- 表面プラズモン増強加熱によるDNA伸張反応を応用した極微量病原体の迅速検出法
京都府立大学 生命環境科学研究科 応用生命科学専攻 教授 石田昭人
シーズの概要
病原性大腸菌O157やノロウィルスはわずか数十〜数百個で発症するため検体からの迅速な同定が感染拡大防止に不可欠である。しかし、培養法では数日を有する上に感度が低すぎ、PCR法でも数時間を要する。我々は表面プラズモン電場を熱に変換することで抗体マイクロアレイのうち標的を捉えたスポットのみを局所加熱し、RCA反応と呼ばれる環状鋳型を用いるPCR反応によって標的と結合した抗体分子の周囲からDNAを伸張させる技術を確立した。この方法を用いるとたった1個の菌体やウィルス粒子であってもその周囲から高分子量のDNAが伸張するため蛍光染色で容易に識別計数可能となる。しかも、分析に要する時間は30分程度で、抗体マイクロアレイを用いれば多数の病原体からの同定・計数も可能である。
マッチングを想定する業界
医用分析機器、バイオ薬品、光学機器、電子デバイス製造
用途利用分野
病院における迅速分析・感染管理、食品工業における衛生管理、畜産業における衛生管理
事業化および新規産業形成の可能性
食中毒の感染管理は社会的な要請がきわめて高いうえに、本技術は従来法と比較して感度や迅速性で圧倒的な優位性を有し、食中毒病原体以外への応用も当然可能であることから事業化の可能性は高い。さらに、微小光学や微細加工技術、マイクロ流体技術などを複合化したデバイスであることから新規産業形成の面でも期待される。
従来技術に対する新規性・優位性
従来技術の感度は10^4〜10^6 CFU/mLであるのに対し、本技術はわずか数個の菌体でも検出可能である。PCR法では10 CFU/mLの検出も可能であるが、数時間を要する。本技術は現時点でも40分で分析可能であり、十数分に短縮可能である。本技術は全く新しい分析概念に基づいており、検出感度と迅速性は圧倒的である。