型の表面の高速・高品位の脱膜を目的に、高密度プラズマアッシング技術を開発した。目標を上回る結果が得られ、使用済みDLCコーテッド工具・金型において、基材の表面性状・精度を損なうことなく、またDCL膜の完全脱膜を、短時間で実現できた。さらにプラズマ診断を用いて、終点検出も可能にしている。高価な工具・金型がリサイクル可能になることから、工具メーカー、工具研磨メーカー、金型メーカーと共同で研究を進め、技術移転されることが期待される。
高精度光位相計測・識別システムによる再生医療の品質管理応用電気通信大学渡邉恵理子近年、自己細胞を培養して治療に用いる再生医療が多くの先端医療機関にて提供され始めている。これらの医療機関では、細胞培養に多額の人件費を要する他、細胞の品質を安定化できない問題がある。このような最先端の医療を安価で安定して提供するためには、細胞培養の品質管理の自動化が必須である。これまで申請者は大容量の顔画像や動画像を対象とした識別システムを構築して実用化し、さらに細胞情報解析のための位相計測システムを提案・試作してきた。本申請では培養細胞の屈折率や厚みなどを非侵襲で前処理なしで定量計測して位相特徴を抽出・モデル化を行い、再生医療用のための自動品質管理システムの基礎を構築する。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。培養細胞の屈折率や厚みなどを非侵襲で前処理なしで定量計測して位相特徴を抽出・モデル化を行い、再生医療用のための自動品質管理システムの基礎を構築とし、位相計測システムの精度・利便性向上、再生医療適用のための軟骨培養細胞の位相情報による各種相、計測した位相物体のモデル化、間葉系幹細胞への適用について検討し、それぞれ目標を達成し、関連特許を出願した。今後は、研究成果の応用展開により、社会還元に導かれることが期待される。
ナノ光回路のフィルム化・移植・セルフアライン光結合プロセスの開発東京工科大学吉村徹三コンピュータ光配線の主流であるSi光導波路は波長1μm以下の光を伝搬できない。我々は850 nmや可視の光にも通用する感光性Sol-Gel材料を用いたナノスケール光回路を開発した。今回、そのフィルム化・移植プロセスと自己組織化光波網 (SOLNET)形成を検討した。Si waferに厚さ100 nmのAlはく離層を蒸着、その上にコア幅1μmの光導波路を形成した後、 Alエッチャント/純水/アセトンの順で処理した。その結果Al層が除去でき、光導波路とwaferの分離に成功した。Wafer全体にわたる完全分離は不達成で、伝搬ロス評価とともに今後の課題となった。クリスタルバイオレットで色素増感したフォトポリマを用い、ナノスケール光回路からのSOLNET形成に成功した。光ファイバとの結合効率評価は今後の課題として残った。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。850 nmや可視光にも通用する感光性ゾルゲル材料を用いたナノスケール光回路のフィルム化移植プロセスと、自己組織化光波網 (SOLNET)形成を検討した。その結果、光導波路のフィルム化とウエハーとの分離に成功した。しかし、完全分離は未達成で、伝搬ロス評価とともに今後の課題となった。技術移転に向けて、今回明らかになった課題の克服が期待される。
光応答抽出法による貴金属の連続回収技術の開発東京工業大学竹下健二本課題の目的は、光照射によって抽出剤の分子構造を変化させることで貴金属類を高選択抽出できる「光応答型連続抽出プロセス」を構築することである。ミキサーセトラー型抽出装置を用いてBDPDA/クロロホルム溶液系によるPt連続回収プロセスの成立性について検討した。連続操作によってもUV照射によりPt抽出率を大きく向上させることができた。この抽出率の向上は回分実験で得られた抽出平衡試験の結果と同等であり、光応答抽出法が連続プロセスに拡張可能であることを示唆している。今後は、可視光照射による逆抽出工程の連続回収を実証し、光応答抽出法を連続分離技術として確立していく計画である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。波長の異なる光照射により抽出剤の分子構造を変化させることによって、貴金属工業の最終廃液から貴金属類を高選択抽出・回収できる「光応答型連続抽出プロセス」を開発し、連続抽出の可能性を実証することができた。抽出性能の更なる向上とプロセス技術の構築が今後の課題であり、産学連携による技術移転が期待される。
スマート型海上流出油防除システムの研究・開発東京大学金岡秀石油は陸上の原油資源が地球上の特定の地域に偏っており、海底に良質の油田が多数存在することから、その輸送と採掘が海洋環境で行われる場合が多く、それに伴う海上油流出事故も後を絶たない。海上流出油は海面を移動しながら拡散を続けるため、その防除は時間の経過とともに格段と難しくなる。更に拡散した油は揮発成分の減少とともに粘度が増し、油と海水が混ざり合って安定化するいわばエマルジョン(Emulsion)化が進行するため、海上油流出事故に対する迅速かつ有効な初期防除は、油流出事故による被害を最小に止めるための最優先課題である。海上流出油の防除には、環境への配慮から油処理剤等による化学的処理より機械的回収が優先されるが、機械的回収ではオイルフェンス(Oil Boom)が主たる手段となり、浮遊流出油の拡散を防止し回収の環境を整える。ところがオイルフェンスの展張には作業船と専門の作業員が必要となり、事故海域から近くにこうした人力と設備がないと、素早い初期対応は極めて難しい。また高波や強風を伴う荒天の海象も、防除作業に対する深刻な阻害要素である。一般に海上油流出事故が荒天下で多発するのに対し、人力に頼る現状の防除作業は、人命安全と作業性低下の問題があるので、風力階級 5、有意波高 2 m以上の海象ではその実施が困難とされている1)。こうした現状を踏まえ、本研究・開発では海上油流出事故に対して最も有効でかつ人的にも安全な防除手段として、新たな自律稼働防除システムの導出を目指し、その本格開発に先立ち、実用化に向けたフィージビリティスタディを行う。「スマート型海上流出油防除システム」と名付けた本システムは、無人でオイルフェンスの展張を行う自律型水上ビークル(Autonomous Surface Vehicle; ASV)をプラットフォームとして構成される。本システムでは、浮遊流出油による被害を最小に止めるよう、知能化技術に基づいた最適誘導の手法で制御することを、重要な特徴とする。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。海上への流出油の防除を目的とし、シミュレーションにより、海上浮遊流出油の占有面積を最小に止めるオイルフェンスの展張をする作業ビークルの誘導・制御法を確立した。画像処理により、海面と流出油との境界の検出を可能にした。しかし、1/10スケールでの検証実験は実施できなかった。実用化のためには、検証試験の実施が重要であり、今後の研究の発展が望まれる。
パリレン直接蒸着技術を用いた液体光学デバイス東京大学松本潔透明なパリレン薄膜をシリコンオイルに直接蒸着してカプセル化する技術に関し、これを用いた液体光学デバイスを対象として、成膜メカニズムの解明、液体レンズの光学特性の評価、液体レンズの可変焦点駆動特性の評価を行った。成膜過程を直接観察する手法を開発し、液滴の形状変化から液体状のパリレン薄膜の表面張力は700μN/mm程度であることがわかった。また液体上のパリレン膜の平坦度は、平均面粗さで2.37nmであり、ガラス基板上での成膜時と比べても遜色はなかった。試作した1mm径の可変焦点液体レンズにおいて、レンズ形状の理想参照曲面からのずれは2λ以下(λは計測波長、650nm)であり、また駆動可能な周波数帯域は10Hz以上であった。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。シリコーンオイルとパリレン薄膜の組み合わせによる液体光学デバイスについて、当初の目標(成膜メカニズムの解明、薄膜の特性評価、レンズ駆動メカニズム及び性能評価など)をほぼ満足する成果が得られた。従来の成形法ではできない構造や配置が可能な成膜・成形法であり、種々応用が考えられる。既に企業との共同研究が始まるようなので、本研究の特許出願を行い、広い応用展開が期待される。
サファイアデバイスの機能表面加工東京電機大学松村隆化学プラント、海洋・宇宙開発の分野など極限環境において、サファイアは分析機器のデバイス材料としてニーズが高まりつつある。本研究は、サファイアの微細切削技術により表面にマイクロオーダの微細構造を加工し、表面機能を制御することを目的としている。まず、エンドミル切削によりサファイアの表面に深さ10μm、幅125μmの微細構造を加工する技術を開発した。また、一定間隔で加工した溝の微細構造によって、表面のぬれ性が異方性を有することを確認した。本研究では、サファイア表面の微細構造を切削で加工でき、表面機能を制御できることを示した。この成果は、サファイアの高機能デバイスや材料開発用の基板に応用できる。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。脆性材料であるサファイア単結晶のマイクロ切削加工技術を開発することを目的とする。サファイヤ単結晶の結晶方位に対する平面切削特性、エンドミル加工条件と加工特性の関係を明らかにし、平滑なマイクロ溝加工表面が得られた。今後は、表面の溶着物残存の問題、濡れ性の評価が十分にできなかった点等の残された課題に対する研究の進展が期待される。
民生用建築における低温排熱利用を目的とした小型吸着冷凍機の開発東京農工大学宮崎隆彦本研究では、低温排熱で駆動する吸着冷凍機の民生用建築への導入を実現するため、小型吸着冷凍機の開発を目指している。本システムは1つの吸着ベッドで間欠運転を行うため、システムの小型化が可能であるが、冷房効果の周期的変動が課題となる。そこで、室内の温度変動に吸着冷凍機の運転形態が与える影響を評価した。脱着‐予冷‐吸着‐予熱という吸着サイクルの各過程時間を最適化した結果、冷凍能力およびCOPの向上が見込めることがわかった。さらに、室温の変動を±1~2℃程度に抑えることが可能であることを動的なシミュレーションによって示し、今後の開発につながるシステムの設計指針を示すことができた。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。民生用に一つの吸着熱交換機(1ベット吸着冷凍機)を開発することを目的に、最適な吸着剤ー冷媒の組み合わせを選定した。シミュレーションにより冷凍能力を最大にする各工程のサイクル時間を検討し、2ベッド方式と同等以上の冷凍能力が得られることを確認した。また、出力変動と室温変化の関係を明らかにした。今後は本システムの有効性を実証する研究開発に発展することが望まれる。
流体抵抗低減に寄与する微細凹凸模様の高能率創成方法の開発東京農工大学笹原弘之曲面形状の創成と同時に微細な凹凸模様を高能率に創成する手法の開発と、その凹凸模様によって実現する流体抵抗の低減を目的として研究を行った。パッチ分割切削法の適用範囲を平面から曲面に拡張するとともに、ボールエンドミルおよび特殊回転工具により規則的に配列する微細凹凸模様やリブレット状の凹凸模様を形成することに成功した。また、形成される凹凸模様をシミュレーションにより可視化する手法を開発した。翼形状の表面に凹凸模様を形成し空気流れの剥離域の大きさを測定したところ、凹凸模様の付加により剥離域が小すなわち抵抗が小となった。今後の展開として、実際のスクリューやインペラ、翼などに適用してその効果を明らかにしたい。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ボールエンドミルを用いて材料表面に連続的な微細凹凸模様の高能率創成加工に関しては概ね目標とする成果が得られた。しかし、表面凹凸形状により、流体抵抗を低減する試みについては、風洞実験にて凹凸を有しない場合と比較して効果があることは認められたが、凹凸の形状パターンとその効果の関係について相関性が見いだせなかった。技術移転に向けては、この課題の解決が望まれる。
グリーン飛行機の実現を目指したゼロカーボンエミッション技術の適用検討独立行政法人宇宙航空研究開発機構平野義鎭本研究では航空機の運航中に排出するCO2の低減に向け、航空機以外の要素技術の適用可能性に着目し、国内外の動向を調査するとともに日本として注力すべき要素技術の峻別を目指した。調査研究の結果いくつかのキーテクノロジを抽出し、国内企業へのヒアリングおよび海外研究機関との意見交換を実施することにより、各技術の今後の航空機適用に向けた技術開発の方向性を明らかとした。そのなかでも、小型航空機に適用可能な高効率電気モータおよび高効率2次電池技術、燃料電池技術は早急に開発に着手すべき課題である。高効率モータに関しては飛行環境を模擬した実験的検討を実施することによりその小型航空機への適用成立性を示した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。グリーン飛行機の実現を目指した適用検討課題(エネルギー貯蔵技術 動力源 電力機器技術 エネルギ分配技術)を抽出、調査し、今後のキー技術の方向性をロードマップとしてまとめた。また、高効率小型伝導モータの実証試験を行い、有効性を検証した。今後は、日本の航空機業界およびその関連企業の研究開発指針とするべく、ロードマップののメンテナンスとより具体的な技術課題の提案が期待される。
ネジ駆動式屈曲機構の動作自由度の拡張とその産業応用可能性の探索法政大学石井千春本研究開発は、申請者がこれまでに発明したユニバーサルジョイントと逆ネジを用いたネジ駆動による屈曲機構を改善することにより、従来の屈曲部ではその先端位置が半球面上にしか到達できなかったものを、先端位置の到達範囲を半球面の内部や外部にも拡張するものである。具体的には、1設計変更を行った新しい屈曲部を製作して、2屈曲部先端が任意の位置に到達するために必要な3本の屈曲リンクの回転量を与える関係式を導出し、3屈曲部先端が到達可能な領域を解明した。これにより、先端位置の制御方法が定まり、従来の屈曲機構では実現が困難であった堆積物などの採取が可能となり、各種の分野で作業を行うマニピュレータとして適用できることが明らかになった。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。外科手術用鉗子等に用いることを目的とし、ユニバーサルジョイントからなるリンクの回転機構を用いることにより、全方位に屈曲可能なマニピュレータを開発し、可動範囲を広げることに成功したが、自動制御の確認はできなかった。今後は、強度、負荷力の検証等を通じて技術移転につながることが期待される。
含水多孔質体を用いた瞬間過熱水蒸気生成器の高性能化横浜国立大学奥山邦人加熱水蒸気は、乾燥、殺菌、調理などへの応用から、昨今高い関心が持たれている。本申請課題で提案する加熱水蒸気生成器は、従来技術と大きく異なり、瞬間的かつ高効率で加熱水蒸気を生成・停止できる。その方法は、底面を水に浸した含水多孔質体の中心部に孔をあけ、その内面に細いヒータ線コイルがばね作用で押しつけられるように設置するだけである。構造が単純であるため小型化にも適し、しかも製造・ランニングコストも非常に安いという優位性まで兼ね備えている。平成21年度シーズ発掘試験(課題番号04-178)では、加熱水蒸気が生成できるメカニズム解明および腫瘍なパラメータスタディを行った。本申請課題では、より高性能化を目指したもので、多孔質体内部の液流による作動限界の解明並びに多孔質体の特性が性能に与える影響を明らかにすることを目的として研究を実施した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。発熱体を有する多孔質体を用いて、安価に、迅速に過熱水蒸気を発生できる装置の開発に成功した。本課題では、1)過熱水蒸気生成器の作動限界メカニズム(限界作動条件)2)多孔質材料の特性(平均細孔径、熱伝導率)、装置寸法が性能に与える影響3)装置設計指針の確立について検討し、実用化の目途となる指針を得た。今後は、多孔質材の欠損による水への混入、水道水を使うことによるスケールの問題等のより実用的な課題への対応が望まれる。
認知・操作の同時支援による電気自動車の運転支援システムの開発慶應義塾大学村上俊之自動車走行において、路面状態の急激な変化やタイヤの磨耗等の変化、車両積載物による車両重心の変化等により、ハンドル、ペダル操作に対する車両運動の特性は変動する。車両運動に関しては、2輪、4輪駆動、前後輪駆動等の違いによりその運動特性は異なるものとなるが、基本的には自動車の簡易モデルとして知られている2輪モデルによりその特性は定式化可能である。そこで、本研究課題では2輪モデルを仮定し、電気自動車における車両運動特性と駆動モータの関係解析を行う。さらに、ハンドルおよびペダルの操作特性を任意に変更可能なステアバイワイヤおよびハプティックペダルシステム(力フィードバックが可能なペダル)を用いた路面状態フィードバックを構築し、環境状態変化の認知と自動車の操作支援が同時に行える運転支援システムを実現する。本研究課題では、運転支援システムを適用する運転状態の具体例として車間距離制御を取り上げ、提案する運転支援システムにより車間距離を安定に保ちつつ、スリップ率応答の改善も同時に達成できるアルゴリズムの構築法を提案する。従来から、自動車の安全運転支援では、ABS(Antilock Brake System)と呼ばれるすべり抑制機能等も開発されているが、基本的には自動制御(車を主体とした制御)によるものであり、運転者を主体とする制御ではないため、運転者は制御による安定化が行われていることを逐次認識することはできない。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。路面状態フィードバックを構築し、環境状態変化の認知と自動車の操作支援が同時に行える運転支援システムを実現することを目的とした。ステアバイワイアによるステアリングハンドル操作を含めた運転支援に関しては、目標を達成できていないものの、アクセルとブレーキの連成を考慮した運転支援システムを提案できた。今後は自動車産業界との連携を視野にいれた研究の発展が望まれる。
このような安全機能は運転者の運転技術の過信をもたらす可能性があり、場合によっては危険な運転を助長してしまうことも考え得る。こうしたことから、運転者自身が運転状態をきちんと認識できることが重要であるという先進安全自動車(ASV: Advanced Safety Vehicle)の概念に基づいた開発が、国家プロジェクトとして1991年より進められている。本研究課題で開発した基礎技術は、運転者に危険状況を認知させつつ安全運転を誘導するものであり、従来の自動制御型(車主体型制御)の運転支援とは異なり、運転者を主体とする運転支援を目指すもので、ASVの概念にも沿うものであると考えている。今後のアルゴリズムの展開としては、環境変動に対する適応性の向上、運転者の特性の違いに応じた運転支援システムの制御パラメータ調整アルゴリズムの構築、また乗り心地を考慮したペダル支援制御の実現が必要となる。
能動型避雷針の開発東海大学貫洞正明落雷は雷雲から発生するリーダのファイナジャンプ内にある既設の避雷針に落雷する。今回、開発した能動型避雷針は落雷を当該避雷針に能動的に落雷させ、安全範囲を限定するために開発されたものである。今回の研究の要点は、能動型避雷針の特徴の一つであるイオンサプライヤ(高電圧を発生させ、電子、イオン等を発生させる装置)の性能に依存するため、この開発に集中して行われた。この結果、実験室の段階であるが、雷インパルス電圧を用いて、既存の避雷針と能動型避雷針との比較を放電確率で行ったところ、能動型避雷針の確率が高いことが判明した。このことで、本研究はほぼ達成できたものと考え、今後、自然雷で実証試験する計画である。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。放電路を本避雷針に誘導する能動的避雷針の開発において、当初計画した装置では、目標とする性能が得られなかった。しかし、巻き芯材質を変更することにより、能動的避雷針の有用性を確認できた。今後は、追加データの取得と次のステージである自然雷に対する確認に進むことが期待される。
本質安全性を有し、かつ巧緻的ハンドリングが可能なハンド東海大学小金澤鋼一現在、産業用ロボットのハンドあるいはグリッパは特定物の把持・搬送に用いられるものが多く、不定形状物や柔軟物の把持は困難である。一方、研究レベルではセンサを多用した多関節ハンドの研究があるが、高価、大規模制御システムを要すること、そして本質的安全性の面で問題点がある。 本研究開発では不定形状物を把持でき、かつ柔軟物にも対応できるハンドの開発を行った。開発した人工指は指部に一切センサを用いずに、簡単な制御で不定形状物を把持でき、また把持力調節もできる。その意味で本質的安全を有し、生産工程での応用はもとより、医療・福祉現場、あるいは宇宙・海洋開発、原子力発電所などでの応用が考えられる。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。柔軟物にも対応できるハンドの開発を行うために、指部にセンサを使わず簡単な制御で不定形状物を把持できる人工指を試作した動作を確認した。2本指でキャップのねじり動作までを確認し、ほぼ目標となる動きを実現できたことは評価できる。今後は当初目標とした3本指の動作と詳細な評価を行い、研究成果が社会還元に繋がることが期待される。
PELID法による色素増感型太陽電池の試作と評価東海大学梅津信二郎効率の高い色素増感型太陽電池の開発を目指して、申請者らが独自に開発したPELID法を用いてチタニアのパターニングを行い、色素増感型太陽電池の試作を行った。効率目標を5%に設定したが、最適なチタニア層の厚みを効率よく探索できたので、7.5%の効率を達成した。また、チタニア層の表面に位置する粒径のみを大きくすることによる効率の上昇(光閉じ込め効果)を検証した。今後は、光閉じ込め効果の最適な条件を特定してパターニングを行うことで、さらなる高効率化を目指す。また、より高速で、大面積にプリントする手法の確立を目指す。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。効率の高い色素増感型太陽電池の開発を目指して、独自に開発したインクジェット手法を利用した加工技術(PELID法)を用いて、チタニアのパターニングを行い、色素増感型太陽電池の試作を行った。計画通りに着実に研究開発を進めており、チタニア層の最適な膜厚条件や光閉じ込め効果に対する粒子直径の検討で、期待通りの成果が得られた。まだ基礎的検討課題が残されているが、研究開発ステップは着実に前進していると考える。
表面プラズモンを使った光双安定型液晶空間光変調素子東京工業大学梶川浩太郎表面プラズモンを使った高効率な液晶を使った光双安定型空間変調素子を開発した。この素子では、金属回折格子またはMIM構造で励起される表面プラズモンを用いている。単純なスイッチングだけではなく、光双安定型の空間変調素子であるという特徴がある。素子を実際に作成すること、および、動作性能として次の3点を目標にした。 (1)1mW/mm2以下の入射光強度での低電力応答 (2)応答速度10ms以下の高速スイッチング (3)10μmの空間分解能 液晶材料や光学パラメータを最適化した結果、空間分解能は目標に到達しなかったが、0.38mW/mm2の入射光強度で双安定スイッチングを実現し、10msの応答速度が得られた。実用的な液晶光双安定型空間変調素子実現の目処がついた。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。表面プラズモンを使った高効率液晶を使った光双安定型空間変調素子の開発で、MIM構造(金属-誘電体-金属構造)で励起される表面プラズモンを用いて素子を試作し、基本動作が確認された。している。10msの応答速度が得られ、液晶変調素子の実用性の可能性が高まった。空間分解能の改善策も示されており、特許による権利化も予定されている。今後研究を継続し、課題を解決することで、実用化が高まると期待される。
超音波駆動による高速可変焦点液体レンズの作製とその応用東京工業大学小山大介本課題では、機械的可動部がなくアクチュエータが不要で、音響放射力によりレンズ自体が変形する直径6 mm、厚さ4 mmの小型液体レンズを開発した。レンズ応答に関する理論式を導出し、速い応答速度を得るためのレンズ径やオイル動粘度等の最適条件について検討した。超音波駆動条件を制御することにより、従来の小型カメラモジュールに比べて一桁程度速い応答速度6.7 msを実現した。 レンズのAM信号駆動により、共焦点画像撮影のための焦点の奥行き方向連続走査が可能となった。今後周方向走査可能な内視鏡カメラの作製を試みる予定である。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。レンズ自体が変形する直径6 mm、厚さ4 mmの小型液体レンズを開発した。レンズ応答に関する理論式を導出し、速い応答速度を得るためのレンズ径やオイル動粘度等の最適条件について検討を行った。超音波駆動条件を制御することにより、目標には達していないが、従来の小型カメラモジュールに比べて一桁程度速い応答速度6.7 msを実現した。実用化には、液体レンズの特長を活かした応用を見つけ、研究を進めることが望まれる。
イオン液体を用いた高温超音波キャビテーションピーニング技術の開発新潟県工業技術総合研究所中川昌幸加熱したイオン液体中でオーステナイト系ステンレス鋼に対し超音波キャビテーションピーニング処理を行うことにより、表面圧縮残留応力を付与することができた。またピーニング処理面の耐食性において問題となる加工誘起マルテンサイト変態量は、従来法の一つであるウェットブラストの1/7以下、水中超音波キャビテーションの1/2程度までの低減効果が認められ、研究計画で期待された効果を得ることができた。今後は、実用化に向けたスケールアップの検討、表面反応を利用した新技術への展開を図る。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。耐熱性を有するイオン液体中でのキャビテーションにより、金属材料表面にピーニング効果を付与する新しい試みに成功した。SUS304の試験で、本手法は、既存のウエットブラスト処理と比較して、短時間で大きな圧縮残留応力を付与でき、かつ加工誘起マルテンサイを低減できる等の有効性を確認した。また、ウエットブラスト処理後の本処理の効果、耐食性への影響、イオン液体の繰り返し使用への影響なども調査し、有効な結果を得た。今後の研究の発展が期待される。
高品質溶接をめざす強磁場による大気圧高密度プラズマの研究新潟大学岡徹雄TIG溶接のアーク放電を磁場中で発生させ、これにより溶接時のビーム形状を制御してエネルギー密度を向上することを目的とする。その目標はアスペクト比1(溶け込み深さの比)である。このために磁場発生の手段として超伝導バルク磁石、永久磁石を適用し、過去の調査、磁場解析による発生磁場との形状の把握、ならびに放電実験を行った。タングステン電極からの放電に磁場印加すると、これをビーム状に絞ることが可能であることが分かり、入熱の分布や溶融池の形状を自在に変えることができる。今後はさらに実験を進め、小型省電力の溶接、高速溶断や微細加工に繋がる技術として提案していく。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。磁場印加環境下でアークプラズマ溶接実験を行うための設備と環境が整備された。しかし、当初目的とした磁場印加の強度と方向が、溶け込み深さに与える影響への調査、溶接部の溶け込み深さの向上については、有効な結果が得られず、本技術の有効性の検証にはいたらなかった。
ナノバブル水を用いた洗浄手法の開発および高効率化新潟大学牛田晃臣本研究では、ナノバブルを用いた洗濯洗浄法を開発し、洗濯洗浄における洗浄液にナノバブルを混合することによって、洗浄率にどのような効果が表れるかを検証した。その結果、従来の報告で旋回流よりも高い洗浄率を得ることに成功している交番流式洗浄機において、ナノバブル水の洗浄率は水のみの場合よりも5%程度高くなった。また、陰イオン系の界面活性剤の洗浄液と混合させることで約7%向上した。すなわち、ナノバブル混合により高い洗浄率を得ることに成功し、環境負荷の少ない洗浄手法を開発することができた。今後は、本結果を一般の洗濯機に応用し、一般の洗浄機における洗浄率を検証していく。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。界面活性剤水溶液にナノバブルを混合することによって、流動抵抗が10~50%減少することを確認した。陰イオン系の界面活性剤とナノバブル混合液において約7%の洗浄率向上を達成した。非イオン系・陽イオン系界面活性剤においては洗浄率に変化が見られず今後の検討課題である。本研究は交番流式洗浄試験機を用いており、技術移転のためには、現在、市販されている洗浄機での検証が望まれる。
金型加工におけるオンライン加工・計測システムの開発新潟大学川崎一正近年、金型加工の高精度化、高能率化が要求されるようになってきている。これを実現するためには、金型形状を常に正確に把握する超精密な計測が必須であるが、金型加工の補正作業時には、処理ミスや操作性等が問題視されている。本研究では、これの改善を目的として、汎用の表面粗さ測定器に、2軸制御機構を付加させることによって、金型加工におけるナノメートルオーダーレベルの3次元形状計測を実現するとともに、計測システムと加工システムを同一のコンピュータでコントロールすることにより、NC加工プログラムと計測データをリンクさせたオンライン加工・計測システムを開発し、微細な金型の高精度、高能率化を目指す。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。金型製造分野において、汎用の表面粗さ測定器に、2軸制御機構を付加させ、コンピュータによって制御する位置決め機構を持った3次元形状計測装置を開発し、その動作確認を行った。技術移転に際しては、実用上の問題点、ニーズの調査等をふまえて、今後、研究成果を煮詰めてゆくことが望まれる。
半導体レーザの周波数雑音特性を利用した超高速物理乱数の生成新潟大学土井康平インターネット等の普及に伴い、第三者による盗聴や改ざん、なりすましなどの犯罪が増加する傾向にある。そのため、暗号化による情報セキュリティ確保が重要になっており、その暗号化には乱数が必要不可欠である。また、乱数は数値シミュレーションを行う際に用いられることがあり、特に大規模な数値シミュレーションにおいては乱数の品質が良好であることが精度の高い結果を得るためには重要な要素となる。乱数には現在主に用いられている擬似乱数と物理乱数があり、前者は確定的アルゴリズムによって生成されるためセキュリティ確保の点で不十分であり、また周期性が存在する。後者はランダムな物理現象を素に生成される乱数であるため解読することは事実上不可能に近いが、利用可能な良いソースが知られていなかったため高速生成が不可能であった。ゆえに高速な乱数生成に関する研究の多くは、前者の擬似乱数生成について行われてきた。しかし、近年半導体レーザの新しい応用法としての超高速物理乱数の生成が新聞紙面やNature Photonicsに掲載されるなど脚光を浴びている。半導体レーザは安価・小型軽量であり、一般的な電子部品と同様に取り扱うことができるため広く普及してきた。同様に、特殊な部品をほとんど必要とすることなく高品位な物理乱数を提供できる半導体レーザを利用した高速物理乱数生成装置は、実用化の簡単さもあり、将来的に情報セキュリティを確保するのに大いに役立つものと考えられる。これらの半導体レーザを応用した高速物理乱数を生成する研究は、半導体レーザに光帰還をかけ、意図的に出力光強度をカオス変動させることで物理乱数のソースとして利用し、超高速物理乱数の生成を成している。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。暗号化による情報セキュリティ確保が重要になっており、暗号化には乱数が必要である。半導体レーザの周波数雑音を利用して品質の優れた物理乱数を高速に生成することを目的とした。安価な半導体レーザをそのまま利用して、国際的に認められる品質の物理乱数を40Gbpsの速度で生成することに成功した。今後は、安価なデジタイザで実現可能な方式の検討や、異なるレーザーダイオードを用いた方式の検討に発展することが期待される。
これらは生成速度を上げるために様々な工夫が加えられている。一方、本研究の半導体レーザを利用した高速物理乱数生成は、半導体レーザに存在する周波数雑音を利用することに独創性があり特許も取得している。この周波数雑音は超精密レーザ干渉計へ半導体レーザの応用を困難にした要因である。この周波数雑音は数GHz以上にも及ぶ極めて広帯域な雑音であるが、半導体レーザと光検出器の間に周波数弁別器を挿入して周波数の変化を光強度の変化に変換することで簡単に検出することができる。半導体レーザの発振周波数安定度改善の研究を行ってきた者にとっては良く知られた雑音であるが、一般的な半導体レーザの応用の際には実用上大きな問題として認識されることは光通信を除いてほとんどなかった。周波数雑音は何らかの方法で周波数雑音を光強度雑音としなければ観測することができない。周波数雑音から強度雑音への変換については京都大学名誉教授の藪崎等が原子の吸収線の分光実験に半導体レーザを用いた際に、非常に速い大きな光強度の変動が見られること、そしてこれは半導体レーザが高速の周波数雑音を持っていることが原因であると報告している(Phys. Rev. Lett., 67 (1991) 2453)。
周波数雑音は半導体レーザの注入電流をホワイトノイズで変調したようなスペクトルを持ち、周波数弁別器を利用することで簡単に観測することができる。この光検出器で観測した周波数雑音はレーザの中心周波数をピークとした正規分布を持っており、現在の実験結果では算出した理論値に極めて良く近似した、正規乱数の分布を観測している。さらに我々が特許を取得している手法で非常に簡単に周波数雑音から高速の光強度雑音を生成し、例えば8bitまたは12bitのA/D変換器を用いてデジタル化することで、並列物理乱数生成システムを構成すると更に高速の物理乱数生成が可能となる。また、この周波数雑音を利用した超高速物理乱数生成システムは原理的に極めて単純なものであるため、コンピュータに内蔵することが可能なサイズへの小型化も容易であると考えられ、将来的には製品化と普及も既存の物理乱数生成器と同様に見込める。今回、周波数雑音を利用して品質の優れた物理乱数を高速に生成することを目指して研究を行った。
プラズモニック構造を有する高効率有機薄膜太陽電池の研究開発新潟大学馬場暁本研究ではこれまでにない太陽光のエネルギーそのものを界面で大きく増強することができる有機薄膜太陽電池の構築を行うために、金属グレーティング基板上での表面プラズモン共鳴励起を利用できるセルを作製し自然光エネルギー利用における抜本的な課題解決を推進することを大きな目的とした。金属グレーティング表面プラズモン励起により広範囲の波長域に渡り光電流を2倍以上まで大きくすることが可能となった。今後は、この成果を基に金属グレーティングによる伝播型表面プラズモン励起と金属微粒子の局在プラズモンの両方が同時に励起し、その相互作用によりこれまでにない大きな光電流の増大を得ることにより実用化を目指す。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。考案した金属格子基板を電極とした有機薄膜太陽電池を実際に試作し、当初目標とした動作特性を得るには至ってないが、金属格子基板により、特性が向上する可能性を示したことが評価される。また、実験と並行してシミレーションを行うことにより、研究の次のステップを見出すことができる点も評価される。
スペクトル分析も可能な非接触3次元動画顕微鏡の開発長岡技術科学大学塩田達俊物体や生体の内部構造と材料分析を同時にかつ高速に非接触計測できる計測器が、医療・製品検査などの分野から必要とされている。申請者は、これまでに光学干渉計を利用した研究で、20μmの分解能で1mm角の2次元断層画像をCCDで一括取得できることを実証した。さらに、金属薄膜を蒸着した光共振器を測定対象として内部領域毎のスペクトル情報を分離して得ることにも成功した。本課題では、従来の画像取得時間30 msの近赤外用CCDを用いて、1 μmの空間位置分解能の形状計測を確認した。また、共振器試料を用いて、多重反射の各反射光が持つ光電界スペクトルを分離して計測することに成功した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。物体や生体の内部構造と材料分析を同時に、かつ高速に非接触計測できる計測器の開発を目標とする。近赤外用CCDを用いて、目標値を上回る1μmの空間位置分解能の形状計測を確認できた。計測範囲では深さ、水平面とも、目標値に達しなかった。また断層像と分光スペクトル情報を同時に取得できた。今後は、測定物の対象を明確にしたプロトタイプの製作に向かうことが期待される。
褥瘡予防クッションの開発富山県工業技術センター石割伸一研究の目標は、樹脂粉体の材質を変えることによるクッションの軽量化、粉体と水との混合物の流動性を低減させることであったが、新しく開発したある方法(特許出願予定)により、これらの目標をすべて達成することができた。また、このクッションの除圧効果を調べることが目的で行った金沢大学の須釜先生との共同研究の結果からも、世界中で使われている他の製品とその除圧性能を比較して大変優れた性能を持っていることが確認された。このクッションが採用している方式はまだまだ大きな可能性を秘めており、さらなる除圧性能の向上が期待できる。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。車椅子用クッションには、上体とその動きをしっかり支えることと、褥瘡を起こしやすい部分の圧力を下げる‘柔らかさ’との両方が求められている。この矛盾を解決するために、中綿として水と微小バルーンとの混合物を用いた軽量で、暖かいクッションを開発した。定性的な評価が多いものの、本開発の褥瘡予防クッションは他の市販クッションより優れていることが実証された。今後は、基礎メカニズムを深く解明し、クッションとしての最適化を図るとともに技術移転に発展することが望まれる。
広域測定に対応した大気汚染ガス濃度監視システムの実用化に関する研究富山高等専門学校由井四海光源と観測点との間が約2~3kmの長光路で、大気汚染物質である窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾンを数ppbレベルでの測定できる技術を確立し、平均濃度の連続計測できる技術を目標とした。要素技術として、航空障害灯を光源とする方式と別光源を利用する方式の双方に対応できる受光測器、別光源、振動対策のための調整機構を開発した。受光測器を用いて2.7kmの区間における二酸化窒素を検出限界5ppbで測定することが確認され、調整機構では連続して光軸調整を行うことができた。今後の展開としては、要素技術をすべて組み合わせたシステムによる大気汚染ガスの連続測定や応用として本方式を燃焼プロセスなどの産業分野で制御系に組み込むことなどが挙げられる。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。望遠鏡で受光した航空障害灯から放射される光と実験室内で取得された気体の吸収スペクトルを比較し、その減衰気体の濃度を算出することにより、遠隔、広域測定を可能にすることを目的とする。光学系装置の検討、振動対策の検討を実施後、プロトタイプにてNO2の測定をおこない、本手法が有効であることが実証された。予定した硫黄酸化物、オゾンの計測はできなかったが、実用化にむけての本技術の発展が期待される。
太陽光追尾による光電・熱電発電システムの構築富山大学丹保豊和1目標 太陽追尾方式を用い、太陽が放っている光と熱を高効率に電気エネルギーに変換することを最終目標としている。平成22年度において、太陽電池を用いた光電発電システムと熱電モジュールを用いた熱電発電システムを、個々に構築することを目的とした。2その達成度 太陽追尾には特許出願審査請求中の独自の光センサを用いた。光発電は京セラ製の25cm角多結晶太陽電池を用い、熱発電にはKELK社製の5cm角のBiTe系の熱電モジュールを用いた。双方のシステムにおいて、最大電力点追尾(MPPT)機能をハード・ソフト面から開発し、屋外での検証も行った。3今後の展開 個々の光電発電・熱電発電システムの改良も必要であるが、2つの方式を重ね合わせたハイブリッドシステムの構築を図る。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。太陽追尾方式を用い、太陽の光と熱を高効率に電気エネルギーに変換するために光電発電システムと熱電発電システムを個々に製作し、性能を評価した。光電発電システムは動作、性能とも安定した値が得られた。熱電発電システムに動作の問題はないが、午後からの発電量に減少が見られたものの、原因はある程度特定できており、今後は両者を一体化したハイブリッドシステムを作製して、性能を確認していくことが期待される。
ファイバーレーザーによる太陽光発電用シリコンウエハの熱応力割断金沢大学上田隆司太陽光発電用シリコンウエハをレーザーによる熱応力割断で切断しようとする研究であり、ダイヤモンドブレードに代わる新しい切断方法として期待している。ファイバーレーザー、Nd:YAGレーザー、CO2レーザーを用いて、単結晶シリコンウエハ、多結晶シリコンウエハの他、サファイアウエハ、ガラスなどの硬脆材料を熱応力割断している。このとき、(1)レーザーを照射したことにより影響を受ける熱影響領域を小さくする(2)熱応力割断した面の表面粗さを小さく抑える(3)多結晶ウエハを割断するとき結晶方位がまちまちであることから、亀裂進展の直進性に注意する、などの点に配慮して研究を行っている。その結果、熱影響領域の幅を小さく抑え、割断面の表面粗さを改善し、亀裂進展の直進性を改善することに成功している。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。太陽光発電用シリコンウエハの切断をダイヤモンドブレードに代わり、レーザーの熱応力を使って切断しようとする研究である。レーザーを照射したことによる影響を考慮し実験をした結果、単結晶シリコンウエハ、多結晶シリコンウエハを高精度で割断することが可能になった。今までの蓄積された技術を統合して技術を完成することが望まれる。さらに、シリコン以外の材料の切断にも応用されるよう技術の改良が期待される。
医療用内視鏡に搭載可能な超小型3自由度球面モータの開発金沢大学上野敏幸鉄ガリウム合金は、近年、米国海軍研究所で開発された延性で機械加工が可能な磁歪材料である。申請者は、この材料の特徴を有効に生かした3自由度球面モータを開発した。モータは、従来にはないシンプルで小型、低電圧駆動を特徴とする実用的なもので、鉄ガリウム合金のU字コアの伸縮(X,Y)と屈曲変形(Z)をトルクとして利用することで球ロータの3軸回転を実現させた。本モータは産業・医療用、災害現場で使用される内視鏡の先端CCDカメラの姿勢制御や、マイクロロボットの関節駆動等に利用され、低侵襲医療、配管検査、災害現場の人命探査作業等の技術の向上に大きく寄与することが期待される。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。鉄ガリウム系磁歪材料を駆動源に用いて低電圧駆動・小型で3軸回転可能な小型球面モータを実現した。開発されたモータは実用的な保持力と回転速度を実現し、CCDカメラを搭載し医療機器等への応用が期待される。また、ノートPCのUSB電源を駆動源とする可能性を示した。今後、医療、産業、災害等の様々な分野への利用に応じたさらなる小型、高トルクモータの開発が期待される。
プローブカード応用に向けた半導体歪み立体機能構造の技術開発北陸先端科学技術大学院大学山田省二本研究では、半導体多層構造を出発材料とし歪み駆動プロセスにより作製する様々なサイズの半円弧型微小カンチレバーについて、次の2点の検討・開発目標を立てた。カンチレバーの表面配線と脆性補強のための(多層)金属被覆、微小カンチレバーの弾性・脆性評価研究終了時においては、a)では限定的な検討、即ちAuの極薄被覆のみの試行、に留まったものの、b)については、通常の原子間力顕微鏡におけるフォースカーブ特性測定法を活用し、特に超微細な半円弧型カンチレバーに対する弾性評価の方法をほぼ確立できた。 今後は、a)についての系統的な検討に加え、b)の評価法の脆性評価法への発展等に関しさらに検討を進め、半円弧型カンチレバーのコンタクタへの応用に目処をつける。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。半導体多層構造を出発材料とし,紫外光リソグラフィと犠牲層エッチングにて、歪み駆動プロセス半円弧型微小カンチレバーを作製する。2層被覆は実現しなかったが、Au結晶成長による単層被覆によってカンチレバーの曲率コントロールを可能剛性のコントロールが可能であることを示した。AFMを用いた、カンチレバーの剛さ定数の測定も達成できた。残された課題も多いが次ステップへの進展が期待される。
寒冷地防火水槽融雪システムに用いる新型ヒートパイプBACHの熱輸送能力と設計条件把握福井大学永井二郎新型ヒートパイプBACHを用いる防火水槽融雪システムは、福井県内での作動確認と設計条件把握済みである。本研究開発では、本システムをより寒冷・多雪地域に設置した場合に必要となるBACHの熱輸送能力を数値計算により検討し、それを実現するBACHの設計条件を実験的に把握することを目標とした。まず数値計算については、寒冷・多雪地域の気象データを用いた温度場数値計算を実施しようとしたが、バグ等の不具合が発生し計算ができず目標は達成できなかった。一方実験に関しては、気泡生成部の数や作動液量が熱輸送能力に及ぼす影響を実験的に把握し・定式化できた。今後、計算プログラムの改良と必要熱輸送能力定式化を目指す。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。新型ヒートパイプBACHにおける熱輸送特性を実験的に検討し、ほぼ実験目的を達成した。しかし他の目標である、数値計算を実施できなかった。数値計算については、寒冷・多雪地域の気象データを用いた温度場数値計算を実施しようとしたが、バグ等の不具合が発生したのが原因である。今後、気象条件等を用いた数値計算の実施を進め、実際への適用を図ることを期待する。
窒化物半導体のMOCVD成長のためのNH3分解触媒内蔵反応管の開発福井大学山本あき勇申請者は、窒化物半導体のMOCVD成長においてPtなどの白金属元素をNH3分解触媒として用いることにより、高品質InN結晶の実現、低炭素汚染GaN結晶の実現など、顕著な効果が得られることを見出した。本研究では、このような効果を最大限発揮できる反応管を開発するために、NH3分解触媒温度を基板温度とは独立に制御でき、かつ、反応性が著しく高いNH3分解種(NH2、NHなど)と有機金属ガスの混合を緩やかに行うことができる構造の反応管の開発について検討した。その結果、ほぼ期待どおりの反応管が開発でき、サファイア基板上に成長させたInN膜(厚さ0.1μm)において、X線ロッキングカーブ半値幅360arcsecという、目標値を大きく凌駕する結果を得た。今後、触媒温度等の最適化により、残留キャリア濃度1x10^18cm-3以下、電子移動度1500cm2/Vs以上のInN成長の実現を目指す。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。窒化物半導体のMOCVD成長において、Ptなどの白金属元素をNH3分解触媒として用いることにより、低温で高品質なInN結晶や、低炭素汚染GaN結晶の実現など、顕著な効果が得られた。さらにこの効果を最大限発揮できる反応管の開発を行った。構造等を検討し、試作した結果、サファイア基板上に成長させたInN膜において、X線の半値幅で、目標値を大きく上回る結果を得た。今後、成長温度の低下により窒化物半導体産業への寄与は大きいと考えられる。
200 kW級ミリ波・100 kW級サブミリ波パルス電磁波源の実用化への展開福井大学斉藤輝雄本課題では、周波数約200 GHz(波長約1.5 mm)において200 kW級の出力、周波数約400 GHz(波長約0.75 mm)において100 kW級の出力をもち、数μsから数10μsのパルス幅で数10 Hzから数100 Hz以上の高繰り返しが可能な短波長ミリ波・サブミリ波パルス電磁波源の実用化への展開を探求した。その結果、200 GHz帯で145 kW、400 GHz帯で62 kWの最高出力を得た。実験データの分析に基づいて発振の最適化計算を行い、200 GHz帯で200 kW以上、400 GHz帯で100 kW以上の出力を得るための明確な方針を立てた。電源の強化により、目標達成は可能である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。200 GHz帯200 kW、400 GHz帯100 kWの目標に到達していないが、得られた結果はミリ波・サブミリ波帯ジャイロトロンとしてこれまでにない高出力である。原因や解決策が明確になっているので、研究の継続による解決が望まれる。
半導体表面からのテラヘルツ波放射の高効率化福井大学谷正彦本研究の目的はInSbの顕著な磁場効果、表面結合レンズ、および非対称励起を同時に用いて、1.55μm帯のフェムト秒ファイバーレーザー励起による高効率のTHz波放射を実現することである。磁場やその他の手法を用いない場合と比較して、THz波放射を振幅で約100倍、パワーで10,000倍増強させることを目指す。また出力の絶対値としては、レーザー平均パワー100mWで励起時にTHz波パワー1μW以上(800nm帯フェムト秒レーザーによる光伝導アンテナ出力と同等以上)を目指す。この手法は特殊な半導体基板および微細な素子作成技術を必要とせず、市販のネオジウム系磁石、簡単な表面結合レンズ(Si半球レンズ等)を使用するため、他の手法と比べて安価かつ簡便である。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。InSbの顕著な磁場効果、表面結合レンズ、および非対称励起を同時に用いて、1.55mm帯のフェムト秒ファイバーレーザー励起による高効率のテラヘルツ波放射を実現することである。テラヘルツ放射波の振幅は、約80倍が得られ、ほぼ目標を達成した。半球レンズの光学配置の最適化、Siレンズの置き換えで改善効果が得らる可能性がある事から、継続した研究による進展が期待される。
複合歯科応用の為の低コスト・ポータブル・短パルスCO2レーザーの開発山梨大学宇野和行本研究開発では、1台の装置で全ての歯科治療(予防歯科、硬組織切削、軟組織切開、止血)を可能とする為の最もシンプルな短パルスCO2レーザーの開発を行った。高電圧スイッチレス回路による軸方向放電励起CO2レーザーにおいて、レーザー管と励起回路に依存する出力特性を測定した。その結果、当初の目標であった尖頭パルスエネルギー1 mJを得ることができた。しかし、パルス全体の出力エネルギーは9.9 mJと低いものであった。今後は、本研究開発得られた結果を基にした回路解析と回路改善による短パルス・高出力化の研究とウシの歯牙への集光照射・切削実験を行い歯科治療器の開発を目指す予定である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。1台の装置で全ての歯科治療(予防歯科、硬組織切削、軟組織切開、止血)を可能とする短パルスCO2レーザーの開発を目的に、高電圧スイッチレス回路による軸方向放電励起CO2レーザーにおいて、レーザー管と励起回路に依存する出力特性の測定を行った。その結果、目標であるパルスエネルギーを得ることができた。明確なロードマップがあるので、基本特許を出願して、企業と共同研究を進めて行くことが望まれる。
4G携帯電話用SAWデバイスを実現する高速・低損失基板構造の開発山梨大学垣尾省司Xカット36°Y伝搬LiNbO3上を高速で伝搬する縦波型リーキー表面波の低損失化を目標として、基板表層に逆プロトン交換層を形成してプロトン交換層を基板内部に埋め込んだ基板構造を適用し、その伝搬特性を実験的に検討した。提案構造を形成すると、基板の圧電性がほぼ保持された状態で、バルク波放射に起因する損失が減少し、その伝搬特性や共振特性が格段に向上することを発見した。例えば、電極波長3.6μm、対数100、反射器50本の共振子の共振/反共振のアドミタンス比が、提案構造の形成によって7dBから28dBに増大した。今後は、4G携帯電話用フィルタへの応用を推し進める。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。4GHz携帯電話用フィルタへの応用をめざし、LiNbO3上を高速で伝搬する縦波型リーキー表面波の低損失化を目標としている。改善すべき点はあるが、明確にされており、当初の目標を概ね達成している。今後の技術移転に向けて、企業との打合せも予定されており、次世代携帯電話向け高周波フィルタへの適用が期待される。
操作性を考慮した小型無人ヘリコプタの遠隔制御システムの開発山梨大学大原伸介小型無人ヘリコプタはホバリング、垂直上昇等の低速度飛行が可能であり、かつ持ち運びが容易であることから、農薬散布、災害地域の情報収集などへの応用が期待されている。本研究の目的はオペレータの負荷低減を可能にする小型無人ヘリコプタの遠隔制御システムである。ここでは画像処理に基づいた小型ヘリコプタの位置推定システムや小型無人ヘリコプタに搭載したカメラから得られた画像のブレを抑制する画像表示システムを開発した。当初目標とした成果が得られていないように見受けられる。今後、技術移転へつなげるには、今回得られた成果を基にして研究開発内容を再検討することが必要である。ジャイロやGPSなどを搭載することなく、2個の小型カメラを用いて、無人小型ヘリコプタの位置と姿勢を確認し遠隔操作するシステムを開発することを目的とした。カメラのブレによる画像ブレを抑制する技術の開発、カメラ画像による位置推定を行った。しかし、目標とした通信遅れを考慮した制御、リファランスガバナーを用いた遠隔制御システムの開発にはいたらなかった。当初の目標を達成後に、次のステップに進展することが望まれる。
CSP RF-ICモジュール用磁性薄膜インダクタの開発信州大学曽根原誠研究開発を研究責任者が総括(目標、その達成度、今後の展開)してください。本内容は事後評価結果としてホームページ等で公開します。知的財産に十分注意しつつ、300字程度で簡潔にまとめてください。 本研究は、情報通信機器におけるRF回路用スパイラル型磁性薄膜インダクタに関するもので、磁性薄膜内の磁気モーメントを導体線路に対し膜面内方向で45 deg傾けて設計する点が特徴である。導体線路全体で磁性薄膜の透磁率を利用でき、インダクタンスを空心インダクタに対し4倍以上高め、かつ導体線路からの漏洩磁束によるクロストークノイズを95%以下に低減できるとした。作製・評価の結果、前者は約1.4倍、後者は約50%に止まり目標には達しなかったが、GHz帯でQ値が世界トップクラスの16を得た。目標値に達しなかった理由は既に明らかになっており、現在新構造の検討を行なっている。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。情報通信機器におけるRF回路用スパイラル型磁性薄膜インダクタに関するもので、磁性薄膜内の磁気モーメントを導体線路の配置を工夫し、インダクタンスを空心インダクタに対し4倍以上高め、導体線路からの漏洩磁束によるクロストークノイズを95%以下に低減できるとした。GHz帯でQ値が世界トップクラスの16を得た。本研究の成果は、次世代無線通信機器の小型・高性能化において、大きな社会還元となる。
右手/左手系複合差動伝送線路による薄膜コモンモードフィルタ長野工業高等専門学校中山英俊数GHz帯の情報通信機器を対象としたコモンモードフィルタの開発を目的とし、右手/左手系複合差動伝送線路原理に基づく薄膜デバイスの研究開発を行った。目標仕様は、数GHz帯で差動信号伝送損失が1dB以内、同相ノイズ減衰量が20dB以上で、10mm角程度以下に小型化することである。本研究開発により設計したデバイスは、4ユニットセル(約2×4mm2サイズ)で同相ノイズ減衰量20dBが得られ、大幅な小型化が図れた。一方、差動信号伝送損失は7dB程度と大きな結果となった。損失の主因は線路抵抗成分であり、線路断面積拡大や線路長短縮の必要性が明らかとなった。今後、インダクタ要素の小型化・低損失化が実用化の要点であり、磁性薄膜の適用などの対策が課題である。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。数GHz帯の情報通信機器を対象としたコモンモードフィルタの開発を目的として、右手/左手系複合差動伝送線路原理に基づき薄膜デバイス化の研究開発を行った。興味深い研究であるが、装置の故障によりデバイス試作が未完了である。引き続きデバイスの試作を実施して装置を完成させ、伝送特性の評価をすることが望まれる。
地域生活交通導入・再編計画支援システムの開発岐阜大学倉内文孝本研究では、先行研究で構築したDRT導入計画支援システムを発展させ、地域生活交通導入再編計画支援システムを構築することを目指し検討を進めた。まず、生活交通サービスの持つ多様な機能を評価するための指標を文献調査により整理した。これらの知見に基づき、岐阜県美濃市におけるコミュニティバスサービスデータを用い、生活交通サービスの導入効果を議論可能な支援システムの構築を行った。システムの有用性を検証するために、料金施策による効果、新規バス停設置に伴う路線変更にかかわる効果、そしてデマンド運行にかかわる効果に関して検討を行い、構築したシステムを用いることでこれらの検討が可能であることを示した。今後は、構築したすべての機能がGIS上で容易に処理可能なソフトウェアパッケージ化をめざす。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。デマンド応答型交通システム(DRT)を用いて地域コミュニティーにおけるバス運行の最適化を目的として、実態調査をふまえて、運営変更した場合の数値変化等を視覚的に示すことにより、乗客需要予測モデルを定量的を示すことができた。今後は導入効果の信頼性を含めて検証し、公共交通導入に対する支援システムとして、活用されることが期待される。
光ファイバと超音波技術を用いた超高感度3Dタッチトリガープローブシステム静岡大学大岩孝彰本課題は三次元座標測定機や歯形測定機などに用いられるタッチトリガープローブの性能向上に関する。まず光ファイバ変位計の原理を用いたタッチプローブの高性能化のために、光ファイバを微小径化して超高感度化を達成した。次に過度の外力が作用した際の破損を防止するオーバトラベル機構の性能向上に取り組んだ。本課題では、オーバトラベル機構の運動の自由度を点拘束しているキネマティックジョイントの摩擦を低減し位置決め再現性を向上させるために、超音波振動による摩擦低減技術を用いる。試作実験の結果、XYZ方向の位置決め誤差が60%低減した。以上の二つの技術を組み合わせることにより、技術移転の可能性が見出せた。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。接触式座標測定器の精度向上について、タッチトリガーの光ファイバー変位計の感度向上、測定物に接触時のオーバートラベル機構の工夫の両面から検討した。結果、1)極細・高屈折率光ファイバーにより、8倍の高感度化を達成。2)ジョイント部の超音波加振により摩擦の影響を低減して大幅な再現性の向上を実現できた。今後は、今回明らかになった課題の克服、コスト、操作性の検討等を実施し、技術移転にいたることが期待される。
絞りと試料の位置調整に電子顕微鏡内駆動機構を用いた電子顕微鏡の開発浜松医科大学村中祥悟従来の電子顕微鏡では鏡筒に多くの貫通口をOリングで封じる構造によって絞りや試料を移動する構造であるため、真空度と解像度に限界を生じている。電子顕微鏡の試料と可動絞りの移動にピエゾアクチュエータを用いた位置移動用駆動機構を開発し、駆動機構、制御電源、制御ソフトによって実機性能検証で、操作可能な最小移動ステップ500nm 以下、最大移動スピード100μm/sec以上,移動停止直後から一定時間毎のドリフト量100nm/h 以下を達成する。開発装置は電子顕微鏡像に影響を与えることなく、平滑に駆動し、かつ目標値を達成する精度を得て目標を達成している。今回、透過型、走査型の各一機種でコントローラーとの接続および試料交換時の着脱装置を製作し、性能検証と耐久試験を試みた。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。電子顕微鏡の試料と可動絞りの移動にピエゾアクチュエータを用いた位置移動用駆動機構を開発した。開発装置は電子顕微鏡像に影響を与えることなく、平滑に駆動し、かつ目標値とする精度を達成した。操作可能な最小移動ステップ500nm 以下、最大移動スピード100μm/sec以上、移動停止直後から一定時間毎のドリフト量100nm/h 以下であった。今後は、メーカとの連携により技術移転することが期待される。
スマートワッシャによるボルト緩み評価診断システムの開発愛知工業大学奥川雅之現在、機械構造物におけるボルト締結部の検査は、検査者が軸力計等の計測器を現場に持ち込み、ボルト毎に実施されている。本研究では、自己励振および測定が可能なスマートワッシャを予めボルト締結部に組み込み、遠隔地からの定期的な緩み評価診断を実現するシステムの構築を目指している。本研究課題では、スマートワッシャを実環境で利用するための電源供給方法の確立を目標とし、省電力を目指したデータ収集システムの検討と圧電振動発電システムの構築を行った。加振器を利用し、圧電振動発電実験を行った結果、最大150μWの充電を確認することができた。しかし、マイコン駆動に必要な電力としては不十分であるため、2次電池への充電や太陽光発電との併用などを検討する必要があることが確認された。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。ボルト締結部の緩みを自己診断するワッシャー(スマートワッシャー)の開発において、外部使用する場合の必要電力を明らかにした。ボルト締め付け部の圧電振動発電を利用することを検討したが、電力量の確保には、改良が必要である。また、計画したデータ収集システムの実装化検討は達成できなかた。技術移転には、太陽光を含めた電力供給法の解決、多数データのモニタリング収集方法の確立等の課題の解決が望まれる。
食品中のトランス脂肪酸をワンステップ操作で迅速定量できる新規実用計測装置の開発中部大学石田康行抽出や誘導体化などの操作を瞬時(1秒以内)に達成し得る化学反応場を採用した分析システムの構築を通じて、食品中に含まれるトランス脂肪酸成分を迅速かつ簡便に解析することを可能にした。まず、トランス脂肪酸分析に適した化学反応場を創製し、従来、詳細な分析が困難であったトランス脂肪酸を、高精度に定量する計測システムを開発した。さらに、この方法を天ぷら油やマーガリンなどの食品試料の分析に応用したところ、それらの試料中に含まれるトランス脂肪酸を、煩雑な試料前処理操作を一切行わずに25分程度の短時間(エライジン酸測定の場合)でワンステップ分析することができた。今後、化学反応場におけるトランス脂肪酸成分の異性化反応をより一層低減することにより、食品中の当該成分の精密計測法として本システムを実機化することを展望している。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。マーガリンなどの食品中に含まれる有害なトランス脂肪酸を迅速、正確に測定するシステムの開発に成功した。研究は、新しい反応試薬の選定、反応温度、試薬濃度などのパラメータおよび装置デザインの最適化、分析精度および再現性の確認をおこない、ほぼ目標とする計画を達成できた。今後は、従来法とのクロスチェック、測定標準偏差のさらなる向上等の残された課題の検討を経て早期の技術移転が期待される。
液晶-高分子のメゾ相分離制御による熱応答型日射制御窓材の大面積化独立行政法人産業技術総合研究所垣内田洋熱応答型の日射制御窓材への応用に向けて開発してきた液晶-高分子のメゾ相分離複合材料は、光学異方性の高分子相の中に配向した液晶分子の凝集滴が数百ナノから数ミクロン程度のサイズで分散し、それら液晶分子の配向転移現象を利用して、熱可逆的に光透過-散乱状態を切り換えることができる。本研究では、この素子の日射透過率の制御幅を50%程度まで向上させた。また、大面積化する際の障害となる調光性能の面内不均一性を、露光条件や化学組成の最適化を図ることで抑制し、本タイプの素子では初めて150×150mm角の大面積化を実現した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。日射制御窓材への応用に向けて、熱応答型の液晶-高分子のメゾ相分離複合材料を開発し、性能を評価した。本研究の重要部分である調光素子の大面積化、日射透過率の制御幅の向上は達成できている。技術移転のためには、調光素子の大面積化への課題解決、プラスチック基板での作製技術の開発等の課題が残っているが、特許出願も予定されており、技術移転に繋がる可能性を示す成果が得られている。
光ナノインプリントによるプラズモンフォーカシングラマンセンサーの開発豊橋技術科学大学山口堅三プラズモン共鳴を利用したバイオセンサーの研究開発が盛んに行われている中、高感度検出が可能なフォーカシング機能を有した構造を提案し、プラズモンフォーカシングラマンセンサーの開発を目標とした。まず、数値計算により、金属膜厚やフォーカシング径、ホール周期間隔の最適条件を決定した。次に、集束イオンビームを用い、最適条件下のプラズモンフォーカシングラマンセンサーのプロトタイプ作製に成功した。最後に、作製したセンサーの光学特性を検討した結果、数値計算とよく一致し、既存センサーの一万倍の感度を示した。以上のことから、本研究開発で作製したセンサーは非常に有用であることを見出した。今後の展開では、実用化を見据えた光ナノインプリント法によるプラズモンフォーカシングラマンセンサーの開発に取り組む。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。プラズモン共鳴を利用したバイオセンサーにおいて、高感度検出が可能なプラズモンフォーカシングラマンセンサーの開発を目標とした。数値計算により、最適条件を決定後、集束イオンビームを用い、既存センサーの10,000倍の感度を示すプロトタイプ作製に成功した。技術移転のためには、今回実施できなっかた光ナノインプリント法による作成が必要と考えられ、今後の開発が望まれる。
高密度実装基板を実現する高品位・高能率マイクロ穴加工技術の開発豊橋技術科学大学柴田隆行本研究では、中空構造を有するマイクロニードルアレイ工具に用いた熱インプリント応用技術によって、樹脂フィルムに高品位・高精度なスルーホール(貫通穴)を極めて高能率に形成できる新規なマイクロ穴加工技術の開発を目的として実施した。その結果、ポリイミドフィルムへ最小直径10μm程度の貫通穴加工が可能であり、かつバリやカケなどの加工欠陥を生じない高品質な穴加工を高能率に実現できることを実証した。さらに、工具としての耐久性を向上させるために、高強度・高靭性に優れたニッケル(Ni)製マイクロニードルアレイ工具の作製プロセスを確立し、外径30μm程度(肉厚4μm、長さ100μm以上)のアレイ工具を開発した。これによって、本提案技術の実用化の可能性が大きく前進した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ポリイミドフィルムに貫通穴をあけるためのNi製のマイクロニードルアレー工具をMEMS技術で開発した。目標である直径10μmを実現できなかったが、直径60μmで実現した。SiO2で同様の、穴加工荷重変動測定機能付き加工機を開発し直径10μmの加工中の荷重変動を測定したことは、加工精度等の改善につながる。また、異形形状の加工の可能性を実証した。今回確立した技術をもとに明らかになった課題の解決を行い量産実用化につながる技術移転が期待される。
スマートグリッド構想における送電損失最小化制御名古屋工業大学竹下隆晴電力配電系統の送電損失低減のために、電力需要家の力率改善コンデンサを用いた自動力率調整装置を導入して無効電力を零に、すなわち受電力率を1に調整している。しかしながら、自動力率調整装置が導入されている需要家の割合は50%以下であり、十分な損失低減ができていない。本申請では、自動力率調整装置が導入されていない需要家を含めた送電損失最小化の無効電力制御法を提案する。スマートグリッド構想により得られる配電系統内各所の線路電流情報を用いて、配電系統内の送電損失を最小化する無効電力制御法を導出し、配電モデルを用いた実験によりその有効性を確認している。今後、複数の無効電力補償装置の連携制御へと発展させ、実用化を目指す。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。電力の送電損失最小化のために、自動力率調整装置が導入されていない設備を対象に、力率改善コンデンサによる線路損失最小化制御の計算とテストを行った。約16 %という大きな損失低減を実現しており、有効性が確認された。次ステップについては複数の無効電力制御装置導入の場合の連携制御という目標が定められている。本研究は送電損失の低減をもたらすもので、社会的に大きな意義を有しており、研究の進展が望まれる。
流体温度場の可視化計測法「流体温度場スキャナ」の開発名古屋工業大学田川正人本研究の目的は、エアコンや自動車など各種機器から排出される空気の温度分布を簡便かつ定量的に可視化できる計測技術を開発することである。流体温度の可視化法として高出力レーザや超音波を用いる高度な計測法があるが、一般に装置が大規模かつ高価であり、運用には相当の専門知識を要する。また、適用できる対象や場所が非常に限定されるために、ほとんどが研究用である。本研究では、申請者らが長年培ってきた「細線温度センサの適応応答補償法」に「プローブ位置の画像計測」という異種技術を融合させる。これにより、安全で取り扱い容易、かつ適用範囲の広い流体温度場の可視化法を実現し、「流体温度場スキャナ」とよぶ新技術を開発する。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。エアコンや自動車などから排出される流体空気の温度分布の簡便な測定法を実現した。細線温度センサを用いて応答遅れの補正を、「適応応答補正法」、プローブ位置の計測をCCDカメラを用いた「画像計測」で行い、両者を組み合わせることにより、温度分布の可視化に成功した。今後は、具体的なニーズ調査に基づいた実用化検討、3次元の可視化への研究の発展が期待される。
焼結法と遠心鋳造を併用した新規傾斜機能砥石の開発名古屋工業大学渡邉義見研究代表者は、微細粒子粉末が複合化された微細粒子複合材料の製造方法(特願2007-132127)を発明した。混合粉末に遠心力を印加し、さらに溶湯を注入することで、傾斜機能材料を製造するというものである。混合粉末が溶湯により流されるという問題点が生じたが、混合粉末を仮焼結すれば解決出来ると考えている。本研究ではこの可能性を調査し、来年度には製品開発にまで発展させる。この目的のため、遊休装置を名工大に譲り受け、真空遠心焼結装置に改造する。この装置を用いて混合粒子の遠心力場での仮焼結を行い、プリフォームとする。そのプリフォームに、今度は溶湯と注入し遠心鋳造を行い、リング形状の外周部のみに砥粒の傾斜分散したメタルボンド傾斜機能砥石を製造する。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。混合粉末に遠心力を印加し、さらに溶湯を注入することで、傾斜機能材料を製造することを目的とする。装置の移設、改造を実施し、純Alおよび微細ダイヤモンド粉末を利用して、遠心力場において加熱し、仮焼結ができることを確認している。しかし、目的とした銅合金を母相とした傾斜機能材料の作成と特性評価にはいたらなかった。今後の製品加工への展開が期待される。 
カーボンナノチューブと金属の傾斜接合技術の創製名古屋大学安坂幸師カーボンナノチューブ(CNT)電子デバイスの実用化には、CNTを金属へコンタクト抵抗を低減させて接合する技術が必要不可欠である。本課題では、CNT先端を金属表面へジュール加熱により直接良導電性接合するための要素技術を創製することを目標とした。CNTと金属の接合過程を原子構造観察と同時に電流-電圧測定できるその場透過電子顕微鏡法により明らかにした。CNT先端と接触している電極金属の表面をジュール加熱によりナノサイズの局所領域だけを溶融させ、CNT先端と金属を直接接合させることに成功した。この接合によりCNTと金属の界面におけるコンタクト抵抗を半分程度に低減できることを見出した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。CNTを金属(Au)表面に接触させ、電流を印加させることによって、直接金属と接合することに成功した。接合工程はTEMを用いて連続的にその場観察し、ジュール熱による金属の溶解が生じていることを確認した。その結果、CNTと金属とのコンタクト抵抗を50%低減することを確認したが、詳細な特性評価までは実施できなかった。今後は、マイクロデバイスへの適用に向けて、界面の構造安定性、特性評価、他金属への応用等の研究の発展が望まれる。
反応・相転移協同現象による自己集積型微細バンプ形成法の開発名古屋大学安田清和電子デバイスやMEMSデバイス等の実装に採用される高密度電子回路基板上アレイ状電極への微細金属バンプ形成を実現するために、可融金属微粒子を含有する機能性ペーストの相転移・協同現象により、微細金属バンプ配列構造を自己集積的に形成する新規な材料プロセスの開発を目標に実験的に検討した結果、加熱温度、金属微粒子の体積含有率ならびに樹脂活性特性の差違などのパラメータがバンプ形成の現象に及ぼす影響を評価し適正化の指針を得た。可融金属微粒子の溶融、合一、基板上の金属ランド表面上への濡れの迅速化・形成率向上が加熱温度により制御できること、気泡低減がバンプの均質化のために必要なことを明確化した。これらの知見より、樹脂特性の適正選択により従来法に比べて低コストかつ高効率な電子デバイス等の外部微細電極形成の展開が可能である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。マイクロデバイスのバンプ(端子)の形成に可融金属微粒子を含有する機能性ペーストの相転移・協同現象により、自己集積的に形成するプロセスの開発を目標とし、粒子分散・凝集・ぬれ特性適正化 、樹脂活性による表面張力制御について検討し、400μmピッチにおいて目標とするバンプ形成率98%を達成した。技術移転に向けては、さらなる狭ピッチでのバンプ形成に向けての研究の発展が望まれる。 
感温塗料を用いた物体表面温度分布の簡易計測技術の開発名古屋大学寺島修感温塗料を用いた物体表面温度分布の簡易計測技術を開発した。市販の一眼レフデジタルカメラとLED光源、データ処理用のモバイルパソコンを組み合わせ、システム全体の価格を50万円以下(約49.5万円)、システムの総重量を5kg以下として汎用性、可搬性を高めたシステムを構築した。また、市販のルテニウムやエタノールを利用して安価な感温塗料を調合して計測時のコスト低減を実現した。さらに、アルミニウム片を対象とした検証実験により、温度計測の空間分解能が100μm以下(最小50μm)であることを確認した。今後は引き続き水中の物体の温度計測技術の向上を果たしていく予定である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。感温塗料を用いた物体表面温度分布の簡易計測技術を開発した。サーモグラフィより安価でポータビリティに優れる温度計測システムを構築するという目標をほぼ達成した。計測時の空間分解能が0.05mmを実現した。今後は、具体的なユーザとの連携による研究の進展が望まれる。
三次元ナノ露光による毛細血管モデルの三次元加工名古屋大学新井史人本研究では3次元の毛細血管ネットワークを有する循環型血管シミュレータの実現を目指し、3次元形状の毛細血管モデルの加工に挑戦した。大径流路作製には、(1)マスクアライナを用いた通常のフォトリソグラフィー、数μmオーダー流路作製には、(2)フェムト秒レーザを用いた二光子吸収露光を併用する新露光法Femtosecond Laser and Mask Hybrid Exposure: FMExを提案し、循環型三次元毛細血管シミュレータを製作し、方法論としての有効性を示した。今後、複雑な分岐構造を再現できるよう加工精度を向上し、血管シミュレータをより精密化することで、医療デバイスの評価、DDS、動物実験代替システムなどに使用する次世代血管シミュレータや、再生医療分野で使用する三次元細胞接着足場などに応用展開できると考えている。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。手術の事前検討に用いるための、3次元毛細血管シミュレータの加工技術を開発において、三次元ナノ露光装置の構築、三次元ナノ露光装置の評価をおこない、分岐構造を有する三次元毛細血管モデルの試作に成功した。技術課題も明らかになっているので、企業との連携も考慮した今後の研究の発展が期待される。
ノンフロンヒートポンプ性能評価シミュレーターの開発検証名古屋大学長谷川達也本研究では、ノンフロン冷媒(プロパン、ブタン、二酸化炭素)に対応した流体解析モデル、冷媒物性を組み込んだノンフロンヒートポンプシミュレーターを開発することを目標とする。まず、ノンフロン冷媒の流体解析モデルを新たに構築し、ノンフロン冷媒を用いたヒートポンプの設計を行った。次に、ノンフロン冷媒を用いるヒートポンプ試験機を新たに製作し、実験で得られる性能及びサイクルと、同条件で行ったノンフロンヒートポンプシミュレーターの予測を比較し、シミュレーターの精度検証を行った。その結果、給湯能力およびCOPが20%程度以内で予測可能であることが実証された。今後はさらなるシミュレーション精度の向上を図り、実用化へとつなげる。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ノンフロン冷媒(二酸化炭素など)に対応した流体解析モデル、冷媒物性を組み込んだノンフロンヒートポンプシミュレーターを開発した。開発したシミュレーターを用いて給湯能力を設定して二酸化炭素を冷媒とするヒートポンプの設計、試作を行い、シミュレータの性能予測精度が20%以内であることが、確認された。精度の向上と燃焼式ボイラー代替としての二酸化炭素ヒートポンプの実用化を目指した研究開発が望まれる。
近似直線運動機構に基づく構造物の振動制御技術名古屋大学田川浩本研究では、構造物の地震応答を軽減するために、近似直線運動機構を考慮して制振部材を配置した、新しい制振技術を開発することを目的としている。提案制振構造ではブレース部材に鋼棒を使用できる。これまで小規模な骨組モデルを用いて検討していたが、本研究では3層3スパン骨組や12層6スパン骨組などの地震応答解析を通じて規模が異なる骨組に対する制振効果を明らかにした。また、十分な制振効果を発揮するために必要なダンパー量、地震動の特性や制振装置の寸法が制振効果に及ぼす影響を明らかにした。今後の展開としては立体的な挙動を考慮して制振効果を明らかにすることが挙げられる。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。構造物の地震応答を軽減するために、近似直線運動機構を考慮した新しい制振技術を開発することを目的とする。提案制振構造ではブレース部材に鋼棒を使用できるのが特長である。解析精度の把握、静的解析と地震応答解析による挙動分析、ダンパー設計法の構築について、当初の目標を達成した。本技術が、既存建物の耐震補強技術となれば、技術移転につながる可能性は高い。
電子線を用いた太陽電池セルの品質評価法の開発名古屋大学田中成泰セル化した多結晶シリコンの欠陥は太陽電池の効率低下の要因となるもので欠陥の可視化による正確な検査をおこなうことは急務である。このような背景のもと開発の現場でルーチンワークとして用いることができる太陽電池セルの評価技術の開発を進めた。走査型透過電子顕微鏡の付加装置として開発を進め、当初目標の試料サイズ 5cm×5cm、空間分解能50μmを達成することができた。試料の取り付けには改善の余地があるが、真空中に入れてしまえば10分以内に像が得られるようになり、目標どおりの迅速な観察ができるようになった。今後は、本手法を改良してさらに精度よく可視化する方法の開発を進めるとともに、太陽電池セルメーカーや電子顕微鏡製造メーカーに本手法をアピールしていきたい。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。多結晶シリコンの効率低下の要因となる欠陥を可視化する検査方法を確立するために、走査型透過電子顕微鏡の試料台等の改良を行い、目標の試料サイズ 5cm×5cm、空間分解能50μmを達成した。スループットや試料の取り付けには改善の余地があるが、欠陥評価による太陽電池用材料の性能向上には定量性が求められることから、今後の展開すが期待される。
大規模屋外危険物貯蔵タンクの新しい健全性評価手法の開発三重大学大山航大規模屋外危険物貯蔵タンクの健全性評価システムの構築を目指し、その基礎技術であるタンク底板の厚みを計測する超音波計測技術の適用可能性の検討を行った。石油タンク内に超音波板厚測定機を投入し、タンク内に液を満たしたままタンク底板の厚みを測定し健全性を評価する新規なシステムへ向けてのコンセプトの確認を行うための実験を行った。実験の結果、タンク内容物によっては超音波の減衰が強くなるため、より強力な超音波パルスを打ち出すことができる探触子を用いる必要があることが分かった。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。タンク底板の厚みを計測するため、超音波計測技術による適用可能性の検討を行った。石油の入ったアクリルの容器に鋼材を入れてテストを行った。標準的な厚みである4.5mmの鋼材に対して、±0.5mmの精度で計測可能であることが確認できた。液の種類や液量による影響についてまだ十分なデータがとられていない。今後多くデータを蓄積して、実用化へ近付くことが期待される。
高効率高出力なワイドバンドギャップ半導体デバイスの基板材料の残留応力および熱伝導率に対するクロスニコル像を用いた簡易評価技術開発滋賀県立大学竹内日出雄ワイドバンドギャップ半導体材料の残留応力および熱伝導率・熱膨張率等の熱物性評価に対して、量産ラインでも適用できる偏光クロスニコル像を用いた定性的簡易評価技術開発を行った。直線偏光板を用いるのではなく、左・右円偏光板をクロスニコル配置するという工夫を行うことにより、アイソジャイアと呼ばれるゴースト像を消去することに成功し(円偏光クロスニコル像)、残留応力・歪の可視化を達成した。かつこれらの物性が熱膨張率のウェハ内分布に影響を与えることを明らかにした。よって当初目的をほぼ達成したと結論される。今後の展開としては、今回得られた円偏光クロスニコル像が他の物性とどのような相関があるのかを調査するとともに、その結果を踏まえ技術移転を目指した産学共同等の研究開発ステップを目指す。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ワイドバンドギャップ半導体材料(SiC,GaN)の残留応力および熱伝導率・熱膨張率等の熱物性評価において、本研究で開発された円偏向クロスニコル法は、既存技術に対して測定時間・空間的測定領域・検出感度において共に優位性を有しており、期待以上の成果が得られている。円偏光クロスニコル像測定法は、安価で簡便な現場測定法として期待でき、企業化の可能性が高いと思われる。
立体的な形状部を有する強磁性材に発生する欠陥の定量評価が可能な渦電流探傷システムの開発滋賀県立大学福岡克弘立体的な形状をした運輸機械の構成部品を探傷することが可能な、渦電流探傷プローブの開発を検討した。運輸機械構造部材の大部分は強磁性の鉄鋼材であるため、強磁性体を渦電流探傷した場合は強磁性体内の磁気特性のバラつきから生じる磁性ノイズが問題となる。そこで、渦電流探傷装置に直流磁化装置を組み込み、強磁性体である鉄鋼材を探傷可能な渦電流プローブの開発および立体形状部における探傷システムの確立を検討した。 プローブは一様渦電流プローブを採用することにより、探傷信号から傷の長さを正確にサイジングすることが可能となった。また、検出コイルを差動にすることにより、さらなるS/Nの向上と、リフトオフノイズの削減を確認することができた。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。立体構造を有する強磁性体構造物の欠陥を渦電流探傷試験で検出する装置の開発において、プローブ適応性、強磁性体の探傷による検出信号のノイズ・表皮深さなどの実施目標が達成された。磁化により材料透磁率のバラつきがなく、ノイズが減少してS/N比が向上、極微小傷も探傷信号が得られる等、当初の目標値を大幅に越える極微小傷に関して検出可能なことが判った。今後は、企業の現場での課題を想定した検出可能範囲の検証等を通じての早期の技術移転が期待される。
高温環境下におけるマイクロ構造体の高精度力学特性計測技術の開発立命館大学安藤妙子研究課題では、マイクロ構造体を対象として力学特性の評価が可能な試験チップと局所加熱技術を開発・提案することを目標とした。研究期間内において、寸法がマイクロメートルオーダのマイクロ構造体の引張試験を実現するシリコン製MEMSデバイスを設計し、実際に試作を行った。また同時に、赤外線を利用した非接触加熱装置を導入し、マイクロ領域の局所加熱により、対象物を1000度まで加熱できることを確認した。今後は高温下における高精度引張試験に向け、局所加熱装置と別途開発した計測装置を組み合わせ、高温引張試験機として活用できるようにし、その後、実際のマイクロ構造体の引張試験による機械的特性評価を様々な熱環境下で実施する予定である。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。高温におけるマイクロ構造体の力学的特性を評価するため、標点間距離50μm、試験辺幅25μmの引張り試験片の形状を決定し、MEMS技術を用いて本試験片を製作する技術を確立した。また、局所赤外線加熱で1000℃まで,非接触で加熱する装置を開発した。しかし,本装置を用いての実際の力学的性質の測定にはいたらず,過去データと比較しての精度の検証はできなかった。今後は、本装置を利用してのデータの蓄積が望まれる。
柔らかい動作の生成と安全性確保のための浮上型冗長駆動ロボット立命館大学永井清本研究は、浮上機構を手先にもつ浮上型冗長駆動ロボットによる柔らかい動作の生成と安全性確保の実現を研究目的とし、ロボットの手先に高帯域のコンプライアント動作(外力に対する順応動作)を生成させることを研究目標として実施した。研究開発においては、ロボット関節による手先動作と浮上機構による手先動作を連携させることを想定して浮上型冗長動作ロボットの設計と試作を行った。そして、永久磁石を用いた浮上機構の特性解析や、ロボット関節と浮上機構の連携動作試験を通して、本ロボットの基本構成の妥当性を検証した。今後の展開の一つは、人に装着して運動機能回復訓練を支援するリハビリロボットに本研究成果を適用することである。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。浮上機構を手先にもつ浮上型冗長駆動ロボットによる柔らかい動作の生成と安全性確保の実現を研究目的とした結果、1自由度に制限される結果となったが、永久磁石を用いた浮上機構を実現できた。本機構の技術移転先としては、リハビリ用ロボットへの適用を考えられ、今後の研究の発展が期待される。
低消費電力かつ高視認性を実現する適応的LED発光方式の研究京都工芸繊維大学桑原教彰視覚障害者の約6割は弱視で、LEDによる光る点字ブロックは夜間に危険な場所などを視覚障害者に提示するのに有効である。この光る点字ブロックは路面のように強い振動が継続的に加わる環境に設置されるため、断線などのリスクを下げるため電池式である。その上で夜間のみの発光で10年の長期間駆動を可能とする低消費電力かつ高視認性の発光方式を実現している。この技術を様々な公共サイン、例えば禁煙場所、進入禁止場所など健常者にも有用な情報提示に適用可能としたい。このために夜間だけでなく昼間についても、環境光の条件に応じて適応的な発光を可能とすることで、更なる低消費電力かつ高視認性を実現する発光方式を研究開発する。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。LEDによる光る点字ブロックは、夜間に危険な場所などを視覚障害者に提示するのに有効である。低消費電力かつ高視認性を実現する発光方式を確立するために、発光方式における視認性とLED 点滅の制御パラメタとの関係を実験により明らかにし、そのうえで最も低消費電力で最大の視認性が得られる制御方法の検討を行った。想定外の理由により、未達の項目もあるが研究は着実に進んでいる。技術的な課題も明らかにされており次のステップにつながる可能性が高いと考える。
トップダウン法によるバイオナノフィルターの創製京都工芸繊維大学山田和志現在のナノ加工では極短波長レーザーを用いた光リソグラフィーなどの手法が用いられているが、光の回折限界のために加工限界に近づいており、新たなレーザーナノ加工技術の提案が必要とされる。ごく最近、研究代表者らは、可視光レーザーと金ナノ粒子を用いて高分子超薄膜上へ直径30 nm程度のナノ加工に成功した。そこで研究代表者は、可視光レーザーと金ナノ粒子の自己組織化を駆使することにより、大気中下で高分子フィルム上へ微細ナノ加工(~30 nm以下)を効率的かつ高精度に行う技術の基礎的な研究課題を提案した。その結果、厚さ5 μm程度のPETフィルムに対して貫通したナノ加工出来ることを示し、これらの技術を応用し、血清フィルターやバイオナノフィルターの創製へと発展する可能性を見出した。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。可視光レーザーと金ナノ粒子を用いて、ポリマー基盤に対して、ナノサイズの貫通孔を作成することに成功した。しかし、目的としたナノ粒子の粒子径と成形フィルム厚との関係の把握、貫通孔ナノサイズとナノ粒子またはタンパク質の透過性の関係の把握にはいたらなかった。安価で簡便な手法によるバイオナノフィルターの社会的なニーズは高いと考えられるので、今後克服するべき課題と手法を明確化することにより、さらなる研究の発展が期待される望まれる。
燃料電池の高性能化に向けた光ファイバ型レーザ分光計測技術の開発京都工芸繊維大学西田耕介固体高分子形燃料電池(PEFC)の高性能化を図るためには、PEFC内部の水分移動現象や反応メカニズムの基本的理解が必要不可欠となる。そこで本研究では、光ファイバを用いたキャビティ・リングダウン(CRD)分光法を応用することにより、燃料電池セル内の水蒸気濃度を高感度かつ高分解能で定量測定できる独自のレーザ吸収分光計測システムを構築し、発電モードPEFC内の水分濃度分布をin-situでモニタリングすることを目標とした。本年度の研究開発では、「光ファイバ型CRDレーザ吸収分光システム」を開発し、恒温恒湿器を用いた校正試験により、微量な水蒸気濃度を高速・高感度で測定することに成功した。今後は、上記で開発したCRD分光計測システムを実際の燃料電池に適用し、PEFCセル内の水分濃度計測に展開させる予定である。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。燃料電池セル内における微量な水蒸気を高感度・高分解能で直接計測する手法として、光ファイバ型のキャビティ・リングダウン(CRD)分光法を採用した「CRDレーザ吸収分光システム」の開発を行った。計測システムは構築され、動作は確認された。今後は実際の燃料電池での評価により、実用化の可能性を見極めることが望まれる。
ワイヤー工具式ふれまわり放電複合研削による極小径穴加工技術の開発京都工芸繊維大学太田稔本研究の目標は、ワイヤー工具電極によって、サブmmサイズ(φ1mm以下)の極小径穴裏面取りを実現することである。そこでまず、高速スピンドルと放電加工電源を搭載した「ワイヤー工具式ふれまわり放電加工装置」を開発した。次に、クロム鋼(SCr420)に直径φ1mmの小径ドリル穴を加工した工作物に対して、直径φ0.5mmのタングステン製ワイヤー工具電極、およびメーカーの協力のもとに製作したダイヤモンド砥粒固着ワイヤー工具電極を用いてバリ取り実験を行い、加工特性を検討した。最終的に、加工時間約10秒でバリを除去できることを確認した。今後は、残された課題である、裏面取りを集中的に行うことができる工具電極形状および多数穴を連続的に加工できる連続加工装置の開発に取り組む。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。小径穴裏側のバリ取り、面取りを効率的、安価におこなう「ふれまわり放電加工法」の開発において、計画した下記項目において、ほぼ目標とする成果が得られた。(1)ワイヤー工具式ふれまわり放電加工装置の開発(2)極小径穴裏面取り技術の開発(3)砥粒固着ワイヤー工具電極の開発(4)「ふれまわり放電複合研削」の原理の実証と加工速度の達成が完了した。今後は、企業との共同研究によるプロトタイプ機の製作まで進むことが期待される。
高感度示差走査熱量計の開発京都工芸繊維大学八尾晴彦現在実用化されている示差走査熱量計の感度は高くて±0.1μW程度であるが、研究開発の現場においてこの感度はまだ十分ではない。もっと高感度にできれば、研究開発の効率を非常に高めることができる。そこで、示差走査熱量計の感度を従来の100倍以上の1 nWにすることを目標とし、示差走査熱量計に適したサーモパイルを設計・試作した。このサーモパイルを用いた試作機で感度を求めた結果、±0.24 nWという従来の400倍程度の感度が得られることが分かり、当初の目標を達成した。これにより、高感度示差走査熱量計を実用化するための基本的な技術を確立できた。今後は実用化に向けて、精密な温度走査技術の開発を進める予定である。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。示差走査熱量計の感度を従来の100倍以上の1nWにすることを目標とし、示差走査熱量計に適したサーモパイルを設計・試作した。感度を理論的に検討し、±0.24nWという従来の400倍程度の感度が得られ、目標を達成した。今後は実用化に向けて、精密な温度走査技術の開発の進展に期待する。
光音響効果を用いた固体材料の非破壊欠陥検査手法の開発京都工芸繊維大学福澤理行金属、半導体チップ、ICパッケージなど固体材料中の欠陥検査には、現在、超音波顕微鏡やX線CTが用いられているが、試料の液浸や被爆防止設備のため全数検査やライン組込みが困難であり、簡便な非破壊検査手法が望まれている。本研究の目的は、光音響効果を用いた固体材料の非破壊欠陥検査手法の開発にあり、光音響プローブの試作と、欠陥起因の光音響信号の検出を目標とした。既存の簡易プローブへの遮音機構の組み込みと走査系ドライバの低振動化によって、従来より低雑音のプローブが実現できた。Si板に導入したスクラッチ欠陥に起因する光音響信号が検出でき、当初目標とした欠陥検出の実現見通しが得られた。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。光音響効果を用いた固体材料の非破壊欠陥検査手法として、光音響プローブの試作と、欠陥起因の光音響信号の検出を目標とした。雑音の低減化(12dB)に成功し、「1mm」未満の欠陥」が検出でき当初の目標を達成した。本研究は実用性が高く、その応用展開社会還元につながると大いに期待できる。
フェムト秒レーザーによるナノ格子加工技術の開発京都大学宮崎健創フェムト秒レーザーを用いて誘電体と半導体の表面に高精度にナノ格子を形成するためのレーザーナノプロセッシング手法を開発することを目標として研究を行った。特に、2光束干渉を用いて作成したDLC表面をダウンサイジングすることにより、ほぼ目標仕様の直線性に優れたナノ格子の加工を実現した。また、物性の異なる数種類の半導体について、ナノ周期構造を形成するための条件を解明した。その結果、当初目標の80 %程度を達成した。今後、得られた新知見と手法を基に、fsレーザーによる半導体表面のナノ格子加工法の実用化に向けた研究開発を進める。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。フェムト秒レーザーを用いて、誘電体と半導体の表面に、精密にナノ格子を形成する開発を行った。DLC上については、ほぼ目標を達成した。半導体については、周期近接場の生成条件と、その制御手法等の課題を解決する必要があることがわかった。研究の継続により、課題の解決と実用化に進展することが期待される。
シリコン導波路を用いたテラヘルツ波分光法京都大学小川雄一水溶液中では水素結合による水分子のネットワークや水分子と溶質との相互作用が形成されており、水溶液中での生体高分子の高次構造や働きを理解するには、これらを直接計測することが重要である。そこで本研究では、物質とテラヘルツ波の相互作用体積を大きく取る事が可能なシリコン導波路を用いた分光法の開発を目指した。基礎実験として0.93 THzが発振可能な光源を用いたシステムを構築し、複数の糖水溶液による分光測定を通じて、既存のATR分光測定の結果との比較等を試みた。その結果、本方式においても相互作用体積を大きく取るほど吸収が大きくなる傾向が確認でき、また近赤外レーザーによるロッドへの照射で強度変調が可能であることが示された。この事は有色の水溶液系でも影響を受けることなく、同様に変調が可能であり、食品分析などに応用できる事を示唆する。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。水溶液中での生体高分子の高次構造や働きを理解するために、物質とテラヘルツ波の相互作用を大きくできるシリコン導波路を用いた分光法の開発を目指した。導波路を用いたことにより、物質との相互作用領域を広げる効果が確認され、課題も明確にされている。課題は解決可能と思われるので、今後の改善とデータの蓄積により、テラヘルツ波を用いた、高感度水溶液分光器の実現が期待される。
広波長域・非走査・波長分散型分光分析を可能とする曲率傾斜分光結晶群の開発京都大学森下浩平本研究では、脆性材料であるGe単結晶ウエハの結晶性を維持したまま三次元的に任意の形状に成型加工できる申請者ら独自の高温加圧加工法を用い、異なる波長(複数元素)の蛍光X線を、小面積の二次元検出器上に同時に集光・結像させうる高輝度・高分解能な曲率傾斜分光結晶を開発し、対象波長域の異なる複数枚の分光結晶を用いた10元素オーダーでの同時分光が可能となる画期的な広波長域・非走査・波長分散型X線分光装置への応用を目指した。それを可能とする結晶群の形状設計を行うとともに、各種条件を振っての高温加圧加工条件の最適化を行った。今後は結晶群の高精度変形を行い、分光システムの実証を図るとともに、電子顕微鏡用分光システムや高輝度X線を用いたリアルタイム分光分析へと展開を図る。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。脆性的なGe単結晶を高温で結晶性を維持したまま塑性加工を行うことにより、広波長域に適用可能な波長分散型X線回折装置の曲率分光結晶に利用することを試みた。分光結晶としての目的を達するための曲率形状設計は完了した。しかし、実際の加工については、金型製作の問題があり、表面のあれ、材料への転位の導入等で性能を満足する材料が得られなかった。金型、加工法の検討から課題をクリアする研究の進展が望まれる。
ファイバー結合型微量物質検出器の開発京都大学青木隆朗微小モード断面積を持つガラスコア・真空クラッド型サブ波長径光ファイバーのエヴァネッセントモード内における光と物質の強い相互作用を利用して、光学的手法による標的物質の極微量検出技術を開発し、従来の光ファイバーによる極微量物質検出限界をはるかに凌駕するサブアトモルレベルの検出感度を目指した。その結果、蛍光測定によりエヴァネッセントモード内の標的物質であるコロイド型半導体量子ドットをサブアトモルレベルで検出することに成功した。今後は、半導体量子ドット以外の標的物質の検出と、サブ波長径光ファイバーの強度の改良による実用性の向上を目指す。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。サブ波長径光ファイバーを用いてのエヴァネッセントモード内における光と物質の強い相互作用を利用して、光学的手法による標的物質の極微量検出技術を開発し、サブアトモルレベルでの検出に成功した。課題は、ファイバーの強度を上げることである。微量物質の測定は、環境測定等で有用性が高く、社会還元に導かれる可能性も期待される。
マグネシウム合金の変形特性予測を目的とした結晶塑性有限要素法解析プログラムの開発京都大学浜孝之マグネシウム合金板が繰り返し負荷を受けたときの変形特性を、結晶塑性有限要素法解析により高精度に予測することを目的に研究を行った。まず実験研究を行い、繰り返し変形時の加工硬化挙動や双晶活動を明らかにした。続いて理論的な研究の結果、結晶塑性有限要素法解析により繰り返し変形における双晶変形の活動推移の予測に成功した。一方応力-ひずみ関係については、繰り返し変形の1サイクル目では実験と良い一致が得られたものの、多サイクルでは定性的に一致する結果が得られなかった。これはバウシンガー効果のモデル化が不十分だったためである。今後この問題を解決し、より高精度な変形特性予測を実現したい。さらに本研究成果を汎用のソフトとリンクさせることで、本プログラムの幅広い活用を実現したい。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。当初目的としたマグネシウム合金展伸材に繰り返し変形を与えた場合の応力-ひずみ関係の定量予測はできなかったが、マグネシウム合金板の繰り返し変形特性をミクロ、マクロの両視点から明らかにし、結晶塑性有限要素法解析により繰り返し変形時の集合組織発展予測を可能にした。今後は、内部組織(結晶粒径、集合組織)と繰り返し応力負荷時の特性変化を整理した上で、具体的なユーザニーズを考慮したプログラムの開発に進むことが望まれる。
内部加熱を利用した太陽電池用シリコン基板の高効率熱処理法の開発京都大学野瀬嘉太郎本研究では、太陽電池用シリコン基板に対して、光吸収による内部加熱を利用した新規熱処理法の開発を目指して研究を行った。熱源として、ハロゲンランプを用い、ランプの波長域を一定にするため、従来の PID 制御ではなく、パルス式の加熱方法・条件の探索を行った結果、ON/OFFの切り替えに時に時間がかかり、1サイクル3秒では温度および波長を一定にすることが困難であることがわかった。しかし一方で、大気雰囲気の熱処理にもかかわらず、熱処理後も基板表面は顕わには酸化しなかった。これは、基板表面が数十秒で目的温度まで達するためであり、ランプ加熱による利点があることがわかった。本研究により、ランプ加熱の利点と問題点が明らかとなり、今後、熱処理法の開発に向けて有用な知見を得た。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。太陽電池用シリコン基板に対して、光吸収による内部加熱を利用した新規熱処理法の開発を目指している。当初の目標には達しなかったが、ハロゲンランプ加熱の利点と問題点が明らかとなった。装置の性能を含め、「ランプ光による材料加熱」と「定常的熱処理温度成立」との関係を検討することが望まれる。
高分子赤外発光ダイオードの高効率化同志社大学大谷直毅申請者の研究グループにより開発された高分子材料を用いる近赤外発光素子は不要である可視光発光を含むものであったため、その可視光発光を消去する素子構造を探索し発光の高効率化を実現することが研究目標であった。ホスト材料を工夫することにより可視光発光の消去に成功し、当初の目標が達成された。具体的には、活性層にワイドバンドギャップとなる材料をホストとして用い、同時に電子輸送性を高める材料も添加してその割合を最適化することにより可視光発光の消去が実現された。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。波長850nm 前後の近赤外領域で動作する高分子発光ダイオードの開発において、不要となる可視光領域の発光強度を低減させ高効率化を目標とする。ホスト材料の検討によって、可視光領域発光の消去に成功したが、外部発光強度が弱いという新たな課題が明らかとなった。また、目標とした外部量子効率の評価には至らなかった。課題解決に向けての今後の研究の発展が期待される。
気相浮遊ナノ粒子の粒子径・化学組成同時オンライン計測技術の開発関西大学岡田芳樹気相に浮遊するナノ粒子の粒子径と化学組成を同時に計測する装置において、その検出下限粒子濃度が現状の約1/10程度の3×104個/ccとなるように、装置の計測感度を現状の約10倍程度に向上させることを目標として研究を行った。新しい粒子濃縮技術を導入した結果、計測感度を10倍向上させることに成功した。これにより、自動車排ガス中に含まれる有機分子の各種成分を高感度に分析することが可能になった。また、自動車排出ナノ粒子の分析を含めた大気環境計測および、ナノ粒子製造現場の室内環境計測の目的に十分対応できる装置として実用化の可能性が大きく広がった。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。自動車排出ナノ粒子などナノ粒子の計測において、粒子のみをトラップし気体は通過させる手法を確立し、装置に導入される粒子の個数濃度を増加させることにより、目標とする計測感度の向上を達成した。今後の技術移転に向けては、実用化装置に必要な事項をより具体的に洗い出し、それに対する方策の検討が望まれる。
チェレンコフ放射を利用したテラヘルツ帯自由電子レーザー実用機の試作関西大学浅川誠本研究は、電界放出陰極アレイ(FEA)を利用した新型電子銃と、低エネルギー電子ビームで動作するCFEL発振器を組み合わせた小型実用モデル機を試作し、テラヘルツ光発生の実証および実用化に向けての技術課題を洗い出すことを目的として行った。開発したFEA電子銃は所要の0.9mA・50keVの電子ビームを発生した。電子ビームプロファイルモニター機能を付加したCFEL発振器を開発し電子ビーム入射したところ、共振器を構成するシリコン板に電子が若干衝突していることがわかった。これに起因するシリコンのチャージアップが電子ビーム伝送効率を下げている。共振器直前に電子ビームコリメータを導入し、放射光発生実験を継続している。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。テラヘルツ周波数領域で100mW級の平均出力を持つテーブルトップサイズの光源を試作し、実用化を目指す。テラヘルツ領域にはいたらなかったものの、領域電界放出陰極アレイ電子銃と発振器を組み合わせた実用モデルを開発し、目的とした技術的課題の洗い出しをおこなった。今後は、発信器の改良と実用機試作へ進展することが期待される。
13.56MHz発信機を用いた半導体リソグラフィ用EUV光源の最適化関西大学大西正視現在の最新のVLSIはトランジスターの大きさが45nmであるのに対して、新しいチップは22nm以下を目標においている。それの実現のためにはリソグラフィ過程で用いる波長13.5nmの極端紫外(EUV)光源の開発が不可欠である。小職は昨年核融合炉研究のためのロトマクと呼ばれる装置で、200kHz高周波電源により直径70mmの球形状Xeプラズマを生成し、100WのEUV光の発生に成功した。実用機においてはEUV光を効率的にリソグラフィに用いるために、半径1~3mm、EUV出力100W以上の光源が要求される。すなわち、現状研究結果においてEUV出力を変えずに光源を小型化することが求められる。その要求を満たすべく13.56 MHzの高周波発振器を備えた装置を用いて小型化の可能性を示すとともに、EUV出力を最大にするパラメータ(共振条件、アンテナ形状、Xeガス圧等)を考察する。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。VLSI微細化のためのリソグラフィ光源として13.5nmの極端紫外(EUV)光源の開発を行った。13.56 MHzの高周波発振器を使い、Xeガスのプラズマ発光を試みたが、電源と整合回路との調整が難しく、発光には至らなかった。しかし、改良された発振器を使いことでEUV光出力が改善されると思われる。さらに改良を加えることで、発光が実現され、研究が進展することが期待される。
テラヘルツ・エリプソメトリーを用いた不透明薄膜の膜厚計測徳島大学安井武史偏光解析法(エリプソメトリー)は、透明薄膜の膜厚検査に広く用いられているが、近年、自動車塗装膜を始めとした分野において不透明薄膜の高品質化や高機能化が進み、不透明薄膜を非接触リモートで分析する手段が強く求められている。本研究では、自由空間を伝搬し不透明物質に対して良好な透過性を有するTHz波に着目し、連続発振THz波 (CW-THz波) のリアルタイム位相計測に基づいたCW-THzエリプソメトリーを開発した。さらに、不透明薄膜の標準サンプル(シリコン基板)を用いて基本特性評価を行い、1μmの精度で膜厚が決定できることを確認した。開発装置は、非接触リモート計測とリアルタイム計測を特徴としており、製造ライン工程での全数検査への導入が期待される。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。不透明薄膜の膜厚測定用に、連続発振THz波 のリアルタイム位相計測に基づいたTHzエリプソメトリーを開発した。不透明薄膜の標準サンプル(シリコン基板)を使い基本特性の評価を行った。目標の100ms以内で、1μmの精度での測定に成功し、技術移転の可能性は示されている。今後、多くの膜の測定や、多層膜等の検討を行い、実用化への可能性を高めていくことが期待される。
10GHz級電気光学周波数シフタの省電力化大阪大学久武信太郎理論効率100%で動作する10GHz級光周波数シフタの電力効率を30倍程度向上させ、市販の小型パワーアンプを用いて本デバイスの連続動作を実証することを目的としていた。従来のバルク型デバイスをプレーナ型光導波路デバイスへ拡張すると共に、デバイス厚を1/5程度に薄片化することで、市販のパワーアンプを用いてCW動作を確認することができた。このときの変調電力は2.7Wでおよそ50倍程度の電力効率向上を達成した。また、初めてCW動作を実現したことにより、放熱など新たな課題が浮き彫りとなった。今後はこれら問題の解決とともに、企業とのコラボレーションのもと、実用化の道を探る。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。理論効率100%で動作する10GHz 級光周波数シフタの電力効率を30 倍程度向上させ、市販の小型パワーアンプを用いて本デバイスの連続動作を実証することを目的とする。デバイス厚を1/5程度に薄片化することによって、10GHz級光周波数シフタの変調電力を2.7Wまで低減することに成功し、これまでのデバイスに比べてでおよそ50倍程度の電力効率向上を達成した。今後は、技術移転に向けた開発に移行することが期待される。
スポット溶接リアルタイム品質判定技術開発大阪大学小溝裕一スポット溶接の品質を電圧のリアルタイム解析により評価できる技術の開発を行った。品質評価アルゴリズムの開発、直流電流での連続スポット溶接を対象とした評価方法の検証を行い、溶接条件が制御装置で設定でき、作業者の熟練度に左右される要素が少ない自動溶接であるスポット溶接中、ランダムに発生する溶接欠陥の検知を目指した。良好品質溶接に対応した電圧データと溶接中の電圧データ間の差異を解析、比較結果を溶接品質として0~100%の範囲で定義、出力する品質評価アルゴリズムを開発した。開発アルゴリズムを直流スポット溶接データに適用し、電極状態ならびに溶接状況を溶接品質で定量化することができ、その妥当性を検証し、目標を達成した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。直流電流での連続スポット溶接を対象として、良好品質溶接に対応した電圧データと溶接中の電圧データ間の差異を解析し、溶接品質を0~100%の範囲で定義、出力する品質評価アルゴリズムを開発した。本アルゴリズムを連続スポット溶接で検証し、電極消耗に伴う品質低下との対応が確認できた。今後は、交流スポット溶接への適用、実際の溶接施工現場での検証等を通じての精度の向上が望まれる。
耐酸化性に優れたCu粒子含有導電性接着剤の各種基礎特性評価大阪大学西川宏エレクトロニクス製品の小型化・高性能化が進むなかで、微細接合技術は製品寿命にも大きな影響を与えている。ポスト鉛フリーはんだ微細接合材料としては、導電フィラーとベース樹脂の複合材料である導電性接着剤が期待されており、安価で信頼性の高い導電性接着剤の確立が求められている。そこで、本研究開発では、これまでに見いだした耐酸化性にすぐれたCu合金粒子を金属フィラーとして用い、その導電性接着剤の長期信頼性として、主に耐恒温恒湿性や耐マイグレーション性を評価した。その結果、純Cuを利用した場合に比べて、耐恒温恒湿性については大幅に改善でき、また耐マイグレーション性については同程度であることを明らかにし、最初の目標を達成した。安価なCu粒子含有導電性接着剤の実用化に向け、さらに前進したと言える。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。耐酸化性にすぐれたCu合金粒子を金属フィラーとして用い、その導電性接着剤の長期信頼性として、主に耐恒温恒湿性や耐マイグレーション性を評価した。純Cuを利用した場合に比べて、耐恒温恒湿性については大幅に改善でき、また耐マイグレーション性については同程度であることを明らかにし、最初の目標を達成した。接合強度が弱い問題点を早期に解決し、実用化に向けた詳細な計画策定が望まれる。
新規電圧駆動磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)の開発大阪大学白土優電圧駆動磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)の開発を目指して、電界による磁性制御が可能なα-Cr2O3薄膜を用いた室温での垂直交換バイアスについて検討した。垂直交換バイアスとは、新規MRAMにおいて、情報読み出しの参照層となる磁性層に作用させる効果であり、α-Cr2O3薄膜を用いた垂直交換バイアスとしては、研究責任者らにより、80 Kで0.27 erg/cm2が達成されていた。本研究により、α-Cr2O3薄膜の膜厚制御、α-Cr2O3薄膜と強磁性薄膜間の磁気結合強度の制御により、室温での垂直交換バイアスの発現に成功した。今後は、低消費電力化に必要となる、α-Cr2O3薄膜の膜厚低減、電圧による交換バイアスの制御が必要となる。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。電圧駆動磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)の開発を目指して、Cr2O3系薄膜を用いて、素子構造と材料膜厚を変えることで、室温での垂直交換バイアスの発現を確認し、目標を達成している。次のステップの課題も明確になっている。社会還元の大きなテーマなので、研究を継続することにより実用化に進展することを期待する。
半絶縁性次世代半導体中の電気的に活性な欠陥評価方法の開発大阪電気通信大学松浦秀治本研究は、半導体デバイスに影響を与える半絶縁性半導体に対して、過渡電流を正確に測定することにより、半絶縁性半導体中の電気的に活性な欠陥を評価する方法を確立することであった。 高純度半絶縁性4H-SiCを用いて、表面を流れる漏れ電流を除去する方法を見出し、内部を流れる過渡電流を測定できるようにした。次に、過渡電流を評価し、数種類の欠陥の密度と放出割合を決定できた。さらに、異なる温度での測定から放出割合のアレニウスプロットが得られ、欠陥の活性化エネルギーを見積もることができた。現在、測定時間範囲を広げる回路の作製も順調に進んでおり、本研究の達成度は80%程度である。 今後は、異なる半絶縁性半導体への展開を予定している。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。半絶縁性半導体中の電気的に活性な欠陥を評価するために、過渡電流を測定する装置を作製した。SiCで表面を流れる漏れ電流を除去する方法を見出し、内部を流れる過渡電流を測定できるようにした。さらに過渡電流を評価し、数種類の欠陥の密度と放出割合を確認し、欠陥の活性化エネルギーを見積ることができた。今回のデータをベースに、ユニークな高絶縁性半導体欠陥評価装置として実用化が期待される。
ナノイオン交換樹脂を用いた新規NOx吸収装置の開発大阪府立大学安田昌弘本研究は、200ppm以下の低濃度のNOXを含む排気ガスの完全脱硝を目的とした。そのため、水だけではNOX除去率が約10%の工場用ボイラー排ガスを塔高1 m程度の充填物をパックした充填塔で処理し、ナノイオン交換樹脂分散液を用いることにより、NOX除去率100%にすることを目標として、吸収液としてナノイオン交換樹脂分散液を用いた脱硝プロセスの開発を検討した。その結果、脱硝効率の向上がわずかに10%程度にとどまった。その原因究明のため、気液有効濡れ面積、液相、気相の物質移動・反応を総合的に解析した結果、亜硝酸として溶解したNOxの一部が気相にNOとして再放散される為であることが明らかとなり、気相・液相に酸化反応を同時に行うと完全脱硝が達成できることを明らかとした。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。ボイラーや内燃機関の排ガスに含まれる200ppm以下の低濃度のNOx を、ナノイオン交換樹脂を用いた吸収装置で、完全脱硝できることを実証した。研究途中で明らかになった問題に対して、新たにオゾン添加法を考案し、目的を達成した。今後の企業化に向けた取組が期待される。
超小型周回型イオンモビリティ/質量分析計の開発大阪府立大学岩本賢一本課題は、構造解析が可能な超小型周回型イオンモビリティを開発し、小型の質量分析計と組み合わせることで、可搬型の高性能イオンモビリティ/質量分析計装置を開発することである。イオンモビリティは中真空以上の緩衝ガス存在下で動作する装置である。中真空領域より高い圧力で動作する、新規なイオンベンダーとポテンシャルリフトの電極形状を見出した。また、周回型イオンモビリティの半周におけるイオン軌道シミュレーションを行ったところ、分解能が向上する結果が得られた。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。可搬可能な小型イオンモビリティを開発する。イオンモビリティは、質量分析計だけでは不可能なイオンの構造解析を可能とする装置である。中真空領域より高い圧力で動作する、新規なイオンベンダーとポテンシャルリフトの電極形状を見出した。また、周回型イオンモビリティの半周におけるイオン軌道シミュレーションを行ったところ、分解能が向上する結果が得られた。今後の研究成果により技術移転の可能性が期待される。
コンパクト光ファンナウトアダプタの自動マウントシステムの開発大阪府立大学勝山豊光テープ入出力部をもつ光部品のコンパクト接続のため、多心・単心両コネクタ接続を含むファンナウトアダプタ用に、CO2レーザによる被覆の自動焼却技術を開発した。4心光テープを対象とし、PCからCO2レーザと2台の回転微動台を制御し、テープ被覆のみの焼却による素線4心の単心分離と、分離した4心のうち両端の2心の素線被覆を全焼却する一連の工程を自動化することができた。自動被覆焼却後に、MTコネクタの取り付けと研磨、単心SCコネクタの取り付けをおこない、ファンナウトアダプタを作成できた。このアダプタの損失を測定した結果、2個のMTコネクタ損失、あるいは1個のMTコネクタと1個のSCコネクタの損失の和と同等であった。自動被覆焼却に要した時間は、53.1秒であった。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。光テープ入出力部をもつ光部品のコンパクト接続のため、、テープ被覆のみの焼却による素線4心の単心分離と、分離した4心のうち両端の2心の素線被覆を全焼却する一連の工程を自動化することができ大幅な時間短縮を実現した。自動被覆焼却後に、MTコネクタの取り付けと研磨、単心SCコネクタの取り付けをおこない、ファンナウトアダプタを作成できた。技術移転に向けた課題も明確であり、早期の企業化が期待される。
小型長周期ファイバグレーティングを用いた圧力・水深センサの開発大阪府立大学大橋正治熱収縮チューブを用いた長周期ファイバグレーティングによる小型センサを作製し、圧力・水深センサの実現可能性を明らかにした。このセンサの印加圧力と共振波長の損失の関係を明らかにし、水深センサへの適用可能性を明らかにした。更に、センサに印加する圧力を効率よく共振波長の減衰量の変化に置換できるセンサ部の検討を行い、圧力および水深を評価できる小型の圧力・水深センサを作製し、実用化の可能性を見出すことができた。実用化に向けた基本的な検討に関しては行ったが、詳細な設計については今後の課題である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。熱収縮チューブによる光弾性を利用して、小型長周期ファイバグレーティングを(LPFG)を、圧力・水深センサとして適用できる可能性を実験的に検証し、可能性があることを確認した。問題点として圧力上昇時と低下時で感度にヒステリシスが存在する可能性がある等の課題が明らかになった。今後は、他の圧力センサとの優位性の検証を経てし、実用化に向けたシステム設計に進むことが期待される。
保水性材料のヒートアイランド熱負荷低減性能の高度化と性能評価手法の開発大阪府立大学木下進一保水性材料の蒸発効果の持続性(ヒートアイランド熱負荷低減性能)向上ならびに性能評価手法の確立に主眼をおき、材料の細孔構造が材料内部の熱および水分移動特性に及ぼす影響について評価し、蒸発性能に対する支配因子を特定するとともに性能評価に関わる輸送モデルの構築を目的とする。細孔構造を考慮した水分移動モデルを適用し、構造の違いによる乾燥挙動への影響について評価できた。また室内・外での保水性材料の乾燥実験を行い、解析結果との比較によりモデルの妥当性を評価した。状態(含水率、温度分布等)の変化について定性的に一致しているものの温度を過小評価する結果となった。今後は精度向上のため、誤差因子の特定によりモデルを改善し、材料の細孔構造の最適化ツールを構築することを考える。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。保水性を有する多孔質材料(保水性材料)のヒートアイランド熱負荷低減するため、蒸発効果の持続性向上ならびに性能評価手法の確立を目的とし、保水性材料の蒸発効果の持続性向上とその支配的因子の解明を達成した。蒸発効果持続性能が高い材料を供給できる指針を提示するには、さらなる基礎的現象の解明が必要であり、今後の研究の進展が望まれる。
多点計測用光ファイバー歪み・振動センシングシステム大阪府立大学和田健司ピコ秒パルス光源かつピコ秒時間ゲート付き光検出器として動作する分布帰還型半導体レーザーと、偏波保持軸の直交する偏波保持ファイバを2本接続した光ファイバセンサを組み合わせたシステムを構築し、歪み・振動の多点センシングの実現をめざした。光源と光検出器を一体化した半導体レーザーについては、ピコ秒時間ゲート特性が安定的に得られ、変調周波数を変化させることにより、特定の位置からの光信号を分離抽出できることを確認した。一方、光ファイバセンサについては、縦列接続による光損失の影響から検出される信号対雑音比が小さくなり、一定の感度を保ちつつ多点計測することが困難となった。今後、光利用効率の高い構成への変更が望まれる。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。大型構造物の歪み、振動を多点計測することを目的としている。半導体レーザを計測して用いる場合は、熱的特性変動の影響を受けないことを確認できた。しかし、光ファイバーセンサを用いての多点計測については、光損失による雑音の影響から、一定の感度で計測をおこなうことが困難であった。システムの改良するべき課題は明らかにされているので、今後の研究の発展が望まれる。
ナノ細孔径制御電極を用いた新規電気化学デバイス独立行政法人産業技術総合研究所清原健司細孔径が電解質イオン径と同程度に小さい多孔質電極においては、ある特定の電圧でイオンが電極に吸脱着する一次相転移が起こることが、近年計算科学的研究によって理論的に発見された。そこで、この一次相転移が実際に起こることを検証するために、多孔質性の炭素材料を電極としていくつかの電解質溶液を用いて電気化学的測定を行った。その結果、電解質溶液の濃度や電圧変化の速度を適当に選ぶと、イオン種に応じたある特定の電圧において、一次相転移と見られるイオンの電極への吸脱着が確認された。この一次相転移は、細孔径をさらに精緻に制御することによって、電気化学スイッチやイオン篩などの新しい電気化学デバイスの開発に応用できる可能性がある。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。細孔径が電解質イオン径と同程度に小さい多孔質電極において、特定の電圧でイオンが電極に吸脱着する一次相転移が起こることが、計算科学的研究によって理論的に発見された。多孔質性の炭素材料を電極として種々の電解質溶液を用いて電気化学的測定を行い、本現象を実証することに成功した。細孔径を精緻に制御することにより、電気化学スイッチや新しい電気化学デバイスの開発に応用できる可能性がある発見であり、今後の研究の発展が期待される。
SQUID磁束計を用いた汎用高分解能電子スピン共鳴装置の開発神戸大学櫻井敬博本研究の目的は、簡便に高分解能なスペクトルを与える市販SQUID磁束計を利用した磁化検出型の強磁場・多周波数ESR装置を開発することである。汎用品として十分な感度を得るため、導波管の最適化、ロックイン検出の導入等を行う。具体的な感度目標は1010 spins/Gとする。開発の結果、共振器様の円筒金属部品の導入により、これまでの感度を2倍程度向上させることに成功した。またロックイン検出に関しては入射電磁波のON、OFF変調による磁化信号のロックイン検出に成功した。SQUID磁束計の装置上の問題で磁場信号の取り出しが出来なかったため、ロックイン検出による共鳴全体の観測には至らず、結果的に目標値である1010 spins/Gという感度は達成できなかったが、共振器及びロックイン検出の導入による更なる高感度化への可能性を開いた。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。SQUID磁束計を利用した磁化検出型の強磁場・多周波数ESR装置を開発するため、導波管の最適化、ロックイン検出の導入等を行った。感度目標は1010 spins/Gとした。結果は、共振器用の円筒金属部品の導入により、これまでの感度を2倍程度向上させることに成功した。ロックイン検出による共鳴全体の観測には至らなかった。目標に到達するには、SQUID磁束計の改善と、システム全体の調整をする必要がある。
新規なメカニズムに基づく光機能性有機-無機ハイブリッド材料の作製に関する研究兵庫県立工業技術センター石原マリ研究責任者は、新タイプ光機能性有機-無機ハイブリッド薄膜を創製し、その高性能化に必要な基盤技術の構築を目指している。本研究では、光応答性有機-無機ハイブリッド薄膜作製のための材料選択指針を明らかにすることを目的として、種々の有機色素と無機化合物との複合薄膜を作製し、その光応答性および構造を調べた。その結果、新規な光応答性有機‐無機ハイブリッド薄膜を創製した。創製したハイブリッド薄膜において有機色素分子間相互作用が認められた。今後は、さらに多くの有機色素や無機化合物を試し、ハイブリッド薄膜の材料組成・作製条件とその光応答性・構造との相関について明らかにする予定である。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。新タイプ光機能性有機-無機ハイブリッド薄膜を創製し、その高性能化に必要な基盤技術の構築を目指している。概ね期待通りの成果が得られている。光応答性を示す2成分系有機‐無機ハイブリッド薄膜に特徴的な構造を明らかにするまでには到っていない。現状材料を探索フェーズにある研究であるので早期の技術移転が望まれる。
マイクロ波照射による強制分散からのナノ粒子凝集測定技術の開発兵庫県立大学朝熊裕介医薬品、化粧品や電子材料としてナノ粒子を使いこなすためには分散技術が不可欠であり、多くの複合材料の製造プロセスにおいて、微粒子を均一相に分散することは大きな課題である。一方、粒子径がシングルナノに近づくとサブミクロン以上の粒子とは異なる粒子表面特性、相互作用が発現し、凝集分散特性に特異挙動が現われる。近年、マイクロ波(MW)が注目されているが、そのマイクロ波照射炉内部の観察が困難であることからその分散・凝集メカニズムはわかっていない。一方、ナノ粒子の有望な観察法としてはレーザー光による測定法である動的光散乱法(DLS: Dynamic Light Scattering) をマイクロ波照射装置に導入し、マイクロ波照射中でのナノ粒子の挙動が観察可能となった。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。ナノ粒子の有望な観察法として、レーザー光による測定法である動的光散乱法(DLS: Dynamic Light Scattering) をマイクロ波照射装置に導入し、マイクロ波照射中でのナノ粒子の挙動を観察した。その結果マイクロ波照射条件の違いによるナノ粒子径の経時変化を測定した。また目的であるマイクロ波照射中でのナノ粒子の挙動がリアルタイムで観察可能となった。技術移転につながる研究成果は得られており、応用展開の幅も広いと考えられる。
新規高信頼性シリコン-メタルコンタクト形成技術の確立兵庫県立大学八重真治太陽電池やパワーエレクトロニクスデバイスにおいて求められる、シリコン半導体上への高信頼性メタルコンタクトの低コスト形成技術の確立を目指して、申請者らが開発したシリコン上への金属薄膜形成法による銅やニッケルの比較的厚い膜の形成法を開発した。これまでの薄膜の膜厚が数百nmであった原因を検討し、シリコンの溶解防止策を施すことで銅の膜厚を、めっき膜の応力抑制によりニッケルの膜厚を増大させることに成功した。今後、さらに厚膜化と高密着化を進めるとともに、実用デバイスへの適用を目指して企業などとの共同研究を推進する予定である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。シリコン半導体上に高信頼性メタルコンタクトを低コストに形成する技術が望まれている。全工程が単純なウェットプロセスからなる5μmを超える厚い膜で高い密着性と実用的な導電性が得られる方法を確立することを目的とし、目標に近い4μm を超える厚さのニッケルめっき膜形成を達成できた。太陽電池での実用化を目指して試作を開始しており、今後の研究の発展が期待される。
三次元顕微鏡観察法の簡便化および実用化に向けた開発鳥取大学中井唱これまでに我々が開発してきた「2方向同時観察による三次元顕微鏡」の汎用化かつ実用化のために「I。柔軟性の高い(試料台などを改造しやすい)2方向観察装置の作成」、「II。三次元追跡のための自動ステージ導入」、「III。より広範囲に鮮明な映像を得るための改良」を実施した。項目III。については、チャンバーの小型化・簡略化および試料溶液の配置方法の工夫により、大きさ10μm程度の微生物の三次元運動が観察可能となった。また、輪郭抽出などの画像処理により、対象物の3次元位置を自動で取得するプログラムの作成に成功した。今後本技術を3次元マイクロPIVの実用化への足がかりとするため、複数対象物の位置の自動測定などを行う。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。三次元顕微鏡を試作し、性能評価を行った。画像処理により対象物の三次元位置を自動で取得するプログラムが有効に動作し、大きさ10μm程度の微生物の三次元運動が観察可能となった。三次元顕微鏡を実現するには、残りの2つの課題の解決が必要となる。原因を明確にするためにも、光学機器メーカー等と連携をして、実用化への可能性を再検討することが望まれる。
電力用半導体モールド樹脂の高温帯電評価装置の開発松江工業高等専門学校福間眞澄電力用半導体は、インバータや電源装置に利用される。しかし、電力用半導体をMOSFETとして高電圧・大電流で利用すると半導体の温度上昇と高電圧によりモールド樹脂が帯電し、帯電した電荷により、半導体内部の電界変化し誤動作の危険性がある。このため電力用半導体のモールド樹脂には、絶縁だけでなく、高温で帯電しない性能が求められる。本研究では、高温でモールド樹脂の帯電現象を測定するための空間電荷分布測定装置の改良を行った。試作した装置は半導体モールド樹脂メーカーでの評価を行い、測定温度での信号補正は未完成であるが、実用的な最高使用温度300℃までの空間電荷分布信号の測定可能であることがわかった。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。電力用半導体は温度上昇により誤動作の危険がある。この対応のため、半導体モールド樹脂が高温で帯電する現象を調査するために最高使用温度300℃まで測定可能な空間電荷分布測定装置を開発することを目標とした。センサー厚等の検討により、300℃まで、信頼性、感度を満足する測定器の開発に成功した。今後は、企業との連携による実用化が期待される。
電磁石駆動球面モータの回転子の姿勢計測に基づく回転制御手法岡山大学五福明夫研究代表者らが開発した球面モータの実用性を高めるために、鉄球殻に永久磁石を配置した回転子を持つ14-12球面モータを試作し最大回転トルクの向上を図。また、回転子の姿勢をリアルタイムで計測して固定子に配置された電磁石の励磁制御を適切に行う手法を研究し、励磁制御システムの開発を行った。研究開発成果としては、32個の永久磁石を外側がN極となるように配置した回転子に対して、61個の小型のホールセンサを配置して磁界のパターンを計測する姿勢計測センサシステムを開発した。姿勢計測性能を評価したところ、計測速度は20mSで計測誤差は最大15°であった。そして、この計測結果から回転子の姿勢を推定し、電磁石の適切な励磁を行う手法を研究開発し、回転子の任意の初期姿勢からの全方位回転や、励磁制御に回転子が追随しない脱調状態から復帰できることを確認した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。球面モータの実用性を高めるために、鉄球殻に永久磁石を配置した回転子を持つ14-12球面モータを試作した。当初の目標である回転子の位置計測システムを実現し、一定の成果を得ている。具体的な応用例の開発が技術移転の鍵を握るものと思われる。
空気圧駆動バルブレスポンプの研究開発津山工業高等専門学校吉富秀樹本研究は、機械的可動弁を用いないバルブレスポンプとして、流体制御技術を応用した「空気圧駆動バルブレスポンプ」の実用化に向けて、実験用ポンプを製作し基本特性を解析すると共にバルブレスポンプの特性計算法を開発することを目標とする。研究では、発熱量100[W]の電子機器冷却用ポンプに対応した流量200[mL/min]程度の送液能力を持つ実験用バルブレスポンプを設計製作し試験したところ、ほぼ計画通りの性能が得られた。開発した特性計算法も試験データとほぼ合っていることから有効性を確認でき、当初の目標を達成できた。また、研究の過程において流路幅1[mm]の小型バルブレスポンプの送液能力が確認され、今後は新たにマイクロバルブレスポンプへの展開も期待できる見通しを得た。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。2種のバルブレスポンプの試作を行い、基本的な特性、理論解析を通じて、目標流量を達成することができた。また、流路幅が小さいポンプにおいても流量が確保されることが確認され、マイクロバルブレスポンプの実現可能性を検証した。機械的バルブを用いないバルブレスポンプの利点、欠点を明確にし、用途展開の方向性が示された。今後は、さらなる性能の向上に対するアイデアの創出と、実際の用途に即した装置の開発を通じての技術移転が期待される。
熱電素子水分解システムの最適制御方法の開発津山工業高等専門学校田辺茂電子冷却に使用されている安価な低温作動熱電素子を用いて、身近に存在する100K以下の温度差を利用して発電し、その電気で固体高分子形水電解装置を動作させて水素を生成する熱電素子水分解システムにおいて、入力した熱エネルギーのうち、水素生成に利用される効率を現状の2倍の2~4%にする制御方法の有効性を、実験により実証することを目標とした。研究室での基礎実験の後、岡山県湯原温泉にて温泉の湯と河川の水を使って実際に水素生成実験を行い、最高で10%の水素生成効率を達成できた。今後は長期間の安定運転を確認すれば、多様な場所への設置が可能になると期待できる。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。温泉熱を利用した熱電素子発電による水素生成について、比較的高い効率で成功した。今後の技術移転に向けて、環境に適した運転条件に即した、特に水温冷水温の影響に対する最適制御法の実証、長期的な信頼性に対する確認、コストの検証等が期待される。
振動駆動型負荷感応無段変速機を用いた完全密封型バルブの開発広島大学高木健振動により開閉が可能な水や油などの液体を対象としたバルブと、空気などの気体を対象としたバルブを開発した。このバルブは振動により流路の中の弁を駆動するため、従来のバルブのように弁を駆動するためのシャフト等を通すための穴を流路に開ける必要がない。そのため、パッキンなどの不具合が生じることはなく、完全な密閉を容易に実現できる利点がある。ゆえに、過酷な環境での使用が期待でき、水や油などの液体を対象としたバルブでは、現段階でも0℃の水から180℃の油まで一つのバルブで対応することができている。また、構造がシンプルであるため直径6mm長さ30mm(ただし、振動発生装置を含まない)程度の大きさで実現できており、小型・軽量化にも適したバルブである。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。振動により動力を伝達することにより、完全に密閉された配管の中の弁を開閉できる直径6mmの小型バルブを開発した。気体用バルブでは流量調整が可能であることがわかったが、液体用では、不可能であり今後の課題が残った。開閉性能、信頼性、適用範囲等の今後の検討課題はあるが、密閉系で動作できるバルブは有用であり、今後の研究の進展が期待される。
プラスティック歯車代替用磁気利用非接触小型歯車の開発阿南工業高等専門学校原野智哉相互歯車歯先をN極・S極に磁化し非接触で動力伝達する磁気歯車のプラスティック歯車代替性を検討するため目標性能・諸元を動力20W、伝達トルク0.3Nm、回転速度700rpmが可能なモジュール1以下、歯先円径50mm以下とした。本研究開発の結果、小型歯車用試験機の設計開発に成功し、静磁場解析に基づいて実験を実施したところ、モジュール3、歯先円径60mm、歯数20の2対平歯車において0.14Nm、回転速度1200rpmで運転可能な20Wの非接触平歯車の開発に成功した。さらに、モジュール1へ開発を推進するには歯先・歯厚・歯丈などの歯車諸元と伝達動力の関係を明確にし、多数の検証実験を実施する必要がある。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。プラスチック歯車の代替を目的に、相互歯車歯先をN極・S極に磁化し非接触で動力伝達する磁気歯車の開発に成功した。磁場解析を行うとともに、歯車諸元を変えて歯車対を製作・試験し、回転速度と伝達トルク、損失トルク等の関係を明らかにした。残された課題の克服に向けて、強力磁石サンドイッチ型磁石歯車の小型、大きなトルク力の特長を生かした研究の発展が期待される。
竹伐採チッパー装置の開発阿南工業高等専門学校鶴羽正幸クローラ付きの自走機能、回転刃物による粉体加工、垂直姿勢のまま竹を保持する機能、及び、竹粉回収機能を備えて、竹林に生えている竹を伐採の後にすぐに粉体に加工する装置である。この開発の目標性能は、1装置が幅70cmの導入路の通過が可能、2装置重量最大150kgとチップ積載重量150kg、3傾斜角度25度まで登坂可能、4チップ作製能力は6本/H、5チップの仮積載は0。4m3の収納部を確保、6制作費用は1、300千円であった。試作機の試運転の結果、上記の目標に対して4のチップ作製能力以外は達成した。課題はチップ作製の途中で竹が割れる問題があるため、今後の対策で一部の構造を変更する必要があることが判った。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。竹をバイオマス材料として使用するため、竹を伐採直後に、ほぼ垂直姿勢を保ったまま、先端の笹枝まで連続的にチップ加工する自走機能をもつ竹伐採自走式チッパー装置を試作、開発し、目標をほぼ満足する特性を実現した。技術的には、早期の技術移転が可能と思われるが、社会二ーズ、市場性からの検証が必要である。
液圧張出加工による角筒容器の成形鳴門教育大学畑中伸夫剛体工具による通常の張出加工では、深い容器を成形することができない。さらに、円筒容器の成形に比べ、角筒容器の成形ではパンチコーナー肩部において一層加工条件が厳しいため深い容器の成形が困難である。しかし、液圧を用いて張出加工を行うことにより、パンチ肩部における破断が回避され、深い容器を成形することが期待される。本研究では、成形深さ15㎜の角筒容器の張出加工を目標に取り組んだ。その結果、断面形状に若干の問題はあるものの、成形深さ15㎜の角筒容器を成形することができた。また、材料流動等の詳細な測定値も求まったことから、今後、成形高さを飛躍的に向上させ、形状の改善を図る方法として、「ダイス穴周辺部圧縮による張出成形高さの向上」について取り組む予定である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。剛性のパンチを用いないで、液圧による純アルミニウムの角筒成形にトライし、高さ15mmの張出し成形を可能とした。頭部と側壁部の境界をエッジ状に成形することが困難であること。またさらなる成形性の向上には、プロセスの改良が必要であることが今後の課題であり、技術移転に向けた今後の研究の発展が望まれる。
地盤の平面ひずみ圧縮同時透水試験機器の開発とその応用香川大学吉田秀典本研究開発に係る試験装置は既に完成しているが、多くの検証試験を通して、本装置による試験の再現性を検証し、また、どの範疇の材料に対してどういった内容の把握が可能であるかを明確にすることを本研究開発の目標とした。試験からは、荷重、流量に関して巨視的な結果は得られるが、それらに加えて局所的現象を捉えることで上記の目標を検討できると考え、画像解析手法を導入した。その結果、多くの試験より再現性が確認され、また、画像解析手法の併用によって、試験材料の巨視的な変形量はもとより、局所な変形量も得られ、両者の比較検討を通して、より詳細な材料特性が得られることが判明した。本研究開発では、再現性を議論する目的で人工材料を用いたが、今後は、天然材料についても検証をする必要がある。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。亀裂の状態に差があるコンクリート製円柱供試体に対して、一軸圧縮応力を加えながら、水圧を加えることにより、平面ひずみと透水係数を同時に、再現性よく計測することが可能となり、目標を達成した。亀裂による水の流れを考察するため、画像解析を用いた変位場計測の技術を導入し、試験中の変位場、最大せん断ひずみ分布の可視化に成功した。今後は、地盤防災に対処するための地盤断層帯の危険度評価のために早急な技術移転が期待される。
逆磁歪効果を応用した高接触面圧測定センサ開発香川大学大上祐司自動車などの燃費効率を高めるため、CVTなどの動力伝達装置では表面強化機械要素を用いて装置を小型・軽量化する方向にあり、機械要素の接触状態は数GPaの面圧となる。その高い面圧での機械要素の接触状態が実験的に明らかとなれば、高い接触面圧での最適表面設計や高信頼性機械要素の開発が可能となる。そこで、本研究では少なくとも1 GPaの接触面圧を測定するために、逆磁歪効果を応用した強磁性体薄板センサによる接触面圧測定システムを開発することを目的とした。研究期間内に、応力磁場印加装置を製作し、その装置を用いた応力と残留磁化の定量的関係を現在明らかにする。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。逆磁歪効果を応用したセンサの開発は、応力と残留磁化との定量的な関係が明らかにできなかったため、達成されなかった。しかし、応力と残留磁化との関係から、面圧を調べることが可能であることが明らかになった点、今後の改良点として、印加磁場の制御部の設計・製作ならびに磁場解析技術の導入が必須であることが明らかになった点は、評価できる。今後、上記の改良が期待される。
有機1次元フォトニック結晶を用いた高感度テラヘルツ測定システムの開発香川大学鶴町徳昭本研究では最終的にはTHz域の1次元フォトニック結晶と可視域の1次元フォトニック結晶を組み合わせた新規の二重共鳴構造によりTHz波の発生および検出を増強した測定システムを構築することが目標である。具体的には(1)THz帯1次元フォトニック結晶における100倍以上の増強効果の達成(2)ポールドポリマーを含む可視域1次元フォトニック結晶の作製とTHz発生確認を掲げた。(1)に関しては発生で12倍、検出で4倍強と全体で50倍程度の増強が得られている。また測定分解能を上げればさらに大きな増強が得られていると考えられる。(2)に関してはまだ達成していないが、ポールドポリマーの作製にはほぼ成功しており、今後もTHz発生実験と1次元フォトニック結晶サンプル作製の研究を継続する。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。THz域の1次元フォトニック結晶と、可視域の1次元フォトニック結晶を組み合わせた二重共鳴構造により、THz波の発生および、検出を増強した測定システムを構築するために、目標としていたテラヘルツ発生系と検出系のシステムとして、従来技術の100倍という信号増強には届かないものの、システム全体で50倍の信号増強に成功している。実用化にはまだ克服すべき課題も多いが、今後の展開に期待したい。
マクロレンズ一体型超高速共焦点カメラユニット徳島文理大学冨永貴志固定のピンホールアレイを採用した共焦点光学系をマクロレンズ一体型の超高速共焦点カメラユニットとして実現することを目標にした。現状のカメラ性能(10kHz 撮像)が共焦点光学系で実現できるように企画した。大きさとして750 mm(H)x70 mm(D)x150 mm(W)程度の大きさで実現できた。もっとも単純な応用として脳組織標本の神経活動を膜電位感受性色素を用いて光学信号として撮像することを目的とした。0.3%程度の蛍光変化量を撮像する低雑音性を目標とした。解決すべき課題として十分な明るさをとるための照明系の再検討があがった。実際的な撮像速度は目標に届いていないが、1kHz程度では撮像可能でこれまでに開発された高速共焦点よりも低雑音で高速であり当初の目的を達成した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。マクロレンズ一体型の超高速共焦点カメラユニットを開発した。当初の目標の撮像速度には至らなかったが、SNはかなり改善され、次のステップへ進めるための技術的課題が明確になった。企業化の可能性のある技術であり、社会還元が期待される。企業への技術移転が早期に進められることが望まれる。
新しい透明スイッチング素子の開発 -酸化亜鉛透明トランジスタによる信号読み出し回路の超高精細撮像素子応用-高知工科大学古田守酸化亜鉛(ZnO)は高い可視光透過率を有するが、電界効果トランジスタは可視光照射によってチャネル領域のキャリア濃度の微小変化を生ずるため、リーク電流の増大、すなわちスイッチング性能の低下を引き起こす。本研究はZnO 薄膜トランジスタの光電流機構を解明するとともに、可視光照射下でリーク電流増加のない真の透明トランジスタの実現を目指したものである。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。酸化亜鉛による透明TFTにおける光電流伝導メカニズムの解明と可視光透明トランジスタの実現するため、リーク電流の低下と光電流機構の解明を行った。当初の目標を達成することはできなかったが、幅広い実験により興味深い結果が得られた。しばらく基礎研究が必要と感じられる。
超微粒子を対象とした流動層型の造粒・コーター装置の開発九州工業大学馬渡佳秀本課題ではナノからミクロンオーダーの超微粒子を対象とした流動層型の造粒・コーター装置の開発目的とした。特に、そのような超微粒子が形成する凝集体の制御について、外部からの機械的な振動のアシストによる効果と、その流動機構について検討した。振動を流動層本体に付加することで、凝集体のサイズが減少することを確認し、さらに振動の伝搬が層全体に及ぶような条件では、凝集体群の層内における移動度が増大し、凝集体自身の転動効果が凝集体のサイズを大きく減少させることを見出した。従って、振動場を利用することで二次粒子としての凝集体サイズを制御でき、超微粒子を出発材料とした造粒・コーティング装置の開発に有意な知見を獲得できた。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。乾式操作において粒子間の凝集により著しくハンドリングが困難となるサブミクロン以下の超微粒子を対象とした流動層型の造粒装置およびコーターの開発を目的とし、流動層に対する振動の効果に関する基礎的な知見が得られた。しかし、当初目的とした種々な物性を有する超微粒子に対する検討にはいたらなかった。技術移転のためには、さらに実用性、汎用性に関する検討を進めることが望まれる。
超低消費電力ULSI実現に向けた超低誘電率層間絶縁膜開発のためのコンビナトリアル作製法の開発九州大学古閑一憲本研究では、ULSIの層間絶縁膜の実現に必要な課題の一つである、最適なポーラス構造を広範にかつ迅速に探索する手法の確立の実現のため、ポーラスナノ粒子膜のコンビナトリアル作製法を開発することを目的としている。今回は、コンビナトリアル作製法の第一段階として、ナノ粒子生成プラズマと窒素ラジカル生成プラズマを用いて、ナノ粒子の窒化度を空間的に制御するコンビナトリアルナノ粒子窒化を実現した。今後、これらの方法をポーラスナノ粒子膜作製に適用して、超低誘電率層間絶縁膜を実現する。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。LSIの層間絶縁膜を作成するために、ポーラスナノ粒子膜のコンビナトリアル作製法を開発することを目的としている。独立した二つのプラズマ源を動作させる、成膜システムを構築できたことは成果である。ポーラス窒化シリコン膜の形成を目指すには、プロセス的課題が残されている。研究を進めるには、課題の考察と検討が望まれる。
レーザ搭載群ロボットによるトンネル出来型管理システム九州大学倉爪亮複数台の移動ロボットが交互に移動しながら、搭載されたレーザ計測装置で施工中のトンネルの3次元形状を計測するシステムを開発した。本システムは、複数台の移動ロボットが相互観測に基づき高精度に位置同定を行う協調ポジショニング法(CPS)と、レーザレンジファインダによる実物体の3次元形状計測を組み合わせたものである。本研究開発では1)複数台のロボットからなる計測ハードウエアの開発、2)トンネル出来型計測ソフトウエアへの機能追加、3)模擬トンネルでの計測精度の評価、4)従来型トンネル出来型計測システムとの性能比較を行い、全長80mのトンネルでRMS誤差29.6mmの高精度な出来型計測が実現できることを確認した。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。自動制御ロボット技術を応用して、トンネルの出来高管理に関する小型・高性能のシステムを構築し、実地のトンネル計測テストにおいて、当初の目標である計測精度を達成した。今後の技術移転に向けては、施工中の計測と施工へのフィードバックに関するハード・ソフト両面からの取り組みが期待される。また、本技術は、トンネル計測以外にも、造園工作物、大型構造物などの計測のデジタル化に展開が可能であり、今後の研究の進展が期待される。
シリコン量子ドットデバイスに向けたナノ粒子精密制御ボトムアッププロセスの開発九州大学内田儀一郎本研究では、ICや太陽電池材料として最も広く利用されているシリコンのナノ粒子に着目し、その生成から基板への配置まで一貫して行えるナノ構造ボトムアッププロセスを開発することを目標とした。この目的に対し、SiH2/H2ガスを用いたマルチホロー放電プラズマCVD法を用いて、10nm以下の分散を持つシリコンナノ粒子の作製に成功した。また、そのナノ粒子の挙動をガス流により制御し、薄膜中への高密度取込に成功した(ナノ粒子薄膜の堆積に成功)。このナノ粒子薄膜(量子ドット薄膜)のデバイス応用として、増感型太陽電池を試作し、その太陽電池セルからの発電を確認した。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。ICや太陽電池材料として最も広く利用されているシリコンのナノ粒子に着目し、その生成から基板への配置まで一貫して行えるナノ構造ボトムアッププロセスを開発することを目標とした。SiH2/H2ガスを用いたマルチホロー放電プラズマCVD法を用いて、10nm以下の分散を持つシリコンナノ粒子の作製に成功し、増感型太陽電池の試作を行った。しかし、ナノ粒子の輸送制御までにはいたらなかった。今後は、技術移転に向けた目標値の設定と実現が望まれる。
省エネルギー制御技術を用いたインテリジェント電源タップの開発北九州工業高等専門学校滝本隆本課題の目標は、遠隔地からの消費電力監視・制御可能で、かつ省電力制御を実現するインテリジェント電源タップの開発である。本研究開発により、無線通信(WiFi)機能を有するマイコン搭載型電源タップを創出した。また、開発した電源タップに、ネットワーク通信機能、消費エネルギー計測機能、電源ON/OFF制御機能、待機時電源OFF機能を実装した。さらに、携帯電話を用いて遠隔地からの家電の電源ON/OFFや消費エネルギー監視が行えることを確認した。複数の電源タップによる省エネルギー制御機能については課題を残している。今後は、インテリジェント電源タップの数を増やし、既存電化製品を対象とした家庭やビルのエネルギー監視システム(HEMS/BEMS)を構築することで実用化を目指す。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。遠隔地から消費電力の監視・制御ができる電源タップの開発である。マイコン搭載型電源タップ回路の製作を行い、インテリジェント電源タップのプロトタイプを開発した。農業用ハウスで実証実験を行い、実現の可能性を示した。実用化には、信頼性の評価、節電効果の実証も必要である。特許の出願を含めて、実用化の構想をたて、課題を解決して行くことが望まれる。
ディーゼル排気ナノ粒子計測用レーザプローブの開発長崎大学植木弘信ディーゼルエンジンから排出されるナノメートルサイズの排気微粒子が問題となりつつある。本研究者は、ディーゼル噴霧計測用として半導体レーザを光源としたレーザ粒子流速計を独自に開発し、従来計測不可能であった噴射ノズル出口極近傍での噴霧粒子を詳細に計測してきた。このレーザ粒子計測システムは、光学的に SN 比が高いことが特徴であり、数百ナノメートルの粒子計測も可能であることが分かっている。本課題では、光源および光学系を改良することで数十ナノメートルの粒子を計測できるようなナノ粒子計測用レーザプローブを開発する。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。ディーゼル排気ナノ粒子計測用のレーザプローブについてレーザ光の低波長化および大開口数非球面レンズの採用により焦点直径を従来の1/4にすることができ、集光度を改善できることが確認され、微小粒子の計測可能性が確認された。しかし、当初計画した感度向上のための信号増幅回路の改良については実施できなかった。今後の研究の発展が期待される。
水素雰囲気中で作動する高性能ダイオード式COセンサの開発長崎大学兵頭健生本研究では、純H2雰囲気中で作動可能な高性能ダイオード式COセンサ(電極:貴金属薄膜、酸化物:陽極酸化により作製したTiO2膜)を開発することを目的とした。電流値は目標値(約100 μA)より若干高い値でしか作動しなかったものの(S/N比の問題)、H2中でのCOの目標検知濃度 (0.5 ppm) を十分検出可能なセンサ(電極:Pd-64Pt合金膜(Pd : Pt = 36 : 64 (wt%))およびその表面にAu薄膜をコーティングした積層膜)を開発できた。さらに、相対湿度 (RT) 0%におけるCO応答値に比べて、RT 100%での応答値は3分の1程度となったが(目標:2分の1)、湿度の違いを考慮すると許容できる量まで低減できた。応答回復速度は、空気中で比較的高温(600℃)で前処理することで、大きく改善(90%応答・回復時間:1分以内)できることが明らかとなった。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。固体燃料電池での計測を狙いに、純水素中で作動可能なCOセンサを開発する。センサ組成の検討により純水素中で、目標とする0.5ppmの検知を可能にした。作動電流、相対湿度の影響、回復時間については、目標値を達成できなかったが、大幅な改善がなされた。技術移転に向けては検討課題を明確にした上でさらなる性能の改善がが望まれる。
非駆動型プラズモンセンサの水素漏れ検知センサへの応用熊本高等専門学校松田豊稔筆者らは、レーザ光を用いて、小型で高速そして高感度に、液体や気体の屈折率を測定する駆動装置を要しないプラズモンセンサを考案している。本事業では、この非駆動型プラズモンセンサを、燃料電池や水素自動車等で用いられる水素漏れ検知センサとして応用することを目的に、(1)センサヘッド部(アルミのホログラフィック格子表面)にパラジウムの薄膜をコートし、センサの水素選択性を実験的に調べた;(2) パラジウム薄膜をコートした非駆動型プラズモンセンサのシミュレーションを行い、センサの機能を理論的に調べた。今後の研究課題はセンサの高感度化であり、シミュレーションによる設計指針の決定と実験によるその検証を行う予定である。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。非駆動型プラズモンセンサを、水素漏れ検知センサとして応用することを目的にセンサヘッド部にパラジウムの薄膜をコートし、センサの水素選択性を実験的に確認できた。また、パラジウム薄膜をコートした非駆動型プラズモンセンサのシミュレーションを行い、センサの機能を理論的に検討した。しかし、混合ガス中 の水素の検出、低水素濃度における感度の向上の課題が残されており、技術移転に向けてはこの点の克服が必要である。 
省エネルギーSiCパワーデバイス用基板の高能率・高精度加工法の開発熊本大学久保田章亀炭化ケイ素(SiC)は、Siに比べて優れた特性を有するため、エネルギー問題の解決に向けた電気エネルギーの高効率利用を可能とする次世代半導体デバイス用材料として有望視されている。しかしながら、SiCは高硬度かつ化学的に安定であるため、加工することが非常に難しく、現状では、研削加工、ダイヤモンド砥粒を用いた多段階の機械研磨ののち、複数回の化学機械研磨が行われてデバイス用基板が製造されている。このため、基板製造にかなりの時間・コストがかかっており、次世代パワーデバイスの普及の大きな妨げになっている。本申請課題では、このSiC基板を高能率・高精度加工できる加工技術を開発することを目的としている。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。パワーデバイス用基板として実用化が進んでいる炭化ケイ素(SiC)基板を高能率・高精度加工できる加工技術を開発することを目的としている。過酸化水素と遷移金属を使い、基板表面部を加工しやすくし、改質された領域を除去・エッチングして表面を平坦する新しい手法を考案して、実施している。当初の目標は達成されており、実際の素子での評価や、特許の出願を行うことにより、早期の実用化が期待される。
次世代型大口径ウェハに対応する塗布装置開発のための基礎研究熊本大学宗像瑞恵回転塗布工程において、自公転円板への塗布液の再付着を防止するカップを設計・製作することを目標とし、ウェハの代用に小型円板を用いて飛散液滴の挙動を高速度カメラで観察した。その結果を基に、公転円板とともに回転するカップを設計・製作し、第一段階の目的を達成した。また、油膜法による円板表面の気流の可視化および膜厚計測によって、乾燥後の膜のムラを評価し、実用化のための回転条件を調査したが、回転条件に依存することなく、装置全体を覆った安全カバーによる減圧効果が自公転円板上の気流に強く表れた。今後、安全カバー内の気流制御も含めて、装置全体を改良し、大口径ウェハの塗布装置への技術移転が可能かどうかを検討する。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。回転塗布工程において、自公転円板への塗布液の再付着を防止するカップを設計・製作することを目標とし、ウェハの代用に小型円板を用いて飛散液滴の挙動を高速度カメラで観察した。研究を進め、適切な計画変更を行いながら、ほぼ期待通りの成果が得られた。安全カバー等の新たな課題も発生しており、装置全体の再検討と、実機でのテストが望まれる。
多機能型流体混合器からの気泡混入水噴流による洗浄熊本大学川原顕磨呂工業製品の部品の洗浄には様々な方法が用いられており、その洗浄能力の効率化と向上を目的とした取り組みが続けられている。それらの洗浄では、加圧水と加圧空気を要する二流体ノズルがしばしば使用される。これに対し、申請者は各種気体を加圧せずに自吸可能な新型の多流体混合器を開発している。本課題では、この混合器を洗浄ノズルとして用い、洗浄対象物に気泡を混入させた水噴流を衝突させることにより洗浄効果を向上させることを目的とした。そして、高圧域(1- 5 MPa)でのそれらの流体力学的性能を明らかにした。さらに、加圧気体を用いずとも気体を自吸することにより洗浄力と密接な関係にある噴流衝突力を増加できることを示した。当初期待していた成果までは得られなかったが、技術移転につながる可能性は一定程度高まった。自吸可能な新型の多流体混合器洗浄ノズルとして用い、洗浄対象物に気泡を混入させた水噴流を衝突させることにより洗浄効果を向上させることを目的とし、高圧域(1- 5 MPa)での流体力学的性能を明らかにした。しかし、高圧域における洗浄効果の最適化 、多流体混合ノズルを用いた効率的な機能水の製造 、洗浄効果に及ぼす機能水の影響の明確化については、計画時の目標が達成されておらずさらなる研究の進展が望まれる。
変位比例摩擦力型振動減衰装置の耐久試験と製造原価に関する研究崇城大学片山拓朗減衰力としての摩擦力が変位の絶対値に比例して増加する特性を有する軸力部材型振動減衰装置を実用化するために、実機相当の装置を試作し、往復摺動試験によりその装置の減衰力と変位の履歴曲線を調べた。10 回程度の摺動回数では、履歴曲線は安定し理論曲線と良い対応を示した。しかし、摺動回数が増えると徐々に減衰力が増加し、100 回目では初回に比べて約 20%の減衰力の増加が認められた。この減衰力の増加は製作時の摺動面の初期不陸や作動中の弾性変形による摺動面の不陸により発生した摩耗粉の影響と推定された。今後は、これらの不陸を少なくする方法を検討し、摺動回数の増加に対して減衰力の増加が少なくなるように装置を改良する予定である。 概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。安価な変位比例摩擦力型振動減衰装置の設計・製作と耐久試験を小型スケールモデルで実施し、本耐振装置の有効性が確認できた。今後は、今回明らかになった長期間使用に対する摩耗の問題等の信頼性に対する課題をクリアし、企業との連携による大型実物大試験を通じての技術移転が期待される。
先端的磁場及び周波数掃引L-バンド電磁ホーン型ESR/ESRイメージング装置と生体・動物試料ESR/ESRイメージング応用計測法の開発大分大学小林正生体試料のESR研究に対処するために新たにL-band電磁ホーン型ESR装置、ループギャップ共振器を新たに開発し、稼動させてきた。またX-band用in vitro研究のESRイメージング用の共振器を、K-band電磁ホーン型ESRではin vivo二次元イメージング装置を開発した。他方これらの生体研究に便利で有為なラジカル試薬を2、3種類合成に成功して、これらを用いて新規な研究を行おうとしている。マイクロ波周波数掃引仕様電磁ホーン型ESR装置に関しては、LabViewによる自動化を行い、特殊な位相制御器を開発して、ほぼ位相の揃った周波数掃引ESRスペクトルの計測を行った。期待以上の成果が得られ、技術移転につながる可能性が大いに高まった。ESR(電子スピン共鳴)を、難治疾患治療などの生体計測に応用するため、誘電ロスが大きい試料に適用できるL-band (1GHz帯)電磁ホーン型装置を開発することに成功した。また、生体試料の試料台の開発を行い、ESR 難治疾患診断法の開発へ着手するなど応用が開始されており、実用化に向けての研究開発の発展が期待される。
超短パルスレーダによる魚の非侵襲雌雄判別技術の開発宮崎県工業技術センター小田誠アンテナの開発および評価を行ったうえで、チョウザメの雌雄判別に適した、超短パルスレーダシステムを構築した。また、雌雄判別率を高めるための信号処理方法を開発した。開発した装置を使って、チョウザメでの雌雄判別検証実験の結果、今回の実験に使用した7歳魚において、大きさが異なっても85%程度の確率で雌雄判別が可能であり、当初の目標を達成することができた。誤判定の最も主要な原因は発振器の出力変動(温度ドリフト)であると考えられる。発振器の出力をモニタリングしながら自動調整するシステムを構築できれば、判定率はさらに向上し、実用化が可能になると考えられる。今後はこの問題への対策を行った小型装置の開発に取り組み、養殖現場に装置を設置し、フィールド試験を行う予定である。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。高級食材「キャビア(卵)」の養殖生産効率向上のため、若い(1.5~2才魚)段階で、マイクロ波帯超短パルスレーダを用いて、簡便で安全な雌雄判別技術を確立する。目標とする若い段階での判定はできなかったが、7才魚チョウザメの卵巣、精巣の誘電率の相違から、85%の確率で雄、雌の識別を可能とした。技術移転のためには、目的とした若い魚への適用、動く魚への適用に研究が進むことが望まれる。
加工部加熱による複数個生産ヘッディング金型の開発鹿児島県工業技術センター松田豪彦本研究では、マグネシウム合金の棒状材料を用いた効率の良いヘッディング加工を行うことを目的に、新しい試作金型を開発した。マグネシウム合金の加工は室温では難しく加熱が不可欠であるが、同金型は加熱された下型から棒状材料への伝熱を利用することで、1回の金型移動で最大6本の棒状材料をヘッディング加工することを可能にした。また、上型部分は一度に複数の材料を装填することができ、下型部分は加工後に残っている成形品を容易に型外しできる。初期の目標どおり6本同時のヘッディング加工であっても加工前後の一連の工程も容易にすることができた。今後は、同金型のノウハウを企業の生産現場に展開していく。概ね期待通りの成果が得られ、技術移転につながる可能性が高まった。マグネシウム合金製ネジのヘディング加工をモデルとして、脆性材料の複数本を部分的に同時加熱成形する省エネルーギー型金型システムの開発に成功した。今後は、転造加工などのその他の塑性加工法への応用、他の脆性的な金属材料への展開などを通じて、産業界への貢献が望まれる。

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