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研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)

平成15年度実施課題 事後評価報告書



平成17年1月
科学技術振興審議会技術移転部会独創モデル化評価委員会


5. 評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
 35 (H15−0121)集積型錯体による選択的ガス吸着剤の開発

企業名 :株式会社 ナード研究所
研究者(研究機関名) :前川 雅彦(近畿大学 理工学総合研究所 講師) 他2名

1 ) モデル化の概要および成果
 錯体分子が配位結合により連結された構造を持つ集積型錯体は、構造的特徴のひとつとして骨格構造に囲まれた空孔を有している。この空孔のサイズを変化させることで、特定の大きさの分子のみを空孔に取り込ませることができる。これを利用してノルマル体とイソ体混合物を分離するガス吸着剤、さらに特定のガスに対する親和性を高めて、微量のエチレンガスを吸着するエチレン吸着剤を検討した。 この結果、〔Cu(1,4-Naphtalenedicarboxylic acid)・1/2(Triethylenediamine)〕n 錯体は、ノルマル体のみを吸着し、その選択率は100%に近かった。また、〔Cu(CH3CN)4〕PF6 錯体は焼成することで、1ppm濃度のエチレンガスを選択的に吸着することができた。 これらの錯体の特性を上手く利用して、C4,C5炭化水素の各成分の分離に利用できれば、今までの分離精製法とは違った分野が拓ける。このエチレンガス吸着特性を決定的なエチレン吸着剤がなかった生鮮食品の鮮度保持に利用すると、食品および生花の革新的保存方法の実現が可能になり、さらに新たな吸着剤の用途を広げることになる。

2 ) 事後評価
モデル化目標の達成度
 イソプレンとペンテンの選択吸着ではかなり高い選択性が得られ、またエチレンでも低濃度下での吸着が確認され、当初の目標は達成された。
知的財産権等の発生
 特許出願検討中。
企業化開発の可能性
 利用用途は広いと考えられるが、性能の安定性、寿命、コストに関する記載が無く、企業化開発の可能性は不明。
新産業、新事業創出の期待度
 選択的吸着剤として用途は広範囲にあると思われるが、現時点での実施内容は性能評価が中心である ため、経済性、市場性に関しては不明。
 商品化の研究では新たな課題と可能性の発生が予想されることから、目的を絞って、例えばエチレン吸着剤に絞って商品の提案検討も必要であろう。
3 ) 評価のまとめ
 集積型錯体の特性を利用した特定ガスの吸着について基礎技術を確立し、ガス分離の可能性をもった錯体を見出せたので、更に吸着能力の向上、吸着剤を組み込んだガス分離方式の検討等の技術的課題の解決に加え、市場性にも配慮し、新規な特性に見合った商品開発に期待する。

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This page updated on March 25, 2005
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