評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成20年度終了課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

高分解能小型マルチターン飛行時間型質量分析計の開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:豊田 岐聡 (大阪大学 准教授)
起業家:三木 伸一

3.研究開発の目的

 質量分析装置は、様々な分野において必要不可欠な分析機器として幅広く用いられている。大阪大学理学研究科で開発した小型で高分解能(数万以上)が得られるマルチターン飛行時間型質量分析計を核として、卓上型あるいは携帯可能な機器として用いることができる装置開発をし、起業、市販化へつなげていく。現在小型で、マルチターン飛行時間型質量分析計のような高分解能が得られる質量分析計は存在しない。質量分析計の新規市場を開拓し、近い将来に500台/年程度のシェアを狙う。

4.事後評価内容

A)成果
 ハードウエアの性能は、製品として十分なレベルまで到達した。筐体設計も完了した。製品として完成度を更に高めることが必要であるが、目標としていた分解能は達成した。これらの成果を基に平成20年3月にMSI. TOKYO株式会社を設立した。
本事業期間中の特許出願数:2件
B)評価
@研究開発計画の達成度
 マルチターン飛行時間型質量分析計の小型化(本体・回路)が課題であったが、製品として実用化レベルまで開発されている。ただし、用途が広いため、取り扱いの簡便さと、測定精度向上が要求されているので引き続き努力を期待したい。
A知的財産権の確保
 装置の権利は押さえられるであろう。今後は、更に周辺技術を含め知財の確保に努めて欲しい。
B起業計画の妥当性
 本技術を普及させるための戦略として、早期に会社を設立したことは結果的に良かったと思われる。資本提携や業務提携をはじめとし、機能別の提携を強化していくことでグローバルな展開が実現できると考える。しかし、少量生産でも事業として成り立つモデルも検討しておくことが必要である。
C新産業創出の期待度
 「安全・安心」や「環境」の分野などで活用されそうな分析機器の開発に成功したものであり、分析分野での新しい機器としての活躍が期待できる。
D総合・その他
 従来の飛行時間型質量分析装置と異なり、比較的安価なうえ、分解能も高く、質量範囲も広く各方面から注目されている。今後、進め方によっては大型製品に育つ可能性を持っている。利用範囲の広い分析機器として発展が期待できる。

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