報告書 > 研究開発課題の個別評価



プレベンチャー事業

平成13年度採択課題事後評価報告書

平成17年3月
科学技術振興審議会技術移転部会プレベンチャー評価委員会

 

 

4.

研究開発課題の個別評価

(9)エンジンシリンダコーティング

 

リーダー

:篠田 剛(名古屋大学大学院 工学研究科 教授)

サブリーダー

:村上 秀樹

 

1 ))

研究開発の概要

自動車エンジンのアルミニウムシリンダ摺動面上に、耐摩耗性、接合強度、熱膨張収縮強度などの点で優れた硬質膜をコーティングする表面改質技術の研究開発を行う。地球温暖化や環境問題の観点から求められているエンジン部品の軽量化、リサイクル性向上のための技術として期待される。

2 ))

事後評価内容

A)成果
アルミシリンダ内にセットした硬質材料にロッドを接触させ、回転・荷重を加えることで発生する摩擦熱により硬質材料を可塑化し、塑性流動させながら圧着することによりシリンダ内面に硬質膜を創成した。光学顕微鏡、走査電子顕微鏡による組織観察において、コーティング層とシリンダ内面が十分に接合していること、また超音波探傷装置による接合面の全域検査で、接合面積率99%以上と欠陥の無い良好な接合層を得ていることを確認した。これらの成果をもとに、有限会社サーモフォーミングテクノロジーを設立した。

特許出願数:1件(研究開発終了時点)

 

B)評価

計画の達成度

:摩擦圧接法という新しい工法により、アルミ合金シリンダーの内面を硬質材料でコーティングする技術を確立した。コーティングのサイズも大きく、接合面の強度もあり、工業生産を前提とした技術が達成できているが、実際に自動車のエンジン部品として使用されるためには実装・評価試験が引き続き必要である。

知的財産権

:出願特許はプロセス特許が中心となっているため、今後は用途に応じた材料及び完成品に関する特許を広くカバーしていく必要がある。

起業化計画

:ユーザーを獲得できれば一定の売り上げが期待できる。自ら材料と機械を製造販売するメーカーとしての事業展開以外に、自動車メーカー、同シリンダメーカーとの共同研究、技術コンサルティングや技術を売っていくライセンスビジネス等も検討すべきである。

新産業創出

:エンジンの軽量化に役立ち、省エネ効果など自動車業界に与える影響は大きい。また自動車以外の多種多様な製品への適用の可能性もあり、新産業創出の期待度は大きい。

総合・その他

:かなり困難な技術にも関わらず目標値は達成された。自動車業界に与える影響は大きいと判断するが、心臓部に当たるエンジン部分の材質変更であり、実用化までには時間がかかると思われる。また、材料の多様化、信頼性確保、量産化、低コスト化など実用化のための課題もなお残されており、自動車メーカー、鉄鋼メーカーなどとの協力を視野に入れた事業展開が望まれる。

 

目次に戻る



This page updated on May 19, 2004

Copyright©2004 Japan Science and Technology Agency.

www-admin@tokyo.jst.go.jp