つなぐしくみ申請 H19年6月 |
音響や通信など時間的に環境が変化する時変システムにおいては、変動するパラメータを正確に推定し、適切な補償を行ってシステムを安定制御することが要求される。このような処理を行う場合、高速性と計算量はトレード・オフの関係にあるが、本技術はその両立性を実現する新規のアルゴリズムを提供するものである。
申請時には、既に基本技術である高速H∞フィルタのDSPへの実装を行い、エコーキャンセラに適用してその有用性は確認されていた。しかし、実際に携帯電話機に組み込むためにはさらに計算量を削減する必要があること、優位性実証のため従来方式と比較できる評価装置の試作を行うことが必要となっていた。競合技術も多く技術の有用性、優位性をデモンストレーションして示すことは極めて重要で実用化を加速するため「つなぐしくみ」へ申請があった。
「目利きレポート」で実用化の際必要となる競合特許および周辺特許情報や市場動向情報の調査結果を提供した。また、計算量削減のアルゴリズム開発、評価装置の試作を「つなぐしくみ」で提供するデータ補完費により実施した。その結果、新規アルゴリズムを実装した評価装置が完成し、関心のある企業に対し効果的なデモンストレーションを行い従来技術との差別化を実証することが可能となった。この試作を通し技術協力した音響装置メーカとの間で特許ライセンス契約が成立した。また、JST新技術説明会やイノベーション・ジャパンでの発表、テクニカルアイのWeb掲載などを通して技術のPR活動を推進した。この結果、カラオケ装置メーカ、音響機器メーカ、DSPメーカ、携帯電話メーカやオペレータとの間で技術導入の検討が進められている。また、応用分野も携帯電話用エコーキャンセラのみならず遠隔会議システム、カラオケ用音響装置、拡声システム、騒音制御、3D音楽などへ広がりつつある。
特許ライセンスした企業からDSPボードとして実用化し既に販売されている。このDSPボードを用いて複数の企業が音響システムを開発中である。
(作成日:平成22年3月31日)