評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成20年度終了課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

レーザー描画基礎技術の研究開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:須川 成利 (東北大学 教授)
起業家:小坂 光二

3.研究開発の目的

 システムLSIを生産するに当たり最大の課題は、システムLSIのパターン形成に使用されるマスク製造時の描画に時間がかかるため、その価格が異常に高額なことである。本研究開発では、露光用マスクの製造技術において、従来の電子ビーム描画に替わり、レーザービームを用いて高速にパターンを描画できる基礎技術を開発する。描画時間の大幅な短縮により、我が国のエレクトロニクス産業用の戦略商品であるモバイル・デジタル家電などに必須な少量多品種製品の生産コストを下げ、市場の拡大や競争力の向上に大きく貢献できる。

4.事後評価内容

A)成果
 電子ビ−ム描画に対して10分の1以下の描画時間を可能とするための基礎技術を確立し、描画装置を開発した。この装置は、90nm設計ル−ルのチップの16倍マザーマスク基板1枚を1時間以内で描画することができる。
 本技術はマスク描画だけでなく、パターン直接描画への応用展開も容易に行えるという特徴がある。これらの成果をもとに、株式会社オプティカル・リソグラフィー・システムズ(仮称)を平成21年9月に設立する計画である。
本事業期間中の特許出願数:1件
B)評価
@研究開発計画の達成度
 当初の技術目標を達成しただけでなく、描画精度については目標性能を大幅に超えた。特に、積算光量と描画線幅のばらつきを押さえ込む精度補償技術は評価出来る。本技術成果をマスク描画用途だけでなく、パタ−ン直接描画用途に展開するためのマ−ケティングも実施している。今後、競争力の高い製品が期待される。
A知的財産権の確保
 本事業の研究開発期間中の出願件数は1件であるが、基本特許等は13件と多い。目指す市場を意識した応用特許の出願が望まれる。
B起業計画の妥当性
 「レーザー描画装置」を事業化するためには販売力を有する企業との協業が必要である。機器の保守や装置の運用、ソフトのバ−ジョンアップなどのサポ−ト体制を考慮した組織作りも必要である。 
C新産業創出の期待度
 マスク作成が高額である事が半導体業界にベンチャー企業が育ちにくい原因の一つと言われている。いかにファブレスを活用してもマスク作製費用は大きな負担となることから、安価にマスクが作成できる本技術への期待は大きい。
D総合・その他
 技術成果について評価できるが、事業が成り立つかどうかは、判断が難しい。製造委託先企業、販売力のある企業との関係構築が課題と思われる。

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