評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成20年度終了課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

高効率ジャイロ式波力発電システムの開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:神吉 博 (神戸大学 教授)
起業家:古澤 達雄

3.研究開発の目的

 2005年地球温暖化防止のための京都議定書が発効し、日本でもCO2排出削減が急務となっている。波力発電システムは、海洋国日本に適した自然エネルギー発電技術として、その実用化が期待されている。本研究開発では、従来の空気タービンを用いた波力発電システムとは全く異なる新しい原理に基づき作動するジャイロ式波力発電システムの実用化開発を行う。波で揺れる浮体の運動からジャイロにより直接発電機を駆動するもので、従来の2倍以上の高効率が実現でき、漁村や離島への設置・稼動が期待できる。省エネルギー対策だけでは既に限界であることが解り、自然エネルギー発電の実用化が必要・不可欠となっている状況下、本技術が完成すれば、種々のクリーンエネルギーの開発に拍車がかかることが予想される。

4.事後評価内容

A)成果
 既設機および試作機による海上実験を行った。それらの結果に基づき新しい工夫を多く盛り込んだ新設計試作機は、当初計画以上のものが完成し、本システムが十分高効率で発電でき、十分な耐久性を有することが検証できた。これらの成果を基に平成20年1月に株式会社ジャイロダイナミクスを設立した。
本事業期間中の特許出願数:3件
B)評価
@研究開発計画の達成度
 装置を試作して実証実験を行い、実用レベルに達した波力発電システムのプロトタイプが完成したことは評価できる。今後も、製品としてのスペックを更に検討しコストダウンをはかる必要がある。
A知的財産権の確保
 周辺技術も含め新しく特許を申請しており、差別化に向け十分な取り組みが見られるが、ビジネスの観点からは、更に出願を続け強化する必要がある。
B起業計画の妥当性
 90KW級又は50KW級の実用機を用いたデモンストレーションが、暫く続くと思われるが、その間に、「新エネルギー」としての認知度の向上と実用性の働きかけが必要である。先ず販売実績を上げることが重要なポイントである。大手のOEM受注することも視野に入れておく必要もある。また、海外への事業展開も考える必要がある。
C新産業創出の期待度
 認知度はまだ低いが、新しい自然エネルギー源としての期待があり、海に囲まれた日本では適地が多いのではないかと予想できる。徐々に理解が進むと、日本を支える新産業の一つとして育つ可能性もある。しかし、導入の意思決定に時間がかかる製品である。
D総合・その他
 自然エネルギーの一つである「波力」を効率よく取り込む新しいシステムが開発できたことは評価できる。しかし、技術を実用化していくために、電力関係やプラント関係の企業と連携により収益を得る事業モデルも検討する必要がある。

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