評価一覧評価報告書目次 > 6.研究開発課題の個別評価(別紙2)

「独創的シーズ展開事業 独創モデル化」
平成17年度採択課題 事後評価報告書

平成18年10月

独立行政法人科学技術振興機構
科学技術振興審議会技術移転部会
独創モデル化評価委員会


6. 研究開発課題の個別評価
 1 圧電トランスを使った安定化直流高圧電源の製品化に向けた試作

企業名 :株式会社 エヌエフ回路設計ブロック
研究者(研究機関名) :井森 正敏(東京大学 素粒子物理国際研究センター 助手)

1) モデル化の概要および成果
 圧電トランスはピエゾ効果を利用したトランスであり、高い昇圧比と効率の良いエネルギー変換を利点とする。本モデル化では、CERN(欧州原子核研究機構)の特殊規格を満足させることと更なる性能向上を目的として、高磁場・高放射線下で高精度に出力電流と出力電圧を制御できる小型の直流高圧電源装置の開発を行った。
 今回のモデル化ではCERNの入力ドライブ電圧仕様48Vが現状圧電トランスの特性的に不可能であることが判ったため、低昇圧比の圧電トランスを開発し入力ドライブ電圧の12V化を行った。また1次-2次間がアイソレーション可能な2端子対形圧電トランスの採用で出力電流の検出精度を向上させ100nA精度の電流が測定できる高精度モードを電流モニタに追加した。出力ノイズの低下と安定度の向上を行うためにローカルフィードバック回路2段追加したが、回路の見直しと部品の小型化で従来と同一体積(72cm3)に抑えることが出来た。これにより出力ノイズは20mVp-pと従来の1/5に減少した。
 具体的には、出力電圧4kVが可能な、体積72cm3の小型化高圧電源を実現することが出来た。当電源は精度±2%の出力電圧モニターと出力電流モニター機能を持つ。耐環境性能では、CERNの定める耐放射線性の規格を満足する耐放射線性能と周囲磁場1T、1,000時間連続動作する耐強磁場性能を実現している。また先行試作で70℃ 1,000時間の連続動作が確認されている。一方入力ドライブ電圧は当初のCERN目標を満足するまでには至らなかった。これについては今後圧電トランスの更なる改善やオンボードの低圧電源の開発などの対策を講じて達成する予定である。
2) 事後評価
1モデル化目標の達成度
 モデル化目標は概ね達成したと認められる。今後はCERN(欧州原子核研究機構)の検定に合格を期待する。
2知的財産権等の創出
 現時点での出願はない。
3企業化開発の可能性
 CERN規格の許認可取得の電源で新市場が期待できる。また、強磁場内に於ける安定電源などの実用化に開発の意義が大きい。
4新産業、新事業創出の期待度
 多くの特長があり、需要拡大が期待でき、新商品・新市場の開拓、創出期待度は大きい。原価面、信頼性面から、製品としての競争力をつけて頂きたい。
3) 評価のまとめ
 開発に当たっての地道な努力は評価できる。今後もさらなる開発推進に努め、ノウハウの結晶である日本発の独創的新技術として育てていただきたい。

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This page updated on November 7, 2006
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