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単層カーボンナノチューブ電極キャパシタの高電圧・安定動作を実証

平成22年6月21日

独立行政法人 産業技術総合研究所
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独立行政法人 科学技術振興機構(JST)
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―集電体が不要なため、小型・軽量の高性能マイクロキャパシタへの道を開く―

<ポイント>

○ 試作したキャパシタは4Vで動作し、高エネルギー密度、高パワー密度を示した

○ 1000回の充放電を繰り返した後も静電容量の減少率は3.6%

○ 小型・軽量なマイクロキャパシタとして携帯電子機器等への応用の可能性

独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という) ナノチューブ応用研究センター【研究センター長 飯島 澄男】スーパーグロースCNTチーム 畠 賢治 研究チーム長、エネルギー技術研究部門【研究部門長 長谷川 裕夫】エネルギー貯蔵材料グループ 羽鳥 浩章 主任研究員、学校法人 名城大学大学院理工学研究科 博士課程 イザディナジャファバディ・アリらは、高純度の単層カーボンナノチューブ(単層CNT)注1)を電極とするキャパシタ注2)を試作、その性能を評価し、従来の活性炭電極キャパシタよりも高い電圧で安定に動作することを確認した。

キャパシタは二次電池とは異なり、電気エネルギーを直接物理的に蓄える長寿命で高出力のデバイスである。キャパシタのエネルギー密度、パワー密度は動作電圧の自乗に比例するが、従来の活性炭電極キャパシタは電極の不純物などのため、3V以上の電圧をかけると寿命が短くなる問題があった。

今回、スーパーグロース法注3)で合成した高純度の単層CNTだけを用いた電極を作製し性能試験を行った。この電極を用いたキャパシタは、電圧4Vで動作し、67Wh/kgの高エネルギー密度、93kW/kgの高パワー密度を示した。また1000回の充放電試験後のキャパシタンス(静電容量)の減少率は、活性炭電極を用いたキャパシタが46%であったのに対し、単層CNT電極キャパシタではわずか3.6%であった。将来、小型かつ軽量なマイクロキャパシタとして、携帯電子機器やユビキタスデバイスに応用できると考えられる。

本研究は、独立行政法人 科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)「プロセスインテグレーションによる機能発現ナノシステムの創製」【研究総括 独立行政法人 物質・材料研究機構 理事 曽根 純一】研究領域における研究課題「自己組織プロセスにより創製された機能性・複合CNT素子による柔らかいナノMEMSデバイス」【研究代表者 畠 賢治】の一環として行われ、詳細は、2010年6月18日(ドイツ時間)にドイツの科学誌「Advanced Materials」オンライン版に掲載された。

<社会的背景>

キャパシタは化学反応を伴う二次電池と異なり、急速に充放電ができ、劣化が少なく長寿命のデバイスとして注目されている。電気自動車用などに大型・大容量キャパシタの開発が進む一方で、小型家電製品・携帯電子機器・移動体通信などの用途には小型で軽量なキャパシタが必要とされている。キャパシタの電極としては従来、比表面積が大きな活性炭が使用されてきた。しかし、粉末である活性炭を電極に成形するには導電性の結合剤が必要であり、結合剤や活性炭表面の不純物、官能基が劣化を促進するため、3V以下の電圧しかかけられず、寿命が短いという問題があった。そのため、活性炭電極に代わる、長寿命、高性能な電極の開発、さらには、それを用いた実用的なキャパシタの開発が求められている。

<研究の経緯>

単層CNTは、繊維状の構造を持つため結合剤を使わずにシート化することができる。さらに、導電性があり、比表面積が大きく、表面に官能基がないなど、キャパシタ電極として理想的な特性を持つことから研究開発が進められてきた。しかし、従来の合成法では触媒を取り除く際に表面に官能基が付加されてしまうため、キャパシタ電極としての十分な性能が確認されていなかった。

産総研ナノチューブ応用研究センターは、炭素純度の高い単層CNTの合成法であるスーパーグロース法を開発し、キャパシタ電極としての応用についてエネルギー技術研究部門と連携して研究を進めてきた。

<研究の内容>

今回、電極に用いた単層CNTはスーパーグロース法により合成し、金属触媒の除去など、特別な処理を行わない状態で使用した。この状態でも、炭素純度が99.98%と高く、CNT以外の炭素不純物は2%以下、CNTの99%が単層CNTで多層CNTがほとんどなく、大きな比表面積(1300m/g)を持つ。合成した単層CNTは一方向に配向しており、それを圧縮した後、電解液(テトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム/炭酸プロピレン)に浸すことで高密度化して電極を作製した(図1a)。

単層CNT電極は21S/cmと集電体注4)がなくてもキャパシタ用電極として十分な導電率を持つため、試験用キャパシタはセルロースセパレータを挟んで電極シートを重ねただけで集電体を使わない構造のもの(図1c)、および白金メッシュを集電体として用いたもの(図1d)の2種類を試作した。また、比較のため、活性炭YP17、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カーボンブラックを材料とした電極も作製した(図1b)。集電体は白金メッシュとし、電解液も単層CNT電極と同じものを用いた。

これら3種類の電極を用いて試作したキャパシタの性能試験の結果を図2に示す。単層CNT電極キャパシタはどちらも0〜4Vで安定した動作を示した(図2a)。また、定電流放電を行い(図2b)比キャパシタンス注5)図2c)とIRドロップ(図2d)を算出した。単層CNT電極キャパシタはどちらも比キャパシタンスが活性炭電極より大きく、IRドロップ注6)は小さい。集電体なしの単層CNT電極を用いたキャパシタのエネルギー密度は67Wh/kg、パワー密度は93kW/kg、また集電体がある場合は、それぞれ94Wh/kg、210kW/kgであった。

さらに単層CNT電極キャパシタについては0〜4V、活性炭電極キャパシタについては0〜3.5Vの動作電圧で1000回の充放電試験を行った。単層CNT電極キャパシタは集電体の有無にかかわらず、キャパシタンスの減少率はわずか3.6%であったが、活性炭電極キャパシタでは46%減少した(図3)。

今回の単層CNT電極をキャパシタデバイスに用いた場合、パッケージされた製品としての性能を試算したところ、市販の電気二重層キャパシタデバイスよりも高いエネルギー密度(17Wh/kg)、高いパワー密度(24kW/kg)であった(図4)。これは、集電体が不要なのでデバイスを軽量化できることと、不純物を含まず比表面積の大きい単層CNTを使用することで動作電圧が上がったためである。また、一般にキャパシタは二次電池に比べてエネルギー密度が小さいが、今回の電極を用いると、重量当たりのエネルギー密度では市販の鉛二次電池と同程度のデバイスを実現できる可能性がある。集電体を使用しないキャパシタは、軽量化に加えて、構造がシンプルなため製作工程が簡素化できる。加えて、電解液中に金属があることによる電解質の分解・劣化を防ぎ、長期間使用できるメリットもある。

<今後の予定>

高純度単層CNTキャパシタ電極を利用して、集電体を使わず構造が単純で、軽量なマイクロキャパシタ開発を目指す。また、さらに高い電圧で動作するキャパシタの実現も目指す。将来は、小型軽量で、かつ高出力を必要とする携帯電話・モバイルPCなどの携帯電子機器やユビキタスデバイスへも応用していきたい。

<参考図>

図1

図1

  • a) 単層CNT電極の走査型電子顕微鏡画像。白矢印はCNTの配向方向を示す。
  • b) 活性炭電極の走査型電子顕微鏡画像。
  • c) 集電体なしの単層CNT電極を用いたキャパシタの構造。
  • d) 集電体つきの単層CNT電極を用いたキャパシタの構造。
図2

図2 集電体つきの単層CNT電極(青)、集電体なしの単層CNT電極(赤)、活性炭電極(黒)のキャパシタ性能試験結果

図3

図3 1000回充放電試験でのキャパシタンスの変化。集電体つきCNT電極キャパシタ(青)、集電体なしCNT電極キャパシタ(赤)、活性炭電極キャパシタ(黒)

図4

図4 デバイスを作製した場合の性能推定値(従来品との比較)

<用語解説>

注1) 単層カーボンナノチューブ(単層CNT、SWCNT:Single-Walled Carbon Nanotube)
カーボンナノチューブは炭素原子のみからなり、直径が0.4〜50nm(1ナノメートル:10億分の1メートル)、長さがおよそ1〜数10µmの一次元性のナノ材料である。その化学構造はグラファイト層を丸めてつなぎ合わせたもので表され、層の数が1枚だけのものを単層カーボンナノチューブと呼び、グラファイト層の巻き方(らせん度)に依存して電子構造が金属的になったり半導体的になったりする。
注2) キャパシタ
電気二重層という、固体と液体との界面に正負のイオンが対となって層状に並ぶ現象を利用したエネルギー蓄積デバイスを電気二重層キャパシタと呼ぶ。充放電時には電解質イオンが移動し、電極に吸脱着するだけなので、化学反応を行う二次電池よりも急速充放電ができるという特長があり、また劣化も少ない。近年では、二次電池的な化学反応を伴うにもかかわらず、キャパシタ的な急速充放電が可能な疑似キャパシタなど、さまざまなタイプの次世代キャパシタが開発されている。
注3) スーパーグロース法
単層カーボンナノチューブの合成手法の1つである化学気相成長(CVD)法で、水分を極微量添加することにより、触媒の活性時間および活性度を大幅に改善した方法。従来の500倍の長さに達する高効率成長、従来の2000倍の高純度単層カーボンナノチューブを合成することが可能である。さらに、配向性も高く、マクロ構造体も作製できる。
注4) 集電体
キャパシタ電極に十分な導電性がない場合に、導電性を改善し、充放電を補助するためのもの。集電体としては、電圧をかけた場合でも電解液との反応の少ない、比重の重い金属が用いられることが多く、キャパシタの重量増につながる。
注5) 比キャパシタンス
単位重量当たりの静電容量のこと。
注6) IRドロップ
電極・電解液などが持つ、キャパシタ内部の電気抵抗を表す。小さいほうが効率がよい。

<お問い合わせ先>

<研究に関すること>

畠 賢治(ハタ ケンジ)
独立行政法人 産業技術総合研究所 ナノチューブ応用研究センター スーパーグロースCNTチーム 研究チーム長
〒305-8565 茨城県つくば市東1−1−1 中央第5
TEL:029-861-4654 FAX:029-861-4851
E-mail:

<JSTの事業に関すること>

河村 昌哉(カワムラ マサヤ)
独立行政法人 科学技術振興機構 イノベーション推進本部 研究領域総合運営部
〒102-0075 東京都千代田区三番町5番地 三番町ビル
Tel:03-3512-3531 Fax:03-3222-2066
E-mail:

<報道担当>

独立行政法人 産業技術総合研究所 広報部 広報業務室
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