ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

JST20周年記念誌JapanWay0203

第2部│歴史編戦略的基礎研究推進事業(CREST)は、このような中で当初1996年度の新規事業として予算要求がなされていたが、基礎研究の研究環境を強化するために緊急性があるという理由により、1995年度補正予算に組み込まれ、10月から前倒ししてスタートした。CRESTは第1期科学技術基本計画で打ち出された1研究費の選択の幅と自由度の拡大、2競争的な研究環境の形成に寄与する競争的資金の拡充、3基礎研究の積極的な振興、などを実現する仕組みとして具体化した。その狙いは、国際的水準を凌駕する基礎研究、知的財産の形成と新産業につながる革新的技術シーズの創出であり、研究代表者の強力なリーダーシップの下でチームとして推進していくこととなった。CRESTでは、社会的・経済的ニーズを踏まえて国が設定する戦略目標に基づき、目標達成に向けた研究領域と領域を運営する研究総括を設定する。研究総括は研究領域の長として、研究課題(研究チーム)を公募し、戦略的な基礎研究を推進する。CRESTの特徴として、この研究総括の存在が大きいことが挙げられる。研究総括の目利きと戦略により、公募した中から挑戦的な研究課題を採択し、自由度の高い研究を実施することが可能となる。その一例として、研究領域「免疫難病・感染症等の先進医療技術」の研究総括である岸本忠三先生(大阪大学)により、2003年に研究代表者に選ばれた山中伸弥先生がいる。研究領域のテーマである免疫や感染症ではない、皮膚の細胞などを基に、さまざまな細胞への分化が可能な人工多能性幹細胞(iPS細胞)を樹立するという課題で採択され、2007年にヒトiPS細胞の作製に成功した。この画期的な研究成果は、わが国のみならず世界中に大きな衝撃をもたらした。JSTは、iPS細胞研究を加速するために従来の研究支援の枠組みを超えて、2008年に「山中iPS細胞特別プロジェクト」を立ち上げ、特別プロジェクトとCREST、さきがけの研究課題と連携した大型研究支援を実現した。さらに、CRESTは、戦略目標および研究領域の特性に応じて弾力的かつ効果的に研究領域の運営を行っている。例えば、研究領域を単独で運営するのではなく、他の研究領域との協同運営が試みられた。具体的には、2001~2002年度に発足した「ナノテクノロジー」関係の9領域はさきがけの1研究領域と合わせ、全体を「ナノテクバーチャルラボ」として総合的に運営した。また、いくつかの研究領域では1人の研究総括がCRESTとさきがけの総括を兼任することで、ハイブリッド型研究領域として運営し、両制度の参加者の強い相互作用を生み出すことを目指している。さらに2012年度、さまざまな分野の要素技術を研究開発する小規模なチームを採択し、その後、それらを五つの最強チームに再編する研究領域を立ち上げた。2015年度には、研究期間を前半と後半の二つのフェー戦略的創造研究推進事業の概要図ACCELCREST研究総括研究代表者研究代表者研究開発運営委員会戦略目標さきがけアドバイザー研究者研究者研究者評価・助言プログラムマネジャー(PM)進捗報告ERATO研究代表者研究総括研究開発課題52