つなぐしくみ申請 H19年6月 |
アマモ場は日本全国の沿岸域に分布し、水質浄化能を持ち、魚介類産卵場及び幼稚魚の成育場として海洋沿岸の水圏環境の改善に寄与することが期待されている。本技術は採取したアマモ類の茎組織、種子を滅菌容器内の培地で初期生育し、茎組織、発芽幼植物体を各種栄養源を含んだ人工海水培地等に移すことによって、根及び茎葉を再生させ、無菌のアマモ類の幼植物体を作出するものであって、本技術はアマモ類の大量増殖を可能にするための基盤技術である。
申請時には、可能性を示す基礎的なデータは採取していたが、さらに多くの試料によって無菌のアマモ類の幼植物体を材料として、増殖体の誘導に適した温度条件、光条件等、各種培養環境条件を検討し、研究を進める必要があった。また、実用化していくには種苗を大規模に生産し、海域での実証試験を行うために藻場造成に実績のある民間企業等と連携し、活着率の向上や低コスト化を進めるための大量増殖法の改良、その技術移転のための市場調査、ライセンス先企業の探索を希望して、「つなぐしくみ」へ応募があった。
「目利きレポート」で実用化を可能にするためには各種培養データが不足であることを指摘するとともに、「つなぐしくみ」で提供するデータ補完費により、培養条件を明確にするための調査試験を行った。その結果、培養温度と生長に関しては、アマモの増殖組織の元となる根の数は培養温度が高いほど多くなる傾向がみられ、温度条件に対するアマモの生長への影響が把握でき、今回一部に観察された増殖体様組織をさらに効率的に誘導するための基本培養環境条件として利用できることが分かった。研究成果をJST新技術説明会にて発表し、2社の個別相談があり、1社から培養設備用滅菌試験容器の提供を受けることになり、実用に近い技術による試験を推進できることになった。また、成果は「テクニカルアイ」にて技術をWebで公開した。
実用化に向けたデータの取得。
アマモ類の生長制御には、温度が深く関与することが分かってきた。「つなぐしくみ」での支援(マルチインキュベータ導入等)により、その関連性を詳細かつ効率的に調査でき、より適正な培養条件を解明することができた。また、JST新技術説明会では、植物順化試験に協力してもらえる化学系企業とコンタクトできる等、貴重な情報発信機会を得た。
(作成日:平成22年3月31日)