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研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)

平成15年度実施課題 事後評価報告書



平成17年1月
科学技術振興審議会技術移転部会独創モデル化評価委員会


5. 評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
 41 (H15−0142)環境履歴表示材の開発

企業名 :大阪シーリング印刷株式会社
研究者(研究機関名) :町田 憲一(大阪大学 先端科学イノベーションセンター 教授) 他1名

1 ) モデル化の概要および成果
 鮮度が問題となる食品(魚、肉および野菜)に対し、生産者から消費者に渡るまでの環境履歴を簡便に把握することは、食の安全性を確保する上で極めて重要となる。これまでに酵素反応を利用した鮮度表示シールやICタグが開発されているが、大量に流通する食品などへの適用は高価なため難しいのが現状である。
 これに対し本モデル化では、磁性体で見られる負の作用、すなわち、熱擾乱によるスピン配列の乱れや酸化等に基づく物質自身の劣化を利用し、磁性体からの漏洩磁束の経時変化を高感度磁気センサ(MIセンサ)を用いてモニターする技術に関するもので、食品等の被検体の置かれた環境履歴を簡便に計測表示することが可能となる。
 温度モニター材料には(ZNX CoY)Fe2O4を採用し、時間モニター用には磁気記録用のメタル粉末を処理したものを用いた。これら磁性粉末を塗料化すると共に印刷塗布し、センサシールとした。このセンサシールを被検体に貼付することで、一連の環境条件下でのセンサシールの漏洩磁束の値から履歴温度や経過時間を簡便に計測表示できることを実証した。本手法は測定原理が単純であると共に、シール原材料が酵素やICチップ等と異なり安価であることを特徴としている。

2 ) 事後評価
モデル化目標の達成度
磁性材料を用いた温度モニター材料作成は目標を達成した。しかしながら、時間モニター材料作成は開発の完成度、信頼性、量産化の点で問題点が残っている。
知的財産権等の発生
 特許3件出願済み。今後の研究進捗によっては新たな出願もあり得ると期待される。
企業化開発の可能性
 温度モニターについては今後企業化に結びつく可能性がある。時間モニターについては適した磁性材料を選択するための研究がさらに必要である。
新産業、新事業創出の期待度
 環境履歴の測定法の原理は簡便であり、本モデル化が完成すれば手軽に扱える手法として流通業界への波及効果は大きいと考える。
3 ) 評価のまとめ
 今後磁性材料の最適化の必要はあるが、鮮度が問題となる食品などに適用可能な、温度モニター、時間モニターとしてだけでなく、環境履歴の測定法としての利用拡大の可能性は大きい。ただし、技術としては開発を必要とする問題点も残されているので、引き続き開発努力が期待される。

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This page updated on March 25, 2005
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