評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成21年度終了課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

蛍光試薬用高輝度ナノ粒子分散ガラスビーズの開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者: 村瀬 至生 (産業技術総合研究所 主任研究員)

3.研究開発の目的

 半導体ナノ粒子(粒径2-6nm程度)は新しい蛍光体としてバイオ分野での応用が進んでいる。現状では、1個のセレン化カドミウム(CdSe)ナノ粒子をポリマーで覆って20nm程度のビーズにした後に、抗体を取り付けて抗原を検出している。開発代表者は、同じ程度の粒径のガラスビーズに10個前後のナノ粒子を封入する方法を開発し、更にカドミウムを含まないナノ粒子も合成しつつある。このような高感度、低毒性のビーズを蛍光試薬として完成させ、現状のバイオ分野の基礎及び臨床研究用蛍光マーカー市場の30%以上の確保を狙う。

4.事後評価内容

A)成果
 当初予定した逆ミセル法および親水性テルル化カドミウム(CdTe)ナノ粒子の使用がバイオ応用には不適切と判明したため、ゾル−ゲル法の1つであるストーバー法を用いて、セレン化カドミウム(CdSe)/硫化亜鉛(ZnS)コアシェル型の半導体ナノ粒子の蛍光特性を保ちつつガラスカプセル(粒径20-100nm)に閉じ込める方法を開発した。作製されたガラスビーズは、直径50 nmの場合、従来のポリマーコート量子ドットに比べて、輝度は約10倍、耐光性は100倍程度、緩衝液中でのカドミウムの溶出は10分の1以下を実現した。
本事業期間中の特許出願数:5件
B)評価
@研究開発計画の達成度
 当初目標としていたカドミウムを含まないナノ粒子によるビーズ技術は確立できず、また逆ミセル法からストーバー法へ変更するなど、ナノ粒子の組成やガラスビーズ作製法などについて、当初の目論みから外れたが、最終的には一定の性能・機能を発現できる技術を確立し、実証評価用ビーズ(CdSe/ZnS分散)を作製できた。
A知的財産権の確保
 ナノ粒子分散ガラスビーズ及びその製造法を中心に権利化が進められているが、今後、アプリケーションごとに適切な出願が必要と思われる。
B起業計画の妥当性
 様々な視点で計画が練られているが、応用分野毎のニーズに応じた開発や事業としてのターゲットの絞込みなどが必要である。十分な事業計画を立案するには、起業までのロードマップ、特に販売先の実地調査など営業活動と商品開発の連携施策を具体的に検討する必要がある。
C新産業創出の期待度
 技術的には高輝度、高耐久性など優位な部分も見られるが、カドミウムフリーの技術確立、凝集や非特異吸着の抑制技術開発など、更にブラッシュアップできれば他社技術に対して十分に差別化できる要素を持っていると思われる。また、太陽電池などエネルギー分野での応用が実現できればマーケットも広がり、新たな事業分野創出が期待できる技術である。
D総合・その他
 研究開発は順調に実施され学術的には成果も出ているが、事業化に関しては見直す必要がある。商材としての市場性、実使用時の優位性等のメリット・デメリットが不明確なので、これらを明確にした上で事業を立ち上げる必要がある。適切なコラボレーションパートナーと連携して、商材開発と市場調査を一層スムーズに進め、性能、サポート、価格のトータルで差別化する戦略が必要だと思われる。

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