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研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)

平成15年度実施課題 事後評価報告書



平成17年1月
科学技術振興審議会技術移転部会独創モデル化評価委員会


5. 評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
 27 (H15−0069)生体由来架橋剤を用いた高強度・低毒性接着剤の開発

企業名 :フルウチ化学株式会社
研究者(研究機関名) :田口 哲志(独立行政法人 物質・材料研究機構 生体材料研究センター研究員) 他6名

1 ) モデル化の概要および成果
 外科手術で創傷部を迅速に閉鎖するため、縫合糸に代わる生体接着剤の開発が求められている。しかし、接着剤の強度を高くすると毒性が高くなり、逆に毒性を低くすると強度も低下する。これまでに生体内に存在するトリカルボン酸を出発物質とする生体由来架橋剤を1成分とする高強度・低毒性の接着剤を実証した。本モデル化課題では、高強度・低毒性の実践的な利用を目指した接着剤の開発を行った。
 本モデル化課題では、新規接着剤の化学的安定性、接着時間の最適化、生体内の分解速度・安全性を高度化して、医学応用分野を拡大し、企業化に必要な基礎データの取得を行った。本開発の結果、接着時間を5〜30分、接着強度を被接着組織の強度の半分以上とする目標を達成した。一方、接着成分の粘度は、生体高分子の種類を最適化することにより、ハンドリングが容易な接着剤の調製条件が得られた。また、生物学的安全性試験と生分解性試験により、本接着剤は、生体に対する毒性は低く、0.5カ月以内で分解することが明らかとなった。混合システムのデザイン・設計については、試作品を完成するには至ったが、今後、工学系と医学系とのディスカッションを深め、さらに検討する必要がある。本課題では、将来的な可能性の検討を目的として、皮膚、生体腱の接着試験を行い、組織学的な観点からこれらの組織へ応用の可能性があることも明らかにした。

2 ) 事後評価
モデル化目標の達成度
 架橋剤の接着時間・ハンドリングの改善、一部の組織への適合性等に検討の余地を残したが、接着性、安全性、生体分解性等の基本的な機能は実証されており、当初の目標はほぼ達成された。
知的財産権等の発生
 特許1件出願済み。
企業化開発の可能性
 架橋剤は現存のものに較べて安全性、一部の機能性に優れている等の有用な知見が得られており、時間は掛かるが実用化の可能性はあるものと思われる。
新産業、新事業創出の期待度
 将来的には接着剤の他に止血剤、シーラント癒着防止膜等への応用も考えられ、波及効果は高いと思われる。
3 ) 評価のまとめ
 本課題では、生体内トリカルボン酸誘導体を架橋剤とする接着剤の高強度・低毒性を実証すると共に、医学応用分野を拡大するために化学的安定性、接着時間、生体内での分解速度等に関する基礎データが得られた。今後更に接着成分の粘度改善、接着時間の最適化等の技術的課題の解決、企業化に向けた努力に期待したい。

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This page updated on March 25, 2005
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