戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)

領域紹介

マテリアルズインテグレーション(MI) 理論、実験、シミュレーション、データ解析を融合し材料研究開発を支援

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領域紹介

セラミックスコーティングMI

(D68・D69・D73)

コンセプトとアプローチ

セラミックスコーティングを対象としたマテリアルズインテグレーションでは、長さの単位ではナノメーター(nm)の分子レベルからセンチメートル(cm)オーダーの実部材サイズまで、時間単位ではピコ秒(ps)から数年使う構造体までのレンジの中で生じた現象や性質を統一的に理解できるようなシステムを目指します。そのために各種シミュレーションによる結果、プロセス条件や各種評価試験の結果をデータベースとし、データベースを利用して理論式や解析式を用いてパフォーマンスと、プロセス、組織、特性の関係を結び付けます。シミュレーションだけに頼るのではなく、解析式、経験式、ノウハウ等のありとあらゆる科学や技術の知識を駆使して、耐熱コーティングの研究開発時の問題解決を支援するためのツールを提供します。
研究開始から3年間は熱遮蔽コーティング(Thermal Barrier Coating)を対象として基本システムを設計し、その後はJFCC(ファインセラミックスセンター)拠点で開発が進められる耐環境コーティングへの適用に着手します。国際連携による開発により、国際的に通用するマテリアルズインテグレーションとして世の中に送り出すことを計画しています。

図:セラミックスコーティングMI コンセプトとアプローチ

ユニット構成と役割

セラミックスコーティングのマテリアルズインテグレーションのチーム編成は、航空機用エンジン部材の耐環境コーティングのパフォーマンスという課題をもとに、独自のテーマで進んできた課題・研究者をSIP革新的構造材料の中で編成したという特徴を持ちます。この方法以外では編成できなかったチーム編成になっています。このために、研究課題設定、研究項目の連携などの過程を経て現在の編成に至りました。「異分野の研究者の方々の持つポテンシャルを一つの目標に向かってテーマ設定と課題を解決する」ためのチームを編成しました。また、具体的な課題設定には企業のニーズを十分に取り入れ、しかも、企業が独自のデータベースを組み込んだり、あたらしい技術分野を導入した際に、今回開発するシステムとの融合が簡単にでき、マテリアルズインテグレーションの成果を多くの企業が利用しやすい形としました。

図:セラミックスコーティングMI ユニット構成と役割

研究開発

図:セラミックスコーティングMI 研究開発
セラミックスコーティングの多孔質構造(柱状と羽毛状構造)形成のシミュレーション
図:セラミックスコーティングの多孔質構造(柱状と羽毛状構造)形成のシミュレーション
多孔質構造を有するセラミックス膜の焼結と組織変化のシミュレーション
図1:多孔質構造を有するセラミックス膜の焼結と組織変化のシミュレーション
図2:多孔質構造を有するセラミックス膜の焼結と組織変化のシミュレーション

焼結の進行(気孔率の減少)が、時間と温度に依存して進行するが、これの定量化が可能で、特性の変化(劣化)が予測できる。

  • 時間依存現象の素過程は単一原子の移動過程にある。
    チームメンバーの陳は試行振動数と移動の活性化エネルギーを第一原理電子状態計算(DFT)から算出し、次に毛利は、ある状態から別の状態に系が遷移するときの最も確からしい経路を経路確率法(PPM)を用いて求める。特にDFTでは、空孔機構に基づく経路確率法に整合させるべく、Nudged elastic band法とDFTを組み合わせて、数種類の原子移動経路に対して活性化エネルギーを求める。さらに内部組織の時間発展の計算にフェーズフィールド法(PFM)を用いるが、緩和定数や拡散定数をDFT+PPMから定め、これらを集積して材料設計・開発に必要な熱力学とkineticsのデータベース化を図る。
図:陳グループによるc-ZrO2に対する活性化エネルギーの計算結果
図は陳グループによるc-ZrO2に対する活性化エネルギーの計算結果であり、酸素の<100>方向への拡散は一番低い原子移動エネルギーに対応するpathであることが分かる。
  • セラミックスコーティングの長時間劣化や破壊は、コーティングと雰囲気や異物との熱化学的反応、あるいは構成材料間の界面反応などに伴う構造変化を原因とする場合も多い。このような現象の定量的解析には計算熱力学が不可欠であるので、本課題では、セラミックスコーティングを構成する材料組成系の専用熱力学データベースを開発すると同時に、非平衡界面現象などを解析する熱化学拡散反応シミュレータを開発し、熱機械的損傷過程の定量化をはかる。このような熱化学的シミュレータシステムを用いてコーティングの劣化現象を解析することで、優れたEBCコーティングシステムの開発に貢献する。
図:開発を計画するモジュール
開発を計画するモジュール
図:開発した熱力学データベースを用いた、コーティング候補材料Yb2O3-SiO2系の計算状態図
開発した熱力学データベースを用いた、コーティング候補材料Yb2O3-SiO2系の計算状態図

国際連携によるブレークスルー

図:国際連携

国際連携の必要性

セラミックスコーティングは航空機エンジン等に応用されますので、研究の段階から、国際的な連携によって開発を進めることが必要です。

国際連携で期待されること

セラミックスコーティングの損傷、剥離などの寿命を予測するために必要なシミュレーション技術の開発が期待されます。
現在、東北大学を核に日米独の連携を計画しています。

研究開発課題・ユニット一覧

(D) 耐熱合金・金属間化合物領域表
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分類 No. 研究開発課題 ユニット名 ユニット代表者
金属MI D61 マテリアルズインテグレーションシステムの開発 組織予測システムの開発 ◎○小関敏彦(東京大学)
D62 性能予測システムの開発 榎学(東京大学)
D63 特性空間分析システムの開発 井上純哉(東京大学)
D64 統合システムの開発 渡邊誠(NIMS)
D65 溶接部性能保証のためのシミュレーション技術の開発 廣瀬明夫(大阪大学)
D67 「界面」を通じた、構造材料における未解決課題克服のための技術構築 津崎兼彰(九州大学)
D66 構造材料の未活用情報を取得する先端計測技術開発 大久保雅隆(AIST)
セラミックスコーティングMI D68 高温物質移動および組織の時間依存挙動のシミュレーション技術開発 松原秀彰(東北大学)
D69 計算機を用いた材料支援技術への時間依存特性導入技術 毛利哲夫(東北大学)
D73 構造材料開発に利用する計算熱力学に関する技術基盤構築 菖蒲一久(AIST)
高分子MI D70 高性能高分子材料の長期時間依存特性の予測技術の開発 栗山卓(山形大学)
D71 構造用高分子材料の実用型最適設計・総合評価支援ツールの開発 藤元伸悦(新日鉄住金化学)
D72 マテリアルズインテグレーションヘの数学的アプローチ技術開発 西浦廉政(東北大学)
D74 非線形解析を用いた高分子材料のパフォーマンス予測技術 志澤一之(慶應大)
D75 原子・分子レベルからのアプローチによる高分子材料設計支援技術 山下雄史(東京大学)

◎:領域長 〇: 拠点長

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