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プレベンチャー事業

平成13年度採択課題事後評価報告書

平成17年3月
科学技術振興審議会技術移転部会プレベンチャー評価委員会

 

 

4.

研究開発課題の個別評価

(1)血液凝固因子生産型バイオリアクター

 

リーダー

:赤池 敏宏(東京工業大学大学院 生命理工学研究科 教授)

サブリーダー

:太田 宗宏

 

1 ))

研究開発の概要

ヒト由来の肝細胞を糖鎖ポリマーを主成分とする担体を用いて培養することにより、培養肝細胞に高効率で血液凝固因子を生産させ、さらに培養系をモジュール化して血液凝固因子生産型肝細胞バイオリアクターの設計開発を行う。新鮮凍結血漿に代わる安全で安価な多種血液凝固因子混合製剤(血液凝固因子カクテル製剤)を医療現場へ安定供給できる技術として期待される。 

2 ))

事後評価内容

A)成果
通常の肝細胞を人工培養する場合、一般に単離直後からその機能が減少の一途をたどり、その機能維持は非常に困難であるとされている。長期間の人工培養が可能な肝細胞バイオリアクターについて種々検討した結果、糖鎖ポリマーを担体主成分に利用し人の肝臓を模した細密充填モジュールを開発し、これにより初代肝細胞の機能を長期間維持することができ、全ての血液凝固因子のmRNAの発現を認めることができた。この成果をもとに有限会社ヒットを設立した。

特許出願数:0件(研究開発終了時点)

 

B)評価

計画の達成度

:当初予定の血液凝固因子製剤を製品化することはできなかったが、肝細胞バイオリアクターについて、様々な角度から検討し、肝細胞の培養に関する基本的なプロセスを確立した。

知的財産権

:原権利12件に対し、現段階で研究開発によって出願した特許はない。バイオリアクターの材料、プロセス等、研究開発の進展に基づく特許を出願して知的財産権を強化することが望まれる。

起業化計画

:バイオリアクター用の基材や担体は優れており、十分なビジネス材料になり得るが、コスト面や量産性、血液凝固因子カクテル製剤の開発期間や提携先など、起業化後の計画を再度詰めていく必要がある。またヒト肝細胞のソースが未だ決まっておらず、ソース提供先と提携して開発を進めることも考慮すべきである。

新産業創出

:新しい発想のビジネスであり、社会的意義は大きく期待度も高い。血液関連の大きな市場へ参入するためには他企業との提携も視野に入れるなど、事業計画をより具体的なものにする必要がある。

総合・その他

:細胞の機能を長期維持しかつ高機能化することができる培養基材など、肝細胞培養技術に関する基本技術を開発した。この成果をさらに発展させ、開発目標の血液凝固因子製剤を製品化することが今後の課題であるが、メーカーなどへ早期技術移転を視野に入れることも必要である。 

 

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