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プレベンチャー事業

平成13年度採択課題事後評価報告書

平成17年3月
科学技術振興審議会技術移転部会プレベンチャー評価委員会

 

 

4.

研究開発課題の個別評価

(2)蛋白質の徐放性製剤

 

リーダー

藤井 隆雄

サブリーダー

小川 泰亮(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター 客員教授)

 

1 ))

研究開発の概要

ヒト成長ホルモンなどの生理活性蛋白を医薬品として投与する際、従来の投与方法で生ずる患者に過剰な負担を強いるなどの問題を解決するために、1回の投与で長期間に亘り体内で徐々に放出する徐放性を有する蛋白質徐放性製剤を研究開発する。この技術により、患者は現状の頻回投与から解放されQOLは大きく向上し、医療費全体も低減されることが期待できる。 

2 ))

事後評価内容

A)成果
 
当初意図していたポリ乳酸・グリコール酸(PLGA)では有機溶剤によるヒト成長ホルモンの変性が起こることが判ったので、水溶液中で調製できる材料を種々検討した結果、優れた徐放性を有しかつ多量のヒト成長ホルモンを保持できるヒドロキシアパタイト誘導体(HAp−D)微粒子に対してさらにポリ乳酸−ポリエチレングリコール(PLA/PEG)という新しい生分解性ポリマーをコートすることにより、当初目標の皮下注射回数が2週間に1回以下でかつ初期過剰放出に伴なう副作用も回避できる優れた徐放性製剤を得ることができた。これらの成果をもとに、ガレニサーチ株式会社を設立した。

特許出願数:2件(研究開発終了時点)

 

B)評価

計画の達成度

ポリ乳酸・グリコール酸(PLGA)による製剤の不具合を早期に気付き、原権利に代わる基本技術の研究開発を実施した結果、ヒドロキシアパタイト誘導体(HAp−D)微粒子にポリ乳酸−ポリエチレングリコール(PLA/PEG)という新しい生分解性ポリマーをコートしたヒト成長ホルモン徐放性製剤を開発することができた。

知的財産権

ヒト成長ホルモンならびに蛋白性薬物に関する特許が出願されており、ライセンスしていくための基本的な知的財産権は確保されたが、原特許を含めて3件であり、更なる特許創出が望まれる。

起業化計画

ビジネスモデルや技術もしっかりしており、ベンチャーキャピタルや研究開発製造のパートナーも見えてきている。開発中の蛋白医薬品の種類は多く、市場性の高い分野での事業展開を考えており、各製薬会社との事業提携も可能である。ラットやサルを用いたヒト成長ホルモンの徐放製剤の改良研究はほぼ終了したものの、人を対象にした治験や製造研究が必要であり、先ずはこれにフォーカスして成功させることが望まれる。

新産業創出

ヒト成長ホルモンなどの各種蛋白医薬品に留まらず、新たな安全かつ有効な徐放性を有する新薬創出に広く応用できる。社会的意義が大きく、ニーズも高いため、グローバルな市場展開が期待できる。

総合・その他

ヒドロキシアパタイト誘導体(HAp−D)微粒子にポリ乳酸−ポリエチレングリコール(PLA/PEG)という新しい生分解性ポリマーをコートしたヒト成長ホルモン徐放剤を開発することができた。新たな特許創出、徐放性製剤の製造研究や徐放性効果の更なる改善などの課題は残されているものの、本技術はほぼ確立されており、蛋白医薬品の新規な製品化ツールとして期待される。設立企業の体制やビジネスモデルもしっかりしており、国産バイオベンチャーとしての期待度は大きい。

 

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This page updated on May 19, 2004

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